JP7156259B2 - 金属板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特定のマイクロカプセルを含有する皮膜が形成された金属板に関するものであり、この金属板は、特に防錆金属板として好適なものである。
従来、冷延鋼板や亜鉛系めっき鋼板などの基材表面に防食のための塗装を施した塗装鋼板(防錆鋼板)が広く用いられている。通常、塗装鋼板の塗膜(皮膜)には防錆添加剤が添加されており、この防錆添加剤が腐食環境下で溶出して防食作用をすることにより、基材の腐食が抑えられるようにしている。
塗膜に添加される防錆添加剤の多くは、腐食環境下で塗膜から溶出し、金属の腐食反応に対して特定の作用を及ぼすことで腐食抑制に寄与するものである。しかし、腐食環境下での塗膜からの防錆添加剤の溶出は、金属の腐食反応の有無とは関係なく生じるため、継続的な溶出によって防錆添加剤が次第に消費され、必要なときに十分な溶出量が得られなくなる場合がある。すなわち、従来の塗装鋼板では、防錆添加剤による腐食抑制効果を長期間にわたって維持することが難しいという問題がある。
従来、特定のpH領域において壁材が溶解し、内包物質を放出するタイプのマイクロカプセル、すなわちpH応答性を有するマイクロカプセルが知られており、例えば、特許文献1には、防錆剤を内包したpH応答性を有するマイクロカプセルを水系(例えば、熱交換機の循環水)に添加し、水系のpHに応じてマイクロカプセルに内包された防錆剤を放出させるようにした水系における金属の腐食抑制方法が示されている。
特開2006-83454号公報 特開2006-255536号公報
Ghazi Ben Messaoud and four others, "Alginate/sodium caseinate aqueous-core capsules: A pH-responsive matrix", Journal of Colloid and Interface Science, USA, Elsevier, 15 February 2015, Volume 440, p.1-8 Guofeng Zhou and five others, "A new drug-loading technique with high efficaciency and sustained-releasing ability via the Pickering emulsion interfacial assembly of temperature/pH-sensitive nanogels", Reactive & Functional Polymers, Netherlands, Elsevier, November 2013, Volume 73, Issue 11, p.1537-1543 Lei Liu and four others, "Independent temperature and pH dual-stimuli responsive yolk/shell polymer microspheres for controlled release: Structural effect", European Polymer Journal, UK, Elsevier, August 2015, Volume 69, p.540-551 XU Xiu-qing and three others, "Microstructure and deposition mechanism of electrodeposited Cu/liquid microcapsule composite", Transactions of Nonferrous Metals Society of China, China, Elsevier, October 2011, Volume 21, Issue 10, p.2210-2215 ZHU LIQUN and two others, "Electrodeposition of composite copper/liquid-containing microcapsule coatings", Journal of Material Science, Netherlands, Kluwer Academic Publishers, January 2004, Volume 39, Issue 2, p.495-499 Hana Choi and two others, "Encapsulation of aliphatic amines into nanoparticles for self-healing corrosion protection of steel sheets", Progress in Organic Coatings, Netherlands, Elsevier, October 2013, Volume 76, Issue 10, p.1316-1324
本発明者らは、塗装鋼板が腐食環境下に置かれた場合、金属(基材)の腐食反応が生じるとその周辺のpHが上昇するという点に着目し、防錆添加剤を内包物質とし、且つそのような高いpH領域で内包物質を放出するpH応答性マイクロカプセルを塗膜に含有させれば、金属(基材)の腐食反応をトリガーとして内包物質(防錆添加剤)を放出することができるという着想を得た。すなわち、このような塗装鋼板を実現できれば、腐食抑止が必要とされるときにのみ防錆添加剤が放出される(皮膜から溶出する)ので、結果として、防錆添加剤による防錆効果を長期間にわたって維持することができる。
しかし、従来のpH応答性マイクロカプセルには、以下のような問題があることが判った。
従来、特定のpH領域で内包物質を放出するマイクロカプセルとして、アニオン性やカチオン性の多糖類からなるハイブリッドゲル、或いはポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)とポリアクリル酸(PAA)の共重合体やヨークシェル構造体、ポリスチレンとポリアミンまたはポリスチレンとポリビニルピリジンの共重合体などのようなpH応答性ポリマーを壁材として用いたマイクロカプセルが知られている。
例えば、非特許文献1には多糖類を用いてマイクロカプセル化する方法が、非特許文献2にはPNIPAMとPAAの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法、非特許文献3にはPNIPAMをシェル、PAAをヨークとしてマイクロカプセル化する方法が、特許文献1にはポリスチレンとポリビニルピリジンの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法が、特許文献2にはポリスチレンとポリアミンの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法が、それぞれ開示されている。
また、金属用防錆添加剤を内包するマイクロカプセルとしては、ポリビニルアルコール(PVA)の相分離法による有機シリコーン樹脂内包マイクロカプセルが提案されている。このようなマイクロカプセルに関して、例えば、非特許文献4、5には、銅とマイクロカプセルの複合膜による防錆処理が開示されている。
さらに、金属用防錆添加剤を内包させ、pH応答性を付与したマイクロカプセルとしては、アミン誘導体を用いたものが提案されている。このようなマイクロカプセルに関して、例えば、非特許文献6には、トリエタノールアミンを内包させたマイクロカプセルが開示されている。
しかしながら、非特許文献1および特許文献1、2に記載のマイクロカプセルは、酸性から中性領域にかけて内包物質を放出するため、当該pHを有する水溶液に分散させると、内包物質を保持することができない。また、合成方法が煩雑であるため工業的な生産は難しい。
また、非特許文献2、3に記載のマイクロカプセルはPNIPAMとPAAから構成されるが、PAA中のスルファジアジン基やカルボキシル基と内包物質のドキソルビシンとの酸塩基平衡反応を利用するため、酸性領域での放出量が多く、pHが7.4の中性領域でも内包物質が放出されるため、当該pHを有する水溶液に分散させると、内包物質を保持することができない。
また、非特許文献4、5に記載のマイクロカプセルは金属用防錆添加剤を内包しているが、pH応答性を有しないため、防錆添加剤を放出するためには、物理的な力によってカプセル壁が崩壊する必要があり、金属の腐食反応のような化学的な環境変化に応答して防錆添加剤を放出することはできない。
また、非特許文献6は、金属の腐食反応によってpHが変化することに着目し、アミン誘導体の酸解離反応を利用することでpH応答性を有するマイクロカプセルを腐食抑制剤として使用しているが、コアラテックスからのシード重合でカプセル壁を合成しており、製造コストの観点から工業的には不向きである。また、pHが6.5の中性領域でも内包物質が放出されるため、当該pHを有する水溶液に分散させると、内包物質を保持することができない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、皮膜中に、特定のpH領域において内包物質を放出する高いpH応答性を有するとともに、簡便且つ低コストに製造することができるマイクロカプセルを含有する金属板を提供すること、特に、皮膜中に、金属の腐食反応に伴い高pHとなる領域(アルカリ性領域)で内包物質を放出するpH応答性を有するマイクロカプセルを含有し、長期間にわたって高い防食性能を維持することができる防錆金属板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような金属板を簡便且つ低コストに安定して製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、壁材にN-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を用いることにより、特定のpH領域において内包物質を放出する高いpH応答性を有するマイクロカプセルが得られること、特に、このマイクロカプセルは、金属の腐食反応に伴いpH8以上となる領域で内包物質を放出するpH応答性を有することができるため、金属用防錆添加剤を内包物質とするマイクロカプセルに好適なものであることを見出した。また、このマイクロカプセルは、液中乾燥法とコアセルベーション法が並列になされるような製法により簡便且つ低コストに製造できることが判った。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を含有する皮膜(A)を有する金属板であって、
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板。
[2]上記[1]の金属板において、皮膜(A)中のマイクロカプセル(e)の含有量が1~50mass%であることを特徴とする金属板。
[3]上記[1]または[2]の金属板において、皮膜(A)の膜厚が1μm以上であることを特徴とする金属板。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの金属板において、マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする金属板。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの金属板において、マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする金属板。
[6]上記[5]の金属板において、金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする金属板。
[7]金属板表面に、特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を分散させた塗料組成物を塗布した後、乾燥させることにより皮膜(A)を形成する金属板の製造方法であって、
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板の製造方法。
[8]上記[7]の製造方法において、金属板表面に塗布する塗料組成物におけるマイクロカプセルeの配合量が、塗料固形分中での割合で1~50mass%であることを特徴とする金属板の製造方法。
[9]上記[7]または[8]の製造方法において、金属板表面に膜厚が1μm以上の皮膜(A)を形成することを特徴とする金属板の製造方法。
[10]上記[7]~[9]のいずれかの製造方法において、マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする金属板の製造方法。
[11]上記[7]~[10]の製造方法において、マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする金属板の製造方法。
[12]上記[11]の製造方法において、金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする金属板の製造方法。
本発明の金属板は、皮膜中に含まれるマイクロカプセルが、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備えることにより、特定のpH領域において内包物質を放出する高いpH応答性を有する。特に、本発明の金属板の皮膜中に含まれるマイクロカプセルは、金属の腐食反応に伴いpH8以上となる領域(アルカリ性領域)で内包物質を放出するpH応答性を有することができるため、金属用防錆添加剤を内包物質とすることにより、金属の腐食反応をトリガーとした自己修復性のマイクロカプセルとして機能し、これにより防錆金属板は、長期間にわたって高い防食性能を維持することができる。
また、本発明の金属板の皮膜中に含まれるマイクロカプセルは、壁材を構成するN-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体の共重合比を調整することにより、内包物質を放出するpHレベルを変えることができるので、使用環境や用途などに応じた防食性能を有する金属板を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、以上のような優れた性能を有する金属板を、簡便且つ低コストに安定して製造することができる。
本発明の金属板の皮膜中に含まれるマイクロカプセルを製造するための一連の工程を模式的に示した説明図
本発明は、表面に形成される皮膜Aが、特定のpH領域において内包物質を放出するpH応答型のマイクロカプセルeを含有する金属板であり、そのマイクロカプセルeは、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上(以下、説明の便宜上「N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体」という。)と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上(以下、説明の便宜上「(メタ)アクリル酸またはその誘導体」という。)のランダム共重合体を主成分とする壁材(カプセル壁)を備えることを特徴とする。
本発明の金属板の基材としては、腐食の際にpH変化を伴うものであれば適用可能であり、例えば、鋼板、アルミニウム合金板、マグネシウム合金板、チタン合金板、各種めっき金属板などが挙げられるが、これらに限定されない。めっき金属板のなかで、めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn-Ni合金めっき鋼板、Zn-Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn-Cr合金めっき鋼板、Zn-Mn合金めっき鋼板、Zn-Co合金めっき鋼板、Zn-Co-Cr合金めっき鋼板、Zn-Cr-Ni合金めっき鋼板、Zn-Cr-Fe合金めっき鋼板、Zn-Al合金めっき鋼板(例えば、Zn-5%Al合金めっき鋼板、Zn-55%Al合金めっき鋼板)、Zn-Mg合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、さらにはこれらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn-SiO分散めっき鋼板)などが挙げられる。
金属板(基材)の表面に形成される皮膜Aは、マイクロカプセルeを保持できる成分からなるものであれば特に種類を問わない。したがって、皮膜Aは無機系皮膜でもよいが、一般には有機樹脂を含む皮膜が好ましく、特に有機樹脂を主体とする皮膜(有機樹脂皮膜)が好ましい。有機樹脂としては、例えば、皮膜用として広く用いられているアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの1種以上が使用できる。
皮膜Aには、マイクロカプセルeほかに、必要に応じて、カップリング剤、固形潤滑剤、有機着色顔料、着色染料、無機顔料、キレート剤、導電性顔料、防錆添加剤などのような添加剤の1種以上を添加してもよい。
皮膜Aの膜厚(乾燥膜厚)は1μm以上が好ましい。1μm未満では十分な耐食性が得られないおそれがある。一方、膜厚に特別な上限はなく、必要な耐食性とコストを考慮して決定すればよいが、一般的には20μm程度が上限となる。ここで、皮膜Aの膜厚は、無作為に選択された5箇所の皮膜厚を断面SEM観察により測定し、それらの測定値の平均値をもって膜厚とする。
次に、皮膜Aが含有するマイクロカプセルeについて説明する。
従来からpHに応答するマイクロカプセルとしては多糖類を用いたものが知られており、特に医療の分野で用いられているが、生体内でのドラッグデリバリーを目的としているためアルカリ性領域でのpH応答性が乏しかった。これに対して本発明で用いるマイクロカプセルeは、上記のようにN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を主成分とする壁材を備えることにより、特定のpH領域(例えばpH8以上のアルカリ性領域)においてのみ壁材が溶解して内包物質を放出する高いpH応答性を有する。
本発明で用いるマイクロカプセルeの内包物質としては、マイクロカプセルを製造(合成)する際のコア/シェル構造の安定性を阻害するものでなければ特に制約はなく、マイクロカプセルeの用途に応じて内包物質を選択すればよいが、なかでも金属用防錆添加剤が好適である。すなわち、本発明で用いるマイクロカプセルeは、金属の腐食反応に伴いpH8以上となる領域(アルカリ性領域)で内包物質を放出するpH応答性を有することができるため、金属用防錆添加剤を内包物質とし、金属の腐食反応をトリガーとした自己修復性のマイクロカプセルとすることができる。
内包物質とする金属用防錆添加剤に特別な制限はなく、例えば、従来塗装鋼板(いわゆる有機被覆鋼板、有機複合被覆鋼板なども含む。)の塗膜に防錆添加剤として添加されている種々の成分を用いることができる。なかでも硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩などがコア/シェル構造の安定性を阻害しないため好適であり、それらの1種以上を用いることができる。硝酸塩としては、硝酸セリウム、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムなどの一般的な防錆添加剤を用いることができる。また、酢酸塩としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの一般的な防錆添加剤を用いることができる。また、硫酸塩としては、硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸バナジルなどの一般的な防錆添加剤を用いることができる。なお、特定の防錆添加剤は、カプセル(壁材)に内包させるために補助物質が必要となる場合がある。例えば、硫酸バナジルの場合は、リン酸二水素ナトリウムを補助物質として使用することでカプセル(壁材)に内包させることができる。
なお、本発明で用いるマイクロカプセルeを後述するような製法で製造する場合、内包物質は、水に可溶であって、有機溶媒に不溶または難溶性である必要があり、有機溶媒に添加しても一部または全部が有機溶媒に溶解しないため、有機溶媒に分散させる分散処理が必要となる。上述した硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩など(金属用防錆添加剤)もこのような物質である。
本発明で用いるマイクロカプセルeにおいて、壁材の主成分であるN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を構成するN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体としては、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-プロポキシメチルアクリルアミド、N-プロポキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-フェノキシメチルアクリルアミド、N-フェノキシメチルメタクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N-シクロプロピルメタクリルアミド等が挙げられ、これらの1種また2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いるマイクロカプセルeにおいて、壁材の主成分であるN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を構成する(メタ)アクリル酸またはその誘導体としては、カルボキシル基を有し、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と共重合可能であるものであれば特に制約はなく、それら(メタ)アクリル酸またはその誘導体の1種以上を用いることができる。アクリル酸誘導体としては、例えば、エトキシトリエチレングリコールアクリレートなどを、メタクリル酸誘導体としては、例えば、2-ジエチルアミノエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどを、それぞれ用いることができる。
ここで、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体は、各ポリマー鎖が溶解することで所望のpH応答性が得られるが、ブロック共重合体の場合には、各ポリマー鎖の分子量が高いため、例えば、ポリアクリル酸が溶解するpHであっても、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を溶解することができず、このため十分なpH応答性が得られない。このため本発明では、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を壁材に用いるものである。
N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体の共重合比(モル比)を1.0:0.5~1.0:2.0とする。N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体1.0モルに対する(メタ)アクリル酸またはその誘導体の比率が0.5モル未満では、高pH領域でも壁材が溶解せず、pH応答性が得られない。一方、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体1.0モルに対する(メタ)アクリル酸またはその誘導体の比率が2.0モル超では、pH8未満の領域でも壁材の溶解が始まるため、中性の水溶液中でも一部溶解が生じてしまう。
上述したように本発明で用いるマイクロカプセルeは、金属の腐食反応よってpHが上昇し、pH8以上のアルカリ領域になった際に壁材が溶解するpH応答性を有することができるが、例えば、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体1.0モルに対する(メタ)アクリル酸またはその誘導体の比率を0.5モル~2.0モルの範囲で調整することにより、壁材が溶解するpH領域を調整する(例えば、pH8以上の領域のなかで高pH側または低pH側にシフトさせる)ことができる。すなわち、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体に対する(メタ)アクリル酸またはその誘導体の比率が低い方が、壁材が溶解するpH領域が高くなるので、マイクロカプセルの使用環境や用途に応じて内包物質を放出するpHレベルを選択することができる。
本発明で用いるマイクロカプセルeの壁材は、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を主成分とし、その他の成分として、マイクロカプセル製造時に使用する界面活性剤成分(マイクロカプセル製造時に芯材物質の外側に吸着した界面活性剤成分)などを含む。
マイクロカプセルの壁材物質として用いるN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体は、例えば、以下のようにして合成することができる。
メタノール、エタノール、アセトンなどの溶媒にN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体を加えて撹拌し、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体を完全に溶解する。ここで、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体の配合比は、上述したようにN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0となるように調整する。この理由は、さきに述べたとおりである。
次いで、上記溶液に適量の重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリルなど)を加え、撹拌して完全に溶解したところで、この溶液を68~74℃程度に加温し、この加熱状態で3~7時間程度撹拌を続けることにより、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体を共重合させる。ここで、溶液の温度が68℃未満では重合速度が小さく、一方、74℃を超えると経済的に非効率である。
反応終了後、溶液の温度を下げて反応生成物をろ過回収し、この反応生成物を乾燥させることで、マイクロカプセルの壁材物質として用いる粉末状の「N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体」を得ることができる。
マイクロカプセルeの粒径は特に制限はないが、粒径が皮膜Aの膜厚との関係で極端に大きいと、皮膜Aによるマイクロカプセルの保持性が低下し、防食性能が劣る場合があるので、一般には粒径は10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
皮膜A中のマイクロカプセルeの含有量は特に制限はないが、1~50mass%程度が好ましい。マイクロカプセルeの含有量が1mass%未満では、マイクロカプセルeを添加することによる効果、特にマイクロカプセルeが金属用防錆剤を内包する場合における十分な耐食性が得られない。また、この観点からマイクロカプセルeの含有量は5mass%以上がより好ましい。一方、マイクロカプセルeの含有量が50mass%を超えると皮膜Aの連続性が損なわれ、耐食性が劣化する場合がある。また、この観点からマイクロカプセルeの含有量は30mass%以下がより好ましい。
次に、本発明で用いるマイクロカプセルeの製造方法について説明する。
この製造方法は、マイクロカプセルの壁材となる壁材物質aとして、上述したN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を用い、壁材物質aおよび界面活性剤cが極性有機溶媒dに溶解した溶液xを得る工程(A)と、この工程(A)で得られた溶液xにマイクロカプセルの内包物質となる芯材物質bが混合された溶液yを得る工程(B)と、この工程(B)で得られた溶液yを極性有機溶媒dが蒸発する温度に維持することにより極性有機溶媒dを蒸発させつつ、溶液yを撹拌しながら貧溶媒を添加する工程(C)を有する。この工程(C)では、溶液y中において、壁材物質aが析出するとともに、この析出した壁材物質aが界面活性剤cを介して芯材物質bを被覆することでマイクロカプセルeが形成される。すなわち、溶液y中において、壁材物質aが析出するとともに、界面活性剤cの親水基が芯材物質bに吸着することにより、芯材物質bと界面活性剤cの親水基をコアとし、界面活性剤cの疎水基をシェルとするコア/シェル構造が形成され、析出した壁材物質aが当該コア/シェル構造のシェルに濃化することにより芯材物質bの外側に壁材(カプセル壁)が形成され、芯材物質bを内包物質とするマイクロカプセルeが得られる。
以下、この製造方法の実施形態を詳細に説明する。
図1は、この製造方法の一実施形態における一連の工程(A)~(C)を模式的に示したものである。
この製造方法において、壁材物質aとして用いるN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体は、水には不溶であるが、メタノールなどの極性有機溶媒dには可溶である。この製造方法の工程(A)では、例えば、壁材物質aを界面活性剤cとともに極性有機溶媒dに添加するなどして、壁材物質aおよび界面活性剤cが極性有機溶媒dに溶解した溶液xを得る。
極性有機溶媒dとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
界面活性剤cの種類に特別な制限はなく、例えば、Span80(ソルビタンモノオレアート)、Span20(ソルビタンモノラウレート)、Tween20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、ジエチレングリコールモノラウレートなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なかでも、油溶性でHLB値が比較的大きいSpan80やTween20などが特に好ましい。
続く工程(B)では、工程(A)で得られた溶液xにマイクロカプセルの内包物質となる芯材物質bが混合された溶液yを得るが、芯材物質bは、水に可溶であって、有機溶媒に不溶または難溶性である(すなわち一部または全部が有機溶媒に溶解しない)ので、溶液x(有機溶媒)に分散させる分散処理を行う。具体例としては、溶液x(以下、極性有機溶媒dがメタノールである場合を例に説明する)にマイクロカプセルの内包物質となる芯材物質bを添加し、例えば超音波を照射することにより芯材物質bを溶液xに分散させ、連続相(乳化粒子が分散している媒質)の溶液yとする。
芯材物質bとしては、さきにマイクロカプセルの内包物質として説明したように、製造工程中でのコア/シェル構造の安定性を阻害するものでなければ特に制約はなく、マイクロカプセルの用途などに応じて選択すればよいが、なかでも金属用防錆添加剤が好適である。この金属用防錆添加剤については、さきに述べた通りである。なお、溶液y中に分散した芯材物質bは、固体、液体のいずれでもよい。
続く工程(C)では、溶液y(連続相)を必要に応じて加熱することでメタノールが蒸発する温度に維持し、メタノールを蒸発させつつ、溶液yを撹拌しながら貧溶媒を添加する。貧溶媒の種類は特に制限はないが、一般に水が用いられるので、以下は水を用いる場合を例に説明する。溶液yの温度は、メタノールが蒸発できる比較的低い温度とすることが好ましい。ここで、溶液yの温度が低すぎると反応時間が長くなって生産性が低下するとともに、芯材物質の種類によっては芯材物質が離脱して含有率が低下するおそれがあり、一方、溶液yの温度が高すぎるとエタノールが急速に蒸発することで系が不安定になり、マイクロカプセルの収率が低下するおそれがある。このため溶液yの温度は、通常、30~60℃程度が適当である。
この工程では、溶液yを撹拌しながら水を一定速度で加えるのが好ましい。溶液yの撹拌時間は1~3時間程度が適当である。また、溶液yに対する水の添加速度(滴下速度)は、小さすぎるとマイクロカプセルの粗大化や芯材物質の種類によっては含有率の低下が生じやすくなるとともに、反応時間が長くなって生産性が低下するおそれがあり、一方、添加速度が大きすぎるとマイクロカプセルの粒径分布が広くなるなどの問題が生じやすくなるので、0.25~3.5mL/分とするのが適当である。
この工程(C)では、メタノールの蒸発が進み、このメタノールの蒸発と水の添加に伴い、水に不溶な壁材物質aが析出するとともに、芯材物質bに界面活性剤cの親水基が吸着し、界面活性剤による吸着層を形成することにより、安定化された芯物質(コア)が生成され、析出した壁材物質aが上記界面活性剤吸着層の疎水基に吸収可溶化されて濃化することにより、芯材物質bを内包物質とするマイクロカプセルeが得られる。すなわち、この工程(C)では、溶液y中の極性有機溶媒d(メタノール)を蒸発させることでシェルの生成を促進する液中乾燥法の要素と、水の添加によって壁材物質aの析出を促進することで、芯材物資bの外側に壁材物質aによる緻密なシェルを形成するコアセルベーション法の要素が組み合わさったようなメカニズムによって、芯材物質bの外側に壁材物質aによる壁材(カプセル壁)が形成され、溶液y中に内包物質と壁材からなるマイクロカプセルeが生成する。しかも、上記メカニズムによりカプセルが速やかに生成するため、短時間でマイクロカプセルを得ることができる。
溶液yを室温に戻した後、沈殿物(マイクロカプセル)を回収し、洗浄を行った後に乾燥処理して水分を除去し、粉末状のマイクロカプセルを得る。
次に、本発明の金属板の製造方法について説明する。
水系または有機溶剤系塗料にマイクロカプセルeを加えて分散させ(必要に応じて他の添加剤を加える)、塗料組成物とする。塗料組成物中でのマイクロカプセルeの配合量は、塗料固形分中での割合で1~50mass%程度とするのが好ましい。水系または有機溶剤系塗料は、マイクロカプセルeが溶解若しくは凝集しない限り特に制約はなく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂の1種以上を含む塗料などが使用できる。また、市販のアクリル系、ウレタン系、エポキシ系塗料などを使用してもよい。
金属板の表面に上記塗料組成物を塗布した後、加熱乾燥させることで皮膜A(塗膜)を形成する。
金属板への塗料組成物の塗布方法も特に制約はなく、バーコーター、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく、加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗を実施してもよい。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。加熱処理は、到達板温で50~350℃、好ましくは80℃~250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜A中に溶媒が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜Aに欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
(1)マイクロカプセルの製造
(1-1)壁材物質の合成例
1,4-ジオキサン150gにN-イソプロピルアクリルアミド(和光純薬工業社製)10.4gと(メタ)アクリル酸(和光純薬工業社製)を加えて撹拌し、N-イソプロピルアクリルアミドを完全に溶解した。(メタ)アクリル酸の添加量は、表1に示すモル比(N-イソプロピルアクリルアミド:(メタ)アクリル酸=1.0:0.3~1.0:2.5)となるように調整した。この溶液に重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.35gを加えて完全に溶解したところで、撹拌しながら溶液の温度を70℃まで加温し、200rpmの撹拌速度で6時間加熱し、N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸を重合させた。40℃付近まで溶液の温度を下げ、濾過回収を行い、これを38~45℃で5時間乾燥させることで粉末状のN-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体を得た。
(1-2)マイクロカプセルの製造例
(1-2-1)硝酸塩を内包物質とするマイクロカプセルの製造例
上記のようにして合成された壁材物質(N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体)0.55gをメタノール5.0gに加え、さらに、界面活性剤としてソルビタンモノオレアート(Span80,和光純薬工業社製)11.4mgとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20,和光純薬工業社製)6.1mgを添加し、壁材物質を完全に溶解させた溶液を得た(工程A)。
次いで、この溶液に芯材物質として硝酸アルミニウム九水和物(関東化学社製)または硝酸セリウム六水和物(関東化学社製)0.25gを加え、3分間超音波を照射して溶液中に分散させ、連続相とした(工程B)。
次いで、この溶液の温度を30~60℃に保ち、700rpmで撹拌を行いながら蒸留水40mLを0.25~3.5mL/分の添加速度で添加した後、さらに200rpmで1時間撹拌した(工程C)。
溶液を室温に戻した後、10,000rpm、15分の条件で遠心分離を行い、沈殿物を回収し、洗浄を行った後、38~45℃で5時間乾燥し、水分を完全に除去し、マイクロカプセルを得た。
なお、硝酸塩などの芯材物質を添加せずに、上記と同じ条件でマイクロカプセルを製造し、比較例のブランクマイクロカプセルとした。
(1-2-2)硫酸バナジルを内包物質とするマイクロカプセルの製造例
上記のようにして合成された壁材物質(N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体)0.4gをメタノール7.0gに加え、さらに、界面活性剤としてソルビタンモノオレアート(Span80,和光純薬工業社製)11.4mgとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20,和光純薬工業社製)6.1mgを添加し、壁材物質を完全に溶解させた溶液を得た(工程A)。
次いで、この溶液に芯材物質として硫酸バナジル(新興化学社製)0.09gをメタノール0.6gに溶解したものを加え、3分間超音波を照射して溶液中に分散させ、連続相とした(工程B)。
次いで、この溶液の温度を30~60℃に保ち、700rpmで撹拌を行いながら5.0質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液40mLを1.4mL/分の添加速度で添加した後、さらに200rpmで1時間撹拌した(工程C)。
溶液を室温に戻した後、10,000rpm、15分の条件で遠心分離を行い、沈殿物を回収し、洗浄を行った後、38~45℃で5時間乾燥し、水分を完全に除去し、マイクロカプセルを得た。
(2)マイクロカプセルの製造性およびpH応答性の評価
上述したマイクロカプセルの製造例を表1に示すが、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のものは、得られた粉末のSEM分析により球形のカプセルが得られていることが確認された。また、比較例であるNo.6、12、19~22のものも同様であった。一方、比較例であるNo.17、18では、粉末の形態が塊状であり、マイクロカプセルが得られなかった。さらに、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のものは、EDX分析によりそれぞれの内包物質の金属成分(Al、Ce、V)が検出されたことから、それぞれの内包物質(硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、硫酸バナジル)が内包されていることが確認された。また、比較例であるNo.19~21のものも同様であった。
製造されたマイクロカプセルのpH応答性を以下のようにして評価した。
透明な容器に入れた蒸留水50mLにマイクロカプセルを0.05g加え、超音波を30秒間照射し、マイクロカプセルの乳化分散による溶液(pH=5.6)の白濁を確認した。次いで、10%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを7.0、8.0、9.0、10.0、12.0に調整し、さらに超音波を30秒間照射した後、溶液の状態を確認し、溶液が透明になった場合にマイクロカプセルが溶解したと判断した。その結果を、壁材物質の合成条件およびマイクロカプセルの製造条件とともに表1に示す。
表1によれば、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のマイクロカプセルは、pH8以上でのみ溶解するpH応答性を有していることが判る。これに対して比較例であるNo.19~22のマイクロカプセルは、pH8未満の領域で溶解していることが判る。
Figure 0007156259000001
(3)塗膜(皮膜)中にマイクロカプセルを含有する塗装鋼板の製造
水系エポキシ塗料(Allnex社製「Beckopox EP386」)に表1に示したマイクロカプセル(マイクロカプセル化しなかったNo.17,18を含む)を塗料固形分中の割合で1~50mass%添加し、この塗料組成物をバーコーターで鋼板(板厚0.8mmの冷延軟鋼板)に塗布した後、インダクションヒーターを用いて到達板温80℃(昇温時間5秒)で加熱乾燥し、塗装鋼板を製造した。なお、塗装鋼板の皮膜厚(1~10μm)は、塗料組成物の塗料固形分の濃度を変えることで調整した。
また、比較例の塗装鋼板として、防錆剤をマイクロカプセルとしてではなく、そのまま添加した塗料組成物を用い、上記と同様の製造条件で塗装鋼板を製造した。
(4)塗装鋼板の耐食性評価
上記のようにして製造された塗装鋼板からサンプルを採取し、このサンプルに対してJIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験を実施し、所定時間ごとに外観を観察し、鋼板表面に占める赤錆の面積率が5%以上となるまでの時間を評価した。赤錆面積率は、所定時間試験した後の試験片の写真から赤錆が発生している領域の面積を測定し、全面積との比率を求めることで算出した。
マイクロカプセルを添加した塗料組成物を用いた塗装鋼板の試験結果を、塗装鋼板の構成(皮膜厚、マイクロカプセルの添加条件)とともに表2に示す。また、防錆剤をマイクロカプセルとしてではなく、そのまま添加した塗料組成物を用いた塗装鋼板の試験結果を、塗装鋼板の構成(皮膜厚、防錆剤の添加条件)とともに表3に示す。
表2及び表3によれば、発明例の塗装鋼板は比較例の塗装鋼板に比べて耐食性が向上していることが判る。
Figure 0007156259000002
Figure 0007156259000003
A 皮膜
e マイクロカプセル
a 壁材物質
b 芯材物質
c 界面活性剤
x 溶液
y 溶液

Claims (12)

  1. 特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を含有する皮膜(A)を有する金属板であって、
    マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板。
  2. 皮膜(A)中のマイクロカプセル(e)の含有量が1~50mass%であることを特徴とする請求項1に記載の金属板。
  3. 皮膜(A)の膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属板。
  4. マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属板。
  5. マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の金属板。
  6. 金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の金属板。
  7. 金属板表面に、特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を分散させた塗料組成物を塗布した後、乾燥させることにより皮膜(A)を形成する金属板の製造方法であって、
    マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板の製造方法。
  8. 金属板表面に塗布する塗料組成物におけるマイクロカプセルeの配合量が、塗料固形分中での割合で1~50mass%であることを特徴とする請求項7に記載の金属板の製造方法。
  9. 金属板表面に膜厚が1μm以上の皮膜(A)を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の金属板の製造方法。
  10. マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の金属板の製造方法。
  11. マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の金属板の製造方法。
  12. 金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項11に記載の金属板の製造方法。
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