JP7145385B2 - 紙葉類分離パッドおよび画像形成装置 - Google Patents
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Description
給紙機構は、画像形成装置の給紙カセットや給紙トレーに積み重ねて収容された紙葉類が誤って2枚以上重なった状態で給紙される、いわゆる重送を防止して、当該紙葉類を、1枚ずつ分離して画像形成装置に供給するための機構である。
給紙機構を構成する紙葉類分離パッドとしては、たとえば、その片面(上面)が給紙ローラや紙葉類と接触する接触面とされた、熱可塑性エラストマ等からなる平板状のものなどが用いられる(特許文献1~3等参照)。
また給紙ローラは、たとえば、外周面を、給紙カセットや給紙トレーに積み重ねて収容される一番上、1枚目の紙葉類の上面と、紙葉類分離パッドの接触面とに接触可能な状態で、上記給紙カセットや給紙トレーの上方などに配設される。
その際に、給紙カセットや給紙トレーから、1枚目の紙葉類だけでなく、2枚目以下の紙葉類をも含む、2枚以上の紙葉類が重なったままで給紙される場合がある。
そして、給紙ローラと直接に接する1枚目の紙葉類のみが、2枚目以下の紙葉類から分離されて、給紙ローラの回転により、画像形成装置に給紙される。
また、紙葉類分離パッドにおいては、多数枚の紙葉類を連続して給紙しても接触面の表面状態、とくに摩擦係数が大きく変化しないことも、上記分離性能や給紙性能を安定させる上で肝要と考えられる。
また、実際の紙葉類分離パッドは、分離性能を高めるために、使用初期の摩擦係数が、紙葉類の給紙に適した範囲よりも高めであることが多く、その場合には、とくに1枚のみの紙葉類を安定して給紙することができず、給紙不良を生じる場合もある。
また本発明の目的は、当該紙葉類分離パッドを含む画像形成装置を提供することにある。
また本発明は、かかる本発明の紙葉類分離パッドを含む画像形成装置である。
また本発明によれば、当該紙葉類分離パッドを含む画像形成装置を提供することができる。
本発明の紙葉類分離パッドは、少なくとも接触面が熱可塑性エラストマによって形成され、かつ前記接触面が、前記熱可塑性エラストマの酸化物からなる厚み3μm以上の酸化膜によって被覆されていることを特徴とするものである。
本発明においては、たとえば、熱可塑性エラストマからなり、酸化膜で被覆される前の接触面の摩擦係数を、従来同様に、紙葉類の分離や給紙に適した範囲より高め、あるいは範囲内でも高めに設定する。
この状態で給紙ローラを回転させて紙葉類の給紙を開始すると、給紙を繰り返すごとに、給紙ローラおよび紙葉類との摩擦によって酸化膜が徐々に摩耗し、それにともなって接触面の摩擦係数は上昇傾向を示す。
そのため、本発明の紙葉類分離パッドによれば、接触面に紙粉が蓄積されていない使用初期から、給紙を繰り返して当該接触面に紙粉が蓄積されて以降まで長期に亘って継続して、接触面の摩擦係数を、紙葉類の分離や給紙に適した範囲に維持することができる。
図1は、本発明の紙葉類分離パッドの、実施の形態の一例の外観を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の紙葉類分離パッド1は、全体が、熱可塑性エラストマによって、実質的に内部に気泡を有しない非多孔質状で、かつ図において上面が給紙ローラおよび紙葉類と接触する接触面2とされた、厚みが一定の矩形平板状に形成されている。
また紙葉類分離パッド1は、接触面2から反対面3までの、両面の面方向の平面形状が矩形とされることで、全体が矩形平板状とされている。
熱可塑性エラストマとしては、たとえば、ポリエステル系熱可塑性エラストマ、およびポリウレタン系熱可塑性エラストマからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
図1中に拡大して示すように、接触面2は、当該接触面2を形成する熱可塑性エラストマの酸化物からなる酸化膜4によって被覆されている。
酸化膜4の厚みがこの範囲未満では、接触面2を酸化膜4によって被覆することによる上述した効果、すなわち、紙粉が蓄積される前の接触面2の摩擦係数を、紙葉類の分離や給紙に適した範囲に調整して、重送や給紙不良を抑制する効果が得られない。
そのため、とくに紙葉類分離パッド1の使用初期に、分離性能が不足して重送を生じたり、1枚のみの紙葉類を安定して給紙することができずに給紙不良を生じたりしやすくなる。
そして、とくに紙葉類分離パッド1の使用初期に、2枚以上の紙葉類を良好に分離して、1枚のみの紙葉類を、給紙不良を生じることなく安定して、画像形成装置に給紙することができる。
したがって、使用開始から長期間に亘って、紙葉類を、重送や給紙不良を生じることなく安定して、画像形成装置に給紙し続けることができる。
酸化膜4は、後述するように、たとえば、熱可塑性エラストマからなる接触面2に紫外線を照射する等して形成するのが一般的であるが、厚みが上記の範囲を超える厚みの大きい酸化膜4を形成するのは容易でない。
すなわち、厚みの大きい酸化膜4を形成するには、紫外線の照射時間を長くしたり、照射強度を強くしたりしなければならず、高温になって紙葉類分離パッド1が熱変形したり、酸化劣化して接触面2に亀裂を生じたりしやすくなる場合がある。
これに対し、酸化膜4の厚みを10μm以下とすることにより、熱変形や亀裂等を生じることなしに、紙葉類分離パッド1を、低コストで生産性良く、効率的に製造することができる。
すなわち、上述した範囲内で酸化膜4の厚みを大きくするほど、紙葉類分離パッド1の接触面2の摩擦係数を小さく、逆に酸化膜4の厚みを小さくするほど、上記接触面2の摩擦係数を大きくすることができる。
接触面2に形成する酸化膜の厚みを前述した範囲とするためには、たとえば、上記接触面2となる片面に照射する紫外線の積算光量を調整すればよい。
積算光量を大きくするほど、酸化膜4の厚みを大きくすることができる。
積算光量の範囲は、接触面2を構成する熱可塑性エラストマの種類等に応じて、任意の範囲に設定できるが、接触面2を厚み3μm上の酸化膜4で被覆することを考慮すると、積算光量は50mJ/cm2以上、とくに200mJ/cm2以上であるのが好ましい。
積算光量がこの範囲を超えても、それ以上の効果が得られないだけでなく、前述したように、紫外線を照射して酸化膜4を形成する際に、高温になって紙葉類分離パッド1が熱変形したり、酸化劣化して接触面2に亀裂を生じたりしやすくなる場合がある。
図2は、本発明の紙葉類分離パッドを組み込んだ給紙機構の一例を示す概略断面図である。
このうち紙葉類分離パッド1は、接触面2を、給紙ローラ7の下方から当該給紙ローラ7の外周面6に対向させた状態で、図示しない給紙カセットや給紙トレーの近傍に配設されている。
給紙ローラ7の外周面6を形成するゴムとしては、たとえば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
そのためには、たとえば、バネを給紙ローラ7側に設けてもよいし、給紙カセットや給紙トレー側と、紙葉類分離パッド1側とに設けてもよい。
そして上記接触状態の給紙ローラ7を、図中に一点鎖線の矢印で示す方向に回転させる。
そうすると、給紙ローラ7の外周面6が接触した一番上、1枚目の紙葉類Pが、当該給紙ローラ7の回転にともなって、図中に実線の矢印で示すように、給紙カセットや給紙トレーから送出される。
そのため、給紙ローラ7の外周面6と直接に接する1枚目の紙葉類のみが、2枚目以下の紙葉類から分離されて画像形成装置に給紙される。
なお、これらの図では、給紙ローラ7の外周面6の、紙葉類Pに対する摩擦係数をμR、紙葉類分離パッド1の接触面2の、紙葉類Pに対する摩擦係数をμS、互いに重なり合った2枚の紙葉類P同士の間の摩擦係数をμP、給紙ローラ7の外周面6を紙葉類分離パッド1の接触面2に接触させるための荷重をFとしている。
まず図3(a)を参照して、給紙ローラ7の外周面6と、紙葉類分離パッド1の接触面2との間に紙葉類Pが1枚のみ給紙された場合には、図中に一点鎖線の矢印で示す給紙ローラ7の回転に伴って、当該給紙ローラ7の外周面6と、紙葉類Pとの間に摩擦力μR×Fが発生する。
この際、摩擦係数μR、μSがμR>μSであってもその差が小さいか、μR=μSか、もしくはμR<μSでは、紙葉類Pの給紙不良を生じてしまう。
すなわち、摩擦力μR×Fが、摩擦力μS×Fと同等かそれよりも小さくなるため、紙葉類Pが、所定の速度でスムースに給紙されなかったり、全く給紙されなかったりする。
そのため紙葉類Pを、給紙ローラ7の回転に伴い、摩擦力μS×Fに抗して、図中に白抜きの矢印で示すように、画像形成装置に、所定の速度でスムースに給紙することができる。
したがって上記紙葉類分離パッド1を、たとえば、外周面6がEPDM等のゴムによって形成されて、紙葉類Pに対する摩擦係数μRが、摩擦係数μSよりも十分に大きい給紙ローラ7と組み合わせることによって、上記の条件を満足させることができる。
図3(b)を参照して、給紙ローラ7の外周面6と、紙葉類分離パッド1の接触面2との間に紙葉類Pが2枚重なって給紙された場合には、図中に一点鎖線の矢印で示す給紙ローラ7の回転に伴って、互いに重なり合った紙葉類P間に摩擦力μP×Fが発生する。
ところが、紙葉類同士の摩擦係数μPは、一般に、ゴムからなる給紙ローラ7の外周面6に対する摩擦係数μR、および熱可塑性エラストマからなる紙葉類分離パッド1の接触面2に対する摩擦係数μSよりも小さい。
よって、給紙ローラ7を回転させると、当該給紙ローラ7の外周面6と直接に接触する1枚目(図では上側)の紙葉類Pは、図中に白抜きの矢印で示すように、画像形成装置に送出される。
その結果、1枚目の紙葉類Pのみが、2枚目の紙葉類Pから分離されて、給紙ローラ7の回転により画像形成装置に給紙される。
すなわち2枚目の、1枚のみの紙葉類Pは、次の給紙の際に、摩擦力μS×Fより摩擦力μR×Fの方が十分に大きいため、給紙ローラ7の回転に伴って、画像形成装置に、所定の速度でスムースに給紙される。
そのため、給紙ローラ7の外周面6と、紙葉類分離パッド1の接触面2との間に紙葉類Pが何枚重なって給紙されても、直接に接する紙葉類P間の摩擦係数μP、および摩擦力μP×Fはほぼ一定である。
したがって、図では紙葉類Pが2枚重なった場合を示したが、紙葉類Pが3枚以上重なった場合でも、各紙葉類Pの挙動は同様である。
紙葉類分離パッド1の接触面2の摩擦係数μSの具体的な範囲は、上記の関係を満足する任意の範囲に設定することができる。
たとえば、外周面6がEPDM等のゴムからなる給紙ローラ7と組み合わせて、紙葉類Pとしての普通紙の給紙に用いる紙葉類分離パッド1の接触面2の、摩擦係数μSの好適な範囲は、発明者の検討によると0.55以上、0.80以下である。
そのため、上記給紙ローラ7および紙葉類Pと組み合わせて用いる紙葉類分離パッド1は、酸化膜4によって被覆した接触面2の、使用初期の摩擦係数μSを、上述した0.55以上、0.80以下の範囲に設定するのが好ましい。
また、前述したように接触面2の摩擦係数μSと酸化膜4の厚みには相関関係があり、摩擦係数μSを上記の範囲未満とするためには、酸化膜4の厚みを、前述した範囲を超えて大きくしなければならない。
また、酸化膜4の形成に要する時間や消費エネルギーが大きくなって、紙葉類分離パッド1の生産性が低下したり、製造コストが嵩んだりする原因ともなる。
一方、摩擦係数μSが上記の範囲を超える場合には、とくに紙葉類分離パッド1の使用初期に、1枚のみの紙葉類を安定して給紙することができず、給紙不良を生じやすくなる。
また、給紙を繰り返した際の酸化膜4の摩耗による摩擦係数の上昇と、紙粉の蓄積による摩擦係数の低下との兼ね合いによって、接触面2の、紙葉類Pとしての普通紙に対する摩擦係数μSを、長期に亘って、前述した好適な範囲に維持することもできる。
そのため、使用開始から長期間に亘って、紙葉類を、重送や給紙不良を生じることなく安定して、画像形成装置に給紙し続けることもできる。
ただし、紙葉類分離パッド1の厚みは、通紙時にビビリ音を生じたりするのを抑制しながら、紙葉類を良好に分離させることを考慮すると0.5mm以上、とくに1.0mm以上であるのが好ましく、1.5mm以下、とくに1.2mm以下であるのが好ましい。
〈画像形成装置〉
本発明の画像形成装置は、本発明の紙葉類分離パッドを含むことを特徴とする。
かかる本発明の画像形成装置としては、先に説明したように、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
〈実施例1〉
ポリエステル系熱可塑性エラストマ〔東レ・デュポン(株)製のハイトレル(登録商標)3046〕100質量部に、酸化チタン〔堺化学工業(株)製のSA-1、アナタース型〕1質量部、およびカーボンブラック〔東海カーボン(株)製の商品名シーストSO〕1質量部を配合し、2軸押出機を用いて混練したのち、押出機を用いて厚み0.4mmのシート状に押出成形した。
シートは、接触面となる片面と低圧水銀ランプとの間の距離が約50mmとなるように、上記片面を低圧水銀ランプに対向させてセットした。
次いで、低圧水銀ランプから紫外線をシートの片面に照射して、当該片面を構成する熱可塑性エラストマを酸化させることにより、当該片面が酸化膜で被覆された、紙葉類分離パッドの母材シートを作製した。
そして、作製した母材シートを矩形状に切り出して、接触面が酸化膜で被覆された紙葉類分離パッドを製造した。
〈比較例1〉
成形したシートの片面に紫外線を照射しなかったこと以外は実施例1と同様にして、接触面が酸化膜で被覆されていない母材シートを作製し、紙葉類分離パッドを製造した。
紫外線の積算光量を10mJ/cm2(比較例2)、20mJ/cm2(比較例3)、200mJ/cm2(実施例2)、500mJ/cm2(実施例3)、1000mJ/cm2(実施例4)としたこと以外は実施例1と同様にして、接触面が酸化膜で被覆された母材シートを作製し、紙葉類分離パッドを製造した。
実施例1~4、比較例2、3で製造した紙葉類分離パッドの、接触面に形成した酸化膜の厚みを、超微小押込み硬さ試験機〔(株)エリオニクス製のENT-2100〕を用いて、ナノインデンテーション法によって測定した。
すなわち紙葉類分離パッドの接触面に、上記試験機の圧子を押し込んだ際の荷重平方根値と、押込み距離との関係を図4に示すようにプロットして、押込み開始位置から、押込み方向の荷重平方根値の乱れが終了した位置までの深さを、酸化膜の厚みとして求めた。
実施例1~4、比較例1~3で製造した初期状態の紙葉類分離パッドの接触面の、紙葉類としての普通紙〔富士ゼロックス(株)製のP紙〕に対する摩擦係数を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の常温常湿環境下、表面性状測定機〔新東科学(株)製のHEIDON(登録商標)-14DR〕を用いて測定した。
〈給紙試験〉
実施例1~4、比較例1~3で製造した初期状態の紙葉類分離パッドを、複合機〔キヤノン(株)製のimageRUNNER ADVANCE 4545II〕の、純正の紙葉類分離パッドと交換して、普通紙〔富士ゼロックス(株)製のP紙〕を給紙させた。そして給紙不良の有無を確認して、下記の基準で、その特性を評価した。
×:重送および/または給紙不良あり。
また評価が「×」であったものは、重送が発生した場合は「重」、給紙不良が発生した場合は「給」を、表1中の「種別」の欄に記載した。
〈摩耗試験〉
実施例1~4、比較例1~3で作製した母材シートを幅約30mmのリボン状に切り出した。
次いで、金属芯11の外周面12に母材シート10を巻き付けた状態の外径を、レーザー外径測定機を用いて測定しながら、温度23±2℃、相対湿度50±5%の常温常湿環境下、金属芯11を、実線の矢印で示す方向に一定速度で連続回転させて母材シート10を摩耗させた。
そして、取り外した母材シート10を矩形状に切り出して、給紙を繰り返して酸化膜4が摩耗し、それに代わって接触面2に紙粉が蓄積された状態(摩耗後)の紙葉類分離パッドを再現した。
上記摩耗後の紙葉類分離パッドの接触面の、紙葉類としての普通紙〔富士ゼロックス(株)製のP紙〕に対する摩擦係数を、先の初期摩擦係数測定と同様にして、同条件で測定した。
以上の結果を表1に示す。
また、厚み3μm以上の酸化膜によって被覆した接触面は、当該酸化膜の摩耗後も、紙粉の蓄積によって摩擦係数を0.55以上、0.80以下に維持して、重送や給紙不良が生じるのを抑制できることも判った。
2 接触面
3 反対面
4 酸化膜
5 給紙機構
6 外周面
7 給紙ローラ
10 母材シート
11 金属芯
12 外周面
13 平盤
P 紙葉類
F、W 荷重
μP、μR、μS 摩擦係数
Claims (4)
- 紙葉類と接触する接触面を含み、少なくとも前記接触面は熱可塑性エラストマによって形成され、かつ前記接触面は、前記熱可塑性エラストマの酸化物からなる厚み3μm以上の酸化膜によって被覆されている紙葉類分離パッド。
- 前記熱可塑性エラストマは、ポリエステル系熱可塑性エラストマ、およびポリウレタン系熱可塑性エラストマからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の紙葉類分離パッド。
- 前記酸化膜は、厚みが10μm以下である請求項1または2に記載の紙葉類分離パッド。
- 前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙葉類分離パッドを含む画像形成装置。
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