<実施の形態1>
本発明の実施の形態に係る用紙供給機構は、用紙、例えば、印画紙の供給などを行う。本実施の形態では、互いに異なる複数の色パネルを持つインクシートを用いて、カラー画像を印画紙に印画する熱転写型のカラープリンタ(以下、略して「プリンタ」と呼ぶ)に、用紙供給機構が設けられているものとして説明する。
図1は用紙供給機構の構成を示す斜視図である。以下の説明において、帯形状の印画紙1を中空ロール状に巻回したものを、「ペーパーロール2」と呼ぶ。図1に示すように、用紙供給機構は、ペーパーフランジユニット3と、フランジ駆動歯車4と、当該フランジ駆動歯車4を含む複数の歯車を回転可能に軸支するブラケット23とを備える。なお、以下の図においては、歯車の歯を示す代わりに、歯車の歯先を通る円(以下、「歯先円」と呼ぶ)が図示されている。
ペーパーフランジユニット3は、円柱状の部材であり、ペーパーロール2の中心の空洞に挿入された状態で、ペーパーロール2を支持する。ペーパーフランジユニット3の円柱の中心には、プリンタに固定された回転軸が設けられており、挿入されたペーパーロール2と一体となって当該回転軸の周りに回転可能となっている。ペーパーロール2が挿入されたペーパーフランジユニット3において、ペーパーロール2からはみ出る部分、つまり、フランジには、フランジ駆動歯車4と噛み合う歯が設けられている。
フランジ駆動歯車4は、歯先円の直径が大きい歯車4aと、歯先円の直径が小さい歯車4bとから構成されている。歯車4a及び歯車4bは互いに固定されており、一体化されている。フランジ駆動歯車4の歯車4aは、ペーパーフランジユニット3と常に噛み合った状態で配置されており、ペーパーフランジユニット3との間で回転を伝達する。
図2は、理解を容易にするために、用紙供給機構のうち一部の部品を非表示にしたものである。図2に示すように、用紙供給機構は、ローラー駆動用中継歯車5と、ローラー駆動歯車6と、ローディングローラー7と、ピンチローラー8と、モーター14とを備える。
ローラー駆動用中継歯車5及びフランジ駆動歯車4は、互いに同一の回転軸を有し、その回転軸の軸方向において互いに異なる位置に設けられている。フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5のそれぞれは、互いに独立して回転するようにブラケット23により軸支されている。ローラー駆動用中継歯車5及びフランジ駆動歯車4の歯車4bは、歯先円の直径が互いに同一となっている。
ローラー駆動歯車6は、ローラー駆動用中継歯車5と常に噛み合った状態で回転するようにブラケット23により軸支されている。ローラー駆動歯車6は、ローラー駆動用中継歯車5との間で回転を伝達する。ローディングローラー7及びローラー駆動歯車6は、互いに同一の回転軸を有し、その回転軸の軸方向において互いに異なる位置に設けられている。ローディングローラー7は、ペーパーロール2から引き出された印画紙1を搬送する。本実施の形態に係る用紙供給機構には、ローラー駆動歯車6とローディングローラー7との間において一定のトルクを伝達するトルクリミッタ(図示しない)が設けられている。以下、このトルクリミッタを「ローラートルクリミッタ」と呼ぶ。なお、ローラートルクリミッタは、一般的なトルクリミッタと同様、一方から他方に一定トルクを伝達し、仮に一方の回転が禁止されている場合には、他方に対して負荷トルクを与える。このローラートルクリミッタの機能により、ローラー駆動歯車6は、ローディングローラー7との間において一定のトルクを伝達する。
ピンチローラー8は、圧着機構(図示せず)により、印画紙1を介してローディングローラー7と圧着する。このピンチローラー8は、回転自在になっており、印画紙1の移動に応じて回転する。
モーター14は、用紙供給機構の駆動源であり、正逆両方向に回転可能である。このモーター14は、ブラケット23により支持される。
図3は、用紙供給機構周辺のプリンタの構成を示す図である。本実施の形態に係るプリンタ内には、印画紙挿入口51、先端検出手段52、グリップローラー53、及び、印画部(図示しない)が設けられている。
印画紙挿入口51は、ペーパーロール2から引き出された印画紙1が挿入される挿入口であり、ペーパーフランジユニット3に支持されたペーパーロール2の近傍に設けられている。ペーパーロール2から引き出された印画紙1は、印画紙挿入口51を通って印画紙挿入口51よりも奥に供給される。以下、この方向を、「供給方向」と呼ぶ。供給方向において、印画紙挿入口51の後には、ローディングローラー7及びピンチローラー8が配置されている。先端検知手段52は、印画紙1の先端を検知するものであり、印画紙1の供給方向において、ローディングローラー7及びピンチローラー8の直後に設けられている。グリップローラー53は、モーター14とは別の駆動源によって印画紙1を搬送するものであり、印画紙1の供給方向において、先端検知手段52の後に設けられている。印画紙挿入口51からグリップローラー53までには、印画紙1を案内する紙ガイド54が設けられている。印画部は、印画紙1を印画するものであり、印画紙1の供給方向において、グリップローラー53の後に設けられている。
また、プリンタには、ペーパーフランジユニット3を露出したり覆ったりするためのカバー55が設けられている。つまり、本実施の形態では、用紙供給機構は、ペーパーフランジユニット3を覆うカバー55を有するプリンタに設けられている。このカバー55は、ペーパーロール2の交換時に開閉される。
図4は、用紙供給機構が備える、図2に示されるアイドラーユニット9を示す斜視図である。このアイドラーユニット9は、少なくともフランジ駆動歯車4と、後述するアイドラー中継歯車13との間においてトルクを伝達できる状態と、トルクを伝達できない状態(以下、「アイドル状態」と呼ぶこともある)とを選択的に切り替える。このアイドラーユニット9は、アイドラー幅狭歯車10と、アイドラー幅狭歯車10よりも歯幅(回転軸方向の歯の幅)が広いアイドラー幅広歯車11と、これら歯車を軸支するアイドラー歯車軸支部12とから構成されている。
アイドラー幅狭歯車10は、ローラー駆動用中継歯車5とは噛合せずに、フランジ駆動歯車4の歯車4bと噛合することが可能となっている。一方、アイドラー幅広歯車11は、フランジ駆動歯車4の歯車4b及びローラー駆動用中継歯車5の両方に同時に噛合することが可能となっている。
アイドラー歯車軸支部12は、一辺が内側に湾曲している略三角形の板状部材12aと、当該湾曲している辺と対向する頂点の位置において板状部材12aと垂直に設けられた回動軸12bとから構成されている。そして、アイドラー歯車軸支部12は、残りの2つの頂点の位置において、アイドラー幅狭歯車10及びアイドラー幅広歯車11をそれぞれ軸支している。
図5〜7は、フランジ駆動歯車4、ローラー駆動用中継歯車5、アイドラーユニット9の位置関係を示す図である。アイドラーユニット9の回動軸12bは、アイドラー幅狭歯車10がフランジ駆動歯車4と対向するとともに、アイドラー幅広歯車11がフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5の両者と対向するように、ブラケット23により保持されている。
このアイドラーユニット9は回動軸12bを中心に一定範囲内を回動可能となっている。
アイドラーユニット9が回動可能範囲の一端にあるときには、アイドラー幅狭歯車10がローラー駆動用中継歯車5と噛み合わずに、フランジ駆動歯車4の歯車4bと噛み合う状態となる(図5)。このときには、アイドラー幅広歯車11は、フランジ駆動歯車4の歯車4b及びローラー駆動用中継歯車5のいずれとも切り離された状態となる。
一方、アイドラーユニット9が回動可能範囲の他端にあるときには、アイドラー幅広歯車11がフランジ駆動歯車4の歯車4b及びローラー駆動用中継歯車5の両者と同時に噛み合う状態となる(図6)。このときには、アイドラー幅狭歯車10は、フランジ駆動歯車4の歯車4bと切り離された状態となる。
アイドラーユニット9が回動可能範囲の一端と他端との間にあるときには、アイドラー幅狭歯車10がフランジ駆動歯車4から切り離れ、かつ、アイドラー幅広歯車11がフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5のいずれからも切り離れる状態となる(図7)。つまり、図7に示される状態では、アイドラー幅狭歯車10、アイドラー幅広歯車11、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5が互いに切り離れる。以下、図7に示される状態を「中立状態」と呼ぶこともある。本実施の形態において、この中立状態と、上述のアイドル状態とは同一である。
用紙供給機構は、以上のようなアイドラーユニット9の回動範囲における位置を変更することにより、図5〜図7にそれぞれ示す3つ状態を選択的に切り替えることができる。
図5〜図7に示されるように、用紙供給機構は、アイドラー中継歯車13を備える。このアイドラー中継歯車13は、アイドラーユニット9の中心軸12bの周りに回転する。アイドラー中継歯車13は、アイドラー幅狭歯車10、及び、アイドラー幅広歯車11の両方に常に噛み合っており、例えば、アイドラー中継歯車13が、モーター14からのトルクを受けると、アイドラー幅狭歯車10及びアイドラー幅広歯車11に回転を伝達する。
ここで、アイドラー幅広歯車11は負荷トルクが多少大きくなっている。つまり、アイドラー幅広歯車11は多少回転しにくくなっている。そのため、アイドラー中継歯車13が、モーター14のトルクを受けて回転する場合には、アイドラーユニット9は、アイドラー中継歯車13の回転方向と同じ方向に回動する。
なお、ここでは、アイドラー幅広歯車11の負荷トルクが多少大きいとしているが、その代わりに、アイドラー幅狭歯車10の負荷トルクが多少大きいものとしてもよい。あるいは、アイドラー中継歯車13の貫通穴の内壁が中心軸12bによって擦られるようにすることにより、中心軸12bがアイドラー中継歯車13の回転方向に引きずられて回動するものであってもよい。これらの場合であっても、アイドラー中継歯車13が、モーター14のトルクを受けて回転する場合には、アイドラーユニット9は、アイドラー中継歯車13の回転方向と同じ方向に回動することになる。
図8は、用紙供給機構の構成の一部を示す斜視図である。図に示されるように、用紙供給機構は、ウォーム15と、ウォームホイール16と、フランジトルクリミッタ17とを備える。
ウォーム15は、ねじ歯車であって、モーター14により回転される回転軸に一体的に設けられており、当該回転軸を中心に回転する。ウォームホイール16は、はすは歯車であって、アイドラー中継歯車13と同一の回転軸を有し、当該回転軸の軸方向において互いに異なる位置に設けられている。このウォームホイール16も、アイドラー中継歯車13と同様に、ブラケット23により軸支されている。
ウォームホイール16は、ウォーム15と噛み合うことによりウォームギアを形成している。このウォームギアは、一般的なウォームギアと同様、ウォーム15がトルクを受けた場合には、ウォーム15及びウォームホイール16はいずれも回転するが、ウォームホイール16がトルクを受けてもウォーム15及びウォームホイール16はいずれも回転しないという、セルフロックと呼ばれる機能を有している。
フランジトルクリミッタ17は、その中心軸が、ウォームホイール16及びアイドラー中継歯車13の回転軸と同一直線上に位置するように、ブラケット23により支持されている。このフランジトルクリミッタ17は、ウォームホイール16とアイドラー中継歯車13との間において一定のトルクを伝達する。
ここで、ウォームホイール16は、モーター14とフランジトルクリミッタ17とを連結する歯車の一つであり、アイドラー中継歯車13は、フランジトルクリミッタ17とアイドラー幅狭歯車10とを連結する歯車であるから、フランジトルクリミッタ17は、モーター14とアイドラー幅狭歯車10との間において一定のトルクを伝達することになる。同様に、アイドラー中継歯車13は、フランジトルクリミッタ17とアイドラー幅広歯車11とを連結する歯車であるから、フランジトルクリミッタ17は、モーター14とアイドラー幅広歯車11との間において一定のトルクを伝達することになる。
なお、フランジトルクリミッタ17は、一般的なトルクリミッタと同様、仮に一方の回転が禁止されている場合には、他方に対して負荷トルクを与える。また、このフランジトルクリミッタ17は、ローラートルクリミッタよりも多少滑りにくいものとなっている。
図9は、用紙供給機構の構成の一部を示す斜視図である。図に示されるように、用紙供給機構は、中継連結歯車18と、連結レバー19とを備える。
中継連結歯車18は、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5の両者と同時に噛合して両者を連結するための歯車である。連結レバー19の一端には、中継連結歯車18が設けられており、他端には、中継連結歯車18の回転軸と平行に延在する円筒部材19aが設けられている。そして、連結レバー19は、その中心において、ブラケット23に設けられた円柱形状の支軸23aに通されている。これにより、連結レバー19は、当該支軸23aを中心に回動可能となるように、ブラケット23に保持されている。円筒部材19aの一部は、その延在方向に突出するボス部19bが設けられている。
連結レバー19が、支軸23aを軸として、図9に示される矢印が示す回動方向Aに回動していくと、中継連結歯車18が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5の両者と同時に噛合する状態(以下、「中継連結状態」と呼ぶ)となる。一方、連結レバー19が、その状態から、支軸23aを軸として、図9に示される矢印が示す、回動方向Aと反対の回動方向Bに回動していくと、中継連結歯車18が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5から同時に切り離れる状態(以下、「中継切離し状態」と呼ぶ)となる。このように、連結レバー19は、支軸23aを中心とする回動の方向に応じて、中継連結状態、及び、中継切離し状態を選択的に切り替えることができる。
図10及び図11は、用紙供給機構の構成の一部を示す斜視図である。図に示すように、用紙供給機構は、第1弾性体たる歯車連結ばね20と、解除レバー21と、第2弾性体たる解除ばね22とを備える。
歯車連結ばね20は、ねじりばねであり、連結レバー19の円筒部材19aを回動方向Aに付勢する。つまり、歯車連結ばね20は、連結レバー19を介して、中継連結歯車18をフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5に向けて弾性的に付勢する。
解除レバー21は、扇形状の板部材であり、その中心角を成す頂点を中心において、ブラケット23の支軸23aに通されている。これにより、解除レバー21は、当該支軸23aを中心に回動可能となるように、ブラケット23に保持されている。解除レバー21には、ブラケット23と対向する面と反対面上において、当該反対面から突出するボス部21aと、係合部21b,21cとが形成されている。
解除ばね22は、ねじりばねであり、解除ばね22の一端22aの一部は、解除レバー21の係合部21bと係合しており、それよりも先の部分は、連結レバー19のボス部19bと当接している。一方、解除ばね22の他端22bは解除レバー21の係合部21cと係合している。解除レバー21は、この解除ばね22により、連結レバー19を回動方向Bに弾性的に付勢することが可能となっている。
解除レバー21のボス部21aは、図3に示すカバー55が開いた状態にあるときには、カバー55から離れており、カバー55が閉じた状態にあるときには、カバー55と当接する。このときにボス部21aと当接するカバー55の部分を、以下「カバー当接部」と呼ぶ。
図10は、カバー55が開いているときの用紙供給機構の状態を示している。カバー55が開いているときには、歯車連結ばね20による付勢により、中継連結歯車18は、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5と弾性的に噛み合っている。また、このときには、歯車連結ばね20が、連結レバー19の円筒部材19aを介して、解除ばね22及び解除レバー21を回動方向Aに付勢する。その結果、中継連結歯車18がフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5と弾性的に噛み合って、連結レバー19の回動方向Aへの回動が停止するまで、解除ばね22及び解除レバー21も回動方向Aに回動する。そして、連結レバー19の回動方向Aへの回動が停止すると、解除ばね22及び解除レバー21の回動方向Aへの回動も停止する。
カバー55が開いた状態(図10)から閉じた状態となる際、カバー当接部は、主に方向Cに向けて解除レバー21のボス部21aを強制的に押動する。そうすると、解除レバー21が回動方向Bに回動するとともに、解除ばね22も回動方向Bに回動する。このとき、回動方向Bに回動する解除ばね22の一端22aが、連結レバー19のボス部19bを回動方向Bに付勢する。
ここで、解除ばね22は、歯車連結ばね20よりも硬い素材で形成されており、歯車連結ばね20よりも強いバネ定数を有している。そのため、解除レバー21が回動方向Bに回動すると、歯車連結ばね20が解除ばね22よりも大きく弾性変形することになる。その結果、解除レバー21が回動方向Bに回動すると、連結レバー19のボス部19bが回動方向Bに回動し、歯車連結ばね20が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5から切り離される。
次に、上述した各構成の動作について詳細に説明する。モーター14が回転している場合には、上述のような歯車の連結により、ウォーム15、ウォームホイール16及びアイドラー中継歯車13が回転する。この際、上述したように、アイドラーユニット9は、アイドラー中継歯車13の回転方向と同じ方向に回動する。
図5に示すように、モーター14が駆動して、アイドラー中継歯車13がフランジトルクリミッタ17から一定のトルクを受けて方向R1に回転すると、アイドラーユニット9も方向R1に回動し、アイドラー幅狭歯車10がフランジ駆動歯車4と噛み合う。この状態で、アイドラー中継歯車13が一定のトルクを受けて方向R1にさらに回転すると、その回転が、アイドラー幅狭歯車10及びフランジ駆動歯車4を介して、ペーパーフランジユニット3に伝達される。このとき、ペーパーフランジユニット3は、図1に示すように、印画紙1が巻き取られる方向R2に回転する。
逆に、図6に示すように、モーター14が駆動して、アイドラー中継歯車13がフランジトルクリミッタ17から一定のトルクを受けて方向F1に回転すると、アイドラーユニット9は方向F1に回動し、アイドラー幅広歯車11が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5の両者と同時に噛み合う。この状態で、アイドラー中継歯車13が一定のトルクを受けて方向F1にさらに回転すると、その回転が、アイドラー幅広歯車11及びフランジ駆動歯車4を介して、ペーパーフランジユニット3に伝達される。このとき、ペーパーフランジユニット3は、印画紙1が引き出される方向F2に回転する。また、アイドラー中継歯車13が受けたトルクが、アイドラー幅広歯車11、ローラー駆動用中継歯車5及びローラー駆動歯車6を介して、ローディングローラー7に伝達される。このとき、ローディングローラー7は、印画紙1がグリップローラー53に向けて供給される方向F3に回転する。
以上のように、モーター14が正逆回転方向のいずれか一方に回転し続けるときには、アイドラーユニット9のアイドラー幅狭歯車10及びアイドラー幅広歯車11のいずれか一方の歯車が、対応する歯車と噛み合っている状態となっている。この状態にあるときに、モーター14が逆方向に回転すると、それらの噛み合いが外れて中立状態となり、さらに当該逆方向に回転すると、他方の歯車が対応する歯車と噛み合って連結する。なお、アイドラーユニット9が中立状態にあるときに、モーター14の回転を停止させると、アイドラーユニット9の回動は停止し、中立状態が維持される。
アイドラーユニット9が中立状態となる直後では、カバー55は閉じられている。このときには、ローラー駆動用中継歯車5は、アイドラー幅広歯車11から切り離されており、ローラー駆動用中継歯車5は、中継連結歯車18からも切り離される。
このときに、作業者の作業によって、カバー55が閉じた状態から開いた状態になると、図10に示される、主に方向Cに向かう力が解除され、それに伴って、解除ばね22が連結レバー19を回動方向Bに押圧する力が解除される。一方、歯車連結ばね20は、連結レバー19を回動方向Aに付勢しているため、連結レバー19は回動方向Aに回動し、それとともに解除レバー21及び解除ばね22も回動方向Aに回動する。そして、解除レバー21が回動方向Aに回動することにより、連結レバー19と一体的に設けられた中継連結歯車18は、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5と噛み合うことになる。
ここで、仮に、中継連結歯車18とフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5との間で、歯先同士が衝突しているにもかかわらず、中継連結歯車18をフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5に向けて強制的に移動させて歯車同士を噛み合わせようとすると、歯先の破損などが生じると考えられる。それに対し、本実施の形態では、歯車連結ばね20によって、中継連結歯車18がフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5に対して弾性的に押付けるものとなっている。したがって、中継連結歯車18がフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5と噛み合っていなくても、中継連結歯車18がそれらに向けて移動するのを抑制することができる。そして、どちらかの歯車が少し回転すると、これら歯車は自然に噛み合うことができる。よって、これら歯車の歯先の破損などが生じるのを抑制することができる。
上述の動作によって、中継連結歯車18が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5と噛合すると、ペーパーフランジユニット3は、フランジ駆動歯車4、中継連結歯車18、ローラー駆動用中継歯車5、ローラー駆動歯車6を順に介して、ローディングローラー7と連結される。このときに、手動により、ペーパーフランジユニット3が印画紙1の供給方向に回転されると、その回転に連動して、ローディングローラー7も印画紙1の供給方向に回転する。
カバー55が開いた状態から閉じた状態になると、カバー当接部は、解除レバー21のボス部21aを主に方向Cに向けて強制的に押動する。そのため、解除レバー21は解除ばね22と一体となって回動方向Bに回動し、解除ばね22と当接する連結レバー19も回動方向Bに回動する。その結果、連結レバー19と一体的に設けられた中継連結歯車18はフランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5から切り離される。
以上のように、連結レバー19は、プリンタにおけるカバー55の開閉動作に連動して、中継連結状態及び中継切離し状態を選択的に切替える。
なお、本実施の形態では、連結レバー19の回動方向Bへの回動は、連結レバー19のボス部19bがブラケット23の側壁23bと当接することにより停止するものとなっている。ここで、カバー55と解除レバー21のボス部21aとの相対位置が組立て寸法、あるいは、部品寸法がある程度ずれると、解除レバー21が、回動方向Bの方向において奥に回動し過ぎることがある。このときに、仮に、解除ばね22によってではなく、変形不可能な部材によって、連結レバー19が回動方向Bに強制的に回動されると、連結レバー19等が損傷する可能性がある。それに対し、本実施の形態では、解除レバー21は、解除ばね22を介して連結レバー19を回動させるため、連結レバー19を回動方向Bに強制的に回動する力を解除ばね22により吸収することができる。よって、連結レバー19が損傷するのを抑制することができる。
<プリンタの動作>
印画紙1の供給方向においてグリップローラー53の後に設けられている、上述の印画部は、互いに対向するように設けられたサーマルヘッド(図示せず)及びプラテンローラー(図示せず)から構成されている。以下、このプリンタで行われる主な動作モードについて説明する。
本実施の形態に係るプリンタは、印画紙1への印画を開始する前の準備動作として、グリップローラー53を用いて、印画紙1の先端を、サーマルヘッドとプラテンローラーとの間の位置(印画位置)よりも規定長さだけ供給方向の下流側に位置させる。
この準備動作が行われた後、プリンタは印画動作を行う。具体的には、プリンタは、サーマルヘッドとプラテンローラーとの間にインクシート及び印画紙1を挟んで圧力を加えながら、サーマルヘッドを発熱させることにより、当該インクシートの一の色材を印画紙1に付着させる。それとともに、プリンタは、印画紙1を供給方向と逆方向(以下、「巻取方向」と呼ぶ)に搬送する。これにより、印画紙1は一の色材で印画される。以下、準備動作後において印画動作を行う動作モードを「印画モード」と呼ぶ。なお、印画モードにおける巻取りの際には、ペーパーロール2が適正なトルクで回転される必要がある。
プリンタは、一の色材による印画モードの後、グリップローラー53を回転させることにより、印画紙1の先端が印画モード直前にあった位置と同じ位置に配置されるように、印画紙1を供給する動作を行う。以下、この動作モードを「スイングバックモード」と呼ぶ。
プリンタは、印画モード及びスイングバックモードを交互に行うことにより、インクシートの複数の色材を順次、印画紙1に付着させる。これにより、印画紙1には、カラー画像、文字等が印画され、その後枚葉にカットされてプリンタから排出される。なお、スイングバックモードの際には、ペーパーロール2に適正なブレーキトルク(負荷トルク)が与えられる必要がある。
印画された印画紙1がプリンタから何枚も排出されると、ペーパーロール2の印画紙1が少なくなる。この場合には、プリンタ内に支持されているペーパーロール2が、以下の動作により、新品のペーパーロール2に交換される。
まず、プリンタ内の機構部は、プリンタにおいてボタン操作が行われた場合などに、ペーパーフランジユニット3を回転させて、印画紙1をペーパーロール2に巻いていく。この動作は、グリップローラー53近傍に位置していた印画紙1の先端がペーパーロール2に近くの位置に達するまで行われる。これにより、プリンタ内に支持されているペーパーロール2を容易に取り出すことができるようになる。以下、この動作モードを「オートアンローディングモード」と呼ぶ。その後、作業者は、カバー55を開けて、プリンタ内に支持されているペーパーロール2をプリンタから取り出す。
次に、作業者は、新品のペーパーロール2をプリンタ内においてセットし、その印画紙1をペーパーロール2から引き出す。作業者は、印画紙1の先端を、図3に示される印画紙挿入口51、ローディングローラー7及びピンチローラー8に通してから、手動でその先端を先端検知手段52まで位置するように供給する。以下、この動作モードを「手動ローディングモード」と呼ぶ。その後、作業者は、カバー55を閉じる。このように、カバー55は、手動ローディングモードが行われるときのみ開かれる。
以上の手動ローディングモードが行われた後、プリンタ内の機構部は、印画紙1の先端を、供給方向において、先端検知手段52よりも後のグリップローラー53に到達させるように、ローディングローラー7を回転させることにより印画紙1を供給する。以下、この動作モードを「オートローディングモード」と呼ぶ。
<用紙供給機構の動作>
次に、各モードでの用紙供給機構に関する動作について具体的に説明する。まず、印画モードについて説明する。この印画モードでは、グリップローラー53が、巻取方向に印画紙1を搬送する。それとともに、アイドラー中継歯車13がモーター14のトルクを受けて方向R1に回転する。そのため、ペーパーフランジユニット3が方向R2に回転する(図1)。これにより、グリップローラー53からの印画紙1がペーパーロール2に巻き取られる。この巻取りの際のトルクは、フランジトルクリミッタ17によって一定トルクとなっている。こうして、印画モードでは、ペーパーロール2が適正なトルクで回転される。
なお、印画モードでは、アイドラー中継歯車13が方向R1に回転することから、ローラー駆動用中継歯車5は、アイドラー幅狭歯車10及びアイドラー幅広歯車11のいずれとも連結されていない(図4)。また、印画モードでは、カバー55が閉じているため、ローラー駆動用中継歯車5は、中継連結歯車18と連結されていない。つまり、印画モードでは、ローラー駆動用中継歯車5は、アイドラー幅狭歯車10、アイドラー幅広歯車11及び中継連結歯車18のいずれとも連結されていない。したがって、印画モードでは、ローラー駆動用中継歯車5は自由に回転することができるため、ローラートルクリミッタは機能しない。よって、ローディングローラー7は、印画紙1に合わせて連れ回りするだけとなるため、印画モードでは、ローディングローラー7が印画紙1の搬送に与える影響が抑制される。
次にスイングバックモードについて説明する。このスイングバックモードでは、印画モードにおいてモーター14の回転が停止される。スイングバックモードは、印画モード後に行われるため、モーター14が停止されると、各歯車の連結は印画モードの連結と同一のまま保たれる。
このスイングバックモードでは、グリップローラー53が、印画モードとは逆の搬送方向、つまり、印画紙1の供給方向に印画紙1を搬送する。これにより、印画紙1が、グリップローラー53によってペーパーロール2から引き出され、それに伴って、ペーパーフランジユニット3が、方向R2と逆の方向F2に回転する。
ここで、ペーパーフランジユニット3が回転しても、力の釣り合いから、アイドラーユニット9のアイドラー幅狭歯車10とフランジ駆動歯車4との噛み合いは外れることは無い。そのため、ペーパーフランジユニット3の回転は、各歯車の連結を介して、図6に示されるウォームホイール16に伝達されることになるが、ウォームホイール16の回転は、セルフロックによって禁止されている。したがって、ウォームホイール16の回転が禁止された状態で、アイドラー中継歯車13が回転することになる。このとき、フランジトルクリミッタ17は、一定の負荷トルクをアイドラー中継歯車13に与える。そうすると、一定の負荷トルクが、アイドラー中継歯車13から、各歯車の連結を介して、ペーパーフランジユニット3に与えられることになる。その結果、グリップローラー53により印画紙1が用紙供給機構から印画部に向けて搬送される際には、一定範囲の張力が印画紙1に与えられることになる。こうして、スイングバックモードでは、ペーパーロール2に適正なブレーキトルク(負荷トルク)が与えられる。
なお、スイングバックモードでは、印画モードと同様、ローラー駆動用中継歯車5は、アイドラー幅狭歯車10、アイドラー幅広歯車11及び中継連結歯車18のいずれとも連結していない。したがって、スイングバックモードでは、ローディングローラー7は、印画紙1に合わせて連れ回りするだけとなっているため、ローディングローラー7が印画紙1の搬送に与える影響が抑制される。
次にオートアンローディングモードについて説明する。このオートアンローディングモードでは、印画モードと同様、アイドラー中継歯車13がモーター14のトルクを受けて方向R1に回転し、ペーパーフランジユニット3が方向R2に回転する。これにより、グリップローラー53からの印画紙1がペーパーロール2に巻き取られる。
なお、オートアンローディングモードでも、印画モードと同様、ローラー駆動用中継歯車5は、アイドラー幅狭歯車10、アイドラー幅広歯車11及び中継連結歯車18のいずれとも連結していない。したがって、オートアンローディングモードでは、ローディングローラー7は、印画紙1に合わせて連れ回りするだけとなっているため、ローディングローラー7が印画紙1の搬送に与える影響が抑制される。
次に、オートアンローディングモードの後に行われる手動ローディングモードについて説明する。この手動ローディングモードでは、まず、モーター14の駆動により、アイドラーユニット9が中立状態となる。
その後、作業者により以下の作業が行われる。まず、作業者によりカバー55が開いた状態にされる。これにより、中継連結歯車18が、フランジ駆動歯車4及びローラー駆動用中継歯車5の両者と同時に噛み合い、ペーパーフランジユニット3及びローディングローラー7は互いに連結される。
その後、作業者は、プリンタ内に支持されているペーパーロール2を、新品のペーパーロール2に交換し、新品のペーパーロール2から引き出された印画紙1の先端を印画紙挿入口51に挿入する。印画紙1はロール状に巻かれているので、この作業は、ペーパーロール2から印画紙1を引き出しながら行われることになる。この際、アイドラーユニット9は中立状態にあり、ペーパーフランジユニット3からローディングローラー7までの連結にはフランジトルクリミッタ17が含まれていないので、フランジトルクリミッタ17の負荷がかかることなく軽い力で回転させることができる。
印画紙1の先端を印画紙挿入口51に挿入した後に、ペーパーフランジユニット3を回転させると、印画紙挿入口51に挿入された印画紙1はさらに奥に押し入れられる。上述の歯車の連結により、ペーパーフランジユニット3の回転に連動してローディングローラー7は回転するため、印画紙1先端をローディングローラー7とピンチローラー8との間に挟む作業、及び、印画紙1をさらに奥に搬送する作業を容易化することができる。
ここで、ローディングローラー7による印画紙1の送り量は、ペーパーフランジユニット3による印画紙1の送り量よりも大きくなっている。そのため、印画紙1がローディングローラー7に挟まれた後は、ローディングローラー7とペーパーフランジユニット3との間にある印画紙1が、これらにより引っ張られることになる。この際、ローラートルクリミッタは、ローディングローラー7が印画紙1を引っ張り過ぎないように働く。したがって、手動ローディングモードでは、印画紙1が弛んだり破れたりするのが抑制される。
その後、印画紙1の先端が先端検知手段に到達し、先端検知手段が当該先端を検知すると、プリンタは、通知手段(図示しない)により、印画紙1の手動による搬送を完了するように作業者に通知する。作業者はそこで作業を終了し、カバー55を閉じる。
次に、手動ローディングモードの後に、プリンタ内の機構部により行われるオートローディングモードについて説明する。このオートローディングモードでは、カバー55が閉じた状態となっているため、ローラー駆動用中継歯車5は、中継連結歯車18と連結されていない。
このモードでは、アイドラー中継歯車13がモーター14のトルクを受けて方向F1に回転する。そのため、ペーパーフランジユニット3が方向F2に回転するとともに、ローディングローラー7が方向F3に回転する(図1)。これにより、印画紙1の先端がグリップローラー53まで搬送される。この後、印画紙1はグリップローラー53にて精密に搬送され、印画の準備を行う。
なお、このオートローディングモードにおいても、手動ローディングモードと同様、ローディングローラー7による印画紙1の送り量は、ペーパーフランジユニット3による印画紙1の送り量よりも大きくなっている。ローラートルクリミッタは、ローディングローラー7が印画紙1を引っ張り過ぎないように働くため、印画紙1が弛んだり破れたりするのが抑制される。
以上のような本実施の形態に係る用紙供給機構によれば、アイドラー幅狭歯車10及びアイドラー幅広歯車11をフランジ駆動歯車4から切離すことにより、モーター14停止時にペーパーフランジユニット3の回転を妨げる負荷トルクを低減することができる。したがって、手動ローディングモードにおいて、印画紙1を容易に搬送することができる。
また、本実施の形態に係る用紙供給機構によれば、ローディングローラー7を必要に応じて動作させることができる。特に、ローディングローラー7は、手動ローディングモード及びオートローディングモードにおいて駆動トルクを与える一方で、それ以外のモードでは連れ回りするだけとなるので、ローラートルクリミッタの寿命が長くなる。換言すれば、ローラートルクリミッタに安価なトルクリミッタを用いることができる。
また、カバー55を開閉すれば、その開閉動作に連動して連結レバー19が切り替わるため、連結レバー19に対して特別な切り替え作業を行う必要がなく、能率的である。
また、以上のような複数種類の動作モードを実現するためには、例えば、ワンウェイクラッチなど高価な部材を用いたり、複雑な機構になったりしがちであるが、本実施の形態によれば、その機構を少なく安価な部品により実現することができる。したがって、組み立てが容易となり、かつ、安価に製作することができる。