(第1実施形態)
以下、検眼テーブル及びこの検眼テーブルを備える眼科装置の一例である自覚式の検眼装置の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る検眼装置は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の視機能の検査及び矯正が実行可能な両眼開放タイプの検眼装置である。なお、本実施形態の検眼装置では、片眼を遮蔽し、片眼ずつ検査等することも可能となっている。また、検眼装置が本実施形態の構成に限定されることはなく、本発明を片眼用の検眼装置等の様々な検眼装置、その他の眼科装置にも適用することができる。
[検眼装置100の構成]
第1実施形態に係る検眼装置100の構成を、図1~図5を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る検眼装置100の外観構成を示す模式図である。図2は、検眼装置100の制御系のブロック構成を示す図である。図3(a)は検眼ユニット10の構成の一例を示す概略図であり、図3(b)は視標表示装置2の構成の一例を示す図ある。図4は遠用検眼を行う場合の各部の配置関係を説明するための説明図であり、図5は近用検眼を行う場合の各部の配置関係を説明するための説明図である。
第1実施形態の検眼装置100は、図1に示すように、検眼装置本体(レフラクターヘッド)1と、視標表示装置2と、コントローラ3と、検眼テーブル4と、を主に備えて構成される。
なお、本明細書を通じて図1、図3等に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者S(被検眼E)から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(検眼装置本体1から見て視標表示装置2の方向、奥行き方向)をZ方向とする。
〔検眼テーブル4〕
検眼テーブル4は、検眼装置本体1、視標表示装置2及びコントローラ3等の検眼のための各種機器を載置するための机である。また、検眼テーブル4には、検眼時の姿勢を保つために被検者Sが肘や腕を載置するためにも用いられる。検眼テーブル4は、検眼装置本体1を支持し、コントローラ3や被検者Sの腕を載置する第1のテーブル5と、視標表示装置2を載置する第2のテーブル6と、を備えている。
第1のテーブル5は、図1、図4、図5に示すように、第1の天板51と、この第1の天板51を上下動させる第1の昇降機構52と、この第1の昇降機構52を支持する基板53と、基板の両端部にZ方向に延在して設けられた一対のキャスターベース54と、を備えている。一対のキャスターベース54のそれぞれの両端部には、ロック機構付きのキャスター54aが設けられている。
第1の昇降機構52は、昇降杆52aと、この昇降杆52aを上下動自在に収容する支持杆52bと、昇降杆52aを上下動させる駆動部53cと、を備えている。昇降杆52aは、第1の天板51の裏面に固定されており、第1の天板51を支持する。また、昇降杆52aは、駆動部52cの駆動力により支持杆52b内を上下動し、第1の天板51を上昇させ、下降させる。
駆動部52cは、電動アクチュエータやその制御機構等から構成される。本実施形態では、電動式の第1の昇降機構52を用いているが、この構成に限定されるものではなく、油圧式、空圧式、ネジ式、リンク式、その他の公知の昇降機構を用いることができる。また、本実施形態では、図1に示すように、昇降杆52aと、支持杆52bとを矩形状としているが、この構成に限定されるものではなく、円筒形等であってもよい。また、第1の昇降機構52を第1の天板51の中央近傍に設けているが、この構成に限定されるものではなく、第1の昇降機構52を第1の天板51の左右方向(X方向)のいずれかの端部に設けてもよいし、両端部に一対設けてもよい。この構成では、第1の天板51の下方の空間が広くなり、被検者Sの足等を配置することができ、被検者Sがより楽な姿勢で検眼することができる。
このような構成の第1の昇降機構52とすることで、被検者Sの身長や座高、被検眼Eの高さに応じて、第1の天板51の高さを微調整することができる。また、本実施形態では第1の昇降機構52は、コントローラ3からの操作信号に対応して作動するが、この構成に限定されるものではない。例えば、第1のテーブル5側に操作パネルや操作ボタン等の操作部と、この操作部からの操作を受け付ける制御部を設け、操作部を操作することで、制御部の制御の下、第1の昇降機構52を作動してもよい。
第2のテーブル6は、図4、図5に示すように、視標表示装置2を載置する第2の天板61と、この第2の天板61を上下動させる第2の昇降機構62と、第2のテーブル6を第1のテーブル5に連結固定する連結部63と、を備えている。
第2の昇降機構62は、上下方向の位置合わせを微調整する必要がなく、第2のテーブル6上の視標表示装置2を、被検眼Eに対峙する位置と、被検眼Eの視界(視線の方向)から外れる位置(第2の視標表示部と被検眼Eとの間から離脱する位置)とに配置できればよい。そのため、第2の昇降機構62を、第1の昇降機構52よりも簡易な構成のものを用いることができ、コスト等を低減できる。
本実施形態では、第2の昇降機構62として、ガススプリングを用いている。ガススプリングは、椅子やテーブル等を昇降させるために一般的に使用され、圧縮ガスを封入したピストンシリンダ62a、このピストンシリンダ62aの内部に出し入れ自在に挿入されるピストンロッド62b、操作レバー等を備えている。ピストンロッド62bの先端に、第2の天板61が固定されている。
上記ガススプリングからなる第2の昇降機構62では、第2の天板61に人間の体重を加えながら操作レバーを操作することによって、圧縮ガスが圧縮され、ピストンロッド62bが縮んで第2の天板61が下降する。これにより、第2の天板61上の視標表示装置2を、被検眼Eの視界から外れる位置に退避させることができる。一方、操作レバーを操作した状態で、ガススプリングへの押圧力を解除すると、圧縮ガスの圧力によってピストンロッドが延び、第2の天板61が上昇する。これにより、視標表示装置2を、被検眼Eと対峙する元の位置に戻すことができる。
なお、第2の昇降機構62がガススプリングに限定されるものではない。視標表示装置2の重量やサイズ、その他の条件に応じて、第1の昇降機構52と同様に電動式、油圧式、空圧式、ネジ式、リンク式、その他の昇降機構を用いることもできる。
また、第2の昇降機構62のピストンシリンダ62aは、連結部63によって第1のテーブル5の昇降杆52aに連結固定されている。連結部63は、特に限定されるものではなく、ピストンシリンダ62aと昇降杆52aとを溶接や接着した構成でもよいし、ボルトやナット等で連結した構成であってもよい。
第2の昇降機構62が連結部63によって昇降杆52aに連結固定されていることで、第1の昇降機構52の作動によって、第1のテーブル5と第2のテーブル6とを、共に上下動させることができる。さらに、第2の昇降機構62を作動することで、第1のテーブル5に対して、第2のテーブル6のみを、上下動させることができる。
〔検眼装置本体1〕
検眼装置本体1は、図1に示すように、一対の検眼ユニット10(10L,10R)と、支持機構16と、を備えている。一対の検眼ユニット10は、支持機構16によって検眼テーブル4の第1のテーブル5に取り付けられている。支持機構16は、支柱16aと、支持アーム16bと、支持部材16cと、を備えている。支柱16aは、第1のテーブル5の第1の天板51に、上下方向(Y方向)に延在して設けられ、図1に矢印で示すように、手動又は適宜の駆動部材により上下方向に伸縮自在で、かつ円周方向に回転自在となっている。支持アーム16bは、支柱16aから、横方向(斜め上方向)に延在して設けられている。この支持アーム16bの先端に支持部材16cが設けられ、この支持部材16cに検眼装置本体1が吊り下げられている。
上記支持機構16の支柱16aを円周方向へ回転させることで、検眼装置本体1を、被検眼Eと視標表示装置2との間に挿脱自在に配置できる。支持機構16は、検眼テーブル4の第1のテーブル5に、製造時に予め設けてもよいし、取付金具等を用いて、第1のテーブル5に、取り付け位置を変更自在かつ着脱自在に取り付けてもよい。
検眼装置本体1は、被検者S(図3参照)の左右の被検眼E(左眼EL,右眼ER)に対応するように、左右に一対設けられた左眼用及び右眼用の検眼光学系としての検眼ユニット10(10L,10R)を備えている。各検眼ユニット10L,10Rは、左右方向(X方向)へスライド可能に公知のスライド機構によって支持部材16cに取り付けられ、相対接近及び離反が可能となっている。以下、「左眼用及び右眼用」を、単に「左右眼用」、又は「左右の」と省略することがある。
左右眼用の検眼ユニット10L,10Rには被検眼E側及び視標表示装置2側に、各々左右眼用の検眼窓11L,11Rが設けられている。各検眼ユニット10L,10R内には、左右眼用の検眼窓11L,11Rに選択的に配置して検眼に用いる左右眼用の複数の光学部材12L,12Rが配置されている。
光学部材12L,12Rは、被検眼Eの視機能を矯正するために用いられる各種レンズ、偏光部材等からなる集合体である。各光学部材12L,12Rは、例えば、偏光フィルタ、球面レンズ、円柱レンズ、プリズムを含んでいる。複数の光学部材12L,12Rは、検眼パラメータの種別ごとに組分けされる。
光学部材12L,12Rは、例えば、図3(a)に示すように、ターレット板14L,14Rの孔hに嵌め込まれている。ターレット板14L,14Rは、駆動機構13L,13Rによって、円の中心を軸として円周回りに回転可能に構成される。このターレット板14L,14Rの回転により、複数の光学部材12L,12Rのそれぞれを検眼窓11L,11Rに配置させ、かつ、検眼窓11L,11Rから退避させることができる。駆動機構13L,13Rは、例えば、アクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力伝達機構と、等から構成される。
また、検眼装置本体1には、前述した検眼ユニット10L,10Rのスライド機構の視標表示装置2側に、Z方向に延在する近点棒17が設けられている。この近点棒17には、近用検眼用の第2の視標表示部18が、近用視検眼距離(例えば、300~400mm)の位置に吊り下げられている。近点棒17は、折り畳み可能であり、不使用時には、図1、図4に示すように、近点棒17と視標表示部18とを垂直に収納することができる。また、検眼装置本体1には、被検者S側に、被検者Sの額を当てる額当部等も設けられている。
視標表示部18には、近用検眼用の視標が表示される。この視標表示部18は、板状部材や紙に視標が印刷されたものであってもよいし、LCD等の電子表示デバイスであってもよい。また、視標表示部18は、近点棒17に沿って前後方向に移動可能であり、近用視検眼距離を任意に変更することができる。
〔視標表示装置2〕
視標表示装置2は、図1に示すように、第2のテーブル6上に載置され、第1のテーブル5に備えられた検眼装置本体1を介して、被検眼Eの前方に配置される。視標表示装置2は、図2、図3(b)に示すように、直方体形状の筺体20と、筺体20内に収容された視標呈示光学系21及び制御部22と、を主に備えて構成される。
筺体20の上部側の前面(被検眼E側)には、被検者Sが視標を視認するための窓部(ウィンドウ)20aが開口されている。この窓部20aには、ポリアクリレート樹脂(PMMA)等の透明樹脂製のフィルタ20bが設けられている。
制御部22は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM等から構成される。制御部22は、コントローラ3からの指示信号に従って、視標表示装置2の動作を制御するとともに、ディスプレイ23への視標の表示制御部、反射ミラー25の駆動機構の駆動制御部等としても機能する。
視標呈示光学系21は、本実施形態では、視標呈示光学系21は、図3(b)に示すように、ディスプレイ23(第1の視標表示部)と、レンズ24と、反射ミラー25と、を主に備えて構成され、この他にも、反射ミラー25の駆動機構等も備えている。また、検眼距離を確保すべく、他の反射ミラーや凹面ミラー等の光路折り曲げ部材をさらに備えていてもよく、視標表示装置2の小型化が可能となり、検眼装置100の更なる省スペース化を図ることができる。
ディスプレイ23は、制御部22の制御の下、その表示面(表示領域)23aに視標を表示することによって、被検眼Eに視標を呈示する。表示面23aには、視力検査視標、赤緑検査視標、乱視検査視標、両眼視機能検眼視標等の視標の画像が表示される。
ディスプレイ23は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機EL)等の電子表示デバイスによって構成される。ディスプレイ23の表示面23aは、ピクセル(画素)がアレイ状に配列されている。表示する視標に応じて、表示面23aの所定の領域に視標を表示することができる。
ディスプレイ23に表示する視標としては、検眼に用いるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ランドルト環、スネレン視標、Eチャート等であってもよいし、ひらがなやカタカナ等の文字、動物や指等の絵等を用いた視標であってもよいし、十字視標等の両眼視機能検眼用の特定の図形や風景画や風景写真等であってもよく、様々な視標を用いることができる。なお、近点棒17に吊り下げる近用検眼用の視標表示部18にも、これらの視標を表示することができる。
また、視標は、静止画であってもよいし動画であってもよい。本実施形態では、視標表示装置2が、電子表示デバイスからなるディスプレイ23を備えているため、所望の形状及び形態の視標を表示することができ、多様な検眼が可能となる。
レンズ24は、ディスプレイ23に表示された視標からの光束を屈折して、視標像(虚像)Iを、被検眼Eから遠用視検眼距離(例えば、5m)に結像する。レンズ24は、単レンズや複数のレンズで構成することができる。
反射ミラー25は、集光レンズ24を透過した光束を反射して被検眼Eの前方の遠用視検眼距離に視標像(虚像)Iを呈示する。反射ミラー25は、制御部22の制御下で、公知の駆動機構によってX軸回りに可動可能に構成されている。そのため、被検眼Eの高さに応じて、反射ミラー25の傾斜角度を調節することができ、ディスプレイ23からの光束を導いて、検眼に適した視標像Iを被検眼Eに呈示することができる。
また、本実施形態では、被検眼Eと視標表示装置2(フィルタ20b)との距離、すなわちワーキングディスタンス(WD)を150mm程度とし、近用視検眼距離よりも短くしている。これにより、奥行方向(Z方向)の長さを短くすることができ、省スペース化が可能となる。
〔コントローラ3〕
コントローラ3は、操作者としての検者が検眼装置100を操作するために用いられる。コントローラ3は、検者による操作を受け付け、この操作に応じた指示信号を検眼装置本体1や視標表示装置2へ出力する。コントローラ3と検眼装置本体1及び視標表示装置2とは、一般的な通信インターフェイス(I/F)によって、通信可能に接続される。コントローラ3は、各通信I/Fを介して、指示信号を検眼装置本体1や視標表示装置2へ出力する。
コントローラ3は、図1に示すように、検眼装置100全体の動作を制御する主制御部30と、検者からの操作指示を受け付ける受付部31と、検眼パラメータ、検査情報又は検査結果等を表示する表示部32と、から主に構成される。
受付部31として、例えば、キーボードやマウス等を備えている。また、表示部32は、LCDや有機EL等の電子表示デバイスにより構成することができる。表示部32がタッチパネル式であれば、表示部32の表示面が受付部31としても機能する。受付部31は、第1のテーブル5の上下動のための操作指示、ディスプレイ23の表示面23aに表示する各種視標の選択指示、検眼装置本体1におけるプリズム度数、球面度数等の検眼パラメータを設定するための指示、被検眼Eを左眼若しくは右眼又は両眼に設定するための指示等を受け付ける。
コントローラ3は、受付部31や表示部32を備えた検眼専用のコントローラであってもよいし、モニタを備えたノート型パーソナルコンピュータであってもよい。または、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)をコントローラ3とすることもできる。
主制御部30は、マイクロプロセッサと、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶部30aと、を有して構成される。主制御部30は、記憶部30aに、検眼装置100の各部の制御を行うためのコンピュータプログラムを予め記憶する。主制御部30は、このコンピュータプログラムを、例えばRAM上に展開して実行することにより、検眼装置100の動作を統括的に制御する。また、記憶部30aには、コンピュータプログラムの他、検眼のための各種検眼パラメータ、検眼結果などが記憶される。
主制御部30は、受付部31で受け付けた操作指示に応じて、検眼パラメータや検査情報を表示部32に表示させる。また、タッチパネル式の表示部32の場合は、操作キーなどを表示部32に表示させる。また、主制御部30は、操作指示に応じて、駆動機構13L,13Rを駆動してターレット板14L,14Rを回転させ、検眼窓11L,11Rに配置される屈折レンズの度数やプリズムの度数を変更する。
また、主制御部30は、受付部31で受け付けた第1のテーブル5の上下動の指示に応じて、第1の昇降機構52を駆動するための信号を、検眼テーブル4に送信する。さらに、主制御部30は、受付部31で受け付けた呈示対象視標の選択指示によって選択された視標をディスプレイ23の表示面23aに表示させるための指示信号を、視標表示装置2に送信する。
[検眼装置の動作]
上述のような構成の第1実施形態の検眼装置100を用いて、遠用検眼と近用検眼を実行するときの動作の一例を、図4、図5の説明図を参照しながら説明する。
本実施形態では、視標表示装置2を用いて遠用検眼を行う。まず、図4に示すように、支柱16aを適宜回転させて、視標表示装置2の窓部20aの前方に検眼装置本体1を配置する。被検者Sは、第1のテーブル5を挟んで、検眼装置本体1を介して第2のテーブル6上の視標表示装置2と対峙する。この対峙は、被検者Sが立った状態で行ってもよいし、椅子等に座った状態で行ってもよい。
被検者Sは、額当部に額を当て、第1のテーブル5の第1の天板51上に肘や腕を載置することで、検眼の姿勢を取ることができる。次いで、必要に応じてコントローラ3を操作して第1の昇降機構52を駆動して、第2のテーブル6とともに第1のテーブル5を上下動する。この操作により、立位や座位等の姿勢、身長、座高、被検眼Eの床面からの高さ等、被検者Sの状態に応じて、検眼装置本体1と視標表示装置2の上下方向の高さを調整することができる。この後、自然な姿勢での被検眼Eの高さに合わせて、支柱16aを伸縮して、検眼ユニット10の高さを調整する。被検眼Eの高さと視標表示装置2の光軸の高さズレが生じた場合は、ミラー25の角度を調整し、ミラー25を反射後の光軸と被検眼Eの視軸とを一致させる。
以上の操作により、被検眼Eの視線と、視標表示装置2の光軸とを一致させることができる。また、被検者Sが額当部に当てた額と第1の天板51に載置した腕で身体を支えることで、長時間の検査でも姿勢を維持することができ、疲労感も低減することができる。
なお、検眼の目的や種類等によっては、検眼装置本体1を用いずに、視標表示装置2を直接に視認してもよい。この場合も、第1の天板51上に腕を載置して、身体を支えることで、疲労感を覚えることなく、検眼中に適切な姿勢を維持することができる。
そして、検者がコントローラ3を操作して、検眼目的に合った遠用検眼用の視標をディスプレイ23の表示面23aに表示させる。この視標の光束は、視標呈示光学系21により結像され、図3(b)に示すように遠用視検眼距離に視標像Iが呈示される。この視標像Iを、左右の検眼ユニット10L,10Rの検眼窓11L,11Rを介して被検者Sに注視させることで、被検眼Eの遠用検眼を実行する。
また、このような遠用視の状態で、視標Oの見え方などに応じて、コントローラ3を操作してターレット板14L,14Rを回転させて、光学部材12L,12Rの適宜のレンズやプリズムを検眼窓11L,11Rに配置していくことにより、遠用時の屈折異常や斜位等の矯正を行うことができる。
一方、近用検眼を行う場合には、検眼装置本体1に設けた視標表示部18を使用するが、前述したように、被検眼Eと視標表示装置2とのWDを短く設定しているため、近用視検眼距離に視標表示部18を配置しようとすると、視標表示装置2に突き当たったり、視標表示装置2の背後に配置されたりする場合がある。しかしながら、本実施形態では、視標表示装置2を、被検眼Eと対峙しない位置、すなわち検眼の邪魔にならない位置に退避させることができ、このような不具合を解消することができる。
具体的には、検者が第2の昇降機構62の操作レバーを操作しつつ、第2のテーブル6を下方に押圧することで、ピストンシリンダ62aを押し下げ、第2のテーブル6を下降させる。この操作により、図5に示すように、被検眼Eの視界から外れる位置に視標表示装置2を退避させることができ、視標表示装置2の上方に視標表示部18を配置可能な空間を確保することができる。
そして、図5に示すように、近点棒17を下げてZ方向に延在させることで、視標表示装置2に妨げられることなく、所望の近用視検眼距離に視標表示部18を配置することができる。また、第2のテーブル6のみ下降し、第1のテーブル5は下降していないため、被検眼Eの視線が検眼窓11からずれることがない。また、被検者Sは引き続き第1の天板51上に腕等を載置して、検眼に適切な姿勢を維持することができる。
この近用視検眼距離に配置された視標表示部18の視標を、左右の検眼ユニット10L,10Rの検眼窓11L,11Rを介して被検者Sに注視させることで、被検眼Eの近用検眼を実行する。これにより、加齢等による被検眼Eの調節力の変化等を検査することができる。この場合も、コントローラ3を操作して、見え方などに応じて、ターレット板14L,14Rを回転させて、光学部材12L,12Rの適宜のレンズやプリズムを検眼窓11L,11Rに配置していくことにより、近用視時の調節の状態や斜位等の矯正を行うことができる。
以下、本発明の作用効果を説明する。上記第1実施形態の検眼テーブル4は、検眼に用いる各種機器が載置される検眼テーブル4であって、第1の天板51及び第1の天板51を被検者Sの姿勢に対応させて上下方向に移動させる第1の昇降機構52を有する第1のテーブル5と、第2の天板61及び第2の天板61を上下方向に移動させる第2の昇降機構62を有する第2のテーブル6と、を備えている。第2のテーブル6は、第1のテーブル5とともに上下方向に移動自在で、かつ第1のテーブル5に対して独立に上下方向に移動自在に第1のテーブル5に設けられている。第2のテーブル6には、第1のテーブル5を挟んで被検眼Eに対して所定の検眼距離で視標を呈示する視標表示装置2が載置されている。視標表示装置2は、第2のテーブル6の上下方向の移動により、被検眼Eと対峙する位置への配置と退避とが自在に構成されている。
また、第1実施形態に係る眼科装置としての検眼装置100は、上記のような検眼テーブル4と、検眼テーブル4の第2のテーブル6に載置された視標表示装置2と、を備えている。
以上の構成によれば、視標表示装置2を、容易に被検眼Eとの対峙位置に配置したり、対峙位置から退避させたりすることができる。そのため、例えば、視標表示装置2を用いて所定の検眼距離(遠用視検眼距離)での検眼を行う際には、被検者Sの姿勢、身長、座高、目線の高さ等、被検者Sの状態に対応させて、第1のテーブル5とともに視標表示装置2が載置された第2のテーブル6を上下方向に移動させて高さ調整を行う。これにより、被検眼Eが視標表示装置2により呈示された視標を視認することができ、所定の検眼距離での検眼が可能となる。このとき、第1のテーブル5には、検眼に必要な機器(例えば、検眼装置本体1、検眼レンズセット、コントローラ3等)を載置することで検者の操作が容易となり、被検者Sの腕等を載置することで、被検者Sが検眼の姿勢を維持し易くなる。
これに対して、例えば、第2の視標表示部18を用いて異なる検眼距離(近用視検眼距離)で検眼を行う際には、第2のテーブル6のみを上下方向に移動させて、被検眼Eと対峙しない位置に視標表示装置2を退避させる。これにより、被検眼Eの視線方向には、視標表示装置2が配置されない空間が現れる。この空間を介して、近用視検眼距離に配置された第2の視標表示部18の視標を視認することで、近用検眼を適切に行うことができる。また、第1のテーブル5は上下動しないため、被検者Sが遠用検眼と近用検眼とで姿勢等を変える必要がなく、適切な検眼の姿勢を維持することができる。
したがって、視標表示装置2を被検眼Eへの対峙位置と退避位置とに、容易に移動させることができる検眼テーブル4及び検眼装置100を提供できる。しかも、第2のテーブル6を上下動させて視標表示装置2を退避させる構成であるため、前後方向及び左右方向にスペースを確保する必要がなく、省スペース化を図ることが可能となる。その結果、被検眼Eに対して異なる検眼距離での視標の呈示が可能であり、この検眼距離の切替えを、視標の視認を妨げることなく簡易な構成で容易に行うことができる。また、各々視認に適した解像度での視標の呈示も可能となる。また、検眼距離の切替えに応じて被検者Sが姿勢を変える必要がなく、自然な姿勢を維持でき、被検者Sの負担も軽減できる。また、被検眼Eとの対峙位置から視標表示装置2を退避させることで、被検眼Eの前方から当該被検眼Eの状態等を、容易に確認することも可能となる。
また、視標表示装置2自体に、遠用検眼と近用検眼との切り替えのための光学部材や機構を備える必要がなく、視標表示装置2の構成や操作が簡易となる。よって、視標表示装置2及び検眼装置100のコンパクト化が可能となり、より効果的に省スペース化を図ることができる。
また、第1実施形態において、第1の昇降機構52は被検者S及び被検眼Eの状態に応じて、第1のテーブル5を所望の高さに配置自在な構成(例えば、電動アクチュエータ)である。これに対して、第2の昇降機構62は、少なくとも第2のテーブル6を、被検眼Eへの対峙位置と退避位置とに段階的に配置する構成(例えば、ガススプリング)である。この構成とすれば、第1の昇降機構52で、被検者S及び被検眼Eの状態に応じて第1、第2のテーブル5,6及び視標表示装置2を所望の高さに容易に上下動できるとともに、高さの微調整も可能となる。また、第2の昇降機構62を、ガススプリング等で簡易に構成することができ、低コスト化や軽量化を図ることができる。
また、第1実施形態では、視標表示装置2とは異なる第2の検眼距離で被検眼Eに視標を呈示する第2の視標表示部18を備えている。この第2の視標表示部18は、第2の昇降機構62の駆動により第2のテーブル6を上下動して、視標表示装置2を被検眼Eと対峙する位置から退避させた空間内であって、被検眼Eと対峙する位置に配置される構成である。この構成により、視標表示装置2に妨げられることなく、空間内に第2の視標表示部18を配置し、第2の視標表示部18を視認することができ、第2の検眼距離での検眼を適切に行うことができる。
また、第1実施形態では、検眼距離が遠用視検眼距離であり、第2の検眼距離が近用視検眼距離であり、被検眼Eから視標表示装置2までの距離が、近用視検眼距離よりも短くなっている。第1実施形態では、被検眼Eから視標表示装置2までの距離(WD)を短くしているため、より効果的な省スペース化が可能となる。この構成であっても、第2のテーブル6とともに視標表示装置2を下降させることで、第2の視標表示部18を近用視検眼距離に支障なく配置し、被検眼Eに視認させることができる。そのため、近用視検眼を適切に実行することができる。
また、第1実施形態では、第1のテーブル5には、被検眼Eの視機能を矯正するための光学部材12を有する検眼光学系(検眼装置本体1)が設けられている。この構成とすることで、視標表示装置2で呈示された視標の見え方に応じて、光学部材12により被検眼Eの視機能を矯正することができる。この場合、第1のテーブル5を上下動することで、被検眼Eの視軸と検眼光学系の光軸と視標表示装置2の光軸とを一致させることができ、視標表示装置2を用いた所定の検眼距離での検眼を適切に行うことができる。また、第2のテーブル6を下降させて被検眼Eの視界及び検眼光学系の光軸から視標表示装置2を退避させることで、視標表示装置2を用いずに検眼等を行うことができる。
また、検眼を適切に行うには、検眼装置本体1の左右の検眼窓11の中央に左右の被検眼Eの瞳孔が位置していることが望ましく、被検眼Eの高さ、眼福、顔の傾きなどによっても、各被検眼Eと各検眼窓11との位置関係が適切であるかを確認する必要がある。この位置関係の確認及び位置の調整、更には検眼装置本体1と被検眼Eの前後方向(Z方向)の距離の確認及び距離調整は、被検者Sの正面側つまり視標表示装置2側から行う。しかしながら、検眼装置本体1と視標表示装置2とが近接配置されている場合は、検者は被検者Sの正面側に立って確認することは困難である。この場合も、被検者Sの眼前から視標表示装置2を退避することができるので、上述のような確認や調整がし易くなる。
以上、本発明の眼科装置を実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、上記第1実施形態では、視標表示装置2を用いて遠用検眼を行い、視標表示装置2を被検眼Eの視界から外れる位置に退避させた状態で近点棒17に吊り下げた視標表示部18を用いて近用検眼を行っているが、この構成に限定されるものではない。他の異なる実施形態として、例えば、第1実施形態の視標表示装置2に代えて、近用検眼用の視標表示装置を用いることができる。
この構成では、近用検眼を行う際には、第2のテーブル6を上昇させ、近用検眼用の視標表示装置と被検眼Eとを対峙させる。一方、遠用検眼を行うため、被検眼Eから遠用視検眼距離に遠用検眼用の視標表示部を配置する。この場合、被検眼Eと遠用検眼用の視標表示部との間には視標表示装置が配置され、視標の視認の妨げとなることがある。そこで、第2のテーブル6を下降させて、視標表示装置を被検眼Eと引用検眼用の視標表示部との間から退避させる。これにより、視標表示装置に妨げられることなく、遠用検眼用の視標を注視することができ、遠用検眼を適切に行うことができる。
以上の構成によっても、第2のテーブル6によって視標表示装置を上下動させることで、近用検眼と遠用検眼とを容易に切り替えることができるとともに、検眼装置の奥行方向(Z方向)の長さを短くすることができ、省スペース化や設置の自由度を向上させることができる。
また、検眼装置本体1が、上記第1実施形態の構成に限定されるものではなく、レフラクターヘッド(検眼ユニット10)を有する検眼装置本体1に代えて、検眼時に一般的に使用されるメガネ型の検眼試験枠を検眼装置本体として用いてもよい。この場合、レンズセットやクロスシリンダーのセット等の機器を、第1のテーブル5に載置することで、検査が行い易くなる。また、近用検眼用の視標表示部18は、例えば支持部材等によって被検眼Eの前方に挿脱自在に第1のテーブル5に取り付ける。
そして、視標表示装置2を用いて遠用視検眼距離での検眼を行う際には、被検者Sは第1のテーブル5に腕等を載置して、身体を支えることで、検眼に適した姿勢を維持することができる。そして、検眼試験枠を介して視標表示装置2により呈示される視標像Iを視認することで、遠用検眼を適切に行うことができる。次に、第2のテーブル6のみを下降させて、視標表示装置2を被検眼Eの視界から外れる位置に退避させることで、視標表示装置2に妨げられることなく、視標表示部18を近用視検眼距離に配置することができ、近用検眼を適切に行うことができる。
また、眼科装置が、検眼テーブル4と、検眼装置本体1と、視標表示装置2とを有する検眼装置100に限定されることはなく、例えば、眼科装置が、検眼テーブル4と、第2のテーブル6に載置された視標表示部とを備えた視標表示装置等であってもよい。この構成でも、第2のテーブル6の上下動によって、視標表示部を用いた検眼と、視標表示部とは異なる検眼距離に配置した第2の視標表示部とを用いた検眼とが可能である。よって、検眼距離の切替えを、視標の視認を妨げることなく簡易な構成で容易に行うことができ、しかも省スペース化を図ることが可能な視標表示装置を提供できる。
また、上記実施形態等では、第2のテーブル6を下降させることで、視標表示装置2を退避させているが、この構成に限定されることはない。例えば、第2の昇降機構62を、第2の天板61の左右の端部側に設け、第2のテーブル6を上昇させることで、視標表示装置2を退避させる構成であってもよい。この構成でも、視標表示装置2が上下方向に移動するので、奥行方向や左右方向のスペースを広く確保する必要がなくなり、省スペース化が可能となる。