JP7145715B2 - プーリ構造体の試験方法およびプーリ構造体の試験装置 - Google Patents

プーリ構造体の試験方法およびプーリ構造体の試験装置 Download PDF

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Description

本発明は、プーリ構造体の機能を確認する試験方法、およびプーリ構造体の機能を確認する試験装置に関する。
一般に、自動車等のエンジンには、無端ベルトを介してオルタネータ等の補機類を駆動するための補機駆動システムが備わり、補機駆動システムにおいてプーリ構造体が存在する。プーリ構造体は、ベルトが巻きかけられる外輪と、外輪に対して相対回転可能に同心配置された内輪と、外輪と内輪との間を連結する、ゴム弾性体や転動体(円筒ころ等)から成る連結部材とから成る。連結部材により、外輪から内輪にトルクが伝達され、クランク軸の回転速度変動を効果的に吸収し、ベルトのスリップや張力変動を抑制することができる。
プーリ構造体の開発に当たっては、開発されたプーリ構造体について、エンジン種別ごとに見合う機能が充分に確保されているかを確認するために、各種の動的な機能試験が行われる。
以下、連結部材としてコイルばねを使用している、コイルスプリング式クラッチを採用したプーリ構造体を例に挙げて説明する。外輪と内輪の間にはコイルばねが配置されている。コイルばねは、外輪と内輪との間の回転速度差に応じて拡径、または、縮径することにより、外輪-内輪間でのトルク伝達と遮断を切り換える、コイルスプリング式クラッチとして重要な部材である。そのため、プーリ構造体の開発段階において、コイルばねの、ねじりに対する耐久性やトルク伝達性、耐共振性等のコイルばねの機能について、各種試験を行って異常がないか、劣化が生じないかを十分に確認する必要がある。
上記の試験としては、例えば、始動耐久試験やアイドル試験、アイドル耐久試験がある。これらの試験は、規定の試験時間が完了するまで中断することができない。例えば、始動耐久試験は、短時間のエンジン始動と停止とを交互に行う回数(エンジン始動回数)が実車寿命に相当する50万回に達するまで、およそ58日間連続運転して試験する。エンジン始動回数が50万回に達するまで、試験は中断されないため、試験後に回収された試験品を分解して内部の状態を確認するまで機能劣化が検出されないことがある。この場合、試験品を回収し内部の状態を確認したときには、著しく破損した状態となっていることがあり、機能異常や機能劣化の原因究明が難しい。
尚、プーリ構造体に関する機能を確認する試験に関しては、これまでにもさまざまなものが知られているが、例えば、特許文献1には、プーリ構造体に接続された補機のトルク(補機トルク)を測定する方法が開示されている。補機駆動システムにおいては、補機駆動用ベルトを介して、自動車エンジンの出力を、駆動プーリから、補機に接続されたプーリ構造体に伝達する。特許文献1では、個々の補機駆動システムに適切な補機駆動用ベルトを見極めるために、補機トルクを測定している。なお、特許文献1には、補機トルクの測定法として次のようなものが開示されている。まず、電磁ピックアップを用いて、プーリ構造体の外輪と内輪の回転速度を時系列に沿ってそれぞれ検出し、コイルばねのねじり角度を算出する。次に、あらかじめ作成しておいたトルクカーブと、算出したコイルばねのねじり角度に基づいて、補機トルクを算出する。
特開2016-205932号公報
プーリ構造体の開発段階では、機能異常や機能劣化に繋がる要因を効率的に見つけて対応策を練っていくことが重要である。従来から、各種試験によって機能異常や機能劣化を検出しているが、現状では、主に、長時間の耐久試験終了後に異常があるかどうか判明するため、機能異常や機能劣化の原因究明が難しい。以上より、プーリ構造体の開発段階における、プーリ構造体の機能を確認する試験において、機能異常や機能劣化をいち早く検出することが求められている。
特許文献1では、電磁ピックアップによって外輪と内輪の回転速度を計測するが、外輪と内輪の回転速度を計測するのは、あくまでも、適切な補機駆動用ベルトを選択する際に必要な、補機トルクの測定のために行っているのであって、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を判定するためではない。
そこで、本発明の目的は、プーリ構造体の効率的な開発に寄与させるために、プーリ構造体の機能異常や機能劣化をいち早く検出することができるプーリ構造体の試験方法およびプーリ構造体の試験装置を提供することである。
本発明のプーリ構造体の試験方法は、外輪と、前記外輪に対して相対回転可能に同心配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられ、前記外輪と前記内輪とを連結する連結部材とを有する、プーリ構造体の機能を確認する試験方法であって、前記外輪の変動する回転速度及び前記内輪の変動する回転速度を、時系列に沿ってそれぞれ検出する検出ステップと、時系列に沿って検出された回転速度の時系列変化に基づいて、前記外輪の回転速度振幅及び前記内輪の回転速度振幅をそれぞれ求め、前記外輪の前記回転速度に対する前記内輪の前記回転速度の比である回転速度比、または前記外輪の前記回転速度振幅に対する前記内輪の前記回転速度振幅の比である回転速度振幅比を算出する算出ステップと、前記回転速度比または前記回転速度振幅比を所定の閾値と比較し、前記プーリ構造体の機能異常及び機能劣化の有無を判定する判定ステップと、を備えている。
上記方法によれば、試験途中に、検出ステップで得られた外輪及び内輪の回転速度または回転速度振幅の情報を用いて、逐次、プーリ構造体の機能異常及び機能劣化を判定する。これにより、規定の試験時間が完了する前に、プーリ構造体の機能異常や機能劣化をいち早く検出することができる。
本発明において、前記連結部材は、前記外輪と前記内輪との間で回転トルクを伝達又は遮断するクラッチであってもよい。
上記方法によれば、連結部材が単純な構成である場合に比べて、連結部材の構成や、連結部材と外輪、内輪等の連結部材以外のプーリ構造体の構成要素との相互関係が複雑になる。これにより、プーリ構造体の機能異常や機能劣化も生じやすい。しかし、本発明では、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本発明において、前記クラッチは、コイルスプリング式クラッチであって、前記内輪が前記外輪に対して逆方向に相対回転すると縮径方向にねじれるコイルばねを含んでもよい。
連結部材にコイルスプリング式クラッチを採用したプーリ構造体では、その構造上、クラッチ係合部の摩耗が進行しても異音等が発生しにくいため、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を発見しにくい。従って、規定の試験の途中にプーリ構造体の機能異常や機能劣化を検出するのは難しい。しかし、上記方法によれば、試験途中に、外輪と内輪の回転速度データに基づいて摩耗の進行度合等を判定できる。これにより、本発明では、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本発明において、前記プーリ構造体は、前記外輪と前記内輪との相対回転によって前記コイルばねが拡径方向にねじれた場合に、前記コイルばねの他端側領域のうち少なくとも周方向一部分の内周面が前記内輪から離れてもよい。
コイルばねが拡径する際に、コイルばねの端部が内輪から離れうる構成の場合、コイルバネのねじり変形が不安定になりやすい。そのコイルばねの不安定さによって、プーリ構造体内にはさまざまなパターンの機能異常や機能劣化が生じうる。しかし、本発明では、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本発明において、前記プーリ構造体の前記内輪は、補機の駆動軸に接続されてもよい。
本発明において、前記補機はオルタネータであってもよい。
オルタネータの駆動軸は、他の補機用の駆動軸に比べて、慣性モーメントが大きいため、プーリ構造体に入力される、オルタネータを動かすために必要な回転トルクが大きくなりやすく、プーリ構造体の、外輪および/または内輪と、連結部材との摩耗が進行しやすい。このため、プーリ構造体の連結部材に係る、トルク伝達性等の機能が劣化しやすい。しかし、本発明では、プーリ構造体の機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本発明において、始動耐久試験の途中に前記回転速度振幅比が第1閾値よりも高いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねのねじりに対する耐久性が異常であると判定してもよい。
始動耐久試験では、数百時間という長時間、エンジンの始動と停止が繰り返される。ここで、コイルばねのねじりに対する耐久性が異常であると、回転速度変動をコイルばねのねじり変形で効果的に吸収することができなくなり、内輪の回転速度振幅が増加する。つまり、コイルばねのねじりに対する耐久性について異常があると、回転速度振幅比は増加する。そこで、始動耐久試験の途中で、回転速度振幅比を所定の第1閾値と逐次比較することで、始動耐久試験が完了する前に、ねじりに対する耐久性が悪いコイルばねをいち早く検出することができる。
本発明において、始動耐久試験の途中に前記回転速度比が第2閾値よりも低いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねのトルク伝達性が異常であると判定してもよい。
始動耐久試験では、数百時間という長時間、エンジンの始動と停止が繰り返される。ここで、この始動耐久試験の間で、クラッチ係合部の摩耗が進行すると、外輪と内輪の間のトルク伝達性が低下し、内輪の回転速度が減少し、回転速度比が減少する。そこで、始動耐久試験の途中で、回転速度比を所定の第2閾値と逐次比較することで、始動耐久試験が完了する前に、コイルばねのトルク伝達性について異常や劣化をいち早く検出することができる。
本発明において、アイドル試験の途中に前記回転速度振幅比が第3閾値よりも高いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねの耐共振性が異常であると判定してもよい。
走行時よりも回転数が低いアイドル回転数では、エンジンの回転に伴ってコイルばねに生じる振動がコイルばねの固有振動数に近くなり、共振が発生しやすくなる。従って、コイルばねの耐共振性を調べることも重要である。アイドル試験においてコイルばねに共振が発生すると、内輪の回転速度振幅が増加し、回転速度振幅比が増加する。従って、アイドル試験において回転速度振幅比を測定し、その値を所定の第3閾値と逐次比較することによって、アイドル耐久試験を行わなくても、耐共振性が悪いコイルばねをいち早く検出することができる。
本発明のプーリ構造体の試験装置は、外輪と、前記外輪に対して相対回転可能に同心配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間を連結する連結部材とを有する、プーリ構造体の機能を確認する試験装置であって、前記外輪の変動する回転速度及び前記内輪の変動する回転速度を、時系列に沿ってそれぞれ検出する検出手段と、検出された前記回転速度の時系列変化に基づいて、前記外輪の回転速度振幅及び前記内輪の回転速度振幅をそれぞれ求め、前記外輪の前記回転速度に対する前記内輪の前記回転速度の比である回転速度比、または前記外輪の前記回転速度振幅に対する前記内輪の前記回転速度振幅の比である回転速度振幅比を算出する算出手段と、前記回転速度比または前記回転速度振幅比を所定の閾値と比較し、前記プーリ構造体の機能劣化の有無を判定する判定手段と、を備えている。
上記装置では、試験途中に、検出手段で得られた、外輪及び内輪の、回転速度または回転速度振幅の情報を用いて、逐次、プーリ構造体の機能異常や機能劣化を判定する。これにより、規定の試験時間が完了する前に、プーリ構造体の機能異常や機能劣化をいち早く検出することができる。
プーリ構造体の効率的な開発に寄与させるために、プーリ構造体の機能異常や機能劣化をいち早く検出することができるプーリ構造体の試験方法およびプーリ構造体の試験装置を提供することができる。
本実施形態の、補機駆動装置、及び外輪と内輪の回転速度のデータの処理を説明する図である。 本実施形態におけるプーリ構造体の断面図である。 図2のII-II線断面図である。 「コイルばねのねじりに対する耐久性」についての試験の流れを示す図である。 「コイルばねのトルク伝達性」についての試験の流れを表す図である。 「コイルばねの耐共振性」についての試験の流れを示す図である。 実施例1の条件1のアイドル試験における、外輪及び内輪の回転速度の時系列変化を示す図である。 実施例1の条件2のアイドル試験における、外輪及び内輪の回転速度の時系列変化を示す図である。 実施例1のアイドル試験における、試験結果を示す図である。 オルタネータ用のプーリ構造体として実際に使用する際のプーリ構造体の断面図である。
次に、本発明を適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まずは、本発明を適用する補機駆動装置1とプーリ構造体3について説明する。
(補機駆動装置1)
図1に示すように、補機駆動装置1によって、自動車の実機エンジンの出力が、1本の補機駆動用ベルト4を介して、自動車エンジンのクランク軸に連結された駆動プーリ2から時計回りに、オルタネータ5(ALT)に接続されたプーリ構造体3、ウォーターポンプ(WP)に接続されたWPプーリ、エアコン・コンプレッサ(AC)に接続されたACプーリに対してそれぞれ伝達され、各補機(オルタネータ5、ウォーターポンプ、エアコン・コンプレッサ)は駆動される。また、駆動プーリ2とプーリ構造体3とのベルトスパン間に、オートテンショナ(A/T)が設けられている。本実施形態では、オルタネータ5に接続されたプーリ構造体3の外輪6と内輪7を回転速度の測定対象とした。
なお、補機として、上記実施形態のレイアウトの補機の他、パワーステアリング用油圧ポンプ(P/S)を設けても良い。また、交流発電機である上記オルタネータ5は、ACジェネレータ(ACG)とも呼ばれている。
(プーリ構造体3)
プーリ構造体3の構成について説明する。本実施形態のプーリ構造体3は、図1に示すように、補機駆動用装置において、オルタネータ5の駆動軸Sに設置される。そして、自動車エンジンのクランク軸に連結された駆動プーリの回転が補機駆動用ベルト4(Vリブドベルト)を介してプーリ構造体3に伝達されることで、オルタネータ5が駆動される。自動車エンジンのクランク軸は、エンジン燃焼に起因して回転速度が変動する。
図2および図3に示すように、本実施形態のプーリ構造体3は、補機駆動用ベルト4が巻き掛けられる略筒状の外輪6と、外輪6の内側に回転軸を同一に配置される略筒状の内輪7と、連結部材としてのコイルばね8と、外輪6の外周に取り付けられた外輪用リングギヤ16と、内輪7の回転軸方向の一方側に取り付けられた内輪用リングギヤ17とを備えている。なお、コイルばね8は、外輪6と内輪7との間に形成されるばね収容空間11に収容されている。以下の説明において、図2中の紙面上の左方向を前方向、右方向を後方向と称する。
内輪7は、オルタネータ5の駆動軸Sに固定される筒本体71と、筒本体71の前端部の外側に配置された外筒部72と、筒本体71の前端部と外筒部72の前端部を連結する円環板部73とを有する。駆動軸Sは、筒本体71の内周面のネジ溝に螺合されて固定されている。
外輪6の前端部の内周面と、内輪7の外筒部72の外周面との間には、滑り軸受9が介設されている。外輪6の後端部の内周面と、内輪7の筒本体71の外周面との間には、転がり軸受10が介設されている。この2つの軸受9、10によって、外輪6と内輪7とは相対回転可能に連結されている。外輪6および内輪7は、図3の矢印方向(前方から見て時計回り)に回転する。
ばね収容空間11内において、外輪6の内径は、後方に向かって2段階で小さくなっている。最も小さい内径を有する部分の内周面を圧接面6aとし、2番目に小さい内径を有する部分の内周面を環状面6bとする。環状面6bの径は、内輪7の外筒部72の内径と同じか、それよりも大きい。圧接面6aの前方の角部は全周にわたってテーパー状に面取りされている。この面取り部6cの前後方向(回転軸方向)に対する傾斜角度αは、10~20°が好ましく、15°がより好ましい。また、内輪7の筒本体71は、前端部において、ばね収容空間11内のその他の部分よりも外径が大きくなっている。この部分の外周面を接触面71aとする。
図3に示すように、内輪7の前端部には、コイルばね8の前端面8aと周方向に対向する当接面7aが形成されている。当接面7aは軸方向から見て円弧状に形成されている。また、外筒部72の内周面には、径方向内側に向かって突出する突起部72a(規制手段)が設けられている。突起部72aは、当接面7aから回転方向(図3中の矢印方向)と反対側に約90°離れた位置に形成されている。突起部72aは、コイルばね8の前側領域の外周面と対向する。
コイルばね8は、断面形状が矩形状の線材で形成されている。コイルばね8の線材には、例えば、ばね用オイルテンパー線(JISG3560に準拠)が用いられる。コイルばね8は、左巻き(軸方向先端に向かって反時計回り)である。コイルばね8は、外力を受けていない状態において、全長にわたって径が一定である。外力を受けていない状態でのコイルばね8の外径は、外輪6の圧接面6aの内径よりも大きい。
コイルばね8の後側領域は、縮径された状態で外輪6の圧接面6aに当接している。つまり、コイルばね8の後側領域の外周面は、コイルばね8の自己弾性復元力によって外輪6の圧接面6aに押し付けられている。
プーリ構造体3が停止しており、コイルばね8の後側領域の外周面が自己弾性復元力によって圧接面6aに押し付けられた状態において、コイルばね8の前側領域は、若干拡径された状態で内輪7の接触面71aと当接している。つまり、コイルばね8の前側領域の内周面は、コイルばね8の自己弾性復元力によって内輪7の接触面71aに押し付けられている。
コイルばね8の前側領域の内周面が接触面71aに接触している状態において、コイルばね8の前側領域の外周面と内輪7の外筒部72の内周面との間には、隙間が形成されている。また、外輪6の環状面6bとコイルばね8の外周面との間には、隙間が形成されている。本実施形態では、プーリ構造体3が停止している状態において、コイルばね8の外周面と突起部72aとの間には隙間が形成されているが、コイルばね8の外周面と突起部72aが接していてもよい。
外輪用リングギヤ16は、磁性体からなる歯形部材であり、ボルト又は溶接により外輪6の外周に取り付けられている。この外輪用リングギヤ16の回転を、後述する電磁ピックアップ26によって検知し、外輪6の回転速度を検出する。
内輪用リングギヤ17も、外輪用リングギヤ16同様に、磁性体からなる歯形部材であり、ボルト又は溶接により内輪7の回転軸方向の一方側に取り付けられている。この内輪用リングギヤ17の回転を、後述する電磁ピックアップ27によって検知し、内輪7の回転速度を検出する。
なお、外輪用リングギヤ16及び内輪用リングギヤ17は、外輪6の回転速度及び内輪7の回転速度を検出するために設けられたもので、通常、オルタネータ5のプーリ構造体3として使用される場合には、図10に示すように、外輪用リングギヤ16及び内輪用リングギヤ17が取り外され、代わりに、エンドキャップ13によって外輪6の前方の空間12を塞がれている。このような構成にすることで、実際にオルタネータ5に接続して使用する場合のプーリ構造体3と、外輪6及び内輪7の回転速度を測定しプーリ構造体3の機能試験を行う場合のプーリ構造体3とを共通化している。
(プーリ構造体3の動作)
次に、プーリ構造体3の動作について説明する。先ず、外輪6の回転速度が内輪7の回転速度より速くなった場合、即ち、外輪6が加速する場合について説明する。この場合、外輪6は、内輪7に対して回転方向(図3の矢印方向)と同じ方向に相対回転する。
外輪6の相対回転に伴って、コイルばね8の後側領域は、外輪6の圧接面6aとともに内輪7に対して相対回転する。これにより、コイルばね8は、拡径方向にねじれる。コイルばね8の後側領域の圧接面6aに対する圧接力は、コイルばね8のねじり角度が大きくなるほど増大する。
ここで、図3に示すように、コイルばね8の、接触面71aと接触する領域(前側領域)のうち、前端面8aから回転軸回りに左回りに90°離れた位置付近を第2領域8b2とし、第2領域8b2よりも前端面8a側の部分を第1領域8b1とし、残りの部分を第3領域8b3とする。
コイルばね8の前端面8aから回転軸回りに90°離れた位置付近(第2領域8b2)は、最もねじり応力を受けやすいため、ねじり角度が大きくなると、コイルばね8の第2領域8b2は接触面71aから離れる。このとき、第1領域8b1と第3領域8b3は接触面71aに圧接している。第2領域8b2が接触面71aから離れるとほぼ同時、または、それよりもねじり角度が大きくなったときに、第2領域8b2の外周面は、突起部72aに当接する。
第2領域8b2の外周面が突起部72aに当接することにより、コイルばね8の前側領域の拡径変形が規制(抑制)されるため、ねじり応力が前側領域以外の巻部に分散される。特に、コイルばね8の後側の巻部にかかるねじり応力が増加する。これにより、コイルばね8の各巻部にかかるねじり応力の差を低減でき、コイルばね8全体で歪エネルギーを吸収できるため、局部的な疲労破壊を防止できる。
また、第3領域8b3の接触面71aに対する圧接力は、ねじり角度が大きくなるほど低下し、第2領域8b2が突起部72aに当接すると同時、または、それよりもねじり角度が大きくなったときに、第3領域8b3の接触面71aに対する圧接力はほぼゼロとなる。このときのねじり角度を角度θ1(例えば3°)とする。
コイルばね8の拡径方向のねじり角度が角度θ1を超えると、第3領域8b3の拡径変形により第3領域8b3は接触面71aから離れていくが、第3領域8b3と第2領域8b2の境界付近、即ち、突起部72aの、当接面7aから遠い方の端部付近において、コイルばね8が湾曲(屈曲)することは無く、前側領域は円弧形状に維持される。つまり、前側領域は、突起部72aを摺動しやすい形状に維持されている。そのため、ねじり角度が大きくなって前側領域にかかるねじり応力が増加すると、コイルばね8の前側領域は、第2領域8b2の突起部72aに対する圧接力、および、第1領域8b1の接触面71aに対する圧接力に抗して、周方向に移動(突起部72aと接触面71aを摺動)し、コイルばね8の前端面8aが、内輪7の当接面7aを押圧する。前端面8aが当接面7aを押圧することにより、外輪6と内輪7の間で確実にトルクを伝達できる。
このように、コイルばね8の拡径方向のねじり角度が角度θ1以上(角度θ2未満)の場合には、コイルばね8の前側領域は、第3領域8b3が接触面71aから離間し(且つ外筒部72の内周面に接触しておらず)、第2領域8b2が突起部72aに圧接されているため、ねじり角度がθ1未満の場合に比べて、コイルばね8の有効巻数が増加する。コイルばね8の有効巻数とは、ばね全長からばねを固定している部分を除いた範囲の巻き数であって、ばね定数(ねじりトルク/ねじり角度)と反比例する。拡径方向のねじり角度が角度θ1を超えると、有効巻数が増加することで、ばね定数が低下する。これにより、コイルばね8の耐疲労性をさらに向上させることができる。
コイルばね8の拡径方向のねじり角度が所定の角度θ2(例えば45°)になると、コイルばね8の中領域(前側領域と後側領域の間の領域)の外周面が外輪6の環状面6bに当接するか、もしくは、ねじり角度が限界角度に達することで、コイルばね8のそれ以上の拡径変形が規制され、外輪6と内輪7が一体的に回転する。これにより、コイルばね8の拡径変形による破損を防止できる。
次に、外輪6の回転速度が内輪7の回転速度より遅くなった場合、即ち、外輪6が減速する場合について説明する。この場合、外輪6は、内輪7に対して回転方向(図3の矢印方向)と逆方向に相対回転する。
外輪6の相対回転に伴って、コイルばね8の後側領域が、外輪6の圧接面6aとともに内輪7に対して相対回転するため、コイルばね8は、縮径方向にねじれる。
コイルばね8の縮径方向のねじり角度が所定の角度θ3(例えば10°)未満の場合には、コイルばね8の後側領域の圧接面6aに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干低下するものの、コイルばね8の後側領域は圧接面6aに圧接している。また、コイルばね8の前側領域の、接触面71aに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干増大する。
コイルばね8の縮径方向のねじり角度が角度θ3以上の場合には、コイルばね8の後側領域の圧接面6aに対する圧接力はほぼゼロとなり、コイルばね8の後側領域は圧接面6aを周方向に摺動する。したがって、外輪6と内輪7の間でトルクは伝達されない。
(試験概要)
プーリ構造体の開発に当たっては、開発されたプーリ構造体について、エンジン種別ごとに見合う機能が充分に確保されているかを確認するために、各種の動的な機能試験を行う。
本実施形態では、図1に示すように、補機駆動装置1において、自動車の実機エンジンの出力が、駆動プーリ2から、補機駆動用ベルト4、及び補機に接続されたプーリ構造体3を介して、補機(オルタネータ5)に伝達される。プーリ構造体3の外輪6と内輪7の回転速度を時系列に沿って検出し、検出された回転速度の時系列変化に基づいてプーリ構造体3の機能異常や機能劣化の有無を判定する。
本実施形態では、連結部材として、コイルスプリング式クラッチを採用する。コイルスプリング式クラッチは、外輪6と内輪7の間に配置されたコイルばね8である。コイルばね8は、外輪6と内輪7との間の回転速度差に応じて拡径、または、縮径することにより、外輪6-内輪7間でのトルク伝達と遮断を切り換える、プーリ構造体3において重要な部材である。そのため、本実施形態では、プーリ構造体3の機能試験として、コイルばね8の機能試験を行うとする。コイルばね8の機能試験としては、例えば、コイルばね8のねじりに対する耐久性やコイルばね8のトルク伝達性に係る、始動耐久試験や、コイルばね8の耐共振性に係る、アイドル試験、アイドル耐久試験が存在する。
(アイドル試験)
クランク軸の回転速度が走行時よりも回転数が低いアイドル回転数で、エンジンを短時間回転させる試験をアイドル試験と呼ぶ。アイドル試験が完了しても、プーリ構造体のコイルばね8の耐共振性が異常であると判定できない場合、従来は、アイドル試験の後に、クランク軸の回転速度が走行時よりも回転数が低いアイドル回転数を含むアイドル回転数で、数百時間という長時間、エンジンを連続運転させて試験をする。これをアイドル耐久試験と呼ぶ。
以下、アイドル試験を行う。アイドル試験中に、逐次、回転速度を検出し、回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出し、プーリ構造体3のコイルばね8の耐共振性についての異常を判定する。以下に、異常の判定までの流れを詳細に記載する。
図1に示すように、プーリ構造体3を、オルタネータ5の駆動軸Sに接続する。具体的には、プーリ構造体3の内輪7における筒本体71の前端部(補機の反対側)が軸方向に垂直な断面において正六角形になっており、六角レンチにより、内輪7のめねじ部分をオルタネータ5の駆動軸Sの先端のおねじ部分に完全にねじ込み、接続(締結)した。
次に、図1に示す検出手段としての回転速度センサ、具体的には、2つの電磁ピックアップ26(外輪6側)及び電磁ピックアップ27(内輪7側)の先端を、それぞれ外輪6に取り付けられた外輪用リングギヤ16と内輪7に取り付けられた内輪用リングギヤ17とに近接しかつ対向し得るように、非接触に配設した。
電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27は、内部に磁石とコイルを持っており、外輪6に取り付けた外輪用リングギヤ16及び内輪7に取り付けた内輪用リングギヤ17の回転動作によって電気(パルス)を発生させるもので、磁気式ギヤ速度センサ、一般には電磁ピックアップと呼ばれているセンサである。本実施形態の場合、電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27は、外輪用リングギヤ16及び内輪用リングギヤ17のそれぞれの回転動作による磁気変化を検出し、この回転速度に対応するパルス信号(周波数信号)をケーブルを介して、後述する算出手段としてのFVコンバータ36、37に出力するものである。本実施形態では、電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27は、ココリサーチ社製(型番FDP10-A37)を使用している。なお、電磁ピックアップを速度センサとして用いる代わりに、レーザ速度ムラ計を速度センサとして用いてもよい。この場合は、出力は速度信号であるため、FVコンバータ36、37を省略できる。
電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27によって、外輪用リングギヤ16及び内輪用リングギヤ17のそれぞれの回転動作による磁気変化を検出し、この回転速度に対応するパルス信号(周波数信号:単位時間当たりのピーク数)を、逐次、FVコンバータ36、37に出力させた。ここで、本実施形態では、外輪用リングギヤ16の歯の1つが、電磁ピックアップ26の先端を横切ったときの磁気変化を検出し1つのピークとしてカウントする。また、同様に、内輪用リングギヤ17の歯の1つが、電磁ピックアップ27の先端を横切ったときの磁気変化を検出し1つのピークとしてカウントする。即ち、回転速度に対応するパルス信号(周波数信号)は、1秒間に電磁ピックアップ26、27の先端を横切った歯数(歯数/sec)のデータ情報として出力される。
算出手段は、図1に示すように、電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27の各ケーブルがそれぞれ接続されたFVコンバータ36及びFVコンバータ37と、データロガー41と、パソコン42とによって構成されている。
FVコンバータ36及びFVコンバータ37は、電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27から出力された回転速度に対応するパルス信号(周波数信号:歯数/sec)を電圧信号に変換するものである(FVコンバータ36、37は、ココリサーチ社製、型番KAZ-Mighty)。データロガー41は、FVコンバータ36及びFVコンバータ37と接続されており、電磁ピックアップ26及び電磁ピックアップ27から出力された回転速度に対応するパルス信号から変換された電圧信号を記録する装置である(データロガー41は、キーエンス社製、型番NR-2000)。なお、データロガー41の代わりに、FFTアナライザーを用いてもよい。パソコン42は、データロガー41に接続されており、データロガー41に格納されたデータ等に基づいて、算出(表計算ソフト等により)を行い、回転速度の時系列波形(グラフ)を、アウトプットする。
以下にパソコン42によって実行される具体的な算出手順の一例を説明する。
(1)時系列に、電磁ピックアップ26から出力された回転速度に対応するパルス信号(周波数信号:歯数/sec)から変換された電圧信号のデータ情報(歯数/sec)を、外輪用リングギヤ16の総歯数(1周当たりの歯数)で除算して、外輪6の回転速度(回転/sec)を算出する。同様に、時系列に、電磁ピックアップ27から出力された回転速度に対応するパルス信号から変換された電圧信号のデータ情報(歯数/sec)を、内輪用リングギヤ17の総歯数(1周当たりの歯数)で除算して、内輪7の回転速度(回転/sec)を算出する。
(2)アイドル試験途中のデータの抽出開始時点から、外輪6と内輪7のそれぞれについて、時系列に所定の時間tごとに、それぞれの所定の時間tの中で検出された複数の回転速度振幅SRi、SRoを算出し、これら複数の回転速度振幅の平均を算出した。その後、アイドル試験途中のデータの抽出開始時点からアイドル試験終了までのデータを使って、外輪6の回転速度振幅SRoに対する内輪7の回転速度振幅SRiの比である回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出する。
次に、判定手段としてのパソコンによって、回転速度振幅比(SRi/SRo)が所定の閾値よりも高い場合、コイルばね8の耐共振性について異常ありと判定する。
(始動耐久試験)
始動耐久試験は、短時間のエンジン始動と停止とを交互に行う回数が実車寿命に相当する50万回に達するまで、およそ58日間連続運転して行う試験である。
以下、始動耐久試験を行う。始動耐久試験中に、逐次、回転速度を検出し、回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出し、プーリ構造体3のコイルばね8のねじりに対する耐久性についての異常を判定する。前述の、アイドル試験と同様の算出手順で、外輪6の回転速度振幅SRoに対する内輪7の回転速度振幅SRiの比である回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出する。異常の判定については、判定手段としてのパソコンによって、回転速度振幅比(SRi/SRo)が所定の閾値よりも高い場合、コイルばね8のねじりに対する耐久性について異常ありと判定する。
また、始動耐久試験中に、逐次、回転速度を検出し、回転速度比を算出し、プーリ構造体3のコイルばね8のトルク伝達性についての異常を判定する。前述の、アイドル試験の(1)と同様の算出手順の後、アイドル試験途中のデータの抽出開始時点からアイドル試験終了までのデータを使って、外輪6の回転速度に対する内輪7の回転速度の比である回転速度比を算出する。異常の判定については、判定手段としてのパソコンによって、回転速度比が所定の閾値よりも低い場合、コイルばね8のトルク伝達性について異常ありと判定する。
以下に、回転速度比または回転速度振幅比(SRi/SRo)と所定の閾値との大小関係を調べることによって、コイルばね8の、ねじりに対する耐久性、トルク伝達性、耐共振性についての異常の有無を判定することができる理由及び判定までの流れについて説明する。
(コイルばね8のねじりに対する耐久性)
始動耐久試験の規定の試験時間は、数百時間という長時間であり、その間、エンジンの始動と停止が繰り返される。そのため、コイルばね8の拡径変形が過度に繰り返され、引張力が働くコイルばね8の内周面に発生する曲げ応力の影響により、始動耐久試験の途中でコイルばね8のねじり角度の限界値が減少した場合、外輪6と内輪7が相対回転する際の、回転速度変動をコイルばね8のねじり変形により効果的に吸収しにくくなる。これにより、内輪7の回転速度振幅SRiが増加し、内輪7の回転速度振幅SRiの、外輪6の回転速度振幅SRoに対する回転速度振幅比(SRi/SRo)が増加する。以上より、始動耐久試験の途中に回転速度振幅比(SRi/SRo)が所定の閾値(第1閾値とする)よりも高いときに、プーリ構造体のコイルばね8のねじりに対する耐久性が異常であると判定することができる。これにより、始動耐久試験が完了する前に、ねじりに対する耐久性が悪いコイルばね8をいち早く検出することができる。
図4に示すように、始動耐久試験を行う。以下に各ステップについて説明する。始動耐久試験をスタートし(S10)、回転速度の検出ステップ(S11)にて外輪6及び内輪7の回転速度を検出し、回転速度振幅比(SRi/SRo)の算出ステップ(S12)にて外輪6の回転速度振幅SRoに対する内輪7の回転速度振幅SRiの比である回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出し、算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)に基づき、プーリ構造体3のコイルばね8のねじりに対する耐久性の異常の有無を、(S13)の判定ステップにて判定する。算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)が第1閾値よりも高ければ、異常が有るということで始動耐久試験を終了する。算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)が第1閾値よりも高くなければ、異常がないということで回転速度の検出ステップ(S11)に戻る。そして、始動耐久試験の規定の時間が過ぎるまで、以上のステップを繰り返す。
(コイルばね8のトルク伝達性)
始動耐久試験の規定の試験時間は、数百時間という長時間であり、その間、エンジンの始動と停止が繰り返される。そのため、コイルばね8の、クラッチ係合部の摩耗が促進され、始動耐久試験の途中で、プーリ構造体3のコイルばね8の、外輪6から内輪7へのトルク伝達性が低下する場合がある。この場合、内輪7の回転速度が減少するため、内輪7の回転速度の、外輪6の回転速度に対する回転速度比が減少する。以上より、始動耐久試験の途中に回転速度比が所定の閾値(第2閾値とする)よりも低いときに、プーリ構造体3のコイルばね8のトルク伝達性が異常であると判定することができる。これにより、始動耐久試験が完了する前に、コイルばね8のトルク伝達性の異常や劣化をいち早く検出することができる。
図5に示すように、始動耐久試験を行う。以下に各ステップについて説明する。始動耐久試験をスタートし(S20)、回転速度の検出ステップ(S21)にて外輪6及び内輪7の回転速度を検出し、回転速度比の算出ステップ(S22)にて外輪6の回転速度に対する内輪7の回転速度の比である回転速度比を算出し、算出した回転速度比に基づきプーリ構造体3のコイルばね8のトルク伝達性の異常の有無を、(S23)の判定ステップにて判定する。算出した回転速度比が第2閾値よりも低ければ、異常が有るということで始動耐久試験を終了する。算出した回転速度比が第2閾値よりも低くなければ、異常がないということで回転速度の検出ステップ(S21)に戻る。そして、始動耐久試験の規定の時間が過ぎるまで、以上のステップを繰り返す。
(コイルばね8の耐共振性)
クランク軸の回転速度が走行時よりも回転数が低いアイドル回転数で、エンジンを回転させてアイドル試験を行ったときに、エンジンの回転に伴ってコイルばね8に生じる振動がコイルばね8の固有振動数に近くなり、コイルばね8の、外輪6にも内輪7にも接していない領域が径方向に微小振動する現象の共振が発生することがある。この場合、コイルばね8の拡径変形及び縮径変形が過度に促進され、外輪6と内輪7が相対回転する際の、回転速度変動をコイルばね8のねじり変形により効果的に吸収しにくくなる。これにより、内輪7の回転速度振幅SRiが増加し、内輪7の回転速度振幅SRiの、外輪6の回転速度振幅SRoに対する回転速度振幅比(SRi/SRo)が増加する。以上より、アイドル試験の途中に回転速度振幅比(SRi/SRo)が所定の閾値(第3閾値とする)よりも高いときに、プーリ構造体3のコイルばね8の耐共振性が異常であると判定することができる。これにより、アイドル耐久試験を行わなくても、耐共振性が悪いコイルばね8をいち早く検出することができる。
図6に示すように、アイドル試験を行う。以下に各ステップについて説明する。アイドル試験をスタートし(S30)、回転速度の検出ステップ(S31)にて外輪6及び内輪7の回転速度を検出し、回転速度振幅比(SRi/SRo)の算出ステップ(S32)にて外輪6の回転速度振幅SRoに対する内輪7の回転速度振幅SRiの比である回転速度振幅比(SRi/SRo)を算出し、算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)に基づきプーリ構造体のコイルばね8の耐共振性の異常の有無を、(S33)の判定ステップにて判定する。算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)が第3閾値よりも高ければ、異常が有るということでアイドル試験を終了する。算出した回転速度振幅比(SRi/SRo)が第3閾値よりも高くなければ、異常がないということで回転速度の検出ステップ(S31)に戻る。そして、アイドル試験の規定の時間が過ぎるまで、以上のステップを繰り返す。
(実施例1)
実施例1として、上記実施形態に記載の様に、補機駆動用装置1において、ばね定数が0.4Nm/degであるコイルばね8を連結部材として用いたプーリ構造体3について、冷間状態から、スタータによりエンジンを始動させ、補機駆動用ベルト4を走行させてアイドル試験を行った。試験は、アイドル時の雰囲気温度は130℃、ベルトの初期張力は400Nで行った。また、試験は、条件1、条件2の下でそれぞれ行い、条件1、条件2の試験中は、図6のフローに示したように、逐次、コイルばね8の耐共振性の異常の有無を、所定の時間tを0.5秒として判定した。なお、条件1、2の下で行う試験は、どちらも下記のアイドル回転速度に達してから約1分間行った。
条件1:アイドル回転速度が約800rpm
条件2:アイドル回転速度が約600rpm
(実施例1の結果)
図7に本実施例1の条件1の外輪6及び内輪7の回転速度を時系列で示し、図8に本実施例1の条件2の外輪6及び内輪7の回転速度を時系列で示した。実施例1の条件1では、外輪6の回転速度振幅SRoの方が内輪7の回転速度振幅SRiよりも大きく、実施例1の条件2では、内輪7の回転速度振幅SRiの方が外輪6の回転速度振幅SRoよりも大きい。また、実施例1の条件1の外輪6の波形よりも、実施例1の条件2の外輪6の波形は、緩やかな波形となっている。
本実施例1の判定手段における第3閾値を1として、図9に結果を示した。図9に示すように、条件1では、回転速度振幅比(SRi/SRo)が1以下であり、コイルばね8の耐共振性について異常なしと判定した。条件2では、回転速度振幅比(SRi/SRo)が1よりも高くなったため、コイルばね8の耐共振性について異常ありと判定した。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同じ補機駆動装置1を使用し、ばね定数が0.3Nm/degであるコイルばね14を連結部材として用いたプーリ構造体15で、実施例1と同様に、アイドル時の雰囲気温度は130℃、ベルトの初期張力は400Nでアイドル試験を行った。試験は、実施例1と同様に、下記の条件1、条件2の下でそれぞれ行い、条件1、条件2の試験中は、図6のフローに示したように、逐次、コイルばね8の耐共振性の異常の有無を、所定の時間tを0.5秒として判定した。なお、条件1、2の下で行う試験は、どちらも下記のアイドル回転速度に達してから約1分間行った。
条件1:アイドル回転速度が約800rpm
条件2:アイドル回転速度が約600rpm
(実施例2の結果)
実施例1と同様に本実施例2の判定手段における第3閾値は1として、プーリ構造体15のコイルばね14の耐共振性の異常の有無について判定した。条件1、条件2共に、回転速度振幅比(SRi/SRo)が1以下であったため、コイルばね14の耐共振性について異常なしと判定した。
(比較例)
比較例において、従来のように、アイドル試験及びアイドル耐久試験で、プーリ構造体のコイルばねの耐共振性の異常の有無を調査した。比較例は、外輪の回転速度も内輪の回転速度も測定しない。約1分間のアイドル試験中に、異音等の、コイルばねの耐共振性の異常が確認されれば、コイルばねの耐共振性について異常とみなし、確認されなければ、アイドル耐久試験を行う。アイドル耐久試験の規定の試験時間が過ぎても異音等が確認されない場合、プーリ構造体を分解し、内部を確認する。
(比較例1)
比較例1では、実施例1、2と同じ補機駆動装置を使用し、ばね定数が0.4Nm/degであるコイルばねを連結部材として用いたプーリ構造体で、実施例1、2と同様に、アイドル時の雰囲気温度は130℃、ベルトの初期張力は400Nでアイドル試験を行った。アイドル回転速度を約500rpmとして、アイドル試験をしたところ、約1分間の規定の試験時間が過ぎても、異音等が確認されず、コイルばねの耐共振性について異常の有無が判定できなかったため、アイドル耐久試験を行った。アイドル耐久試験では、アイドル回転速度を約500~約700rpmで、800時間、エンジンを連続運転させた。
(比較例1の結果)
アイドル試験では、コイルばねの耐久性について異常の有無が判定できなかったため、アイドル耐久試験を行ったところ、アイドル耐久試験中も、異音等は確認されなかった。つまり、アイドル耐久試験の規定の試験時間中にコイルばねの耐久性について異常の有無は判定できなかった。そこで、試験終了後、プーリ構造体を、室温まで冷却してから分解し、内部の状態を目視で確認したところ、クラッチ係合部に異常摩耗および摩耗粉を確認することができた。これは、コイルばねの中領域が共振し、拡径変形の最大化が過度に繰り返されるのが長く続いたためと考えられる。
(比較例2)
比較例2は、比較例1と同じ補機駆動装置を使用し、ばね定数が0.3Nm/degであるコイルばねを連結部材として用いたプーリ構造体で、比較例1と同様に、アイドル時の雰囲気温度は130℃、ベルトの初期張力は400Nでアイドル試験を行った。試験は、比較例1と同様に、アイドル回転速度を約500rpmとして、アイドル試験をしたところ、約1分間の規定の試験時間が過ぎても、異音等が確認されず、コイルばねの耐共振性について異常の有無が判定できなかったため、アイドル耐久試験を行った。アイドル耐久試験では、アイドル回転速度を約500~約700rpmで、800時間、エンジンを連続運転させた。
(比較例2の結果)
アイドル試験では、コイルばねの耐久性について異常の有無が判定できなかったため、アイドル耐久試験を行ったところ、アイドル耐久試験中も、異音等は確認されなかった。つまり、アイドル耐久試験の規定の試験時間中にコイルばねの耐久性について異常の有無は判定できなかった。そこで、試験終了後、プーリ構造体を、室温まで冷却してから分解し、内部の状態を目視で確認したが、クラッチ係合部には異常摩耗も摩耗粉も確認することができなかった。
(実施例1と比較例1)
実施例1のアイドル試験において条件1と条件2のアイドル回転速度は、それぞれ約800rpm、約600rpmであるのに対し、比較例1のアイドル試験においてアイドル回転速度は約500rpmである。比較例1は、実施例1の条件1、2のいずれよりも、低いアイドル回転速度でアイドル試験を行っており、実施例1の条件1、2よりもエンジンの回転に伴ってコイルばね8に生じる振動がコイルばね8の固有振動数に近くなり、共振が発生しやすい。実施例1の条件2では、アイドル試験の途中でコイルばね8の耐共振性の異常を検出することができた。これに対し、実施例1の条件2より共振が発生しやすいため共振が発生すると考えられた比較例1では、アイドル試験の時点でコイルばねの耐共振性の異常を検出することができず、アイドル耐久試験の規定の試験時間の経過後、プーリ構造体を分解し、内部の状態を目視で確認して初めてコイルばねの耐共振性について異常があることが判明した。
以上より、実施例におけるプーリ構造体3のコイルばね8の耐共振性の試験方法は妥当であり、実施例の試験方法では、アイドル耐久試験を行わなくても、プーリ構造体3のコイルばね8の耐共振性についての異常をいち早く検出することができることが分かった。
(コイルばね8のばね定数)
実施例1では、コイルばね8のばね定数が0.4Nm/degである。実施例1の条件1では、コイルばね8の耐共振性について異常がないと判定されたが、条件2では、コイルばね8の耐共振性について異常があると判定された。実施例2では、コイルばね8のばね定数が0.3Nm/degである。実施例2では、条件1でも、条件2でもコイルばね8の耐共振性について異常がないと判定された。以上より、ばね定数が0.3Nm/degであるコイルばね8を用いたプーリ構造体3の方が、ばね定数が0.4Nm/degであるコイルばね8を用いたプーリ構造体3よりも、より広い範囲のアイドル回転速度に対してコイルばね8の共振が起きず、耐共振性に優れることが予想される。
比較例1では、コイルばねのばね定数が0.4Nm/degであり、アイドル耐久試験を経たものの、コイルばねの耐共振性について異常があると判明した。比較例2では、コイルばねのばね定数が0.3Nm/degであり、アイドル耐久試験を経てもコイルばねの耐共振性について異常があることを確認できなかった。比較例1、2の結果から、ばね定数が0.3Nm/degであるコイルばねを用いたプーリ構造体の方が、ばね定数が0.4Nm/degであるコイルばねを用いたプーリ構造体よりも、より広い範囲のアイドル回転速度に対してコイルばねの共振が起きず、耐共振性に優れることが裏付けられたといえる。
以上より、実施例におけるプーリ構造体3の試験方法によって、アイドル耐久試験を行わなくても、プーリ構造体3のコイルばね8が耐共振性を有するのに適当な、コイルばね8のばね定数の水準をいち早く検出することができることが分かった。
(効果)
本実施形態のプーリ構造体3の機能異常や機能劣化の有無を判定する試験方法及び試験装置では、試験途中に、検出手段で得られた外輪6及び内輪7の回転速度または回転速度振幅SRo、SRiの情報を用いて、逐次、プーリ構造体3の機能異常や機能劣化を判定する。これにより、規定の試験時間が完了する前に、プーリ構造体3の機能異常や機能劣化をいち早く検出することができる。
本実施形態において、連結部材は、外輪6と前記内輪7との間で回転トルクを伝達又は遮断するクラッチであることにより、連結部材が単純な構成である場合に比べて、連結部材の構成や、連結部材と外輪6、内輪7等の連結部材以外のプーリ構造体の構成要素との相互関係が複雑になる。例えば、連結部材を構成する部品数が多くなるため、連結部材を構成する部品同士が接触していたり、接続されていたりする箇所も多くなる。連結部材を構成する部品同士が接触する部分は摩耗したり、連結部材を構成する部品同士の接続部分では接続不良が起こったり、破損したりしやすい。よって、連結部材自体でも、問題が生じやすくなる。また、連結部材がクラッチであるからには、外輪6、内輪7等の連結部材以外のプーリ構造体3の構成要素とも、離れたり接触したりすることが考えられる。この接触のタイミングや場所がずれてしまえば連結部材がうまくクラッチとして機能しなくなる。しかし、本発明では、プーリ構造体3の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体3の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本実施形態において、クラッチは、コイルスプリング式クラッチであって、内輪7が前記外輪6に対して逆方向に相対回転すると縮径方向にねじれるコイルばね8を含むことにより、クラッチがスプラグ式クラッチである場合と比べて、クラッチと、外輪6及び/又は内輪7との接触面積は大きく、クラッチと、外輪6及び/又は内輪7との接触面圧は小さいため、プーリ構造体3における、クラッチ係合部の摩耗が進行しても異音等の兆候が生じにくく、規定の試験の途中にプーリ構造体3の機能異常や機能劣化を検出するのは難しい。しかし、本実施形態のプーリ構造体3の試験方法は、時系列に沿って、回転速度比を所定の閾値と比較することでクラッチ係合部(特に、圧接面6a)の摩耗の進行度合を判定できる。このように、本発明では、プーリ構造体3の機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体3の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本実施形態において、プーリ構造体3は、外輪6と内輪7との相対回転によってコイルばね8が拡径方向にねじれた場合に、コイルばね8の一端側の外周面が拡径方向の自己弾性復元力によって外輪6に押し付けられており、コイルばね8の他端側領域のうち少なくとも周方向一部分の内周面が内輪7から離れることにより、コイルばね8が安定してねじり変形できないという問題が生じやすくなる。このコイルばね8の不安定さによって、プーリ構造体3内にはさまざまなパターンの機能異常や機能劣化が生じうる。しかし、本発明では、プーリ構造体3の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体3の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
本実施形態において、プーリ構造体3の内輪7は、補機の駆動軸Sに接続され、補機はオルタネータ5であることにより、オルタネータ5の駆動軸Sは、他の補機用の駆動軸に比べて、慣性モーメントが大きいため、プーリ構造体3に入力されるオルタネータ5を動かすために必要な回転トルクが大きくなりやすい。このため、プーリ構造体3の、外輪6および内輪7と連結部材との摩耗が進行しやすく、プーリ構造体3の連結部材にかかる、トルク伝達性等の機能が劣化しやすい。しかし、本発明では、プーリ構造体3の機能異常や機能劣化を早期に検知することができ、原因究明を速やかに行えることから、上記構造のプーリ構造体3の試験に、本発明は最適な試験方法となる。
(変形例)
(1) 本実施形態のプーリ構造体3は、オルタネータ用プーリでなくてもよく、オルタネータ5以外の補機用のプーリ構造体として用いてもよい。また、駆動プーリ2として本実施形態のプーリ構造体3を用いてもよい。
(2) 連結部材は、コイルばね8を含むコイルスプリング式クラッチでなくてもよく、ゴム弾性体のみ、円筒ころ等の転動体のみ、スプラグを含むスプラグ式クラッチでもよい。
(3) 本実施形態のプーリ構造体3の試験装置は、エンジン始動、アイドル回転数等の、実機エンジンを備えた実際の車両の走行条件を再現するものであれば、実機エンジンを用いていなくてもよい。また、実際の車両を用いてもよい。
1 補機駆動用装置
3 プーリ構造体
4 補機駆動用ベルト
5 オルタネータ
6 外輪
7 内輪
26・27 電磁ピックアップ
36・37 FVコンバータ
41 データロガー
42 パソコン

Claims (10)

  1. 外輪と、前記外輪に対して相対回転可能に同心配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に設けられ、前記外輪と前記内輪とを連結する連結部材とを有する、プーリ構造体の機能を確認する試験方法であって、
    前記外輪の変動する回転速度及び前記内輪の変動する回転速度を、時系列に沿ってそれぞれ検出する検出ステップと、
    時系列に沿って検出された回転速度の時系列変化に基づいて、時系列に沿った前記外輪の回転速度振幅及び前記内輪の回転速度振幅をそれぞれ求め、時系列に沿った前記外輪の前記回転速度に対する前記内輪の前記回転速度の比である回転速度比、または時系列に沿った前記外輪の前記回転速度振幅に対する前記内輪の前記回転速度振幅の比である回転速度振幅比を算出する算出ステップと、
    時系列に沿った前記回転速度比または前記回転速度振幅比を所定の閾値と比較し、前記プーリ構造体の機能異常及び機能劣化の有無を判定する判定ステップと、を備えたことを特徴とするプーリ構造体の試験方法。
  2. 前記連結部材は、前記外輪と前記内輪との間で回転トルクを伝達又は遮断するクラッチであることを特徴とする請求項1に記載のプーリ構造体の試験方法。
  3. 前記クラッチは、コイルスプリング式クラッチであって、
    前記内輪が前記外輪に対して逆方向に相対回転すると縮径方向にねじれるコイルばねを含むことを特徴とする請求項2に記載のプーリ構造体の試験方法。
  4. 前記プーリ構造体は、前記外輪と前記内輪との相対回転によって前記コイルばねが拡径方向にねじれた場合に、前記コイルばねの他端側領域のうち少なくとも周方向一部分の内周面が前記内輪から離れることを特徴とする請求項3に記載のプーリ構造体の試験方法。
  5. 前記プーリ構造体の前記内輪は、補機の駆動軸に接続されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプーリ構造体の試験方法。
  6. 前記補機はオルタネータであることを特徴とする請求項5に記載のプーリ構造体の試験方法。
  7. 始動耐久試験の途中に前記回転速度振幅比が第1閾値よりも高いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねのねじりに対する耐久性が異常であると判定することを特徴とする請求項3または4に記載のプーリ構造体の試験方法。
  8. 始動耐久試験の途中に前記回転速度比が第2閾値よりも低いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねのトルク伝達性が異常であると判定することを特徴とする請求項3または4に記載のプーリ構造体の試験方法。
  9. アイドル試験の途中に前記回転速度振幅比が第3閾値よりも高いときに、前記プーリ構造体の前記コイルばねの耐共振性が異常であると判定することを特徴とする請求項3または4に記載のプーリ構造体の試験方法。
  10. 外輪と、前記外輪に対して相対回転可能に同心配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間を連結する連結部材とを有する、プーリ構造体の機能を確認する試験装置であって、
    前記外輪の変動する回転速度及び前記内輪の変動する回転速度を、時系列に沿ってそれぞれ検出する検出手段と、
    検出された前記回転速度の時系列変化に基づいて、時系列に沿った前記外輪の回転速度振幅及び前記内輪の回転速度振幅をそれぞれ求め、時系列に沿った前記外輪の前記回転速度に対する前記内輪の前記回転速度の比である回転速度比、または時系列に沿った前記外輪の前記回転速度振幅に対する前記内輪の前記回転速度振幅の比である回転速度振幅比を算出する算出手段と、
    時系列に沿った前記回転速度比または前記回転速度振幅比を所定の閾値と比較し、前記プーリ構造体の機能劣化の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とするプーリ構造体の試験装置。
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