JP7151408B2 - 電極の製造方法 - Google Patents
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Description
両面塗工型の電極を用いる電池の種類によっては、当該電極の反りを許容し難い場合がある。
この種の巻回型電極は、シート状の電極を巻回して得られるものである。このため、巻回型電極においては、シート状の電極に多少反りが生じていても、巻回する際に、当該電極の一部が他の一部によって巻回方向の外側から内側に向けて順次押さえ込まれる。このため、多少の反りが生じた電極であっても、ハンドリング性には大きな影響は生じ難い。
ここで、反りの生じたシート状電極を裁断して得られる多数のカード状電極は、不均一に反ったものとなる場合がある。不均一に反ったカード状電極は、ハンドリング性に著しく劣る問題がある。
集電箔、
前記集電箔の一表面に形成されている第1の電極合材層、および、
前記集電箔の他表面に形成されている第2の電極合材層をプレスして、
前記集電箔、
前記第1の電極合材層が圧縮された第1の電極活物質層、および、
前記第2の電極合材層が前記第1の電極活物質層よりも高い圧縮率で圧縮された第2の電極活物質層を有する電極を製造するプレス工程と、
前記プレス工程後に、前記第2の電極活物質層をロール芯に向けて前記電極を巻き取る巻き取り工程と、を有する、電極の製造方法である。
このうちプレス工程は、集電箔、第1の電極合材層および第2の電極合材層をプレスして電極を製造する工程である。
当該プレス工程には、集電箔に加えて、前記集電箔の一表面に形成されている第1の電極合材層と、前記集電箔の他表面に形成されている第2の電極合材層と、が供される。一方、当該プレス工程によって、前記集電箔と、前記第1の電極合材層が圧縮された第1の電極活物質層と、前記第2の電極合材層が前記第1の電極活物質層よりも高い圧縮率で圧縮された第2の電極活物質層と、を有する電極が得られる。
本発明の電極の製造方法では、巻き取り工程にて、第2の電極活物質層をロール芯に向けて、プレス工程後の電極をロール芯に巻き取る。こうすることで、電極に反りとは逆向きの癖がつけられ、電極の反りが矯正される。
例えば、本発明の電極は、第1の電極活物質層及び第2の電極活物質層の双方が正極活物質を含む正極活物質層であっても良いし、第1の電極活物質層及び第2の電極活物質層の双方が負極活物質を含む負極活物質層であっても良い。または、第1の電極活物質層及び第2の電極活物質層の一方が正極活物質を含む正極活物質層であり、他方が負極活物質を含む負極活物質層であっても良い。
例えば、第1の電極活物質層及び第2の電極活物質層の一方を、正極活物質を含む正極活物質層とし、他方を、負極活物質を含む負極活物質層として、本発明の電極を双極型電極とする場合には、第1の電極活物質層の組成と第2の電極活物質層の組成が大きく異なるため、プレス工程における第1の電極活物質層の圧縮率と第2の電極活物質層の圧縮率とに大きな差が生じ易い。
上記の方法で得られた電極において、第2の電極活物質層は二度のプレスを経るのに対し、第1の電極活物質層は一度プレスされるだけであるため、第2の電極活物質層に作用する外力の累積値は、第1の電極活物質層に作用する外力の累積値よりも大きくなる。この場合には、第1の電極活物質層及び第2の電極活物質層の組成が同じ場合にも、第2の電極活物質層の圧縮率は、第1の電極活物質層の圧縮率よりも高くなる可能性がある。
このように、本発明の製造方法によると、反りの抑制された両面塗工型の電極を製造することが可能である。また、本発明の製造方法で得られた本発明の電極は、反りの抑制されたものであることから、カード状電極としても容易に積層することができる。つまり、本発明の製造方法で得られた電極は、積層型電池の電極として好適である。
なお、本発明の電極は、それ自体がカード状電極であっても良いし、シート状電極であっても良い。巻き取り工程においては、カード状電極をロール芯に巻き取っても良いし、シート状電極をロール芯に巻き取っても良い。本発明の電極がシート状電極である場合には、適宜裁断することで多数のカード状電極を同時に製造できるため、製造効率が向上する利点がある。
集電箔の厚さとしては1μm~100μmの範囲内、3μm~70μmの範囲内、5μm~50μmの範囲内を例示できる。
したがって、第1の電極合材層に含まれる電極活物質と、第2の電極合材層に含まれる電極活物質と、もまた、同じであっても良いし、異なっていても良い。例えば、第1の電極合材層に含まれる第1の電極活物質、及び、第2の電極合材層に含まれる第2の電極活物質は、ともに正極活物質であっても良いし、ともに負極活物質であっても良い。或いは、第1の電極活物質と第2の電極活物質との一方が正極活物質であり、他方が負極活物質であっても良い。また、第1の電極活物質及び第2の電極活物質は、本発明の電極を有する電池に応じたものを用いれば良い。
以下、正極と負極とに場合分けして、第1の電極合材層及び第2の電極合材層の電極構成材料を説明する。以下、正極と負極とに共通する事項については、必要に応じて、正極合材層と負極合材層とを包括した電極合材層、正極活物質と負極活物質とを包括した電極活物質、正極活物質層と負極活物質層とを包括した電極活物質層、または、正極と負極とを包括した電極、として説明する。
正極合材層は、正極活物質と結着剤とを含み、場合によっては溶剤を含み得る。当該正極合材層は、その他、必要に応じて導電助剤や添加剤等を含み得る。
正極活物質は、電池の種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば本発明の電極がニッケル金属水素化物電池用の電極であれば、正極活物質としては、ニッケル金属水素化物電池の正極活物質として用いられるものであれば限定されない。具体的な正極活物質として、水酸化ニッケル、金属をドープした水酸化ニッケルを例示できる。水酸化ニッケルにドープする金属として、マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族元素、亜鉛、カドミウムなどの第12族元素を例示できる。
なお、ニッケル金属水素化物電池用の正極活物質の平均粒子径としては、1~100μmの範囲内が好ましく、3~50μmの範囲内がより好ましく、5~30μmの範囲内がさらに好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布計を用いた測定におけるD50の値を意味する。
リチウムイオン二次電池用の一般的な正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
具体的な導電助剤としては、コバルト、ニッケル、銅などの金属、コバルト酸化物などの金属酸化物、及びコバルト水酸化物などの金属水酸化物、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料が例示される。
負極合材層は、負極活物質および結着剤を含み、場合によって溶剤を含み得る。当該負極合材層は、その他、必要に応じて導電助剤や添加剤等を含み得る。結着剤、溶剤及び導電助剤については正極と同様である。なお、負極合材層は、上記した正極合材層と同様の方法で形成することができる。正極合材層を含む電極前駆体と同様に、集電箔と負極合材層とを有する電極前駆体をプレスしても良い。
負極活物質としては、ケイ素を含有する負極活物質、すなわちケイ素含有負極活物質も好適である。ケイ素含有負極活物質においては、ケイ素がリチウムと合金化することでリチウムを吸蔵及び放出すると考えられる。
このようなケイ素含有負極活物質としては、ケイ素単体(金属シリコン)、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と後述する炭素系材料等を組み合わせた複合体が挙げられる。更には、ケイ素系材料として、国際公開第2015/114692号に開示されるシリコン材料を用いることも好ましい。
当該電極前駆体は、既述したプレス工程に供され、その後、既述した巻き取り工程に供される。
先ず、集電箔の一方の表面に第1の電極合材層と第2の電極合材層との一方を形成して、電極合材層と集電箔とを有する第1の電極前駆体とする。当該第1の電極前駆体を第1のプレス工程に供することで、第1の電極前駆体における電極合材層を電極活物質層とする。次いで、第1の電極前駆体における集電箔の他方の表面に第1の電極合材層と第2の電極合材層との他方を形成して、電極活物質層と集電箔と電極合材層とを有する第2の電極前駆体とする。この第2の電極前駆体を第2のプレス工程に供することで、第2の電極前駆体における電極合材層を電極活物質層とする。第1のプレス工程および第2のプレス工程におけるプレスの条件は、同じであっても良いし異なっていても良い。
または、各電極活物質層の圧縮率の大小を、2つの電極合材層の組成や厚さから推測しても良い。更には、プレス工程後の電極を目視することで、当該電極に実際に生じた反りの方向を基に、2つの電極活物質層の圧縮率の大小を推測しても良い。
なお、ロール芯の周長が過大であれば、ロール芯表面の曲率が過小となり、電極の反りを矯正し難くなる。この場合には、ロール芯に巻き取った電極を反りが矯正されるまでそのまま保持すれば良いが、本発明の電極の製造方法に要する時間が長くなる問題がある。ロール芯としてその直径が上記の範囲であるものを用いることで、電極の反りの矯正を効率良く行い得る。
その他、巻き取り工程において電極に作用する外力、巻き取ったままの電極を保持する時間等は、電極の組成、形状、電極に生じた反りの大きさ等に応じて適宜設定すれば良い。
積層型電池を製造する際には、上記の裁断工程で得られた本発明のカード状電極を、積層状態で電池ケースに収容すれば良い。この場合、本発明のカード状電極を、必要に応じて他種の電極やセパレータとともに、必要な数を積層して積層体とすれば良い。当該積層体は上記した積層型電極といえる。当該積層体は、そのまま電池ケースに収容しても良いし、リード線や端子を適宜接続した電極体の状態で電池ケースに収容しても良い。なお、当該積層体を収容する電池ケースは、缶型のものであっても良いし、ラミネート型のものであっても良い。
電解液は、製造対象である電池の種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば、積層型電池がニッケル金属水素化物電池であれば、電解液としてはアルカリ金属水酸化物が溶解した水溶液を用いれば良い。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを例示できる。電解液には、1種類のアルカリ金属水酸化物を含んでいてもよいし、複数種類のアルカリ金属水酸化物を含んでいてもよい。電解液における、アルカリ金属水酸化物の濃度としては、2~10mol/Lが好ましく、3~9mol/Lがより好ましく、4~8mol/Lがさらに好ましい。
また、例えば積層型電池がリチウムイオン二次電池であれば、電解液としては、非水溶媒と当該非水溶媒に溶解されたリチウム塩とを含むものを用いれば良い。当該電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3などのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
実施例の製造方法で得られる実施例の電極は、第1の電極合材層および第1の電極活物質層が正極活物質を含み、第2の電極合材層および第2の電極活物質層が負極活物質を含む、双極型電極である。
また、実施例の電極における正極活物質は水酸化ニッケルであり、負極活物質は水素吸蔵合金である。つまり、実施例の電極はニッケル金属水素化物電池用の双極型電極である。
実施例の電極の断面を模式的に表す説明図を図1に示す。実施例の製造方法におけるプレス工程を説明する説明図を図2に示す。実施例の製造方法におけるプレス工程後の電極を説明する説明図を図3に示す。実施例の製造方法におけるプレス工程および巻き取り工程を説明する説明図を図4に示す。
実施例の電極は、積層型電池に用いられる双極型電極である。図1に示すように、当該積層型電池は、積層体90と、当該積層体90を収容する電池ケース91とを有する。
積層体90は、複数のカード状電極1cと、隣り合うカード状電極1cの間に介在するセパレータ2と、積層体90における積層方向の一端部を構成する第1端末カード状電極18と、積層体90における積層方向の他端部を構成する第2端末カード状電極19と、を有する。なお、第1端末カード状電極18とこれに隣り合うカード状電極1cとの間、および、第2端末カード状電極19とこれに隣り合うカード状電極1cとの間、にも、セパレータ2が介在している。
正極活物質として水酸化ニッケル粉末を94.3質量部、導電助剤としてコバルト粉末を1質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルションを固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、添加剤としてY2O3を0.5質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、正極合材のスラリーを製造する。集電箔として厚さ20μmのニッケル箔を準備し、このニッケル箔の一表面に、ドクターブレードを用いて、上記の正極合材のスラリーを膜状に塗布することで、正極合材層を形成する。
上記の電極前駆体を乾燥し、正極合材層および負極合材層から水を除去して、乾燥した電極前駆体を得る。当該乾燥した電極前駆体を、以下のプレス工程に供する。
プレス装置としてロールプレス機を準備し、図2に示すように、電極前駆体準備工程で得られた電極前駆体95を、ロールプレス機8の二つのロール81、82の間に挟み込んでプレスする。当該電極前駆体95の正極合材層96および負極合材層97が圧縮されて、正極活物質層11、負極活物質層12および集電箔10を有するシート状電極1sが得られる。
巻き取り工程では、図4に示すように、プレス工程後のシート状電極1sをロール芯98に巻き取る。このとき、シート状電極1sの負極活物質層12をロール芯98に向けることで、シート状電極1sは反りと逆方向に巻き取られ、シート状電極1sの反りが矯正される。したがって、一旦ロール芯98に巻き取ったシート状電極1sは、ロール芯98から巻き出しても、反りの矯正された平らかな形状である。
巻き取り工程後のシート状電極1sを適宜裁断することで、カード状電極1cが得られる。巻き取り工程によってシート状電極1sの反りが矯正されるため、カード状電極1cの反りもまた抑制される。
8:ロールプレス機 10:集電箔
11:正極活物質層(第1の電極活物質層)
12:負極活物質層(第2の電極活物質層)
81:ロールプレス機のロール 82:ロールプレス機のロール
90:積層体 91:電池ケース
95:電極前駆体 96:正極合材層(第1の電極合材層)
97:負極合材層(第2の電極合材層) 98:ロール芯
Claims (4)
- 集電箔、
前記集電箔の一表面に形成されている第1の電極合材層、および、
前記集電箔の他表面に形成されている第2の電極合材層をプレスして、
前記集電箔、
前記第1の電極合材層が圧縮された第1の電極活物質層、および、
前記第2の電極合材層が前記第1の電極活物質層よりも高い圧縮率で圧縮された第2の電極活物質層を有する電極を製造するプレス工程と、
前記プレス工程後に、前記第2の電極活物質層をロール芯に向けて前記電極を巻き取る巻き取り工程と、を有し、
前記第1の電極活物質層と前記第2の電極活物質層との一方は正極活物質を含む正極活物質層であり、他方は負極活物質を含む負極活物質層であり、
前記プレス工程において前記第1の電極活物質層と前記第2の電極活物質層とに同じ外力を作用させる、電極の製造方法。 - 前記第1の電極活物質層は正極活物質として水酸化ニッケルを含み、前記第2の電極活物質層は負極活物質として水素吸蔵合金を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
- 前記巻き取り工程後に、巻き出した前記電極を裁断する裁断工程を有する、請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
- 請求項3に記載の電極の製造方法で製造した前記裁断工程後の電極を、積層状態で電池ケースに収容する積層工程を有する、積層型電池の製造方法。
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