以下に、本開示に係る眼科装置の一実施形態としての眼科装置10の実施例1について図1から図11を参照しつつ説明する。なお、図5、図6は、それぞれが示す構成や内容の理解を容易とするために、偏向部材26を省略して示している。
本開示に係る眼科装置は、被検眼の情報を取得する眼情報取得部を備えるもので、被検眼の情報の取得として、被検眼(前眼部や眼底等)を撮影することや被検眼の眼特性を求めることの少なくとも一方が可能とされている。本開示に係る眼科装置は、被検眼の眼特性を求めることとして、任意の自覚検査および任意の他覚検査の少なくとも一方を行う。自覚検査は、被検者に視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得するものである。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚検査は、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(特性)を測定するものである。この他覚検査には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
実施例1の眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼Eの特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、眼科装置10は、片眼を遮蔽したり、固視標を消灯したりすることで、片眼ずつ検査等することも可能である。また、本開示に係る眼科装置は、両眼開放タイプに限定されるものではなく、片眼ずつ特性測定するタイプにも適用できる。
眼科装置10は、図1に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持部としてのアーム14と、駆動機構15と、一対の測定ヘッド16と、を備える。この眼科装置10は、検眼用テーブル12と正対する被検者が、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に額を当てた状態で、被検者の被検眼E(図3等参照)の情報の取得を行う。以下では、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向およびY方向と直交する方向(測定ヘッド16の前後方向(被検者側を手前側とする))をZ方向とする。
検眼用テーブル12は、後述する検者用コントローラ31や被検者用コントローラ32(図4参照)を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に伸びて基台11に支持されており、上部にアーム14が設けられる。アーム14は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して一対の測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能とされ、後述するアーム駆動機構34(図4参照)によりY方向での位置(高さ位置)が調節される。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向およびZ方向に移動可能とされていてもよい。このアーム14の先端には、駆動機構15により吊り下げられて両測定ヘッド16が支持されている。
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼Eに個別に対応すべく対を為して設けられ、以下では個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16Lおよび右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼Eの情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼Eの情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
各測定ヘッド16には、被検眼Eの眼情報を取得する眼情報取得部21(個別に述べる際には右眼情報取得部21Rおよび左眼情報取得部21Lとする(図2参照))が収容されている。その眼情報は、被検眼Eの屈折力や、被検眼Eの画像や、被検眼Eの眼底Ef(図5参照)の画像や、被検眼Eの網膜の断層画像や、被検眼Eの角膜内皮画像や、被検眼Eの角膜形状や、被検眼Eの眼圧等が適宜組み合わされる。各眼情報取得部21は、屈折力を測定する屈折力測定機構(実施例1ではレフラクトメータ)、それと同じ光軸上で視標を呈示する視標呈示機構、呈示する視標を切り替えつつ視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切り換えて配置させて被検眼Eの適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定する波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置(OCT)、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が適宜組み合わされて構成される。
両測定ヘッド16は、図2に示すように、アーム14の先端に設けられた取付ベース部18を介して駆動機構15により移動可能に吊り下げられている。取付ベース部18は、アーム14の先端に固定され、X方向に延びるともに、一方の端部に後述する左眼用駆動機構15Lが吊り下げられ、他方の端部に後述する右眼用駆動機構15Rが吊り下げられている。また、この取付ベース部18の中央部に、額当部17が設けられている。
駆動機構15は、実施例1では、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用駆動機構15L(左鉛直駆動部22L、左水平駆動部23L、左Y軸回旋駆動部24L、左X軸回旋駆動部25L)と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用駆動機構15R(右鉛直駆動部22R、右水平駆動部23R、右Y軸回旋駆動部24R、右X軸回旋駆動部25R)と、を有する。この左眼用駆動機構15Lと右眼用駆動機構15Rと(双方の各駆動部の構成)は、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされており、個別に述べる時を除くと単に鉛直駆動部22と水平駆動部23とY軸回旋駆動部24とX軸回旋駆動部25と記す。駆動機構15は、アーム14側から鉛直駆動部22、水平駆動部23、Y軸回旋駆動部24、X軸回旋駆動部25の順に設けられている。
鉛直駆動部22は、取付ベース部18と水平駆動部23との間に設けられ、取付ベース部18に対して水平駆動部23をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は、鉛直駆動部22とY軸回旋駆動部24との間に設けられ、鉛直駆動部22に対してY軸回旋駆動部24をX方向およびZ方向(水平方向)に移動させる。この鉛直駆動部22および水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構と、を設けて構成する。水平駆動部23は、例えば、X方向とZ方向とで個別にアクチュエータおよび伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
Y軸回旋駆動部24は、水平駆動部23とX軸回旋駆動部25との間に設けられ、水平駆動部23に対してX軸回旋駆動部25を、対応する被検眼Eの眼球回旋点Oを通りY方向に延びる眼球回旋Y軸を中心に回転させる。X軸回旋駆動部25は、Y軸回旋駆動部24と対応する測定ヘッド16との間に設けられ、Y軸回旋駆動部24に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋点Oを通りX方向に延びる眼球回旋X軸を中心に回転させる。
このY軸回旋駆動部24およびX軸回旋駆動部25は、例えば、鉛直駆動部22や水平駆動部23と同様にアクチュエータと伝達機構とを有するものとし、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成とする。Y軸回旋駆動部24は、案内溝の中心位置が眼球回旋Y軸と一致されることで、被検眼Eの眼球回旋Y軸を中心に測定ヘッド16を回転させることができる。また、X軸回旋駆動部25は、案内溝の中心位置が眼球回旋X軸と一致されることで、被検眼Eの眼球回旋X軸を中心に測定ヘッド16を回転させることができる。すなわち、測定ヘッド16は、Y軸回旋駆動部24およびX軸回旋駆動部25の各々の案内溝の中心位置が被検眼Eの眼球回旋点Oと一致されることで、眼球回旋点Oを中心に左右方向(Y方向を中心とする回転方向)および上下方向(X方向を中心とする回転方向)に回転可能とされている。
なお、Y軸回旋駆動部24は、自らに設けたY軸回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに水平駆動部23と協働してX軸回旋駆動部25を介して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させることで、被検眼Eの眼球回旋Y軸を中心に測定ヘッド16を回転させるものでもよい。また、X軸回旋駆動部25は、自らに設けたX軸回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに鉛直駆動部22と協働して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させることで、被検眼Eの眼球回旋X軸を中心に測定ヘッド16を回転させるものでもよい。
以上の構成により、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向およびZ方向に移動させることができるとともに、それぞれが対応する被検眼Eの眼球回旋点Oを中心に上下左右に回転させることができ、各測定ヘッド16を対応する被検眼Eの回旋に対応する位置(姿勢)に移動させることができる。駆動機構15は、各測定ヘッド16の位置を調整することで、対応する被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりすることができる。これにより、眼科装置10では、開散運動および輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼Eの各種特性を測定できる。
各測定ヘッド16では、偏向部材26が設けられ、偏向部材26を通じて眼情報取得部21により対応する被検眼Eの情報が取得される。眼科装置10は、図3に示すように、各偏向部材26が被験者の左右の被検眼Eにそれぞれ対応する位置となるように各測定ヘッド16の位置を調整することで、被検者が左右の両眼を開放した状態(両眼視の状態)で、被検眼Eの情報を両眼同時に取得できる。また、眼科装置10は、X軸回旋駆動部25により眼球回旋X軸を中心に各測定ヘッド16の回転姿勢を変化させることで、対応する被検眼Eを下方視や上方視させた状態で被検眼Eの情報を取得できる。そして、眼科装置10は、Y軸回旋駆動部24により眼球回旋Y軸を中心に各測定ヘッド16の回転姿勢を変化させることで、対応する被検眼Eを左右視させた状態で被検眼Eの情報を取得できる。
各測定ヘッド16は、偏向部材26に近接して、各被検眼Eに対して異なる方向から撮影する2つ以上の撮影部としての複数のカメラ27を有する。カメラ27は、実施例1では、各被検眼Eに対して眼情報取得部21の光軸Lを前後(Z方向)に挟んで2台設けられており、ステレオカメラを構成している。各カメラ27は、対応する被検眼Eからの光が偏向部材26を介して進行方向が屈曲されて入射されて、それぞれが異なる方向であって斜め(正面(後述する観察系41の光軸L)に対して傾斜する位置)から被検眼Eを見た画像となる被検眼画像Ie(図6等参照)を取得する。このため、各カメラ27は、対応する被検眼Eに対して前後(Z方向)で対を為しているが、偏向部材26を介することで実質的に被検眼Eに対して左右(X方向)の斜めから被検眼画像Ieを取得している。これにより、各カメラ27は、一方が被験者の外側(被検眼Eに対して鼻とは反対側)から被検眼画像Ieを取得する外側カメラ27oとなり、他方が被験者の内側から被検眼画像Ieを取得する内側カメラ27iとなる。
ここで、2つのカメラ27は、被検眼Eに対して実質的に、上下(Y方向)で対を為して設けてもよいが、瞼が少し閉じられると上下の斜めからの被検眼画像Ieでは被検眼Eに対して瞼に隠される領域が大きくなるので、同じ状況でも影響の少ない左右(X方向)から被検眼画像Ieを取得する構成とすることが望ましい。加えて、年配の被検者は、瞼が下がる傾向があるので、左右(X方向)の斜め下方から被検眼画像Ieを取得する位置関係で両カメラ27を設けることが望ましい。
両カメラ27は、実質的に同時に被検眼Eを撮影することで、同時点での2つの異なる被検眼画像Ieを取得する。ここで、実質的に同時とは、両カメラ27による撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを意味する。両カメラ27は、被検眼Eを異なる方向から実質的に同時に撮影することで、被検眼Eが同じ位置(向き)にあるときの2以上の被検眼画像Ieを取得することが可能になる。これにより、両カメラ27は、後述するように被検眼Eの3次元位置の算出に用いることができる。
なお、実施例1では、各被検眼Eに対して2つのカメラ27(撮影部)を設けているが、各被検眼Eに対して2つ以上の撮影部を設ければよく、実施例1の構成に限定されない。しかしながら、後述の3次元位置を求める際の演算処理を考慮すると、異なる2方向から実質的に同時に被検眼E(その前眼部)を撮影可能な構成であれば十分である。また、実施例1では、眼情報取得部21(その後述する観察系41)とは別個に2つのカメラ27を設けているが、異なる2つ以上の方向から実質的に同時に被検眼Eを撮影可能であれば、一方のカメラ27に替えて観察系41を用いるものとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部28が、制御ボックスに収納されて設けられる(図1参照)。制御部28は、図4に示すように、上記した各眼情報取得部21、駆動機構15としての各鉛直駆動部22、各水平駆動部23、各Y軸回旋駆動部24、各X軸回旋駆動部25および各カメラ27(外側カメラ27o、内側カメラ27i)に加えて、検者用コントローラ31と被検者用コントローラ32と記憶部33とアーム駆動機構34と、が接続されている。眼科装置10は、ケーブル29(図1、図2参照)を介して商用電源から制御部28に電力が供給され、制御部28が駆動機構15および両測定ヘッド16(両眼情報取得部21)に電力を供給する。制御部28は、駆動機構15や両測定ヘッド16(両眼情報取得部21)と情報の遣り取りが可能とされ、それらの動作を制御するとともにそれらから適宜情報を取得する。
検者用コントローラ31は、検者が眼科装置10を操作するために用いられ、制御部28と近距離無線通信によって、互いに通信可能に接続されている。なお、検者用コントローラ31は、制御部28と有線または無線の通信路を介して接続されていればよく、実施例1の構成に限定されない。実施例1の検者用コントローラ31は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)が用いられている。なお、検者用コントローラ31は、携帯端末に限定されることはなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等でもよく、眼科装置10に固定されて構成されていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
検者用コントローラ31は、液晶モニタからなる表示部35を備える。この表示部35は、画像等が表示される表示面35a(図1等参照)と、そこに重畳して配置されたタッチパネル式の入力部35bと、を有する。検者用コントローラ31は、制御部28の制御下で、後述する観察系41に設けられた撮像素子41gからの画像信号に基づく前眼部画像I(図5参照)や各カメラ27からの被検眼画像Ie(図6等参照)や後述する測定リング像Ri(図8参照)や眼底画像等を、適宜表示面35aに表示させる。また、検者用コントローラ31は、制御部28の制御下で入力部35bが表示され、そこに入力されたアライメントの指示や測定の指示等の操作情報を制御部28に出力する。
被検者用コントローラ32は、被検眼Eの各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられ、有線または無線の通信路を介して制御部28と接続されている。被検者用コントローラ32は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置とされる。
制御部28は、接続された記憶部33または内蔵する内部メモリ28aに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、適宜検者用コントローラ31や被検者用コントローラ32に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ28aは、RAM等で構成され、記憶部33は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。眼科装置10では、上記した構成の他に、測定完了信号や測定者からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバーに出力する出力部が適宜設けられる。
次に、眼情報取得部21の一例としての光学的な構成を、図5を用いて説明する。上述したように、右眼情報取得部21Rおよび左眼情報取得部21Lの構成は、基本的に同一であるので、単に眼情報取得部21として説明する。
眼情報取得部21の光学系は、図5に示すように、観察系41と視標投影系42と眼屈折力測定系43とZアライメント系44とXYアライメント系45とケラト系46とを有する。観察系41は、被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系42は、被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系43は、被検眼Eの眼屈折力(屈折特性)の測定を行う。Zアライメント系44およびXYアライメント系45は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行うために設けられている。Zアライメント系44は、観察系41の光軸Lに沿う前後方向(Z方向)のアライメント情報を生成し、XYアライメント系45は、光軸Lに直交する上下左右方向(Y方向、X方向)のアライメント情報を生成する。ケラト系46は、角膜形状の測定を行う。
観察系41は、対物レンズ41aとダイクロイックフィルタ41bとハーフミラー41cとリレーレンズ41dとダイクロイックフィルタ41eと結像レンズ41fと撮像素子41gとを有する。観察系41は、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ41aを経て結像レンズ41fにより撮像素子41g(その受光面)上に結像する。このため、撮像素子41gは、後述するケラトリング光束やアライメント光源44aの光束やアライメント光源45aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部画像Iを検出(受像)する。制御部28は、撮像素子41gから出力される画像信号に基づく前眼部画像I等を表示部35の表示面35aに表示させる。この対物レンズ41aの前方にケラト系46を設けている。
ケラト系46は、ケラト板46aとケラトリング光源46bとを有する。ケラト板46aは、観察系41の光軸Lに関して同心状のスリットが設けられた板状とされ、対物レンズ41aの近傍に設けられる。ケラトリング光源46bは、ケラト板46aのスリットに合わせて設けられる。このケラト系46は、点灯したケラトリング光源46bからの光束がケラト板46aのスリットを経ることで、被検眼E(その角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。ケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系41により撮像素子41g上に結像され、撮像素子41gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)する。制御部28は、撮像素子41gからの画像信号に基づいて、その測定パターンの像を表示面35aに表示させるとともに、角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定するケラト測定を行う。なお、実施例1では、角膜形状を測定する角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板46aを用いる例(ケラト系46)を示しているが、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。このケラト系46(ケラト板46a)の後方にZアライメント系44を設けている。
Zアライメント系44は、一対のアライメント光源44aと投影レンズ44bとを有し、各アライメント光源44aからの光束を各投影レンズ44bで平行光束とし、ケラト板46aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。この平行光束は、角膜Ecに投影された輝点(輝点像)のアライメント情報として検出される。これにより、Z方向のアライメントのための視標が被検眼Eの角膜Ecに投影される。この視標は、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)として検出される。制御部28は、撮像素子41g上のアライメント光源44aによる2個の輝点像の間隔とケラトリング像の直径との比が所定範囲内となるように、水平駆動部23により測定ヘッド16を前後方向(Z方向)に移動させることで、眼情報取得部21の光学系の光軸Lに沿う前後方向(Z方向)のアライメントを行う。ここで、制御部28は、その比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示面35aに表示させてもよい。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源45aによる輝点像のピントが合うように右眼用測定ヘッド16Rの位置を調整することで行ってもよい。また、Zアライメント系44による視標を用いたアライメントは、X方向およびY方向へのアライメントを含んでもよい。さらに、前後方向のアライメントは、一対のカメラ27からの2つの被検眼画像Ieを用いて行ってもよい。
観察系41には、XYアライメント系45が設けられている。XYアライメント系45は、アライメント光源45aと投影レンズ45bとを有し、ハーフミラー41c、ダイクロイックフィルタ41bおよび対物レンズ41aを観察系41と共用する。XYアライメント系45は、アライメント光源45aからの光束を、対物レンズ41aを経て平行光束として光軸L上で角膜Ecに投光する。この平行光束は、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)を描出し、この虚像である輝点像Brが観察系41(その撮像素子41g)により検出される。この輝点(輝点像Br)は、角膜頂点Etと、角膜Ecの曲率中心と、の略中間位置に形成される。制御部28は、輝点(輝点像Br)に基づき、鉛直駆動部22および水平駆動部23を駆動して、測定ヘッド16を左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)に移動させることで、上下左右方向(光軸Lに直交する方向)のアライメントを行う。このとき、制御部28は、輝点像が形成された前眼部画像Iに加えて、アライメントの目安となるアライメントマークALを表示面35aに表示させる。また、制御部28は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。アライメント光源45aは、XYアライメント系45によるアライメント動作中に、このアライメント光源45aを被検者が視認することを抑止するために、赤外光(例えば940nm)を発光する発光ダイオードとしている。
視標投影系42は、被検眼Eを固視、雲霧させる為に視標を投影して、その視標を眼底Efに呈示する。視標投影系42は、ディスプレイ42aとロータリープリズム42b、42cと結像レンズ42dと移動レンズ42eとリレーレンズ42fとフィールドレンズ42gとミラー42hとダイクロイックフィルタ42iとを有し、ダイクロイックフィルタ41bおよび対物レンズ41aを観察系41と共用する。ディスプレイ42aは、被検眼Eの視線を固定する視標としての固視標や点状視標を呈示したり、被検眼Eの特性(視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数)等)を自覚的に検査するための自覚検査視標を呈示したりする。ディスプレイ42aは、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display(LCD))を用いることができ、制御部28の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ42aは、視標投影系42の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられる。
ロータリープリズム42b、42cは、斜位検査においてプリズム度数およびプリズム基底方向を調整するために用いられ、パルスモータ等の駆動によってそれぞれ独立に回転される。ロータリープリズム42b、42cは、互いに逆方向に回転されるとプリズム度数が連続的に変更され、同じ方向に一体的に回転されるとプリズム基底方向が連続的に変更される。移動レンズ42eは、駆動モータにより光軸に沿って進退駆動される。視標投影系42は、移動レンズ42eを被検眼E側に移動させることで、屈折力をマイナス側に変位させることができるとともに、移動レンズ42eを被検眼Eから離反する方向に移動させることで、屈折力をプラス側に変位させることができる。これにより、視標投影系42は、移動レンズ42eの進退駆動により、ディスプレイ42aに表示された視標の呈示距離を変更可能、すなわち視標像の呈示位置を変更可能であるとともに、被検眼Eを固視、雲霧させることができる。このため、視標投影系42は、被検眼Eに対して、固視のための指標や自覚検査のための指標を、任意の呈示距離で呈示できる。
眼屈折力測定系43は、被検眼Eの眼底Efに測定光束を投影し、眼底Efで反射された測定光束(その反射光束)を後述する測定リング像Ri(図8参照)として取得することで、被検眼Eの眼屈折力の測定を可能とする。実施例1の眼屈折力測定系43は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系43Aと、眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系43Bと、を有する。なお、眼屈折力測定系43は、上記した構成としているが、被検眼Eの眼底Efに測定光束を投影し、眼底Efで反射された測定光束を測定リング像Riとして取得するものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。この他の構成の一例としては、測定光束として点状のスポット光を眼底Efに投影し、眼底Efで反射された測定光束(その反射光束)をリング状のスリットやレンズを通すことでリング状の光束として、測定リング像Riを取得するものがあげられる。
リング状光束投影系43Aは、レフ光源ユニット部43aとリレーレンズ43bと瞳リング絞り43cとフィールドレンズ43dと穴開きプリズム43eとロータリープリズム43fとを有し、ダイクロイックフィルタ42iを視標投影系42と共用し、ダイクロイックフィルタ41bおよび対物レンズ41aを観察系41と共用する。レフ光源ユニット部43aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源43gとコリメータレンズ43hと円錐プリズム43iとリングパターン形成板43jとを有し、それらが制御部28の制御下で眼屈折力測定系43の光軸上を一体的に移動可能となっている。
リング状光束受光系43Bは、穴開きプリズム43eの穴部43pとフィールドレンズ43qと反射ミラー43rとリレーレンズ43sと合焦レンズ43tと反射ミラー43uとを有し、対物レンズ41a、ダイクロイックフィルタ41b、ダイクロイックフィルタ41e、結像レンズ41fおよび撮像素子41gを観察系41と共用し、ダイクロイックフィルタ42iを視標投影系42と共用し、ロータリープリズム43fおよび穴開きプリズム43eをリング状光束投影系43Aと共用する。
眼屈折力測定系43は、眼屈折力測定モードにおいて、制御部28の制御下で、次のように動作されて被検眼Eの眼屈折力を測定する。先ず、リング状光束投影系43Aのレフ測定光源43gが点灯され、かつリング状光束投影系43Aのレフ光源ユニット部43aとリング状光束受光系43Bの合焦レンズ43tとが光軸方向に移動される。リング状光束投影系43Aでは、レフ光源ユニット部43aがリング状の測定パターンを出射し、その測定パターンをリレーレンズ43b、瞳リング絞り43cおよびフィールドレンズ43dを経て穴開きプリズム43eに進行させ、その反射面43vで反射し、ロータリープリズム43fを経てダイクロイックフィルタ42iに導く。リング状光束投影系43Aでは、その測定パターンをダイクロイックフィルタ42iおよびダイクロイックフィルタ41bを経て対物レンズ41aに導くことで、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影する。
リング状光束受光系43Bでは、眼底Efに形成されたリング状の測定パターンを対物レンズ41aで集光し、ダイクロイックフィルタ41b、ダイクロイックフィルタ42iおよびロータリープリズム43fを経て穴開きプリズム43eの穴部43pに進行させる。リング状光束受光系43Bでは、その測定パターンをフィールドレンズ43q、反射ミラー43r、リレーレンズ43s、合焦レンズ43t、反射ミラー43u、ダイクロイックフィルタ41eおよび結像レンズ41fを経ることで、撮像素子41gに結像させる。これにより、撮像素子41gがリング状の測定パターンの像(以下では測定リング像Riともいう)を検出し、その測定リング像Riが表示部35の表示面35aに適宜表示される(図8参照)。制御部28は、その測定リング像Ri(撮像素子41gからの画像信号)に基づいて、眼屈折力としての球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)を周知の手法により算出する。制御部28は、算出した眼屈折力を適宜表示面35aに表示させる。
また、眼屈折力測定モードでは、制御部28は、視標投影系42においてディスプレイ42aに固定固視標を表示させる。ディスプレイ42aからの光束は、ロータリープリズム42b、42c、結像レンズ42d、移動レンズ42e、リレーレンズ42f、フィールドレンズ42g、ミラー42h、ダイクロイックフィルタ42i、ダイクロイックフィルタ41b、対物レンズ41aを経て、被検眼Eの眼底Efに投光(投影)する。検者または制御部28は、呈示した固定固視標を被検者に固視させた状態でアライメントを行い、眼屈折力(レフ)の仮測定の結果に基づいて被検眼Eの遠点に移動レンズ42eを移動させた後に、ピントが合わない位置に移動レンズ42eを移動させて雲霧状態とする。これにより、被検眼Eは、調節休止状態(水晶体の調整除去状態)となり、その調節休止状態で眼屈折力が測定される。
なお、眼屈折力測定系43、Zアライメント系44、XYアライメント系45およびケラト系46等の構成や、眼屈折力(レフ)、自覚検査および角膜形状(ケラト)の測定原理等は、公知であるので、詳細な説明は省略する。
眼科装置10は、制御部28の制御下で、オートアライメント(自動による位置合わせ)を行いつつ眼情報取得部21を用いて被検眼Eの眼情報を取得する。詳細には、制御部28は、Zアライメント系44、XYアライメント系45からのアライメント情報に基づいて、眼情報取得部21(その光学系)の光軸Lを被検眼Eの軸に合わせつつ被検眼Eに対する眼情報取得部21の距離が所定の作動距離になる移動量(アライメント情報)を算出する。ここで、作動距離とは、ワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、眼情報取得部21を用いて特性を適切に測定するための眼情報取得部21と被検眼Eとの間の距離である。制御部28は、移動量に応じて駆動機構15を駆動して被検眼Eに対して眼情報取得部21を移動させることで、対応する被検眼Eに対する眼情報取得部21(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントを行う。
その後、制御部28は、適宜眼情報取得部21を駆動して、被検眼Eの各種の眼情報を取得させる。眼科装置10では、手動すなわち検者が検者用コントローラ31を操作することで、被検眼Eに対して眼情報取得部21をアライメントし、眼屈折力測定系43を駆動して被検眼Eの各種の眼情報を取得することもできる。眼科装置10では、被検眼Eの各種の眼情報を取得する際、被検者が被検者用コントローラ32を操作することで応答することができ、被検眼Eの各種の眼情報の取得を補助する。このXYZ方向のアライメントにより、各測定ヘッド16は、Y軸回旋駆動部24およびX軸回旋駆動部25の各々の案内溝の中心位置が被検眼Eの眼球回旋点Oと一致され、眼球回旋点Oを中心に左右方向(Y方向を中心とする回転方向)および上下方向(X方向を中心とする回転方向)に回転可能とされる。そして、制御部28は、XYZ方向のアライメントが行われた各測定ヘッド16の位置に基づいて、各被検眼Eの眼球回旋点Oの3次元位置を取得できる。
眼科装置10は、眼情報取得部21のオートアライメントを、両カメラ27(そこからの被検眼画像Ie(そのデータ))を用いて行うことができる。このとき、制御部28は、先ず、対を為すカメラ27からの各被検眼画像Ieにおいて共通の特徴位置を検出する。制御部28は、例えば前眼部の瞳孔中心に相当する位置を特徴位置とすると、後述するように被検眼画像Ieにおける瞳孔中心の座標を求め、それらと既知である両カメラ27の位置や角度や光学的特性等を用いて公知の三角法を適用することにより、瞳孔中心すなわち被検眼Eの3次元位置を算出する。そして、制御部28は、算出した被検眼Eの3次元位置に基づいて、眼情報取得部21(その光学系)の光軸Lを被検眼Eの軸に合わせつつ被検眼Eに対する眼情報取得部21の距離が所定の作動距離になる移動量(アライメント情報)を算出し、その移動量に応じて駆動機構15を制御する。制御部28は、移動量に応じて駆動機構15を駆動して被検眼Eに対して眼情報取得部21を移動させることで、両カメラ27を用いて眼情報取得部21のオートアライメントを行うことができる。
眼科装置10では、制御部28が中心算出部28bと基準算出部28cと視線算出部28dとを有する。中心算出部28bは、各被検眼Eに対して、対応する一対のカメラ27が取得した2つの被検眼画像Ieに基づいて、瞳孔中心位置Pc(図6等参照)の3次元位置を求める。基準算出部28cは、各被検眼Eに対して、対応する一対のカメラ27が取得した2つの被検眼画像Ieに基づいて、XYアライメント系45が描出した輝点としてのプルキンエ像の虚像である輝点像Brの3次元位置(基準位置Pb)を求める。視線算出部28dは、中心算出部28bで求めた瞳孔中心位置Pcと、基準算出部28cで求めた基準位置Pbと、に基づいて、各被検眼Eの視線の方向を示す視線方向Ed(図7参照)を求める。
中心算出部28bは、先ず、各被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの位置(座標)を求める。この各被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの位置を求める手法は周知のものから適宜選定すればよい。一例として、中心算出部28bは、単一の被検眼Eを異なる2つの方向から撮影した2つの被検眼画像Ieにおいて、画素値(輝度値等)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を求める。一般に瞳孔は、他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を求めることができる。このとき、瞳孔の形状が略円形であることを考慮して、略円形で低輝度の画像領域を探索することにより、瞳孔領域を求めるものとしてもよい。
次に、中心算出部28bは、求めた瞳孔領域の中心位置を求める。中心算出部28bは、上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の境界座標を楕円近似して、瞳孔近似楕円の中心を算出する。まず、中心算出部28bは、瞳孔領域の境界座標から、最小自乗法により、次式(1)に示す楕円の一般式における係数a、b、c、dおよびhを求める。
そして、中心算出部28bは、楕円の一般式(1)における各係数から、瞳孔近似楕円の中心座標を次式(2)により求める。下記式(2)により求められた瞳孔近似楕円の中心座標が各被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの座標となる。
なお、中心算出部28bは、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を各被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの座標としてもよい。
その後、中心算出部28bは、2つの被検眼画像Ieを取得した一対のカメラ27の位置と、求めた2つの被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの座標と、に基づいて、被検眼Eの瞳孔中心位置Pcの3次元位置を算出する。この処理について図6を用いて説明する。
図6は、被検眼Eと外側カメラ27oと内側カメラ27iとの間の位置関係を示しているとともに、各カメラ27の下方にそれぞれが撮影した被検眼画像Ieを示している。なお、図6では、Y方向(鉛直方向)での被検眼Eと各カメラ27との位置関係を省略しているが、被検眼Eと各カメラ27とのY方向の位置は変位していても等しくてもよい。ここで、外側カメラ27oと内側カメラ27iとの間の距離を基線長Bとし、基線長Bと瞳孔中心位置Pcとの間の距離を撮影距離Hとする。また、各外側カメラ27oと内側カメラ27iとが互いに等しい構成であるものとし、それぞれにおけるレンズ中心と撮像素子(画面平面)との間の距離を画面距離f(焦点距離と略等しい)とする。
すると、外側カメラ27oおよび内側カメラ27iによる被検眼画像Ieの分解能は次式で表すことができる。ここで、Δpは、両カメラ27における画素分解能とする。
xy方向の分解能(平面分解能):Δxy=H×Δp/f
z方向の分解能(奥行き分解能):Δz=H×H×Δp/(B×f)
このように、両カメラ27からの被検眼画像Ieでは、Z方向のズレを画素位置のズレとして検出することができるので、両カメラ27の画素分解能に応じてZ方向の位置を検出できる。
中心算出部28bは、2つの外側カメラ27o、内側カメラ27iの位置(既知である)と、2つの被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcの座標とに対して、図6に示す配置関係を考慮した公知の三角法を適用することにより、瞳孔中心位置Pcの3次元位置を求める。
ここで、中心算出部28bは、算出した瞳孔中心位置Pcの3次元位置に対して、所定変位量だけ前後方向(Z方向)の手前側へと変位させて瞳孔中心位置Pcの3次元位置としてもよい。これは、瞳孔中心位置Pcすなわち瞳孔は、所定変位量だけ角膜Ecの内方に位置することによる。中心算出部28bは、求めた瞳孔中心位置Pcから所定変位量だけ手前側へと変位させることで、瞳孔中心位置Pcが形成された位置を上下左右方向に変化させることなく角膜Ec上に変位させることができる。この所定変位量は、適宜設定すればよく、例えば、平均的な値として3.6mmを用いることができる。
基準算出部28cは、輝点像Brの3次元位置に基づいて基準位置Pbの3次元位置を求める。各被検眼Eでは、アライメント光源45aからの平行光束が入射すると、図7に示すように、角膜Ec内部の位置Q(角膜頂点Etから内方へと角膜の曲率半径rの半分(r/2)の位置)にスポット状の虚像(プルキンエ像)が描出される。このプルキンエ像は、両カメラ27による各被検眼画像Ieにおいて輝点像Brとして取得(撮影)される。ここで、実施例1では、アライメント光源45aを赤外光としているので、両カメラ27の出力信号から赤外光領域の信号のみを取り出すことで、アライメント光源45aからの反射光に基づく輝点像Brの位置を簡易にかつ正確に求めることができる。基準算出部28cは、中心算出部28bが瞳孔中心位置Pcを求めることと同様に、各被検眼画像Ieにおける輝点像Brの位置を求め、その両輝点像Brの位置および一対のカメラ27の位置に基づいて、輝点像Brの3次元位置を算出する。
そして、基準算出部28cは、算出した輝点像Brの3次元位置に対して、角膜の曲率半径rの半分(r/2)だけ前後方向(Z方向)の手前側へと変位させて基準位置Pbの3次元位置とする。これは、上記したように、プルキンエ像が角膜Ecの曲率半径rの半分の値だけ角膜Ecの内方に形成されるので、輝点像Brから半分の値だけ手前側へと変位させることで、輝点像Brが形成された位置を上下左右方向に変化させることなく角膜Ec上に変位させた位置を基準位置Pbとすることによる。このため、XYアライメント系45(アライメント光源45a)は、基準位置Pbを形成するための光を前眼部に投光する基準投光部として機能する。なお、角膜の曲率半径rは、ケラト測定により取得された角膜の曲率Rを用いて求めること(r=1/R)ができるとともに、平均的な値を用いることもできる。ここで、曲率半径rは、ケラト測定での測定結果を用いることで、実際の被検眼Eにより適切に対応したものとなるので、視線方向Edをより正確に取得できることとなる。
視線算出部28dは、視線方向Edとして、被検眼Eにおける基準点から瞳孔中心位置Pcへ向かう方向を求める。実施例1の視線算出部28dは、被検眼Eにおける基準点を眼球回旋点Oとする。ここで、輝点像Brは、被検眼Eに対して眼情報取得部21が適切にアライメントされた状態では、眼情報取得部21(視標投影系42)の光軸L上に形成されるとともに、その光軸L上に眼球回旋点Oも存在する。そして、輝点像Brは、上記したように角膜頂点Etから内方へと角膜の曲率半径rの半分の位置に形成される。視線算出部28dは、角膜頂点Etから眼球回旋点Oまでの距離Dlとして予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)を用いることで、眼球回旋点Oの3次元位置を求めることができる。なお、距離Dlは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を用いてもよい。
視線算出部28dは、例えば、眼球回旋点Oから基準位置Pb(輝点像Br)へ向かう方向(光軸Lの方向)を基準線Blとして、視線方向Ed(眼球回旋点Oから瞳孔中心位置Pcへ向かう方向)を報知することで、視線方向Edの把握を容易なものにできる。この方法としては、視線方向Edは、基準線Blに対して、水平方向(X方向)および上下方向(Y方向)で為す角度(回旋角度)や被検眼画像Ie上での距離等で表すことがあげられる。なお、光軸Lの方向(基準線Bl)は、両被検眼Eの間隔となる瞳孔間距離PDと、両被検眼Eから固視画像の呈示位置までの間隔となる呈示距離Dpと、から求めることができる。ここで、眼情報取得部21(視標投影系42)において、無限遠に固視画像Sfを表示する状態おける光軸Lの方向(被検眼Eから各偏向部材26に至るまでの光軸Lの方向)が互いに平行な状態を基準とした角度を回旋角αとする。すると、回旋角αは、tan-1(PD/2Dp)で求めることができ、この回旋角αが光軸Lの方向(基準線Bl)となる。その瞳孔間距離PDは、前眼部画像Iやアライメントの位置から求めてもよく、一般的な値を用いてもよい。
ここで、基準位置Pb(輝点像Br)から光軸Lの方向に伸ばした線上に眼球回旋点Oが存在しない場合が考えられる。この場合、視線算出部28dは、輝点像Brが角膜頂点Etから内方へと角膜の曲率半径rの半分の位置に形成されることに基づいて、基準位置Pb(輝点像Br)から角膜の曲率中心の三次元位置を求め、曲率中心と瞳孔中心位置Pcとを結ぶ方向を求めることで、距離Dlを用いて眼球回旋点Oの3次元位置を求めることができる。そして、視線算出部28dは、瞳孔中心位置Pcと眼球回旋点O(曲率中心)とを結ぶ方向および光軸Lの方向から、視線方向Edを求めることができる。
また、制御部28は、適切な視線方向Edではない場合に、所定の警告情報を出力部に出力させるものとしてもよい。この出力部としては、表示部35や図示しない音声出力部などがある。表示部35を出力部として用いる場合、制御部28は、所定の文字列情報、画像情報、ポップアップウインドウ等からなる警告メッセージを表示部35(その表示面35a)に表示させる。音声出力部を出力部として用いる場合、制御部28は、所定の音声情報、警告音等を音声出力部に出力させる。
実施例1の眼科装置10では、例えば、三角測量に基づいて瞳孔中心位置Pcや輝点像Brの3次元位置を求めるものとしている。しかしながら、瞳孔中心位置Pcと輝点像Brとの3次元位置を求めるものであればよく、この手法に限定されるものではない。
図8は、一例として視線方向Edを表示面35aに表示させた様子を示す。図8の例では、表示面35aにおいて、右上に左眼の正面被検眼画像Ifを、左上に右眼の正面被検眼画像Ifを、表示させているとともに、右下に左眼の測定リング像Riを、左下に右眼の測定リング像Riを、表示させている。その正面被検眼画像Ifは、カメラ27が取得した被検眼画像Ieを、被検眼Eの正面に設定した仮想視点から見たものに変換したものである。制御部28は、周知の技術を用いて、一方のカメラ27から入力された被検眼画像Ieの各画素の座標値に当該カメラ27の角度等に基づく種々の係数を乗じて出力画素の全ての座標値を形成する変換処理を行うことで、仮想視点から見た正面被検眼画像Ifを生成する。
そして、図8の例では、表示面35aにおいて、各正面被検眼画像Ifの下方に、視線方向Edを示す視線方向表示Idを表示させている。図8の例の視線方向表示Idは、水平方向(X方向)での回旋角度Id1と、上下方向(Y方向)での回旋角度Id2と、を表示させている。なお、この視線方向表示Idは、被検眼画像Ie上での基準位置Pbと瞳孔中心位置Pcとの距離で示してもよく、基準線Blと視線方向Edとを模式的に示す図であってもよく、実施例1の構成に限定されない。
両測定リング像Riは、上記したように、眼屈折力測定系43による被検眼Eの眼屈折力の測定の際に取得される。表示面35aでは、例えば、眼屈折力測定系43で被検眼Eの眼屈折力の測定を行っていて、両測定リング像Riを表示させている場合であっても、その測定には使用しないカメラ27からの被検眼画像Ieに基づく正面被検眼画像Ifを表示させることができる。また、表示面35aでは、眼屈折力測定系43での測定を行っている場合でも、両カメラ27からの2つの被検眼画像Ieに基づいて視線方向Ed(眼球回旋点Oから瞳孔中心位置Pcへの方向)を求めることができるので、視線方向Ed(それを示す視線方向表示Id)を併せて表示させることができる。このため、眼科装置10は、カメラ27を有効利用しつつ表示面35aを見るだけで測定リング像Riと正面被検眼画像Ifと視線方向表示Idとを視認可能とすることができ、測定リング像Riの状態とともに被検眼Eの状態や視線方向Edを容易に確認させることができる。
次に、眼科装置10を用いて、被検眼Eの情報を取得する際に視線方向Edを測定して表示する一例としての眼情報取得処理(眼情報取得方法)について、図9を用いて説明する。この眼情報取得処理は、記憶部33または内蔵する内部メモリ28aに記憶されたプログラムに基づいて、制御部28が実行する。以下では、この図9のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この図9のフローチャートは、眼科装置10が起動されて、検者用コントローラ31のブラウザまたはアプリが立ち上がって表示面35aが表示され、その入力部35bで眼情報取得が開始されることにより開始される。このとき、被検者は椅子等に座っており、額当部17に額が当てられている。なお、実施例1の図9のフローチャートは、各ステップ(各工程)が一対の測定ヘッド16(両眼情報取得部21)で同時に行われるものであり、両眼視の状態で同時に測定されるものとしている。加えて、実施例1の図9のフローチャートは、後述するように正面被検眼画像Ifの動画を表示面35aに表示させているが、静止画やコマ送りの画像でもよく、実施例1の構成に限定されない。実施例1の図9のフローチャートは、一例として、眼屈折力を被検眼Eの情報としており、眼屈折力測定系43による測定を行うものとしている。
ステップS1では、被検眼Eの前眼部画像の表示部35の表示面35aでの表示を開始して、ステップS2へ進む。ステップS1では、前眼部画像として、一方のカメラ27からの正面被検眼画像Ifの動画を表示面35aに表示させる。なお、ステップS1では、観察系41で取得した前眼部画像I(動画)を表示面35aに表示させてもよい。
ステップS2では、オートアライメントを実行して、ステップS3へ進む。ステップS2では、上述したように、両カメラ27(そこからの被検眼画像Ie(そのデータ))を用いて、眼情報取得部21のオートアライメントを行う。このとき、ステップS2では、両カメラ27を用いたオートアライメントに伴う被検眼Eの被検眼画像Ieの動画を表示面35aに表示させている。なお、ステップS2は、後述するステップS6とともに、Zアライメント系44およびXYアライメント系45を用いてオートアライメントを行ってもよい。
ステップS3では、視線方向Edの測定を開始して、ステップS4へ進む。ステップS3では、上述したように、両カメラ27からの被検眼画像Ie(そのデータ)を用いて、視線方向Edの測定を開始する。このため、このステップS3以降は、リアルタイムで視線方向Edを検出することとなる。
ステップS4では、視線方向Edの表示を開始して、ステップS5へ進む。ステップS4では、ステップS3で開始して測定した視線方向Edの表示を開始するもので、実施例1では表示面35aにおいて両被検眼Eの視線方向表示Idの表示を開始する。このため、このステップS4以降は、リアルタイムで視線方向Edを表示することとなる。
ステップS5では、眼屈折力測定系43を用いてラフ測定を実行して、ステップS6へ進む。ラフ測定とは、視標投影系42の移動レンズ42eやリング状光束投影系43Aのレフ光源ユニット部43aやリング状光束受光系43Bの合焦レンズ43tの移動量を決定するために、予備的に被検眼Eの概略の眼屈折力を測定することをいう。ステップS5では、移動レンズ42e、レフ光源ユニット部43aおよび合焦レンズ43tを0D(ディオプタ)位置に配置し、視標投影系42で固視標を固視させて、眼屈折力測定系43を用いてリング状光束投影系43Aにより被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影する。そして、ステップS5では、リング状光束受光系43Bにより撮像素子41gでリング状の測定パターンの測定リング像Riを検出し、その測定リング像Riを表示部35の表示面35aに表示させつつ、測定リング像Riに基づき眼屈折力を測定する。また、ステップS5では、視線方向表示Idおよび測定リング像Riとともに、一方のカメラ27からの正面被検眼画像If(動画)を表示面35aに表示させる(図8参照)。
ステップS6では、オートアライメント(再アライメント)を実行して、ステップS7へ進む。ステップS6では、ステップS2と同様にオートアライメントを実行する。
ステップS7では、視標投影系42を用いて雲霧を行い、ステップS8へ進む。ステップS7では、視標投影系42を用いてステップS5でのラフ測定による眼屈折力に基づいて合焦レンズ43tを移動させた後に雲霧状態とし、被検眼Eを調節休止状態とする。このとき、ステップS7では、表示面35aには視線方向表示Idおよび正面被検眼画像Ifを表示させる。
ステップS8では、眼屈折力測定系43を用いた被検眼Eの特性の測定を実行して、ステップS9へ進む。ステップS8では、ステップS5でのラフ測定による眼屈折力に基づいて眼屈折力測定系43のレフ光源ユニット部43aおよび合焦レンズ43tを移動させ、雲霧状態(調節休止の状態)の被検眼Eに対して、眼屈折力測定系43を用いて測定リング像Riを検出する。また、ステップS8では、眼屈折力測定系43が取得した測定リング像Riに基づいて、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度を周知の手法により算出する。このとき、ステップS8では、ステップS5と同様に、表示面35aに、視線方向表示Idおよび正面被検眼画像Ifとともに測定リング像Riを表示させる。
ステップS9では、測定値を表示させて、ステップS10へ進む。このステップS9では、ステップS8で測定した両被検眼Eの眼屈折力(球面度数、円柱度数、軸角度)を、表示面35aに表示させる。
ステップS10では、視線方向Edの表示を終了して、この眼情報取得処理を終了する。このステップS10では、ステップS4で開始した視線方向Edの表示を終了する。また、ステップS10では、ステップS3で開始した視線方向Edの測定も併せて終了する。
これにより、眼科装置10は、被検眼Eの眼屈折力を測定することができる。このとき、眼科装置10は、両眼視の状態で双方の被検眼Eの眼屈折力を測定しているので、より自然に近い状態の眼屈折力を得ることができるとともに、一方ずつ測定することと比較して短時間で両被検眼Eの眼屈折力を測定することができる。
本開示の眼科装置10は、上記した眼情報取得処理により被検眼Eの情報を取得できる。このとき、眼科装置10は、眼情報取得部21とは別に設けた一対のカメラ27からの被検眼画像Ieに基づいて視線方向Ed(眼球回旋点Oから瞳孔中心位置Pcへの方向)を求めることができるので、視線方向表示Idを併せて表示させることができる。このため、検者は、視線方向Edをリアルタイムで把握しつつ被検眼Eの情報を取得できるので、取得した情報が良好ではない場合に、被検眼Eの視線が適切な方向を向いていないことが原因であるか否かの判断が容易となる。
ここで、眼科装置10は、一対のカメラ27から被検眼画像Ieに基づいて視線方向Edを求めているので、正確な視線方向Edを求めることができる。これは、眼科装置10が、一対のカメラ27からの被検眼画像Ieに基づいて瞳孔中心位置Pcや基準位置Pb(輝点像Br)の3次元位置を求めているので、Z方向(前後方向)での変位を被検眼画像IeにおけるX方向での変位とすることができ、両カメラ27における画素分解能でZ方向(前後方向)での変位を検出できることによる。ここで、ケラトリング像の直径との比を用いることで、瞳孔中心位置Pcや輝点像BrのZ方向の位置を求めることも考えられるが、両カメラ27の画素分解能で変位を検出することと比較すると、精度が低下してしまう。また、瞳孔中心位置Pcや輝点像Brのピント状態から瞳孔中心位置Pcや輝点像BrのZ方向の位置を求めることも考えられるが、両カメラ27の画素分解能で変位を検出することと比較すると、精度が大きく低下してしまう。このため、眼科装置10は、瞳孔中心位置Pcや基準位置Pb(輝点像Br)の3次元位置を極めて高い精度で求めることができるので、その3次元位置に基づいて求めた視線方向Edの精度を向上させることができ、視線方向Edを正確に取得できる。
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置10は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置10は、被検眼Eの情報を取得する眼情報取得部21と、被検眼Eの前眼部を異なる方向から撮影する2つ以上の撮影部としてのカメラ27と、基準位置Pbを形成するための光を前眼部に投光する基準投光部としてのXYアライメント系45と、を備える。そして、眼科装置10は、2つ以上のカメラ27により撮影された被検眼画像Ieにおける瞳孔中心位置Pcを求める中心算出部28bと、XYアライメント系45により形成された基準位置Pbを求める基準算出部28cと、瞳孔中心位置Pcと基準位置Pbとから視線方向Edを求める視線算出部28dと、を備える。このため、眼科装置10は、2つ以上のカメラ27からの被検眼画像Ieに基づいて瞳孔中心位置Pcや基準位置Pbの3次元位置を求めて、それらから視線方向Edを求めているので、正確な視線方向Edを求めることができる。
眼科装置10は、基準算出部28cは、2つ以上のカメラ27により撮影された被検眼画像Ieに基づいてXYアライメント系45により形成された輝点像Brの位置を求め、輝点像Brを被検眼Eの角膜Ec上に変位させることで基準位置Pbを求める。このため、眼科装置10は、XYアライメント系45からの光が描出させた角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)を用いて、より正確に視線方向Edを求めることができる。また、眼科装置10は、輝点像Brが左右の被検眼Eの外観形状等の差異に拘わらず等しい条件下で形成されるので、その3次元位置を基準位置Pbとすることで、より適切な視線方向Edを求めることができる。
眼科装置10は、眼情報取得部21が被検眼Eの情報を取得する光軸L上とは異なる位置で、対を為してカメラ27を設けている。このため、眼科装置10は、眼情報取得部21が被検眼Eの情報の取得を行っている最中でも、正確な視線方向Edを求めることができる。
眼科装置10は、眼情報取得部21が被検眼Eの情報を取得する光軸L上で、XYアライメント系45が被検眼Eの前眼部に投光して基準位置Pbを形成する。このため、眼科装置10は、XYアライメント系45の光が光軸L上に描出させた角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)を用いて、より正確に視線方向Edを求めることができる。
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置10では、被検眼Eの視線の方向(視線方向Ed)を正確に取得できる。
以上、本開示の眼科装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、ケラト系46を用いることで、角膜形状を測定できるものとしている。しかしながら、他の構成を用いて角膜形状を測定できるものとしてもよい。この一例を図10、図11を用いて説明する。図10に示す例では、各測定ヘッド16の筐体表面に複数の前眼部投光部51を設けている。各前眼部投光部51は、被検眼Eの角膜曲率情報を取得するために、互いに異なる方向から前眼部に光を投光するもので、この例では発光ダイオード(LED)が用いられて非平行光(発散光、収束光等)を前眼部に投光する。前眼部投光部51は、2つ以上の任意の個数とされ、この例では各カメラ27の上方(+Y方向)および下方(-Y方向)となる位置で合計4つ設けられている。各前眼部投光部51は、非平行光を前眼部の角膜Ecに投光することで、角膜表面反射による虚像(プルキンエ像)を描出し、この虚像である投影像Bpが各カメラ27により被検眼画像Ieとして検出される(図11参照)。
また、この例では、制御部28に形状算出部28e(図5参照)が設けられている。この形状算出部28eは、各前眼部投光部51により描出される投影像Bp(図11参照)を用いて被検眼Eの角膜Ecの形状(角膜形状)を求める。図11において、被検眼画像Ie1は、被検眼Eの右側斜め方向のカメラ27が撮影したものであり、被検眼画像Ie2は、被検眼Eの左側斜め方向のカメラ27が撮影したものである。図11の両被検眼画像Ieでは、4つの投影像Bpに加えて、輝点像Brも合わせて検出されている。形状算出部28eは、先ず、両被検眼画像Ieを解析することで、周囲と比較して高輝度の画素を抽出する等により、それぞれにおける4つの投影像Bpを探索し、各投影像Bpがいずれの前眼部投光部51に対応するものであるかを特定するラベリング処理を、周知の方法を用いて行う。そして、形状算出部28eは、各被検眼画像Ieにおける各投影像Bpの描出位置と、両カメラ27の見込角および撮影倍率と、に基づいて、眼科装置10に対する各投影像Bpの相対位置(3次元位置)を求めることで、角膜曲率(角膜曲率半径)を求める。
このような構成とすると、眼科装置10は、被検眼Eの情報を取得している最中、例えば、実施例1のように眼屈折力測定系43で眼屈折力を求めている最中であっても、角膜Ecの形状を求めることができ、視線方向Edをより正確に取得できる。また、この例の眼科装置10は、先にケラト系46による測定を行うことなく視線方向Edをより正確に取得できるので、使い勝手を向上させることができる。さらに、この例の眼科装置10は、ケラト系46が設けられていない場合であっても、被検眼Eの情報の取得する際に視線方向Edをより正確に取得して、それを報知することができる。
また、実施例1では、上記した構成の眼情報取得部21を用いている。しかしながら、本開示の眼情報取得部は、被検眼Eの情報を取得できるものであれば、適用することができ、実施例1の構成に限定されない。
さらに、実施例1では、測定ヘッド16(眼情報取得部21)が対を為して設けられて、両眼視の状態で被検眼Eの特性の測定を行うことができるものとされている。しかしながら、本開示の眼科装置は、片眼視の状態で被検眼Eの眼屈折力を測定する構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
実施例1では、上記したように視線方向Edを求めている。しかしながら、視線方向Edは、被検眼Eがどこを見ているかを示す視軸と被検眼Eが向いている方向を示す瞳孔軸とが為す角度であるラムダ角(平均値は5度)を考慮して補正したものとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。