JP7150788B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本開示は、非水電解質二次電池に関する。
特開2016-012458号公報(特許文献1)は、電極材料の炭素質被膜のリチウムイオン移動経路の屈曲比が1.1から100であることを開示している。
特開2016-012458号公報
非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)は、その用途に応じて多様な方法で使用される。例えば、電動車両の主電源、または動力アシスト電源等として電池が使用される場合、ハイレート充電と、ハイレート放電とが交互に行われることがある。以下、同使用方法が「ハイレート充放電」とも記される。
連続的にハイレート充放電が繰り返された後、一時的に電池出力が低下することがある。該出力低下は一次的であり、多くの場合、その後に出力は回復する。しかし、ハイレート充放電の前後で、出力が安定していることが望ましい。
本開示の目的は、ハイレート充放電後の出力の低下を抑えることである。
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし、本開示の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、特許請求の範囲を限定しない。
〔1〕 非水電解質二次電池は、電極体および電解液を含む。電解液の少なくとも一部は、電極体に含浸されている。電極体は、正極板、負極板およびセパレータを含む。セパレータは、正極板と負極板とを分離している。負極板は、負極基材および負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極基材の表面に配置されている。負極活物質層は、複数個の負極活物質粒子を含む。負極活物質層の厚さ方向に平行な断面において、平均屈曲比が1.5から2.5である。
平均屈曲比は、式(1):
R=B/A (1)
により算出される。
式(1)中、「R」は、平均屈曲比を示す。「B」は、負極基材と負極活物質粒子との接点を始点として、複数個の負極活物質粒子の輪郭線に沿って負極活物質層の表面まで延びる、最短経路の長さの平均値を示す。「A」は、負極活物質層の厚さの平均値を示す。
負極活物質層は、負極基材の表面に形成されている。負極活物質層は、複数個の負極活物質粒子を含む。負極活物質粒子間には隙間が形成される。すなわち、負極活物質粒子の表面に沿って細孔が形成されると考えられる。複数個の負極活物質粒子が連接することにより、負極基材の表面から負極活物質層の表面まで延びる細孔が形成される。細孔には、電解液が浸透している。そのため、負極活物質層の厚さ方向において、負極活物質層の表面から離れた位置でも、負極活物質粒子が充放電反応できると考えられる。
負極活物質粒子は充電時に膨張し、放電時に収縮する。そのため負極活物質層も充電時に膨張し、放電時に収縮する。充放電の電流レートが高い程、負極活物質層の膨張速度および収縮速度が速くなると考えられる。連続的にハイレート充放電が繰り返されることにより、負極活物質層は急激な膨張と、急激な収縮とを繰り返すことになる。その結果、負極活物質層がポンプのように運動することになる。
負極活物質層の膨張時、負極活物質粒子間の隙間が潰れることにより、負極活物質層から電解液が排出される。負極活物質層の収縮時、負極活物質粒子間の隙間が広がることにより、電解液が負極活物質層に吸収される。ハイレート充放電においては、電解液の排出量が、電解液の吸収量に比して大きい傾向がある。ハイレート充放電が繰り返されると、一部の負極活物質粒子に電解液が行き渡らなくなる。その結果、充放電反応に寄与する負極活物質粒子が減少し、一時的に出力が低下すると考えられる。その後、例えば、緩やかな条件で充放電が実施されると、負極活物質層に電解液が十分吸収され、出力が回復すると考えられる。
本開示における「屈曲比」は、負極活物質層の厚さに対する、負極基材の表面から負極活物質層の表面まで延びる細孔経路の長さの比を示す。「平均屈曲比」は、屈曲比の平均値を示す。平均屈曲比が小さい程、負極基材の表面から負極活物質層の表面に向かって、直線的な細孔が形成されていると考えられる。平均屈曲比が大きい程、負極基材の表面から負極活物質層の表面に向かって、入り組んだ細孔が形成されていると考えられる。
従来、平均屈曲比は小さい方がよいとの設計思想がある。細孔が直線的であり、かつ負極活物質層の厚さ方向に沿って細孔が延びていることにより、負極活物質層に電解液が浸透しやすいと考えられるためである。
しかし本開示の新知見によれば、平均屈曲比が適度に大きいことにより、ハイレート充放電後の一時的な出力の低下が抑えられる傾向がある。細孔の経路が適度に複雑であることにより、電解液の排出量が減少すると考えられる。電解液の排出量が減少することにより、電解液の排出量と電解液の吸収量とのバランスが良くなり、ハイレート充放電が繰り返された後も、負極活物質層に所定量の電解液が保持され得る。その結果、出力の低下が抑えられると考えられる。
ただし、平均屈曲比が過度に大きくなると、ハイレート充放電後に、出力が低下する傾向がある。電解液の吸収量が減少することにより、電解液の排出量と電解液の吸収量とのバランスが崩れると考えられる。その結果、ハイレート充放電後に、負極活物質層における電解液の保持量が減少するため、出力が低下すると考えられる。以上より、本開示においては、平均屈曲比の範囲が1.5以上2.5以下に特定されている。
〔2〕 負極活物質層の厚さ方向に平行な断面において、複数個の負極活物質粒子は、2.5から4.0の平均アスペクト比を有していてもよい。平均アスペクト比が2.5以上4.0以下であることにより、適度に複雑な細孔が形成される傾向がある。
〔3〕 負極活物質層の厚さ方向に平行な断面において、複数個の負極活物質粒子の個数に対する、10以上のアスペクト比を有する負極活物質粒子の個数比率が、5%から22%であってもよい。以下、10以上のアスペクト比を有する負極活物質粒子が「大アスペクト比粒子」とも記される。大アスペクト比粒子の個数比率が5%以上20%以下であることにより、適度に複雑な細孔が形成される傾向がある。
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。 図2は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。 図3は、本実施形態における負極板の一例を示す概略平面図である。 図4は、屈曲経路長の説明図である。 図5は、屈曲経路長の第1測定例である。 図6は、屈曲経路長の第2測定例である。 図7は、アスペクト比の説明図である。 図8は、本実施形態における正極板の一例を示す概略平面図である。 図9は、平均屈曲比と出力維持率との関係を示すグラフである。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
本実施形態における幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」等)は、実質的にその状態であればよいことを示している。本実施形態における幾何学的な用語は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、実質的に平行である状態を示す。すなわち「平行」は、厳密な意味での「平行」状態から多少ずれていてもよい。「実質的に平行である状態」は、例えば、設計上、製造上等の公差、誤差等を当然に含み得る。
本実施形態において、「実質的に・・・からなる」との記載は、本開示の目的を阻害しない範囲で、必須成分に加えて、追加の成分が含まれ得ることを示す。例えば、当該技術の分野において通常想定される成分(例えば不可避不純物等)は、当然含まれ得る。
本実施形態において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は、代表例に過ぎない。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。
本実施形態において、例えば「1.5から2.5」等の記載は、特に断りのない限り、境界値を含む範囲を示す。例えば「1.5から2.5」は、「1.5以上2.5以下」の範囲を示す。
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。
電池100は、電池ケース90を含む。電池ケース90は、角形である。ただし角形は一例である。電池ケース90は、任意の外形を有し得る。電池ケース90は、電極体50および電解液(不図示)を収納している。すなわち、電池100は、電極体50および電解液を含む。
《電極体》
図2は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。
電極体50は、正極板10、負極板20およびセパレータ30を含む。正極板10、負極板20およびセパレータ30は、いずれもシート状である。図2の電極体50は、巻回型である。すなわち、セパレータ30、負極板20、セパレータ30および正極板10がこの順に積層され、さらに渦巻状に巻回されることにより、電極体50が形成されている。ただし、電極体50は、積層(スタック)型であってもよい。
《負極板》
図3は、本実施形態における負極板の一例を示す概略平面図である。
負極板20は、帯状のシートである。負極板20は、負極基材21および負極活物質層22を含む。負極基材21は、例えば、銅(Cu)合金箔等であってもよい。負極基材21は、例えば、芯体、集電体等とも称され得る。負極活物質層22は、負極基材21の表面に配置されている。負極活物質層22は、負極基材21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は、負極基材21の表裏両面に配置されていてもよい。負極基材21の一部は、負極活物質層22から露出している。以下、負極基材21が露出した部分が「負極基材露出部」とも記される。負極基材露出部は、短手方向(図3のx軸方向)の一方の端部に配置されている。負極基材露出部は、長手方向(図3のy軸方向)に延びている。負極基材露出部は、電極体50と負極端子92との接続に利用され得る。
(組成)
負極活物質層22は、実質的に、複数個の負極活物質粒子からなっていてもよい。負極活物質粒子は、任意のサイズを有し得る。負極活物質粒子は、例えば、1μmから30μmのD50を有していてもよい。負極活物質粒子は、例えば、3μmから20μmのD50を有していてもよい。D50は、体積基準の粒度分布において、小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
負極活物質粒子は、任意の成分を含み得る。負極活物質粒子は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボンおよびハードカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質粒子は、例えば、実質的に天然黒鉛からなっていてもよい。負極活物質層22は、負極活物質粒子に加えて、例えば、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
(密度)
負極活物質層22は、例えば、1.1g/cm3から1.4g/cm3の密度を有していてもよい。負極活物質層22は、例えば、1.1g/cm3から1.3g/cm3の密度を有していてもよい。密度は、負極活物質層22の塗布量(単位面積あたりの質量)が、負極活物質層22の厚さで除されることにより算出される。
(平均屈曲比)
本実施形態の負極活物質層22は、1.5から2.5の平均屈曲比を有する。負極活物質層22が1.5から2.5の平均屈曲比を有することにより、ハイレート充放電後の一時的な出力の低下が抑えられる傾向がある。負極活物質層22は、好ましくは、1.5から2.0の平均屈曲比を有する。
平均屈曲比は、式(1):
R=B/A (1)
により算出される。
式(1)中、「R」は平均屈曲比を示す。「B」は平均屈曲経路長を示す。「A」は負極活物質層22の平均厚さを示す。
平均屈曲経路長および負極活物質層22の平均厚さは、負極活物質層22の厚さ方向に平行な断面において測定される。負極活物質層22の平面形状が帯状である時、負極活物質層22の長手方向(図3のy軸方向)において、負極活物質層22が5個以上の領域に等分される。各領域の中央付近から、試料片がそれぞれ採取される。試料片に断面加工が施される。例えば、CP(cross section polisher)加工等が施されてもよい。これにより、5個以上の断面試料が準備される。SEM(scanning electron microscope)により、各断面試料が観察される。これにより、5枚以上の断面SEM画像が準備される。
図4は、屈曲経路長の説明図である。
断面SEM画像において、負極活物質粒子1と、負極基材21との接点が任意に抽出される。該接点が始点(sp)である。始点(sp)から、複数個の負極活物質粒子1の輪郭線に沿って、負極活物質層22の表面まで経路が描かれる。経路が負極活物質層22の表面に達した点が終点(ep)である。経路の途中に分岐点(bp1、bp2)がある場合は、経路の長さが最短になるように、経路が選択される。例えば、図4の例では、始点(sp)から終点(ep)に至る経路上で、第1分岐点(b1)および第2分岐点(b2)が考えられる。第1分岐点(b1)および第2分岐点(b2)に基づき、第1経路(r1)、第2経路(r2)および第3経路(r3)が考えられる。第1経路(r1)は、断面SEM画像において、7955ピクセルの長さを有する。第2経路(r2)は、断面SEM画像において、10130ピクセルの長さを有する。第3経路(r3)は、断面SEM画像において、10781ピクセルの長さを有する。したがって、第1経路(r1)が最短経路である。第1経路(r1)が、該始点(sp)についての屈曲経路長とみなされる。1枚の断面SEM画像において、5個以上の屈曲経路長が測定される。すなわち、合計25個以上の屈曲経路長が測定される。25個以上の屈曲経路長の算術平均が、平均屈曲経路長とみなされる。
また、断面SEM画像において、負極基材21の表面と、負極活物質層22の表面との最短距離(t)が測定される。1枚の断面SEM画像において、5個以上の最短距離(t)が測定される。すなわち、合計25個以上の最短距離(t)が測定される。25個以上の最短距離(t)の算術平均が、負極活物質層22の平均厚さとみされる。負極活物質層22は、例えば、10μmから200μmの平均厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、例えば、10μmから100μmの平均厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、例えば、20μmから50μmの平均厚さを有していてもよい。
平均屈曲経路長が、負極活物質層22の平均厚さで除されることにより、平均屈曲比が算出される。平均屈曲比は小数第1位まで有効である。小数第2位以下は四捨五入される。
図5は、屈曲経路長の第1測定例である。図6は、屈曲経路長の第2測定例である。
図5および図6中、例えば「10668」等の数値は、断面SEM画像における経路の長さを示す。図5(第1測定例)における細孔の経路は、図6(第2測定例)における細孔の経路に比して、複雑である。図5(第1測定例)では、図6(第2測定例)に比して、最短距離(t)に対する、屈曲経路長の比が大きくなっている。
平均屈曲比は、例えば、「(α)スラリー混練時間」、「(β)負極活物質粒子の平均アスペクト比」、「(γ)大アスペクト比粒子の個数比率」等によって制御され得る。例えば、(α)、(β)または(γ)のいずれか1つにより、平均屈曲比が調整されてもよい。例えば、(α)および(β)の組み合わせ等によって、平均屈曲比が調整されてもよい。すなわち、(α)、(β)および(γ)からなる群より選択される1つ以上より、平均屈曲比が調整されてもよい。なお、(α)、(β)および(γ)の条件は、あくまで例示であり、これら以外の条件によって、平均屈曲比が調整されてもよい。
(α)スラリー混練時間
負極活物質層22は、例えば、負極スラリーの塗布により形成されてもよい。負極スラリーは、例えば、負極活物質粒子、バインダおよび分散媒が混練されることにより、調製され得る。例えば、混練時間の長さにより、平均屈曲比が調整されてもよい。混練時間が長くなる程、平均屈曲比は小さくなる傾向がある。混練時間は、例えば、180minから300minであってもよい。なお、混練機、ブレード形状、せん断負荷等の影響により、混練時間と平均屈曲比との関係が変化することも考えられる。
(β)負極活物質粒子の平均アスペクト比
図7は、アスペクト比の説明図である。
負極活物質粒子のアスペクト比は、屈曲経路長の測定に使用された断面SEM画像において測定され得る。アスペクト比は、短軸径(ds)に対する長軸径(dl)の比を示す。本実施形態の長軸径(dl)は、粒子の断面において、粒子の最大内径を示す。短軸径(ds)は、長軸径(dl)の中央において、長軸径(dl)と垂直に交わる内径を示す。1枚の断面SEM画像において、20個以上の負極活物質粒子のアスペクト比が測定される。すなわち、合計100個以上の負極活物質粒子のアスペクト比が測定される。100個以上のアスペクト比の算術平均が、平均アスペクト比とみなされる。平均アスペクト比は小数第1位まで有効である。小数第2位以下は四捨五入される。
例えば、平均アスペクト比により、平均屈曲比が調整されてもよい。平均アスペクト比が大きい程、平均屈曲比が大きくなる傾向がある。平均アスペクト比は、例えば、2.5から4.0であってもよい。平均アスペクト比は、好ましくは、2.5から3.0である。
(γ)大アスペクト比粒子の個数比率
大アスペクト比粒子は、10以上のアスペクト比を有する負極活物質粒子を示す。合計100個以上の負極活物質粒子のアスペクト比が測定されることにより、測定個数に対する、大アスペクト比粒子の個数比率(百分率)が算出される。大アスペクト比粒子の個数比率は、実数部のみ有効である。小数部は四捨五入される。
例えば、大アスペクト比粒子の個数比率により、平均屈曲比が調整されてもよい。大アスペクト比粒子の個数比率が高い程、平均屈曲比が大きくなる傾向がある。大アスペクト比粒子の個数比率は、例えば、5%から22%であってもよい。大アスペクト比粒子の個数比率は、好ましくは、5%から13%である。例えば、所定のアスペクト比を有する粒子群に、相対的に大きいアスペクト比を有する粒子群が少量混合されることにより、大アスペクト比粒子の個数比率が調整されてもよい。
《正極板》
図8は、本実施形態における正極板の一例を示す概略平面図である。
正極板10は、帯状のシートである。正極板10は、正極基材11および正極活物質層12を含む。正極基材11は、例えば、アルミニウム(Al)合金箔等であってもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されている。正極基材11の一部は、正極活物質層12から露出している。以下、正極基材11が露出した部分が「正極基材露出部」とも記される。正極基材露出部は、短手方向(図8のx軸方向)の一方の端部に配置されている。正極基材露出部は、長手方向(図8のy軸方向)に延びている。正極基材露出部は、電極体50と正極端子91との接続に利用され得る。
正極活物質層12は、複数個の正極活物質粒子を含む。正極活物質粒子は、任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、例えば、LiCoO、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式における「(NiCoMn)」等の記載は、括弧内の組成比の合計が1であることを示している。正極活物質層12は、正極活物質粒子に加えて、例えば、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、アセチレンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質粒子に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
《セパレータ》
電極体50は、例えば、2枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、例えば、1枚のセパレータ30を単独で含んでいてもよい。セパレータ30の少なくとも一部は、正極板10と負極板20との間に介在している。セパレータ30は、正極板10と負極板20とを分離している。セパレータ30は、帯状の多孔質シートである。セパレータ30は、例えば、ポリオレフィン製であってもよい。セパレータ30は、例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等であってもよい。セパレータ30の表面に、例えば、セラミック粒子層等が形成されていてもよい。
《電解液》
電解液の少なくとも一部は、電極体50に含浸されている。電解液の全部が電極体50に含浸されていてもよい。電解液の一部が電極体50に含浸されていてもよい。電解液の一部は、電極体50の外部に貯留していてもよい。電解液は液体電解質である。電解液は、溶媒および支持電解質を含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は任意の成分を含み得る。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4およびLiN(FSO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、例えば添加剤等をさらに含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)等を含んでいてもよい。
以下、本開示の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
<非水電解質二次電池の製造>
以下のように、No.1からNo.5に係る電池が製造された。
《No.1》
1.正極板の準備
下記材料が準備された。
正極活物質粒子:Li(NiCoMn)O2の粉末
導電材:AB
バインダ:PVDF
分散媒:N-メチル-2-ピロリドン
基材:Al合金箔
正極活物質粒子、導電材、バインダおよび分散媒が混合され、さらに混練されることにより、正極スラリーが調製された。正極スラリーが正極基材11の表面に塗布され、乾燥されることにより、正極活物質層12が形成された。これにより正極原反が形成された。正極原反が圧縮され、所定サイズに切断されることにより、正極板10が準備された。正極板10は、帯状のシートであった。正極板10は、下記寸法を有していた。
正極基材露出部の幅(W11、図8参照):15mm
正極活物質層12の幅(W12、図8参照):90mm
正極板10の幅(W11+W12):105mm
2.負極板の準備
下記材料が準備された。
負極活物質粒子:天然黒鉛の粉末(D50 10μm)
バインダ:CMC、SBR
分散媒:水
負極基材:Cu合金箔
負極活物質粒子、バインダおよび分散媒が混合され、さらに混練されることにより、負極スラリーが調製された。固形分の配合は、「天然黒鉛/CMC/SBR=99/0.6/0.4(質量比)」であった。混合物は、浅田鉄工社製の混練機により混練された。ディスパの回転数は、3000rpmであった。混練時間は、240minであった。
負極スラリーが負極基材21の表面に塗布され、乾燥されることにより、負極活物質層22が形成された。これにより負極原反が形成された。負極原反が圧縮され、所定サイズに切断されることにより、負極板20が準備された。負極板20は、帯状のシートであった。負極板20は、下記寸法を有していた。
負極基材露出部の幅(W21、図3参照):12mm
負極活物質層22の幅(W22、図3参照):95mm
負極板20の幅(W21+W22):107mm
打ち抜きポンチにより、負極板20から試料片が採取された。試料片の平面形状は円形(直径 35mm)であった。試料片の質量が測定された。試料片の質量から、負極基材21の質量が差し引かれることにより、塗布量が算出された。塗布量は、単位面積あたりの負極活物質層22の質量を示す。ニコン社製のマイクロメータ(製品名「デジマイクロ」)により、試料片の厚さが測定された。試料片の厚さから負極基材21の厚さが差し引かれることにより、負極活物質層22の厚さが算出された。塗布量および厚さから、負極活物質層22の密度が算出された。負極活物質層22は、1.20g/cm3の密度を有していた。
3.電極体の形成
セパレータ30として、帯状の多孔質シートが準備された。セパレータ30はポリオレフィン製であった。セパレータ30は、100mmの幅寸法を有していた。セパレータ30、負極板20、セパレータ30および正極板10がこの順で積層され、渦巻状に巻回されることにより、筒状の電極体50が形成された。電極体50が扁平状に成形された。電極体50は、下記寸法等を有していた。
電極体50の幅:117mm
電極体50の厚さ:10.6mm
電極体50の高さ:56.5mm
積層数:44層
電極体50の幅は、図2のx軸方向の寸法を示す。電極体50の厚さは、図2のy軸方向の寸法を示す。電極体50の高さは、図2のz軸方向の寸法を示す。積層数は、電極体50の厚さ方向(図2のy軸方向)において、電極体50の表面から電極体50の中心まで直線が引かれた時、該直線が正極板10と交差する回数を示す。
4.電解液の準備
下記組成を有する電解液が準備された。
溶媒:EC/EMC/DEC=3/3/4(体積比)
支持電解質:LiPF6(濃度 1mоl/L)
添加剤:VC(濃度 0.3質量%)
Anton Paar社製のコーンプレート粘度計により、電解液の粘度が測定された。25℃における電解液の粘度は、4.1Pa・sであった。
5.収納
電池ケース90が準備された。電池ケース90は、角形であった。電池ケース90は、下記寸法を有していた。
電池ケース90の幅:120mm
電池ケース90の厚さ:12.5mm
電池ケース90の高さ:60mm
電池ケース90の幅は、図1のx軸方向の寸法を示す。電池ケース90の厚さは、図1のy軸方向の寸法を示す。電池ケース90の高さは、図1のz軸方向の寸法を示す。
電池ケース90は、容器と蓋とからなっていた。蓋には、正極端子91および負極端子92が設けられていた。正極集電部材81により、正極端子91と電極体50とが電気的に接続された。負極集電部材82により、負極端子92と電極体50とが電気的に接続された。電極体50が袋に挿入された。袋は樹脂フィルム(厚さ 0.15mm)により形成されていた。電極体50が袋と共に、容器に収納された。レーザ溶接により、蓋と容器とが接合された。蓋に設けられた注液孔から、電解液が電池ケース90内に注入された。電解液が電極体50に含浸された。以上より、電池100が製造された。注液孔が開いたまま、電池100が所定量充電された。充電中、電極体50から発生したガスが、注液孔から排出された。充電後、注液孔が封止栓により塞がれた。すなわち、電池ケース90が密閉された。以上より、No.1に係る電池100が製造された。本実施例における電池100の定格容量は、5Ahであった。
《No.2》
上記「2.負極板の準備」において、負極スラリーの混練時間が300minに変更されることを除いては、No.1と同様に、電池100が製造された。No.2におけるスラリー混練時間は、No.1におけるスラリー混練時間の1.25倍である。
《No.3》
上記「2.負極板の準備」において、負極スラリーの混練時間が180minに変更されることを除いては、No.1と同様に、電池100が製造された。No.3におけるスラリー混練時間は、No.1におけるスラリー混練時間の0.75倍である。
《No.4》
上記「2.負極板の準備」において、負極スラリーの混練時間が360minに変更されることを除いては、No.1と同様に、電池100が製造された。No.4におけるスラリー混練時間は、No.1におけるスラリー混練時間の1.5倍である。
《No.5》
上記「2.負極板の準備」において、負極スラリーの混練時間が120minに変更されることを除いては、No.1と同様に、電池100が製造された。No.5におけるスラリー混練時間は、No.1におけるスラリー混練時間の0.5倍である。
<評価>
以下、本実施例において「CC-CV」は、定電流-定電圧方式を示す。「CC」は定電流方式を示す。「CV」は定電圧方式を示す。また、例えば「1It」等における「It」は、電流のレート(時間率)を示す記号である。1Itの電流によれば、電池の定格容量が1時間で放電される。例えば、電池の定格容量が5Ahである時、1Itは5Aの電流に相当する。
(ハイレート出力維持率)
CC-CV充電により、電池のSOC(state of charge)が50%に調整された。CC充電時の電流は、1Itであった。CC-CV充電の合計充電時間は、90minであった。50%のSOCにおける、電池の電圧は3.69Vであった。充電後、30minの休止を挟んで、36Itの電流により、電池が10秒間放電された。この時の放電出力が「初期出力」である。
初期出力の測定後、CC-CV充電により、電池のSOCが80%に調整された。CC充電時の電流は、1Itであった。CC-CV充電の合計充電時間は、90minであった。SOCの調整後、ハイレートサイクル試験が実施された。すなわち、下記条件のハイレート放電と、ハイレート充電とが交互に実施された。
放電:放電電流=10It、放電容量=20%のSOCに相当する容量
充電:充電電流=10It、充電容量=20%のSOCに相当する容量
合計充放電時間:120h
ハイレートサイクル試験後、初期出力と同様に、放電出力が測定された。この時の放電出力が「試験後出力」である。試験後出力が初期出力で除された値の百分率が「ハイレート出力維持率」である。ハイレート出力維持率は、下記表1に示される。ハイレート出力維持率が高い程、ハイレート充放電後の出力の低下が抑えられていると評価される。
(ローレート出力維持率)
CC-CV充電により、電池のSOCが50%に調整された。CC充電時の電流は、1Itであった。CC-CV充電の合計充電時間は、90minであった。50%のSOCにおける、電池の電圧は3.69Vであった。充電後、30minの休止を挟んで、36Itの電流により、電池が10秒間放電された。この時の放電出力が「初期出力」である。
初期出力の測定後、CC-CV充電により、電池のSOCが80%に調整された。CC充電時の電流は、1Itであった。CC-CV充電の合計充電時間は、90minであった。SOCの調整後、ローレートサイクル試験が実施された。すなわち、下記条件のローレート放電と、ローレート充電とが交互に実施された。
放電:放電電流=1It、放電容量=20%のSOCに相当する容量
充電:充電電流=1It、充電容量=20%のSOCに相当する容量
合計充放電時間:1200h
ローレートサイクル試験後、初期出力と同様に、放電出力が測定された。この時の放電出力が「試験後出力」である。試験後出力が初期出力で除された値の百分率が「ローレート出力維持率」である。ローレート出力維持率は、下記表1に示される。
(平均屈曲比)
ハイレート出力維持率およびローレート出力維持率の測定後、電池が放電された。放電後、電池ケースが開封されることにより、電極体が回収された。電極体から負極板が回収された。電極体において、4層、13層、22層、31層および40層に相当する各位置から、それぞれ、負極板の試料片が採取された。試料片の平面サイズは、20mm×20mmであった。各試料片において、厚さ方向に平行な断面がSEMにより観察された。これにより、5枚の断面SEM画像が取得された。各断面SEM画像において、5箇所以上で負極活物質層の厚さが測定された。合計25箇所以上の厚さの算術平均により、負極活物質層の平均厚さが算出された。各断面SEM像において、5箇所以上で屈曲経路長が測定された。合計25箇所以上の屈曲経路長の算術平均により、平均屈曲経路長が算出された。上記式(1)により、平均屈曲比が算出された。平均屈曲比は、下記表1に示される。
(平均アスペクト比)
5枚の断面SEM画像から、100個以上の負極活物質粒子が任意に抽出された。各負極活物質粒子のアスペクト比が測定された。100個以上のアスペクト比の算術平均により、平均アスペクト比が算出された。平均アスペクト比は、下記表1に示される。
(高アスペクト粒子の個数比率)
アスペクト比が測定された負極活物質粒子の全個数に対する、高アスペクト粒子の個数比率が算出された。高アスペクト粒子の個数比率は、下記表1に示される。
Figure 0007150788000001
<結果>
図9は、平均屈曲比と出力維持率との関係を示すグラフである。
図9に示されるように、平均屈曲比が1.5から2.5である範囲において、ハイレート出力維持率が顕著に向上している。他方、平均屈曲比と、ローレート出力維持率との相関は明確ではない。ローレートサイクル試験においては、出力の低下が顕在化し難いと考えられる。
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的なものではない。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味における全ての変更を包含する。さらに、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内における全ての変更も包含する。
1 負極活物質粒子、10 正極板、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極板、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極体、81 正極集電部材、82 負極集電部材、90 電池ケース、91 正極端子、92 負極端子、100 電池。

Claims (2)

  1. 電極体および電解液を含み、
    前記電解液の少なくとも一部は、前記電極体に含浸されており、
    前記電極体は、正極板、負極板およびセパレータを含み、
    前記セパレータは、前記正極板と前記負極板とを分離しており、
    前記負極板は、負極基材および負極活物質層を含み、
    前記負極活物質層は、前記負極基材の表面に配置されており、
    前記負極活物質層は、複数個の負極活物質粒子を含み、
    前記負極活物質層の厚さ方向に平行な断面において、
    複数個の前記負極活物質粒子は、2.5から4.0の平均アスペクト比を有し、かつ
    平均屈曲比が1.5から2.5であり、
    前記平均屈曲比は、式(1):
    R=B/A (1)
    により算出され、
    前記式(1)中、
    Rは、前記平均屈曲比を示し、
    Bは、前記負極基材と前記負極活物質粒子との接点を始点として、複数個の前記負極活物質粒子の輪郭線に沿って前記負極活物質層の表面まで延びる、最短経路の長さの平均値を示し、
    Aは、前記負極活物質層の厚さの平均値を示す、
    非水電解質二次電池。
  2. 前記負極活物質層の前記厚さ方向に平行な前記断面において、
    複数個の前記負極活物質粒子の個数に対する、10以上のアスペクト比を有する前記負極活物質粒子の個数比率が、5%から22%である、
    請求項1に記載の非水電解質二次電池。
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