[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、方向は、図1に示す方向で説明する。すなわち、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、奥側を「左」、手前側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
図1に示すように、フィルム転写装置1は、筐体2と、供給ローラ3と、排出ローラ4と、モータ5と、センサ6と、フィルム転写部140と、接離機構180と、制御部200とを備えている。
筐体2は、内部に、供給ローラ3、排出ローラ4、モータ5、センサ6、フィルム転写部140、接離機構180および制御部200を収容している。筐体2は、本体筐体21と、カバー22とを備えている。本体筐体21は、上部に開口21A(図2参照)を有している。カバー22は、本体筐体21の開口21Aを開閉するカバーであり、本体筐体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを開放する開位置と、開口を塞ぐ閉位置との間を移動可能となっている。なお、以下の説明では、開位置を、カバー22を全開したときの位置である全開位置とし、閉位置を、カバー22を全閉したときの全閉位置とする。
図3に示すように、カバー22は、開口21Aを覆う平板22Aと、カバー22の回動軸線方向から見て円弧形状を有する円弧部22Bとを有する。円弧部22Bは、カバー側ギヤ22Gを有する。カバー側ギヤ22Gは、円弧部22Bの円周上に複数のギヤ歯を有している。
図1に戻って、本体筐体21には、供給トレイ23と、排出トレイ24とが設けられている。供給トレイ23は、トナー像が形成されているシートSを積載可能なトレイであり、本体筐体21の前側に配置されている。排出トレイ24は、フィルム転写部140によって箔の層が転写されたシートSを積載可能なトレイであり、本体筐体21の後側に設けられている。
供給ローラ3は、供給トレイ23上のシートSをフィルム転写部140に向けて搬送するローラであり、供給トレイ23とフィルム転写部140との間に配置されている。供給ローラ3は、一対のローラからなり、一方のローラがカバー22に設けられ、他方のローラが本体筐体21に設けられている。
排出ローラ4は、フィルム転写部140を通過したシートSを排出トレイ24に向けて搬送するローラであり、フィルム転写部140と排出トレイ24との間に配置されている。排出ローラ4は、一対のローラからなり、一方のローラがカバー22に設けられ、他方のローラが本体筐体21に設けられている。
モータ5は、接離機構180に駆動力を供給する駆動源であり、接離機構180に図示せぬギヤ等を介して連結されている。
センサ6は、接離機構180の後述するカム182の位置を検出するセンサである。なお、センサ6としては、例えば、発光部と受光部を備えた光センサを使用することができる。光センサとしては、例えば、発光部から受光部に出射される光がカム182の一部で遮蔽されているか否かを検知する透過型の光センサであってもよいし、発光部から出射された光がカム182で反射されて受光部で受光されたか否かを反射型の光センサなどであってもよい。
フィルム転写部140は、シートSのトナー像が形成された面に箔を重ね、シートSのうちトナー像のある部分、トナー像のない部分および箔を加熱および加圧することにより、トナー像の上に箔を転写する機能を有している。なお、本実施形態では、フィルム転写部140は、金属色の箔をトナー像に転写することとする。フィルム転写部140は、多層フィルムFと、巻出軸120と、巻取軸130と、複数の案内軸171と、フィルム加熱ローラ141と、フィルム加圧ローラ142とを備えている。
巻出軸120には、転写される前の箔の層を有する多層フィルムFが巻かれている。多層フィルムFは、高分子材料からなるテープ状の支持体の上に少なくとも剥離層と箔の層が形成されており、巻出軸120および巻取軸130の延びる方向に210mm以上400mm以下の長さを有し、新品の状態では巻出軸120に10m以上300m以下の長さで巻かれている。巻取軸130は、巻出軸120の前方に配置されている。巻取軸130は、巻出軸120に巻かれている多層フィルムFを巻き取る。
なお、箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、多層フィルムFは、主として高分子材料からなり、5~250μmの厚みを有し、巻出軸120および巻取軸130の延びる方向に400mmよりも長くてもよい。すなわち、多層フィルムFは、テープを含む。また、多層フィルムFとは、フィルムを構成する高分子材料と異なる材料からなる層を複数有しているフィルムである。
複数の案内軸171のうち2つの案内軸171は、巻出軸120からフィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142との間に向けて多層フィルムFを案内する軸である。残りの2つの案内軸171は、フィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142との間から巻取軸130に向けて多層フィルムFを案内する軸である。複数の案内軸171は、多層フィルムFの一部が、フィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142との共通接線方向に沿って張られるように、多層フィルムFを支持している。本実施形態では、フィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142との共通接線方向は、前後方向に沿っている。
フィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142は、巻出軸120から巻取軸130に向かう方向において巻出軸120と巻取軸130の間の位置に設けられている。フィルム加熱ローラ141は、多層フィルムFを加熱するローラであり、図示しない熱源によって加熱されている。
フィルム加圧ローラ142は、フィルム加熱ローラ141との間で多層フィルムFを挟んだ状態でいる。フィルム加圧ローラ142は、多層フィルムFの上に配置され、フィルム加熱ローラ141は、多層フィルムFの下に配置されている。言い換えると、多層フィルムFは、カバー22が閉位置にあるときに、フィルム加熱ローラ141とフィルム加圧ローラ142との間にある。
フィルム転写部140では、シートSがフィルム加圧ローラ142と多層フィルムFとの間に搬送されてくると、シートSおよび多層フィルムFが、フィルム加圧ローラ142とフィルム加熱ローラ141との間で挟まれる。これにより、シートSのトナー像が多層フィルムFの箔の層とともに加熱されて、トナー像に箔が転写される。
フィルム加熱ローラ141と、多層フィルムFと、多層フィルムFを支持する巻出軸120等の軸は、本体筐体21に設けられている。フィルム加圧ローラ142は、カバー22に設けられている。これにより、図2に示すように、カバー22を開けると、フィルム加圧ローラ142が多層フィルムFから離間するようになっている。また、前述した供給ローラ3および排出ローラ4も、一方のローラがカバー22に設けられ、他方のローラが本体筐体21に設けられているので、カバー22を開けると、それぞれの一方のローラが他方のローラから離れるようになっている。したがって、シートSが詰まった場合には、カバー22を開けると、各ローラ間のニップ圧が解放されて、シートSを容易に取り出すことが可能となっている。
フィルム加熱ローラ141は、接離機構180を介して本体筐体21に設けられている。接離機構180は、フィルム加熱ローラ141を、多層フィルムFに接触させる第1位置(図1の位置)と、多層フィルムFから離間させる第2位置(図2の位置)とに移動させる機構である。接離機構180は、フィルム加熱ローラ141を回転可能に支持する支持部材181と、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFに向けて押圧するカム182とを備えている。
支持部材181は、本体筐体21に上下方向に沿って移動可能に支持されている。カム182は、支持部材181の下に配置されており、支持部材181を介してフィルム加熱ローラ141をフィルム加圧ローラ142に向けて押圧する。
カム182は、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFに接触させる接触位置(図1の位置)と、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFから退避させる退避位置(図2の位置)とに回動可能となっている。詳しくは、カム182は、モータ5からの駆動力、または、カバー22を回動させるときにカバー22から伝わる駆動力によって、接触位置と退避位置とに回動可能となっている。カム182は、当該カム182の回動軸線方向から見て、扇型形状である。
接離機構180は、カバー22が閉じた状態においては、制御部200によってモータ5の駆動力が適宜付与されることで、フィルム加熱ローラ141を第1位置と第2位置とに移動させることが可能となっている。また、接離機構180は、カバー22を開ける場合には、カバー22の動作に連動してフィルム加熱ローラ141を第2位置に移動させ、カバー22を閉じる場合には、カバーの動作に連動しないで、フィルム加熱ローラ141を第2位置に維持させる機能を備えている。
具体的には、図3に示すように、接離機構180は、前述した支持部材181およびカム182を備える他、カム182と同軸で一体に回転するカムギヤGcと、モータ5から駆動力をカムギヤGcに伝達可能な第1伝達機構T1と、カバー22からの駆動力をカムギヤGcに伝達可能な第2伝達機構T2とを備えている。なお、以下に示す各ギヤは、特に説明がない限り、全周にギヤ歯を有するものとする。ここで、図1や図3を簡略的に示す関係上、図1と図3とでカバー22の回転中心の位置が異なっているが、実際には回転中心は同じである。
カムギヤGcは、カム182の回転軸部182Aに固定され、カム182と一体に回転可能となっている。回転軸部182Aは、本体筐体21のサイドフレーム21Sに回転可能に支持されている。カム182とカムギヤGcは、サイドフレーム21Sを間に挟んで配置されている。詳しくは、カム182は、サイドフレーム21Sの内側に配置され、カムギヤGcは、サイドフレーム21Sの外側に配置されている。言い換えると、サイドフレーム21Sは、カム182とカムギヤGcとの間にある。また、第1伝達機構T1および第2伝達機構T2は、サイドフレーム21Sの外側に配置されている。言い換えると、サイドフレーム21Sは、第1伝達機構T1とカム182との間にあり、第2伝達機構T2とカム182との間にもある。
第1伝達機構T1は、ギヤG1と、電磁クラッチECとを備えている。ギヤG1は、モータ5に取り付けられたギヤ5Gと電磁クラッチECに取り付けられたギヤEGとに噛み合っている。電磁クラッチECに取り付けられたギヤEGは、ギヤG1とカムギヤGcとに噛み合っている。
電磁クラッチECは、ギヤG1からカムギヤGc、または、カムギヤGcからギヤG1へ駆動力を伝達させる伝達状態と、ギヤG1からカムギヤGc、または、カムギヤGcからギヤG1への駆動力の伝達を遮断する遮断状態とに切替可能なクラッチである。電磁クラッチECは、制御部200によって制御されることによって、伝達状態と遮断状態とに切り替えられる。
第2伝達機構T2は、欠歯ギヤGNと、欠歯ギヤGNの回転をロックするロック機構7と、伝達ギヤGtと、第1切替機構C1と、ギヤG2,G3とを備えている。欠歯ギヤGNは、二段ギヤであり、小径ギヤ部N1と、小径ギヤ部N1よりも径が大きい大径ギヤ部N2とを有している。
小径ギヤ部N1は、カムギヤGcに噛み合っている。大径ギヤ部N2は、小径ギヤ部N1と一体に回転し、周面の一部に伝達ギヤGtと噛み合い可能なギヤ歯部N21を有し、周面の他部に伝達ギヤGtと対向した状態で当該伝達ギヤGtとは噛み合わない欠歯部N22を有している。欠歯部N22は、フィルム加熱ローラ141が多層フィルムFから離間した第2位置に位置するときに、伝達ギヤGtに対向するようになっている(図6参照)。
また、欠歯ギヤGNは、ロック機構7と係合可能な係合部N3を有している。係合部N3は、例えば、欠歯ギヤGNの軸線方向における小径ギヤ部N1と大径ギヤ部N2との間に配置される、ギヤ歯のない外周面から突出するように形成されている。係合部N3は、突起である。この突起は、ロックレバー71のフック部71Aと接触する面が平面である。平面は、径方向において、小径ギヤ部N1から大径ギヤ部N2に向かって延びる。
ロック機構7は、ロックレバー71と、リンク部材72とを備えている。ロックレバー71は、係合部N3に係合可能なフック部71Aと、リンク部材72に連結される連結部71Bとを有している。フック部71Aは、突起である係合部N3の平面と面で接触する平面を有する。このようにフック部71Aと係合部N3が面と面で接触するので、点と点で接触する場合よりも、フック部71Aと係合部N3をより確実に係合させることができる。そして、欠歯ギヤGNの回転を確実に止めることができる。連結部71Bは、後述する第1アーム72Aの長孔に嵌る突起を有する。
ロックレバー71は、サイドフレーム21Sに回動可能に支持されている。詳しくは、ロックレバー71は、フック部71Aが係合部N3の回転軌跡上に位置するロック位置(図6の位置)と、フック部71Aが係合部N3の回転軌跡から外れた解除位置(図3の位置)との間で回動可能となっている。そして、ロックレバー71は、図示せぬバネによって、解除位置からロック位置に向けて付勢されている。
リンク部材72は、サイドフレーム21Sに回動可能に支持されている。リンク部材72は、回転中心から一方向に延びる第1アーム72Aと、回転中心から他方向に延びる第2アーム72Bとを有している。第1アーム72Aは、ロックレバー71の連結部71Bに長孔を介して連結されている。第2アーム72Bは、カバー22が閉じた状態において、カバー22に設けられた突起22Aに接触している。
これにより、ロックレバー71に付与される図示せぬバネの付勢力を、リンク部材72を介してカバー22で受けることが可能となっている。カバー22が閉じた状態においては、カバー22の突起22Aでリンク部材72が支持されることで、ロックレバー71は、解除位置に位置する。そして、カバー22を開けると、突起22Aによるリンク部材72の支持が解除されて、ロックレバー71がバネの付勢力によって、解除位置からロック位置に回動するようになっている(図5参照)。
伝達ギヤGtは、カバー22を開ける動作に連動するギヤであり、欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21と噛み合うことが可能であるとともに、第1切替機構C1の後述する第1アウターレースC12に噛み合っている。
第1切替機構C1は、一方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチであり、主に、第1インナーレースC11と、第1アウターレースC12とを備えている。第1インナーレースC11は、全周にギヤ歯を有し、ギヤG3の大径ギヤ部G32と噛み合っている。第1アウターレースC12は、全周にギヤ歯を有し、伝達ギヤGtに噛み合っている。
第1インナーレースC11は、図示時計回りに回転するときに、第1アウターレースC12と係合して、第1アウターレースC12とともに回転するようになっている(図6参照)。これにより、第1切替機構C1は、カバー22を開ける際において、カバー22から伝達ギヤGtに駆動力を伝達するようになっている。
また、第1インナーレースC11は、図示反時計回りに回転するときに、第1アウターレースC12とは係合せずに、第1アウターレースC12に対して回転するようになっている(図7参照)。これにより、第1切替機構C1は、カバー22を閉める際において、カバー22から伝達ギヤGtへ駆動力が伝達するのを遮断するようになっている。
また、第1アウターレースC12は、図示時計回りに回転するときに、第1インナーレースC11とは係合せずに、第1インナーレースC11に対して回転するようになっている(図4参照)。これにより、第1切替機構C1は、カバー22が閉じた状態において、伝達ギヤGtからカバー22へ駆動力が伝達するのを遮断するようになっている。
ギヤG2は、二段ギヤであり、大径ギヤ部G21と、大径ギヤ部G21よりも径が小さい小径ギヤ部G22とを有している。大径ギヤ部G21は、同じ軸に対して小径ギヤ部G22と一体に回転する。また、大径ギヤ部G21は、ギヤG3の小径ギヤ部G31に噛み合っている。小径ギヤ部G22は、カバー22の回転軸周りに形成されるカバー側ギヤ22Gに噛み合っている。
また、サイドフレーム21Sの外側には、ギヤG3と、第2切替機構C2と、ダンパDとが設けられている。ギヤG3は、二段ギヤであり、小径ギヤ部G31と、小径ギヤ部G31よりも径が大きい大径ギヤ部G32とを有している。小径ギヤ部G31は、同じ軸に対して大径ギヤ部G32と一体に回転する。小径ギヤ部G31は、ギヤG2の大径ギヤ部G21に噛み合っている。大径ギヤ部G32は、第2切替機構C2の後述する第2インナーレースC21と、第1インナーレースC11とに噛み合っている。
第2切替機構C2は、一方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチであり、主に、第2インナーレースC21と、第2アウターレースC22とを備えている。第2インナーレースC21は、全周にギヤ歯を有し、ギヤG3の大径ギヤ部G32と噛み合っている。第2アウターレースC22は、全周にギヤ歯を有し、ダンパDに取り付けられたギヤDGに噛み合っている。
第2インナーレースC21は、図示反時計回りに回転するときに、第2アウターレースC22と係合して、第2アウターレースC22とともに回転するようになっている(図7参照)。これにより、第2切替機構C2は、カバー22を閉じる際におけるカバー22の駆動力をダンパDに伝達するようになっている。
また、第2インナーレースC21は、図示時計回りに回転するときに、第2アウターレースC22とは係合せずに、第2アウターレースC22に対して回転するようになっている(図5参照)。これにより、第2切替機構C2は、カバー22を開ける際におけるカバー22の駆動力がダンパDに伝達するのを遮断するようになっている。
ダンパDは、ロータリダンパであり、カバー22の動作に対してブレーキ力を発生させている。ダンパDとしては、例えば、内部に封入したオイルの粘性抵抗を利用した油圧ダンパなどを利用することができる。
図1に示すように、制御部200は、シートS上のトナー像に箔を転写する箔転写制御を実行する場合には、電磁クラッチECおよびモータ5に所定時間電力を供給することで、カム182を接触位置(図4の破線の位置)と退避位置(図4の二点鎖線の位置)に適宜切り替える制御を実行可能となっている。詳しくは、制御部200は、シートSが供給トレイ23からフィルム加圧ローラ142と多層フィルムFとの間のニップ部に到達するまでの間、カム182を退避位置に位置させ、シートSがニップ部に到達したときに、カム182を接触位置に位置させている。これにより、シートSがニップ部に到達するまでの間、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFから離間させ、シートSがニップ部に到達したときに、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFに接触させることが可能となっている。なお、シートSがニップ部に到達したか否かの判断は、例えば、シートSの通過を検出するシートセンサに基づいて行うことができるし、供給ローラ3が駆動してから所定時間経過したことに基づいて行うこともできる。
なお、制御部200は、カム182の位置を切り替える場合には、電磁クラッチECおよびモータ5に電力を供給させる。これにより、モータ5が回転するとともに電磁クラッチECが伝達状態となるので、モータ5の駆動力がカム182に伝達される。
また、制御部200は、カム182の回転を止める場合には、電磁クラッチECおよびモータ5の少なくとも一方への電力供給を停止させる。これにより、電磁クラッチECが遮断状態またはモータ5が停止するので、モータ5からカム182への駆動力の伝達が遮断される。
また、制御部200は、センサ6からの信号を受信するように、センサ6とバスで接続されている。制御部200は、カバー22を閉じた際に、センサ6からの信号に基づいて、カム182が退避位置に位置するか否かを判断し、退避位置に位置していないと判断した場合には、電磁クラッチECおよびモータ5を制御して、カム182を退避位置まで回転させる制御を実行可能となっている。なお、カバー22を閉じたか否かの判断は、例えば、カバー22が閉じられたことを検出する開閉センサからの信号に基づいて行えばよい。
次に、接離機構180の作用効果について詳細に説明する。
図4に示すように、箔転写制御を実行する際において、カム182の位置が二点鎖線で示す退避位置である場合には、制御部200は、電磁クラッチECおよびモータ5に電力を供給せずに、図1に示す供給ローラ3を駆動して、シートSをフィルム加圧ローラ142と多層フィルムFとの間のニップ部に向けて搬送する。
シートSがニップ部に到達すると、制御部200は、電磁クラッチECおよびモータ5に所定時間電力を供給させる。これにより、モータ5が図示時計回りに回転し、モータ5の駆動力が、ギヤG1および電磁クラッチECを介してカムギヤGcに所定時間伝達されるので、カム182が図示反時計回りに略180°回転する。これにより、カム182が退避位置から接触位置まで回転するので、カム182によって支持部材181を上方に押し上げて、フィルム加熱ローラ141を第2位置から第1位置に移動させることができる。これにより、多層フィルムFとフィルム加圧ローラ142との間のニップ圧を適正な値にすることができ、箔転写を良好に行うことができる。
なお、この際、欠歯ギヤGN、伝達ギヤGtおよび第1アウターレースC12も回転するが、第1アウターレースC12が図示時計回りに回転するため、第1アウターレースC12が第1インナーレースC11に対して滑るように回転する。これにより、第1インナーレースC11が回転しないので、モータ5の駆動力がカバー22には伝達されることはない。つまり、カバー22が閉じている状態でモータ5を駆動しても、カバー22が開くことはない。ここで、図4等の図面において、回転せずに停止している部材には、ドットのハッチングを施している。
その後、箔転写されたシートSが多層フィルムFとフィルム加圧ローラ142との間のニップ部を抜けると、制御部200は、電磁クラッチECおよびモータ5に所定時間電力を供給することで、カム182を図示反時計回りに略180°回転させる。これにより、カム182が接触位置から退避位置まで回転するので、カム182で下から支持されていた支持部材181が重力によって徐々に下がっていき、フィルム加熱ローラ141を第1位置から第2位置に移動させることができる。そのため、次のシートSがニップ部に到達するまでの間、フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFから離間させることができるので、多層フィルムFの無駄な加熱を抑えることができる。
次に、箔転写制御中にユーザが誤ってカバー22を開けてしまった場合における接離機構180の作用効果について説明する。
図4に示す箔転写制御中において、ユーザが誤ってカバー22を開けると、電磁クラッチECおよびモータ5に電力を供給する電源が強制的にOFFになる。そのため、この際に、フィルム加熱ローラ141が第1位置に位置していると、フィルム加熱ローラ141が多層フィルムFに接触したままの状態となり、多層フィルムFが無駄に加熱されてしまうおそれがある。
本実施形態では、カバー22の駆動力をカム182に伝達する第2伝達機構T2が設けられているので、モータ5の駆動力が切れた状態であっても、カム182は、カバー22を開ける動作に連動して回転させられる。そのため、ユーザは、モータ5の駆動力が切れた状態であっても、フィルム加熱ローラ141を第1位置から第2位置に移動させることができる。言い換えると、フィルム転写装置1は、モータ5の駆動力が切れた状態であっても、フィルム加熱ローラ141を第1位置から第2位置に移動させることが可能となっている。
詳しくは、図5に示すように、ユーザがカバー22を開けると、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22G、ギヤG2、ギヤG3、第1切替機構C1、伝達ギヤGtおよび欠歯ギヤGNを介してカムギヤGcに伝達される。これにより、カム182が接触位置から退避位置に向けて回転し始める。
なお、カバー22を開ける際、ギヤG3に噛み合っている第2インナーレースC21も回転するが、第2インナーレースC21が図示時計回りに回転するため、第2インナーレースC21が第2アウターレースC22に対して滑るように回転する。これにより、第2アウターレースC22が回転しないので、カバー22を開放する動作がダンパDの抵抗によって阻害されてしまうのを抑えることができる。
また、カバー22を開ける際、カバー22の突起22Aがリンク部材72から外れることで、ロックレバー71がバネの付勢力によって解除位置からロック位置に回動する。
図6に示すように、カバー22を所定位置(実線の位置)まで開けていき、カム182が退避位置まで到達すると、欠歯ギヤGNの欠歯部N22が伝達ギヤGtに対向して、伝達ギヤGtから欠歯ギヤGNへの駆動力の伝達が切れる。これにより、カム182が退避位置で留まるので、フィルム加熱ローラ141が多層フィルムFから離れた第2位置に保持される。なお、欠歯ギヤGNの欠歯部N22が伝達ギヤGtに対向するときには、ロックレバー71が係合部N3と係合するので、欠歯ギヤGNの向きがロックレバー71によってロックされる。
その後は、カバー22を二点鎖線で示す全開位置まで開けても、伝達ギヤGtから欠歯ギヤGNへの駆動力の伝達が切れているため、フィルム加熱ローラ141が第2位置のまま維持される。そのため、箔転写制御中にユーザが誤ってカバー22を開けてしまって電源が強制的にOFFにされた場合であっても、カバー22からの駆動力によってフィルム加熱ローラ141を多層フィルムFから離間させることができるので、多層フィルムFを無駄に加熱するのを抑えることができる。
図7に示すように、二点鎖線で示す全開位置からカバー22を閉めていくと、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22G、ギヤG2およびギヤG3を介して第1インナーレースC11に伝達されるが、第1インナーレースC11が図示反時計回りに回転するため、第1インナーレースC11が第1アウターレースC12に対して滑るように回転する。これにより、第1アウターレースC12が回転しないので、カバー22の駆動力がカム182に伝達されずに、フィルム加熱ローラ141が第2位置に維持される。
また、カバー22を閉める場合には、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22G、ギヤG2,G3および第2切替機構C2を介してダンパDに伝達される。これにより、カバー22を閉める際の衝撃をダンパDで緩和することができる。
このようなカバー22を閉じる際のカバー22の駆動力の伝達は、図8に示すように、カバー22を全閉させるまで変わらないので、カバー22を全閉させるまで、フィルム加熱ローラ141を第2位置に維持することができる。そのため、箔転写制御中にユーザが誤ってカバー22を全開にした後すぐに閉じた場合であっても、フィルム加熱ローラ141が多層フィルムFから離間したままの状態となっているので、多層フィルムFを無駄に加熱するのを抑えることができる。
また、カバー22を全閉させた場合には、カバー22の突起22Aがリンク部材72を下に押すので、ロックレバー71がロック位置から解除位置に回動する。これにより、次に箔転写制御を行う場合において、モータ5の駆動力によってカム182を良好に回転させることができる。また、突起22Aがリンク部材72に当接するときの衝撃は、ダンパDで緩和されるので、突起22Aまたはリンク部材72が破損するのを抑えることができる。
なお、図3に示すように、カム182が接触位置に位置する状態で、カバー22を全閉位置から開けていき、欠歯ギヤGNの欠歯部N22が図6に示すように伝達ギヤGtに対向する前に、カバー22を全閉位置まで閉じた場合には、カム182が、接触位置および退避位置とは異なる位置で止まってしまうことがある。詳しくは、例えば図5に示す状態までカバー22を開けると、カム182は接触位置から少しずれた位置まで回転する。その後、カバー22を図5の位置から閉めていくと、第1切替機構C1によってカバー22の駆動力がカム182に伝達されなくなるので、カム182が接触位置から少しずれた位置に維持されることになる。そして、この場合には、フィルム加熱ローラ141が多層フィルムFに接触したままに維持されるおそれがある。
この場合であっても、制御部200は、カバー22を閉じた際に、カム182の位置をセンサ6で検出して、カム182を退避位置まで回転させるので、多層フィルムFをフィルム加熱ローラ141によって無駄に加熱するのを抑えることができる。
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
フィルム加熱ローラ141を多層フィルムFに接触させる必要がない場合には、モータ5の駆動力によってフィルム加熱ローラ141を多層フィルムFから離間させることができるので、フィルム加熱ローラ141によって多層フィルムFが無駄に加熱されてしまうのを抑えることができる。
カバー22を開ける場合には、カバー22の動作に連動してフィルム加熱ローラ141が多層フィルムFから離れるので、前述したように箔転写制御中にカバー22を開けてしまった場合やジャム処理を行う場合などにおいて、多層フィルムFが無駄に加熱されてしまうのを抑えることができる。また、カバー22を閉じる場合には、フィルム加熱ローラ141が第2位置のまま維持されるので、カバー22を閉じた際にフィルム加熱ローラ141の温度が高温であった場合でも、多層フィルムFが無駄に加熱されてしまうのを抑えることができる。
第1切替機構C1および第2切替機構C2を、それぞれワンウェイクラッチとしたので、切替機構をその他の構造とする場合と比べ、接離機構180を小型化することができる。
カバー22を閉じる際におけるカバー22の駆動力をダンパDに伝達するので、カバー22を閉じる速度を減じることができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前述した第1の実施形態に係る接離機構180の一部の構造を変更したものであるため、第1の実施形態と略同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
図9に示すように、第2の実施形態に係る接離機構280は、第1の実施形態に係る第1切替機構C1とは構造の異なる第1切替機構C3を備えている。第1切替機構C3は、直線的に移動可能なラックギヤであり、本体筐体21に前後方向に移動可能に支持されている。
第1切替機構C3は、ギヤG2と噛み合うギヤ歯部C31と、欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21と噛み合い可能な噛合部C32と、欠歯ギヤGNと対向した状態で当該欠歯ギヤGNとは噛み合わない非噛合部C33と、を有している。ここで、噛合部C32は、伝達ギヤにも相当する。
非噛合部C33は、ギヤ歯部C31と噛合部C32との間に配置されている。カバー22が閉じた状態において、非噛合部C33は、上下方向、つまり第1切替機構C3の移動方向に直交する方向で、欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21と対向している。
ギヤ歯部C31は、カバー22が全閉位置から全開位置までのいずれの位置に位置するときであっても、ギヤG2に噛み合っている。噛合部C32は、カバー22が全閉位置に位置するときには、欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21から離れている。噛合部C32は、図10に示すように、カバー22が全閉位置から全開位置に向けて回動する途中で、欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21に噛み合うように構成されている。なお、噛合部C32は、カム182とカムギヤGcに対してカム182の軸線方向にずれた位置に配置されており、カム182とカムギヤGcとは干渉しない。
この形態では、図9に示すように、カバー22が閉じた状態において、箔転写制御を行う場合には、非噛合部C33が欠歯ギヤGNと対向することで、欠歯ギヤGNから第1切替機構C3に駆動力が伝達されないので、第1の実施形態と同様に、モータ5の駆動力によってカム182の位置を適宜切り替えることができる。
また、図10に示すように、カバー22を全閉位置から開けていくと、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22GおよびギヤG2を介して第1切替機構C3に伝達されて、第1切替機構C3が前方に移動する。その後、噛合部C32が欠歯ギヤGNのギヤ歯部N21に噛み合うと、駆動力が、第1切替機構C3から欠歯ギヤGNを介してカムギヤGcに伝達されるので、カム182が回転し始める。
図11に示すように、欠歯ギヤGNの欠歯部N22が噛合部C32に対向すると、第1切替機構C3から欠歯ギヤGNへの駆動力の伝達が切れるので、カム182の回転も止まって、カム182が退避位置に位置することになる。そのため、本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、第1の実施形態のようなワンウェイクラッチである第1切替機構C1を用いる構造と比べ、コストを低くすることができるといった効果も得ることができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前述した第1の実施形態に係る接離機構180の一部の構造を変更したものであるため、第1の実施形態と略同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
図12に示すように、第3の実施形態に係る接離機構380は、第1の実施形態に係る第1切替機構C1とは構造の異なる第1切替機構C4と、第1の実施形態に係る第2切替機構C2とは構造の異なる第2切替機構C5とを備えている。
第1切替機構C4は、第1ベースギヤC41と、第1振子ギヤC42とを備えている。第1ベースギヤC41は、カバー22の開閉に連動して回転するギヤであり、ギヤG2に噛み合っている。
第1振子ギヤC42は、伝達ギヤGtと噛み合う第1噛合位置(図13の実線の位置)と伝達ギヤGtから離間する第1離間位置(図12の位置)との間を、第1ベースギヤC41と噛み合いながら移動可能となっている。第1振子ギヤC42は、カバー22が全閉位置に位置するときに、第1離間位置に位置している。そして、第1振子ギヤC42は、カバー22が全閉位置から全開位置に移動するときに、第1離間位置から第1噛合位置へ移動し、カバー22が全開位置から全閉位置に移動するときに、第1噛合位置から第1離間位置へ移動するようになっている。
本体筐体21は、第1振子ギヤC42を伝達ギヤGtから離れる方向に付勢する付勢部材SPを備えている。付勢部材SPは、トーションバネであり、一端部が第1振子ギヤC42の軸部に係合し、他端部が本体筐体21に設けられるバネ係合部21Bに係合している。
第2切替機構C5は、第1ベースギヤC41と、第2振子ギヤC52とを備えている。ここで、第1ベースギヤC41は、第2ベースギヤにも相当している。つまり、本実施形態では、第1切替機構C4を構成するベースギヤと、第2切替機構C5を構成するベースギヤが、共通の第1ベースギヤC41となっている。
第2振子ギヤC52は、ダンパDと噛み合う第2噛合位置(図12の位置)とダンパDから離間する第2離間位置(図13の実線の位置)との間を、第1ベースギヤC41と噛み合いながら移動可能となっている。第2振子ギヤC52は、カバー22が全閉位置に位置するときに、第2噛合位置に位置している。そして、第2振子ギヤC52は、カバー22が全閉位置から全開位置に移動するときに第2噛合位置から第2離間位置へ移動し、カバー22が全開位置から全閉位置に移動するときに、第2離間位置から第2噛合位置へ移動するようになっている。
この形態では、図12に示すように、カバー22が閉じた状態において、箔転写制御を行う場合には、第1振子ギヤC42が伝達ギヤGtから離間した状態となっていることから、伝達ギヤGtから第1切替機構C4に駆動力が伝達されないので、第1の実施形態と同様に、モータ5の駆動力によってカム182の位置を適宜切り替えることができる。
また、図13に示すように、カバー22を全閉位置から開けていくと、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22GおよびギヤG2を介して第1ベースギヤC41に伝達されて、第1ベースギヤC41が図示反時計回りに回転する。この回転により、第2振子ギヤC52がダンパDから離間するとともに、第1振子ギヤC42が伝達ギヤGtに噛み合うこととなる。そのため、その後は、カバー22の駆動力が、第1振子ギヤC42から伝達ギヤGtおよび欠歯ギヤGNを介してカムギヤGcに伝達されるので、カム182が回転し始める。
図14に示すように、欠歯ギヤGNの欠歯部N22が伝達ギヤGtに対向すると、伝達ギヤGtから欠歯ギヤGNへの駆動力の伝達が切れるので、カム182の回転も止まって、カム182が退避位置に位置することになる。そのため、本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、第1切替機構C4を第1振子ギヤC42を利用した構造としたので、第2の実施形態のようなラックギヤである第1切替機構C3を用いる構造と比べ、コストを低くすることができるといった効果も得ることができる。また、本実施形態では、各切替機構C4,C5を振子ギヤC42,C52を利用した構造としたので、第1の実施形態のようなワンウェイクラッチである切替機構C1,C2を用いる構造と比べ、コストを低くすることができる。
また、本実施形態では、第1振子ギヤC42を伝達ギヤGtから離れる方向に付勢する付勢部材SPを設けたので、カバー22を閉じた際に、第1振子ギヤC42を伝達ギヤGtから確実に離間させることができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前述した第1の実施形態に係る接離機構180の一部の構造を変更したものであるため、第1の実施形態と略同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
図15に示すように、第4の実施形態に係る接離機構480は、第1の実施形態に係る欠歯ギヤGNの代わりに遊星歯車機構80を備えている。
図16(a)に示すように、遊星歯車機構80は、サンギヤ81と、複数のプラネタリギヤ82と、リングギヤ83と、キャリア84とを備えている。サンギヤ81は、二段ギヤであり、大径ギヤ部81Aと、大径ギヤ部81Aよりも径が小さい小径ギヤ部81Bとを有している。
大径ギヤ部81Aは、伝達ギヤGtに噛み合っている。小径ギヤ部81Bは、各プラネタリギヤ82と噛み合うギヤであり、大径ギヤ部81Aとともに回転可能となっている。
プラネタリギヤ82は、小径ギヤ部81Bの周囲に配置され、小径ギヤ部81Bに噛み合うとともに、リングギヤ83の内歯83Aに噛み合っている。
リングギヤ83は、外径が大径ギヤ部81Aよりも小さな径となるリング状に形成されている。リングギヤ83の内周面には、全周にわたって内歯83Aが形成されている。
キャリア84は、外径がリングギヤ83の外径よりも小さな径となる筒状の部材であり、その端部において各プラネタリギヤ82の軸部を回転可能に支持している。キャリア84の外周面の一部には、カムギヤGcに噛み合うギヤ歯部84Aが全周にわたって形成されている。
この遊星歯車機構80では、図16(b)に示すように、リングギヤ83をロックした場合には、カバー22の駆動力を、伝達ギヤGt、サンギヤ81、プラネタリギヤ82およびキャリア84を介してカムギヤGcに伝達することが可能となっている。詳しくは、サンギヤ81が回転すると、図16(a)に示すプラネタリギヤ82が、ロックされたリングギヤ83の内周面に沿って回転する。つまり、プラネタリギヤ82は、自身の回転軸を中心に自転するとともに、サンギヤ81の回転軸を中心にして公転する。これにより、キャリア84が回転して、キャリア84からカムギヤGcに駆動力が伝達される。
なお、逆に、リングギヤ83がロックされた状態において、モータ5の駆動力がカムギヤGcを介してキャリア84に伝達される場合には、同様の作用によって、カムギヤGcからの駆動力を、キャリア84、プラネタリギヤ82およびサンギヤ81を介して伝達ギヤGtに伝達することも可能となっている。
また、図16(c)に示すように、キャリア84をロックした場合には、カバー22の駆動力を、伝達ギヤGt、サンギヤ81およびプラネタリギヤ82を介してリングギヤ83に伝達し、リングギヤ83を空転させることで、カムギヤGcには伝達されないようになっている。詳しくは、サンギヤ81が回転すると、図16(a)に示すプラネタリギヤ82が、ロックされたキャリア84で支持されることで、サンギヤ81の回転軸を中心に公転することなく、その場で自転する。これにより、フリーになっているリングギヤ83が空転する。
次に、リングギヤ83またはキャリア84をロックするための構造について説明する。
図17(a)に示すように、本体筐体21には、ロック機構90が回動可能に設けられている。
ロック機構90は、リングギヤ83をロックするための第1ロックアーム91と、キャリア84をロックするための第2ロックアーム92と、第2ロックアーム92をキャリア84に向けて付勢するバネ93とを備えている。第1ロックアーム91は、本体筐体21に対して回動可能となっており、一端部が本体筐体21に軸支され、他端部が、リングギヤ83の外周面に設けられた係合突起83Bに係合するフック部91Aとなっている。係合突起83Bは、リングギヤ83の外周面に周方向に沿って略等ピッチで複数設けられている。第1ロックアーム91と第2ロックアーム92とは、略直角をなすように、同一の軸に固定されている。
第2ロックアーム92は、第1ロックアーム91とともに本体筐体21に対して第1ロックアーム91と同一の軸を中心に回動可能となっており、一端部が、第1ロックアーム91の一端部に固定され、第1ロックアーム91の一端部とともに本体筐体21に軸支されている。第2ロックアーム92の他端部は、キャリア84の外周面に形成される係合凹部84Bに係合するフック部92Aとなっている。第2ロックアーム92は、サンギヤ81の軸線方向において、第1ロックアーム91とは異なる位置に配置されている(図18(a)参照)。
バネ93は、本体筐体21に設けられるバネ支持部21Cと、第2ロックアーム92との間に配置されている。
図17(a)に示すように、カバー22が閉まっている状態においては、カバー22に設けられた支持突起22Bによって、第1ロックアーム91が係合突起83Bに係合する位置で保持されるようになっている。これにより、カバー22が閉まっている状態においては、リングギヤ83がロックされるようになっている。そのため、カバー22が閉まっている状態においては、図18(a)に示すように、伝達ギヤGtからカムギヤGcへ、または、カムギヤGcから伝達ギヤGtへ駆動力を伝達することが可能となっている。
なお、この際、図17(a)に示すように、第2ロックアーム92は、係合凹部84Bから離れた位置で保持される。また、この際、バネ93は、第2ロックアーム92とバネ支持部21Cとの間で押し縮められた状態となっている。
図17(b)に示すように、カバー22が所定位置まで開放されて、支持突起22Bによる第1ロックアーム91の支持が解除されると、バネ93の付勢力によって第2ロックアーム92がキャリア84に向けて回動し、係合凹部84Bに係合する。これにより、カバー22が所定位置まで開放された場合には、キャリア84がロックされるようになっている。そのため、カバー22が所定位置まで開放された場合には、図18(b)に示すように、伝達ギヤGtからの駆動力が、カムギヤGcに伝達されないようになっている。なお、この際、第1ロックアーム91は、係合突起83Bから離れた位置で保持される。
ここで、支持突起22Bは、カバー22を全閉位置から所定位置まで回動させるまでの間、第1ロックアーム91を支持して、第1ロックアーム91を係合突起83Bに係合させた状態に維持している。これにより、カバー22を全閉位置から所定位置まで回動させるまでの間は、カバー22の駆動力によってカム182が回転するようになっている。そして、カバー22が所定位置に到達したときに、カム182が退避位置に位置するようになっており、このときに、支持突起22Bが第1ロックアーム91から外れることで、カバー22からカム182への駆動力の伝達が切れて、カム182の回転が退避位置で止まるようになっている。
この形態では、図15に示すように、カバー22が閉じた状態において、箔転写制御を行う場合には、リングギヤ83がロックされていることから、図16(b)に示すように、モータ5の駆動力は、カムギヤGcから遊星歯車機構80を介して伝達ギヤGtに伝達されるが、この駆動力は、第1の実施形態と同様の第1切替機構C1によってカバー22に伝達されない。そのため、この形態でも、第1の実施形態と同様に、モータ5の駆動力によってカム182の位置を適宜切り替えることができる。
また、図19に示すように、カバー22を全閉位置から所定位置に向けて開けていく場合には、リングギヤ83がロックされていることから、カバー22の駆動力が、カバー側ギヤ22G、ギヤG2、ギヤG3、第1切替機構C1、伝達ギヤGtおよび遊星歯車機構80を介してカムギヤGcに伝達される。これにより、カム182が回転し始める。
図20に示すように、カバー22が所定位置まで開放されて、カム182が退避位置に位置すると、図17(b)に示す支持突起22Bが第1ロックアーム91から外れて、第2ロックアーム92によってキャリア84がロックされる。これにより、カバー22の駆動力が、遊星歯車機構80によってカムギヤGcに伝達されなくなって、カム182が退避位置に維持されるので、本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
シートは、普通紙や厚紙などの用紙であってもよいし、OHPシートなどのその他のシートであってもよい。
多層フィルムは、箔の層を備えないフィルムであってもよい。例えば、箔の層の代わりに木目調の色材の層を有するフィルムであってもよい。また、トナーと接着する接着層と、接着層と支持体との間にある剥離層とだけを有するフィルムであってもよい。
前記実施形態では、カム182でフィルム加熱ローラ141を多層フィルムFに向けて押圧したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フィルム加熱ローラをバネなどの弾性部材によって多層フィルムに向けて付勢し、カムによってフィルム加熱ローラを弾性部材の付勢力に抗して押圧することで、フィルム加熱ローラを多層フィルムから離間させてもよい。
第3の実施形態では、第1切替機構C4を構成するベースギヤと、第2切替機構C5を構成するベースギヤを、共通の第1ベースギヤC41としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1切替機構を、第1ベースギヤと第1振子ギヤとで構成し、第2切替機構を、第1ベースギヤとは別の第2ベースギヤと第2振子ギヤとで構成してもよい。
第3の実施形態では、付勢部材SPをトーションバネとしたが、本発明はこれに限定されず、付勢部材は、例えば、圧縮コイルバネ、引張コイルバネ、板バネ、線バネなどであってもよい。
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。