JP7162942B1 - 積層造形用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】主成分としてPC系樹脂を含み、3Dプリンタによるフィラメントとして使用した場合であっても、高さ方向における十分な接着強度を有し、造形時における収縮応力の発生を抑制し、立体的な形状の造形体を出力可能とする積層造形用樹脂組成物の提供を課題とする。【解決手段】樹脂組成物2は、PC系樹脂と、耐衝撃改良材と、熱軟化材とを含有し、熱溶解積層方式の3Dプリンタ100のフィラメント3として使用可能であり、PC系樹脂は、PC樹脂、PC-ABS樹脂、及びPC-PET樹脂の少なくともいずれか一種を有し、耐衝撃改良材は、スチレン系熱可塑性エラストマー及びコア-シェル型耐衝撃改良材の少なくともいずれか一種を有し、熱軟化材は、結晶性共重合ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン、及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくともいずれか一種を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、積層造形用樹脂組成物に関する。更に詳しくは、主に熱溶解積層方式(FDM方式:Fused Deposition Modeling Method)を採用した三次元形状の造形体を出力するための三次元プリンタ(以下、「3Dプリンタ」と称す。)に使用される熱可塑性樹脂製のフィラメントを構成可能な積層造形用樹脂組成物に関する。
従来、予め設計された三次元データに基づいて三次元形状の立体的な造形体(三次元モデル)の出力を可能とする3Dプリンタが広く知られている。3Dプリンタは、基台となるビルドプレートに対し、吐出ノズルから積層造形用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称す。)を吐出し、当該樹脂組成物によって薄い樹脂組成物の層(樹脂組成物層)を形成し硬化させた後、更に硬化後の樹脂組成物の層の上に樹脂組成物を吐出し、新たな樹脂組成物層の形成及び硬化に係る処理を繰り返すことで、樹脂組成物層を多層に積重させることで立体的な造形体の出力を可能となるものである。
特に近年において、製造業を中心として、研究開発段階における製品や各種部品の試作品を3Dプリンタによって製作し、製品のデザイン性の検討や部品の動きなどの機能性に関する確認や検証を行うことが行われている。また、上記製造業以外でも建築分野や医療分野、或いはその他の種々の産業分野において、かかる3Dプリンタを活用することが行われている。
更に、3Dプリンタ関連の技術の進歩によって、比較的安価、かつ容易に3Dプリンタ本体や関連する設備及び資材等を入手することが可能となっている。そのため、上記のような企業だけでなく、個人が趣味として3Dプリンタを購入し、フィギュア等の造形体を出力することが行われている。これにより、3Dプリンタに関連する市場規模が年々拡大している。
3Dプリンタを用いて造形体を出力するための方式や技法等は従来から種々知られている。例えば、液状の紫外線硬化型樹脂に対し、所定波長の紫外線を照射し、硬化させる「光造形方式」や熱可塑性樹脂を加熱し、軟化させることで溶融状態となった樹脂組成物を吐出ノズルから吐出し、吐出後に熱可塑性樹脂を硬化させる「熱溶解積層方式」等が一般的に知られている。
特に、熱溶解積層方式の場合、樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)やABS樹脂等の実際の製品に使用されるものと同一の工業用材料を用いて造形体を出力することができ、更に熱可塑性樹脂を冷やすことによって硬化するものであるため、光造形方式のように光硬化の処理に係る紫外線ランプ等の硬化設備を特に必要とすることがなく、造形体の出力に係るコストを抑え、有機溶剤等を使用することのないクリーンな環境での造形を行うことができる等の利点を有している。そのため、熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物をフィラメントとして用いた熱溶解積層方式の3Dプリンタが広く普及している。
熱溶解積層方式を採用した3Dプリンタ100による造形体1の出力の具体例について、図1及び図2に基づいて説明を行う。ここで、図1は熱溶解積層方式を採用した3Dプリンタ100の吐出ノズル101からの樹脂組成物2の吐出の一例を模式的に示す説明図であり、図2は3Dプリンタ100による造形体1の出力方向の例を示す説明図である。
3Dプリンタ100は、吐出ノズル101の先端まで樹脂組成物2で形成された熱可塑性樹脂製のフィラメント3を所定速度で送出可能な送出機構102を有している。3Dプリンタ100に装着されたフィラメント3は、上記送出機構102によって所定速度で送り出されながら、吐出ノズル101に設けられた加熱溶融機構(図示しない)によって加熱されて軟化し、最終的に流動状態の樹脂組成物2aとなる。
そして、吐出ノズル101の直下に配置されたビルドプレート103の上に流動状態の樹脂組成物2aを所定の吐出速度及び吐出圧力で吐出する。吐出ノズル101から流動状態の樹脂組成物2aが吐出されると、当該吐出ノズル101には送出機構102から新たなフィラメント3が順次供給され、加熱される。これにより、吐出ノズル101から流動状態の樹脂組成物2aの吐出を連続的に行うことができる。
更に、3Dプリンタ100は、流動状態の樹脂組成物2aの吐出タイミングに合わせ、吐出ノズル101をビルドプレート103に対してX方向(図1における紙面左右方向)、及び当該X方向に直交するY方向(図1における紙面手前から奥行方向)に沿って移動させる吐出ノズル移動機構(図示しない)を備えている。これにより、吐出ノズル101の直下に配置された平面状の吐出面103aを有するビルドプレート103において、流動状態の樹脂組成物2aの吐出位置を任意に変化させることができる。その結果、吐出ノズル101の移動によって、図1に示すように、XY方向及びYX方向に沿って樹脂組成物2による薄い層(樹脂層4)を形成することができる。
なお、ビルドプレート103の吐出面103aに形成された流動状態の樹脂組成物2aで形成された樹脂層4は、吐出ノズル101から吐出されたことによって徐々に熱を失い、冷却する。その結果、熱可塑性樹脂によって形成された樹脂層4は、流動性を喪失し硬化する。そして、硬化した樹脂層4の上から更に流動状態の樹脂組成物2aを吐出ノズル101から吐出することで、新たな樹脂層4を形成することができる。
これにより、図2における、ZX方向またはZY方向、換言すれば、図1における紙面上方向に沿って樹脂層4を多層に積重させることができる。これにより、造形体1の高さが形成され、最終的に三次元形状の立体的な造形体1の出力が完了する。
ここで、上記した熱溶解積層方式の3Dプリンタ100に使用されるフィラメント3として、従来から周知の樹脂(特に、熱可塑性樹脂)を用いることが可能であり、3Dプリンタ100の送出機構102を介して吐出ノズル101の先端まで送出可能なように、例えば、直径数mm程度の所定の形状(細長形状、フィラメント形状)に形成可能なものであればよい。
更に具体的に例示すると、上記に示したPC樹脂やABS樹脂の他に、PC-ABS樹脂やPC-PET樹脂、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)等を使用することができる。更に、脂肪族ポリエステル化合物及びPC樹脂を含有する樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)を使用することができる。
国際公開第2018/074480号
しかしながら、熱可塑性樹脂、特にPC樹脂を含有して構成される樹脂組成物をフィラメントとして用い、3Dプリンタによる造形体の出力を行う場合、下記に掲げる不具合を生じる可能性があった。
すなわち、PC樹脂を含有した樹脂組成物で構成されたフィラメント(PC樹脂フィラメント)の場合、一般的な3Dプリンタの吐出ノズルによる加熱温度(ノズル温度)は、250℃~280℃の温度範囲で設定されることが多い。これにより、PC樹脂フィラメントは、吐出ノズルのノズル先端部分で上記加熱温度で加熱され、軟化し最終的に吐出可能な流動状態となっている。
一方、PC樹脂フィラメントが吐出されるビルドプレートは、110℃~120℃程度となるように加熱されており、吐出ノズルから吐出された高温、かつ流動状態のPC樹脂フィラメント(樹脂組成物)は、かかるビルドプレート上で樹脂組成物層を形成し、吐出及び積層の段階で徐々に冷却されることにより、硬化する。その結果、樹脂組成物(樹脂組成物層)の流動性が喪失する。
ここで、標準的なPC樹脂の場合、ガラス転移温度(Tg)が約140℃前後であることが知られており、3Dプリンタのフィラメントとして当該PC樹脂をそのまま使用した場合、特に、上述したZX方向(またはZY方向)における樹脂組成物層の間の融着が十分に行われないことがあった。すなわち、硬化後の樹脂組成物層の上に新たに樹脂組成物層を形成した場合、二つの樹脂組成物の間の接着強度が十分でなく、造形体を出力した場合、ZX方向(ZY方向)に相当する高さ方向の強度が弱くなることがあった。その結果、出力された造形体全体の強度に影響を及ぼし、かかる造形体の使用に問題が生じることがあった。
加えて、図2におけるXY方向或いはYX方向に沿って、長尺状の造形体を出力しようとする場合、長手方向に沿って樹脂組成物層の形成、及び多層の樹脂組成物層の積重を行おうとする場合、樹脂組成物層の冷却に伴って出力された造形体の全体に“収縮応力”が発生することがあった。その結果、図2に示すXY方向或いはYX方向に沿った造形体の端部が、造形体の中央部分に対して反り上がり湾曲する“反り”が生じることがあった。
その結果、最終的に出力された造形体の形状が当初設計とは相違したり、寸法精度が著しく低下した状態の造形体が出力されることがあった。加えて、造形体の出力時において、反りの発生により、出力された造形体(或いは樹脂組成物層)の一部が、ビルドプレート上を移動する吐出ノズルと接触し、3Dプリンタの稼働を停止させるおそれがあった。
このように、3Dプリンタによる造形体の出力において、使用するフィラメントを構成する樹脂組成物は、高さ方向における十分な接着強度(融着強度)を有し、造形体自体の強度を確保しつつ、XY方向及び/またはYX方向における造形時の収縮応力の発生を抑えることが求められている。そのため、PC樹脂を主成分として含有する樹脂組成物は、構成する複数の成分を所定の重量%の比率で混合し、上記の要求される性能のバランスを調整する必要があった。
更に、従来の射出成形による製品の場合、製品自体に部品番号やロット番号、或いは製造年月日等を刻印し、個々の製品の製造時期等を識別することが可能であった。しかしながら、3Dプリンタによる造形体の出力の場合、造形体とともに部品番号等を出力することは出力毎にデータを変更する必要があり、現実的ではなかった。一方、出力後の造形体に熱転写印刷等によって刻印を印刷したとしても、経年的な使用により印刷が薄れ、見にくくなるおそれがあった。そのため、3Dプリンタによって出力された造形体に永続的に視認可能な部品番号等の刻印を表示することが期待されていた。
例えば、出力後の造形体に対してレーザーを照射してマーキングを施すレーザーマーキングを行うことが考えられている。しかしながら、発色性の点やレーザーを照射した発色部が膨張する等の問題が生じる可能性があり、発色性や視認性に優れ、かつ発色部にふくれが生じることなくレーザーマーキングを施すことが可能な積層造形用樹脂組成物が望まれていた。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、主成分としてPC系樹脂を含み、3Dプリンタによるフィラメントとして使用した場合であっても、高さ方向における十分な接着強度を有し、造形時における収縮応力の発生を抑制し、立体的な形状の造形体を出力可能とする積層造形用樹脂組成物、及び発色性に優れ、ふくれのない寸法安定性に優れたレーザーマーキングが可能な積積層造形用樹脂組成物の提供を課題とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決可能な樹脂組成物を見出し、下記に示す本発明を完成するに至ったものである。
[1] ポリカーボネート系樹脂と、耐衝撃改良材と、熱軟化材とを含有し、熱溶解積層方式の三次元プリンタのフィラメントとして使用可能な積層造形用樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、及びポリカーボネート樹脂-ポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくともいずれか一種を有し、前記耐衝撃改良材は、スチレン系熱可塑性エラストマー及びコア-シェル型耐衝撃改良材の少なくともいずれか一種を有し、前記熱軟化材は、結晶性共重合ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン、及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくともいずれか一種を有し、前記ポリカーボネート系樹脂、前記耐衝撃改良材、及び前記熱軟化材の合計質量を100とした場合の前記合計質量に占める前記ポリカーボネート系樹脂の比率が50重量%~93重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記耐衝撃改良材の比率が5重量%~30重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記熱軟化材の比率が2重量%~20重量%の範囲であり、前記積層造形用樹脂組成物から作製されたフィラメントを使用して、長さ170mm、4.0±0.2mm、高さ20mm、第二長さ80mm、第一高さ10±0.2mmの引張試験片を造形体として3Dプリンタによって出力した際の造形時の前記引張試験片に反りが生じることなく4mmの厚さで造形が可能な積層造形用樹脂組成物。
] 前記合計質量に占める前記ポリカーボネート系樹脂の比率が75重量%~93重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記耐衝撃改良材の比率が5重量%~15重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記熱軟化材の比率が2重量%~10重量%の範囲である前記[]に記載の積層造形用樹脂組成物。
] 前記ポリカーボネート系樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂を含み、ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、51kJ/m73kJ/mの範囲であり、ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、88℃~10℃の範囲である前記[1]または2]に記載の積層造形用樹脂組成物。
] 前記ポリカーボネート系樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂を含み、ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、52kJ/m74kJ/mの範囲であり、ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、90℃~95℃の範囲である前記[1]または2]に記載の積層造形用樹脂組成物。
] 前記ポリカーボネート系樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂-ポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、42kJ/m~5kJ/mの範囲であり、ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、8℃~93℃の範囲である前記[1]または2]に記載の積層造形用樹脂組成物。
] レーザーマーキング剤を更に具備し、前記レーザーマーキング剤は、導電性カーボンブラック、グラファイト、及びメソポーラスカーボンを含むカーボンブラック類、窒化チタン、炭化珪素、及び硼化ランタンの少なくともいずれか一種類が使用され、前記積層造形用樹脂組成物100重量部に対し、前記レーザーマーキング剤を0.0001~1.0重量部の範囲で含有する前記[1]~[]のいずれかに記載の積層造形用樹脂組成物。
本発明の積層造形用樹脂組成物は、熱溶解積層方式の3Dプリンタのフィラメントとして使用した場合、十分な融着強度を有し、かつ、樹脂層の積層時における収縮応力の発生を抑制可能な優れた作用効果を奏する。更に出力後の造形体に対して発色性に優れたレーザーマーキングを施すことが可能な作用効果を奏する。
熱溶解積層方式を採用した3Dプリンタの吐出ノズルからの樹脂組成物の吐出の一例を模式的に示す説明図である。 3Dプリンタによる造形体の出力方向の一例を示す説明図である。 試験片(多目的試験片)の一例を示す説明図である。 シャルピー衝撃試験強度の測定用の試験片(多目的試験片)の一例を示す説明図である。 造形体の出力時の反り評価のための引張試験片の一例を示す説明図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当該技術分野における当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等を加え得るものであっても構わない。
1.積層造形用樹脂組成物
本発明の一実施形態の積層造形用樹脂組成物(樹脂組成物)は、ポリカーボネート系樹脂(以下、「PC系樹脂」と称す)と、耐衝撃改良材と、熱軟化材とを主として含有して構成されるものであり、熱溶解積層方式の3Dプリンタ(三次元プリンタ、図1及び図2参照)用のフィラメントとして使用可能なものである。
更に、樹脂組成物の一成分を構成するPC系樹脂は、ポリカーボネート樹脂(以下、「PC樹脂」と称す。)、ポリカーボネート樹脂-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(以下、「PC-ABS樹脂」と称す。)、及びポリカーボネート樹脂-ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PC-PET樹脂」と称す。)の少なくともいずれか一種を有して構成されている。
ここで、フィラメントとして使用可能な樹脂組成物の一成分を構成するPC系樹脂とは、耐衝撃性等の優れた特徴を有するエンジニアリングプラスチックの一種であり、種々の用途に使用される工業用材料或いは建築用材料等として広く使用されるものである。PC樹脂は、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる。また、PC樹脂の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を採用することができ、例えば、芳香族二価フェノール系化合物にホスゲンなどを直接反応させる方法(界面重合法)や、芳香族二価フェノール系化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応させる方法(溶融法)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を表す数値であるメルトボリュームレイト(MVR)は、かかるPC樹脂において、2~25cm/10minの範囲であることが好ましく、より好ましくは5~15cm/10minの範囲とすることができる。PC樹脂のMVRの値を2cm/10min以上とすることで、良好な流れ性を得ることができる。一方、MVRの値を25cm/10min以下とすることで、優れた耐衝撃性を得ることができる。市販されているPC樹脂として、パンライトL-1225Y、L-1250Y(帝人株式会社製)、或いはユーロピンS-1000,S-2000,S-3000(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)等を例示することができる。
一方、樹脂組成物の一種である耐衝撃改良材は、樹脂の耐衝撃性を改善するために用いられるものであり、一般的にゴム成分を含有する耐衝撃改良材を添加することが公知となっている。特に、耐衝撃改良材は、その構造によって「コア-シェル型ポリマー」と、「熱可塑性エラストマー」とに大別することができる。
コア-シェル型ポリマーは、ゴム存在下でビニル単量体を重合して得られる耐衝撃改良材であり、ゴム成分がコアとなり、重合したビニル単量体がシェルとなるものである。
ここで、ゴム成分としては、例えば、オルガノシロキサン等を原料とするシリコーンゴム、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート等を原料とするアクリルゴム、ブタジエンやイソプレン等を原料とする共役ジエンゴムおよびこれらの複合ゴム等が例示される。これらのゴムは、単独で使用される以外に、2種以上のゴムを併用する場合もある。
更に、コア-シェル型ポリマーについて、成形体に優れた耐熱性が必要なときは、アクリルゴム、シリコーンゴムのものを使用するのが好ましく、低温での耐衝撃性が必要なときには、シリコーン-アクリル複合ゴムが好ましいとされており、使い分けされている。
シェルとなるビニル単量体として、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート、及びアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等が例示される。これらのビニル単量体は、単独の使用若しくは2種以上が併用される。なお、かかるビニル単量体の中でも、応用の広さや取り扱い性から、主成分は、スチレンとメチルメタクリレートの2種か、メチルメタクリレート単独とすることが広く用いられている。
これらのコア-シェル型耐衝撃改良材としては、シリコーン-アクリル複合ゴム系耐衝撃性改良材(メタブレンS-2001、S-2030、S-2100、SX-0065等(三菱ケミカル株式会社製)と、アクリルゴム系耐衝撃性改良材(メタブレンW-450A、W-300A、W-600A等(三菱ケミカル株式会社))と、共役ジエンゴム系耐衝撃性改良材(メタブレンC-223A、C-215A、C-201A等(三菱ケミカル株式会社製)とを例示することができる。
熱可塑性エラストマーの耐衝撃改良材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマー等が例示され、その多くはゴム成分と樹脂成分とからなるブロック共重合体である。
熱可塑性エラストマーの中でも水添スチレン系熱可塑性エラストマーの使用が好ましく、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体等が例示される。特にポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体の使用がより好ましく、市販されているものとして、セプトン2002,セプトン2104等(クラレ株式会社製)が知られている。
一方、樹脂組成物の一種である熱軟化材は、結晶性共重合ポリエステル、ポリカプロラクトン、及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくともいずれか一種を含んで構成されている。
熱軟化材として使用可能な結晶性共重合ポリエステルは、多価カルボン酸成分と多価グリコール成分からなる結晶性の共重合ポリエステルであり、多価カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などが用いられ、多価グリコール成分としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが用いられ、耐熱性や耐候性等の性状を有するものである。なお、これらの共重合ポリエステルの融点は、80℃~130℃の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは95℃~115℃の範囲のものである。このような結晶性共重合ポリエステルとしてバイロンGM-900,バイロンGM-920(東洋紡株式会社製)が例示され、それぞれ市販されている。
ポリカプロラクトンは、生分解性プラスチックの一種であり、一方、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、例えば、ポリブチレンテレフタレートのポリエステル構造と、ポリエーテル等を用いたブロック共重合ポリマーの一種である。これらの化合物は、工業用材料としていずれも周知のものであり、全て熱可塑性の性状を呈するものであり、シートやフィルム等の種々の用途に使用されている。
更に具体的に説明すると、ポリカプロラクトンは、カプロラクトンを酸、塩基、有機金属化合物等の触媒の存在下開環重合して製造することができるものである。なお、ポリカプロラクトンの末端はエステル化等の末端処理を施してあってもよい。ポリカプロラクトンの融点は60℃、ガラス転移温度は約-60℃である。これらのポリカプロラクトンの数平均分子量は、9,000~90,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは10,000~70,000の範囲のものである。このようなポリカプロラクトンとして数平均分子量が10,000のプラクセル H1P(ダイセル化学工業株式会社製)、或いは数平均分子量が10,000のCapa 2803(インジェヴィティ株式会社製)、数平均分子量が25,000のCapa 6250(インジェヴィティ株式会社製)、及び数平均分子量が50,000のCapa 6500(インジェヴィティ株式会社製)が例示され、それぞれ市販されている。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントから構成されるマルチブロックコポリマー(ハードセグメントとして芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルなどとを結合させたブロック共重合体)である。
ハードセグメントとしては芳香族ポリエステルが適しており、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示される。一方、ソフトセグメントとしては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリカーボネート等が好適であり、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリテトラメチレングリコール、及びポリアルキレンカーボネート等が例示される。このようなブロック共重合体(コポリマー)は、それぞれポリエステル-ポリエステル共重合体、ポリエステル-ポリエーテル共重合体、及びポリエステル-ポリカーボネート共重合体と呼ばれる。特に、ポリエステル-ポリエステル共重合体の使用が好適であり、このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ペルプレン S1001、S1002、S2001(東洋紡株式会社製)が例示され、それぞれ市販されている。
本実施形態の樹脂組成物は、上記の三成分(PC系樹脂、耐衝撃改良材、熱軟化材)を含有して構成され、かかる三成分が所定の比率(重量比)によって混合され、加熱した後に周知の樹脂成形技術によって3Dプリンタのフィラメントとして使用可能なように、フィラメント状に成形加工することができるものである。
ここで、PC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の合計質量を100とした場合の当該合計質量に占めるPC系樹脂の重量%の比率(重量比)が50重量%~93重量%の範囲、より好ましくは75重量%~93重量%の範囲となるように設定可能であり、合計質量に示す耐衝撃改良材の重量比が5重量%~30重量%、より好ましくは5重量%~15重量%の範囲となるように設定可能であり、合計質量に占める熱軟化材の重量比が2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~10重量%の範囲となるように設定可能である。
PC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材をそれぞれ上記重量比の範囲内に調製することで、3Dプリンタのフィラメントとして使用した場合、高さ方向に十分な融着強度を有し、出力された造形体に反りが発生することがないものとすることができる。
2.樹脂組成物の特性
本実施形態の樹脂組成物は、上記の重量比で三成分を混合しフィラメントとして成形加工し、3Dプリンタに使用した場合、出力された造形体は、十分な融着強度を有し、かつ収縮応力の発生を抑えたものとすることができる(詳細は後述する)。
更に、本実施形態の樹脂組成物は、PC系樹脂として、PC樹脂を含む場合、シャルピー衝撃試験強度が51kJ/m73kJ/mの範囲であり、かつ、1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度(熱変形温度)が88℃~10℃の範囲である力学的特性を備えている。これにより、3Dプリンタのフィラメントとして使用した場合、十分な強度を有し、かつ安定した作製精度で造形体を構築することが可能となる。ここで、シャルピー衝撃試験強度は、「ISO 179 シャルピー衝撃試験」に準拠して測定されたものであり、一方、荷重たわみ温度は、「ISO 75 負荷たわみ温度の測定方法」に準拠して測定されたものである。
一方、本実施形態の樹脂組成物は、PC系樹脂として、PC-ABS樹脂を含む場合、シャルピー衝撃試験強度が52kJ/m74kJ/mの範囲であり、かつ、1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度が90℃~95℃の範囲である力学的特性を備えている。これにより、3Dプリンタのフィラメントとして使用した場合、十分な強度を有し、かつ安定した作製精度で造形体を構築することが可能となる。ここで、シャルピー衝撃試験強度は、及び、荷重たわみ温度は、前述と同様に「ISO 179 シャルピー衝撃試験」及び「ISO 75 負荷たわみ温度の測定方法」に準拠して測定されたものである。
加えて、本実施形態の樹脂組成物は、PC系樹脂として、PC-PET樹脂を含む場合、シャルピー衝撃試験強度が42kJ/m~5kJ/mの範囲であり、かつ、1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度が8℃~93℃の範囲である力学的特性を備えている。これにより、3Dプリンタのフィラメントとして使用した場合、十分な強度を有し、かつ安定した作製精度で造形体を構築することが可能となる。ここで、シャルピー衝撃試験強度は、及び、荷重たわみ温度は、前述と同様に「ISO 179 シャルピー衝撃試験」及び「ISO 75 負荷たわみ温度の測定方法」に準拠して測定されたものである。
以下、本発明の樹脂組成物を下記の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えることができる。
始めに本実施例において使用するPC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の各成分の使用材料及び使用した実施例または比較例をまとめたものを下記表1に示す。また、以下において、PC系樹脂や耐衝撃改良材等の各成分に対応する使用材料について、それぞれ下記において付した[A-1]や[B-1]等の使用材料No.を用いて説明を行うものとする。
Figure 0007162942000002
3.PC樹脂
(多目的試験片の作成)
<実施例1>
下記表2に示す三成分に使用される使用材料を同表2に記載された重量%の配合比率に基づいて秤量し、撹拌機(スーパーミキサー SMV-10:株式会社カワタ製)に投入し、5分間の撹拌を行った後にストランドダイ付2軸押出成形機 TEX30α(株式会社日本製鋼所製)を使用し、押出成形温度を260℃に調製して溶融押出・ペレット化の処理を行った。
ここで、実施例1の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてコア層がシリコーンアクリルゴム及びシェル層がアクリルポリマーで構成され、数平均粒子径が600-700nmの範囲のメタブレン S2100([B-1]:三菱ケミカル株式会社製)、及び、熱軟化材として白色固体のポリカプロラクトンの一種であり、分子量=10,000、融点58-60℃の性状を示すプラクセル H1P([C-1]:ダイセル株式会社製)をそれぞれ用いた。
実施例1の樹脂組成物においては、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、85:10:5となるように調製されており、樹脂組成物における重量比は、本発明の樹脂組成物において規定された範囲内のものである(以下、実施例2-10において同じ)。
溶融押出・ペレット化された樹脂コンパウンドペレットを真空乾燥機に投入し、110℃、2時間以上の乾燥を行った後、型締力980kNの射出成形機(芝浦機械株式会社製)を使用して射出成形温度を280℃に設定し、試験片厚みが4mmのISO規格に準拠する多目的試験片の作成を行った。得られた実施例1の樹脂組成物による多目的試験片を用いて各種性能の評価を行った。
<実施例2,3>
PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比を、80:10:10となるように変更し、その他を上記実施例1と同じ条件として実施例2の多目的試験片の作成を行った。同様に、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比を、75:10:15となるように変更し、その他を上記実施例1と同じ条件として実施例3の多目的試験片の作成を行った。
<実施例4>
耐衝撃改良材を水添スチレン系熱可塑性エラストマーの一種であり、スチレン量30%の性状を示すセプトン 2002([B-2]:株式会社クラレ製)に変更し、その他を上記実施例1と同じ条件として実施例4の多目的試験片の作成を行った。実施例4においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、実施例1と同様に85:10:5である。
<実施例5>
耐衝撃改良材をコア層がアクリルゴム及びシェル層がアクリルポリマーで構成され、数平均粒子径が100-200nmの範囲のメタブレン W600A([B-3]:三菱ケミカル株式会社製)に変更し、その他を上記実施例1と同じ条件として実施例5の多目的試験片の作成を行った。実施例5においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、実施例1と同様に85:10:5である。
<実施例6>
熱軟化材を結晶性共重合ポリエステル樹脂の一種であり、ガラス転移温度=-60℃、融点=107℃の性状を示すバイロン GM-920([C-2]:東洋紡株式会社製)に変更し、その他上記実施例1と略同一の条件として実施例6の多目的試験片の作成を行った。なお、実施例6において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、80:10:10である。
<実施例7>
熱軟化材をポリエステル系熱可塑性エラストマーの一種であり、Vicat軟化点=172℃、結晶融点=200℃の性状を示すペルプレン S1002([C-3]:東洋紡株式会社製)に変更し、その他上記実施例1と略同一の条件として実施例7の多目的試験片の作成を行った。なお、実施例7において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、80:10:10である。
<実施例8-10>
実施例1と同一の三成分([A-1]、[B-1]、[C-1])の使用材料を用い、それぞれの混合比率(重量%)を本発明に規定された範囲内で変化させ、実施例8-10の多目的試験片の作成を行った。すなわち、実施例8において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、85:5:10であり、実施例9においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、75:15:10であり、実施例10においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、60:30:10である。
Figure 0007162942000003
<比較例1>
比較例1の樹脂組成物は、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しないPC系樹脂の一成分のみによって構成されるものであり、下記表3に示すPC樹脂の使用材料を用い、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。比較例1の樹脂組成物による多目的試験片は、PC樹脂としてパンライト L-1250WP([A-1])のみを用いて得たものである。比較例1においてPC樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、100:0:0である。
<比較例2-4>
比較例2-4の樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないPC系樹脂及び耐衝撃改良材の二成分によって構成されるものであり、表3に示す二成分に使用される使用材料を同表3に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例2の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1]:三菱ケミカル株式会社製)を用いて得たものであり、比較例3の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、耐衝撃改良材としてセプトン 2002([B-2])を用いて得たものであり、比較例4の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン W600A([B-3])を用いて得たものである。比較例2-4において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、90:10:0である。
<比較例5-7>
比較例5-7の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないPC系樹脂及び熱軟化材の二成分によって構成されるものであり、表3に示す二成分に使用される使用材料を同表3に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例5の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1])を用いて得たものであり、比較例6の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、熱軟化材としてバイロン GM-920([C-2])を用いて得たものであり、比較例7の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC樹脂のパンライト L-1250WP([A-1])、及び、熱軟化材として、ペルプレン S1002([C-3])を用いて得たものである。比較例5-7において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、90:0:10である。
Figure 0007162942000004
4.PC-ABS樹脂
(多目的試験片の作成)
<実施例11>
下記表4に示す三成分に使用される使用材料を同表4に記載された重量%の配合比率に基づいて秤量し、撹拌機(スーパーミキサー SMV-10:株式会社カワタ製)に投入し、5分間の撹拌を行った後にストランドダイ付2軸押出成形機 TEX30α(株式会社日本製鋼所製)を使用し、押出成形温度を250℃に調製して溶融押出・ペレット化の処理を行った。
ここで、実施例11の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T3750([A-4]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1])、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1])をそれぞれ用いた。
実施例11の樹脂組成物においては、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、87:10:3となるように調製されており、樹脂組成物における重量比は、本発明の樹脂組成物において規定された範囲内のものである(以下、実施例12-19において同じ)。
溶融押出・ペレット化された樹脂コンパウンドペレットを真空乾燥機に投入し、110℃、2時間以上の乾燥を行った後、型締力980kNの射出成形機(芝浦機械株式会社製)を使用して射出成形温度を260℃に設定し、試験片厚みが4mmのISO規格に準拠する多目的試験片の作成を行った。得られた実施例11の樹脂組成物による多目的試験片を用いて各種性能の評価を行った。
<実施例12-14>
PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2]:帝人株式会社製)及び耐衝撃改良材をセプトン 2002([B-2])を使用し、その他熱軟化材等及び重量%等の条件を上記実施例11と同じ条件として実施例12の多目的試験片の作成を行った。同様に、耐衝撃改良材を水添スチレン系熱可塑性エラストマーの一種であり、スチレン量=65%のセプトン 2014([B-4]:株式会社クラレ製)に変更し、その他を上記実施例12と同じ条件として実施例13の多目的試験片の作成、及び、耐衝撃改良材をメタブレン W600A([B-3])に変更し、その他を上記実施例12と同じ条件として実施例14の多目的試験片の作成をおこなった。ここで、実施例12-14の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、いずれも87:10:3である。
<実施例15,16>
熱軟化材をバイロン GM-920([C-2])に変更し、その他を上記実施例12と同じ条件として実施例15の多目的試験片の作成、及び、熱軟化材をペルプレン S1002([C-3])に変更し、その他を上記実施例12と同じ条件として実施例16の多目的試験片の作成を行った。ここで、実施例15,16の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、いずれも87:10:3である。
<実施例17-19>
実施例12と同一の三成分([A-2]、[B-2]、[C-1])の使用材料を用い、それぞれの混合比率(重量%)を本発明に規定された範囲内で変化させ、実施例17-19の多目的試験片の作成をそれぞれ行った。ここで、実施例17の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、82:15:3であり、実施例18の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、67:30:3であり、実施例19の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、85:10:5である。
Figure 0007162942000005
<比較例8>
比較例8の樹脂組成物は、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しないPC系樹脂の一成分のみによって構成されるものであり、下記表5に示すPC樹脂の使用材料を用い、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。比較例8の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])のみを用いて得たものである。比較例8においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、100:0:0である。
<比較例9-11>
比較例9-11の樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないPC系樹脂及び耐衝撃改良材の二成分によって構成されるものであり、表5に示す二成分に使用される使用材料を同表5に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例9の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1])を用いて得たものであり、比較例10の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、耐衝撃改良材としてセプトン 2002([B-2])を用いて得たものであり、比較例11の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン W600A([B-3])を用いて得たものである。比較例9-11において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、90:10:0である。
<比較例12-14>
比較例12-14の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないPC系樹脂及び熱軟化材の二成分によって構成されるものであり、表5に示す二成分に使用される使用材料を同表5に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例12の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1])を用いて得たものであり、比較例13の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、熱軟化材としてバイロン GM-920([C-2])を用いて得たものであり、比較例14の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-ABS樹脂のマルチロン T2711J([A-2])、及び、熱軟化材として、ペルプレン S1002([C-3])を用いて得たものである。比較例12-14において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、97:0:3である。
Figure 0007162942000006
5.PC-PET樹脂
(多目的試験片の作成)
<実施例20>
下記表6に示す三成分に使用される使用材料を同表6に記載された重量%の配合比率に基づいて秤量し、撹拌機(スーパーミキサー SMV-10:株式会社カワタ製)に投入し、5分間の撹拌を行った後にストランドダイ付2軸押出成形機 TEX30α(株式会社日本製鋼所製)を使用し、押出成形温度を250℃に調製して溶融押出・ペレット化の処理を行った。
ここで、実施例20の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてセプトン 2002([B-2])、及び、熱軟化材としてバイロン GM-920([C-2])をそれぞれ用いた。
実施例20の樹脂組成物においては、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、85:10:5となるように調製されており、樹脂組成物における重量比は、本発明の樹脂組成物において規定された範囲内のものである(以下、実施例21-27において同じ)。
溶融押出・ペレット化された樹脂コンパウンドペレットを真空乾燥機に投入し、110℃、2時間以上の乾燥を行った後、型締力980kNの射出成形機(芝浦機械株式会社製)を使用して射出成形温度を260℃に設定し、試験片厚みが4mmのISO規格に準拠する多目的試験片の作成を行った。得られた実施例20の樹脂組成物による多目的試験片を用いて各種性能の評価を行った。
<実施例21,22>
耐衝撃改良材をメタブレン S2100([B-1])に変更し、その他を上記実施例20と同じ条件として実施例21の多目的試験片の作成を行った。同様に、耐衝撃改良材をメタブレン W600A([B-3])及び熱軟化材をプラクセル H1P([C-1])に変更し、その他を上記実施例20と同じ条件として実施例22の多目的試験片の作成を行った。ここで、実施例21,22の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、いずれも85:10:5である。
<実施例23,24>
熱軟化材をペルプレン S1002([C-3])に変更し、その他を上記実施例21と同じ条件として実施例23の多目的試験片の作成を行い、熱軟化材をプラクセル H1P([C-1])に変更し、その他を上記実施例21と同じ条件として実施例24の多目的試験片の作成を行った。ここで、実施例23,24の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、いずれも85:10:5である。
<実施例25-27>
実施例23と同一の三成分([A-3]、[B-1]、[C-3])の使用材料を用い、それぞれの混合比率(重量%)を本発明に規定された範囲内で変化させ、実施例25-27の多目的試験片の作成をそれぞれ行った。ここで、実施例25の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、80:15:5であり、実施例26の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、65:30:5であり、実施例27の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、80:10:10である。
Figure 0007162942000007
<比較例15>
比較例15の樹脂組成物は、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しないPC系樹脂の一成分のみによって構成されるものであり、下記表7に示すPC系樹脂の使用材料を用い、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。比較例15の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])のみを用いて得たものである。比較例15においてPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、100:0:0である。
<比較例16-18>
比較例16-18の樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないPC系樹脂及び耐衝撃改良材の二成分によって構成されるものであり、表7に示す二成分に使用される使用材料を同表7に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例16の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1])を用いて得たものであり、比較例17の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、耐衝撃改良材としてセプトン 2002([B-2])を用いて得たものであり、比較例18の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、耐衝撃改良材としてメタブレン W600A([B-3])を用いて得たものである。比較例16-18において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、90:10:0である。
<比較例19-21>
比較例19-21の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないPC系樹脂及び熱軟化材の二成分によって構成されるものであり、表7に示す二成分に使用される使用材料を同表7に記載された重量比に基づいて秤量し、上記実施例と同様に撹拌及び押出成形による樹脂コンパウンドペレットの形成、及び射出成形により多目的試験片を形成したものである。
ここで、比較例19の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、熱軟化材としてバイロン GM-920([C-2])を用いて得たものであり、比較例20の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、熱軟化材として、ペルプレン S1002([C-3])を用いて得たものであり、比較例21の樹脂組成物による多目的試験片は、PC系樹脂としてPC-PET樹脂のパンライト AM9730Z([A-3])、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1])を用いて得たものである。比較例19-21において、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、95:0:5である。
<比較例22,23>
実施例23と同一の三成分([A-3]、[B-1]、[C-3])の使用材料を用い、それぞれの混合比率(重量%)を本発明に規定された範囲から逸脱するように変化させ、比較例22,23の多目的試験片の作成をそれぞれ行った。ここで、比較例22の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、55:40:5であり、比較例23の樹脂組成物におけるPC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、60:10:30である。
Figure 0007162942000008
上記により得られた多目的試験片は、射出成形後の形状が4mm厚の平板状の試験片5(図3参照)を基本とし、長さL:80±2mm、b:4.0±0.2mm、高さh:10.0±0.2mmとなるように設定されている。なお、シャルピー衝撃試験強度の試験片6については、図4に示すようなノッチ7を中央部に設けた長さL:80±2mm、b:4.0±0.2mm、高さh:10.0±0.2mm、残り高さhn:8.0±0.2mmに設定されている。
なお、反りの評価については、小型フィラメント製造機(株式会社エーペックスジャパン製)を使用し、成形温度240℃-260℃に設定し、直径1.75mmのフィラメントを作製し、このフィラメントを使用して3Dプリンタ(Raise 3D Pro2:Raise 3D製)によって、図5に示す引張試験片8を水平方向(XY方向)に造形体として出力した。引張試験片8は、長さL:170mm、幅b:4.0±0.2mm、高さh:20mm、第一長さL1:114mm、第二長さL2:80mm、第一高さh1:10±0.2mmに設定されている。
(シャルピー衝撃試験強度)
射出成形されたシャルピー衝撃試験強度の測定用の試験片6をISO 179に規定された試験規格に準拠した測定が可能なシャルピー衝撃試験強度試験機(島津製作所株式会社製)にセットし、ノッチ付シャルピー衝撃試験強度の測定を行った。その結果を下記の表8及び表9に示す。
(荷重たわみ温度)
射出成形された荷重たわみ温度の測定用の試験片5をISO 75に規定する試験規格に準拠した測定が可能な荷重たわみ温度試験機(HDT試験機3M-2:株式会社東洋精機製作所製)にセットし、規定の試験荷重(1.80MPa)を加えながら一定の速度で試験片5を昇温させ、規定のたわみ量に到達したときの温度を測定した。その結果を下記の表8及び表9に示す。
(造形体の反りの評価)
上述の3Dプリンタを用い、図5に示す形状の引張試験片8を造形体として出力した。かかる造形時の引張試験片8に生じる反りを目視にて下記の4段階で評価した。
○(4点):反り無く引張試験片(4mm厚さ)の造形が可能。
△(3点):引張試験片の厚みが3mm~4mm未満で造形体に反りが発生。ノズルヘッドの接触により、3Dプリンタの稼働が停止。
×(2点):引張試験片の厚みが2mm前後で造形体に反りが発生。ノズルヘッドの接触により、3Dプリンタの稼働が停止。
××(1点):引張試験片の厚みが2mm未満で造形体に反りが発生。ノズルヘッドの接触により、3Dプリンタの稼働が停止。
その結果を下記の表8及び表9に示す。
Figure 0007162942000009
Figure 0007162942000010
(樹脂組成物の評価結果(PC樹脂))
上記表8及び表9に示すように、実施例1-10のPC系樹脂としてPC樹脂を含有する樹脂組成物は、シャルピー衝撃試験強度及び荷重たわみ温度の測定結果から高い耐衝撃性及び良好な耐熱性を示すことが確認された。加えて、3Dプリンタを用いた造形体の出力時においても反りの発生が確認されず、良好な造形体の出力が可能であった。そのため、本発明において規定されたPC樹脂等の三成分を含有する樹脂組成物を3Dプリンタ用のフィラメントとして好適に使用できることが示された。
これに対し、本発明の樹脂組成物において規定した範囲を逸脱するPC系樹脂としてPC樹脂を含有する比較例1-7において、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しない比較例1は、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例1の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
一方、比較例2-4の樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないものであり、比較例1の樹脂組成物と同様、シャルピー強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例2-4の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
更に、比較例5-7の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないものであり、比較例2-4と対比して3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体に反りが発生することがなく、良好な3Dプリンタの出力性能を有することが示された。しかしながら、実施例1-10と対比して衝撃強度が著しく低下することが示された。したがって、比較例5-7の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
(樹脂組成物の評価結果(PC-ABS樹脂))
上記表8及び表9に示すように、実施例11-19のPC系樹脂としてPC-ABS樹脂を含有する樹脂組成物は、シャルピー衝撃試験強度及び荷重たわみ温度の測定結果から高い耐衝撃性及び良好な耐熱性を示すことが確認された。加えて、3Dプリンタを用いた造形体の出力時においても反りの発生が確認されず、良好な造形体の出力が可能であった。そのため、本発明において規定されたPC樹脂等の三成分を含有する樹脂組成物を3Dプリンタ用のフィラメントとして好適に使用できることが示された。
これに対し、本発明の樹脂組成物において規定した範囲を逸脱するPC系樹脂としてPC-ABS樹脂を含有する比較例8-14において、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しない比較例8は、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例8の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
一方、比較例9-11の樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないものであり、比較例8の樹脂組成物と同様、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例9-11の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
更に、比較例12-14の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないものであり、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認されるとともに、実施例11-19と対比して、シャルピー衝撃試験強度が著しく低くなることが確認された。したがって、比較例12-14の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
(樹脂組成物の評価結果(PC-PET樹脂))
上記表8及び表9に示すように、実施例20-27のPC系樹脂としてPC-PET樹脂を含有する樹脂組成物は、シャルピー衝撃試験強度及び荷重たわみ温度の測定結果から高い耐衝撃性及び良好な耐熱性を示すことが確認された。加えて、3Dプリンタを用いた造形体の出力時においても反りの発生が確認されず、良好な造形体の出力が可能であった。そのため、本発明において規定されたPC樹脂等の三成分を含有する樹脂組成物を3Dプリンタ用のフィラメントとして好適に使用できることが示された。
これに対し、本発明の樹脂組成物において規定した範囲を逸脱するPC系樹脂としてPC-PET樹脂を含有する比較例15-23において、耐衝撃改良材及び熱軟化材を含有しない比較例15は、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例15の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
一方、比較例16-18樹脂組成物は、熱軟化材を含有しないものであり、比較例15の樹脂組成物と同様、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性に優れた特性を有する一方で、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、造形体の厚みが2mm程度で反りが発生し、3Dプリンタの稼働が停止するトラブルの発生が確認された。したがって、比較例16-18の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
更に、比較例19-21の樹脂組成物は、耐衝撃改良材を含有しないものであり、3Dプリンタを用いた造形体の出力時において、反りもなく良好な3Dプリント性能が示されるものの、シャルピー衝撃試験強度が著しく低くなることが確認された。したがって、比較例19-21の樹脂組成物は、3Dプリンタ用のフィラメントとしての使用に適さないことが確認された。
また、比較例22の樹脂組成物は、三成分の重量比において耐衝撃改良材の比率が高くなることにより、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性が低下することが示され、比較例23の樹脂組成物は、三成分の重量比において熱軟化材の比率が高くなることにより、シャルピー衝撃試験強度及び耐熱性が低下することが示された。
以上示したように、本発明の樹脂組成物は、PC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の三成分を含有し、これらの三成分が所定の比率でバランスよく配合され調製されることにより、耐衝撃性や耐熱性に優れ、かつ、3Dプリンタ用のフィラメントとして使用した場合であっても造形時の収縮応力の発生を抑え、高い寸法精度の造形体の出力が可能となる。
6.レーザーマーキング用の積層造形用樹脂組成物
本発明の別例構成となる第二実施形態のレーザーマーキング用積層造形用樹脂組成物は、既に上記において説明した樹脂組成物にレーザーマーキング剤を更に含有して構成されるものであり、熱溶解積層方式の3Dプリンタ(三次元プリンタ、図1及び図2参照)用のフィラメントとして使用可能なものである。
樹脂組成物を構成するポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂)、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の詳細については既に説明したものと同一であり、ここでは説明を省略する(表1等参照)。
一方、レーザーマーキング剤は、導電性カーボンブラック、グラファイト(黒鉛)、及びメソポーラスカーボンブラックを含むカーボンブラック類、及び、窒化チタン、炭化珪素、及び硼化ランタンであり、これらを少なくとも一種類が上記樹脂組成物に対して添加されるものである。
ここで、レーザーマーキング剤の添加量は、三成分からなる樹脂組成物100重量部に対して、0.0001~1.0重量部の範囲、より好ましくは0.0010~0.20重量部の範囲である。レーザーマーキング剤の添加量が0.0001重量部未満の場合、レーザーマーキングによる発色性が乏しく、マーキング箇所を十分に視認することができない。一方、添加量が1.0重量部を超える場合、レーザー光を照射した際に発泡が生じやすくなり、造形体の外観形状や美感性を損なうおそれがある。そのため、レーザーマーキング剤の添加量を上記範囲内とする必要がある。
以下、レーザーマーキング剤を含む第二実施形態の樹脂組成物を下記の実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えることができる。
始めに本実施例及び比較例において使用するレーザーマーキング剤をまとめたものを下記表10に示す。
Figure 0007162942000011
(レーザーマーキング評価用フィラメントの作成)
<実施例28>
下記表11に示すPC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の三成分に使用される使用材料、及びレーザーマーキング剤を同表11に記載された重量%及び重量部の配合比率に基づいて秤量し、攪拌機(スーパーミキサー SMV-10:株式会社カワタ製)に投入し、5分間の撹拌を行った後にストランドダイ付2軸押出成形機 TEX30α(株式会社日本製鋼所製)を使用し、押出成形速度を260℃に調整して溶融押出・ペレット化の処理を行った。
Figure 0007162942000012
Figure 0007162942000013
ここで、実施例28のレーザーマーキング評価用の樹脂コンパウンドペレットは、PC系樹脂としてパンライト L-1250WP([A-1]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1]:三菱ケミカル株式会社製)、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1]:ダイセル株式会社製)をそれぞれ用いた。
実施例28の樹脂コンパウンドペレットは、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比は、85:10:5となるように調製されており、本発明の樹脂組成物において規定された範囲内のものであり、かかる三成分及び重量比は既に説明した実施例1と同一のものである。更に、これらの三成分及び重量比については、以下に説明する実施例29-34において同一である。
上記構成に加え、実施例28にはレーザーマーキング剤として導電性カーボンブラック #3050B([D-2]:三菱ケミカル株式会社製)を用いている。ここで、レーザーマーキング剤として使用される導電性カーボンブラック #3050Bは、上記の三成分の合計重量100重量部に対して0.002重量部(0.002phr)が添加されている。
<実施例29-30,32-34,参考例1>
実施例28のPC樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の使用材料及び重量%を同一([A-1]:[B-1]:[C-1]=85:10:5)とし、実施例29において使用するレーザーマーキング剤として、グラファイト UTC-48J([D-3]:日本黒鉛工業株式会社製)、実施例30において使用するレーザーマーキング剤として、メソポーラスカーボンブラックであるクノーベル(登録商標)MH-00([D-4]:東洋炭素株式会社製)、参考例1において使用するレーザーマーキング剤として、カーボンブラック #10([D-1]:三菱ケミカル株式会社製)、実施例32において使用するレーザーマーキング剤として、窒化チタン(TiN)であるチタンブラック UF-8([D-5]:三菱マテリアル電子化成株式会社製)、実施例33において使用するレーザーマーキング剤として、炭化珪素(SiC)([D-6]:太平洋ランダム株式会社製)、実施例34において使用するレーザーマーキング剤として、硼化ランタン(LaB6-O)([D-7]:日本新金属株式会社製)をそれぞれ用いている。なお、実施例29~34において、それぞれ使用されるレーザーマーキング剤は、三成分の合計重量100重量部に対して0.002重量部(0.002phr)が添加されている。
<実施例35,36>
一方、実施例35のレーザーマーキング評価用の樹脂コンパウンドペレットは、PC系樹脂としてマルチロン T3750([A-4]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1]:三菱ケミカル株式会社製)、及び、熱軟化材としてプラクセル H1P([C-1]:ダイセル株式会社製)をそれぞれ用い、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比が87:10:3になるように調製したものであり、実施例36のレーザーマーキング評価用の樹脂コンパウンドペレットは、PC系樹脂としてパンライト AM9730Z([A-3]:帝人株式会社製)、耐衝撃改良材としてメタブレン S2100([B-1]:三菱ケミカル株式会社製)、及び、熱軟化材としてベルプレン S1002([C-3]:東洋紡株式会社製)をそれぞれ用い、PC系樹脂:耐衝撃改良材:熱軟化材の重量比が85:10:5になるように調製したものである(表11参照)。
<比較例24-27>
一方、比較例24は、実施例35のPC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化剤の使用材料及び重量%を同一とし、レーザーマーキング剤が不使用のものである。更に、比較例25は、実施例35及び比較例24と三成分の使用材料及び重量%を同一とし、レーザーマーキング剤として、インジウムドープ酸化スズ(ITO)([E-1]:三菱マテリアル電子化成株式会社製)を三成分の合計重量100重量部に対して0.002重量部(0.002phr)が添加されたものであり、比較例26は、実施例36のPC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化剤の使用材料及び重量%を同一とし、レーザーマーキング剤が不使用のものである。更に、比較例27は、実施例36及び比較例26と三成分の使用材料及び重量%を同一とし、レーザーマーキング剤として、インジウムドープ酸化スズ(ITO)([E-1]:三菱マテリアル電子化成株式会社製)を三成分の合計重量100重量部に対して0.002重量部(0.002phr)が添加されている(表12参照)。
(フィラメントの形成、及びレーザーマーキング評価用の造形体の形成)
溶融押出・ペレット化された実施例28-30,32-36比較例24-27、及び参考例1のレーザーマーキング評価用の樹脂コンパウンドペレットをフィラメント溶融押出成形機 AS-1(株式会社エーペックスジャパン製)に投入し、押出成形温度を250℃に調整して直径1.75mmのレーザーマーキング評価用フィラメントを得た。得られたレーザーマーキング評価用フィラメントを使用して3Dプリンタ(Raise 3D Pro2:Raise 3D Technologies製)によって、水平方向に40mm×40mm×2mmの平板状の造形体を得た。
(造形体に対するレーザーマーキング)
得られた平板状の実施例28-30,32-36比較例24-27、及び参考例1の造形体に、レーザーマーキング装置(Fiber-Laser Maker IDL-20:株式会社IDレーザー製)を使用して、下記のマーキング条件により、10mm×10mmの塗りつぶし描画を造形体の表面に施し、発色部を形成した。
<レーザーマーキングの条件>
Emission Wavelength: 1064nm
Output Power(Nominal): 20W
Laser光照射パワー: 80%
スキャンスピード: 4000mm/s
ここで、3Dプリントにより得られた造形体表面の平滑性を得るために、当該造形体表面を研磨した後、上記のレーザーマーキングを行った。
(レーザーマーキングの評価 発色性)
レーザーマーキング装置によってレーザーマーキングされた発色部の発色性を目視にて下記の4段階で評価した。
◎:発色性に優れる。
○:発色性が良好である。
△:発色性が不十分である。
×:発色性に劣る。
その結果を上記表11及び表12に示す。
(レーザーマーキングの評価 発色部のふくれ)
レーザーマーキング装置によってレーザーマーキングされた発色部のふくれを目視にて下記の4段階で評価した。
◎:発色部のふくれ無し。
○:発色部にわずかなふくれが認められるが、実用上の問題はなし。
△:発色部に中程度のふくれが認められ、実用に不適である。
×:発色部に大きなふくれが認められる。
その結果を上記表11及び表12に示す。
(第二実施形態の樹脂組成物の評価結果)
上記表11に示すように、実施例28-30,32-36、及び参考例1の樹脂組成物は、発色性の評価がいずれも「◎」若しくは「○」であり、優れた発色性を示すことが確認された。更に、発色部におけるふくれについても、いずれも「◎」であり、良好な結果を示すことが確認された。そのため、本発明において規定されたPC樹脂等の三成分及び当該三成分に対して規定の重量部で添加されたレーザーマーキング剤を含む第二実施形態の樹脂組成物は、3Dプリンタのフィラメントとして好適に使用でき、かつ十分なレーザーマーキング性を発揮することが示された。
これに対し、上記表12に示すように、本発明の樹脂組成物において規定した範囲を逸脱する比較例24-27において、比較例24,26は、レーザーマーキング剤を添加しないことにより、発色部における良好な発色性が当然認められるものではなく、本発明に規定されたレーザーマーキング剤と異なるレーザーマーキング剤を用いて比較例25,27は、発色性及び発色部のふくれのいずれにおいても実用的な点で問題が生じることが確認された。
以上、示したように、第二実施形態の樹脂組成物は、PC系樹脂、耐衝撃改良材、及び熱軟化材の三成分を含有し、これらの三成分が所定の比率でバランスよく配合され調製されるとともに、これらの三成分の合計質量を100重量部とした場合に規定量のレーザーマーキング剤を添加することにより、上述した樹脂組成物の特性に加え、発色性に優れたレーザーマーキングを行うことができ、かつ発色部にふくれ等が生じることのない良好なものとすることができる。
本発明の樹脂組成物は、特に透明性を有する造形体を出力するための3Dプリンタ用のフィラメントを構成するものとして、好適に使用することができる。更に、第二実施形態の樹脂組成物は、レーザーマーキングが可能な造形体を出力するための3Dプリンタ用のフィラメントを構成するものとして、好適に使用することができる。
1:造形体、2:樹脂組成物(積層造形用樹脂組成物)、2a:流動状態の樹脂組成物、3:フィラメント、4:樹脂層、5,6:試験片(多目的試験片)、7:ノッチ、8:引張試験片、100:3Dプリンタ、101:吐出ノズル、102:送出機構、103:ビルドプレート、b:、h:高さ、hn:残り高さ、h1:第一高さ、L:長さ、L1:第一長さ、L2:第二長さ。

Claims (6)

  1. ポリカーボネート系樹脂と、耐衝撃改良材と、熱軟化材とを含有し、熱溶解積層方式の三次元プリンタのフィラメントとして使用可能な積層造形用樹脂組成物であって、
    前記ポリカーボネート系樹脂は、
    ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、及びポリカーボネート樹脂-ポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくともいずれか一種を有し、
    前記耐衝撃改良材は、
    スチレン系熱可塑性エラストマー及びコア-シェル型耐衝撃改良材の少なくともいずれか一種を有し、
    前記熱軟化材は、
    結晶性共重合ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン、及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくともいずれか一種を有し、
    前記ポリカーボネート系樹脂、前記耐衝撃改良材、及び前記熱軟化材の合計質量を100とした場合の前記合計質量に占める前記ポリカーボネート系樹脂の比率が50重量%~93重量%の範囲であり、
    前記合計質量に占める前記耐衝撃改良材の比率が5重量%~30重量%の範囲であり、
    前記合計質量に占める前記熱軟化材の比率が2重量%~20重量%の範囲であり、
    前記積層造形用樹脂組成物から作製されたフィラメントを使用して、長さ170mm、4.0±0.2mm、高さ20mm、第二長さ80mm、第一高さ10±0.2mmの引張試験片を造形体として3Dプリンタによって出力した際の造形時の前記引張試験片に反りが生じることなく4mmの厚さで造形が可能な積層造形用樹脂組成物。
  2. 前記合計質量に占める前記ポリカーボネート系樹脂の比率が75重量%~93重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記耐衝撃改良材の比率が5重量%~15重量%の範囲であり、前記合計質量に占める前記熱軟化材の比率が2重量%~10重量%の範囲である請求項1に記載の積層造形用樹脂組成物。
  3. 前記ポリカーボネート系樹脂は、
    前記ポリカーボネート樹脂を含み、
    ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、
    51kJ/m~73kJ/mの範囲であり、
    ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、
    88℃~110℃の範囲である請求項1または2に記載の積層造形用樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート系樹脂は、
    前記ポリカーボネート樹脂-アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂を含み、
    ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、
    52kJ/m~74kJ/mの範囲であり、
    ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、
    90℃~95℃の範囲である請求項1または2に記載の積層造形用樹脂組成物。
  5. 前記ポリカーボネート系樹脂は、
    前記ポリカーボネート樹脂-ポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、
    ISO 179に規定するシャルピー衝撃試験に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物のシャルピー衝撃試験強度は、
    42J/m~56kJ/mの範囲であり、
    ISO 75に規定する負荷たわみ温度の測定方法に準拠して測定された前記積層造形用樹脂組成物の1.8MPa荷重時における荷重たわみ温度は、
    87℃~93℃の範囲である請求項1または2に記載の積層造形用樹脂組成物。
  6. レーザーマーキング剤を更に具備し、
    前記レーザーマーキング剤は、
    導電性カーボンブラック、グラファイト、及びメソポーラスカーボンを含むカーボンブラック類、窒化チタン、炭化珪素、及び硼化ランタンの少なくともいずれか一種類が使用され、
    前記積層造形用樹脂組成物100重量部に対し、前記レーザーマーキング剤を0.0001~1.0重量部の範囲で含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の積層造形用樹脂組成物。
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