JP2009093064A - 吸音構造および音響室 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】吸音体2においては、対向する上面部21と下面部23との間に分離壁部24が配置され、上面部21と下面部23との間に、空気層が形成されている。また、上面部21においては、空気層に繋がる開口部21Aが設けられている。そして、吸音体2は上面部21側が壁面に向けられ、壁面と上面部21との間に空間が生じるように、吸音体2が壁面上に配置される。このように吸音体2が配置された状態で部屋に音が発生すると、部屋内に発せられた音波のうち低周波数の音波は、上面部21と壁面との間の空間に入り込む。音波が上面部21と壁面との間の空間に入り込むと、開口部21Aを有する空気層により、音波のエネルギーが消費されて音が吸音される。
【選択図】図1
Description
また、本発明においては、前記吸音体において前記室境界に対向している側と反対側に、複数の凹部と複数の凸部が設けられていてもよい。
また、本発明においては、前記凹部に多孔質の素材で形成された多孔質層が設けられていてもよい。
また、本発明においては、前記凹部の開口部が、外力により変形する板状または膜状の振動部材により塞がれていてもよい。
また、本発明においては、伸縮自在で前記室境界と前記吸音体とに取り付けられた固定部材により、前記吸音体が前記室境界から距離をおいて支持されていてもよい。
また、本発明においては、音を反射する反射板と、前記吸音体が前記室境界にそれぞれ複数配置されており、前記反射板と前記吸音体との間に隙間が設けられていてもよい。
また、本発明においては、前記吸音体と前記反射板は、前記室境界に対して傾斜しており、前記室境界に対する前記吸音体の傾斜角度と前記室境界に対する前記反射板の傾斜角度とが異っていてもよい。
また、本発明は、上記吸音構造を有する音響室を提供する。
分離壁部24は、木材で形成されており、断面の形状が凸形状の凸部25と、断面の形状が凹形状の凹部26を交互に複数有している。分離壁部24においては、各凸部25と各凹部26は、各形状の断面と直交する方向(即ち、上面部21および下面部23の面に沿う方向)に延伸している。また、この各凸部25と各凹部26においては、凸部25の上辺部25Aと凹部26の底辺部26Aは、いずれも平坦となっている。
図4は、図3に示した上面図のB−B線断面図であり、1つの空気層30Aの両端の開口端から長さL1、L2の位置に開口部21Aが形成されている場合を示している。同図に示したように、この開口部21Aが形成された空気層30A(開管=両端が開口端の管)は、音響学の観点から、長さ(L1+L2)の開管α(図4(α))と、長さL2の開管β(図4(β))と、長さL1の開管γ(図4(γ))とみなすことができる。ここで、開管αは、波長λα=2×(L1+L2)の音波と共鳴し、開管βは、波長λβ=2×L2の音波と共鳴し、開管γは、波長λγ=2×L1の音波と共鳴することとなり、空気層30A内では、これらの波長λα、λβ、λγの音波が振動を繰り返すうちに分離壁部24の壁面での摩擦や開口端での空気粒子間の粘性作用によりエネルギーを消費し、波長λα、λβ、λγを中心とする音波を減衰させることができる。なお、図4(α)から図4(γ)における管内の実線の曲線は、管内で共鳴する音波の粒子速度の振幅の分布を示している。
図5は、吸音体2を部屋の壁面10(室境界)に固定するための固定部材3の分解図である。固定部材3は、柱状部材31、面ファスナー32で形成されている。柱状部材31は、その素材が合成樹脂であり、四角柱の形状に形成されている。また、面ファスナー32は、鉤状の突起が一面についた布である鉤部32Aと、パイル織りの布であるパイル部32Bとで構成されている。この柱状部材31において対向する2つの面の一方には、鉤部32Aが接着され、もう一方の端面にはパイル部32Bが接着される。
吸音体2を壁面10に固定する際には、まず、固定部材3に接着されたパイル部32Bを壁面10に接着された鉤部32Aに突き合わせる。これにより、鉤部32Aの鉤状の突起が、パイル部32Bに絡み、固定部材3が壁面10に固定される。
次に、吸音体2の4隅に接着されているパイル部32Bの各々を、壁面10に固定された固定部材3に接着されている鉤部32Aに突き合わせる。すると、鉤部32Aの鉤状の突起が、上面部21に接着されているパイル部32Bに絡み、吸音体2が壁面10に固定され、上面部21と壁面10との間に固定部材3の高さ分だけ空間(空気層)が得られる。
また、(2)の場合と(3)の場合を比較すると、本発明の実施形態である(2)の場合には500Hz付近での吸音力が若干増加する。このように測定結果は、音波が振動部25と壁面との間に入り込むと開口部21Aを有する空気層30Aにより、音波のエネルギーが消費されて音が吸音されていることを裏付けるものとなっており、振動部25と壁面10との間の空間は、振動部25と壁面10の2つの境界面に挟まれ、吸音体2が配置されていない場合と比較して、音圧が高くなることから、空気層30Aへ入力する音波のエネルギーが大きくなり、吸音効率が向上することを示唆している。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
また、上述した実施形態においては、空気層30Aが音を吸音する共鳴管となるように構成したが、該空気層30Aにつながる開口部21Aを凹部26に沿って複数設けて
ヘルムホルツ共鳴を利用する有孔板となるように構成してもよい。
また、図10に示したように、下面部23を設けず分離壁部24と上面部21を接着し、上述した実施形態において、空気層30Bとなっていた部分に、多孔質の素材で形成された多孔質層27を配置するようにしてもよい。この構成でも、分離壁部24が壁面10とは反対側に向けられると、部屋内に生じた高周波の音を多孔質層27で吸音することができる。
また、本発明においては、図8や図10に示した多孔質層27に代えてヘルムホルツ共鳴を利用した有孔板や管共鳴を利用した吸音機構を設けてもよい。
また、上記隙間を設けて配置された複数の吸音体2において、部屋の内部方向に向けられている面(吸音体2の底面)をまとめて音響透過性と音に対する流通抵抗を有する仕上げ材(例えば、ジャージネット、カーテンクロス、不織布、メッシュシートなど)で覆い、配置された複数の吸音体が視覚的に一つの面をなすように構成してもよい。この構成によれば、仕上げ材の流通抵抗により吸音力がさらに向上する。
また、吸音体2を壁面10に複数配置する際には、図12に示したように、吸音体2を壁面10に対して傾斜させて配置してもよい。この構成によれば、部屋の内部で発生した音は、吸音体2の外面を回り込んで壁面10と上面部21との間の空間に到達し、空気層30Aの共鳴により吸音される。
また、本発明においては、図13に示したように、吸音体2と、音を反射する反射板4とを隙間を空けて壁面10に配置してもよい。また、このように、吸音体2と反射板4とを配置する構成においても、図12に示した配置と同様に、吸音体2と反射板4とを壁面10に対して傾斜させて壁面10に配置してもよい。また、吸音体2や反射板4を複数壁面に配置する構成においては、吸音体2の隣に配置される吸音体2または反射板4との間の隙間に、パンチングメタルなどの音響透過性の良い部材を配置してもよい。
また、吸音体2と反射板4とを壁面に配置する構成においては、図14に示したように吸音体2と反射板4との傾きを異ならせて壁面10に配置するようにしてもよい。
また、吸音体2や反射板4を部屋内に配置する際には、天井や床に配置してもよい。
そして、上述した実施形態の柱状部材31を、この柱状部材33に替えれば、上面部21と壁面10との間の距離を自在にユーザが変更でき、吸音特性を任意に調整することができる。なお、上述した、壁面10と上面部21との距離を調整する構成は、一例であり、壁面10と上面部21との距離を調整する構成は、上述した構成に限定されるものでない。
Claims (10)
- 対向する上面部と下面部との間に空気層を備え、前記空気層に繋がる開口部が前記上面部に設けられている吸音体を有し、
音場の室境界に対して前記上面部が対向して配置され、前記上面部と前記室境界との間に空気層を有し、当該空気層が前記音場とつながっている吸音構造。 - 前記吸音体において前記室境界に対向している側と反対側に、多孔質の素材で形成された多孔質層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造。
- 前記吸音体において前記室境界に対向している側と反対側に、複数の凹部と複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造。
- 前記凹部に多孔質の素材で形成された多孔質層が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の吸音構造。
- 前記凹部の開口部が、外力により変形する板状または膜状の振動部材により塞がれていることを特徴とする請求項3に記載の吸音構造。
- 伸縮自在で前記室境界と前記吸音体とに取り付けられた固定部材により、前記吸音体が前記室境界から距離をおいて支持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の吸音構造。
- 前記吸音体が前記室境界に複数配置されており、各吸音体間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の吸音構造。
- 音を反射する反射板と、前記吸音体が前記室境界にそれぞれ複数配置されており、前記反射板と前記吸音体との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の吸音構造。
- 前記吸音体と前記反射板は、前記室境界に対して傾斜しており、前記室境界に対する前記吸音体の傾斜角度と前記室境界に対する前記反射板の傾斜角度とが異なることを特徴とする請求項8に記載の吸音構造。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載の吸音構造を有する音響室。
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