JP7156151B2 - 活性エネルギー線硬化性組成物 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献2には、ラジカル重合開始部位を有する環状分子を含むポリロタキサン、このポリロタキサンと所定のポリマーとの架橋体を有する材料、および架橋体の製造方法が提案されており、上記材料を熱乾燥して得られたフィルムは高粘弾性を示すことが報告されている。しかし、耐久性については示されていない。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。
1. (A)下記式(I)
で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、
(B)複数個の環状分子によって直鎖状分子が包接され、この直鎖状分子の両末端が封鎖基で封鎖されており、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンと
を含む活性エネルギー線硬化性組成物、
2. (B)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基が環状分子に結合している1記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
3. (B)成分の環状分子がシクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールである1または2記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
4. さらに、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤を含有する1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
5. さらに、(A)および(B)成分以外の重合性不飽和化合物を含有する1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
6. さらに、溶剤を含有する1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
7. 1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング剤、
8. 基材と、この基材の少なくとも一方の面に直接または少なくとも1種のその他の層を介して積層された硬化膜とを有し、前記硬化膜が、7記載のコーティング剤から作製された硬化膜である被覆物品
を提供する。
(1)活性エネルギー線硬化性組成物
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、(A)下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、(B)(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンを含有する。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における(A)成分は、下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン化合物である。
これらの中でも、炭素原子数1~5のアルキレン基が好ましく、エチレン基、トリメチレン基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、R4としては、炭素原子数1~4のアルキル基またはフェニル基が好ましく、メチル基またはフェニル基がより好ましい。
a、b、c、dおよびeは、0.1≦a≦0.5、0≦b≦0.2、0≦c≦0.4、0≦d≦0.4、0.2≦e≦0.7、かつa+b+c+d+e=1を満たす数を表し、fは、0≦f≦0.3を満たす数を表す。
bは0≦b≦0.2を満たす数であるが、0≦b≦0.1が好ましい。bが0.2を超えると、得られる硬化物が耐クラック性、耐屈曲性に劣るものとなる。
cは0≦c≦0.4を満たす数であるが、0≦c≦0.2が好ましい。cが0.4を超えると、得られる硬化物が耐クラック性、耐屈曲性に劣るものとなる。
dは0≦d≦0.4を満たす数であるが、0≦d≦0.3が好ましい。dが0.4を超えると、得られる硬化物が硬度に劣るものとなる。
eは0.2≦e≦0.7を満たす数であるが、0.3≦e≦0.6が好ましい。eが0.2未満の場合は、オルガノポリシロキサン化合物が高粘度となり、作業性および加工性の観点から好ましくない。eが0.7を超えると、得られる硬化物が硬度に劣るものとなる。
fは0≦f≦0.3を満たす数であるが、縮合性官能基による縮合反応の抑制に効果的であることや、得られる硬化物の耐クラック性、耐水性および耐候性の観点を考慮すると、fは0≦f≦0.1を満たす数が好ましい。
また、本発明で用いるオルガノポリシロキサン化合物は、有機溶剤等を除く不揮発分が96質量%以上(揮発分が4質量%未満、特に3質量%以下)であることが好ましい。揮発分が多くなると、組成物を硬化した際のボイド発生による外観の悪化や、機械的性質の低下の原因となる場合がある。
(A)成分は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、ウレタン結合および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を含む加水分解性シランを縮合して得ることができる。
で表される加水分解性シランを用いて、R4 3SiX(R4およびXは上記と同じである。)で示されるシラン化合物および/またはその加水分解縮合物とともに、触媒の存在下で加水分解縮合を行ってオルガノポリシロキサン化合物を製造する方法が挙げられる。
これらのシラン化合物および/またはその加水分解縮合物の添加量は、式(II)のシラン1モルに対して、0.5~3モルが好ましく、より好ましくは0.5~2モルである。
触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応を速やかに進行させるとともに、反応後の触媒の除去の容易性を考慮すると、加水分解性シラン1モルに対して0.0002~0.5モルの範囲が好ましい。
加水分解縮合時の反応温度は、特に限定されるものではないが、反応率を向上させるとともに、加水分解性シランが有する有機官能基の分解を防止することを考慮すると、-10~150℃が好ましく、反応時間は1~6時間が好ましい。
(B)成分は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンである。ポリロタキサンは、複数個の環状分子によって直鎖状分子が包接され、この直鎖状分子の両末端が封鎖基で封鎖された構造を有する。本発明においては、(メタ)アクリロイルオキシ基は環状分子に結合していることが好ましい。
本発明で用いるポリロタキサンは、これらの環状分子を2個以上有することが好ましく、3~1,000個有することがより好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、(A),(B)成分以外の重合性不飽和化合物を含有してもよい。
(A),(B)成分以外の重合性不飽和化合物の具体例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA、ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート等が挙げられる。
上記重合性不飽和化合物を用いる場合、その配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン化合物100質量部に対して、1~1,000質量部が好ましい。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線によりラジカル種を発生する開始剤であれば特に限定されるものではなく、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の公知の光重合開始剤から適宜選択して用いることができる。
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、チオキサントン誘導体、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、2-メチル-1-{4-(メチルチオ)フェニル}-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤を配合する場合、その配合量は特に制限されないが、(A),(B)成分の総量100質量部((A),(B)成分以外のその他の重合性不飽和化合物を含む場合、(A),(B)成分およびその他の重合性不飽和化合物の総量100質量部)に対して5~100質量部が好ましく、より好ましくは10~80質量部である。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の粘度は特に限定されるものではないが、成形または塗布作業性を良好にし、すじむら等の発生を抑制することを考慮すると、回転粘度計により測定される25℃での粘度が、500mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以下がより好ましい。なお、25℃における粘度の下限は10mPa・s以上が好ましい。
上述した本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、コーティング剤として好適に使用可能であり、基材の少なくとも一方の面に、直接または少なくとも1種のその他の層を介して塗布し、それを硬化させることにより被膜を形成した被覆物品を得ることができる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物は、フィルムとしても好適に使用可能である。
また、これらの基材の表面が、化成処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸やアルカリ液で処理されている基材や、基材本体と表層が異なる種類の塗料で被覆された化粧合板等も用いることもできる。
さらに、被覆物品は、本発明のコーティング剤からなる塗膜が形成された面とは反対側の面が、ハードコート層、防錆層、ガスバリア層、防水層、熱線遮蔽層、防汚層、光触媒層、帯電防止層等の一層または二層以上の複数層によって被覆されていてもよい。
照射量は特に制限されないが、10~5,000mJ/cm2が好ましく、20~1,000mJ/cm2がより好ましい。
硬化時間は、通常0.5秒~2分であり、好ましくは1秒~1分である。
なお、下記において、揮発分はJIS C2133に準じて測定した値であり、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(HLC-8220、東ソー(株)製)を用いてテトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒として測定した値である。
また、式(I)におけるa~fの値は、1H-NMRおよび29Si-NMRスペクトル測定の結果から算出した。
[合成例1-1]オルガノポリシロキサン1-1の合成
特開2010-189294号公報の実施例1に記載の方法と同様にして合成した下記式(III)で表される化合物964.2g(3.0モル)、ジメチルジメトキシシラン360.7g(3.0モル)、ヘキサメチルジシロキサン487.1g(3.0モル)、メタンスルホン酸7.3gを反応器中で混合し、均一になったところでイオン交換水162.0gを添加し、25℃で4時間撹拌した。次いで、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)36.7gを投入し、2時間撹拌して中和した。続いて、減圧下にてメタノール等の揮発成分を留去し、トルエンと芒硝水を加え、水洗後トルエン層を回収し、トルエンを留去した後、加圧濾過を行った。
上記式(III)で表される化合物1,285.6g(4.0モル)、メチルトリメトキシシラン136.22g(1.0モル)、ジメチルジメトキシシラン360.7g(3.0モル)、ヘキサメチルジシロキサン487.1g(3.0モル)、メタンスルホン酸8.9gを反応器中で混合し、均一になったところでイオン交換水226.8gを添加し、25℃で4時間撹拌した。次いで、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)44.7gを投入し、2時間撹拌して中和した。続いて、減圧下にてメタノール等の揮発成分を留去し、トルエンと芒硝水を加え水洗後トルエン層を回収し、トルエンを留去した後、加圧濾過を行った。
得られた反応物は、粘度2,200mPa・s、揮発分1.6質量%、重量平均分子量1,870の25℃で粘稠な液体であった。NMRスペクトル測定の結果から算出した式(I)におけるa~fの値は、それぞれa=0.30、b=0、c=0.08、d=0.22、e=0.40、f=0.05であった。
上記式(III)で表される化合物1,285.6g(4.0モル)、テトラメトキシシラン30.5g(0.1モル)、ジメチルジメトキシシラン721.3g(6.0モル)、ヘキサメチルジシロキサン487.1g(3.0モル)、メタンスルホン酸9.8gを反応器中で混合し、均一になったところでイオン交換水265.7gを添加し、25℃で4時間撹拌した。次いで、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)49.0gを投入し、2時間撹拌して中和した。続いて、減圧下にてメタノール等の揮発成分を留去し、トルエンと芒硝水を加え水洗後トルエン層を回収し、トルエンを留去した後、加圧濾過を行った。
得られた反応物は、粘度4,400mPa・s、揮発分0.9質量%、重量平均分子量3,250の25℃で粘稠な液体であった。NMRスペクトル測定の結果から算出した式(I)におけるa~fの値は、それぞれa=0.26、b=0.01、c=0、d=0.37、e=0.36、f=0.06であった。
[実施例1-1~1-12,比較例1-1~1-12]
上記合成例1-1~1-3で得られた各オルガノポリシロキサン化合物、アクリル官能基を有するポリロタキサン(SA3400C(両末端アダマンチル基含有ポリエチレングリコール(分子量35,000)がメタクリロイルオキシ基を有するα-シクロデキストリンによって包接されたポリロタキサン)、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製)または比較成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、MIWON(株)製)、ダロキュア1173(ラジカル系光重合開始剤、BASF(株)社製)を表1および表2に示す配合比率で混合して組成物を調製した。
得られた組成物を厚さ0.2mmとなるように離形フィルムを貼り付けた型に流し込み、高圧水銀灯で積算照射量600mJ/cm2となるように光を照射し、硬化させることで硬化物を製造した。
実施例1-1~1-12および比較例1-1~1-12で得られたフィルムについて耐クラック性、鉛筆硬度、耐屈曲性および修復性を測定した。結果を表2に示す。
(1)耐クラック性
高圧水銀灯で光を照射し、硬化させた後にフィルムにクラックが見られなった場合はOK、見られた場合はNGとした。
(2)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準じて750g荷重にて測定した。
(3)耐屈曲性
JIS K5600-5-1に準じて円筒形マンドレル(タイプ1)を用いて測定し、耐屈曲性に関して、2mmφ試験でクラックが生じなかったフィルムに対してはOK、クラックが生じたフィルムに関してはNGとした。
(4)修復性
スチールウールにてフィルムにひっかき傷をつけ、10分静置後に光学顕微鏡による目視観察で部分的に傷の修復が確認できたフィルムに関してはOK、傷の修復が確認できなかったフィルムに関してはNGとした。
[実施例2-1~2-12,比較例2-1~2-12]
上記合成例1-1~1-3で得られた各オルガノポリシロキサン化合物、アクリル官能基を有するポリロタキサン(SA3400C、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製)またはトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、MIWON(株)製)、メチルエチルケトン(MEK、東京化成工業(株)製)、ダロキュア1173(ラジカル系光重合開始剤、BASF(株)製)を表5および表6に示す配合比率で混合してコーティング剤を調製した。
得られた各コーティング剤を、バーコーターNo.5を用いてPET基板(A4100、東洋紡(株)製)上に塗布し、100℃で5分間乾燥させ、高圧水銀灯で積算照射量600mJ/cm2となるように光を照射し、硬化させることで被覆物品を製造した。
得られた被覆物品の硬化膜について耐クラック性、鉛筆硬度、耐屈曲性を上記と同様の手順で測定し、煮沸密着性を下記方法で評価した。結果を表5および表6に示す。
(5)煮沸密着試験
100℃の沸騰水に2時間試験片を浸した後、JIS K5600-5-6に準じて25マスによるクロスカット試験を行い、(剥離せず残ったマスの数)/25として表した。
また、表7、表8に示されるように、ウレタン結合を有するオルガノポリシロキサンおよびアクリル官能基を有するポリロタキサンを含むコーティング剤の被覆物品においては耐屈曲性と煮沸密着性が確認されており、本発明の優位性を示唆している。
Claims (8)
- (A)下記式(I)
で表されるオルガノポリシロキサン化合物と、
(B)複数個のシクロデキストリンによってポリエチレングリコールが包接され、このポリエチレングリコールの両末端が封鎖基で封鎖されており、かつ前記シクロデキストリンに結合している(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンと
を含む活性エネルギー線硬化性組成物。 - (A)および(B)成分の総量が100質量部であり、これらの配合割合が、質量比[(A)/(B)]で、95/5~5/95である請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
- さらに、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
- さらに、(A)および(B)成分以外の重合性不飽和化合物を含有する請求項1~4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
- さらに、溶剤を含有する請求項1~5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
- 請求項1~6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなるコーティング剤。
- 基材と、この基材の少なくとも一方の面に直接または少なくとも1種のその他の層を介して積層された硬化膜とを有し、
前記硬化膜が、請求項7記載のコーティング剤から作製された硬化膜である被覆物品。
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