JP4040546B2 - シート材給送装置及びその装置を有する画像形成装置 - Google Patents

シート材給送装置及びその装置を有する画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート材積載部材に積載されたシート材に表層の外周面が圧接し、該外周面の移動によって、当該外周面に圧接したシート材を送り出すシート材給送部材と、該シート材給送部材の表層の外周面に圧接する圧接部を有していると共に、該圧接部よりもシート材送り出し方向上流側の部分が、送り出されたシート材の先端が突き当たる傾斜面として構成されている傾斜部材とを具備し、該傾斜部材は、前記シート材給送部材の表層の外周面に対して接離する方向に移動可能に支持され、該傾斜部材の前記傾斜面と、シート材の送り出し方向との成す角度は、前記傾斜面に突き当たったシート材の先端が、該傾斜面に案内されて前記圧接部へ向けて移動できるように鋭角に設定され、かつ前記圧接部と傾斜面との成す角度が180°未満に設定されているシート材給送装置と、そのシート材給送装置を有する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
積載されたシート材を1枚ずつ分離して給送するシート材給送装置は、従来より各種形式のものが提案され、かつ実用化されている。例えば、シート材給送部材と、そのシート材給送部材の外周面に圧接した摩擦パッドとを有するシート材給送装置が従来より広く用いられている。このシート材給送装置は、シート材積載部材に積載された最上位のシート材がシート材給送部材の外周面に圧接し、そのシート材給送部材の回転によりシート材が送り出され、該シート材がシート材給送部材と摩擦パッドとの間を通るとき、最上位のシート材がそれ以外のシート材から分離され、最上位のシート材だけが給送されるように構成されている。この形式のシート材給送装置においては、シート材を上述のように分離するために、シート材に対する摩擦パッドの摩擦係数を大きく設定する必要がある。ところが、このように摩擦パッドの摩擦係数を大きくすると、その摩擦パッドとシート材給送部材との間を通過するシート材がスティックスリップを起こし、これによって異音が発生するおそれがある。
【0003】
かかる不具合の発生を防止し、ないしは抑制するために、冒頭に記載した形式のシート材給送装置が提案されている(特許文献1参照)。この形式のシート材給送装置によれば、シート材に対する傾斜部材の圧接部の摩擦係数を、摩擦パッドのように大きくする必要がないため、傾斜部材の圧接部とシート材給送部材とに挟持されて搬送されるシート材がスティックスリップを起こす不具合を防止でき、異音の発生を効果的に抑制することが可能である。
【0004】
ところが、従来は、上述のシート材給送部材の表層の特性について特に考慮が払われていなかったため、比較的早期にそのシート材給送部材がシート材に対してスリップするようになり、シート材を正しく送り出せなくなるおそれがあった。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−26348号公報〔段落(0018)−(0061)、図1−図58〕
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長期に亘ってシート材の分離機能を維持しながら、当該シート材を正しく送り出すことのできる冒頭に記載した形式のシート材給送装置と、その装置を有する画像形成装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式のシート材給送装置において、前記シート材給送部材の表層は、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、粘弾特性tanδ(損失正接)が0.045以下であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成されていることを特徴とするシート材給送装置を提案する(請求項1)。
【0008】
同じく、本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式のシート材給送装置において、前記シート材給送部材の表層は、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、反発弾性が73%以上であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成されていることを特徴とするシート材給送装置を提案する(請求項2)。
【0009】
また、上記請求項1又は2に記載のシート材給送装置において、前記シート材給送部材の表層を構成する材料が、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分としていると有利である(請求項3)。
【0010】
さらに、上記請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材給送装置において、前記シート材給送部材の表層を構成する材料が、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分とするゴム組成物を硫黄で架橋したものであると有利である(請求項4)。
【0011】
また、上記請求項4に記載のシート材給送装置において、ゴム成分100重量部に対する硫黄配合量が1.5重量部以上5重量部以下であると有利である(請求項5)。
【0012】
さらに、上記請求項4に記載のシート材給送装置において、ゴム成分100重量部に対する硫黄配合量が3重量部以上4重量部以下であると有利である(請求項6)。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するため、請求項1乃至6のいずれかに記載のシート材給送装置と、該シート材給送装置から送り出されたシート材に画像を形成する作像手段とを具備することを特徴とする画像形成装置を提案する(請求項7)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って説明する。
【0015】
図1はプリンタとして構成された画像形成装置の一例を示す概略垂直断面図である。画像形成装置本体100の内部には、シート材給送装置20と、そのシート材給送装置20から送り出されたシート材2に画像を形成する作像手段21とが設けられている。先ず、作像手段21の構成と作用を説明する。
【0016】
本例の作像手段21は、ドラム状の感光体22を有し、この感光体22は、画像形成動作時に図1における反時計方向に回転駆動される。このとき、帯電装置の一例である帯電ローラ23によって感光体22の表面が所定の極性に帯電され、その帯電された感光体22の表面には露光装置24から出射する光変調されたレーザ光Lが照射され、これによって感光体表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置25によってトナー像として可視像化される。
【0017】
感光体22に対向して、転写装置の一例である転写ローラ26が配置され、シート材給送装置20から後述する態様で矢印A方向に給送されたシート材2は、感光体22と転写ローラ26との間の転写部を通り、このとき転写ローラ26の作用により感光体22上のトナー像がシート材2に転写される。シート材2に転写されずに感光体22上に付着した転写残トナーは、クリーニング装置27によって除去される。また、転写部を通過したシート材2は、矢印Bで示すように定着装置28を通り、このときシート材2上のトナー像が熱と圧力の作用でシート材に定着される。定着装置28を通過したシート材は排紙部29に排出される。
【0018】
上述のようにして、シート材給送装置20から送り出されたシート材2に、作像手段21によって所定の画像が形成される。
【0019】
シート材給送装置20は、図1及び図2に示すように、上部が開放された箱状の本体ケース10と、その本体ケース10の後部に形成された開口部10bを通して本体ケース10内に着脱自在に装着されたカセット11を有している。このカセット11内には、一般に底板とも称せられているシート材積載部材1が配置され、その後端側に突設された耳部1aに形成された孔が、カセット11の各側壁11bに突設されたピン11aに回動自在に嵌合している。また、シート材積載部材1の先端側とカセット11の底壁11cとの間には、図1に示すように圧縮ばね3が配置され、これによってシート材積載部材1の先端側が上方に向けて付勢されている。
【0020】
また、シート材給送装置20は、シート材給送部材31を有し、本例のシート材給送部材31は、軸30と、その軸30に同心状に配置されて固定された弾性体より成る表層4とを有する給送ローラとして構成されている。軸30は、本体ケース10又は画像形成装置本体100に回転自在に支持されている。シート材積載部材1上には、図1及び図3に示すように、先に説明したシート材2が積載され、シート材積載部材1が圧縮ばね3により上方に付勢されることにより、図3に示す如く、そのシート材積載部材1上に積載されたシート材2の最上位のシート材2aの先端側部位Xがシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接する。以下、この部位を圧接部位Xという。また本例のシート材2は、紙又は樹脂シートなどから構成されている。
【0021】
後述するように、シート材2aはシート材給送部材31が回転することにより、図3に矢印Sで示した方向に送り出されるが、上述の圧接部位Xよりもシート材搬送方向下流側には、傾斜面6aを有する傾斜部材6が配置されている。この傾斜部材6の符号6bで示す部分は、圧縮ばね5の付勢作用によって、シート材給送部材31の表層4の外周面に圧接している。以降、この部分を圧接部6bと称することにする。このように傾斜部材6は、シート材給送部材31の表層4の外周面に圧接する圧接部6bを有していると共に、その圧接部6bよりもシート材送り出し方向上流側の部分が傾斜面6aとして構成されている。
【0022】
また、図2に示すように、傾斜部材6の各側面に突設された突部6dが本体ケース10に設けられたガイドレール8にそれぞれ摺動自在に嵌合している。これにより、傾斜部材6はシート材給送部材31の表層4の外周面に対して接離する方向、すなわちその外周面に対して接近又は離間する方向に移動可能に支持され、通常は、その傾斜部材6と本体ケース10の間に配置された圧縮ばね5によって、傾斜部材6の圧接部6bがシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接している。また傾斜部材6の下部には一対のフック6fが設けられ、これらが本体ケース10の係止部(図示せず)に係合することによって、傾斜部材6がその最上昇位置よりも上方に移動して本体ケース10から離脱することが阻止される。
【0023】
傾斜部材6の圧接部6bは、図2から判るように、給送ローラより成るシート材給送部材31の軸線方向に延び、その幅Wは狭くなっていて、圧接部6bよりもシート材送り出し方向下流側の傾斜部材6の部分6eは、シート材給送部材31の表層4の外周面から離間している。圧接部6bを、シート材2aの送り出し方向Sに複数に分割し、これらの圧接部6bをシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接させるように構成することもできる。
【0024】
また、図3に示すようにシート材積載部材1に積載されたシート材2がシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接した圧接部位Xと、傾斜部材6の圧接部6bがシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接した部分との間のシート材送り出し方向Sに沿う距離LSは、2mm乃至6mm程度の短い距離に設定されている。
【0025】
さらに、シート材2に対する表層4の外周面の摩擦係数をμ1、シート材同士の摩擦係数をμ2、シート材2に対する傾斜部材6の圧接部6bの摩擦係数をμ3としたとき、μ1>μ2>μ3に設定されている。傾斜部材6を樹脂により構成すると、シート材に対する傾斜部材6の摩擦係数を確実に下げることができる。
【0026】
図示していない制御部から給送信号が発せられると、同じく図示していないモータが作動を開始し、軸30と、これに固定された表層4から成るシート材給送部材31が、図1及び図3における反時計方向に回転駆動される。これにより表層4の外周面が移動するので、圧縮ばね3により加圧されてシート材給送部材31の表層4の外周面に圧接した最上位のシート材2aが、その表層4の外周面から受ける摩擦力によって、図3に示した矢印Sの方向に送り出される。このように、シート材給送部材31は、その表層4の外周面が、シート材積載部材1に積載されたシート材2に圧接し、該外周面の移動によって、当該外周面に圧接したシート材2aを送り出す用をなす。
【0027】
次いで、この送り出されたシート材2aは、図4に示すようにその先端が傾斜部材6の傾斜面6aに突き当たる。このとき、傾斜部材6の傾斜面6aと、シート材の送り出し方向Sの成す角度θは、図4に示すように、傾斜面6aに突き当たったシート材2aの先端が、該傾斜面6aに案内されて圧接部6bへ向けて移動できるように鋭角に設定されている。この角度θは、好ましくは50°乃至70°である。また、図6に示すように、傾斜部材6の圧接部6bと傾斜面6aとの成す角度θは、180°未満に設定されている。
【0028】
上述のようにして、圧接部6bに案内されたシート材2aは、図5に示すように、シート材給送部材31の表層4の外周面から摩擦力を受けながら、該外周面と傾斜部材6の圧接部6bとの間を通る。シート材2aの厚さに相当する距離だけ、傾斜部材6がシート材給送部材31の表層4の外周面から離間し、ここを、表層4の外周面から摩擦力を受けて搬送されるシート材2aが通過するのである。このとき、前述のように、各摩擦係数μ1、μ2、μ3はμ1>μ2>μ3に設定されているので、最上位のシート材2aは、シート材給送部材31の表層外周面から受ける摩擦力によって、支障なくカセット11から送り出されて圧接部6bの部位を通過する。次いで、このシート材2aは、図1を参照して先に説明したように、感光体22と転写ローラ26の間の転写部に搬送され、このとき感光体22上のトナー像がそのシート材2a上に転写される。
【0029】
上述したシート材給送装置20によると、シート材積載部材1上に積載された複数のシート材2のうちの最上位のシート材2aを他のシート材から分離して、その最上位のシート材2aだけを給送することができる。このときの作用を図4及び図5を参照して明らかにする。
【0030】
図4に示すように、最上位のシート材2aの先端が傾斜部材6の傾斜面6aに突き当たったとき、そのシート材2aが傾斜面6aに及ぼす力をFとし、この力Fの傾斜面6aに対して垂直な方向の分力をF1、傾斜面6aに沿う方向の分力をF2とする。また、圧縮ばね5が傾斜部材6をシート材給送部材31の表層外周面に押圧する力を分離圧Qと称することにすると、この分離圧Qの作用方向は、シート材2aの送り出し方向に対してθで示した角度を成している。そこで、分離圧Qの作用方向に沿う上記分力F1の成分F1αよりも、分離圧Qが小さくなるように、その分離圧を設定することにより、傾斜部材6の圧接部6bは図5に示すように、ほぼシート材2aの厚さに相当する距離だけシート材給送部材31の表層4の外周面から離間し、ここをシート材2aが通過する。
【0031】
一方、図5に示すように最上位のシート材2aに接触する次のシート材2bが、最上位のシート材2aから受ける摩擦力によって、そのシート材2aと一緒に送り出された場合には、そのシート材2bの先端が傾斜部材6の傾斜面6aに突き当たり、その傾斜面6aに力Fpを加える。この力Fpも傾斜部材6の傾斜面6aに垂直な方向の分力Fp1と、傾斜面6aに沿う方向の分力Fp2に分けられ、分離圧Qと逆向きの成分Fp1αを生じる。しかし、一般にシート材間に作用する摩擦力は小さく、シート材給送部材4の外周面とシート材2a間に作用する摩擦力の例えば50%程度である。このため、上記力Fp1αも非常に小さなものとなり、傾斜部材6が最上位のシート材2aの厚さ分よりも大きくシート材給送部材31の表層4の外周面から離間することを防止できる。このため、次のシート材2bは、傾斜面6aによって止められ、これが圧接部6aを越えて給送されることはない。次のシート材2bよりも下方のシート材2c…が一緒に送り出されてこれらが傾斜面に突き当たったときも同様である。
【0032】
上述のように、図示したシート材給送装置20は、積載されたシート材2のうちの最上位のシート材2aだけを給送することができる。しかもシート材2aに対する圧接部6bの摩擦係数を小さくすることができるので、傾斜部材6の圧接部6bとシート材給送部材31の表層外周面との間を搬送されるシート材がスティックスリップを起こす不具合を防止でき、異音の発生を効果的に抑制することができる。
【0033】
しかも、本例のシート材給送装置のシート材給送部材31の表層4は、次のような材料によって構成されているので、長期に亘って、シート材を正しく送り出すことができ、その耐久性を向上させることができる。
【0034】
すなわち、シート材給送部材31の表層4は、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、粘弾特性tanδ(損失正接)が0.045以下であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成されている。一般に、シート材2に対するシート材給送部材31の表層4の摩擦係数は、その表層4の硬度が低いほど、大きくなるが、この硬度が低くなりすぎると、表層4の耐摩耗性が低下する。そこで、本例のシート材給送装置20においては、シート材給送部材31の表層4のJIS A硬度を25°乃至40°に設定し、シート材に対するシート材給送部材31の表層4の大きな摩擦係数を確保し、かつその耐久性の低下を阻止した。シート材給送部材31の表層4のJIS A硬度が40°よりも高くなると、そのシート材給送部材31の表層4のシート材に対する初期の摩擦係数が不足し、シート材の給送時に、そのシート材が表層4の外周面に対してスリップし、シート材の不送りが発生するおそれがあるが、その表層4のJIS A硬度を40°以下に設定することにより、かかる不具合を阻止できる。また、シート材給送部材31の表層4のJIS A硬度が25°未満であると、シート材に対する摩擦係数は高くなるが、表層4の耐摩耗性が低下する。シート材給送部材31の表層4のJIS A硬度を25°以上に設定することにより、かかる不具合の発生を阻止できる。
【0035】
一方、シート材給送部材31の表層4の粘弾特性tanδ(損失正接)の値が大きいと、シート材の給送動作が繰り返されることにより、表層4が繰り返し圧縮変形したとき、その表層4に発生する熱量が多くなり、表層4の耐摩耗性が低下する。粘弾特性tanδを0.045以下に設定することにより、シート材給送部材31の表層4の高い耐摩耗性を維持することができる。粘弾特性tanδの測定条件については後述する。
【0036】
また、シート材給送部材31の表層4の前述の引裂強度を10N/mm以上に設定することにより、表層4の耐久性を高めることができる。B形の試験片で測定した表層4の引裂強度が10N/mm未満であると、シート材給送部材31の使用時に、その表層4の耐摩耗性が低下すると共に、これに加えられる外力によって、表層4が欠けてしまうおそれがあるが、シート材給送部材31の表層4の引裂強度を10N/mm以上に設定することにより、かかる不具合の発生を長期に亘って防止することができる。
【0037】
上述した構成のシート材給送部材31を用いたシート材給送装置20により、紙より成るシート材2を180000枚給紙した後も、シート材に対するシート材給送部材31の表層4のスリップに起因するシート材の不送りが発生しないことが実験により確認されている。
【0038】
ここで、粘弾特性tanδの値は、岩本製作所製粘弾性測定器を用い、下記の条件により測定したものである。
試料:幅5mm、長さ30mm、厚み2mm、初期歪み4mm
振幅は0.1mm、周波数10Hz、温度は30℃である。
【0039】
また、シート材給送部材31の表層4を、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、反発弾性が73%以上であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成することによっても、前述のシート材給送部材31を用いた場合と同様の効果を奏することができる。シート材給送部材31の表層4の反発弾性が73%以上であると、粘弾特性tanδの値が0.045以下とした場合と同様に、表層4の高い耐摩耗性及び摩擦係数を維持することができる。
【0040】
また、上述した各特性を確保できるシート材給送部材31の表層4を構成する材料として、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分とするものを用いると、この材料は安価であるため、シート材給送部材31のコストを低減できる利点が得られ、しかも耐候性を高めることもできる。さらに、ゴム架橋物のポリマー成分の95重量%以上が、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムであることが好ましく、ポリマー成分が100%エチレンプロピレンジエン共重合ゴムであることが特に好ましい。
【0041】
さらに、シート材給送部材31の表層4を構成する材料として、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分とするゴム組成物を硫黄で架橋したものを用いると、表層4の耐摩耗性をより高めることができる。その際、ゴム成分100重量部に対する硫黄配合量が1.5重量部以上、5重量部以下、好ましくは3重量部以上、4重量部以下であることが有利である。硫黄配合量が1.5重量部未満であると、架橋密度が低く、耐摩耗性が劣り、逆にこの配合量が5重量部を超えると、シート材給送部材31の表層4の圧縮永久歪特性が低下し、硫黄のブルームが起こり、シート材に対する表層4の摩擦係数が低下するおそれがあるが、硫黄配合量を1.5乃至5重量部、特に3乃至4重量部に設定することによって、このような不具合の発生を阻止できる。
【0042】
また、シート材給送部材31の表層4を構成する弾性材料としてエチレンプロピレンジエン共重合ゴムを用いた場合、そのJIS A硬度を25°乃至40°にするため、当該ゴムにオイルを配合することが好ましい。その際、ゴム成分100重量部に対するオイル配合量を75重量部乃至150重量部とすることが望ましい。オイル配合量が75重量部未満であると、表層4のJIS A硬度を25°乃至40°にすることが困難となり、またオイル配合量が150重量部を超えると、オイルブリードによってシート材が汚され、さらに、これに起因して表層4に紙粉が付着して摩擦係数が低下すると共に、耐摩耗性も低下する。
【0043】
また、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムに、例えばシリカより成る補強性充填剤を配合することも有利であるが、その際、ゴム成分100重量部に対する補強性充填剤の配合量を10重量部以上とすることが好ましい。これにより、シート材給送部材31の表層4の機械強度を高め、耐摩耗性を向上させ、実機での使用時及び製造時における割れや欠けの発生を防止できる。しかもオイル及び架橋剤の配合量を高めても、補強性充填剤、特にシリカの吸着作用によって、ブリード及びブルームを抑制でき、摩擦係数保持性を高めることができる。
【0044】
以上説明したシート材給送装置においては、シート材給送部材として給送ローラを用いたが、かかるローラに代えて、複数のローラに巻き掛けられて回転駆動される無端ベルトより成るシート材給送部材を用いることもできる。その際、単層又は複層の無端ベルトを用いることができるが、単層の無端ベルトの場合には、その層が表層を構成する。
【0045】
また本発明は、図1に示した形式以外の各種形態の画像形成装置、ないしはそのシート材給送装置にも適用できるものであり、例えば異なるサイズのシート材をそれぞれ収容した複数のシート材給送装置を有する画像形成装置や、複写機、ファクシミリ、印刷機或いは複合機などから成る画像形成装置、或いはそのシート材給送装置にも広く適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、長期に亘って、シート材の分離機能を維持しながら、シート材を正しく送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略垂直断面図である。
【図2】シート材給送装置のシート材給送部材と傾斜部材を本体ケースから分離して示す分解斜視図である。
【図3】シート材給送部材の表層と傾斜部材とシート材の位置関係を示す説明図である。
【図4】最上位のシート材の先端が傾斜部材の傾斜面に突き当たって、その先端が傾斜面に外力を加えたときの様子を示す説明図である。
【図5】次のシート材の先端が傾斜部材の傾斜面に突き当たって、その先端が傾斜面に外力を加えたときの様子を示す説明図である。
【図6】傾斜部材の圧接部と傾斜面とのなす角度を明示する図である。
【符号の説明】
1 シート材積載部材
2,2a,2b シート材
4 表層
6 傾斜部材
6a 傾斜面
6b 圧接部
20 シート材給送装置
21 作像手段
31 シート材給送部材
S シート材送り出し方向
θ,θ 角度

Claims (7)

  1. シート材積載部材に積載されたシート材に表層の外周面が圧接し、該外周面の移動によって、当該外周面に圧接したシート材を送り出すシート材給送部材と、該シート材給送部材の表層の外周面に圧接する圧接部を有していると共に、該圧接部よりもシート材送り出し方向上流側の部分が、送り出されたシート材の先端が突き当たる傾斜面として構成されている傾斜部材とを具備し、該傾斜部材は、前記シート材給送部材の表層の外周面に対して接離する方向に移動可能に支持され、該傾斜部材の前記傾斜面と、シート材の送り出し方向との成す角度は、前記傾斜面に突き当たったシート材の先端が、該傾斜面に案内されて前記圧接部へ向けて移動できるように鋭角に設定され、かつ前記圧接部と傾斜面との成す角度が180°未満に設定されているシート材給送装置において、
    前記シート材給送部材の表層は、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、粘弾特性tanδ(損失正接)が0.045以下であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成されていることを特徴とするシート材給送装置。
  2. シート材積載部材に積載されたシート材に表層の外周面が圧接し、該外周面の移動によって、当該外周面に圧接したシート材を送り出すシート材給送部材と、該シート材給送部材の表層の外周面に圧接する圧接部を有していると共に、該圧接部よりもシート材送り出し方向上流側の部分が、送り出されたシート材の先端が突き当たる傾斜面として構成されている傾斜部材とを具備し、該傾斜部材は、前記シート材給送部材の表層の外周面に対して接離する方向に移動可能に支持され、該傾斜部材の前記傾斜面と、シート材の送り出し方向との成す角度は、前記傾斜面に突き当たったシート材の先端が、該傾斜面に案内されて前記圧接部へ向けて移動できるように鋭角に設定され、かつ前記圧接部と傾斜面との成す角度が180°未満に設定されているシート材給送装置において、
    前記シート材給送部材の表層は、JIS A硬度が25°以上40°以下であって、反発弾性が73%以上であり、B形の試験片で測定した引裂強度が10N/mm以上であるゴム架橋物により構成されていることを特徴とするシート材給送装置。
  3. 前記シート材給送部材の表層を構成する材料が、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分とする請求項1又は2に記載のシート材給送装置。
  4. 前記シート材給送部材の表層を構成する材料が、エチレンプロピレンジエン共重合ゴムを主成分とするゴム組成物を硫黄で架橋したものである請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材給送装置。
  5. ゴム成分100重量部に対する硫黄配合量が1.5重量部以上5重量部以下である請求項4に記載のシート材給送装置。
  6. ゴム成分100重量部に対する硫黄配合量が3重量部以上4重量部以下である請求項4に記載のシート材給送装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のシート材給送装置と、該シート材給送装置から送り出されたシート材に画像を形成する作像手段とを具備することを特徴とする画像形成装置。
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