JP7156259B2 - 金属板およびその製造方法 - Google Patents
金属板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7156259B2 JP7156259B2 JP2019213601A JP2019213601A JP7156259B2 JP 7156259 B2 JP7156259 B2 JP 7156259B2 JP 2019213601 A JP2019213601 A JP 2019213601A JP 2019213601 A JP2019213601 A JP 2019213601A JP 7156259 B2 JP7156259 B2 JP 7156259B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- meth
- microcapsules
- metal plate
- acrylic acid
- substituted
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Colloid Chemistry (AREA)
- Paints Or Removers (AREA)
- Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
- Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)
- Manufacturing Of Micro-Capsules (AREA)
Description
塗膜に添加される防錆添加剤の多くは、腐食環境下で塗膜から溶出し、金属の腐食反応に対して特定の作用を及ぼすことで腐食抑制に寄与するものである。しかし、腐食環境下での塗膜からの防錆添加剤の溶出は、金属の腐食反応の有無とは関係なく生じるため、継続的な溶出によって防錆添加剤が次第に消費され、必要なときに十分な溶出量が得られなくなる場合がある。すなわち、従来の塗装鋼板では、防錆添加剤による腐食抑制効果を長期間にわたって維持することが難しいという問題がある。
しかし、従来のpH応答性マイクロカプセルには、以下のような問題があることが判った。
例えば、非特許文献1には多糖類を用いてマイクロカプセル化する方法が、非特許文献2にはPNIPAMとPAAの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法、非特許文献3にはPNIPAMをシェル、PAAをヨークとしてマイクロカプセル化する方法が、特許文献1にはポリスチレンとポリビニルピリジンの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法が、特許文献2にはポリスチレンとポリアミンの共重合体を用いてマイクロカプセル化する方法が、それぞれ開示されている。
さらに、金属用防錆添加剤を内包させ、pH応答性を付与したマイクロカプセルとしては、アミン誘導体を用いたものが提案されている。このようなマイクロカプセルに関して、例えば、非特許文献6には、トリエタノールアミンを内包させたマイクロカプセルが開示されている。
また、非特許文献2、3に記載のマイクロカプセルはPNIPAMとPAAから構成されるが、PAA中のスルファジアジン基やカルボキシル基と内包物質のドキソルビシンとの酸塩基平衡反応を利用するため、酸性領域での放出量が多く、pHが7.4の中性領域でも内包物質が放出されるため、当該pHを有する水溶液に分散させると、内包物質を保持することができない。
また、非特許文献6は、金属の腐食反応によってpHが変化することに着目し、アミン誘導体の酸解離反応を利用することでpH応答性を有するマイクロカプセルを腐食抑制剤として使用しているが、コアラテックスからのシード重合でカプセル壁を合成しており、製造コストの観点から工業的には不向きである。また、pHが6.5の中性領域でも内包物質が放出されるため、当該pHを有する水溶液に分散させると、内包物質を保持することができない。
また、本発明の他の目的は、そのような金属板を簡便且つ低コストに安定して製造することができる製造方法を提供することにある。
[1]特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を含有する皮膜(A)を有する金属板であって、
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板。
[3]上記[1]または[2]の金属板において、皮膜(A)の膜厚が1μm以上であることを特徴とする金属板。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの金属板において、マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする金属板。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの金属板において、マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする金属板。
[6]上記[5]の金属板において、金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする金属板。
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板の製造方法。
[9]上記[7]または[8]の製造方法において、金属板表面に膜厚が1μm以上の皮膜(A)を形成することを特徴とする金属板の製造方法。
[10]上記[7]~[9]のいずれかの製造方法において、マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする金属板の製造方法。
[11]上記[7]~[10]の製造方法において、マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする金属板の製造方法。
[12]上記[11]の製造方法において、金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする金属板の製造方法。
また、本発明の金属板の皮膜中に含まれるマイクロカプセルは、壁材を構成するN-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体の共重合比を調整することにより、内包物質を放出するpHレベルを変えることができるので、使用環境や用途などに応じた防食性能を有する金属板を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、以上のような優れた性能を有する金属板を、簡便且つ低コストに安定して製造することができる。
皮膜Aには、マイクロカプセルeほかに、必要に応じて、カップリング剤、固形潤滑剤、有機着色顔料、着色染料、無機顔料、キレート剤、導電性顔料、防錆添加剤などのような添加剤の1種以上を添加してもよい。
皮膜Aの膜厚(乾燥膜厚)は1μm以上が好ましい。1μm未満では十分な耐食性が得られないおそれがある。一方、膜厚に特別な上限はなく、必要な耐食性とコストを考慮して決定すればよいが、一般的には20μm程度が上限となる。ここで、皮膜Aの膜厚は、無作為に選択された5箇所の皮膜厚を断面SEM観察により測定し、それらの測定値の平均値をもって膜厚とする。
従来からpHに応答するマイクロカプセルとしては多糖類を用いたものが知られており、特に医療の分野で用いられているが、生体内でのドラッグデリバリーを目的としているためアルカリ性領域でのpH応答性が乏しかった。これに対して本発明で用いるマイクロカプセルeは、上記のようにN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を主成分とする壁材を備えることにより、特定のpH領域(例えばpH8以上のアルカリ性領域)においてのみ壁材が溶解して内包物質を放出する高いpH応答性を有する。
なお、本発明で用いるマイクロカプセルeを後述するような製法で製造する場合、内包物質は、水に可溶であって、有機溶媒に不溶または難溶性である必要があり、有機溶媒に添加しても一部または全部が有機溶媒に溶解しないため、有機溶媒に分散させる分散処理が必要となる。上述した硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩など(金属用防錆添加剤)もこのような物質である。
本発明で用いるマイクロカプセルeの壁材は、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を主成分とし、その他の成分として、マイクロカプセル製造時に使用する界面活性剤成分(マイクロカプセル製造時に芯材物質の外側に吸着した界面活性剤成分)などを含む。
メタノール、エタノール、アセトンなどの溶媒にN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体を加えて撹拌し、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体を完全に溶解する。ここで、N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体の配合比は、上述したようにN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0となるように調整する。この理由は、さきに述べたとおりである。
反応終了後、溶液の温度を下げて反応生成物をろ過回収し、この反応生成物を乾燥させることで、マイクロカプセルの壁材物質として用いる粉末状の「N-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体」を得ることができる。
マイクロカプセルeの粒径は特に制限はないが、粒径が皮膜Aの膜厚との関係で極端に大きいと、皮膜Aによるマイクロカプセルの保持性が低下し、防食性能が劣る場合があるので、一般には粒径は10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
この製造方法は、マイクロカプセルの壁材となる壁材物質aとして、上述したN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体を用い、壁材物質aおよび界面活性剤cが極性有機溶媒dに溶解した溶液xを得る工程(A)と、この工程(A)で得られた溶液xにマイクロカプセルの内包物質となる芯材物質bが混合された溶液yを得る工程(B)と、この工程(B)で得られた溶液yを極性有機溶媒dが蒸発する温度に維持することにより極性有機溶媒dを蒸発させつつ、溶液yを撹拌しながら貧溶媒を添加する工程(C)を有する。この工程(C)では、溶液y中において、壁材物質aが析出するとともに、この析出した壁材物質aが界面活性剤cを介して芯材物質bを被覆することでマイクロカプセルeが形成される。すなわち、溶液y中において、壁材物質aが析出するとともに、界面活性剤cの親水基が芯材物質bに吸着することにより、芯材物質bと界面活性剤cの親水基をコアとし、界面活性剤cの疎水基をシェルとするコア/シェル構造が形成され、析出した壁材物質aが当該コア/シェル構造のシェルに濃化することにより芯材物質bの外側に壁材(カプセル壁)が形成され、芯材物質bを内包物質とするマイクロカプセルeが得られる。
図1は、この製造方法の一実施形態における一連の工程(A)~(C)を模式的に示したものである。
この製造方法において、壁材物質aとして用いるN-置換(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体と(メタ)アクリル酸またはその誘導体のランダム共重合体は、水には不溶であるが、メタノールなどの極性有機溶媒dには可溶である。この製造方法の工程(A)では、例えば、壁材物質aを界面活性剤cとともに極性有機溶媒dに添加するなどして、壁材物質aおよび界面活性剤cが極性有機溶媒dに溶解した溶液xを得る。
界面活性剤cの種類に特別な制限はなく、例えば、Span80(ソルビタンモノオレアート)、Span20(ソルビタンモノラウレート)、Tween20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、ジエチレングリコールモノラウレートなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なかでも、油溶性でHLB値が比較的大きいSpan80やTween20などが特に好ましい。
芯材物質bとしては、さきにマイクロカプセルの内包物質として説明したように、製造工程中でのコア/シェル構造の安定性を阻害するものでなければ特に制約はなく、マイクロカプセルの用途などに応じて選択すればよいが、なかでも金属用防錆添加剤が好適である。この金属用防錆添加剤については、さきに述べた通りである。なお、溶液y中に分散した芯材物質bは、固体、液体のいずれでもよい。
溶液yを室温に戻した後、沈殿物(マイクロカプセル)を回収し、洗浄を行った後に乾燥処理して水分を除去し、粉末状のマイクロカプセルを得る。
水系または有機溶剤系塗料にマイクロカプセルeを加えて分散させ(必要に応じて他の添加剤を加える)、塗料組成物とする。塗料組成物中でのマイクロカプセルeの配合量は、塗料固形分中での割合で1~50mass%程度とするのが好ましい。水系または有機溶剤系塗料は、マイクロカプセルeが溶解若しくは凝集しない限り特に制約はなく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂の1種以上を含む塗料などが使用できる。また、市販のアクリル系、ウレタン系、エポキシ系塗料などを使用してもよい。
金属板の表面に上記塗料組成物を塗布した後、加熱乾燥させることで皮膜A(塗膜)を形成する。
金属板への塗料組成物の塗布方法も特に制約はなく、バーコーター、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。加熱処理は、到達板温で50~350℃、好ましくは80℃~250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜A中に溶媒が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜Aに欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
(1-1)壁材物質の合成例
1,4-ジオキサン150gにN-イソプロピルアクリルアミド(和光純薬工業社製)10.4gと(メタ)アクリル酸(和光純薬工業社製)を加えて撹拌し、N-イソプロピルアクリルアミドを完全に溶解した。(メタ)アクリル酸の添加量は、表1に示すモル比(N-イソプロピルアクリルアミド:(メタ)アクリル酸=1.0:0.3~1.0:2.5)となるように調整した。この溶液に重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.35gを加えて完全に溶解したところで、撹拌しながら溶液の温度を70℃まで加温し、200rpmの撹拌速度で6時間加熱し、N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸を重合させた。40℃付近まで溶液の温度を下げ、濾過回収を行い、これを38~45℃で5時間乾燥させることで粉末状のN-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体を得た。
(1-2-1)硝酸塩を内包物質とするマイクロカプセルの製造例
上記のようにして合成された壁材物質(N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体)0.55gをメタノール5.0gに加え、さらに、界面活性剤としてソルビタンモノオレアート(Span80,和光純薬工業社製)11.4mgとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20,和光純薬工業社製)6.1mgを添加し、壁材物質を完全に溶解させた溶液を得た(工程A)。
次いで、この溶液に芯材物質として硝酸アルミニウム九水和物(関東化学社製)または硝酸セリウム六水和物(関東化学社製)0.25gを加え、3分間超音波を照射して溶液中に分散させ、連続相とした(工程B)。
溶液を室温に戻した後、10,000rpm、15分の条件で遠心分離を行い、沈殿物を回収し、洗浄を行った後、38~45℃で5時間乾燥し、水分を完全に除去し、マイクロカプセルを得た。
なお、硝酸塩などの芯材物質を添加せずに、上記と同じ条件でマイクロカプセルを製造し、比較例のブランクマイクロカプセルとした。
上記のようにして合成された壁材物質(N-イソプロピルアクリルアミドと(メタ)アクリル酸のランダム共重合体)0.4gをメタノール7.0gに加え、さらに、界面活性剤としてソルビタンモノオレアート(Span80,和光純薬工業社製)11.4mgとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20,和光純薬工業社製)6.1mgを添加し、壁材物質を完全に溶解させた溶液を得た(工程A)。
次いで、この溶液に芯材物質として硫酸バナジル(新興化学社製)0.09gをメタノール0.6gに溶解したものを加え、3分間超音波を照射して溶液中に分散させ、連続相とした(工程B)。
次いで、この溶液の温度を30~60℃に保ち、700rpmで撹拌を行いながら5.0質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液40mLを1.4mL/分の添加速度で添加した後、さらに200rpmで1時間撹拌した(工程C)。
溶液を室温に戻した後、10,000rpm、15分の条件で遠心分離を行い、沈殿物を回収し、洗浄を行った後、38~45℃で5時間乾燥し、水分を完全に除去し、マイクロカプセルを得た。
上述したマイクロカプセルの製造例を表1に示すが、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のものは、得られた粉末のSEM分析により球形のカプセルが得られていることが確認された。また、比較例であるNo.6、12、19~22のものも同様であった。一方、比較例であるNo.17、18では、粉末の形態が塊状であり、マイクロカプセルが得られなかった。さらに、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のものは、EDX分析によりそれぞれの内包物質の金属成分(Al、Ce、V)が検出されたことから、それぞれの内包物質(硝酸アルミニウム、硝酸セリウム、硫酸バナジル)が内包されていることが確認された。また、比較例であるNo.19~21のものも同様であった。
透明な容器に入れた蒸留水50mLにマイクロカプセルを0.05g加え、超音波を30秒間照射し、マイクロカプセルの乳化分散による溶液(pH=5.6)の白濁を確認した。次いで、10%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを7.0、8.0、9.0、10.0、12.0に調整し、さらに超音波を30秒間照射した後、溶液の状態を確認し、溶液が透明になった場合にマイクロカプセルが溶解したと判断した。その結果を、壁材物質の合成条件およびマイクロカプセルの製造条件とともに表1に示す。
表1によれば、発明例であるNo.1~5、7~11、13~16のマイクロカプセルは、pH8以上でのみ溶解するpH応答性を有していることが判る。これに対して比較例であるNo.19~22のマイクロカプセルは、pH8未満の領域で溶解していることが判る。
水系エポキシ塗料(Allnex社製「Beckopox EP386」)に表1に示したマイクロカプセル(マイクロカプセル化しなかったNo.17,18を含む)を塗料固形分中の割合で1~50mass%添加し、この塗料組成物をバーコーターで鋼板(板厚0.8mmの冷延軟鋼板)に塗布した後、インダクションヒーターを用いて到達板温80℃(昇温時間5秒)で加熱乾燥し、塗装鋼板を製造した。なお、塗装鋼板の皮膜厚(1~10μm)は、塗料組成物の塗料固形分の濃度を変えることで調整した。
また、比較例の塗装鋼板として、防錆剤をマイクロカプセルとしてではなく、そのまま添加した塗料組成物を用い、上記と同様の製造条件で塗装鋼板を製造した。
上記のようにして製造された塗装鋼板からサンプルを採取し、このサンプルに対してJIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験を実施し、所定時間ごとに外観を観察し、鋼板表面に占める赤錆の面積率が5%以上となるまでの時間を評価した。赤錆面積率は、所定時間試験した後の試験片の写真から赤錆が発生している領域の面積を測定し、全面積との比率を求めることで算出した。
マイクロカプセルを添加した塗料組成物を用いた塗装鋼板の試験結果を、塗装鋼板の構成(皮膜厚、マイクロカプセルの添加条件)とともに表2に示す。また、防錆剤をマイクロカプセルとしてではなく、そのまま添加した塗料組成物を用いた塗装鋼板の試験結果を、塗装鋼板の構成(皮膜厚、防錆剤の添加条件)とともに表3に示す。
表2及び表3によれば、発明例の塗装鋼板は比較例の塗装鋼板に比べて耐食性が向上していることが判る。
e マイクロカプセル
a 壁材物質
b 芯材物質
c 界面活性剤
x 溶液
y 溶液
Claims (12)
- 特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を含有する皮膜(A)を有する金属板であって、
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板。 - 皮膜(A)中のマイクロカプセル(e)の含有量が1~50mass%であることを特徴とする請求項1に記載の金属板。
- 皮膜(A)の膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属板。
- マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属板。
- マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の金属板。
- 金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の金属板。
- 金属板表面に、特定のpH領域において内包物質を放出するマイクロカプセル(e)を分散させた塗料組成物を塗布した後、乾燥させることにより皮膜(A)を形成する金属板の製造方法であって、
マイクロカプセル(e)は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上のランダム共重合体を主成分とする壁材を備え、前記ランダム共重合体は、N-置換(メタ)アクリルアミドおよびN-置換(メタ)アクリルアミド誘導体の中から選ばれる1種以上と(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体の中から選ばれる1種以上の共重合比(モル比)が1.0:0.5~1.0:2.0であることを特徴とする金属板の製造方法。 - 金属板表面に塗布する塗料組成物におけるマイクロカプセルeの配合量が、塗料固形分中での割合で1~50mass%であることを特徴とする請求項7に記載の金属板の製造方法。
- 金属板表面に膜厚が1μm以上の皮膜(A)を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の金属板の製造方法。
- マイクロカプセル(e)の壁材が溶解するpH領域がpH8以上であることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の金属板の製造方法。
- マイクロカプセル(e)の内包物質が金属用防錆添加剤であることを特徴とする請求項7~10のいずれかに記載の金属板の製造方法。
- 金属用防錆添加剤が硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項11に記載の金属板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019213601A JP7156259B2 (ja) | 2019-11-26 | 2019-11-26 | 金属板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019213601A JP7156259B2 (ja) | 2019-11-26 | 2019-11-26 | 金属板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021085057A JP2021085057A (ja) | 2021-06-03 |
JP7156259B2 true JP7156259B2 (ja) | 2022-10-19 |
Family
ID=76088189
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019213601A Active JP7156259B2 (ja) | 2019-11-26 | 2019-11-26 | 金属板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7156259B2 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006083454A (ja) | 2004-09-17 | 2006-03-30 | Kurita Water Ind Ltd | 腐食抑止用マイクロカプセル及びそれを用いた水系の金属の腐食抑止方法 |
JP2006255536A (ja) | 2005-03-15 | 2006-09-28 | Trans Parent:Kk | pH応答性マイクロカプセルの調製方法 |
US20100305234A1 (en) | 2005-09-19 | 2010-12-02 | United States of America as represented by the Administrator of the National Aeronautics and | Hydrophobic-Core Microcapsules and their Formation |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6082131A (ja) * | 1983-10-12 | 1985-05-10 | Nagoya Yukagaku Kogyo Kk | フェノール樹脂用微小カプセル型硬化剤 |
JPH0336435U (ja) * | 1989-08-15 | 1991-04-09 | ||
CA2184814A1 (en) * | 1994-03-04 | 1995-09-14 | Allan S. Hoffman | Block and graft copolymers and methods relating thereto |
US5422233A (en) * | 1994-05-17 | 1995-06-06 | Polaroid Corporation | Photographic processing compositions including hydrophobically modified thickening agent |
JP3584722B2 (ja) * | 1998-02-13 | 2004-11-04 | 富士ゼロックス株式会社 | 高分子ゲル組成物、その製造方法及びそれを用いた光学素子 |
JPH11344688A (ja) * | 1998-06-02 | 1999-12-14 | Fuji Xerox Co Ltd | 刺激応答性高分子組成物及びそれを用いた光学素子 |
-
2019
- 2019-11-26 JP JP2019213601A patent/JP7156259B2/ja active Active
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006083454A (ja) | 2004-09-17 | 2006-03-30 | Kurita Water Ind Ltd | 腐食抑止用マイクロカプセル及びそれを用いた水系の金属の腐食抑止方法 |
JP2006255536A (ja) | 2005-03-15 | 2006-09-28 | Trans Parent:Kk | pH応答性マイクロカプセルの調製方法 |
US20100305234A1 (en) | 2005-09-19 | 2010-12-02 | United States of America as represented by the Administrator of the National Aeronautics and | Hydrophobic-Core Microcapsules and their Formation |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2021085057A (ja) | 2021-06-03 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Liu et al. | Self-healing corrosion protective coatings based on micro/nanocarriers: A review | |
Yimyai et al. | Corrosion‐Responsive Self‐Healing Coatings | |
CN102459474B (zh) | 按需释放的腐蚀抑制剂组合物 | |
CN101397669B (zh) | 端面耐腐蚀性优良的非铬类树脂涂敷金属板 | |
JP3305595B2 (ja) | 防錆性有機皮膜を有する金属板及びその製造方法並びにそれに用いる処理液 | |
JP5654403B2 (ja) | 防錆塗料用水性樹脂組成物 | |
CN105349000B (zh) | 一种金属表面防腐蚀涂料及其制备方法 | |
US20130196173A1 (en) | Organic Corrosion Inhibitor-Embedded Polymer Capsule, Preparation Method Thereof, Composition Containing Same, and Surface Treated Steel Sheet Using Same | |
EA028053B1 (ru) | Способ обработки поверхности покрытого цинк-алюминий-магниевым сплавом стального листа | |
Zhao et al. | The fabrication and corrosion resistance of benzotriazole-loaded raspberry-like hollow polymeric microspheres | |
KR101171973B1 (ko) | 내부식제가 봉입된 나노 캡슐, 그 제조방법, 이를 포함하는 조성물 및 이를 이용한 표면처리 강판 | |
JP7156259B2 (ja) | 金属板およびその製造方法 | |
Calle et al. | Microencapsulated indicators and inhibitors for corrosion detection and control | |
JP4886326B2 (ja) | 耐食性および表面性状に優れた樹脂塗装金属板 | |
JP2012021135A (ja) | 防錆塗料用水性樹脂組成物 | |
EP3790935A1 (en) | A method for providing coating systems with corrosion-protective properties | |
JP7094260B2 (ja) | pH応答型マイクロカプセルおよびその製造方法、並びにpH応答型マイクロカプセルの壁材用樹脂組成物 | |
GB2527640A (en) | Corrosion inhibitors, improved paint and corrosion protection coating | |
CN105111349B (zh) | 一种含有非离子乳化剂的三元共聚物乳液及其制备方法 | |
JP7120652B2 (ja) | 腐食抑制剤 | |
CN101952376B (zh) | 用于自动沉积的碱性涂层组合物 | |
CN114981365A (zh) | 缓蚀剂 | |
JP2000198949A (ja) | 防錆塗料及び防錆処理された金属材料 | |
JPH03192166A (ja) | 防錆性水分散性樹脂組成物 | |
JPWO2018074298A1 (ja) | 表面処理された亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20210623 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20220419 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20220426 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20220527 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20220906 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220919 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7156259 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |