(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した吸音構造の第1実施形態を図1~図6に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の吸音構造は、建物等を構成する壁50と、壁50に対向して配置された樹脂構造体10とによって構成されている。樹脂構造体10は、固定部材51を介して壁50に固定されている。樹脂構造体10は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状に形成されている。すなわち、樹脂構造体10は、請求項で規定する、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状の構造体に相当する。また、壁50は、請求項で規定する被覆体に相当する。
樹脂構造体10を構成する合成樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等を採用することができる。
図2及び図3に示すように、本実施形態の樹脂構造体10は、正方形状の中空板材として形成され、3行3列の計9つが中空板材の厚み方向と直交する方向に並設されている。各樹脂構造体10は、隣接する樹脂構造体10に対して所定の距離(隙間D1)だけ離間している。
図1及び図3に示すように、各樹脂構造体10は、第1面10aまたは第2面10bを構成する一対の閉塞壁11を有している。以下では、図1に示す樹脂構造体10において壁50に対向する側の面を第1面10a、壁50と反対側の面を第2面10bと言うものとし、一対の閉塞壁11のうち、樹脂構造体10の第1面10aを構成する閉塞壁を第1閉塞壁11a、第2面10bを構成する閉塞壁を第2閉塞壁11bと言うものとする。
図1に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通させる複数の貫通孔15が形成されている。
図1及び図3に示すように、樹脂構造体10は、貫通孔15が形成されている第1閉塞壁11a側を壁50に向けて配置されている。図2に示すように、樹脂構造体10を壁50に固定する固定部材51は、正方形状の樹脂構造体10の四隅の位置に合わせて複数設けられている。固定部材51は、樹脂構造体10の各隅の形状に沿って直角に屈曲した形状とされている。
図1に示すように、固定部材51の一方の端縁は、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに固定され、他方の端縁は、壁50に固定されている。これにより、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと、壁50との間には、固定部材51の高さ分だけ隙間が形成されている。図3に示すように、固定部材51の高さ、すなわち、樹脂構造体10と壁50との間の隙間D2は、0mmより大きく80mmより小さく設定されていることが好ましく、0mmより大きく25mmより小さく設定されていることがより好ましく、1mmより大きく10mmより小さく設定されていることがさらに好ましい。
固定部材51と壁50との固定方法は特に限定されない。例えば、ビス止め、鋲止め、接着剤等適宜の方法で固定することができる。また、固定部材51と樹脂構造体10との固定方法も特に限定されない。例えば、固定部材51に設けられた係合部と樹脂構造体10に設けられた被係合部との係合によって固定することができる。
次に、本実施形態の吸音構造を構成する樹脂構造体10について説明する。
図4(a)に示すように、樹脂構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層30、40とで構成されている。図4(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。なお、図4及び図5についての説明では、図4及び図5に示される樹脂構造体10の上下方向で上下を言うものとする。
図4(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図4(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、図4(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。また、図4(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。
図4(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第1セルS1が六角形の1辺を共有している。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第2セルS2が六角形の1辺を共有している。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
図4(a)~(c)に示すように、上記のように構成されたコア層20の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層30が接合されている。また、コア層20の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層40が接合されている。この実施形態では、コア層20における側壁部23の上部が、コア層20の上壁部21及びスキン層30で閉塞されている。これら上壁部21及びスキン層30が樹脂構造体10の第1面10aの第1閉塞壁11aを形成している。換言すれば、側壁部23の上部は第1閉塞壁11aによって閉塞されている。同様に、コア層20における側壁部23の下部が、コア層20の下壁部22及びスキン層40で閉塞されている。これら下壁部22及びスキン層40が樹脂構造体10の第2面10bの第2閉塞壁11bを形成している。換言すれば、側壁部23の下部は第2閉塞壁11bによって閉塞されている。このように、第1閉塞壁11a及び第2閉塞壁11bによって、樹脂構造体10の一対の閉塞壁11が構成されている。なお、図4(b)及び(c)では、図示されている3つのセルSのうち、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
セルSの内部空間の容積Vは、0.2cm3~3.5cm3であることが好ましく、0.5cm3~2.5cm3であることがより好ましく、1.0cm3~2.5cm3であることがさらに好ましい。
図4(a)~(c)に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通させる貫通孔15が設けられている。具体的には、図4(b)に示すように、第1セルS1において貫通孔15は、上面側のスキン層30及び2層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。また、図4(c)に示すように、第2セルS2において貫通孔15は、上面側のスキン層30及び1層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。
図4(a)に示すように、貫通孔15は、上面視円形状に形成されており、各セルSの上部中央部分に1箇所ずつ貫設されている。図4(b)及び(c)に示すように、貫通孔15は、第1閉塞壁11a(スキン層30及び上壁部21)が切り欠かれることによってセルS内方に曲げられて形成されており、貫通孔15が形成されていない部分における第1閉塞壁11aの上面に対して窪むような形状をなしている。貫通孔15が形成された部分では、第1閉塞壁11aの先端縁は、セルSの内部空間に位置している。
図4(b)及び(c)に示すように、貫通孔15の開口径D3は、セルSを上面視した場合の六角形の一辺の長さ以下に設定されている。具体的には、貫通孔15の開口径D3は、隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1に設定されている。貫通孔15の開口径D3は、0.3mm~2.0mmであることが好ましく、0.4mm~1.5mmであることがより好ましく、0.5mm~1.2mmであることがさらに好ましい。貫通孔15の開口径D3を0.3mm~2.0mmとすることにより、吸音構造の吸音率を効果的に高めることができる。本実施形態では、貫通孔15の開口径D3は約1.0mmに設定されている。
貫通孔15では、第1閉塞壁11aの先端縁がセルSの内部空間に位置しており、貫通孔15は、第1閉塞壁11aに形成された円形状の開口部からセルSの内部空間に延びる略円筒形状に形成されている。
次に、吸音構造の製造方法について説明する。
まず、樹脂構造体10の製造方法について図5に従って説明する。
図5(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
図5(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、図5(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。なお、この実施形態では、第1シート材100を折り畳むために圧縮する方向が、セルSが並設される方向(X方向)である。
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、図5(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。また、第1セルS1では、一対の重ね合わせ部131によってその上部が区画され、第2セルS2では、一対の重ね合わせ部131によってその下部が区画されている。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
このようにして得られたコア層20の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層20の上面に接合された第2シート材はスキン層30となり、コア層20の上壁部21と共に側壁部23の上部を閉塞する第1閉塞壁11aを構成する。コア層20の下面に接合された第2シート材は、スキン層40となり、コア層20の下壁部22と共に側壁部23の下部を閉塞する第2閉塞壁11bを構成する。
なお、第2シート材(スキン層30、40)をコア層20に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部21(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部22(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。
上記工程により、X方向に第1セルS1又は第2セルS2がそれぞれ列を成すように多数並設され、Y方向に第1セルS1及び第2セルS2が交互に多数並設された樹脂構造体10が得られる。
続いて、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに多数の貫通孔15を形成する。貫通孔15は、ドリル、針、パンチ等の貫通部材60で樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを貫通させることにより形成される。図5(d)に示すように、貫通部材60は、隣り合うセルSの中心同士の間隔P1と略同一の間隔で複数配列された構成となっている。各貫通部材60は、断面円形状の先鋭状に形成されている。複数の貫通部材60の下方側に樹脂構造体10を配置して固定し、貫通部材60を下降移動させると、貫通部材60が第1閉塞壁11aを貫通し、第1閉塞壁11aが切り欠かれてセルS内方に曲げられる。このようにして、第1閉塞壁11aには、各セルSの略中央部分に、円形状の開口部を有する略円筒形状の貫通孔15が各1箇所ずつ形成される。以上の工程を経て、複数の貫通孔15が形成された樹脂構造体10が製造される。
次に、樹脂構造体10を壁50に取り付ける工程について説明する。
壁50には、あらかじめ固定部材51が取り付けられている。例えば、固定部材51には、樹脂構造体10に係合する係合部が設けられており、樹脂構造体10には、係合部と係合する被係合部が設けられている。樹脂構造体10に設けられた被係合部を、固定部材51に設けられた係合部に位置合わせして係合させることにより、壁50に固定部材51を介して樹脂構造体10を取り付けることができる。
以上の工程を経て、図1に示すような吸音構造が得られる。
次に、上記実施形態の吸音構造の作用について説明する。
吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された壁50とによって構成されている。樹脂構造体10は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状に形成されており、セルSを閉塞する第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通する貫通孔15が貫設されている。また、壁50は、樹脂構造体10において貫通孔15が形成されている第1閉塞壁11a側に配置されており、壁50と第1閉塞壁11aとの間には隙間D2が形成されている。
図6に示すように、本実施形態の吸音構造は、室内の壁50や天井等とともに構成される。吸音構造は、例えば、室内にスピーカー等の音源200が配置され、樹脂構造体10における貫通孔15が形成された第1閉塞壁11aが壁50や天井側を向いて配置されることによって構成される。すなわち、貫通孔15が形成された第1閉塞壁11aが音源200と反対側を向いているとともに、第1閉塞壁11aは隙間D2を介して壁50と対向している。なお、図6では、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに貫通孔15が形成されている様子を模式的に示している。
音源200から伝達された空気の振動は、樹脂構造体10に伝達される。樹脂構造体10には固定部材51を介して壁50に固定されており、樹脂構造体10と壁50との間には隙間D2が形成されている。そのため、音源200から伝達された空気の振動は、樹脂構造体10を振動させる。樹脂構造体10の板振動によって、音源200からの音のエネルギーが熱エネルギー等に変換されて減衰する。
また、音源200から伝達された空気の振動は、樹脂構造体10から壁50と樹脂構造体10の間の隙間D2に存在する空気層に伝達され、隙間D2に存在する空気層を介して貫通孔15内の空気層に伝達される。貫通孔15の開口径D3は、隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1に設定されている。そのため、樹脂構造体10では、貫通孔15内の空気層を錘とし、セルS内の空気層をばねとするヘルムホルツ共鳴器が構成される。このヘルムホルツ共鳴器により、錘(貫通孔15内の空気層)の共鳴周波数と同一の周波数の音波が貫通孔15を通じてセルS内に入射した場合には、音波が貫通孔15の壁面との摩擦により吸収されて減衰する。
さらに、壁50と第1閉塞壁11aとの間の隙間D2に存在する空気層は、樹脂構造体10の板振動によって振動し、板振動で圧縮された空気の振動が貫通孔15内の空気層に伝達される。板振動とヘルムホルツ共鳴器との相乗効果によって音波が吸収されて減衰する。
このように、上記実施形態の吸音構造では、樹脂構造体10の板振動、樹脂構造体10に形成されたセルSと貫通孔15により構成されるヘルムホルツ共鳴器、及び第1閉塞壁11aと壁50との間の隙間D2における空気の振動とヘルムホルツ共鳴器との相乗的な作用により、音源200からの音が吸収されることになる。板振動、ヘルムホルツ共鳴器、及び板振動とヘルムホルツ共鳴器との相乗効果により、所定周波数領域での音波が効率的に吸収される。
ここで、一般的な音響設計に用いられる吸音構造は、グラスウール等の多孔質材型、ヘルムホルツ共鳴器のような共鳴器型、板材を振動させる板振動型の3つに大別される。多孔質材型は、高音周波数領域での吸音に効果的である一方、低音周波数領域で効果的に吸音するためにはその厚みを大きくする必要がある。この点、板振動型では、低音周波数領域で効果的に吸音することができ、共鳴器型では、中音周波数領域から低音周波数領域で効果的に吸音することができる。しかし、板振動型であっても、一般的な板材では減衰が小さく、低音周波数領域での吸音率をあまり向上させることができない場合がある。この場合に、板材の背後に多孔質材を挿入して減衰を大きくして吸音率を向上させることが考えられる。
本実施形態の吸音構造では、樹脂構造体10の板振動、樹脂構造体10のヘルムホルツ共鳴器の機能により、低音周波数領域での吸音性能を向上させることができる。これは、樹脂構造体10を壁50と近接して配置し、樹脂構造体10と壁50との間に隙間D2が形成されているためである。
本実施形態の吸音構造では、樹脂構造体10のセルSは、容積Vが0.2cm3~3.5cm3であり、樹脂構造体10の貫通孔15は、開口径D3が0.3mm~2.0mmである。また、壁50と第1閉塞壁11aとの間の隙間D2が0mmより大きく80mmより小さい。こうした数値範囲を充足することにより、樹脂構造体10や壁50の板振動、ヘルムホルツ共鳴器、及び板振動とヘルムホルツ共鳴器の相乗効果による高い吸音性能が得られ、500Hz以下の低音周波数領域での吸音率が向上する。特に、低音周波数領域の中でも250Hz近傍の狭帯域周波数での吸音性能を発揮することができ、こうした狭帯域周波数で吸音率のピークが得られる。
また、樹脂構造体10のセルSの容積Vが1.0cm3~2.5cm3であり、樹脂構造体10の貫通孔15の開口径D3が0.5mm~1.2mmであり、壁50と第1閉塞壁11aとの間の隙間D2が1mmより大きく10mmより小さく設定されていると、250Hz近傍や125Hz近傍での吸音性能をより向上させることができ、250Hzにおける吸音率が0.6以上になる。
次に、上記実施形態の吸音構造の効果について説明する。
(1)上記実施形態の吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された壁50とによって構成されており、樹脂構造体10と壁50との間には隙間D2が形成されている。そのため、音源200側に樹脂構造体10が位置するように直立状態で配置すると、音源200から伝達された空気の振動は、樹脂構造体10に伝達され、樹脂構造体10を振動させる。また、隙間D2を介して樹脂構造体10に接合された壁50を振動させる。樹脂構造体10や壁50の板振動によって音源200からの音のエネルギーは熱エネルギー等に変換されて減衰する。したがって、優れた吸音効果を得ることができる。
(2)樹脂構造体10や壁50の板振動により吸音効果が得られるため、板振動型の吸音構造として機能することができる。低音周波数領域での吸音率を向上させることができる。
(3)上記実施形態の吸音構造では、樹脂構造体10と壁50との間の隙間D2が0mmより大きく80mmより小さい数値範囲に設定されている。そのため、500Hz以下、特に250Hz近傍での吸音率を向上させることができる。
(4)樹脂構造体10は、内部に複数のセルSが並設されており、セルSを閉塞する閉塞壁11a、11bのうちの一方の第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通する貫通孔15が複数貫設されている。貫通孔15の開口径D3は、隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1に設定されている。そのため、貫通孔15が貫設された各セルSでは、貫通孔15内の空気を錘とし、セルS内の空気層をばねとするヘルムホルツ共鳴器が構成される。音源200から伝達された空気の振動は、ヘルムホルツ共鳴器により減衰される。したがって、吸音構造により吸音効果を得ることができる。
(5)壁50は、貫通孔15が貫設された樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと対向しており、壁50と第1閉塞壁11aとの間には隙間D2が形成されている。そのため、樹脂構造体10の板振動により、樹脂構造体10と壁50との間の隙間D2に存在する空気が振動し、振動した空気が貫通孔15内の空気層に作用する。このとき、隙間D2が形成されているため、貫通孔15を通過する空気の流動が増大され、貫通孔15における音波の減衰が大きくなる。共鳴器型と板振動型の相乗効果により低音周波数領域での吸音率の高い吸音構造が得られる。
(第2実施形態)
吸音構造の第2実施形態を図7~図10に従って説明する。本実施形態では、1つの樹脂構造体10に対して、複数の板状の被覆体70を接合している点が上記実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる構成について説明し、同様の構成についてはその詳細な説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態の吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された複数の被覆体70とによって構成されている。樹脂構造体10は、一対の閉塞壁11が正方形状に形成されている。
図7及び図8に示すように、被覆体70は、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に配置されている。被覆体70は、板状の被覆板71と、該被覆板71から第1閉塞壁11aに向けて突出している柱状の複数の脚部72とからなる。脚部72は、被覆板71の四隅に設けられている。脚部72は、被覆板71の各隅の形状に沿って直角に屈曲した形状である。図8に示すように、被覆体70は、本実施形態では3行3列の計9つ並設されている。各被覆体70は、隣接する被覆体70に対して所定の距離(隙間D4)だけ離間している。なお、樹脂構造体10の閉塞壁11は、こうして被覆体70を配置した際の全体の外縁形状と同じ正方形状である。
図9に示すように、脚部72の下端縁は、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに当接している。これにより、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと、被覆体70の被覆板71との間には、脚部72の突出高さの分だけ隙間D5が形成されている。脚部72の突出高さは、0mmよりも大きく80mmよりも小さく設定されていることが好ましく、0mmより大きく25mmより小さく設定されていることがより好ましく、1mmより大きく10mmより小さく設定されていることがさらに好ましい。被覆体70は、脚部72の下端縁が第1閉塞壁11aに例えば溶着されることにより、樹脂構造体10と接合されている。なお、脚部72と第1閉塞壁11aとは、溶着に限らず、接着や鋲止めなど他の方法を用いて互いに連結することも可能である。
図10に示すように、本実施形態の吸音構造は、室内の仕切りとして用いられる。吸音構造は、室内において直立した状態で、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200に向けて配置される。すなわち、樹脂構造体10の第2閉塞壁11bが音源200とは反対側を向いているとともに、樹脂構造体10に対して音源200側に被覆体70が配置される。吸音構造を構成する樹脂構造体10と被覆体70のうち、樹脂構造体10が音源200から遠い側にあり、樹脂構造体10に形成された貫通孔15が音源200側を向いている点で第1実施形態の吸音構造とはその配置の態様が異なっている。
次に、第2実施形態の吸音構造の作用をその効果とともに説明する。本実施形態では、第1実施形態の上記(2)~(5)の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。
(6)上記実施形態の吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された複数の被覆体70とによって構成されており、樹脂構造体10と被覆体70との間には隙間D5が形成されている。音源200から伝達された空気の振動は、被覆体70に伝達され、被覆体70を振動させる。被覆体70の板振動によって音源200からの音のエネルギーは熱エネルギー等に変換されて減衰する。したがって、吸音構造により吸音効果を得ることができる。
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
・第1実施形態では、樹脂構造体10を3行3列の計9つ並設したが、その配設態様は適宜変更が可能である。例えば、樹脂構造体10を2行2列の計4つ並設してもよい。また、全体の外縁形状が正方形となるように配置しなくてもよい。例えば、樹脂構造体10を3行2列の計6つ並設すれば全体の外縁形状は長方形となる。
・第1実施形態では、並設された樹脂構造体10において、隣接する樹脂構造体10との隙間D1をすべて同一とした。すなわち、隣接する樹脂構造体10の隙間D1を一定にした例を示した。しかし、樹脂構造体10の隙間の設定態様は適宜変更が可能である。例えば、一対の樹脂構造体10において、一方側ほど隙間が大きくなるように樹脂構造体10を配置してもよい。また、複数並設された樹脂構造体10において、ある部分の樹脂構造体10同士の隙間を、他の部分の樹脂構造体10同士の隙間よりも大きくしたり小さくしたりしてもよい。このように、隣接する樹脂構造体10の隙間は一定なものに限られない。
・第1実施形態では、樹脂構造体10を複数設けたが、1つの樹脂構造体10を壁50と対向するように配置してもよい。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200とは反対側に向けるとともに、第1閉塞壁11aと壁50との間に隙間D2が形成されるように樹脂構造体10を配置してもよい。この場合には、樹脂構造体10を介して壁50と樹脂構造体10との間の隙間D2に音波が伝えられる。また、樹脂構造体10を1つだけ設ける場合、その大きさは、壁50全体を覆う大きさであってもよいし、壁50の大きさよりも小さくてもよい。
・第1実施形態では、樹脂構造体10を壁50に対向配置することにより吸音構造を構成した。これに限らず、第2実施形態のように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに対向するように、板状の被覆体を対向配置することによって吸音構造を構成してもよい。この場合、被覆体には、第2実施形態の被覆体70と同様、脚部が設けられ、脚部の突出高さにより被覆体70と樹脂構造体10との間に隙間D2が形成されていればよい。こうすることで、室内の仕切りとして用いることができる。
・第2実施形態では、被覆体70を3行3列の計9つ並設したが、その配設態様は適宜変更が可能である。例えば、被覆体70を2行2列の計4つ並設してもよい。また、全体の外縁形状が正方形となるように配置しなくてもよい。例えば、被覆体70を3行2列の計6つ並設すれば全体の外縁形状は長方形となる。この場合、樹脂構造体10の閉塞壁11の形状は、被覆体70を並設した際の全体の外縁形状と同じ長方形状であってもよいし、該外縁形状よりも大きい又は小さい他の形状であってもよい。
・第2実施形態では、並設された被覆体70において、隣接する被覆体70の隙間D5を全て同一とした。すなわち、隣接する被覆体70の隙間D5を一定にした例を示した。しかし、被覆体70の隙間の設定態様は適宜変更が可能である。例えば、一対の被覆体70において、一方側ほど隙間が大きくなるように被覆体70を配置してもよい。また、複数並設された被覆体70において、ある部分の被覆体70同士の隙間を、他の部分の被覆体70同士の隙間よりも大きくしたり小さくしたりしてもよい。このように、隣接する被覆体70の隙間は一定なものに限られない。
・第2実施形態では、被覆体70を複数設けたが、1つの被覆体70を樹脂構造体10と対向するように配置してもよい。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200に向けた吸音構造において、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a全体を1つの被覆体70によって覆う構成を採用してもよい。この場合には、被覆体70を介して被覆体70と樹脂構造体10との隙間D5に音波が伝えられる。また、被覆体70を1つだけ設ける場合、その大きさは、樹脂構造体10の大きさと同じであってもよいし、樹脂構造体10の大きさよりも大きくても小さくてもよい。被覆体70を樹脂構造体10よりも小さくした場合、樹脂構造体10の一部のみが被覆体70によって覆われることとなる。
・第2実施形態の吸音構造は、1つの樹脂構造体10と複数の被覆体70とで構成されており、樹脂構造体10において貫通孔15が形成された第1閉塞壁11aを音源200側に向けて配置している。これに限定されず、第2実施形態の吸音構造を、第1実施形態の吸音構造のように、1つの樹脂構造体10と1つの被覆体70で構成してもよい。
・第2実施形態では、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に被覆体70を対向させたが、被覆体70の配置位置はこれに限定されない。例えば、樹脂構造体10の外周を覆うように被覆体70を配置してもよい。この場合、樹脂構造体10と被覆体70との間に隙間D5を設けることにより、共鳴器型と板振動型による吸音効果や相乗的な吸音効果が得られる。
・樹脂構造体10の一対の閉塞壁11の形状は正方形状に限らず、長方形や他の多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。さらには不定形状であってもよい。
・被覆体70の被覆板71の形状は、正方形状に限らず、長方形や他の多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。さらには不定形状であってもよい。また、被覆板71はシート材によって構成されていてもよい。シート材の素材としては樹脂などが挙げられる。また、ゴムからなる遮音性のシート材を採用してもよい。なお、被覆板71には、複数の孔や切り欠きを設けることも可能である。
・被覆体70に設けられている脚部72の形状は上述したものに限られない。例えば、円柱状であってもよい。また、脚部72の配設位置も樹脂構造体10の四隅や被覆体70の四隅に限られず、例えば樹脂構造体10や被覆体70の中央部分に設けられていてもよい。
・吸音構造を構成する構造のうち、音源200側に配置される構造、すなわち、第1実施形態では樹脂構造体10の表面の一方又は両方に金属板を貼り付けたり、樹脂構造体10に重石をつけたり、樹脂構造体10を比重の重い樹脂で形成したりしてもよい。樹脂構造体10の比重を大きくすると、樹脂構造体10が板振動することにより、低音周波数領域での吸音率を向上させることができる。同様に、第2実施形態では、被覆体70の表面の一方又は両方に金属板を貼り付けたり、被覆体70に重石をつけたり、被覆体70を比重の重い樹脂で形成したりしてもよい。
・第1実施形態では、壁50と樹脂構造体10とを固定部材51で固定して隙間D2を形成するようにした。また、第2実施形態では、被覆体70に脚部72を設け、該脚部72によって被覆体70と樹脂構造体10との間に隙間D5を形成するようにした。隙間D2、D5の形成態様は適宜変更が可能である。例えば、被覆体70の脚部72を省略し、代わりに樹脂構造体10に脚部を設けてもよい。また、被覆体70の脚部72を省略し、代わりに被覆体70の側面と樹脂構造体10の側面とを架橋し、被覆体70と樹脂構造体10とを離間した状態で両者を連結する架橋部材を設けてもよい。
また、第1実施形態の吸音構造では、壁50に第1板材を固定し、樹脂構造体10を第2板材に固定したり、第2実施形態の吸音構造では、被覆体70を第1板材に固定し、樹脂構造体10を第2板材に固定したりしてもよい。この場合、壁50や被覆体70が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと隙間D2、D5を隔てて対向するように、第1板材と第2板材とを配置するといった構成を採用することも可能である。なお、第2実施形態の吸音構造では、これら第1板材、被覆体70、樹脂構造体10、及び第2板材を、被覆体70が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと隙間D5を隔てて対向するよう配置した状態でユニット化することも可能である。こうした構成では、第1板材、被覆体70、樹脂構造体10、及び第2板材を一体物として扱うことが可能になり、吸音構造の取り回しが容易になる。また、樹脂構造体10の第1面10aや、樹脂からなる被覆板71には若干の反りがあり、完全な平面にはならない。そのため、脚部72を省略した被覆体70と樹脂構造体10とを単に重ねた状態にすることで、樹脂構造体10と被覆体70との間に部分的に隙間D5を形成することも可能である。この場合、隙間D5を形成するための部材を設けなくても、樹脂構造体10と被覆体70との間に部分的に0mmより大きい隙間D5が形成されるため、樹脂構造体10と被覆体70との間の隙間D5は全体として0mmより大きくなり、上述した(1)の作用効果と同様の作用効果を得ることはできる。
・被覆体70の脚部72を省略し、代わりに被覆体70の側面と樹脂構造体10の側面とを架橋し。被覆体70と樹脂構造体10とを離間した状態で両者を連結する架橋部材を設けてもよい。この場合、被覆体70の側面全体と樹脂構造体10の側面全体とを架橋することで、樹脂構造体10の側面全周が覆われ、その結果、低音周波数領域での吸音率が向上する。この場合、架橋部材と樹脂構造体10及び被覆体70を確実に止めるために、各部材を係合関係で連結することが好ましい。
・被覆体の構成は上述したものに限られない。例えば、樹脂構造体10と同様の構成を備える構造体を被覆体として採用してもよい。
すなわち、図11に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに対向させて複数の被覆体300を互いに離間して配置する。被覆体300は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状である。被覆体300は、セルSを柱形状に区画する側壁部301と、側壁部301の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁302とを有している。閉塞壁の一方には貫通孔303が形成されている。図11に示すように、被覆体300は、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに対して反対側に位置するように配置されている。このように、樹脂構造体10と同様の構成の被覆体300を有する吸音構造を用いて、音源200に近い側に、貫通孔15を音源200に向けて被覆体300を配置すると、被覆体300が板振動するとともにヘルムホルツ共鳴器として機能する。また、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体300の板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。こうした構成では、中音周波数領域と低音周波数領域での高い吸音率が得られる。
なお、図12に示すように、被覆体300を、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に位置するように配置することも可能である。この場合、樹脂構造体10と同様の構成の被覆体300を有する吸音構造を用いて、音源200に近い側に、被覆体300を配置するとともに、貫通孔15が形成されていない側を音源200に向けて配置すると、被覆体300が板振動して吸音するとともに、被覆体300のヘルムホルツ共鳴器を利用して吸音性能が向上する。また、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体300の板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。こうした構成では、低音周波数領域での高い吸音率が得られる。
また、図13に示すように、被覆体300において、一対の閉塞壁302のうち、一方(図13の下方)の閉塞壁302だけでなく、他方(図13の上方)の閉塞壁302にも貫通孔303を形成することも可能である。この場合、各セルSにおいて、一方の閉塞壁302または他方の閉塞壁302のいずれかに貫通孔303を形成することが望ましい。この場合、樹脂構造体10と同様の構成の被覆体300を有する吸音構造を用いて、音源200に近い側に被覆体300を配置すると、被覆体300が板振動するとともにヘルムホルツ共鳴器として機能し、被覆体300のヘルムホルツ共鳴器の機能により吸音性能が向上する。さらに、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体300の板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。こうした構成では、中音周波数領域と低音周波数領域での高い吸音率が得られる。
さらには、図14に示すように、上述した中空板状の構造体を2つ連結して被覆体400を構成してもよい。被覆体400は、一方(図14の下方)の構造体401の閉塞壁302と他方(図14の上方)の構造体402の閉塞壁302とを接合することで構成されている。また、一方の構造体401では、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に位置し、他方の構造体402では、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aとは反対側に位置している。この場合、樹脂構造体10と同様の構成の被覆体400を有する吸音構造を用いて、音源200に近い側に被覆体400を配置すると、構造体401の貫通孔15は音源200を向き、構造体402の貫通孔15は音源200とは反対側を向く。この場合、被覆体400が板振動するとともに、ヘルムホルツ共鳴器として機能し、被覆体400のヘルムホルツ共鳴器の機能により吸音性能が向上する。また、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体400の板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。低音周波数領域での高い吸音率が得られる。
また、図15に示すように、上述した中空板状の構造体を2つ連結して被覆体500を構成することも可能である。被覆体500は、一方(図15の上方)の構造体501の閉塞壁302と他方(図15の下方)の構造体502の閉塞壁302とを接合することで構成されている。一方の構造体501は、一対の閉塞壁302の両方に貫通孔303が形成されている。他方の構造体502は、一方の閉塞壁302のみに貫通孔303が形成されており、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aとは反対側に位置している。一方の構造体501に形成されている貫通孔303及び他方の構造体502に形成されている貫通孔303とは連通している。すなわち、一方の構造体501のセルSと、他方の構造体502のセルSとは、各貫通孔303を通じて連通している。この場合、樹脂構造体10と同様の構成の被覆体500を有する吸音構造を用いて、音源200に近い側に被覆体500を配置すると、構造体501の貫通孔303は音源200を向き、構造体502のセルSは、構造体501の貫通孔303を介して構造体501のセルSに連通している。この場合、被覆体500が板振動するとともに、ヘルムホルツ共鳴器として機能する。また、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体500の板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。中音周波数領域と低音周波数領域での高い吸音率が得られる。
上述した各構成では、被覆体300,400,500が板振動して吸音する。また、音源200から遠い側に配置した樹脂構造体10は、被覆体300,400,500が板振動によりヘルムホルツ共鳴器としての吸音性能が向上する。被覆体300,400,500の板振動と樹脂構造体10のヘルムホルツ共鳴器により、低音周波数領域での吸音性能を向上させることができる。被覆体300、400、500の板振動と樹脂構造体10によるヘルムホルツ共鳴器の相乗効果により低音周波数領域での優れた吸音性能を実現することができる。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、壁50や被覆体70に不織布を重ねて接着してもよい。不織布は高音周波数領域での吸音に効果的である。そのため、この構成によれば、より広域の吸音が可能になる。なお、シート材からなる被覆体や上述した構造体からなる被覆体300,400、500であっても同様に不織布を重ねることで、上述した効果を得ることができる点はいうまでもない。また、樹脂構造体10の一部が不織布を接着した被覆体によって被覆され、他の部分が不織布を接着していない被覆体によって被覆された吸音構造を採用することも可能である。さらには、樹脂構造体10の一部は被覆体によって被覆されず、他の一部は不織布を接着していない被覆体によって被覆され、その他の部分は不織布を接着した被覆体によって被覆された吸音構造を採用してもよい。
・樹脂構造体10のスキン層30を省略してもよい。この場合、コア層20の上壁部21のみによって第1閉塞壁11aが構成される。また、樹脂構造体10のスキン層40を省略することも可能である。この場合には、コア層20の下壁部22のみによって第2閉塞壁11bが構成される。また、樹脂構造体10のスキン層30,40の双方を省略してもよい。
・樹脂構造体10の貫通孔15を各セルSの略中央部分に1箇所形成したが、貫通孔15の形成箇所及び個数はこれに限定されない。また、樹脂構造体10全体に貫通孔15を規則的に形成したが、貫通孔15を不規則に形成してもよい。例えば、貫通孔15が各セルSにおいて異なった位置に形成されるようにしてもよい。また、貫通孔15を各セルSに1箇所或いは複数箇所形成してもよい。また、貫通孔15が形成されたセルSと貫通孔15が形成されないセルSとを混在させてもよい。
・吸音構造は、第1閉塞壁11aを音源200ではなく室内の中心に向けて配置するなど、その配置態様を適宜変更することが可能である。例えば、第2実施形態の吸音構造において、室内などの所定空間において音の発生しやすい側に第1閉塞壁11aを向けて樹脂構造体10を設置してもよい。なお、吸音構造は、室内の仕切りとしてだけではなく、壁や天井として用いることも可能である。
・吸音構造を室内に設置した例を示したが、吸音構造を室外に設定することも可能である。すなわち、吸音構造を例えば高架下や屋上などに設置してもよい。
・吸音構造を例えば室内に設置する場合には、第1実施形態のように、被覆体として壁を採用したり、柱を採用したりすることも可能である。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを対向させつつ、0mmよりも大きく80mmよりも小さい隙間を隔てて壁や柱に組付けることにより、壁や柱と樹脂構造体10とによって吸音構造を構成することも可能である。また、柱が円柱状である場合には、柱の外周面に沿った形状に樹脂構造体10を湾曲させて成形することにより、柱に組付けたときに樹脂構造体10と柱との隙間を略一定にして上述のような吸音構造を構成することができる。
・樹脂構造体10は、一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層20を形成するのに限らず、複数枚の第1シート材を用いてコア層を形成してもよい。例えば、帯状の第1シート材を所定間隔毎に屈曲させ、これら複数の第1シート材を並設することでコア層を形成してもよい。この場合、各第1シート材において屈曲させた部分がセルSの側壁部を構成することになる。
・樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって複数のセルSが並設された構造のものを用いたが、これに限定されない。押出成形によって断面ハーモニカ状に形成された構造の中空板材を用いてもよい。
・内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状の構造体として、樹脂からなる樹脂構造体10を例に説明した。構造体としては、樹脂からなるものに限られず、例えば紙からなる紙構造体や、金属からなる金属構造体を採用することも可能である。
・セルSの形状は特に六角柱形状に限定されるものではない。例えば、円柱形状でもよいし、四角柱形状、八角柱形状などの多角柱形状であってもよい。また、セルSの形状は、例えば、錐台形状や錐台形状の頂面同士を突き合わせたような形状であってもよい。すなわち、全体として柱形状をなしているのであればどのような形状であってもよい。さらに、コア層20内において異なる形状のセルSが混在していてもよいし、各セルSが隣接せず、セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じていてもよい。セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じている場合、貫通孔15は、セルSの内外を連通するような部分に形成されているだけでなく、セルSとセルSとの間の空間部分に形成されていてもよい。
・貫通孔15は、開口部が円形状の略円筒形状として形成されているが、貫通孔15の形状はこれに限定されない。例えば、開口部が四角形状、五角形状等の多角形状であってもよく、楕円形状であってもよく、不定形状であってもよい。なお、この場合の貫通孔15の開口径D3とは、開口部の中心を通る直線のうち、最も長い直線の長さを言うものとする。また、貫通孔15がセルSの内方へ向かって径が小さくなるように形成されていてもよい。
・樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって形成されたコア層20に、スキン層30、40を積層後、貫通孔15を形成する構成としたが、これに限定されない。例えば、押出成形によってコア層20を形成後、スキン層30、40として、あらかじめ複数の貫通孔15が形成されたものをコア層20に積層する構成としてもよい。
・スキン層30、40を熱溶着でコア層20に接合するのに限らず、例えば、接着剤等でスキン層30、40をコア層20に貼り付けて接合してもよい。また、コア層20とスキン層30、40との間に例えば熱可塑性樹脂製の接着層を介在させ、この接着層の接着力により、スキン層30、40をコア層20に接合してもよい。
・コア層20を折り畳んで圧縮する方向(X方向)をセルSが並設された方向として説明したが、これは一例に過ぎない。例えば、図4(a)において、X方向に対して30°傾斜した方向、60°傾斜した方向においても、隣り合うセルSは六角形の一辺を共有しており、互いに並設されているといえる。また、ハニカム構造以外の場合、多角形の一辺を共有していなくても、また、多少のずれが生じていても、全体として列をなしていれば、セルSは並設されているといえる。