JP2018088379A - バイポーラ電極及びその製造方法並びに蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属箔からの活物質層の剥離や脱落を抑制できるバイポーラ電極及びその製造方法、並びにこのバイポーラ電極を備えた蓄電装置を提供する。
【解決手段】バイポーラ電極1の製造方法は、金属箔2の表側面に第1活物質層3を塗布する第1塗布工程S1と、第1活物質層3をプレスする第1プレス工程S2と、金属箔2の裏側面における第1活物質層3と積層方向において重なる位置に第2活物質層4を塗布する第2塗布工程S3と、第1活物質層3及び第2活物質層4を一括してプレスする第2プレス工程S4とを有している。
【選択図】図1
【解決手段】バイポーラ電極1の製造方法は、金属箔2の表側面に第1活物質層3を塗布する第1塗布工程S1と、第1活物質層3をプレスする第1プレス工程S2と、金属箔2の裏側面における第1活物質層3と積層方向において重なる位置に第2活物質層4を塗布する第2塗布工程S3と、第1活物質層3及び第2活物質層4を一括してプレスする第2プレス工程S4とを有している。
【選択図】図1
Description
本発明は、バイポーラ電極及びその製造方法並びにこのバイポーラ電極を備えた蓄電装置に関する。
リチウムイオン二次電池やアルカリ蓄電池等の蓄電装置における電極として、金属箔と、この金属箔の一方の面に塗布された正極活物質層と、他方の面に塗布された負極活物質層とを有するバイポーラ電極が用いられることがある。バイポーラ電極の厚み方向から見た平面視において、正極活物質層は、負極活物質層の少なくとも一部と重なる位置に塗布されている。
バイポーラ電極では、金属箔に正極活物質層と負極活物質層とを塗布した後、これらの活物質層をプレスして金属箔に密着させることにより、金属箔からの活物質層の剥離や脱落の抑制及び充放電性能の向上を図っている。例えば特許文献1には、金属箔に正極活物質層と負極活物質層とを塗布した後、これらの活物質層を一括してプレスする技術が開示されている。
ところで、蓄電装置においては、安全性の観点から、正極容量及び負極容量のうちいずれか一方の容量が他方の容量よりも大きくなっている。このような電極容量を実現するため、バイポーラ電極においては、正極活物質層及び負極活物質層のうちいずれか一方の塗布面積が他方の面積よりも広くなっていることがある。この種のバイポーラ電極は、厚み方向から見た平面視において正極活物質層と負極活物質層とが重なっている比較的厚みの厚い部分と、正極活物質層または負極活物質層のいずれか一方のみが設けられた比較的厚みの薄い部分とを有している。
このように、正極活物質層の塗布面積と負極活物質層の塗布面積とが異なる場合には、金属箔上に両方の活物質層を有する部分の厚みが、いずれか一方の活物質層のみを有する部分よりも厚くなっている。そのため、両方の活物質層を一括してプレスすると、いずれか一方の活物質層のみが設けられている部分に加わる圧力が低くなり、金属箔との密着性の低下を招くおそれがある。そして、金属箔との密着性が低下する結果、例えばバイポーラ電極を備えた蓄電装置に電解液を注ぎ入れた際などに、活物質層の金属箔からの剥離や脱落が起こりやすくなるおそれがある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、金属箔からの活物質層の剥離や脱落を抑制できるバイポーラ電極及びその製造方法、並びにこのバイポーラ電極を備えた蓄電装置を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、金属箔と、該金属箔の表側面に積層された第1活物質層と、上記金属箔の裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に積層され、上記第1活物質層よりも面積が狭い第2活物質層とを有するバイポーラ電極の製造方法であって、
上記金属箔の上記表側面に上記第1活物質層を塗布する第1塗布工程と、
上記第1活物質層をプレスする第1プレス工程と、
上記金属箔の上記裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に上記第2活物質層を塗布する第2塗布工程と、
上記第1活物質層及び上記第2活物質層を一括してプレスする第2プレス工程とを有する、バイポーラ電極の製造方法にある。
上記金属箔の上記表側面に上記第1活物質層を塗布する第1塗布工程と、
上記第1活物質層をプレスする第1プレス工程と、
上記金属箔の上記裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に上記第2活物質層を塗布する第2塗布工程と、
上記第1活物質層及び上記第2活物質層を一括してプレスする第2プレス工程とを有する、バイポーラ電極の製造方法にある。
上記製造方法においては、上記金属箔の表側面に第1活物質層を塗布した後、裏側面における上記特定の位置に第2活物質層を塗布する前に該第1活物質層をプレスする。このように、上記第1プレス工程において塗布面積の広い第1活物質層のみをプレスすることにより、第1活物質層全体に十分な圧力を加えることができる。その結果、第1活物質層全体を金属箔に密着させることができる。
そして、上記特定の位置に第2活物質層を塗布した後、第1活物質層及び第2活物質層を一括してプレスする。この第2プレス工程において、バイポーラ電極には、第1活物質層と第2活物質層との両方が積層された比較的厚い部分と、第1活物質層のみが積層された比較的薄い部分とが存在している。前者については、第2プレス工程において第1活物質層及び第2活物質層の両方に十分に高い圧力を加えることができる。その結果、第2活物質層の全体を金属箔に密着させることができる。
一方、後者、即ち、第1活物質層のみが積層された比較的薄い部分については、両方の活物質層が積層された部分に比べて第2プレス工程において加わる圧力が低くなるおそれがある。しかし、上述したように、第1プレス工程において第1活物質層の全体がプレスされているため、第2プレス工程において第1活物質層のみが設けられた部分に加わる圧力が低くなった場合にも、当該部分と金属箔との密着性を十分に確保することができる。従って、第2プレス工程において第1活物質層と第2活物質層との両方を一括してプレスすることにより、第1活物質層及び第2活物質層の両方について、金属箔との密着性を十分に確保することができる。
このように、第1活物質層の塗布面積と第2活物質層の塗布面積に差がある場合には、先に塗布面積の広い第1活物質層を単独でプレスし、その後、両活物質層を一括してプレスするというように、プレス工程を2工程に分けて行うことが非常に有効である。そして、上記製造方法のようにプレス工程を2工程に分けて行うことにより、第1活物質層及び第2活物質層の両方について金属箔との密着性を十分に確保することができ、金属箔からの活物質層の剥離や脱落を抑制することができる。
上記製造方法において、金属箔の材質としては、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル及びこれらの金属を含む合金等の、集電体として公知の材質を採用することができる。金属箔の厚さは、例えば5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
第1塗布工程においては、予め準備されたスラリーを金属箔の表側面に塗布することにより、第1活物質層を形成することができる。スラリーを表側面に塗布した後、必要に応じて第1活物質層を乾燥させてもよい。第1活物質層の厚みは、所望する電極特性に応じて適宜設定することができる。
スラリーには、通常、第1活物質と、バインダと、溶媒とが含まれている。また、スラリーは、更に、必要に応じて導電助剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。スラリーの塗布は、例えば、ロールコーティングやドクターブレード等の公知の方法により行うことができる。
第1プレス工程においては、第1活物質層と金属箔とをその積層方向に加圧することにより第1活物質層をプレスする。第1プレス工程後の第1活物質層の厚みは、30μm以上150μm以下であることが好ましい。第1プレス工程におけるプレスは、例えば、ロールプレス等の公知の方法により行うことができる。
第1プレス工程においては、第1活物質層を0.5〜1.5kN/cmの圧力でプレスすることが好ましい。第1活物質層を0.5kN/cm以上の圧力でプレスすることにより、第1活物質層の全体を金属箔の表側面に十分に密着させることができる。その結果、第1活物質層の金属箔からの剥離をより確実に抑制することができる。
第1活物質層と金属箔との密着性を高める観点からは、第1プレス工程におけるプレス圧力が大きいほど好ましい。しかし、第1プレス工程におけるプレス圧力を過度に高くすると、プレス後の第1活物質層の空隙率が過度に小さくなり、充放電効率の低下を招く恐れがある。かかる問題を回避する観点から、第1プレス工程における圧力を1.5kN/cm以下とすることが好ましい。
第2塗布工程においては、金属箔の裏側面における第1活物質層と積層方向に重なる位置に予め準備されたスラリーを塗布することにより、第2活物質層を形成することができる。スラリーを上記特定の位置に塗布した後、必要に応じて第2活物質層を乾燥させてもよい。第2活物質層の厚みは、所望する電極特性に応じて適宜設定することができる。
スラリーには、通常、第2活物質と、バインダと、溶媒とが含まれている。また、スラリーは、更に、必要に応じて導電助剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。スラリーの塗布は、例えば、ロールコーティングやドクターブレード等の公知の方法により行うことができる。
第2プレス工程においては、第1活物質層、金属箔及び第2活物質層をその積層方向に加圧し、第1活物質層及び第2活物質層をプレスする。第2プレス工程後の第2活物質層の厚みは、30μm以上150μm以下であることがあることが好ましい。第2プレス工程におけるプレスは、例えば、ロールプレス等の公知の方法により行うことができる。
第2プレス工程におけるプレス圧力は、第1プレス工程におけるプレス圧力よりも大きいことが好ましい。この場合には、バイポーラ電極における、第1活物質層と第2活物質層との両方が積層されている比較的厚い部分に、適度に大きな圧力を加えることができる。これにより、当該部分における第1活物質層及び第2活物質層の空隙率を適度に小さくし、電極反応の効率をより向上させることができる。その結果、蓄電装置の充放電効率をより向上させることができる。
第2プレス工程においては、第2活物質層を2.0〜3.0kN/cmの圧力でプレスすることがより好ましい。第2活物質層を2.0kN/cm以上の圧力でプレスすることにより、第2活物質層を金属箔の表側面に十分に密着させることができる。その結果、第2活物質層の金属箔からの剥離をより確実に抑制することができる。
第2活物質層と金属箔との密着性を高める観点からは、第2プレス工程におけるプレス圧力が大きいほど好ましい。しかし、第2プレス工程におけるプレス圧力を過度に高くすると、第1活物質層と第2活物質層との両方が存在している部分において、これらの活物質層の空隙率が過度に小さくなり、かえって充放電効率の低下を招く恐れがある。かかる問題を回避する観点から、第2プレス工程における圧力を3.0kN/cm以下とすることが好ましい。
上記製造方法によれば、以下のバイポーラ電極を得ることができる。即ち、バイポーラ電極は、金属箔と、金属箔の表側面上に積層された第1活物質層と、金属箔の裏側面における第1活物質層と積層方向において重なる位置に積層され、第1活物質層よりも面積が狭い第2活物質層とを有している。そして、第1活物質層は、積層方向から見た平面視における周縁部に配置された厚肉領域と、厚肉領域よりも厚みが薄く、厚肉領域よりも内側に配置されている薄肉領域とを有している。
このバイポーラ電極においては、上述したように、第1活物質層及び第2活物質層の全体がプレスされている。そのため、金属箔からの活物質層の剥離や脱落を抑制することができる。
また、バイポーラ電極は、複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体の一部として蓄電装置に組み込まれる。この電極組立体においては、バイポーラ電極の第1活物質層と、このバイポーラ電極に隣接する電極の集電体との間に第2活物質層が存在していない、いわゆるデッドスペースが形成される。上記厚肉領域は第1活物質層の周縁部に配置されているため、このデッドスペースに上記厚肉領域を配置することができる。そして、デッドスペースに上記厚肉領域を配置することにより、電極組立体の積層方向の寸法の増大を抑制することができる。
上記厚肉領域と上記薄肉領域との間には、上記厚肉領域に近いほど大きな厚みを有する中間領域が介在していてもよい。この場合には、上記電極組立体の組み立て作業中に上記バイポーラ電極が所望の位置から若干ずれて配置された場合にも、電極組立体の積層方向の寸法の増大を抑制することができる。それ故、電極組立体の組み立て作業の作業性を向上することができる。
厚肉領域の空隙率は、薄肉領域の空隙率よりも大きくてもよい。上述のデッドスペースにおいては、第1活物質層と第2活物質層が対面していないため、電極反応がほとんど起こらない。そのため、厚肉領域をデッドスペースに配置することにより、電極反応の効率が高い薄肉領域での電極反応の寄与分を相対的に大きくし、蓄電装置の充放電効率をより高めることができる。
薄肉領域の空隙率は28%以上40%以下であることが好ましい。これにより、薄肉領域における電極反応の効率をより向上させることができる。その結果、蓄電装置の充放電効率をより向上させることができる。
金属箔の厚み方向から見た平面視において、薄肉領域は、第2活物質層の少なくとも一部と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合には、比較的空隙率が小さく、電極反応の効率が高い薄肉領域において、電極反応を活発に起こすことができる。その結果、蓄電装置の充放電効率をより高めることができる。
厚肉領域の空隙率は45%以上55%以下であることが好ましい。これにより、金属箔との密着性を十分に確保することができる。
第1活物質層は負極活物質層であり、第2活物質層は正極活物質層であることが好ましい。このように、塗布面積の広い第1活物質層を負極活物質層とすることにより、バイポーラ電極における負極容量を正極容量よりも大きくすることができる。そのため、当該バイポーラ電極を蓄電装置に組み込むことにより、正極規制方式、即ち、電池容量が正極容量により規制される蓄電装置を得ることができる。その結果、蓄電装置の安全性をより向上させることができる。
また、このバイポーラ電極をニッケル水素蓄電池に組み込む場合には、上述した作用効果に加えて、電池の内圧の上昇を抑制できるという作用効果を奏することができる。
即ち、ニッケル水素蓄電池では、リチウムイオン二次電池とは異なり、過充電時に酸素ガスが発生する。この酸素ガスは、通常、負極活物質層に吸収された後、充電リザーブとして予め設けられた負極活物質中の水素と反応して水に戻される。しかし、負極活物質層の空隙率が小さい場合には、酸素ガスが負極活物質層内に進入しにくくなるため、電池内に酸素ガスが蓄積するおそれがある。また、酸素ガスの蓄積によって電池の内圧が上昇すると、場合によっては安全弁が作動するおそれがある。その結果、充電リザーブと放電リザーブとのバランスが崩れ、電池の劣化を招くおそれもある。
これに対し、第1活物質層の周縁部という特定の位置に、比較的空隙率の大きい厚肉領域を設けることにより、当該厚肉領域に、過充電時に発生する酸素ガスを効率よく吸収させ、さらには充電リザーブとしての水素と効率よく反応させることができる。その結果、第1活物質層内に吸収可能な酸素ガスの総量を増やし、ニッケル水素蓄電池の内圧の上昇を抑制することができる。
更に、第1活物質層の周縁部に上記厚肉領域を設けることにより、厚肉領域内に保持される電解液の量を増やすことができる。これにより、過充電時にガスとなって消費された電解液を厚肉領域から薄肉領域へ補充することができるため、電解液の局所的な消失によって電流が集中することを緩和することができる。その結果、ニッケル水素電池の寿命特性を向上させることができる。
以上のように、上記バイポーラ電極をニッケル水素蓄電池に組み込むことにより、金属箔からの活物質の剥離や脱落の抑制及び充放電効率の向上という作用効果に加えて、電池の内圧の上昇の抑制という作用効果を奏することができる。
正極活物質としては、蓄電装置用として公知の活物質を採用することができる。例えば、リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、コバルト酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム等を採用することができる。また、ニッケル水素蓄電池の正極活物質としては、水酸化ニッケル等を採用することができる。
負極活物質としては、蓄電装置用として公知の活物質を採用することができる。例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボン等を採用することができる。また、ニッケル水素蓄電池の負極活物質としては、水素吸蔵合金等を採用することができる。
上述したバイポーラ電極を含む複数の電極を、セパレータを介して積層することにより、蓄電装置の電極組立体を構成することができる。即ち、上記バイポーラ電極を含む蓄電装置は、複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体を有している。そして、電極組立体は、その積層方向の両端にそれぞれ配置された終端電極と、これらの終端電極の間に配置された上記バイポーラ電極とを有している。
上記蓄電装置は、電極組立体に上記バイポーラ電極を採用することにより、上述したように、優れた充放電性能を有し、金属箔からの活物質層の剥離や脱落を抑制することができる。
電極組立体に含まれるバイポーラ電極は、1枚であってもよく、複数枚であってもよい。また、各電極の間に介在するセパレータとしては、多孔膜や不織布等の、セパレータとして公知の材料を使用することができる。
(実施例1)
上記バイポーラ電極の製造方法の実施例を、図を用いて説明する。図1に示すように、本例の製造方法は、金属箔2の表側面に第1活物質層3を塗布する第1塗布工程S1と、第1活物質層3をプレスする第1プレス工程S2と、金属箔2の裏側面における、第1活物質層3と積層方向において重なる位置に第2活物質層4を塗布する第2塗布工程S3と、第1活物質層3及び第2活物質層4を一括してプレスする第2プレス工程S4とを有している。
上記バイポーラ電極の製造方法の実施例を、図を用いて説明する。図1に示すように、本例の製造方法は、金属箔2の表側面に第1活物質層3を塗布する第1塗布工程S1と、第1活物質層3をプレスする第1プレス工程S2と、金属箔2の裏側面における、第1活物質層3と積層方向において重なる位置に第2活物質層4を塗布する第2塗布工程S3と、第1活物質層3及び第2活物質層4を一括してプレスする第2プレス工程S4とを有している。
以下、本例の製造方法をより詳細に説明しつつ、ニッケル水素蓄電池用のバイポーラ電極1の構成の例を説明する。まず、金属箔2が巻回されてなる金属箔ロール20を準備する。金属箔2としては、例えば、幅240mm、厚み25μmのニッケル箔を採用することができる。
図1に示すように、金属箔2は、金属箔ロール20から引き出され、搬送方向800に沿って搬送される。金属箔ロール20から引き出された金属箔2の表側面には、第1活物質層3が塗布される(第1塗布工程S1)。第1活物質層3は、その厚み方向から見た平面視において長方形状を呈している。第1活物質層3の寸法は、例えば、長さ340mm、幅230mmである。また、本例の第1活物質層3は負極活物質層であり、負極活物質としての水素吸蔵合金と、バインダとを含んでいる。
次いで、第1活物質層3が設けられた金属箔2を、矢印811の方向に回転している一対の第1圧縮ロール81の間に通し、第1活物質層3にプレスを施す(第1プレス工程S2)。第1プレス工程S2においては、金属箔2の裏側面に第2活物質層4が設けられていないため、第1活物質層3の全体が一対の第1圧縮ロール81によりプレスされる。第1プレス工程S2において第1活物質層3に加える圧力は、例えば、0.5〜1.5kN/cmの範囲から適宜設定することができる。
第1プレス工程S2の後、金属箔2の裏側面に第2活物質層4が塗布される(第2塗布工程S3)。第2活物質層4は、図4及び図5に示すように、その厚み方向から見た平面視において第1活物質層3の外周端縁よりも内側、即ち第1活物質層3と積層方向において重なる位置に配置され、長方形状を呈している。第2活物質層4の寸法は、例えば、長さ336mm、幅226mmである。また、本例の第2活物質層4は正極活物質層であり、正極活物質としての水酸化ニッケルと、バインダとを含んでいる。
次いで、図1に示すように、第2活物質層4が設けられた金属箔2を矢印821の方向に回転している一対の第2圧縮ロール82(82a、82b)の間に通し、第1活物質層3及び第2活物質層4に一括してプレスを施す(第2プレス工程S4)。第2プレス工程S4において第2活物質層4に加える圧力は、例えば、2.0〜3.0kN/cmの範囲から適宜設定することができる。
第2プレス工程S4において、バイポーラ電極1には、図1〜図4に示すように、第1活物質層3と第2活物質層4との両方が積層された比較的厚い部分と、第1活物質層3のみが積層された比較的薄い部分が存在している。より具体的には、図4に示すように、積層方向から見た平面視における第1活物質層3の外周縁部の厚みが、その内側、即ち第1活物質層3と第2活物質層4との両方が積層された部分の厚みよりも薄くなっている。
第2プレス工程S4において金属箔2を前進させると、まず、第1活物質層3の長手方向における前端31が一対の第2圧縮ロール82の間に進入する。このとき、図2に示すように、金属箔2の裏側面に第2活物質層4が存在していないため、第1活物質層3の前端31は、幅方向の全範囲に亘ってわずかにプレスされる。
金属箔2をさらに前進させると、第2活物質層4の前端が一対の第2圧縮ロール82の間に進入する。このとき、図3に示すように、幅方向、即ち搬送方向800と金属箔2の厚み方向との両方に直交する方向の中央部においては、第1活物質層3と第2活物質層4との両方が一対の第2圧縮ロール82の間に進入する。そのため、幅方向の中央部において、第1活物質層3と第2活物質層4との両方がプレスされる。
一方、幅方向の両端部においては、金属箔2の裏側面に第2活物質層4が存在していないため、一対の第2圧縮ロール82のうち第2活物質層4側の第2圧縮ロール82bと金属箔2との間に隙間が生じる。この隙間に存在する金属箔の端部2aはしなるように変形し、幅方向の端縁に近くなるほど金属箔の端部2aと第1活物質層3側の第2圧縮ロール82aとの間隔が大きくなる。そして、第1活物質層3の幅方向の両端部が第2圧縮ロール82aから離間する。
従って、第2プレス工程S4が完了した後、第1活物質層3の幅方向における両端部の厚みが幅方向の中央部よりも厚くなる。それ故、図4及び図5に示すように、第1活物質層3の幅方向における両端部に比較的厚みの厚い厚肉領域32が形成され、幅方向の中央部に比較的厚みの薄い薄肉領域33が形成される。また、薄肉領域33と厚肉領域32との間においては、図3に示すように、金属箔2と第2圧縮ロール82aとの間隔に応じて第1活物質層3が圧縮される。その結果、薄肉領域33と厚肉領域32との間に、厚肉領域32に近いほど大きな厚みを有する中間領域34(図5参照)が形成される。
そして、金属箔2がさらに前進し、第2活物質層4が一対の第2圧縮ロール82の間を完全に通過した後は、第1活物質層3の後端35(図4参照)における幅方向の全範囲が一対の第2圧縮ロール82によりわずかにプレスされる。従って、第1活物質層3における長手方向の両端部31、35の厚みは、薄肉領域33と厚肉領域32との中間程度の値となる。
その後、図1に示すように金属箔2を所望の長さに裁断することにより、バイポーラ電極1を得ることができる。金属箔の長さは、例えば350mmとすることができる。
以上により得られたバイポーラ電極1は、図4に示すように、金属箔2と、金属箔2の表側面上に積層された第1活物質層3と、金属箔2の裏側面における第1活物質層3と積層方向において重なる位置に積層され、第1活物質層3よりも面積が狭い第2活物質層4とを有している。そして、第1活物質層3は、金属箔2の厚み方向から見た平面視における周縁部に配置された厚肉領域32と、厚肉領域32よりも厚みが薄く、厚肉領域32よりも内側に配置されている薄肉領域33とを有している。
厚肉領域32は、具体的には、第1活物質層3の幅方向における両端に配置されている。厚肉領域32の厚みは80μmであり、空隙率は45%以上55%以下である。
また、薄肉領域33は、金属箔2の厚み方向から見た平面視において、第2活物質層4の全体と重なる位置に配置されている。薄肉領域33の厚みは70μmであり、空隙率は28〜40%である。
厚肉領域32及び薄肉領域33の空隙率は、以下の測定方法により得ることができる。即ち、各領域から測定用の試料を採取し、この試料の質量(g)を体積(cm3)で除して、空隙を含む試料の電極密度(g/cm3)を算出する。また、この試料に含まれている材料の体積比率(体積%)及び真密度(g/cm3)に基づき、空隙が存在しないと仮定した場合の試料の電極密度(g/cm3)を算出する。
上記により得られた空隙を含む試料の電極密度(g/cm3)を、空隙が存在しないと仮定した場合の試料の電極密度(g/cm3)で除することにより、試料の充填率(%)が得られる。そして、この充填率(%)を100%から差し引いた値が空隙率(%)である。
次に、本例の製造方法の作用効果を説明する。上記製造方法においては、図1に示すように、金属箔2の表側面に第1活物質層3を塗布した後、裏側面における上記特定の位置に第2活物質層4を塗布する前に第1活物質層3をプレスする。このように、第1プレス工程S2において塗布面積の広い第1活物質層3のみをプレスすることにより、第1活物質層3全体に十分な圧力を加えることができる。その結果、第1活物質層3全体を金属箔2に密着させることができる。
そして、金属箔2の裏側面に第2活物質層4を塗布した後、第1活物質層3及び第2活物質層4を一括してプレスする。この第2プレス工程S4においては、図4に示すように、第1活物質層3と第2活物質層4との両方が積層された比較的厚い部分と、第1活物質層3のみが積層された比較的薄い部分との両方が第2圧縮ロール82の間に進入する。前者については、第2プレス工程S4において第1活物質層3及び第2活物質層4の両方に十分に高い圧力を加えることができる。その結果、第2活物質層4の全体を金属箔2に密着させることができる。
一方、後者、即ち、第1活物質層3のみが積層された比較的薄い部分については、両方の活物質層3、4が積層された部分に比べて第2プレス工程S4において加わる圧力が低くなり、図3に示すように、場合によっては圧力が加わらないこともある。しかし、上述したように、第1プレス工程S2において第1活物質層3の全体がプレスされているため、第2プレス工程S4において第1活物質層3のみが設けられた部分に加わる圧力が低くなった場合にも、当該部分と金属箔2との密着性を十分に確保することができる。従って、第2プレス工程S4において第1活物質層3と第2活物質層4との両方を一括してプレスすることにより、第1活物質層3及び第2活物質層4の両方について、金属箔2との密着性を十分に確保することができる。
以上の結果、上記製造方法によれば、第1活物質層3及び第2活物質層4の両方について、金属箔2との密着性を十分に確保することができる。それ故、上記製造方法により得られたバイポーラ電極1は、金属箔2からの活物質層3、4の剥離や脱落を抑制することができる。
(実施例2)
本例は、バイポーラ電極1を備えた蓄電装置5の例である。なお、本例の蓄電装置5は、ニッケル水素蓄電池である。また、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。図6に示すように、蓄電装置5は、複数の電極1、11、12がセパレータ13を介して積層された電極組立体10を有している。電極組立体10は、その積層方向の両端にそれぞれ配置された終端電極11、12と、これらの終端電極11、12の間に配置されたバイポーラ電極1とを有している。
本例は、バイポーラ電極1を備えた蓄電装置5の例である。なお、本例の蓄電装置5は、ニッケル水素蓄電池である。また、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一のものは、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。図6に示すように、蓄電装置5は、複数の電極1、11、12がセパレータ13を介して積層された電極組立体10を有している。電極組立体10は、その積層方向の両端にそれぞれ配置された終端電極11、12と、これらの終端電極11、12の間に配置されたバイポーラ電極1とを有している。
本例の電極組立体10は、積層方向の一端に配置された第1の終端電極11と、他端に配置された第2の終端電極12との間に、複数のバイポーラ電極1を有している。複数のバイポーラ電極1は、第2活物質層4、集電体としての金属箔2、第1活物質層3、セパレータ13がこの順に繰り返し並ぶようにして積層されている。
各バイポーラ電極1における第1活物質層3の薄肉領域33は、隣り合う電極1、11の第2活物質層4とセパレータ13を介して面する位置に配置されている。また、各バイポーラ電極1の厚肉領域32は、電極組立体10のデッドスペース、即ち、隣り合う電極1、11、12の金属箔2との間に第2活物質層4が存在していない部分に配置されている。
第1の終端電極11は、金属箔2と、その片面に設けられた第1活物質層3とを有している。第1の終端電極11の第1活物質層3は、積層方向の一端に配置されたバイポーラ電極1aの第2活物質層4にセパレータ13を介して面している。
第2の終端電極12は、金属箔2と、その片面に設けられた第2活物質層4とを有している。第2の終端電極12の第2活物質層4は、積層方向の他端に配置されたバイポーラ電極1bの第1活物質層3にセパレータ13を介して面している。
電極組立体10は、筒状を呈するケース51の内部に収容されている。また、ケース51の開口端は、第1プレート52及び第2プレート53により閉鎖されている。蓄電装置5における、ケース51、第1プレート52及び第2プレート53に囲まれた内部空間には、電解液が満たされている。なお、電解液としては、例えば、水酸化カリウム水溶液等の、ニッケル水素蓄電池用として公知の電解液を使用することができる。
ケース51は、ポリプロピレン、ポリフェニルサルファイドまたは変性ポリフェニレンエーテル等の絶縁性樹脂から構成されている。ケース51の内壁には、バイポーラ電極1の金属箔2の外周端縁23が保持されている。
第1プレート52は金属より構成されており、第1の終端電極11の金属箔2及びケース51の一方の開口端面511に当接している。また、第1プレート52におけるケース51の外側に露出した部分には、第1の電極端子521が取り付けられている。第1の電極端子521は、第1プレート52を介して第1の終端電極11と電気的に接続されている。
第2プレート53は、第2の終端電極12の金属箔2及びケース51の他方の開口端面512に当接している。また、第2プレート53におけるケース51の外側に露出した部分には、第2の電極端子531が取り付けられている。第2の電極端子531は、第2プレート53を介して第2の終端電極12と電気的に接続されている。
第1プレート52及び第2プレート53の外周端縁は、ケース51よりも外方まで延出している。そして、第1プレート52の外周端縁と第2プレート53の外周端縁とは、図示しない絶縁部材を介してボルト541及びナット542により締結されている。これにより、第1プレート52及び第2プレート53をケース51の開口端面511、512に密着させ、ケース51の開口端を閉鎖することができる。
次に、本例の蓄電装置5の作用効果を説明する。蓄電装置5は、電極組立体10にバイポーラ電極1を採用することにより、上述したように、金属箔2からの第1活物質層3及び第2活物質層4の剥離や脱落を抑制することができる。
また、第1活物質層3の厚肉領域32は、電極組立体10のデッドスペースに配置されている。そのため、電極組立体10の積層方向の寸法の増大を抑制することができる。また、厚肉領域32をデッドスペースに配置することにより、比較的空隙率が大きく、電極反応の効率が低い厚肉領域32での電極反応を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が高い薄肉領域33での電極反応の寄与分を相対的に大きくし、蓄電装置5の充放電効率をより高めることができる。
また、厚肉領域32と薄肉領域33との間には、厚肉領域32に近いほど大きな厚みを有する中間領域34が介在している。そのため、電極組立体10の組み立て作業中にバイポーラ電極1が所望の位置から若干ずれて配置された場合にも、電極組立体10の積層方向の寸法の増大を抑制することができる。それ故、電極組立体10の組み立て作業の作業性を向上することができる。
本発明に係るバイポーラ電極1及びニッケル水素畜電池の態様は、実施例1及び実施例2に示した態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
1 バイポーラ電極
2 金属箔
3 第1活物質層
32 厚肉領域
33 薄肉領域
4 第2活物質層
S1 第1塗布工程
S2 第1プレス工程
S3 第2塗布工程
S4 第2プレス工程
2 金属箔
3 第1活物質層
32 厚肉領域
33 薄肉領域
4 第2活物質層
S1 第1塗布工程
S2 第1プレス工程
S3 第2塗布工程
S4 第2プレス工程
Claims (10)
- 金属箔と、該金属箔の表側面に積層された第1活物質層と、上記金属箔の裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に積層され、上記第1活物質層よりも面積が狭い第2活物質層とを有するバイポーラ電極の製造方法であって、
上記金属箔の上記表側面に上記第1活物質層を塗布する第1塗布工程と、
上記第1活物質層をプレスする第1プレス工程と、
上記金属箔の上記裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に上記第2活物質層を塗布する第2塗布工程と、
上記第1活物質層及び上記第2活物質層を一括してプレスする第2プレス工程とを有する、バイポーラ電極の製造方法。 - 上記第2プレス工程におけるプレス圧力は上記第1プレス工程におけるプレス圧力よりも大きい、請求項1に記載のバイポーラ電極の製造方法。
- 上記第1プレス工程において、上記第1活物質層を0.5〜1.5kN/cmの圧力でプレスする、請求項1または2に記載のバイポーラ電極の製造方法。
- 上記第2プレス工程において、上記第2活物質層を2.0〜3.0kN/cmの圧力でプレスする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイポーラ電極の製造方法。
- 金属箔と、
上記金属箔の表側面に積層された第1活物質層と、
上記金属箔の裏側面における上記第1活物質層と積層方向において重なる位置に積層され、上記第1活物質層よりも面積が狭い第2活物質層とを有し、
上記第1活物質層は、上記積層方向から見た平面視における周縁部に配置された厚肉領域と、該厚肉領域よりも厚みが薄く、上記厚肉領域よりも内側に配置されている薄肉領域とを有している、バイポーラ電極。 - 上記厚肉領域と上記薄肉領域との間には、上記厚肉領域に近いほど大きな厚みを有する中間領域が介在している、請求項5に記載のバイポーラ電極。
- 上記積層方向から見た平面視において、上記薄肉領域は、上記第2活物質層の少なくとも一部と重なる位置に配置されている、請求項5または6に記載のバイポーラ電極。
- 上記第1活物質層は負極活物質層であり、上記第2活物質層は正極活物質層である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のバイポーラ電極。
- 複数の電極がセパレータを介して積層された電極組立体を有する蓄電装置であって、
上記電極組立体は、
その積層方向の両端にそれぞれ配置された終端電極と、
これらの終端電極の間に配置された、請求項5〜8のいずれか1項に記載のバイポーラ電極とを有している、蓄電装置。 - ニッケル水素蓄電池である、請求項9に記載の蓄電装置。
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JP2016232086A JP2018088379A (ja) | 2016-11-30 | 2016-11-30 | バイポーラ電極及びその製造方法並びに蓄電装置 |
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JP2020053370A (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 株式会社豊田自動織機 | 電極の製造方法 |
JP2020087613A (ja) * | 2018-11-20 | 2020-06-04 | 株式会社豊田自動織機 | 電極の製造方法 |
-
2016
- 2016-11-30 JP JP2016232086A patent/JP2018088379A/ja active Pending
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