(実施例1)
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。実施例1の眼科装置1は、図1に示すように、眼科装置本体10と、眼科装置本体10に着脱自在に取り付けられる導光光学系としての第1光学ユニット40及び第2光学ユニット42と、を備えている。
[眼科装置本体の全体構成]
以下、実施例1の眼科装置本体10の全体構成を、図1〜図3を参照しながら説明する。実施例1の眼科装置本体10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。実施例1の眼科装置本体10は、図1に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持部としてのアーム14と、測定ユニット20と、検者用コントローラ27と、被検者用コントローラ28(図4参照)と、を備えている。
この眼科装置本体10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、測定ユニット20に設けられた額当部15に額を当てた状態で被検眼の特性の測定を行う。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ユニット20の奥行き方向)をZ方向とする。
検眼用テーブル12は、検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部からY方向に起立しており、上部にアーム14が設けられている。アーム14は、支柱13に取り付けられ、検眼用テーブル12の上方で測定ユニット20の駆動機構22を介して一対の測定ヘッド23を吊り下げ支持するもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能となっている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向およびZ方向に移動可能となっていてもよい。このアーム14の先端には、測定ユニット20が設けられている。
基台11には、眼科装置本体10の各部を統括的に制御する制御部26が、制御ボックス26bに収納されて設けられている。なお、制御部26には、電源ケーブル17aを介して図示しない商用電源から電力供給がなされる。
[測定ユニット]
測定ユニット20は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定の少なくとも一方を行う。なお、自覚検査では、被検者に視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚測定では、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(特性)を測定する。この他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚測定には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
また、この測定ユニット20は、制御/電源ケーブル17b(図2参照)を介して制御部26に接続されており、この制御部26を経由して電力供給がなされる。また、測定ユニット20と制御部26との間の情報の送受信も、この制御/電源ケーブル17bを介して行われる。
測定ユニット20は、図1、図2に示すように、取付ベース部21と、この取付ベース部21に設けられた左眼用駆動機構22L及び右眼用駆動機構22Rと、左眼用駆動機構22Lに支持された左眼測定ヘッド23Lと、右眼用駆動機構22Rに支持された右眼測定ヘッド23Rと、を備えている。
左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。また、左眼測定ヘッド23Lに対応する左眼用駆動機構22Lの各駆動部の構成と、右眼測定ヘッド23Rに対応する右眼用駆動機構22Rの各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。以下、個別に述べる時を除くと、単に測定ヘッド23、駆動機構22ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
取付ベース部21は、アーム14の先端に固定され、X方向に延在されると共に、一方の端部に左眼用駆動機構22Lが吊り下げられ、他方の端部に右眼用駆動機構22Rが吊り下げられている。また、この取付ベース部21の中央部には、額当部15が吊り下げられている。
左眼用駆動機構22Lは、制御部26からの制御指令に基づいて、左眼測定ヘッド23LのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び左眼ELの眼球回旋軸OL(図3参照)を中心にした向きを変更する。この左眼用駆動機構22Lは、図5に示すように、左鉛直駆動部22aLと、左水平駆動部22bLと、左回旋駆動部22cLと、を有している。これらの各駆動部22aL〜22cLは、取付ベース部21と左眼測定ヘッド23Lとの間に、上方側から左鉛直駆動部22aL、左水平駆動部22bL、左回旋駆動部22cLの順に配置されている。
左鉛直駆動部22aLは、取付ベース部21に対して左水平駆動部22bLをY方向に移動させる。左水平駆動部22bLは、左鉛直駆動部22aLに対して左回旋駆動部22cLをX方向及びZ方向に移動させる。左回旋駆動部22cLは、左水平駆動部22bLに対して左眼測定ヘッド23Lを左眼ELの眼球回旋軸OL(又はこれと平行な軸でもよい)を中心に回転させる。
右眼用駆動機構22Rは、制御部26からの制御指令に基づいて、右眼測定ヘッド23RのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び右眼ERの眼球回旋軸OR(図3参照)を中心にした向きを変更する。この右眼用駆動機構22Rは、図2、図5に示すように、右鉛直駆動部22aRと、右水平駆動部22bRと、右回旋駆動部22cRと、を有している。これらの各駆動部22aR〜22cRは、取付ベース部21と右眼測定ヘッド23Rとの間に、上方側から右鉛直駆動部22aR、右水平駆動部22bR、右回旋駆動部22cRの順に配置されている。
右鉛直駆動部22aRは、取付ベース部21に対して右水平駆動部22bRをY方向に移動させる。右水平駆動部22bRは、右鉛直駆動部22aRに対して右回旋駆動部22cRをX方向及びZ方向に移動させる。右回旋駆動部22cRは、右水平駆動部22bRに対して右眼測定ヘッド23Rを右眼ERの眼球回旋軸OR(又はこれと平行な軸でもよい)を中心に回転させる。
ここで、左鉛直駆動部22aL、左水平駆動部22bL、右鉛直駆動部22aR、右水平駆動部22bRは、いずれもパルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。なお、左水平駆動部22bL及び右水平駆動部22bRは、X方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けてもよく、構成を簡易にできるとともに水平方向の移動の制御を容易なものとすることができる。
また、左回旋駆動部22cL及び右回旋駆動部22cRも、パルスモータ等の駆動力を発生するアクチュエータと、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力を伝達する伝達機構と、を有している。ここで、左回旋駆動部22cL及び右回旋駆動部22cRは、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構を、眼球回旋軸OL,ORを中心位置とする円弧状の案内溝に沿って移動させることで、左眼ELの眼球回旋軸OL,右眼ERの眼球回旋軸ORを中心にそれぞれ左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを眼球回旋軸OL,OR周りに回転させることができる。実施例1では、眼球回旋軸OL,ORをθ軸としている。
なお、左回旋駆動部22cL及び右回旋駆動部22cRは、自らが有する回転軸線回りに左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rを回転可能に取り付けるものでもよい。この場合、回転軸線をθ軸としてもよい。
左回旋駆動部22cL及び右回旋駆動部22cRによって、左眼測定ヘッド23Lと右眼用測定ヘッド23Rとを所望の方向に回旋させることで、被検眼を開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりすることができる。これにより、眼科装置本体10では、開散運動及び輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼の各種特性を測定することができる。
左眼測定ヘッド23Lは、図3に示すように、左回旋駆動部22cLに吊り下げられた左ハウジング23aLに内蔵された左眼用測定光学系24Lと、左ハウジング23aLの外側面に設けられた左眼用偏向ユニット25Lと、を有している。左眼用偏向ユニット25Lは、左ハウジング23aLの外側面に取り付けられた左眼用枠部材25aLと、この左眼用枠部材25aLに固定された左眼用偏向部材25bLと、を有している。なお、左眼用枠部材25aLには、左眼用測定光学系24Lの対物レンズ31a(図4参照)も取り付けられている。この左眼測定ヘッド23Lでは、左眼用測定光学系24Lからの出射光を、左眼用偏向部材25bLを介して屈曲して被検者の左眼ELに照射し、左眼特性を測定する。
また、右眼測定ヘッド23Rは、図3に示すように、右回旋駆動部22cRに固定された右ハウジング23aRに内蔵された右眼用測定光学系24Rと、右ハウジング23aRの外側面に設けられた右眼用偏向ユニット25Rと、を有している。右眼用偏向ユニット25Rは、右ハウジング23aRの外側面に取り付けられた右眼用枠部材25aRと、この右眼用枠部材25aRに固定された右眼用偏向部材25bRと、を有している。なお、右眼用枠部材25aRには、右眼用測定光学系24Rの対物レンズ31a(図4参照)も取り付けられている。この右眼測定ヘッド23Rでは、右眼用測定光学系24Rからの出射光を、右眼用偏向部材25bRを介して屈曲して被検者の右眼ERに照射し、右眼特性を測定する。
実施例1では、左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rを、それぞれθ軸回り、α軸回り、β軸回りに回転させることで、左眼測定ヘッド23Lと右眼測定ヘッド23Rの傾きを調整し、光路を適切に保つことを可能としている。実施例1では眼球回旋軸ORをθ軸としている(図3参照)。また、左眼測定ヘッド23L、右眼測定ヘッド23Rの左右方向(長手方向)の軸をα軸(第1水平軸)とし、右眼測定ヘッド23Rの前後方向(短手方向)の軸をβ軸(第2水平軸)としている(図2参照)。
ここで、右回旋駆動部22cRと右眼測定ヘッド23Rとの接続構造の詳細を、図2を参照しながら説明する。図2は右回旋駆動部22cRと右眼測定ヘッド23Rとの接続構造を示す斜視図である。なお、左回旋駆動部22cLと左眼測定ヘッド23Lとの接続構造は右眼用のそれらと同一であるので、説明は省略する。
図2に示すように、右回旋駆動部22cRには、接続軸50Rが下方に突出して設けられ、この接続軸50Rの下端が、右ハウジング23aRの上面に設けられた接続板51Rに接続されている。なお、接続軸50Rを通り眼球回旋軸ORと平行な鉛直軸をθ軸とし、このθ軸回りに右眼測定ヘッド23Rを回転させる構成としてもよい。
接続板51Rは、右ハウジング部23aRの上面から前方側面に向けてL字形に延在している。右ハウジング部23aRの壁面には、β軸沿った回転軸23bRが突出して設けられ、この回転軸23bRによって右ハウジング部23aRが接続板51Rの側面に、β軸回りに回転可能に取り付けられている。また、接続板51Rの側面には、上方略中央にU字溝51aRが設けられ、その下方に一対の略円弧状の長溝51bRが設けられている。U字溝51aRに挿通された偏心ピン52Rが、右ハウジング部23aRの壁面に留められている。また、一対の長溝51bRに挿通されたねじ54Rが、右ハウジング部23aRの壁面に留められている。
偏心ピン52Rは、例えば、六角ネジ状の頭部の裏側の偏心位置に、偏心軸が突出し、この偏心軸が右ハウジング部23aRの壁面に挿通されている。六角ねじ状の頭部に工具を取り付けて回転させると、回転軸23bR(β軸)を中心に、右眼用偏向ユニット25Rがβ軸回りに回転する。このとき、一対のねじ54Rは、一対の長溝51bR内をβ軸回りに相対的に移動する。
また、右眼用偏向ユニット25Rと、右ハウジング23aRとの接続構造について、図2を参照しながら説明する。左眼用偏向ユニット25Lと、左ハウジング23aLとの接続構造も右眼用のそれらと同一であるので、説明は省略する。
右眼用偏向ユニット25Rでは、図2に示すように、右眼用枠部材25aRの上部略中央にU字溝25cRが設けられ、下方に一対の略円弧状の長溝25dRが設けられている。U字溝25cRに挿通された偏心ピン53Rが、右ハウジング部23aRの壁面に留められている。また、一対の長溝25dRに挿通されたねじ55Rが、右ハウジング部23aRの壁面に留められている。
この偏心ピン53Rは、図2の紙面下方に示すように、頭部にマイナス溝53aRが設けられ、頭部の偏心位置に設けられた貫通穴53bRと、右ハウジング23aRに設けられた取付穴23cRに、ねじ56Rが挿通されている。このねじ56Rの先端と取付穴23cRの奥側には、螺溝が設けられ、ねじ56Rの先端を取付穴23cRに螺着して固定できるようになっている。このような偏心ピン53Rにおいて、マイナス溝53aRに工具を挿入し、これを回転させると、右眼用偏向ユニット25Rと対物レンズ31aとが、対物レンズ31aの光軸を回転軸(α軸)として、α軸回りに回転する。このとき、一対のねじ55Rは、一対の長溝25dR内をα軸回りに相対的に移動する。
左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rは、それぞれ提示する視標を切り替えながら視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切換え配置しつつ被検眼の適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独又は複数組み合わされて構成されている。
[測定光学系]
右眼用測定光学系24Rの構成の一例を、図3、図4を参照しながら説明する。図3は実施例1の眼科装置本体10の左眼用測定光学系24L及び右眼用測定光学系24Rの概略構成を示す図であり、図4は右眼用測定光学系24Rの詳細構成を示す図である。なお、左眼用測定光学系24Lの構成は右眼用測定光学系24Rと同一であるので、その説明は省略することとし、以下では右眼用測定光学系24Rについてのみ説明する。
右眼用測定光学系24Rは、図4に示すように、観察系31と視標投影系32と測定系としての眼屈折力測定系33と自覚式検査系34とアライメント系35とアライメント系36とケラト系37とを有する。観察系31は、被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系32は、被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系33は、眼屈折力の測定を行い、自覚式検査系34は、自覚検査を行う。
眼屈折力測定系33は、実施例1では、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影した測定パターンの像を検出する機能と、を有する。このため、眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efに光束を投光しかつその眼底Efからの反射光を受光する第1測定系として機能する。
自覚式検査系34は、実施例1では、被検眼Eに視標を呈示する機能を有し、光学系を構成する光学素子を視標投影系32と共用する。アライメント系35及びアライメント系36は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行うためのものである。制御部26は、アライメント系35によって観察系31の光軸に沿う前後方向(Z方向)のアライメント情報を取得し、アライメント系36によって当該光軸に直交する上下左右方向(Y方向、X方向)のアライメント情報を取得する。
観察系31は、対物レンズ31aとダイクロイックフィルタ31bとハーフミラー31cとリレーレンズ31dとダイクロイックフィルタ31eと結像レンズ31fと画像取得部としての撮像素子(CCD)31gとを有する。観察系31では、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ31aを経て結像レンズ31fにより撮像素子31g上に結像する。このため、撮像素子31g上には、後述するケラトリング光束やアライメント光源35aの光束やアライメント光源36aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部像E′が形成される。制御部26は、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′等を表示部30の表示画面30aに表示させる。この対物レンズ31aの前方に、ケラト系37を設ける。
ケラト系37は、ケラト板37aとケラトリング光源37bとを有する。ケラト板37aは、観察系31の光軸に関して同心状のスリットが設けられた板状を呈し、対物レンズ31aの近傍に設けられる。ケラトリング光源37bは、ケラト板37aのスリットに合わせて設けられる。このケラト系37では、点灯したケラトリング光源37bからの光束がケラト板37aのスリットを経ることで、被検眼E(角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。このケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系31により撮像素子31g上に結像される。これにより、撮像素子31gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)し、制御部26が、その測定パターンの像を表示画面30aに表示させ、かつ当該画像(撮像素子31g)からの画像信号)に基づき角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定する。このため、ケラト系37は、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)に光束を投光しかつその前眼部(角膜Ec)からの反射光から当該前眼部(角膜Ec)の特性を測定する第2測定系であって被検眼Eの角膜形状を測定する角膜形状測定系として機能する。なお、実施例1では、角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板37aを用いる例(ケラト系37)を示しているが、角膜形状を測定するものであれば、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、本実施例の構成に限定されない。このケラト系37(ケラト板37a)の後方に、アライメント系35を設ける。
アライメント系35は、一対のアライメント光源35aと投影レンズ35bとを有し、各アライメント光源35aからの光束を各投影レンズ35bで平行光束とし、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。制御部26は、前眼部像E′上の角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、右水平駆動部22bRを駆動して右眼測定ヘッド23Rを前後方向(Z方向)に移動させることで、観察系31の光軸に沿う前後方向(Z方向)のアライメントを行う。この前後方向のアライメントは、撮像素子31g上のアライメント光源35aによる2個の点像の間隔とケラトリング像の直径の比を所定範囲内とするよう右眼測定ヘッド23Rの位置を調整して行う。ここで、制御部26は、当該比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示画面30aに表示させてもよい。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源36aによる輝点像Brのピントが合うように右眼測定ヘッド23Rの位置を調整することで行ってもよい。
また、観察系31にアライメント系36を設けている。このアライメント系36は、アライメント光源36aと投影レンズ36bとを有し、ハーフミラー31c、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。アライメント系36は、アライメント光源36aからの光束を、対物レンズ31aを経て平行光束として角膜Ecに投光(投影)する。制御部26は、前眼部像E′上の角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、右水平駆動部22bR及び右鉛直駆動部22aRを駆動して、右眼測定ヘッド23Rを左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)に移動させることで、左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)のアライメントを行う。このとき、制御部26は、輝点像Brが形成された前眼部像E′に加えて、アライメントマークの目安となるアライメントマークALを表示画面30aに表示させる。また、制御部26は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。
視標投影系32(自覚式検査系34)は、ディスプレイ32aとハーフミラー32bとリレーレンズ32cと反射ミラー32dと合焦レンズ32eとリレーレンズ32fとフィールドレンズ32gとバリアブルクロスシリンダレンズ(VCC)32hと反射ミラー32iとダイクロイックフィルタ32jとを有し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
また、自覚式検査系34は、ディスプレイ32a等に至る光路とは別の光路で光軸を取り巻く位置に、被検眼Eにグレア光を照射する少なくとも2つのグレア光源32kを有する。ディスプレイ32aは、被検眼Eの視線を固定すべく視標としての固視標や点状視標を呈示したり、被検眼Eの特性(視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数)等)を自覚的に検査するための自覚検査視標を呈示したりする。ディスプレイ32aは、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display(LCD))を用いることができ、制御部26の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ32aは、視標投影系32(自覚式検査系34)の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられる。
また、視標投影系32(自覚式検査系34)では、光路上において被検眼Eの瞳孔と略共役となる位置にピンホール板32pを設ける。このピンホール板32pは、板部材に貫通孔を設けて形成し、視標投影系32(自覚式検査系34)の光路への挿入と当該光路からの離脱とを可能とし、光路に挿入されると貫通孔を光軸上に位置させる。ピンホール板32pは、自覚検査モードにおいて光路に挿入されることで、被検眼Eの眼鏡による矯正が可能であるか否かを判別するピンホールテストを行うことを可能とする。このピンホール板32pは、実施例1では、フィールドレンズ32gとVCC32hとの間に設け、制御部26の制御下で挿入及び離脱される。なお、ピンホール板32pを設ける位置は、光路上において被検眼Eの瞳孔と略共役となる位置に設ければよく、実施例1に限定されない。
また、視標投影系32では、光学系の光路の状態を確認するための視標を提示するアライメント光源32lとチャート板(マスク)32mとを有する。チャート板32mには、視標として十字状のチャートが描かれている。アライメント光源32lは、眼科装置本体10の撮像素子31gや第2光学ユニット42の撮像素子44で画像取得ができるように、アライメント光源36と同じ波長の光束を出射する。アライメント光源32lからの光束が、チャート板32mを通過することで十字状のチャートの光束となり、視標投影系32から十字状のチャート(視標)が投影される。
眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系33Aと、眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系33Bと、を有する。リング状光束投影系33Aは、レフ光源ユニット部33aとリレーレンズ33bと瞳リング絞り33cとフィールドレンズ33dと穴開きプリズム33eとロータリープリズム33fとを有し、ダイクロイックフィルタ32jを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。レフ光源ユニット部33aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源33gとコリメータレンズ33hと円錐プリズム33iとリングパターン形成板33jとを有し、それらが制御部26の制御下で眼屈折力測定系33の光軸上を一体的に移動可能となっている。
リング状光束受光系33Bは、穴開きプリズム33eの穴部33pとフィールドレンズ33qと反射ミラー33rとリレーレンズ33sと合焦レンズ33tと反射ミラー33uとを有し、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子31gを観察系31と共用し、ダイクロイックフィルタ32jを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ロータリープリズム33f及び穴開きプリズム33eをリング状光束投影系33Aと共用する。
上記のような右眼用測定光学系24R及び左眼用測定光学系24Lを用いた眼屈折力の測定や自覚検査については、例えば、特開2017−63978号公報などに記載されている動作と同様の動作で行うことができる。
[制御部]
制御部26は、眼科装置本体10の各部を統括的に制御する。制御部26には、図5に示すように、上記した左眼用測定光学系24Lと、右眼用測定光学系24Rと、左眼用駆動機構22Lの左鉛直駆動部22aL、左水平駆動部22bL及び左回旋駆動部22cLと、右眼用駆動機構22Rの右鉛直駆動部22aR、右水平駆動部22bR及び右回旋駆動部22cRと、検者用コントローラ(第一の入力部)27と、被検者用コントローラ(第二の入力部)28と、記憶部29と、表示部30とが接続されている。また、制御部26には、第2光学ユニット42の画像取得部としての撮像素子(CCD)44も接続可能となっている。
検者用コントローラ27は、検者が眼科装置本体10を操作するために用いられる。検者用コントローラ27には、被検眼の特性を測定するための各種操作ボタンが設けられている。被検者用コントローラ28は、被検眼の各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。検者用コントローラ27及び被検者用コントローラ28は、いずれも、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備えている。また、検者用コントローラ27については、表示部30がタッチパネル式であれば、このタッチパネルも含まれうる。制御部26は、検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28と、それぞれ有線又は無線の通信路を介して接続されている。
制御部26は、接続された記憶部29又は内蔵する内部メモリ26aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ27や被検者用コントローラ28に対する操作に応じて、眼科装置本体10の動作を統括的に制御する。本実施の形態では、内部メモリ26aはRAM等で構成され、記憶部29は、ROMやEEPROM等で構成される。
表示部30の表示画面30a(図4参照)には、観察系31や測定系(実施例1では、例えば眼屈折力測定系33等)に設けられた撮像素子(CCD)31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′等が表示される。また、測定ヘッド23(測定光学系24)の傾き(ねじれ)の調整時は、表示画面30aには、基準線としての十字状のスケール像Sと十字状のチャート像Cが表示される(図8、図9参照)。スケール像Sの中心は、撮像素子31g又は撮像素子44の原点(中心)と一致している。表示部30は、本実施例では検者用コントローラ27に設けられている。しかし、これに限定されるものではなく、検者用コントローラ27とは別個のパーソナルコンピュータ(PC)のディスプレイを表示部30とすることもできる。
[第1、第2光学ユニット]
第1、第2光学ユニット40,42の詳細構成を、図6、図7を参照しながら説明する。図6は、第1光学ユニット40の概略構成とその光路を示す図である。図7は、第2光学ユニット42の概略構成とその光路を示す図である。第1、第2光学ユニット40、42はともに額当部15に取り付けて使用される。第1、第2光学ユニット40、42は、額当部15に取り付けたときに、左右の測定光学系24L,24Rの視標投影系32の光路を合流させ、それぞれの視標投影系32で投影されたチャートの光束を両方の撮像素子31g又は撮像素子44に導くことができるような位置合わせで、光学素子が配置されている。
第1光学ユニット40は、主に眼科装置本体10を使用するユーザ先で、測定ヘッド23(測定光学系24)の光路の状態を把握するときに用いられる。第1光学ユニット40は、図6に示すように、略L字形の角筒からなる筺体40aを有し、筺体40aの長尺側の側面中央に、額当部15に着脱自在に取り付けられる取付部材40bが設けられている。筐体40a内には、光学素子として、第1反射ミラー41aと、この第1反射ミラー41aの反射経路に配置されたハーフミラー(偏向部材)41bと、このハーフミラー41bの反射経路(若しくは透過光路)に配置された第2反射ミラー41cとが収容されている。
なお、実施例1では、撮像素子31gの座標に基づいて、制御部26がスケール像Sの画像を生成してチャート像Cの画像と重畳し、表示部30に表示するようにしている。しかし、この構成に限定されるものではなく、第1光学ユニット41の第2反射ミラー41c又はその近傍にスケールを設けておき、第2反射ミラー41cでのチャートの光束の反射によってチャート像Cとともにスケール像Sを撮像素子31gで取得できるようにして、取得した画像信号に基づいて制御部26が画像を生成して表示部30に表示する構成としてもよい。
このような第1光学ユニット40を額当部15に取り付け、例えば、左眼用の視標投影系32のアライメント光源32lを点灯し、チャート板32mを介して十字状のチャート(視標)を投影すると、このチャートの光束が標投影系32の光路を介して左眼用測定光学系24Lから出射し、左眼用偏向部材25bLで屈折されて第1光学ユニット40の第1反射ミラー41aに入射する。
この光束は、第1反射ミラー41aで反射され、さらにハーフミラー41bで反射された後、第2反射ミラー41cに入射する。次いで、この光束は第2反射ミラー41cで反射されてハーフミラー41bを透過した後に右眼用偏向部材25bRに入射し、右眼用偏向部材25bRに屈折されて右眼用測定光学系24Rに入射し、右眼用測定光学系24Rの観察系31又は測定系(眼屈折力測定系33等)を経由して撮像素子31gに受光される。また、第2反射ミラー41cで反射されたチャートの光束の一部は、ハーフミラー41bで反射されて第1反射ミラー41aに導かれ、第1反射ミラー41aで反射されて左眼用偏向部材25bLに入射し、左眼用偏向部材25bLで屈折されて左眼用測定光学系24Lに入射し、左眼用測定光学系24Lの観察系31又は測定系(眼屈折力測定系33等)を経由して撮像素子31gに受光される。
制御部26は、右眼用測定光学系24Rの撮像素子31gからの画像信号に基づくチャート像Cと、撮像素子31gの原点を示すスケール像Sを合成した画像を表示部30の表示画面30aに出力する。また、制御部26は、左眼用測定光学系24Lの撮像素子31gからの画像信号に基づくチャート像Cと、撮像素子31gの原点を示すスケール像Sを合成した画像を表示部30の表示画面30aに出力する。なお、制御部26は、左右の画像の一方を表示してもよいし、これらを並列に並べて表示してもよいし、左右のチャート像Cが識別できるように色分けするなどして、これらを合成して表示してもよい。
一方、右眼用測定光学系24Rのアライメント光源32lを点灯して視標投影系32で十字型のチャート(視標)を投影すると、このチャートの光束が標投影系32の光路を介して右眼用測定光学系24Rから出射し、右眼用偏向部材25bRで屈折されて第1光学ユニット40のハーフミラー41bに入射する。この光束は、ハーフミラー41bを透過して第2反射ミラー41cに入射し、第2反射ミラー41cで反射された後、ハーフミラー41bで反射されて第1反射ミラー41aに入射する。
次いで、この光束は第1反射ミラー41aで反射されて左眼用偏向部材25bLに入射し、左眼用偏向部材25bLに屈折されて左側測定光学系24Lに入射し、左眼用測定光学系24Lの観察系31又は測定系(眼屈折力測定系33等)を経由して撮像素子31gに受光される。また、第2反射ミラー41cで反射されたチャートの光束の一部は、ハーフミラー41bを透過して右眼用偏向部材25bRに入射し、右眼用偏向部材25bRで屈折されて右眼用測定光学系24Rに入射し、観察系31又は測定系(眼屈折力測定系33等)を経由して右眼用測定光学系24Rの撮像素子31gに受光される。
この場合も、制御部26によって、左眼用測定光学系24Lの撮像素子31gからの画像信号に基づいて、チャート像Cとスケール像Sとが合成された画像が表示される。または、右眼用測定光学系24Rの撮像素子31gからの画像信号に基づいて、チャート像Cとスケール像Sとが合成された画像を表示部30に表示したり、左右の画像を並列に配置した画像や、これらを合成した画像を表示部30に表示したりする。
このように、第1光学ユニット40によって、左又は右の視標投影系32で投影されたチャート像Cを、右及び左の撮像素子31gでそれぞれ取得することができ、一方又は両方の撮像素子31gからの出力信号に基づくチャート像Cとスケール像Sに基づいて、左右の測定光学系24L,24Rの光路のねじれの有無やねじれの程度など、光路の状態を把握することができる。これに基づいて、左右の測定光学系24L,24Rの傾きを調整することができる。
第2光学ユニット42は、主に眼科装置本体10の出荷前に、製造工場などで測定光学系24の光軸の状態を解析するときに用いられる。また、一部のフォロプタなど、撮像素子を備えていない眼科装置本体10に装着すれば、この第2光学ユニット42で各測定光学系24L,24Rからのチャート像Cを観察して、各測定光学系24L,24Rの光軸の状態を把握することもできる。
第2光学ユニット42は、図7に示すように、L字形の角筒からなる筺体42aを有し、筺体42aの長尺側の側面中央に、額当部15に着脱自在に取り付けられる取付部材42bが設けられている。筐体42a内には、光学素子として、反射ミラー43aと、この反射ミラー43aの反射経路に配置されたハーフミラー(偏向部材)43bとが収容されている。また、第2光学ユニット42では、ハーフミラー43bの反射経路(若しくは透過光路)に、画像取得部としての撮像素子(CCD)44が設けられている。
このような第2光学ユニット42を額当部15に取り付け、例えば、左眼用測定光学系24Lのアライメント光源32lを点灯して視標投影系32で十字チャート(視標)を投影すると、このチャート像Cが左眼用偏向部材25bLで屈折されて第2光学ユニット42の反射ミラー43aに入射する。チャート像Cは、反射ミラー43aで反射され、さらにハーフミラー43bで反射された後、撮像素子44に受光される。
一方、右眼用測定光学系24Rのアライメント光源32lを点灯して視標投影系32で十字チャート(視標)を投影すると、このチャート像Cが右眼用偏向部材25bRで屈折されて第2光学ユニット42のハーフミラー43bに入射する。チャート像Cは、ハーフミラー43bを透過して撮像素子44に受光される。
このように、第2光学ユニット42によって、左又は右の視標投影系32で投影されたチャート像Cを、撮像素子44で受光することができ、撮像素子44で受光したチャート像Cを利用して、左右の測定光学系24L,24Rの光路の状態を把握することができる。
なお、第2光学ユニット42では、撮像素子44に代えて接眼レンズなどの接眼部材を接続し、この接眼部材を介してユーザや作業者がチャート像Cを直に観察できるようにしてもよい。すなわち、この接眼レンズがチャート像Cを取得する画像取得部として機能する。または、撮像素子44とは別個に接眼部材を設け、撮像素子44に入射する光の一部を偏向光学部材(ビームスプリッタなど)で取り出して、接眼部材に導く構成としてもよい。また、この場合は光路上に基準位置を示す十字のスケールが描かれたレチクルを配置することで、このスケール像Sとチャート像Cとを、接眼部材で同時に観察することができる。
上述のような構成の実施例1の眼科装置1では、駆動機構22による水平方向、鉛直方向への測定ヘッド23の移動によって、測定ヘッド23が接続軸50との接続部を中心にθ軸回り、α軸回り、β軸回りに回転して出荷時の初期姿勢からのずれを生じることがある。この測定ヘッド23の姿勢のずれが許容範囲を超えると、被検眼Eに対する測定光学系24の光軸もねじれ(ずれ)を生じ、両眼視での測定の際に被検者が融像困難となったり、測定精度に影響したりするおそれがある。
実施例1の眼科装置1では、視標の像に基づいて測定光学系24の光路の状態を把握して、測定ヘッド23(測定光学系24)の姿勢を適切に調整することができるようにしたものである。以下、実施例1の眼科装置1の光路の状態を把握し、測定ヘッド23の姿勢を調整する手順の一例として、右眼用偏向ユニット25Rの傾き調整の手順を、図8、図9を参照しながら説明する。図8は、右眼測定ヘッド23をβ軸回りに回転させる様子を説明するための図である。図9は、右眼用偏向ユニット25Rと対物レンズ31aとをα軸回りに回転させる様子を示す図である。
実施例1の眼科装置本体10において、制御部26の制御下、右眼測定ヘッド23の右眼用測定光学系24Rを作動し、アライメント光源32lを点灯して視標投影系32で十字型のチャートを投影すると、チャートの光束が上述したように、第1光学ユニット40(又は第2光学ユニット42)に導かれて、左眼用測定光学系24Lの撮像素子31g(第2光学ユニット42の場合は撮像素子44、以下、省略)に受光される。
制御部26は、図7の紙面右に示すように、撮像素子31gから出力される画像信号に基づくチャート像Cと、撮像素子31gの原点を示すスケール像Sを合成した画像を表示部30の表示画面30aに表示する。ユーザ等は、表示画面30aを視認することで、スケール像Sに対するチャート像Cのずれ、つまり被検眼Eに対する測定光学系24の光路のねじれを把握することができる。
図7の例では、右眼測定ヘッド23Rがθ軸、α軸、β軸回りにそれぞれ傾いていることから、チャート像Cの中心がスケール像Sの中心(原点)からずれているとともにチャート像Cの縦軸と横軸もスケール像Sの縦軸と横軸に対して傾いて表示されている。
まず、チャート像Cの傾きを調整するため、右眼測定ヘッド23Rをβ軸回りに回転させる。具体的には、偏心ピン52Rに、工具60を取り付け、工具60を回転させることで、回転軸23bRを中心として、右眼測定ヘッド23Rを図7の紙面左図に矢印で示す方向、すなわちβ軸回りに回転させる。
この回転によって、図8の紙面右側に示すように、チャート像Cの縦軸及び横軸が、スケール像Sの縦軸及び横軸と平行となって、チャート像Cの傾きが適切に調整される。なお、右眼測定ヘッド23Rは比較的重量があるため、トルクの大きな工具60を用いることが望ましい。β軸回りへの回転による調整が完了したら、長溝51bRを介して右ハウジング部23aRのねじ穴に留め付けられたねじ54Rを締め付ける。さらにU字溝51aRに挿通された偏心ピン52Rを適宜の手段で右ハウジング部23aRに固定する。これにより、右ハウジング部23aRが接続板51に固定され、調整位置からの不測の回転が防止される。
この段階では、α軸回りとθ軸回りの傾きが調整されていないため、チャート像Cの中心がチャート像Cの原点からずれた状態となっている。まずα軸回りの傾きを調整するため、図8の紙面左図に示すように、偏心ピン53Rに工具61を取り付け、工具61を回転させることで、右眼用偏向ユニット25Rを、図8の紙面左図に矢印で示す方向、すなわちα軸回りに回転させる。
この回転によって、図8の紙面上下方向に、チャート像Cが移動する。図8の例ではチャート像Cがスケール像Sよりも紙面下側に位置しているので、右眼用偏向ユニット25Rを回転させて、チャート像Cの横軸が、スケール像Sの横軸と一致するまでチャート像Cを上方に移動させる。なお、右眼用偏向ユニット25Rは比較的軽量であるため、ドライバーなどのトルクの小さな工具61で回転させることができる。α軸回りへの回転による調整が完了したら、長溝25cRを介して右ハウジング部23aRのねじ穴に留め付けられたねじ55Rを締め付ける。さらにU字溝25bRに挿通された偏心ピン53Rのねじ56Rを右ハウジング部23aRの取付穴23cRに螺着する。これにより、右眼用偏向ユニット25Rが右ハウジング部23aRに固定され、調整位置からの不測の回転が防止される。
次いで、回旋駆動機構22cRを駆動させて、右眼測定ヘッド23Rをθ軸回りに回転させて、紙面左右方向のずれを調整してもよい。この場合、図8の紙面左右方向に、チャート像Cが移動する。図8の例ではチャート像Cがスケール像Sよりも紙面右側に位置しているので、右眼測定ヘッド23Rを回転させて、チャート像Cの縦軸が、スケール像Sの縦軸と一致するまでチャート像Cを左方向に移動させる。なお、θ周りの調整は、測定時のアライメントによって調整できるので、ここで行わなくてもよい。
以上の操作によって、チャート像Cがスケール像Sと一致し、右眼測定ヘッド23Rのα、β、θ軸回りの傾きが調整されて、初期姿勢に復帰させることができ、右眼用測定光学系24Rの光路のねじれを適切にリセットすることができる。左眼測定ヘッド23Lについても、同様の操作を行うことで、α、β、θ軸回りの傾きを調整して、初期状態の適切な姿勢に復帰させることができる。ユーザ等は、表示部30のチャート像Cを視認しながら姿勢の調整作業を行えるので、測定ヘッド23の傾きの調整を、より簡易かつ精度よく行うことができる。
また、実施例1では、左眼測定ヘッド23L及び右眼測定ヘッド23Rの一方の視標投影系32で投影したチャート像C及びスケール像Sを、左眼測定ヘッド23L及び右眼測定ヘッド23Rの両方の撮像素子31gで受光することができる(図6参照)。したがって、両方の撮像素子31gからの画像信号に基づくチャート像Cとスケール像Sとを表示部30に表示し、これらの画像に基づいて傾きを調整してもよい。右眼測定ヘッド23Rの姿勢が不適切であると、2つのチャート像Cの位置がずれて表示される。この2つのチャート像Cの位置が一致するように、右眼測定ヘッド23Rをα、β、θ軸周りに回転させることで、右眼測定ヘッド23Rの傾きを調整して、適切な姿勢とすることができる。
次に、実施例1の眼科装置1の作用効果を説明する。実施例1の眼科装置1は、上述したように、視標(チャート)を投影する視標投影系32、及び視標投影系32によって投影された視標の像(チャート像C)を観察する観察系が、被検者の左眼EL及び右眼ERに対応して一対配置された眼科装置本体10と、視標投影系32により投影された視標(チャート)の基準位置(スケール)に対する位置関係を確認すべく視標の像(チャート像C)を取得する画像取得部(撮像素子31g,44、接眼レンズ)と、一対の視標投影系32の光路上に着脱自在に設けられ、一対の視標投影系32の光路を合流させるとともに、一対の視標投影系32からの視標(チャート)の光束を画像取得部(撮像素子31g,44、接眼レンズ)に導く導光光学系(第1反射ミラー41a,ハーフミラー41b,第2反射ミラー41c,反射ミラー43a,ハーフミラー43b)を有する光学ユニット40,42を備える。
したがって、一方の測定光学系24L,24Rの視標投影系32から投影されたチャート像Cを、画像取得部(撮像素子31g,44、接眼レンズ)で取得して、スケール像Sに対する位置関係を確認することができる。スケール像Sに対するチャート像Cの位置関係が適切である場合(例えば、スケール像Sとチャート像Cとの中心、縦軸、横軸が一致するか又はずれが許容範囲)、一方の測定光学系24L,24Rの光路にねじれがなく適切であることがわかる。これに対して、スケール像Sに対するチャート像Cの位置関係が適切でない場合(例えば、スケール像Sとチャート像Cとの中心、縦軸、横軸のずれが許容範を超えている)、一方の測定光学系24L,24Rの光路のねじれが生じていることがわかる。したがって、一方の測定光学系24L,24Rの光路の状態を把握することができる。また、他方の測定光学系24L,24Rについても同様の操作によって、光路の状態を把握することができる。このような光路の状態に基づいて、一方及び他方の測定光学系24L,24Rを適切な姿勢に調整することで、各々の光路を適切な状態に戻すことができる。
また実施例1の眼科装置1では、画像取得部(撮像素子31g)が、眼科装置本体10に設けられ、第1光学ユニット40の導光光学系(第1反射ミラー41a,ハーフミラー41b,第2反射ミラー41c)は、一対の視標投影系32の一方から投影された視標の像(チャート像C)を一方又は他方の観察系31又は眼の特性を測定する測定系(眼屈折力測定系33等)を経由して、画像取得部(撮像素子31g)に導くように構成されている。したがって、例えば、右側の視標投影系32から投影されたチャート像Cを、右側の撮像素子31gで受光することもできるし、左側の撮像素子31gで受光することもできる。これにより、眼科装置本体10の機能に応じて、光路の状態をより詳細に把握することができる。また、眼科装置本体10が備える撮像素子31を画像取得部として使用することができ、別個に画像取得部を設ける必要がなく、眼科装置1の簡易化や、コンパクト化が可能となる。
また、実施例1では、画像取得部(撮像素子44)が、第2光学ユニット42に設けられ、導光光学系(反射ミラー43a,ハーフミラー43b)は、一対の視標投影系32からそれぞれ投影された視標の像(チャート像C)を、画像取得部(撮像素子44)に導くように構成されている。この構成により、測定光学系24L,24Rの観察系31を作動することなく、第2光学ユニット42の撮像素子44でスケール像Sに対するチャート像Cの位置関係が適切か否かを把握することができる。したがって、例えば出荷前の工場内で多くの眼科装置1の光路の状態を簡易かつ迅速に把握することができる。また、一部のフォロプタなど、観察系31を備えていない眼科装置1にも適用することができる。
また、実施例1では、画像取得部が、撮像素子31g,44であり、撮像素子31g,44の座標に基づいて、基準位置が定められている。つまり、画素数などに基づいて得られた撮像素子31g,44の原点(中心)を基準位置の中心とすることができる。これにより、基準位置を容易に定めることができる。なお、実施例1では、表示部30にチャート像Cを表示しているため、基準位置として、撮像素子31g,44の原点を中心とする十字形のスケール像Sを、チャート像Cとともに表示している。このスケール像Sの画像は、制御部26がプログラムにより作成して表示部30に表示してもよいし、十字形のスケールを投影して撮像素子31g,44で取得したスケール像Sを、表示部30に表示してもよい。
また撮像素子31g,44をマイクロディスプレイに接続し、撮像素子31g,44で取得した画像を、マイクロディスプレイのビューアで観察できるようにしてもよい。
また、実施例1では、撮像素子31g,44を制御する制御部26と、撮像素子31gで取得した視標の像(チャート像C)を表示する表示部30と、を備え、制御部26は、撮像素子31gからの画像信号に基づいて視標の像(チャート像C)及び基準位置に対応する基準視標(スケール像S)とを重畳した画像を表示部30に表示している。これにより、ユーザ等が表示部30の画像を視認して、チャート像Cとスケール像Sとの位置関係や光路のねじれを容易に把握することができる。
なお、実施例1では、第2光学ユニット42の撮像素子44を眼科装置本体10の制御部26で制御しているが、この制御部26とは別個に、撮像素子44を制御する制御部を設けてもよい。例えば、マイクロディスプレイを撮像素子44に接続した場合、マイクロディスプレイを制御する電子回路を、撮像素子44の制御部とすることなどができる。
また、画像取得部が、接眼光学部材(接眼レンズ)であり、接眼光学部材に、基準位置を示す基準視標(スケール像S)が設けられているものであってもよい。この場合、撮像素子31gでチャート像Cを取得する必要がない。また、第2光学ユニット42の撮像素子44に代えて接眼レンズを設けることもできる。この構成により、ユーザ等が接眼レンズによって直接かつ簡易にチャート像Cとスケール像Sとの位置関係を確認することができる。また、光学ユニット42などの簡素化や低コスト化を図ることもできる。
また、実施例1の第1、第2光学ユニット41,42は、接眼光学部材(接眼レンズ)と、視標の像(チャート像C)を接眼光学部材及び画像取得部(撮像素子31g,44)に導く光路分岐部材(ビームスプリッタ)と、を備えたものであってもよい。この構成により、チャート像Cとスケール像Sとの位置関係を、撮像素子31g,44で取得した画像に基づいて確認するとともに、ユーザ等が接眼レンズによって直接に確認することができる。そのため、撮像素子31g,44で取得した画像を表示部30に表示する手間を省くことができる。撮像素子31g,44で取得した画像は、制御部26が各種処理(例えば、画像に基づいて自動で光路の状態を調整する)に用いることができる。
また、実施例1では、駆動機構22は、アーム14に吊り下げられ、測定光学系24は、駆動機構22に吊り下げられている。この構成では、被検者の前方に空間を設けることができ、被検者に圧迫感を与えることのない眼科装置本体10を提供することができる。このような吊り下げ型の測定光学系24であっても、光路の状態を把握して、使用による光路のねじれを適切に調整できるので、高精度な測定が可能となる。
また、実施例1の眼科装置本体10は、左右の被検眼Eに対応して一対の測定光学系24(測定ヘッド23)が設けられている。この構成により、眼科装置本体10は、両眼視の状態で各被検眼の眼情報を取得することができる。また、測定光学系24の光路のねじれを適切な状態に戻すことで、被検者は、視標等を適切に融像することができ、眼科装置本体10による被検眼Eの特性を高精度に測定することができる。
以上、本発明の眼科装置本体を実施例に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、上記実施例では、測定光学系24(測定ヘッド23)のα軸回り及びβ軸回りの回転を、工具60,61を用いて手動で行っているが、これに限定されるものではなく、自動で行われるようにしてもよい。例えば、観察系31を、被検眼の眼球回旋軸OL,OR(θ軸)と平行な軸θを中心に回旋させる第1回旋駆動機構(回旋駆動部22c)に加えて、観察系31を、第1水平軸を中心に回旋させる第2回旋駆動機構、並びに観察系を、第2水平軸を中心に回旋させる第3回旋駆動機構の少なくとも何れかからなる回旋駆動機構と、画像取得部(撮像素子31g,44,)で取得した視標の像(チャート像C)及び基準位置(スケール像S)に基づいて、回旋駆動機構を駆動制御する制御部26と、を備えた構成としてもよい。なお、被検眼の眼球回旋軸OL,OR(θ軸)と平行な軸は、被検眼の眼球回旋軸OL,OR自体であってもよいし、これと平行であれば接続軸50Rや観察系31が自ら有する回転軸であってもよい。
この構成により、迅速かつより高精度に光路のねじれを調整することができる。なお、このように自動で光路のねじれを調整する場合は、表示部30にチャート像Cとスケール像Sとを表示しなくてもよいが、ユーザ等の確認のために表示するようにしてもよい。