(第1実施形態)
以下、本発明の眼科装置の第1実施形態を説明する。まず、第1実施形態に係る眼科装置10の全体構成を、図1~図4を参照しながら説明する。第1実施形態に係る眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、両眼開放タイプに限定されるものではなく、片眼ずつ特性測定する眼科装置にも本発明を適用することができる。
[眼科装置の全体構成]
本実施の形態の眼科装置10は、図1に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持部としてのアーム14と、測定ユニット20とを備えている。この眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、測定ユニット20に設けられた額当部15に額を当てた状態で被検眼の特性の測定を行う。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ユニット20の奥行き方向)をZ方向とする。
検眼用テーブル12は、後述する検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部からY方向に起立しており、上部にアーム14が設けられている。アーム14は、支柱13に取り付けられ、検眼用テーブル12の上方で一対の駆動機構22を介して一対の測定ヘッド23を吊り下げ支持するものである。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能となっている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向及びZ方向に移動可能となっていてもよい。このアーム14の先端に、駆動機構22を介して一対の測定ヘッド23を有する測定ユニット20が設けられている。
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部26が、制御ボックス26bに収納されて設けられている。なお、制御部26には、電源ケーブル17aを介して商用電源から電力供給がなされる。
[測定ユニット]
測定ユニット20は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定の少なくとも一方を行う。なお、自覚検査では、被検者に視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚測定では、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(特性)を測定する。この他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚測定には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
また、この測定ユニット20は、図2に示すように、制御/電源ケーブル17bを介して制御部26に接続されており、この制御部26を経由して電力供給がなされる。また、測定ユニット20と制御部26との間の情報の送受信も、この制御/電源ケーブル17bを介して行われる。
測定ユニット20は、図2に示すように、取付ベース部21と、この取付ベース部21に設けられた左眼用駆動機構22L及び右眼用駆動機構22Rと、左眼用駆動機構22Lに支持された左眼測定ヘッド23Lと、右眼用駆動機構22Rに支持された右眼測定ヘッド23Rと、を備えている。
左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。また、左眼測定ヘッド23Lに対応する左眼用駆動機構22Lの各駆動部の構成と、右眼測定ヘッド23Rに対応する右眼用駆動機構22Rの各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。以下、個別に述べる時を除くと、単に測定ヘッド23、駆動機構22ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
取付ベース部21は、アーム14の先端に固定され、X方向に延在されると共に、一方の端部に左眼用駆動機構22Lが吊り下げられ、他方の端部に右眼用駆動機構22Rが吊り下げられている。また、この取付ベース部21の中央部には、額当部15が吊り下げられている。
左眼用駆動機構22Lは、制御部26からの制御指令に基づいて、左眼測定ヘッド23LのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び左眼ELの眼球回旋軸OL(図2参照)を中心にした向きを変更する。この左眼用駆動機構22Lは、図2に示すように、左鉛直駆動部22aと、左水平駆動部22bと、左回旋駆動部22cと、を有している。これらの各駆動部22a~22cは、取付ベース部21と左眼測定ヘッド23Lとの間に、上方側から左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b、左回旋駆動部22cの順に配置されている。
左鉛直駆動部22aは、取付ベース部21に対して左水平駆動部22bをY方向に移動させる。左水平駆動部22bは、左鉛直駆動部22aに対して左回旋駆動部22cをX方向及びZ方向に移動させる。左回旋駆動部22cは、左水平駆動部22bに対して左眼測定ヘッド23Lを左眼ELの眼球回旋軸OLを中心に回転させる。
右眼用駆動機構22Rは、制御部26からの制御指令に基づいて、右眼測定ヘッド23RのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び右眼ERの眼球回旋軸OR(図2参照)を中心にした向きを変更する。この右眼用駆動機構22Rは、図2に示すように、右鉛直駆動部22dと、右水平駆動部22eと、右回旋駆動部22fと、を有している。これらの各駆動部22d~22fは、取付ベース部21と右眼測定ヘッド23Rとの間に、上方側から右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22e、右回旋駆動部22fの順に配置されている。
右鉛直駆動部22dは、取付ベース部21に対して右水平駆動部22eをY方向に移動させる。右水平駆動部22eは、右鉛直駆動部22dに対して右回旋駆動部22fをX方向及びZ方向に移動させる。右回旋駆動部22fは、右水平駆動部22eに対して右眼測定ヘッド23Rを右眼ERの眼球回旋軸ORを中心に回転させる。
ここで、左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b、右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22eは、いずれもパルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。なお、左水平駆動部22b及び右水平駆動部22eは、X方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けてもよく、構成を簡易にできるとともに水平方向の移動の制御を容易なものとすることができる。
また、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fも、パルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。ここで、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fは、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構を、眼球回旋軸OL,ORを中心位置とする円弧状の案内溝に沿って移動させることで、左眼ELの眼球回旋軸OL,右眼ERの眼球回旋軸ORを中心にそれぞれ左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを回転させることができる。
なお、左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fは、自らが有する回転軸線回りに左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを回転可能に取り付けるものでもよい。
左回旋駆動部22c及び右回旋駆動部22fによって、左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rとを所望の方向に回旋させることで、被検眼を開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりすることができる。これにより、眼科装置10では、開散運動及び輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼の各種特性を測定することができる。
左眼測定ヘッド23Lは、図2、図3に示すように、左回旋駆動部22cに固定された左ハウジング23aに内蔵された左眼用測定光学系24Lと、対物レンズ31Rと、左ハウジング23aの外側面に設けられた左眼用偏向部材25Lとを有している。さらに、この左眼用偏向部材25Lに近接して、左ハウジング23a内には、左眼用測定光学系24Lの光軸を挟んで前後(Z方向)に、撮影部としての2台のカメラ(ステレオカメラ)40L,41Lが設けられている。この左眼測定ヘッド23Lでは、左眼用測定光学系24Lからの出射光を、左眼用偏向部材25Lを介して屈曲して被検者の左眼ELに照射し、左眼特性を測定する(図3参照)。また、各カメラ40L,41Lは、左眼用偏向部材25Lを介して屈曲して入射する被検者の左眼ELの前眼部像(より具体的には、視軸に交差する斜め横方向から撮影された前眼部像)を取得する。
また、右眼測定ヘッド23Rは、図2、図3に示すように、右回旋駆動部22fに固定された右ハウジング23bに内蔵された右眼用測定光学系24Rと、対物レンズ31Rと、右ハウジング23bの外側面に設けられた右眼用偏向部材25Rと、を有している。さらに、この右眼用偏向部材25Rに近接して、右ハウジング23b内には、右眼用測定光学系24Rの光軸を挟んで前後(Z方向)に、2台のカメラ(撮影部)40R,41Rが設けられている。この右眼測定ヘッド23Rでは、右眼用測定光学系24Rからの出射光を、右眼用偏向部材25Rを介して屈曲して被検者の右眼ERに照射し、右眼特性を測定する(図3参照)。また、各カメラ40R,41Rは、右眼用偏向部材25Rを介して屈曲して入射する被検者の右眼ERの前眼部像を取得する。
左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rは、それぞれ提示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切換え配置しつつ被検眼の適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独又は複数組み合わされて構成されている。
[測定光学系]
以下、右眼用測定光学系24Rの構成の一例を、図3を参照して説明する。図3は本実施の形態の眼科装置10の左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rの概略構成を示す図である。なお、左眼用測定光学系24Lの構成は右眼用測定光学系24Rと同一であるので、その説明は省略することとし、以下では右眼用測定光学系24Rについてのみ説明する。
右眼用測定光学系24Rは、被検眼Eの特性を測定するための構成を備える。右眼用測定光学系24Rは、眼科装置10が提供する機能(測定機能、撮影機能等)に応じた構成を備える。例えば、右眼用測定光学系24Rには、図3に示すように、対物レンズ31R及び右眼用偏向部材25Rを介して被検眼Eに視標を投影したり、対物レンズ31R及び右眼用偏向部材25Rを介して被検眼Eに対して測定光を投影したりするための投影光学系と、反射光を受光する受光光学系32Rと、アライメント光学系33Rとを備え、このほかにも光源、光学素子(光学部材、光学デバイス)、アクチュエータ、機構、回路、表示デバイス、受光素子、イメージセンサなどが設けられている。受光光学系32Rでは、被検眼E(右眼ER)における右眼用測定光学系24Rの光軸に沿った前眼部像E′(ER′、図9参照)が取得される。
右眼用測定光学系24Rは、例えば、被検眼Eの眼屈折力を他覚的に測定する機能を有する場合、公知のレフラクトメータの光学系が配置される。また、右眼用測定光学系24Rは、検査に付随する機能を提供するための構成を備えていてよい。例えば、被検眼Eを固視又は雲霧させるための視標を呈示する固視光学系が設けられていてよい。
[アライメント光学系]
アライメント光学系33Rは、光源と、投光レンズとを含んでおり、光束を被検眼Eに投影する。アライメント光学系33Rに含まれる光源は、対物レンズ31Rの光軸に沿って被検眼Eの角膜に平行光束を投影する。それにより、アライメントのための指標が被検眼Eの角膜に投影される。この指標は、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)として検出される。指標を用いたアライメントは、右眼用測定光学系24Rの光軸方向における光軸方向アライメントを少なくとも含む。指標を用いたアライメントは、X方向及びY方向におけるXYアライメントを含んでもよい。
なお、本実施形態では右眼用測定光学系24Rの光軸は、右眼用偏向部材25Rによって折り曲げられており、右眼用偏向部材25Rに対する鏡像の位置では、右眼用測定光学系24Rの光軸がZ軸と略一致するように構成されている。このため、右眼用測定光学系24Rの光軸方向におけるアライメントは、Z方向へのアライメントに相当する。以下の説明では、右眼用測定光学系24Rの光軸方向におけるアライメントをZアライメントという。
Zアライメントは、カメラ40R,41Rにより実質的に同時に得られる2以上の撮影画像を解析することによって実行される。XYアライメントは、カメラ40R,41Rにより得られた2以上の撮影画像を解析することによって実行される。
XYアライメントは、2以上の撮影画像に描出されたプルキンエ像(指標像)のXY方向における位置に基づき実行される。XYアライメントは、アライメントのズレの許容範囲(アライメントマーク)内に指標像を誘導するように右眼測定ヘッド23Rを手動又は自動で移動させることにより実行される。
マニュアルアライメント(手動)の場合、制御部26は、2以上の撮影画像とアライメントマークとを表示部30に表示させる。検者は、表示部30を操作して駆動機構22により右眼用測定光学系24R(測定ヘッド23R)を移動させ、アライメントのズレの許容範囲(アライメントマーク)内に指標像を移動させる。
オートアライメント(自動)の場合、制御部26は、アライメントマークに対する指標像の変位を算出する。制御部26は、算出された変位をキャンセルするように右眼用測定光学系24R(測定ヘッド23R)を移動させる。
[カメラ]
2台のカメラ40R,41Rは、右眼用測定光学系24Rにおいて、相互に異なる箇所に取り付けられる。各カメラ40R,41Rカメラは、例えば、所定のフレームレートで動画撮影を行うビデオカメラである。各カメラ40R,41Rは、右眼用偏向部材25Rによる反射光を受光して被検眼Eの前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する。また、各カメラ40R,41Rはそれぞれ右眼用測定光学系24Rの光路から外れた位置に配置されている。
なお、本実施形態では、各カメラ40R,41Rは前述したように、右眼用測定光学系24Rの光軸を挟んで前後(Z方向)に設けられているが、右眼用測定光学系24Rの光路よりも下方(-Y側)に設けてもよい。これにより、被検眼Eの前眼部(例えば、角膜)に投影された光束(指標)の反射光が睫毛や瞼にケラレにくくなる。
また、本実施形態では、2台のカメラ41R,41Rを備えているが、カメラの個数及び設置箇所は、本実施形態の例に限定されるものではない。また、2以上のカメラのうちの1つが、右眼用測定光学系24Rの中に配置されていてもよい。また、2以上のカメラのうちの1つが右眼用測定光学系24Rと同軸に配置されていてもよい。
ここで、「実質的に同時」とは、2以上のカメラ40R,41Rによる撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを意味する。2以上のカメラ40R,41Rにより被検眼Eの前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影することで、被検眼Eが同じ位置(向き)にあるときの2以上の撮影画像を取得することが可能になる。
また、カメラ40R,41Rによる撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよいが、本実施形態では動画撮影を行う場合について説明する。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、カメラ40R,41Rにより「実質的に同時」に被検眼Eの前眼部を撮影することができる。一方、静止画撮影の場合、カメラ40R,41Rに含まれる各カメラの撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、カメラ40R,41Rにより「実質的に同時」に被検眼Eの前眼部を撮影することができる。
一方のカメラ40Rでは、所定の方向から、被検眼E(右眼ER)の前眼部を撮影して第1の前眼部画像H1を取得する。他方のカメラ41Rでは、一方のカメラ40Rとは異なる方向から、被検眼E(右眼ER)の前眼部を撮影して第2の前眼部画像H2を取得する(図5参照)。取得された第1、第2の前眼部画像H1,H2は、画像信号として制御部26へ送られる。
[制御部]
制御部26は、眼科装置10の各部を統括的に制御する。制御部26には、図6に示すように、上記した左眼用測定光学系24Lと、右眼用測定光学系24Rと、左眼用駆動機構22Lの左鉛直駆動部22a、左水平駆動部22b及び左回旋駆動部22cと、右眼用駆動機構22Rの右鉛直駆動部22d、右水平駆動部22e及び右回旋駆動部22fと、アーム駆動機構16と、に加えて、カメラ40L,41Lと、カメラ40R,41Lと、表示部30を有する検者用コントローラ(第一の入力部)27と、被検者用コントローラ(第二の入力部)28と、記憶部29と、が接続されている。
検者用コントローラ27は、検者が眼科装置10を操作するために用いられる。検者用コントローラ27と制御部26とは、近距離無線通信によって、互いに通信可能に接続されているが、有線によって接続されていてもよい。
本実施の形態では、検者用コントローラ27として、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)を用いている。これにより、検者が手に持って操作することができ、被検者や眼科装置10に対して、いずれの位置からでも操作することができるため、測定時の検者の自由度を高めることができる。なお、検者用コントローラ27を検眼用テーブル12に置いて操作することもできる。また、検者用コントローラ27が携帯端末に限定されることもなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等であってもよい。
検者用コントローラ27は、タッチパネルディスプレイからなる表示部30を備えている。この表示部30は、画像等が表示される表示面30a(図4、図9等参照)上に重畳して配置されたタッチパネル式の入力部30bを備えている。検者は、被検眼の特性を測定する際に、この入力部30bからアライメントの指示や測定の指示を入力する。表示面30aには、受光光学系32で受光した画像信号に基づく前眼部像EL′,ER′や、入力部30bとしての操作画面50(図8等参照)等が表示される。
被検者用コントローラ28は、被検眼Eの各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。被検者用コントローラ28は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備えている。被検者用コントローラ28は、近距離無線通信又は有線の通信を介して制御部26と接続されている。
制御部26は、接続された記憶部29又は内蔵する内部メモリ26aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。本実施形態では、内部メモリ26aはRAM等で構成され、記憶部29は、ROMやEEPROM等で構成される。
制御部26は、2つのカメラ40,41から取得した第1の前眼部画像H1と第2の前眼部画像H2を取得する。図5(a)に、取得された第1の前眼部画像H1と第2の前眼部画像H2のイメージ図を示す。この図5(a)の第1の前眼部画像H1のフレーム内の左下の領域には第1の前眼部Ea1が表示されている。また、第2の前眼部画像H2のフレーム内の右下の領域には第2の前眼部Ea2が表示されている。
制御部26は、取得した第1、第2の前眼部画像H1,H2を解析して被検眼Eの前眼部の特徴点(特徴部位)を特定し、この特徴点に相当する第1、第2の前眼部画像H1,H2上での2次元位置情報(特徴位置)を取得する。制御部26は取得した特定位置及びカメラ40,41の距離に基づいて、特徴部位の3次元位置情報を算出し、この3次元位置情報に基づいてアライメント情報を算出し、駆動機構22を制御して被検眼Eに対する測定光学系24の位置合わせ(アライメント)を行う。
なお、前眼部上の特徴点は、被検眼Eの瞳孔中心、前眼部の角膜に投影された指標光束の角膜反射像(プルキンエ像)などを用いることができる。
ところで、カメラ40,41による被検眼Eの撮影は、眼科の診察室や眼鏡店などで照明光等が点灯した比較的明るい環境下で行われる。そのため、撮影画像の光量が上がって瞳孔等の輝度が変化し、瞳孔を特定しにくくなることがある。また、縮瞳などによっても瞳孔を特定しにくくなる。また、固視ができていないときや瞬きしたときに撮影されたり、眼瞼下垂があったりする場合は、まぶたや被検眼の周囲の肌で光が反射し、それらが特徴点として検出されることもある。また、両眼視の場合、両眼視ができていない、抑制がある、頭部の位置に傾きがある場合なども、左眼EL、右眼ERのいずれか一方は瞳孔が特定できたが、他方は特定できないという状況になることもある。
また、被検眼Eの奥行方向(Z方向)まで幅広く撮影できるように、画角の広いカメラ40,41を用いているため、撮影画像に背景までが写り込むことがある。この場合は、背景画像に黒っぽく丸い物体が存在する場合、これらが瞳孔として特定される可能性もある。図5(b)には、他方のカメラ41で取得した第2の前眼部画像H2中で、前眼部Ea2の瞳孔中心ではなく、まぶたが特徴部位として特定されて、その中心の位置座標(x2’,y2’)が取得された状態を示している。
このように、被検眼E以外の部位を特徴点と特定した場合、その特徴位置に基づいて3次元位置情報が算出され、XYZ方向への移動量が算出されるため、アライメントが適切に行われなくなったり、被検者に測定ヘッド23が接触したりするおそれがある。
このような状態を回避すべく、本実施形態では、制御部26は、第1、第2の前眼部画像H1,H2に基づいての特定した特徴位置を比較して、特徴点、つまり被検眼Eの特定が適切に行われたか否かを判定する。適切と判定した場合は、アライメントを続行する。これに対して、不適切と判定した場合は、制御部26は、アライメントを中断するなどのエラー処理を行う。
上述のような構成の本実施の形態の眼科装置10を用いて、測定光学系24(測定ヘッド23)のXYZ方向のアライメントを実行するとき動作の一例を、図7のフローチャート、図5のイメージ図及び図9の画面例を参照しながら説明する。
アライメントを実行するに際して、まず、準備作業として眼科装置10を電源オンして起動させるとともに、検者用コントローラ27のブラウザ又はアプリを立ち上げ、眼科装置10の操作画面50を表示面30aに表示させる(図9参照)。この操作画面50が、眼科装置10を操作するための入力部30bとして機能する。
次いで、被検者を椅子等に座らせて、眼科装置10と対峙させ、測定ユニット20の額当部15に額を当てさせる。すると、左右の測定光学系24に設けられた受光光学系32によって左眼EL及び右眼ERの前眼部の撮影が開始される。受光光学系32から出力される左眼EL及び右眼ERの前眼部像(正面像)EL′,ER′は、制御部26によって、図9に示すように、操作画面50の前眼部像表示領域51L,51Rに表示される。
この前眼部像EL′,ER′の撮影及び表示タイミングは、眼科装置10を起動したタイミングで実行するように構成してもよいし、被検者が額当部15に額を当てたことをセンサ等によって検知したタイミングで実行するように構成してもよい。または、検者が操作画面50から撮影指示を与えたタイミングで実行するように構成してもよい。
なお、前眼部像表示領域51L,51Rを観察して、前眼部像EL′,ER′の位置が大きくずれていたり、写っていなかったりした場合には、操作画面50の上下動ボタン53を操作して、アーム14を上下動し、被検眼Eに対する測定ヘッド23の高さを概略調整することもできる。概略調整とは、厳密ではなく大まかに調整することをいう。
以上の準備作業が完了したら、検者は操作画面50の計測開始ボタン52をタッチする。この開始指示を制御部26が受付けることで、アライメントが開始される。なお、以下の処理は、左眼EL、右眼ERに対して、それぞれ実行される。まず、制御部26は、アライメント光学系33を制御して、被検眼Eの角膜に平行光束を投影する。それにより、アライメントのための指標が被検眼Eの角膜に投影される。
そして、制御部26の制御の下、カメラ40,41が、被検眼Eの前眼部を異なる方向から撮影して、撮影画像(第1の前眼部画像H1及び第2の前眼部画像H2)を取得する(ステップS1)。撮影画像(動画像)は、逐次制御部26に送られる。制御部26は、撮影画像の歪みを、記憶部29に記憶されている収差情報に基づいて補正する。この補正処理は、例えば歪曲収差を補正するための補正係数に基づく公知の画像処理技術を用いて行われる。
次いで、ステップS2では、制御部26は、歪みが補正された第1の前眼部画像H1及び第2の前眼部画像H2を画像処理によって解析し、特徴点の特徴位置、本実施例では前眼部の瞳孔中心に相当する位置を特定する。制御部26は、撮影画像(前眼部像)の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
次に、制御部26は、瞳孔領域の中心位置を特定し、図5(a)に示すように、第1、第2の前眼部画像H1,H2上での瞳孔中心の位置座標(x1,y1),(x2,y2)を求める。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(輪郭の近似円又は近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。
なお、他の特徴部位に対応する特徴位置を特定する場合であっても、上記と同様に撮影画像の画素値の分布に基づいて当該特徴位置を特定することが可能である。
次に、ステップS3で、制御部26は、第1の前眼部画像H1の瞳孔中心の位置座標と、第2の前眼部画像H2の瞳孔中心の位置座標を差分して、視差値を算出する。この視差値は、例えば「x1-x2」、「y1-y2」の計算式により算出する。
そして、ステップS4で、算出された視差値が閾値以下か否かを判定する。2つのカメラ40,41で撮影された第1、第2の前眼部画像H1,H2では、瞳孔はある程度決まった位置に映し出される。そのため、瞳孔の位置が適切に特定されていれば、視差値はそれほど大きくはない。よって、視差値に基づいて、瞳孔の位置が適切に特定されたか否かを容易に判定することができる。
このステップS4で、視差値が閾値以下と判定されたときは(YES)、瞳孔が適切に特定されているため、次のステップS5へと進む。これに対して、閾値を超えたと判定されたときは(NO)、瞳孔以外の部位を瞳孔として特定した可能性があり、適切な特定がされていないとして、ステップS7へと進む。なお、視差値が閾値を超えた例として、図5(b)に示すように、第2の前眼部画像H2で、まぶたが特徴位置として特定されて、その中心(x2’,y2’)が算出され、この位置座標と第1の前眼部画像H1での位置座標(x1,y1)とに基づいて視差値が算出された場合などがある。
ステップS5では、上記ステップS2で算出した瞳孔中心の位置座標と、カメラ40,41の位置に基づいて、被検眼E(前眼部の瞳孔中心)の3次元位置情報を算出する。この算出手順を、図6を参照して説明する。図6は、2台のカメラ40,41と被検眼Eとの間の位置関係を模式的に表した図である。
図6では、2台のカメラ40,41間の距離(基線長)を「B」で表す。2台のカメラ40,41の基線と、被検眼Eの特徴部位Pとの間の距離(撮影距離)を「H」で表す。各カメラ40,41と、その画面平面との間の距離(画面距離)を「f」で表す。
このような配置状態において、2台のカメラ40,41による撮影画像の分解能は次式で表される。ここで、Δpは画素分解能を表す。
xy方向の分解能(平面分解能):Δxy=H×Δp/f
z方向の分解能(奥行き分解能):Δz=H×H×Δp/(B×f)
制御部26は、2台のカメラ40,41の位置(既知である)と、2つの撮影画像において特徴部位Pに相当する特徴位置とに対して、図6に示す配置関係を考慮した公知の三角法を適用することにより、特徴部位Pの3次元位置、つまり被検眼Eの3次元位置情報を算出する。
次に、ステップS6へと進み、ステップS5で算出した被検眼E(瞳孔中心)の3次元位置情報に基づいて、アライメント動作を実行する。まず、制御部26は、被検眼Eの3次元位置に基づいて、測定光学系24の光軸を被検眼Eの軸に合わせるように、XY方向におけるアライメント情報(移動量、移動方向など)を算出する。また、制御部26は、算出した被検眼Eの3次元位置に基づいて、測定光学系24の光軸を被検眼Eの軸に合わせるように、かつ、被検眼Eに対する測定光学系24の距離が所定の作動距離になるように駆動機構22を制御するためのZ方向におけるアライメント情報を算出する。なお、作動距離とはワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、測定光学系24を用いた特性の測定時における被検眼Eと測定光学系24との間の距離を意味する。
以上のようにして取得したアライメント情報に基づいて、駆動機構22を駆動して、測定ヘッド23をXYZ方向に移動し、XYZ方向のアライメントを行う。このアライメントは、左眼測定ヘッド23L及び右眼測定ヘッド23Rの双方でそれぞれ行われるため、左眼ELと右眼ERとの位置に、XYZ方向で多少のずれがあった場合でも、この左眼ELと右眼ERの位置に応じて、適切にアライメントを行うことができる。
一方、ステップS4で、視差値が閾値を超えた(エラー)と判定されて、ステップS7に進んだ場合、被検眼Eの抽出のやり直し(リトライ)をするか否かを判断すべく、まず繰り返し回数(エラー回数)が、所定回数を超えたか否かを判定する。
繰り返し回数が、所定回数以下(NO)であれば、ステップS1に戻ってカメラ40,41での被検Eを撮影し、取得された撮影画像(第1、第2の前眼部画像E1,E2)に対して、ステップS2、S3の処理を繰り返す。例えば、前回の撮影時に、瞬きをしてまぶたの画像が撮影された場合などは、再度撮影を行えば、開眼状態での撮影画像を取得することができ、当該撮影画像に基づいて被検眼Eを適切に特定することができる。
これに対して、繰り返し回数が、所定回数を超えた場合(YES)、撮影と被検眼Eの検出を繰り返しても被検眼Eの特定が適切に行えなかったとして、ステップS8へと進む。ステップS8では、所定のエラー動作を実行する。本実施形態では、図9に示すように、操作画面50に警告メッセージ(例えば、「アライメントに失敗しました。動作を停止します。」)を表示した上で、その後のアライメント動作を中断する。
したがって、眼科装置10側では、被検眼E以外の部位に対してアライメントが実行されるのを抑制するとともに、測定ヘッド23が被検者に不測に接触するのを抑制することができる。一方、検者は、警告メッセージにより、被検眼Eの状態がアライメントを適切に行えない状態であることを認識し、その是正のための対策を講じることができる。例えば検者が被検者に対して瞬きしないように注意喚起したり、まぶたを手で開いたり、緊張しないように声掛けしたり、頭部を適切な位置に配置したりするなどの対策を講じることができる。その後、計測開始ボタン52をタッチする等により、ステップS1からアライメントのための各処理を再度実行することで、アライメントを適切に行うことが可能となる。よって、測定光学系24による被検眼Eの測定を高精度に行うことができる。
なお、本実施形態では、被検眼Eの抽出動作を所定回数に達するまで複数回繰り返しているが、これに限定されるものではなく、一度目に適切でないと判定されたときに、直ちにアライメント動作の中断や警告メッセージの表示を行ってもよい。また、検者への通知が、警告メッセージに限定されるものではなく、音声やブザー等の警告音、光の点滅などによって通知してもよいし、これらを組み合わせて通知してもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の眼科装置10について説明する。第2実施形態の眼科装置10は、制御部26で実行されるアライメント時の処理(プログラム)の一部が異なること以外は、図1等に示される第1実施形態の眼科装置10と同様の基本構成を備え、第1実施形態と同様にして被検眼Eアライメントや特性の取得を行う。そのため、第2実施形態の眼科装置10の構成や動作の詳細な説明は省略し、以下では主に第1実施形態と異なる動作について説明する。
第2実施形態で実行されるアライメントの各処理について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。まず、第1実施形態と同様にして準備処理を行う。このとき、測定条件等に応じて、カメラ40,41での画像取得条件、特徴点検出のための瞳孔形状判定条件、画像処理に関する閾値、視差値の閾値の初期設定や、設定変更を行ってもよい。その後、検者が操作画面50の計測開始ボタン52をタッチすることで、アライメントの実行を開始する。なお、ステップS11~S16の処理は、第1実施形態におけるステップS1~S6の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
まず、第1実施形態と同様に、制御部26の制御の下、アライメント光学系33による被検眼Eへの指標の投影、カメラ40,41による被検眼Eの前眼部の撮影画像(第1の前眼部画像H1及び第2の前眼部画像H2)の取得を行う(ステップS11)。
次に、画像処理によって第1の前眼部画像H1及び第2の前眼部画像H2において瞳孔を特定して位置座標を算出し(ステップS12)、2つの位置座標に基づいて視差値を算出する(ステップS13)。次いで、視差値が閾値以下か判定し(ステップS14)、閾値以下の場合は(YES)、瞳孔が適切に特定されたとして、上記ステップS5と同様の手順で被検眼E(瞳孔中心)の3次元位置情報を算出する(ステップS15)。そして、上記ステップS6と同様の手順で、被検眼E(瞳孔中心)の3次元位置情報に基づいて、XYZ方向へのアライメント情報を算出し、駆動機構22を駆動して、測定ヘッド23をXYZ方向に移動することで、アライメントを実行する(ステップS16)。
これに対して、ステップS14で、視差値が閾値を超えたと判定された場合は、ステップS17へと進む。ステップS17では、第1の前眼部画像H1及び第2の前眼部画像H2に対して、瞳孔の特定の信頼性を高めるべく、撮影画像の状態に応じてゲインその他の画像取得条件を適宜変更する。または、瞳孔の形状判定によって瞳孔を特定する場合には、その形状判定条件を適宜変更する。例えば、加齢等で瞳孔が小さくなっている場合があるため、瞳孔の大きさの判定基準を小さく設定する。また、光の反射等によって半月形や三日月形など、瞳孔が略円形以外の形状で撮影される場合がある。そのため、瞳孔の形状を略円形以外のものに設定する。また、色の閾値等の画像処理に関する閾値を変更する。更には、必要に応じて視差値の閾値を変更してもよい。
その後、ステップS11に戻り、変更された各種条件に基づいて、カメラ40,41による撮影画像(第1、第2の前眼部画像H1,H2)の取得(ステップS11)、画像処理による瞳孔特定(ステップS12)、差分(視差値)の計算(ステップS13)を実行する。そして、視差値が閾値以下になれば、被検眼E(瞳孔中心)の3次元位置情報の算出(ステップS15)、アライメント動作(ステップS16)を実行する。
なお、ステップS17の実行後のこれらの処理を再度実行しても、視差値が閾値を超えている場合は、視差値が閾値以下となるまでステップS17→ステップS11→ステップS12→ステップS13の処理を繰り返す。また、第2実施形態でも、この繰り返しの処理回数が所定回数に到達するか又は所定時間に到達しても、視差値が閾値を超える場合は、操作画面50に警告メッセージを表示して、アライメントを停止する構成としてもよい。
また、上記では、ステップS17で画像取得条件等を変更して、被検眼Eの撮影をやり直しているが、この手順に限定されるものではない。他の例として、既に取得した撮影画像(第1、第2の前眼部画像H1,H2)の特性を画像処理(コントラスト調整、レベル調整、明るさ調整、解像度変更、二値化、その他)により変更した上で、ステップS12に戻って、瞳孔を特定する構成とすることもできる。また、瞳孔形状判定条件や閾値変更を行った上で、ステップS12に戻る構成とすることもできる。
以上により、第2実施形態でも、被検眼E以外の部位に対してアライメントが実行されるのを抑制するとともに、測定ヘッド23が被検者に不測に接触するのを抑制することができる。さらに、第2実施形態では、瞳孔等の特徴点(被検眼E)が適切に特定されなかった場合でも、画像取得条件、瞳孔形状判条件定、閾値変更などを行うことで、特徴点の特定の信頼性を高めている。
このようにして、特定した特徴点の位置座標を用いて被検眼Eの3次元位置情報を算出することで、アライメント動作を不測に中断することなく、実行することができる。また、測定光学系24(測定ヘッド23)の被検者への不測の接触を抑制しつつ、しかも適切にアライメントを実行することができる。
以下、第1、第2実施形態の眼科装置10の作用効果を説明する。各実施形態の眼科装置10は、上述したように、測定光学系24と、2つのカメラ40,41と、駆動機構22と、制御部26とを備えている。制御部26は、カメラ40,41で撮影した第1、第2の前眼部画像H1,H2に基づいて、被検眼Eの3次元位置情報を取得し、この3次元位置情報に基づいて、測定光学系24の鉛直方向への移動量及び水平方向への移動量を算出し、各移動量に基づいて駆動機構22を制御し、被検眼Eに対する測定光学系24の位置合わせを行う。この位置合わせのときに、制御部26は第1、第2の前眼部画像H1,H2でそれぞれ特定された特徴点の2次元位置情報を比較して、被検眼Eの抽出が適切にされたか否かを判定する。
この構成により、被検眼Eの抽出が適切である場合は、アライメントを迅速かつ高精度に行うことができ、その後の測定光学系24での被検眼Eの特性の測定を高精度に行うことができる。これに対して、被検眼Eの抽出が適切でないと判定された場合には、アライメントを中断するなどの対応により、被検眼E以外の部位に対してアライメントが実行されるのを抑制することができる。また、測定光学系24(測定ヘッド23)が不測に被検者に接触したりするのを抑制することができる。
また、上記各実施形態では、制御部26は、被検眼Eの抽出が適切にされていないと判定したときは、2以上のカメラ40,41での被検眼Eの前眼部の撮影を再度行い、撮影した2以上の撮影画像(新たな第1、第2の前眼部画像H1,H2)から被検眼Eを抽出している。これにより、自動での被検眼Eの抽出の信頼性を高め、アライメントの精度をより向上させることができる。
なお、撮影画像の取得又は撮影画像からの被検眼Eの抽出に際して、画像取得条件、被検眼の所定部位(特徴点)の形状判定条件(例えば、瞳孔形状判定条件)又は比較条件(例えば、2以上の撮影画像の視差値の閾値、色等の画像処理に関する閾値)の初期設定又は設定変更を行うことが、被検眼Eの抽出精度を高める上で望ましい。これらの設定は、被検眼Eの抽出が適切にされていないと判定したときに行うことがより望ましく、自動での被検眼Eの抽出の信頼性を高め、アライメントの精度をより向上させることができる。
また、上記各実施形態では、制御部26は、第1、第2の前眼部画像H1,H2上で取得した位置情報(位置座標(x1,y1),(x2,y2))に基づいて、視差値を算出し、視差値が閾値以上であるときに、被検眼Eの抽出が適切に行われていないと判定している。視差値を用いることで、被検眼Eの抽出が適切か否かを、より容易かつより高精度に判定することができる。
また、第1実施形態では、制御部26は、被検眼Eの抽出が適切に行われていないと判定したときに、駆動機構22を制御して、測定光学系24の鉛直方向及び水平方向への移動を停止して、位置合わせを中断している。そのため、被検眼E以外の部位に対してアライメントが実行されるのを抑制するとともに、測定光学系24(測定ヘッド23)が被検者に不測に接触するのを良好に防止することができる。
これに対して、第2実施形態では、制御部26は、被検眼E抽出が適切に行われていないと判定したときに、表示部30への警告メッセージ表示、音声又は警告音の出力、光の点滅のいずれかによって検者に通知をしている。これにより、検者は被検眼Eの状態がアライメントを適切に行えない状態であることを認識し、その是正のための対策を迅速に講じることができる。
さらに、第2実施形態では、制御部26は、画像処理によって、第1、第2の前眼部画像H1,H2上から、被検眼Eらしき物体の画像が複数抽出されたとき、当該複数の物体の中から、所定の優先度に従って被検眼Eを特定している。これにより、アライメント動作を中断することなく、しかも測定光学系24(測定ヘッド23)の被検者への不測の接触を抑制しつつ、アライメントを実行することができる。
また、制御部26は、被検眼Eの抽出が適切に行われていないと判定したときに、カメラ40,41での前眼部の新たな第1、第2の前眼部画像H1,H2の取得と、新たな第1、第2の前眼部画像H1,H2に基づく被検眼Eの抽出及び位置情報の取得とを、被検眼Eの抽出が適切に行われたと判定するまで、又は繰り返しの回数若しくは繰り返しの経過時間が閾値に到達するまで、繰り返して実行する構成とすることができる。これにより、例えば、瞬きにより被検眼Eの抽出が適切に行えなかった場合などは、撮影をやり直して瞬きのない撮影画像を取得すれば、特別な対応をしなくても被検眼Eの特定を適切に行うことができる。よって、被検眼Eの状態が、容易には是正できない場合などのみ、アライメントの中断等の対応を講じればよく、効率化を図ることができる。
また、上記各実施形態では、測定光学系24が、被検者の左眼EL及び右眼ERに対応して一対設けられ、両眼視での測定が可能となっている。そのため、両眼視での同時測定におけるアライメント及び測定精度をより向上させることができる。両眼視での測定では、左眼EL及び右眼ERの双方のアライメントが適切に行われている必要があるが、一方のアライメントが適切に行われていない場合、その状況を把握することができ、対策を迅速に講じることができる。
また、本実施の形態では、測定光学系24を支持するアーム14を備え、駆動機構22は、アーム14に吊り下げられ、測定光学系24は、駆動機構22に吊り下げられている。この構成により、被検者の前方に駆動機構22を位置させる必要がなく、XYZ方向での駆動機構22による測定光学系24の適切なアライメントを可能としつつ、被検者の前方に空間を設けることができ、被検者に圧迫感を与えることのない眼科装置10を提供することができる。
以上、本発明の眼科装置を実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、上記各実施形態では、被検眼Eの抽出(特徴点の特定)が適切に行われたか否かを、視差値に基づいて判定しているが、これに限定されるものではない。他の異なる判定基準として、例えば、第1、第2の前眼部画像H1,H2上の絶対原点と、特徴点との差に基づいて判定してもよいし、第1、第2の前眼部画像H1,H2での各位置座標のずれの方向に基づいて判定してもよく、いずれの場合でも、精度よく被検眼Eの抽出の適否を判定することができる。
また、上記各実施形態では、左眼用測定光学系24Lと右眼用測定光学系24Rを備え、両眼視で被検眼Eの特性を測定しているが、これに限定されるものではない。片眼視の状態で被検眼Eの特性を測定する場合にも適用することができ、検者がアライメントの適否を明確に把握して、不測の状態に対して迅速に対応することができる。また、上記各実施形態では、カメラ40,41で取得した撮影画像に基づいて、XYZ方向へのアライメント情報を算出しているが、これに限定されるものではない。例えば、受光光学系32で取得した前眼部像EL′,ER′上の輝点(輝点像)に基づいて、XY方向へのアライメント情報を取得又は補正してもよい。