JP7172538B2 - タイヤ - Google Patents

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本発明は、サイドウォール部に設けた標章の視認性を向上させたタイヤに関する。
タイヤのサイドウォール部の表面には、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ等を表す文字、記号などである標章が形成されている。これら標章の視認性を高めるために、下記の特許文献1には、標章の表面に、等間隔でかつ相互に平行な凹溝を形成するとともに、前記凹溝の断面を略V字状とし、かつその両側面の傾斜角度を互いに相違させたタイヤが提案されている。
実開昭60-92604号公報
上記提案のタイヤでは、凹溝の一方の壁面と他方の壁面とで傾斜角度が相違するため、一方の壁面からの光の反射量と、他方の壁面からの光の反射量とを違えることができる。その結果、一方側から見た時と他方側から見た時とでコントラストに差を付けることができ、標章の視認性を高めうる。
しかし各凹溝が、それぞれ同じ向きで配されている。即ち、例えば傾斜角度が大な壁面が、それぞれ並列方向の一方側に向いて配される。そのため、標章全体が一様に明或いは暗となるなど標章の立体感に乏しく、視認性に対してさらなる改善の余地が残される。
本発明は、境界線により区分されるセレーション部の第1領域と第2領域との間にコントラストを付けることができ、標章の立体感を高めて視認性をより向上させうるタイヤを提供することを課題としている。
本発明は、サイドウォール部に、1以上の標章を有する標章表示部が形成されたタイヤであって、
前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面に設けられる基準面と、この基準面に形成される前記標章とを有し、
前記標章の表面に、複数本のリッジが並列されたセレーション部が設けられ、
前記リッジは、その長さ方向と直角な断面が、第1の斜辺と第2の斜辺とを有する三角形状又は台形状をなし、かつ前記第1の斜辺の前記標章の表面に対する外角θ1は、前記第2の斜辺の前記標章の表面に対する外角θ2より大であり、
前記セレーション部は、前記セレーション部を横切る境界線により第1領域と、第2領域とに区分され、
前記リッジは、前記第1領域においては、第1の斜辺が並列方向の一方側に向き、前記第2領域においては、第1の斜辺が並列方向の他方側に向いたタイヤ。
本発明に係るタイヤでは、前記外角θ1と前記外角θ2との差(θ1-θ2)は、10度以上であるのが好ましい。
本発明に係るタイヤでは、前記第1領域は、前記第2領域のタイヤ半径方向外側に配されるのが好ましい。
本発明に係るタイヤでは、前記境界線は、タイヤ周方向に対して90°より小の角度で傾斜してのびるのが好ましく、又タイヤ周方向にのびるのも好ましい。
本発明に係るタイヤでは、前記リッジは、タイヤ軸心を中心とした円弧状にのびるのが好ましく、又前記境界線と平行にのびるのも好ましい。
本発明に係るタイヤでは、前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面から一定高さで突出する台座部を具え、前記台座部の表面が前記基準面を形成するのが好ましい。
本発明は、リッジの断面を、第1の斜辺の外角θ1が第2の斜辺の外角θ2よりも大な三角形状又は台形状で形成している。そのため、第1の斜辺側の斜面からの光の反射量と、第2の斜辺側の斜面からの光の反射量とに差を付けることができる。
しかも、境界線により区分されたセレーション部の第1領域において、リッジは、第1の斜辺が並列方向の一方側に向き、逆に、第2領域において、リッジは、第1の斜辺を並列方向の他方側に向く。
これにより、第1領域と第2領域との間にコントラストが生まれ、境界線の一方側に陰影を与えることができる。その結果、標章に立体感を持たせることができ、視認性を高めることが可能となる。
本発明の一実施形態のタイヤのサイドウォール部の一部を示す側面図である。 (a)は標章を拡大して示す側面図、(b)はそのA-A線断面図である。 リッジの長さ方向と直角な断面図である。 リッジの斜視図である。 (a)は境界線がタイヤ周方向に対して傾斜してのびる場合の標章の他の例を示す側面図、(b)は境界線がタイヤ周方向にのびる場合の標章の一例を示す側面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、少なくとも一方のサイドウォール部2に、1以上の標章表示部3が配される。標章表示部3は、サイドウォール部2の表面2sに設けられる基準面Xと、この基準面Xに形成される1以上の標章4とを具える。本例では、標章表示部3は、サイドウォール部2の表面2sから一定の高さで段差状に突出する台座部5を具え、この台座部5の表面が前記基準面Xを形成する。なお台座部5は無くても良く、この場合、サイドウォール部2の表面2sが基準面Xをなす。
標章4は、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ等を表すための最小単位の文字、記号、図形などを意味する。本例では、標章表示部3に、例えば「A」、「L」、「K」、「E」である4つの標章4からなる「ALKE」の文字列(例えばブランド名)が形成される場合が示される。なお標章4は、基準面Xから小高さで隆起している。
図2(a)、(b)に、「E」の標章4が代表して示される。同図に示すように、標章4の表面4sには、複数本のリッジ6が並列されたセレーション部7が形成される。本例では、セレーション部7が、表面4sの全域に形成された場合が示される。しかし、例えば、表面4sに、標章4の外周に沿ってのびる縁取り部を設け、この縁取り部内にセレーション部7を形成することもできる。
図3に示すように、リッジ6は、その長さ方向と直角な断面が、第1の斜辺11と第2の斜辺12とで頂部Qを挟む三角形状、又は前記頂部Qを切除した台形状に形成される。本例では、断面三角形状の場合が示される。リッジ6の高さh及びピッチp(図2(b)に示す)としては、慣例に基づいて設定することができる。通常、高さhは0.15~1.0mmの範囲、ピッチpは前記高さhの0.5~2.0倍の範囲が好適に使用される。
前記リッジ6の断面において、第1の斜辺11の標章4の表面4sに対する外角θ1は、第2の斜辺12の標章4の表面4sに対する外角θ2よりも大に設定される。なお外角θ2が90度を下回ると、タイヤを加硫金型から外す際、リッジ6にゴム欠けが生じる恐れを招く。そのため、外角θ2は90度以上であるのが好ましい。
このようなリッジ6は、緩傾斜となる第1の斜辺11を有する斜面S1の面積が、急傾斜となる第2の斜辺12を有する斜面S2の面積よりも大となる。そのため、斜面S1からの光の反射量と、斜面S2からの光の反射量とに差が設けられ、斜面S1と斜面S2との間にコントラストを付けることができる。なおコントラストを大きくするために、外角θ1と外角θ2との差(θ1-θ2)は、10度以上、さらには20度以上、さらには30度以上であるのが好ましい。
第1の斜辺11、第2の斜辺12は直線であるのが好ましい。しかし第1の斜辺11、第2の斜辺12は、凸円弧状或いは凹円弧状の曲線であっても良い。曲線の場合、直線を基準線として、この基準線からの最大突出量或いは最大凹み量が、基準線の長さの10%以下であるのが好ましい。又曲線の場合、前記外角θ1、θ2は、前記基準線における角度で定義される。
図2(a)に示すように、セレーション部7は、このセレーション部7を横切る境界線Kにより、第1領域7Aと、第2領域7Bとに区分される。なお第1領域7Aの表面積SAと第2領域7Bの表面積SBとの比SA/SBは、特に規制されないが、0.8~1.2の範囲であるのが、標章4の視認性の観点から好ましい。
本例では、境界線Kが、タイヤ周方向に対して90°より小の角度αで傾斜してのびる斜線13である場合が示される。この境界線Kとして、直線及び円弧状の曲線が適宜採用できる。境界線Kが斜線13の場合、境界線Kは、標章4の左下のコーナPaから右上のコーナPbに向かって対角線状にのびるのが好ましい。なお例えば「O」、「S」などコーナPa、Pbがない標章4の場合、標章4を囲む平行四辺形(矩形を含む)のうちの最小の平行四辺形の対角線方向にのびるのが好ましい。なお平行四辺形は、タイヤ周方向にのびる上辺、下辺を含む。
本例のリッジ6は、タイヤ軸心(図示省略)を中心とした円弧状にのびる。即ち、本例では、各リッジ6は、タイヤ軸心を中心とした同心円状に配される。
図2(b)に示すように、リッジ6は、第1領域7Aにおいては、第1の斜辺11を並列方向Fの一方側に向けて配され、第2領域においては、第1の斜辺11を並列方向Fの他方側に向けて配される。
本例では、図2(a)、図4に示すように、1本のリッジ6が、第1領域7Aに配される第1部分6Aと、第2領域7Bに配される第2部分6Bとから構成される。そして第1部分6Aでは、第1の斜辺11(斜面S1)が並列方向Fの一方側に向き、又第2部分6Bでは、第1の斜辺11(斜面S1)が並列方向Fの他方側に向く。
このように構成することにより、図2(a)に示すように、セレーション部7の第1領域7Aと第2領域7Bとの間にコントラストを与えることができる。本例では、第1領域7Aが第2領域7Bのタイヤ半径方向外側に配された場合が示される。この場合、タイヤ半径方向外側の第1領域7Aを、内側の第2領域7Bよりも明るく(白っぽく)見せることができ、例えば、並列方向Fの一方側から光を当てたような陰影を表現しうる。これにより、標章4に、境界線Kを頂点とする立体感を与えることができ、視認性を高めることが可能となる。
図5(a)、(b)に示すように、標章4の他の実施例が示される。図5(a)において、セレーション部7は、対角線状の境界線K(斜線13)により、タイヤ半径方向外側の第1領域7Aと、内側の第2領域7Bとに区分されている。
そして、各リッジ6は、境界線Kと平行にのびる。この場合、複数のリッジ6は、第1領域7Aに配される第1のリッジ21と、第2領域7Bに配される第2のリッジ22とから構成される。第1のリッジ21は、その第1の斜辺11(斜面S1)を並列方向Fの一方側に向けて配され、第2のリッジ22は、その第1の斜辺11(斜面S1)を並列方向Fの他方側に向けて配される。これにより、第1領域7Aを第2領域7Bよりも明るく見せることができ、標章4に、境界線Kを頂点とする立体感を与えることができる。
図5(b)において、セレーション部7は、タイヤ周方向にのびる周方向線14である境界線Kにより、タイヤ半径方向外側の第1領域7Aと、内側の第2領域7Bとに区分されている。
そして、各リッジ6は、境界線Kと平行にのびる。この場合、図5(a)と同様、複数のリッジ6は、第1領域7Aに配される第1のリッジ21と、第2領域7Bに配される第2のリッジ22とから構成される。第1のリッジ21は、その第1の斜辺11(斜面S1)を並列方向Fの一方側に向けて配され、第2のリッジ22は、その第1の斜辺11(斜面S1)を並列方向Fの他方側に向けて配される。これにより、第1領域7Aを第2領域7Bよりも明るく見せることができ、標章4に、境界線Kを頂点とする立体感を与えることができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
サイドウォール部2の表面2sに、4つの標章4からなる「ALKE」の文字列(標章表示部)を形成したタイヤを表1の仕様で試作し、標章4の視認性を比較した。各タイヤとも、リッジの断面形状、深さ、及びピッチは同一である。
リッジの断面形状:非二等辺三角形
第1の斜辺の外角θ1:155°
第2の斜辺の外角θ2:100°
リッジの高さh:0.5mm
リッジのピッチp:1.2mm
視認性は、目視による官能評価により比較例1を100とする指数で評価した。数値が大なほど優れている。
Figure 0007172538000001
表1の如く実施例は、標章の視認性に優れているのが確認できる。
1 タイヤ
2 サイドウォール部
2s 表面
3 標章表示部
4 標章
4s 表面
5 台座部
6 リッジ
7 セレーション部
7A 第1領域
7B 第2領域
11 第1の斜辺
12 第2の斜辺
F 並列方向
K 境界線
X 基準面

Claims (8)

  1. サイドウォール部に、1以上の標章を有する標章表示部が形成されたタイヤであって、
    前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面に設けられる基準面と、この基準面に形成される前記標章とを有し、
    前記標章の表面に、複数本のリッジが並列されたセレーション部が設けられ、
    前記リッジは、その長さ方向と直角な断面が、第1の斜辺と第2の斜辺とを有する三角形状又は台形状をなし、かつ前記第1の斜辺の前記標章の表面に対する外角θ1は、前記第2の斜辺の前記標章の表面に対する外角θ2より大であり、
    前記セレーション部は、前記セレーション部を横切る境界線により第1領域と、第2領域とに区分され、
    前記リッジは、前記第1領域においては、第1の斜辺が並列方向の一方側に向き、前記第2領域においては、第1の斜辺が並列方向の他方側に向いたタイヤ。
  2. 前記外角θ1と前記外角θ2との差(θ1-θ2)は、10度以上である、請求項1記載のタイヤ。
  3. 前記第1領域は、前記第2領域のタイヤ半径方向外側に配される、請求項1又は2記載のタイヤ。
  4. 前記境界線は、タイヤ周方向に対して90°より小の角度で傾斜してのびる、請求項1~3の何れかに記載のタイヤ。
  5. 前記境界線は、タイヤ周方向にのびる、請求項1~3の何れかに記載のタイヤ。
  6. 前記リッジは、タイヤ軸心を中心とした円弧状にのびる、請求項1~5の何れかに記載のタイヤ。
  7. 前記リッジは、前記境界線と平行にのびる、請求項1~5の何れかに記載のタイヤ。
  8. 前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面から一定高さで突出する台座部を具え、前記台座部の表面が前記基準面を形成する、請求項1~7の何れかに記載のタイヤ。
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