以下、添付の図面を参照し、本発明のリボン巻取り機構およびテープ印刷装置の一実施形態であるテープ印刷装置Aについて説明する。なお、以下の図面では、各部の配置関係を明確にするために、XYZ直交座標系を表示するが、それが本発明を何ら限定するものではないことは、言うまでもない。
図1ないし図3に基づいて、テープ印刷装置Aの概略構成について説明する。テープ印刷装置Aは、後述する第1カートリッジ100(図5参照)および第2カートリッジ200(図8参照)のように、テープTおよびインクリボンRの双方が収容された1つのカートリッジを用いて印刷を行う。
テープ印刷装置Aは、カートリッジ装着部1と、送りモーター3とを備えている。なお、テープ印刷装置Aは、図1ないし図3では図示省略したが、送り輪列20と、リボン巻取り機構28とを備えている(図12参照)。
カートリッジ装着部1には、第1カートリッジ100(図4ないし図6参照)或いは第2カートリッジ200(図7ないし図9参照)が装着される。
カートリッジ装着部1は、第1カートリッジ100或いは第2カートリッジ200の装着方向の奥側(−Z側)に、装着底壁部6を備えている。装着底壁部6には、プラテン軸7と、繰出し軸8と、巻取り軸9と、サーマルヘッド11とが、それぞれ+Z側に突出して設けられている。また、装着底壁部6には、+X側且つ+Y側の隅部、−X側且つ+Y側の隅部、および−X側且つ−Y側の隅部の3箇所に、+Z側に突出した装着凸部13が設けられている。さらに、装着底壁部6には、後述する係合部材54が出没可能に+Z側に突出して設けられている。
図4ないし図6に基づいて、第1カートリッジ100について説明する。第1カートリッジ100は、テープコア101と、プラテンローラー102と、リボン繰出しコア103と、第1リボン巻取りコア104と、これらを収容した第1カートリッジケース105とを備えている。テープコア101には、第1テープ幅(例えば36mm)の第1テープTaがロール状に巻かれている。リボン繰出しコア103には、第1リボン幅の第1インクリボンRaがロール状に巻かれている。
図7ないし図9に基づいて、第2カートリッジ200について説明する。第2カートリッジ200は、第1カートリッジ100と同様に、テープコア201と、プラテンローラー202と、リボン繰出しコア203と、第2リボン巻取りコア204と、これらを収容した第2カートリッジケース205とを備えている。テープコア201には、第1テープ幅よりも狭い第2テープ幅(例えば24mm)の第2テープTbがロール状に巻かれている。リボン繰出しコア203には、第1リボン幅よりも狭い第2リボン幅の第2インクリボンRbがロール状に巻かれている。なお、第1テープTaと第2テープTbとを特に区別する必要がない場合には、これらを単に「テープT」という。同様に、第1インクリボンRaと第2インクリボンRbとを特に区別する必要がない場合には、これらを単に「インクリボンR」という。また、第1カートリッジケース105と第2カートリッジケース205との違いについては、後述する。
図4ないし図6に戻る。カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着されると、プラテン軸7、繰出し軸8および巻取り軸9に対し、プラテンローラー102、リボン繰出しコア103および第1リボン巻取りコア104がそれぞれ挿入される。そして、サーマルヘッド11とプラテンローラー102との間に、テープTおよびインクリボンRが挟持される。この状態で、送りモーター3が正方向に回転すると、プラテンローラー102が正方向に回転すると共に第1リボン巻取りコア104が巻取り方向に回転する。これにより、テープTおよびインクリボンRの正送りが行われる。すなわち、テープTがテープコア101から繰り出されて第1カートリッジケース105外のテープ排出口(図示省略)に向けて送られると共に、インクリボンRがリボン繰出しコア103から繰り出されて第1リボン巻取りコア104に巻き取られる。一方、送りモーター3が逆方向に回転すると、プラテンローラー102が逆方向に回転すると共にリボン繰出しコア103が巻戻し方向に回転する。これにより、テープTおよびインクリボンRの逆送りが行われる。すなわち、テープ排出口から排出されたテープTが引き戻されると共に、インクリボンRがリボン繰出しコア103に巻き戻される。なお、ここでは、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着された場合を例に挙げて説明したが、第2カートリッジ200が装着された場合も同様にして、テープTおよびインクリボンRの正送りおよび逆送りが行われる。
このように構成されたテープ印刷装置Aでは、ユーザーにより操作パネル(図示省略)から所望の文字が入力され、印刷実行の指示が行われると、テープTおよびインクリボンRの正送りが行われると共に、サーマルヘッド11が発熱する。これにより、テープTに対して、入力された文字が印刷される。印刷終了後、カッター(図示省略)が切断動作を行い、テープTの印刷済み部分が切り離され、テープ排出口から排出される。その後、テープTおよびインクリボンRの逆送りが行われる。これにより、テープTの先端が、サーマルヘッド11による印刷位置の近傍にくるまで、テープTが引き戻される。このため、次に印刷されるテープTにおいて、サーマルヘッド11とカッターとの離間距離に起因してテープTの長さ方向前方に生じる余白を、短くすることができる。
図6、図9、図10および図11に基づいて、第1カートリッジケース105および第2カートリッジケース205について説明する。
第1カートリッジケース105は、第1壁部111と、第2壁部112と、第3壁部113とを備えている。第1壁部111と第3壁部113とは、互いに対向している。第2壁部112は、第1カートリッジケース105の周壁部を構成している。第1カートリッジ100は、第1壁部111が+Z側を向き、第3壁部113が−Z側を向く姿勢で、カートリッジ装着部1に装着される。第2カートリッジケース205も、第1カートリッジケース105と同様に、第1壁部211と、第2壁部212と、第3壁部213とを備えている。
また、第1カートリッジケース105の第3壁部113には、装着底壁部6の3箇所に設けられた装着凸部13に対応して、+X側且つ+Y側の隅部、−X側且つ+Y側の隅部、および−X側且つ−Y側の隅部の3箇所に、+Z側に凹んだケース凹部114が設けられている(図10では1箇所のみ示す)。このため、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着されると、装着凸部13がケース凹部114によって避けられ、第3壁部113が装着底壁部6と略接した状態となる(図6参照)。すなわち、カートリッジ装着部1には、第1カートリッジ100が、第3壁部113と装着底壁部6との間隔が第1間隔D1となるように装着される。ここでは、第1間隔D1は略ゼロである。
一方、第2カートリッジケース205の第3壁部213には、ケース凹部114のような凹部が設けられていない(図11参照)。このため、第2カートリッジ200がカートリッジ装着部1に装着されると、第3壁部213の隅部が装着凸部13上に乗るようにして装着され、第3壁部213が装着底壁部6から浮いた状態となる(図9参照)。すなわち、カートリッジ装着部1には、第2カートリッジ200が、第3壁部213と装着底壁部6との間隔が第1間隔D1よりも大きい第2間隔D2となるように装着される。ここでは、第2間隔D2は、装着底壁部6からの装着凸部13のZ方向における突出高さに略等しい。
図12を参照して、テープ印刷装置Aの送り輪列20について説明する。送り輪列20は、プラテン側輪列21と、繰出し側輪列22と、巻取り側輪列23とを備えている。
プラテン側輪列21は、送りモーター3からの動力を、プラテン軸7に回転可能に支持されたプラテン回転子31に伝達する。プラテン回転子31は、プラテンローラー102,202に係合し、プラテン回転子31が回転することで、プラテンローラー102,202が回転する。
繰出し側輪列22は、送りモーター3からの動力を、繰出し軸8に回転可能に支持された繰出し回転子32に伝達する。繰出し回転子32は、リボン繰出しコア103,203に係合し、繰出し回転子32が回転することで、リボン繰出しコア103,203が回転する。
巻取り側輪列23は、送りモーター3からの動力を、巻取り軸9に回転可能に支持された巻取り回転子33に伝達する。巻取り回転子33は、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204に係合し、巻取り回転子33が回転することで、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204が回転する。なお、巻取り側輪列23には、後述するトルククラッチ45が設けられている。また、巻取り回転子33は、後述するリボン巻取り機構28を構成する。
また、送り輪列20は、繰出しクラッチ26と、巻取りクラッチとを備えている。繰出しクラッチ26は、送りモーター3が逆方向に回転すると、送りモーター3から繰出し回転子32へ動力を伝達する状態に切り替わり、送りモーター3が正方向に回転すると、動力の伝達を遮断する状態に切り替わる。なお、図12では、送りモーター3から繰出し回転子32へ動力を伝達する状態の繰出しクラッチ26を実線で示し、動力の伝達を遮断する状態の繰出しクラッチ26を二点鎖線で示す。巻取りクラッチは、図示省略したが、送りモーター3の−Z側に設けられており、送りモーター3が正方向に回転すると、送りモーター3から巻取り回転子33へ動力を伝達する状態に切り替わり、送りモーター3が逆方向に回転すると、動力の伝達を遮断する状態に切り替わる。
図13ないし図15に基づいて、テープ印刷装置Aのリボン巻取り機構28について説明する。リボン巻取り機構28は、巻取り回転子33と、第1巻取り歯車41と、第2巻取り歯車42と、第1スリップバネ43と、第2スリップバネ44とを備えている。なお、リボン巻取り機構28は、図13ないし図15では図示省略したが、後述するトルククラッチ45(図12等参照)をさらに備えている。
巻取り回転子33は、上述したように、巻取り軸9に回転可能に支持されている。巻取り回転子33は、+Z側から順に、コア挿入部401と、フランジ部402と、第1バネ巻付部403とを備えている。コア挿入部401は、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204に挿入される。コア挿入部401は、円筒状に形成されており、外周面には、軸方向(Z方向)に延びる複数(例えば3つ)の回転子側凸部405が、周方向に略等間隔に分散して設けられている。回転子側凸部405は、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204の内周面に設けられたコア側凸部(図示省略)と係合する。第1バネ巻付部403には、第1スリップバネ43が巻き付けられている。
第1巻取り歯車41は、巻取り軸9に回転可能に支持されている。すなわち、第1巻取り歯車41は、巻取り回転子33よりも−Z側に位置して、巻取り回転子33と同軸上に設けられている。第1巻取り歯車41は、第1スリップバネ43を介して巻取り回転子33と連結されており、巻取り回転子33を回転させる。
第1巻取り歯車41は、+Z側から順に、第1円筒部411と、第1歯車部412と、第2バネ巻付部413とを備えている。第1円筒部411には、第1スリップバネ43が巻き付けられた第1バネ巻付部403が挿入される。第1円筒部411の底面(換言すれば、第1歯車部412の+Z側の面)には、第1バネ係合部414が設けられている。第1バネ係合部414には、第1スリップバネ43の−Z側の端部が係合する。第1歯車部412の外周面には、後述する第1遊星歯車51と噛み合う複数の歯が形成されている。第2バネ巻付部413には、第2スリップバネ44が巻き付けられている。
第2巻取り歯車42は、巻取り軸9に回転可能に支持されている。すなわち、第2巻取り歯車42は、第1巻取り歯車41よりも−Z側に位置して、巻取り回転子33と同軸上に設けられている。第2巻取り歯車42は、第2スリップバネ44を介して第1巻取り歯車41と連結されており、第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33を回転させる。
第2巻取り歯車42は、+Z側から順に、第2円筒部421と、第2歯車部422とを備えている。第2円筒部421には、第2スリップバネ44が巻き付けられた第2バネ巻付部413が挿入される。第2円筒部421の底面(換言すれば、第2歯車部422の+Z側の面)には、第2バネ係合部424が設けられている。第2バネ係合部424には、第2スリップバネ44の−Z側の端部が係合する。第2歯車部422の外周面には、後述する第2遊星歯車52と噛み合う複数の歯が形成されている。
第1スリップバネ43は、巻取り回転子33の第1バネ巻付部403に巻き付けられると共に、−Z側の端部が第1巻取り歯車41の第1バネ係合部414に係合しており、巻取り回転子33と第1巻取り歯車41とを連結している。第1スリップバネ43は、巻取り回転子33の回転速度と第1巻取り歯車41の回転速度とに差が生じて第1トルクを超えるトルクが作用すると、第1バネ巻付部403に巻き付けられた状態から緩められ、第1バネ巻付部403に対してスリップする。このため、第1スリップバネ43は、第1トルクを超えないトルクが作用した場合には、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33へトルクを伝達するが、第1トルクを超えるトルクが作用した場合には、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33へのトルクの伝達を遮断する。すなわち、第1スリップバネ43は、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33に伝達されるトルクを、第1トルクに制限する。
第2スリップバネ44は、第1巻取り歯車41の第2バネ巻付部413に巻き付けられると共に、−Z側の端部が第2巻取り歯車42の第2バネ係合部424に係合しており、第1巻取り歯車41と第2巻取り歯車42とを連結している。第2スリップバネ44は、第1巻取り歯車41の回転速度と第2巻取り歯車42の回転速度とに差が生じて第1トルクよりも小さい第2トルクを超えるトルクが作用すると、第2バネ巻付部413に巻き付けられた状態から緩められ、第2バネ巻付部413に対してスリップする。すなわち、第2スリップバネ44は、第1スリップバネ43よりも小さいトルクでスリップする。このため、第2スリップバネ44は、第2トルクを超えないトルクが作用した場合には、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41へトルクを伝達するが、第2トルクを超えるトルクが作用した場合には、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41へのトルクの伝達を遮断する。すなわち、第2スリップバネ44は、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41に伝達されるトルクを、第2トルクに制限する。
第2スリップバネ44に第2トルクを超えないトルクが作用した場合に、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41へ伝達されるトルクは、第1トルクを超えないものであるため、第1巻取り歯車41からさらに巻取り回転子33へ伝達される。なお、第1巻取り歯車41が、巻取り回転子33と第2巻取り歯車42との間に設けられているため、簡易な構成により、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33へトルクを伝達することができる。
図12、図16および図17に基づいて、トルククラッチ45について説明する。トルククラッチ45は、第1カートリッジ100が装着された場合に、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力し、第2カートリッジ200が装着された場合に、送りモーター3からの動力を第2巻取り歯車42に入力する。なお、図12では、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力する状態のトルククラッチ45を実線で示し、第2巻取り歯車42に入力する状態のトルククラッチ45を二点鎖線で示す。トルククラッチ45は、太陽歯車50と、第1遊星歯車51と、第2遊星歯車52と、キャリア53と、係合部材54と、クラッチ支持軸55とを備えている。
クラッチ支持軸55は、巻取り軸9に対して+Y側に設けられている。クラッチ支持軸55には、後述するように、太陽歯車50およびキャリア53が回転可能に支持されている。
太陽歯車50は、クラッチ支持軸55に回転可能に支持されている。太陽歯車50には、送りモーター3からの動力が、巻取り側輪列23を介して入力する。太陽歯車50は、送りモーター3からの動力が入力すると、図16の図示反時計回りに回転する(以下、同様に、「図示時計回り」や「図示反時計回り」とは、図16または図18における方向を意味する)。第1遊星歯車51は、太陽歯車50と噛み合った状態で、第1巻取り歯車41に対して略+Y側から離接する。第1遊星歯車51は、太陽歯車50が図示反時計回りに回転すると、図示時計回りに回転する。第2遊星歯車52は、太陽歯車50と噛み合った状態で、第2巻取り歯車42に対して−X側に寄った+Y側から離接する。第2遊星歯車52は、太陽歯車50が図示反時計回りに回転すると、図示時計回りに回転する。
キャリア53は、クラッチ支持軸55に回転可能に支持されている。すなわち、キャリア53は、太陽歯車50と同軸上に回転可能に支持されている。キャリア53は、第1キャリア支持部531と、第2キャリア支持部532と、キャリア突出部533と、キャリア係合部534とを備えている。第1キャリア支持部531は、クラッチ支持軸55に対して+X側と−Y側との間の方向に向かって延びている。第1キャリア支持部531には、第1遊星歯車51が回転可能に支持されている。第2キャリア支持部532は、クラッチ支持軸55に対して−X側と−Y側との間の方向に向かって延びている。第2キャリア支持部532には、第2遊星歯車52が回転可能に支持されている。キャリア突出部533は、クラッチ支持軸55に対して第2キャリア支持部532とは反対側、すなわち+X側と+Y側との間の方向に突出している。キャリア係合部534は、キャリア突出部533の先端から+X側に屈曲して延びている。キャリア係合部534は、係合部材54に対して−Z側に位置している(図3参照)。
キャリア53は、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41と噛み合い、第2遊星歯車52が第2巻取り歯車42から離れる第1キャリア位置(図16参照)と、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41から離れ、第2遊星歯車52が第2巻取り歯車42と噛み合う第2キャリア位置(図17参照)との間で回転可能である。すなわち、キャリア53が第1キャリア位置に位置する場合には、太陽歯車50が回転した際に、第1遊星歯車51から第1巻取り歯車41に動力が伝達され、第2遊星歯車52から第2巻取り歯車42には動力が伝達されない。一方、キャリア53が第2キャリア位置に位置する場合には、太陽歯車50が回転した際に、第1遊星歯車51から第1巻取り歯車41には動力が伝達されず、第2遊星歯車52から第2巻取り歯車42に動力が伝達される。なお、第1遊星歯車51から第1巻取り歯車41に動力が伝達されると、第1巻取り歯車41は、図示反時計回りに回転する。同様に、第2遊星歯車52から第2巻取り歯車42に動力が伝達されると、第2巻取り歯車42は、図示反時計回りに回転する。
キャリア53は、係合部材54と係合した状態では、第1キャリア位置に位置する。一方、キャリア53は、係合部材54と係合していない状態では、太陽歯車50が回転した際に、太陽歯車50と連れ回りして図示反時計回りに回転し、第2キャリア位置に位置する。
図3、図6、図9および図12に基づいて、係合部材54について説明する。係合部材54は、カートリッジ装着部1の装着底壁部6から突出しており、Z方向に移動可能に(換言すれば、装着底壁部6から出没可能に)設けられている。係合部材54は、係合円筒部541と、係合凸部542とを備えている。
係合円筒部541には、係合バネ543が収容されている。係合バネ543は、係合部材54に対して+Z側に力を付与する。なお、係合バネ543としては、例えば圧縮コイルバネを用いることができる。係合凸部542は、係合円筒部541の外周面から−Y側に突出している。係合部材54がZ方向に移動すると、係合凸部542がキャリア係合部534の+Z側に対して離接する。係合凸部542の−Z側の面である係合面544は、係合凸部542の突出方向(−Y側)の先端部が+Z側に向かう斜状に形成されている。
係合部材54は、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれも装着されていない場合の装着底壁部6からの突出量である未装着時突出量Lが、上記の第1間隔D1より大きく、かつ第2間隔D2より大きくなっている。このため、係合部材54は、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100或いは第2カートリッジ200が装着されると、第1カートリッジ100或いは第2カートリッジ200に押され、係合バネ543に抗して−Z側へ移動する(換言すれば、没入する)。なお、係合部材54は、−Z側へ移動した後、係合バネ543により+Z側に戻らないように、ロック機構(図示省略)によりロックされる。
図3に基づいて、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれも装着されていない場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、係合部材54は、装着底壁部6からの突出量が未装着時突出量Lとなった非装着位置にある。このとき、係合凸部542は、キャリア係合部534から+Z側に離れており、キャリア係合部534と係合していない。
図6および図16に基づいて、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着された場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、上述したように、係合部材54の未装着時突出量Lが第1間隔D1より大きいため、係合部材54は、装着底壁部6からの突出量が第1間隔D1と等しくなるまで第1カートリッジ100により−Z側に押され、係合凸部542がキャリア係合部534と係合する係合位置に位置する。
このとき、係合凸部542は−Y側に突出しているため、係合部材54は、係合凸部542によりキャリア係合部534を−Y側に押し、キャリア53を図示時計回りに、すなわち第1キャリア位置に回転させる。
キャリア53が第1キャリア位置に位置すると、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41と噛み合う。この状態で、太陽歯車50が回転しても、係合部材54により、キャリア53が太陽歯車50と連れ回りして第2キャリア位置に回転することが阻止される。これにより、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41と噛み合った状態に維持される。その結果、トルククラッチ45は、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力する。
送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41に入力して第1巻取り歯車41が回転すると、第1スリップバネ43を介して第1巻取り歯車41と連結された巻取り回転子33が回転する。なお、このとき、第2巻取り歯車42も、第1巻取り歯車41に従動して回転する。そして、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33に伝達されるトルクは、第1スリップバネ43により、第1トルクに制限される。
このように、第1カートリッジ100が装着された場合には、係合部材54が第1カートリッジ100に押されて−Z側に移動することで、係合部材54がキャリア53と係合する係合位置に位置する。これにより、キャリア53は、第1キャリア位置に位置する。そして、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41と噛み合い、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41に入力する。その結果、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33に伝達されるトルクが、第1スリップバネ43により第1トルクに制限され、巻取りトルクが第1トルクに切り替わる。
図9および図17に基づいて、カートリッジ装着部1に第2カートリッジ200が装着された場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、上述したように、係合部材54の未装着時突出量Lが第2間隔D2よりも大きいため、係合部材54は、装着底壁部6からの突出量が第2間隔D2と等しくなるまで第2カートリッジ200により−Z側に押され、係合凸部542がキャリア係合部534と係合しない非係合位置に位置する。
この状態で、太陽歯車50が回転すると、キャリア53は、太陽歯車50と連れ回りして第2キャリア位置に回転する。これにより、第2遊星歯車52が第2巻取り歯車42と噛み合う。その結果、トルククラッチ45は、送りモーター3からの動力を第2巻取り歯車42に入力する。
送りモーター3からの動力が第2巻取り歯車42に入力して第2巻取り歯車42が回転すると、第2スリップバネ44を介して第2巻取り歯車42と連結された第1巻取り歯車41が回転し、第1スリップバネ43を介して第1巻取り歯車41と連結された巻取り回転子33が回転する。第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33に伝達されるトルクは、第2スリップバネ44により、第2トルクに制限される。
このように、第2カートリッジ200が装着された場合には、係合部材54の移動量が少ないことで、係合部材54がキャリア53と係合しない非係合位置に位置する。このため、キャリア53は、太陽歯車50が回転した際に、図示反時計回りに回転し、第2キャリア位置に位置する。そして、第2遊星歯車52が第2巻取り歯車42と噛み合い、送りモーター3からの動力が第2巻取り歯車42に入力する。その結果、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33に伝達されるトルクが、第2スリップバネ44により第2トルクに制限され、巻取りトルクが第2トルクに切り替わる。
以上のように、本実施形態のリボン巻取り機構28は、巻取り回転子33と、第1巻取り歯車41と、第2巻取り歯車42と、第1スリップバネ43と、第2スリップバネ44と、トルククラッチ45とを備えている。巻取り回転子33は、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204に係合する。第1巻取り歯車41は、巻取り回転子33と同軸上に設けられ、巻取り回転子33を回転させる。第2巻取り歯車42は、巻取り回転子33と同軸上に設けられ、第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33を回転させる。第1スリップバネ43は、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33へ伝達されるトルクを、第1トルクに制限する。第2スリップバネ44は、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41へ伝達されるトルクを、第1トルクよりも小さい第2トルクに制限する。トルククラッチ45は、第1カートリッジ100が装着された際、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力し、第2カートリッジ200が装着された際、送りモーター3からの動力を第2巻取り歯車42に入力する。
この構成によれば、第1カートリッジ100が装着された際には、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41に入力するため、巻取り回転子33へ伝達されるトルクが、第1スリップバネ43により第1トルクに制限される。一方、第2カートリッジ200が装着された際には、送りモーター3からの動力が第2巻取り歯車42に入力するため、第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33へ伝達されるトルクが、第2スリップバネ44により第2トルクに制限される。このため、ユーザーがカートリッジ装着部1に第1カートリッジ100を装着することで、巻取り回転子33の巻取りトルクが第1トルクに切り替わり、カートリッジ装着部1に第2カートリッジ200を装着することで、巻取り回転子33の巻取りトルクが第2トルクに切り替わる。したがって、簡易な操作で巻取りトルクを切り替えることができる。これにより、テープ印刷装置Aは、第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれが装着された場合にも、装着されたカートリッジに適した巻取りトルクでインクリボンRを巻き取りながら印刷を行うことができる。
また、本実施形態のリボン巻取り機構28では、比較的幅の広い第1リボン幅の第1インクリボンRaが収容された第1カートリッジ100が装着された場合に、巻取りトルクが比較的大きい第1トルクに切り替わり、比較的幅の狭い第2リボン幅の第2インクリボンRbが収容された第2カートリッジ200が装着された場合に、巻取りトルクが比較的小さい第2トルクに切り替わる。これにより、インクリボンRが破れることを抑制することができ、また、インクリボンRを適切に巻き取ることができる。
すなわち、本実施形態の比較例として、第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれが装着された場合にも、巻取りトルクが第1トルクとなる構成を想定する。この比較例では、第2カートリッジ200が装着された場合に、比較的幅の狭い第2インクリボンRbを、比較的大きい第1トルクで巻き取ることになるため、第2インクリボンRbが破れるおそれがある(なお、インクリボンRにおいて、巻取りトルクに応じたテンションが掛かるサーマルヘッド11から第2リボン巻取りコア204に至る部分は、サーマルヘッド11から熱を受けているため、強度が低下している)。これに対し、本実施形態によれば、第2カートリッジ200が装着された場合には、比較的幅の狭い第2インクリボンRbを、比較的小さい第2トルクで巻き取ることになるため、第2インクリボンRbが破れることを抑制することができる。
また、本実施形態の他の比較例として、第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれが装着された場合にも、巻取りトルクが第2トルクとなる構成を想定する。この比較例では、第1カートリッジ100が装着された場合に、比較的幅の広い第1インクリボンRaを、比較的小さい第2トルクで巻き取ることになるため、サーマルヘッド11とプラテンローラー102との間で第1テープTaと共に挟持された第1インクリボンRaを、第1テープTaから引き剥がすことができず、第1インクリボンRaが第1テープTaと共に第1カートリッジケース105外に送り出されるおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、第1カートリッジ100が装着された場合には、比較例幅の広い第1インクリボンRaを、比較的大きい第1トルクで巻き取ることになるため、第1インクリボンRaを第1テープTaから引き剥がすことができ、第1インクリボンRaを適切に巻き取ることができる。
図18ないし図21に基づいて、トルククラッチ45の変形例であるトルククラッチ45Aについて説明する。トルククラッチ45Aは、トルククラッチ45と略同様に構成されており、以下では、トルククラッチ45とは異なる点を中心に説明する。
トルククラッチ45Aは、第1カートリッジ100が装着された場合に、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力する。また、トルククラッチ45Aは、第2カートリッジ200が装着された場合に、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41には入力せず、第2巻取り歯車42に入力する。換言すれば、トルククラッチ45Aは、第1巻取り歯車41に対して、第1カートリッジ100が装着された場合には送りモーター3からの動力を入力し、第2カートリッジ200が装着された場合には送りモーター3からの動力を入力しない。一方、トルククラッチ45Aは、第2巻取り歯車42に対して、第1カートリッジ100が装着された場合および第2カートリッジ200が装着された場合のいずれも、送りモーター3からの動力を入力する。すなわち、トルククラッチ45Aは、送りモーター3が稼動しているとき、送りモーター3からの動力を常に第2巻取り歯車42に入力する。
トルククラッチ45Aは、太陽歯車50と、遊星歯車51aと、キャリア53と、係合部材54と、クラッチ支持軸55と、伝達歯車56と、入力歯車57と、クラッチバネ58とを備えている。
クラッチ支持軸55は、巻取り軸9に対して+Y側に設けられている。クラッチ支持軸55には、太陽歯車50および伝達歯車56と、キャリア53とが回転可能に支持されている。
太陽歯車50は、クラッチ支持軸55に回転可能に支持されている。太陽歯車50には、送りモーター3からの動力が、巻取り側輪列23を介して入力する。太陽歯車50は、送りモーター3からの動力が入力すると、図示反時計回りに回転する。遊星歯車51aは、太陽歯車50と噛み合った状態で、第1巻取り歯車41に対して−X側に寄った+Y側から離接する。遊星歯車51aは、太陽歯車50が図示反時計回りに回転すると、図示時計回りに回転する。
伝達歯車56は、太陽歯車50の−Z側に設けられ、太陽歯車50と一体となって回転する。伝達歯車56は、入力歯車57と噛み合っている。入力歯車57は、伝達歯車56と第2巻取り歯車42との間に設けられ、常に、伝達歯車56および第2巻取り歯車42と噛み合っている。このため、入力歯車57は、送りモーター3から伝達歯車56を介して伝達されてきた動力を、第2巻取り歯車42に入力する。入力歯車57は、送りモーター3からの動力が入力すると、図示時計回りに回転し、第2巻取り歯車42を図示反時計回りに回転させる。
キャリア53は、クラッチ支持軸55に回転可能に支持されている。すなわち、キャリア53は、太陽歯車50と同軸上に回転可能に支持されている。キャリア53は、キャリア支持部530と、係合側キャリア係合部534aと、バネ側キャリア係合部534bとを備えている。キャリア支持部530は、クラッチ支持軸55に対して−X側と−Y側との間の方向に向かって延びている。キャリア支持部530には、遊星歯車51aが回転可能に支持されている。係合側キャリア係合部534aは、クラッチ支持軸55に対して+X側と+Y側との間の方向に向かって延びている。係合側キャリア係合部534aは、係合部材54と係合している。バネ側キャリア係合部534bは、クラッチ支持軸55に対して−X側と+Y側との間の方向に向かって屈曲して延びている。バネ側キャリア係合部534bは、クラッチバネ58と係合している。
キャリア53は、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41と噛み合う第1キャリア位置(図18参照)と、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41から離れる第2キャリア位置(図20参照)との間で回転可能である。すなわち、キャリア53が第1キャリア位置に位置する場合には、太陽歯車50が回転した際に、遊星歯車51aから第1巻取り歯車41に動力が伝達される。一方、キャリア53が第2キャリア位置に位置する場合には、太陽歯車50が回転した際に、遊星歯車51aから第1巻取り歯車41に動力が伝達されない。なお、遊星歯車51aから第1巻取り歯車41に動力が伝達されると、第1巻取り歯車41は、図示反時計回りに回転する。
キャリア53は、係合側キャリア係合部534aが係合部材54の第1係合部545(後述する)と係合した状態では、第1キャリア位置に位置する。一方、キャリア53は、係合側キャリア係合部534aが係合部材54の第2係合部546(後述する)と係合した状態では、第2キャリア位置に位置する。
クラッチバネ58は、バネ側キャリア係合部534bと係合しており、キャリア53に対し、係合部材54を受けとして、図示時計回り方向に、すなわち第2キャリア位置に向けて、力を付与する。クラッチバネ58としては、例えば、ねじりコイルバネを用いることができる。
係合部材54は、係合側キャリア係合部534aと係合している。係合部材54は、カートリッジ装着部1の装着底壁部6から突出しており、Z方向に移動可能に設けられている。なお、係合部材54は、係合バネ543(図18等では図示省略)により、+Z側に力が付与されている。係合部材54は、略四角柱状に形成されており、係合側キャリア係合部534aと対向する面に、+Z側から順に、第1係合部545と、第2係合部546とが設けられている(図21参照)。
第2係合部546は、係合側キャリア係合部534aと対向する面に凹設されている。換言すれば、第1係合部545は、第2係合部546に比べ、−X側と+Y側との間の方向に突出している。係合部材54がZ方向に移動すると、係合側キャリア係合部534aが第1係合部545と第2係合部546との間で摺動する。第1係合部545の−Z側の面(換言すれば、第2係合部546の+Z側の面)である係合面544は、第1係合部545の突出方向(−X側と+Y側との間の方向)の先端部が、+Z側に向かう斜状に形成されている。
係合部材54は、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれも装着されていない場合の装着底壁部6からの突出量である未装着時突出量Lが、上記の第1間隔D1より大きく第2間隔D2より小さくなっている。このため、係合部材54は、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着されると、第1カートリッジ100に押され、係合バネ543に抗して−Z側へ移動する(図19参照)。なお、係合部材54は、−Z側へ移動した後、係合バネ543により+Z側に戻らないように、ロック機構(図示省略)によりロックされる。一方、係合部材54は、カートリッジ装着部1に第2カートリッジ200が装着されても、第2カートリッジ200に押されることなく、−Z側へ移動しない(図21参照)。
図20および図21に基づいて、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれも装着されていない場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、係合部材54は、装着底壁部6からの突出量が未装着時突出量Lとなった非装着位置にある。換言すれば、係合部材54は、第2係合部546において係合側キャリア係合部534aと係合する第2係合位置に位置している。
図18および図19に基づいて、カートリッジ装着部1に第1カートリッジ100が装着された場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、上述したように、係合部材54の未装着時突出量Lが第1間隔D1より大きいため、係合部材54は、装着底壁部6からの突出量が第1間隔D1と等しくなるまで第1カートリッジ100により−Z側に押され、第1係合部545において係合側キャリア係合部534aと係合する第1係合位置に位置する。
このとき、第1係合部545は第2係合部546よりも−X側と+Y側との間の方向に突出しているため、係合部材54は、第1係合部545により係合側キャリア係合部534aを−X側と+Y側との間の方向に押し、キャリア53を図示反時計回りに、すなわち第1キャリア位置に回転させる。
キャリア53が第1キャリア位置に位置した状態では、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41と噛み合う。また、上述したように、入力歯車57は、第2巻取り歯車42と常に噛み合っている。このため、トルククラッチ45Aは、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力する。
送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力して第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42が回転すると、第1スリップバネ43を介して第1巻取り歯車41と連結された巻取り回転子33が回転する。そして、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33に伝達されるトルクは、第1スリップバネ43により、第1トルクに制限される。すなわち、第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42の双方が回転すると、第1巻取り歯車41側のトルクが巻取りトルクとして適応される。
このように、第1カートリッジ100が装着された場合には、係合部材54が第1係合位置に位置する。このため、キャリア53が第1キャリア位置に位置する。そして、第1遊星歯車51が第1巻取り歯車41と噛み合い、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力する。その結果、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33に伝達されるトルクが、第1スリップバネ43により第1トルクに制限され、巻取りトルクが第1トルクに切り替わる。
図20および図21に基づいて、カートリッジ装着部1に第2カートリッジ200が装着された場合における、リボン巻取り機構28の各部の状態について説明する。この場合、上述したように、係合部材54の未装着時突出量Lが第2間隔D2よりも小さいため、係合部材54は、第2カートリッジ200に押されることなく、−Z側に移動しない。このため、係合部材54は、第2係合部546において係合側キャリア係合部534aと係合する第2係合位置に位置したままとなる。このとき、キャリア53は、第2キャリア位置に位置している。
キャリア53が第2キャリア位置に位置した状態では、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41から離れている。一方、上述したように、入力歯車57は、第2巻取り歯車42と常に噛み合っている。このため、トルククラッチ45は、送りモーター3からの動力を第2巻取り歯車42に入力する。
送りモーター3からの動力が第2巻取り歯車42に入力して第2巻取り歯車42が回転すると、第2スリップバネ44を介して第2巻取り歯車42と連結された第1巻取り歯車41が回転し、第1スリップバネ43を介して第1巻取り歯車41と連結された巻取り回転子33が回転する。第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33に伝達されるトルクは、第2スリップバネ44により、第2トルクに制限される。
このように、第2カートリッジ200が装着された場合には、係合部材54の移動量が少ない(より具体的には、移動しない)ことで、係合部材54が第2係合部546においてキャリア53と係合する第2係合位置に位置する。第2カートリッジ200が装着された場合には、係合部材54が第2係合位置に位置する。このため、キャリア53が第2キャリア位置に位置する。そして、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41から離れているため、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41には入力せず、第2巻取り歯車42に入力する。その結果、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33に伝達されるトルクが、第2スリップバネ44により第2トルクに制限され、巻取りトルクが第2トルクに切り替わる。
以上のように、変形例に係るトルククラッチ45Aが備えられたリボン巻取り機構28は、巻取り回転子33と、第1巻取り歯車41と、第2巻取り歯車42と、第1スリップバネ43と、第2スリップバネ44と、トルククラッチ45Aとを備えている。巻取り回転子33は、第1リボン巻取りコア104または第2リボン巻取りコア204に係合する。第1巻取り歯車41は、巻取り回転子33と同軸上に設けられ、巻取り回転子33を回転させる。第2巻取り歯車42は、巻取り回転子33と同軸上に設けられ、第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33を回転させる。第1スリップバネ43は、第1巻取り歯車41から巻取り回転子33へ伝達されるトルクを、第1トルクに制限する。第2スリップバネ44は、第2巻取り歯車42から第1巻取り歯車41へ伝達されるトルクを、第1トルクよりも小さい第2トルクに制限する。トルククラッチ45Aは、第1カートリッジ100が装着された際、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力し、第2カートリッジ200が装着された際、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力せず第2巻取り歯車42に入力する。
この構成によれば、第1カートリッジ100が装着された際には、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41および第2巻取り歯車42に入力するため、巻取り回転子33へ伝達されるトルクが、第1スリップバネ43により第1トルクに制限される。一方、第2カートリッジ200が装着された際には、送りモーター3からの動力が第1巻取り歯車41に入力せず第2巻取り歯車42に入力するため、第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33へ伝達されるトルクが、第2スリップバネ44により第2トルクに制限される。このため、ユーザーがカートリッジ装着部1に第1カートリッジ100を装着することで、巻取り回転子33の巻取りトルクが第1トルクに切り替わり、カートリッジ装着部1に第2カートリッジ200を装着することで、巻取り回転子33の巻取りトルクが第2トルクに切り替わる。したがって、簡易な操作で巻取りトルクを切り替えることができる。これにより、テープ印刷装置Aは、第1カートリッジ100および第2カートリッジ200のいずれが装着された場合にも、装着されたカートリッジに適した巻取りトルクでインクリボンRを巻き取りながら印刷を行うことができる。
また、遊星歯車51aは、上述したように、第1巻取り歯車41に対し、−X側に寄った+Y側から離接し、また、図示時計回りに回転することから、キャリア53が第1キャリア位置に位置した状態では、第1巻取り歯車41に対し、略+Y側から噛み込むことになる。このため、第1巻取り歯車41がロックした場合には、遊星歯車51aに対して略+Y方向の力が作用することになる。このため、仮に、遊星歯車51aが+Y側において他の歯車等によって抑えられていないと、この略+Y方向に作用する力によって遊星歯車51aが弾かれるおそれがある。換言すると、遊星歯車51aが第1巻取り歯車41の外側へ弾き出される方向に力が作用する。そのため、遊星歯車51aと第1巻取り歯車41との間において、歯車同士の噛み合わせに不具合が発生するおそれがある。トルククラッチ45Aにおけるキャリア53等の各部材を金属製にすれば、遊星歯車51aが弾かれることを抑制することができるが、コストアップとなる。これに対し、トルククラッチ45Aでは、遊星歯車51aは、キャリア53が第1キャリア位置に位置した状態では、略+Y側において太陽歯車50によって抑えられている。このため、キャリア53等の各部材が樹脂製であっても、第1巻取り歯車41がロックして遊星歯車51aに対して略+Y方向の力が作用した場合に、遊星歯車51aが弾かれることを抑制することができる。
送りモーター3は、本発明の「駆動源」の一例である。第1スリップバネ43は、本発明の「第1トルクリミッター」の一例である。なお、第1トルクリミッターとしては、第1スリップバネ43のように、巻取り回転子33に巻き付けられたバネに限定されるものではなく、例えばフェルト式のものでもよい。第2スリップバネ44は、本発明の「第2トルクリミッター」の一例である。第2トルクリミッターとしては、第1トルクリミッターと同様に、フェルト式のものでもよい。トルククラッチ45やトルククラッチ45Aは、本発明の「クラッチ部」の一例である。クラッチバネ58は、本発明の「弾性部材」の一例である。
本発明は、上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。
トルククラッチ45において、係合部材54が、係合位置に位置してキャリア53と係合した場合にキャリア53を第1キャリア位置に位置させ、非係合位置に位置してキャリア53と係合しない場合にキャリア53を太陽歯車50が回転した際に第2キャリア位置に位置させる構成に限定されず、これが逆であってよい。すなわち、係合部材54が、係合位置に位置してキャリア53と係合した場合にキャリア53を第2キャリア位置に位置させ、非係合位置に位置してキャリア53と係合しない場合にキャリア53を太陽歯車50が回転した際に第1キャリア位置に位置させる構成でもよい。この場合、係合部材54は、第1カートリッジ100が装着された場合に非係合位置に位置し、第2カートリッジ200が装着された場合に係合位置に位置する。この構成によれば、第1カートリッジ100が装着された場合には、係合部材54がキャリア53と係合しない非係合位置に位置することで、太陽歯車50が回転した際にキャリア53が第1キャリア位置に位置する。一方、第2カートリッジ200が装着された場合には、係合部材54がキャリア53と係合する係合位置に位置することで、キャリア53が第2キャリア位置に位置する。
同様に、トルククラッチ45Aにおいて、係合部材54が、第1係合位置に位置して第1係合部545においてキャリア53と係合した場合にキャリア53を第1キャリア位置に位置させ、第2係合位置に位置して第2係合部546においてキャリア53と係合した場合にキャリア53を第2キャリア位置に位置させる構成に限定されず、これが逆であってよい。すなわち、係合部材54が、第1係合位置に位置して第1係合部545においてキャリア53と係合した場合にキャリア53を第2キャリア位置に位置させ、第2係合位置に位置して第2係合部546においてキャリア53と係合した場合にキャリア53を第1キャリア位置に位置させる構成でもよい。この場合、係合部材54は、第1カートリッジ100が装着された場合に第2係合位置に位置し、第2カートリッジ200が装着された場合に第1係合位置に位置する。また、クラッチバネ58は、キャリア53に対して、第1キャリア位置に向けて力を付与する。この構成によれば、第1カートリッジ100が装着された場合には、係合部材54が第2係合部546においてキャリア53と係合する第2係合位置に位置することで、キャリア53が第1キャリア位置に位置する。一方、第2カートリッジ200が装着された場合には、係合部材54が第1係合部545においてキャリア53と係合する第1係合位置に位置することで、キャリア53が第2キャリア位置に位置する。
トルククラッチ45において、係合部材54の未装着時突出量Lは、第1間隔D1より大きく、かつ第2間隔D2より大きい構成に限定されるものではなく、トルククラッチ45Aと同様に、第1間隔D1より大きく第2間隔D2より小さい構成でもよい。この構成では、第2カートリッジ200が装着された場合に、係合部材54が第2カートリッジ200に押されないため、係合部材54がキャリア53側に移動しない。このように、係合部材54のキャリア53側への移動量が少ないとは、係合部材54がキャリア53側へ移動しない場合、すなわち移動量がゼロの場合も含む概念である。同様に、トルククラッチ45Aにおいて、係合部材54の未装着時突出量Lは、第1間隔D1より大きく第2間隔D2より小さい構成に限定されるものではなく、トルククラッチ45と同様に、第1間隔D1より大きく、かつ第2間隔D2より大きい構成でもよい。
トルククラッチ45において、第1遊星歯車51は、第1巻取り歯車41と噛み合う構成に限定されるものではなく、例えば、第1遊星歯車51と第1巻取り歯車41との間に設けられた1或いは複数の歯車を介して、第1巻取り歯車41と連なった構成でもよい。また、第2遊星歯車52は、第2巻取り歯車42と噛み合う構成に限定されるものではなく、例えば、第2遊星歯車52と第2巻取り歯車42との間に設けられた1或いは複数の歯車を介して、第2巻取り歯車42と連なった構成でもよい。同様に、トルククラッチ45Aにおいて、遊星歯車51aは、第1巻取り歯車41と噛み合う構成に限定されるものではなく、例えば、遊星歯車51aと第1巻取り歯車41との間に設けられた1或いは複数の歯車を介して、第1巻取り歯車41と連なった構成でもよい。
トルククラッチ45において、係合部材54は、第1カートリッジ100或いは第2カートリッジ200により押されることにより、係合位置と非係合位置とに移動する構成に限定されるものではない。例えば、係合部材54は、モーター等の駆動源により、係合位置と非係合位置とに移動する構成でもよい。すなわち、リボン巻取り機構28は、カートリッジ装着部1に装着されたカートリッジの種別を検出するセンサーと、センサーの検出結果に基づいて、係合部材54を係合位置或いは非係合位置に移動させる駆動源とを備えた構成でもよい。同様に、トルククラッチ45Aにおいて、係合部材54は、モーター等の駆動源により、第1係合位置と第2係合位置とに移動する構成でもよい。
リボン巻取り機構28は、巻取りトルクを第1トルクと第2トルクとの2段階に切り替える構成に限定されるものではなく、3段階以上に切り替える構成でもよい。例えば、リボン巻取り機構28は、以下の構成により、巻取りトルクを3段階に切り替えてもよい。リボン巻取り機構28は、第3巻取り歯車と、第3スリップバネをさらに備える。第3巻取り歯車は、巻取り回転子33と同軸上に設けられ、第2巻取り歯車42および第1巻取り歯車41を介して巻取り回転子33を回転させる。第3スリップバネは、第3巻取り歯車から第2巻取り歯車42へ伝達されるトルクを、第2トルクよりも小さい第3トルクに制限する。そして、トルククラッチ45は、第1カートリッジ100が装着された場合には、送りモーター3からの動力を第1巻取り歯車41に入力し、第2カートリッジ200が装着された場合には、送りモーター3からの動力を第2巻取り歯車42に入力する。その他のカートリッジ(例えば、第2インクリボンRbよりも幅の狭い第3インクリボンが収容されたカートリッジ)が装着された場合には、送りモーター3からの動力を第3巻取り歯車に入力する。
第1インクリボンRaと第2インクリボンRbとは、幅が異なるものに限定されず、例えば、材質が異なるものであってもよい。また、第1カートリッジ100および第2カートリッジ200は、テープTを収容せず、インクリボンRを収容したカートリッジでもよい。