以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る積層フィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの表面上に積層された絶縁樹脂層とを備える。
本発明に係る積層フィルムは、以下の構成(0)を備える。
(0)積層フィルムの一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側に最も大きくはみだしている。(以下、積層フィルム(0)と記載することがある)
本発明に係る積層フィルムでは、全ての端の中で、一端側のはみだし距離が最も大きい。
本発明に係る積層フィルムでは、上記絶縁樹脂層に対する上記基材フィルムの剥離強度をXgf/cm、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離をYmmとしたときに、Y/X(YのXに対する比)が0.5以上15以下である。
本発明に係る積層フィルムでは、全ての端の中で、一端側のはみだし距離が最も大きいので、上記距離Yは、最も大きくはみだしている距離である。
本発明に係る積層フィルムでは、上記の構成が備えられているので、硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができ、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良を抑えることができる。本発明に係る積層フィルムでは、硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの裂けを抑えることができる。
なお、上記硬化時及び上記硬化後には、予備硬化時及び予備硬化後も含まれる。
本発明に係る積層フィルムでは、基材フィルムの一端側がはみだしているので、硬化後に基材フィルムを一端側から、絶縁樹脂層から剥離することができる。
本発明に係る積層フィルムでは、上記の構成が備えられているので、予備硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができ、かつ予備硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良を抑えることもできる。
また、本発明に係る積層フィルムでは、上記の構成が備えられているので、基板の搬送時や、ビアホールを形成するためのレーザー照射時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができる。
上記構成(0)に含まれる構成としては、以下の構成(1)、及び以下の構成(2)等が挙げられる。本発明に係る積層フィルムは、以下の構成(1)又は以下の構成(2)を備えていてもよい。本発明に係る積層フィルムは、以下の構成(1)を備えていてもよく、以下の構成(2)を備えていてもよい。
(1)積層フィルムの一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側に最も大きくはみだしている。積層フィルムの上記一端とは反対の他端側において、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との端面が揃っている。(以下、積層フィルム(1)と記載することがある)
(2)積層フィルムの一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側に最も大きくはみだしている。積層フィルムの上記一端とは反対の他端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだしている。上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離が、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離と同等以下である。(以下、積層フィルム(2)と記載することがある)
上記一端と上記他端とは、積層フィルムにおいて、対向し合う両側の端である。
上記構成(2)において、上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離は、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離と同じか、又は、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さい。
積層フィルムの全ての端において、基材フィルムと絶縁樹脂層との端面が揃っている場合、すなわち、従来の積層フィルムの場合、硬化時において基材フィルムが絶縁樹脂層から自然剥離しやすい。また、従来の積層フィルムの場合、硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの裂けが生じやすい。このため、従来の積層フィルムでは、硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの裂けを抑えることは困難である。
硬化時の基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際の基材フィルムの剥離不良をより一層抑える観点からは、積層フィルム(1)と積層フィルム(2)とのうち、積層フィルム(1)が好ましい。
積層フィルム(2)は、以下の構成(2A)を備えることが好ましい。
(2A)積層フィルムの一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側に最も大きくはみだしている。積層フィルムの上記一端とは反対の他端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだしている。上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離が、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さい。(以下、積層フィルム(2A)と記載することがある)
本発明に係る積層フィルムでは、上記絶縁樹脂層に対する上記基材フィルムの剥離強度をXgf/cm、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離をYmmとする。したがって、積層フィルム(2),(2A)において、上記Yは、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面がそれぞれ外側にはみだしている距離の内、大きい方の距離を示す。
硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良を抑える観点から、Y/X(YのXに対する比)が0.5以上15以下である。上記Y/Xが0.5未満であると、硬化時に基材フィルムが絶縁樹脂層から自然剥離しやすい。上記Y/Xが15を超えると、硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に、基材フィルムと絶縁樹脂層とを良好に剥離できず、基材フィルムが裂けやすい。
硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑える観点から、上記Y/Xは、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上、好ましくは13以下、より好ましくは11以下である。
硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑える観点から、上記Xは、好ましくは0.3以上、好ましくは9以下である。
硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑える観点から、上記Yは、好ましくは0.5以上、好ましくは20以下である。
上記絶縁樹脂層に対する上記基材フィルムの剥離強度(すなわち、X)は、好ましくは0.3gf/cm以上、より好ましくは0.5gf/cm以上、好ましくは9gf/cm以下、より好ましくは7gf/cm以下である。上記剥離強度が上記下限以上であると、基板の搬送時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができ、また、ビアホール形成するためのレーザー照射時でも、基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができる。上記剥離強度が上記上限以下であると、ピール強度を高くすることができ、また、デスミア処理後の粗度が高くなることを抑えることができる。
上記絶縁樹脂層に対する上記基材フィルムの剥離強度は、引張試験機(島津製作所社製「AG-5000B」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で測定することができる。
上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離(すなわち、Y)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離が上記下限以上であると、オート剥離装置を用いて硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から良好に剥離することができ、また、積層フィルムの製造時において積層フィルムの一端又は他端をスリットする際に絶縁樹脂層のひび又は割れを抑えることができる。上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離が上記上限以下であると、積層フィルムの搬送時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができ、また、製造コストを抑えることができる。
上記積層フィルムは、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に保護フィルムが積層されていることが好ましい。
上記積層フィルム(0),(1)の一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面を外側にはみださせる方法としては、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との積層時に、端面をずらす方法が挙げられる。
上記積層フィルム(2)の一端側と上記一端とは反対の他端側との双方において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面を外側にはみださせる方法としては、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との積層時に、端面をずらす方法が挙げられる。積層フィルム(2)では、端面のずらす距離を調整する。
上記積層フィルム(1)の上記一端とは反対の他端側において、上記基材と上記絶縁樹脂層と上記保護フィルムとの端面を揃える方法としては、以下の方法が挙げられる。上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との積層時に端面を揃える方法、並びに、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との積層体、又は上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層と上記保護フィルムとの積層体をスリットする方法。
上記積層フィルム(2A)の上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離を、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さくする方法としては、以下の方法が挙げられる。上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との積層時に、他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離を、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さくする方法。基材フィルムと絶縁樹脂層とのうちの基材フィルムをスリットする方法。基材フィルムと絶縁樹脂層と保護フィルムとのうちの基材フィルム及び保護フィルムをスリットする方法。
本発明に係る積層フィルムの製造方法は、以下の(A)又は(B)の構成を備えることが好ましい。製造方法(A),(B)は、積層フィルム(0)の製造方法である。製造方法(A)は、積層フィルム(1)の製造方法であり、製造方法(B)は、積層フィルム(2)の製造方法である。積層フィルム(1)の製造方法は、以下の構成(A)を備えることが好ましい。積層フィルム(2)の製造方法は、以下の構成(B)を備えることが好ましい。
(A)積層フィルム(1)の製造方法は、基材フィルムの表面上に、絶縁樹脂層の一端側の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだすように、絶縁樹脂層を配置する第1の工程を備える。積層フィルム(1)の製造方法は、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に、保護フィルムを配置する第2の工程を備えることが好ましい。積層フィルム(1)の製造方法では、上記絶縁樹脂層の上記一端に対応する積層フィルムの一端側において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだしている積層フィルムを得る。積層フィルム(1)の製造方法では、積層フィルムの上記一端とは反対の他端側において、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層との端面が揃っている積層フィルム(1)を得る。
(B)積層フィルム(2)の製造方法は、基材フィルムの表面上に、絶縁樹脂層の一端側の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだすように、絶縁樹脂層を配置する第1の工程を備える。この第1の工程において、基材フィルムの表面上に、絶縁樹脂層の一端側と上記一端とは反対の他端側との双方の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだすように、絶縁樹脂層を配置することが好ましい。積層フィルム(2)の製造方法は、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に、保護フィルムを配置する第2の工程を備えていることが好ましい。積層フィルム(2)の製造方法では、積層フィルムの一端側と上記一端とは反対の他端側との双方において、上記絶縁樹脂層の端面に対して上記基材フィルムの端面が外側にはみだしている積層フィルム(2)を得る。積層フィルム(2)の製造方法では、上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離が、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さい積層フィルム(2)を得る。
本発明に係る積層フィルムの製造方法(A)は、上記第2の工程の後に、上記絶縁樹脂層の上記一端とは反対の他端側において、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層と上記保護フィルムとの端面を揃える第3の工程をさらに備えることが好ましい。本発明に係る積層フィルムの製造方法(A)では、上記第2の工程において、上記絶縁樹脂層の上記一端とは反対の他端側において、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層と上記保護フィルムとの端面を揃えてもよい。
本発明に係る積層フィルムの製造方法(B)は、上記第2の工程の後に、上記絶縁樹脂層の上記一端とは反対の他端側において、上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離を、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりも小さくする第3の工程をさらに備えることが好ましい。
積層フィルム(1)の他端側において端面をより一層平坦にする観点、積層フィルム(2)の上記他端側における上記基材フィルムのはみだしている距離を、上記一端側における上記基材フィルムのはみだしている距離よりもより一層小さくする観点からは、以下のスリットを行うことが好ましい。上記第3の工程において、上記絶縁樹脂層をスリットすることが好ましい。上記第3の工程において、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層と上記保護フィルムとをスリットすることが好ましい。
本発明の積層フィルムでは、絶縁樹脂層の表面には、一般に金属層等の被着体(例えば、基板と金属である配線との積層体等)が積層される。上記積層フィルムが保護フィルムを備える場合において、上記積層フィルムでは、絶縁樹脂層の使用時に、保護フィルムは剥離される。保護フィルム剥離後の上記絶縁樹脂層の表面には、一般に金属層等の被着体(例えば、基板と金属である配線との積層体等)が積層される。
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層フィルムを示す断面図である。図1は、上記積層フィルム(1)を示す断面図である。
積層フィルム1は、一端1aと、一端1aとは反対の他端1bとを有する。積層フィルム1の一端1aと他端1bとは対向し合う両側の端部である。
積層フィルム1は、基材フィルム2と、絶縁樹脂層3とを備える。絶縁樹脂層3は、基材フィルム2の第1の表面2a上に積層されている。
積層フィルム1の一端1aと他端1bとを結ぶ方向において、基材フィルム2の寸法は、絶縁樹脂層3の寸法よりも大きい。積層フィルム1の一端1aと他端1bとを結ぶ方向において、絶縁樹脂層3の寸法は、基材フィルム2の寸法よりも小さい。
積層フィルム1の一端1a側において、絶縁樹脂層3の端面に対して基材フィルム2の端面が外側にはみだしている。積層フィルム1の一端1aにおいて、基材フィルム2と絶縁樹脂層3との端面は揃っていない。積層フィルム1の一端1a側において、基材フィルム2の第1の表面2a上に絶縁樹脂層3が積層されていない部分が存在する。
積層フィルム1の一端1a側において、基材フィルム2のはみだしている距離がYmmである。
積層フィルム1の他端1b側において、基材フィルム2と、絶縁樹脂層3との端面は揃っている。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る積層フィルムを示す断面図である。図2は、上記積層フィルム(2)を示す断面図である。
積層フィルム1Aは、一端1Aaと、一端1Aaとは反対の他端1Abとを有する。積層フィルム1Aの一端1Aaと他端1Abとは対向し合う両側の端部である。
積層フィルム1Aは、基材フィルム2Aと、絶縁樹脂層3Aとを備える。絶縁樹脂層3は、基材フィルム2Aの第1の表面2Aa上に積層されている。
積層フィルム1Aの一端1Aaと他端1Abとを結ぶ方向において、基材フィルム2Aの寸法は、絶縁樹脂層3Aの寸法よりも大きい。積層フィルム1Aの一端1Aaと他端1Abとを結ぶ方向において、絶縁樹脂層3Aの寸法は、基材フィルム2Aの寸法よりも小さい。
積層フィルム1Aの一端1Aa側において、絶縁樹脂層3Aの端面に対して基材フィルム2Aの端面が外側にはみだしている。積層フィルム1Aの一端1Aaにおいて、基材フィルム2Aと、絶縁樹脂層3Aとの端面は揃っていない。積層フィルム1Aの一端1Aa側において、基材フィルム2Aの第1の表面2Aa上に絶縁樹脂層3Aが積層されていない部分が存在する。
積層フィルム1Aの他端1Ab側において、絶縁樹脂層3Aの端面に対して基材フィルム2Aの端面が外側にはみだしている。積層フィルム1Aの他端1Abにおいて、基材フィルム2Aと、絶縁樹脂層3Aとの端面は揃っていない。積層フィルム1Aの他端1Ab側において、基材フィルム2Aの第1の表面2Aa上に絶縁樹脂層3Aが積層されていない部分が存在する。
積層フィルム1Aの他端1Ab側における基材フィルム2Aのはみだしている距離は、一端1Aa側における基材フィルム2Aのはみだしている距離よりも小さい。
積層フィルム1Aの一端1Aa側において、基材フィルム2Aのはみだしている距離がYmmである。
上記積層フィルムは、MD(Machine Direction)方向と、TD(Transverse Direction)方向とを有することが好ましい。MD方向は、積層フィルムの製造時の積層フィルムの流れ方向であり、例えば、長さ方向である。TD方向は、積層フィルムの製造時の積層フィルムの流れ方向と直交する方向であり、かつ積層フィルムの厚み方向と直交する方向である。上記積層フィルムが、MD方向と、TD方向とを有する場合、上記TD方向が、幅方向である。上記積層フィルムの上記一端と上記他端とは、積層フィルムの幅方向の対向し合う両側の端部であることが好ましい。
本発明に係る積層フィルムの上記一端と上記他端とを結ぶ方向において、上記基材フィルムの寸法をW1mm、上記絶縁樹脂層の寸法をW2mmとする。本発明に係る積層フィルムでは、通常、W1がW2より大きい。本発明に係る積層フィルムは、通常、W1>W2を満足する。
W2/W1(絶縁樹脂層の寸法の基材フィルムの寸法に対する比)は、好ましくは0.9以上であり、より好ましくは0.92以上であり、更に好ましくは0.94以上であり、特に好ましくは0.96以上である。W2/W1(絶縁樹脂層の寸法の基材フィルムの寸法に対する比)は、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.998以下であり、更に好ましくは0.997以下であり、特に好ましくは0.996以下である。W2/W1が上記下限以上であると、オート剥離装置を用いて硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から良好に剥離することができ、また、積層フィルムの製造時において積層フィルムの一端又は他端をスリットする際に絶縁樹脂層のひび又は割れを抑えることができる。W2/W1が上記上限以下であると、積層フィルムの搬送時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができ、また、基材フィルムを効率よく用いることができるため製造コストを抑えることができる。
以下、本発明に係る積層フィルムを構成する各層の詳細を説明する。
(基材フィルム)
上記基材フィルムとしては、金属箔、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。上記基材フィルムは、金属箔であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記基材フィルムは、樹脂フィルムであることが好ましい。上記基材フィルムとして、金属箔を用いる場合、上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
剥離不良をより一層抑える観点からは、上記基材フィルムは、離型処理されていることが好ましい。シリコーンの移行に伴う自然剥離をより一層抑える観点から、上記離型処理は、シリコーン非移行性の離型処理であることが好ましい。なお、シリコーン非移行性の離型処理とは、シリコーンを含有しない離型処理、又は、上記絶縁樹脂層側にシリコーンが移行しないように処理された離型処理を意味する。
積層フィルムの操作性を良好にし、また、絶縁樹脂層のラミネート性を良好にする観点からは、上記基材フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下である。自然剥離をより一層抑える観点からは、上記基材フィルムの厚みは、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下である。剥離不良をより一層抑える観点からは、上記基材フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上である。
上記基材フィルムの上記絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは400nm以下、より好ましくは400nm未満、更に好ましくは300nm以下である。上記算術平均粗さが上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑えることができる。
上記算術平均粗さRaは、非接触型表面粗さ計を用いて、VSIコンタクトモードで、かつ、50倍レンズにより測定範囲を95.6μm×71.7μmとして測定される。
(絶縁樹脂層)
上記絶縁樹脂層は、基材フィルムの表面上に積層される。上記絶縁樹脂層は、後述するエポキシ化合物と、後述する無機充填材と、後述する硬化剤とを含むことが好ましい。
[エポキシ化合物]
上記絶縁樹脂層は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有することが好ましく、ビフェニル骨格を有することがより好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることが更に好ましい。
硬化物と金属層との接着強度をより一層高くする観点からは、上記絶縁樹脂層100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは55重量%以下である。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基材フィルム上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
エポキシ化合物の分子量、及び後述する硬化剤の分子量は、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体ではない場合、及びエポキシ化合物又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
[無機充填材]
上記絶縁樹脂層は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化が小さくなる。さらに、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が高くなる。
従来の積層フィルムでは、絶縁樹脂層が無機充填材を含むと、硬化時に基材フィルムが絶縁樹脂層から自然剥離することがあり、更に硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に、基材フィルムと絶縁樹脂層とを良好に剥離できず、基材フィルムが裂けやすい。しかしながら、本発明に係る積層フィルムでは、絶縁樹脂層が無機充填材を含む場合でも、硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑えることができる。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。上記絶縁樹脂層が無機充填材を2種以上含む場合には、上記無機充填材の平均粒径は、上記絶縁樹脂層に含まれる無機充填材全体で測定される。上記絶縁樹脂層を得るために用いる樹脂組成物又は無機充填材を用いて、無機充填材の平均粒径を測定してもよい。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記絶縁樹脂層100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。上記絶縁樹脂層100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは83重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、保護フィルムの剥離時の絶縁樹脂層の割れをより一層効果的に抑えることができる。
[硬化剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネート化合物(シアネート硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、ジシアンジアミド、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、マレイミド化合物(マレイミド硬化剤)、及び活性エステル化合物等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
誘電正接をより一層低くする観点から、上記硬化剤は、シアネート化合物、フェノール化合物、マレイミド化合物、活性エステル化合物、又はカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。硬化時における基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離をより一層抑え、かつ硬化後に基材フィルムを絶縁樹脂層から剥離する際に基材フィルムの剥離不良をより一層抑える観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、シアネート化合物、マレイミド化合物、又は活性エステル化合物を含むことが好ましい。上記硬化剤は、フェノール化合物、シアネート化合物、又は活性エステル化合物を含んでいてもよい。
上記シアネート化合物は、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)であってよい。上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。
活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)中、X1及びX2はそれぞれ、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」、「EXB8100-65T」、及び「EXB-8000L-65MT」等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記マレイミド化合物として、従来公知のマレイミド化合物を用いることができる。上記マレイミド化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記マレイミド化合物は、ビスマレイミド化合物であってもよい。
上記マレイミド化合物としては、N-フェニルマレイミド及びN-アルキルビスマレイミド等が挙げられる。
上記マレイミド化合物は、ダイマージアミン以外のジアミン化合物又はトリマートリアミン以外のトリアミン化合物に由来する骨格を有することが好ましい。
上記マレイミド化合物は、芳香族環を有していてもよく、有していなくてもよい。上記マレイミド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。
上記マレイミド化合物では、マレイミド骨格における窒素原子と、芳香族環とが結合していることが好ましい。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、上記絶縁樹脂層中の溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
上記絶縁樹脂層中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは7.5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。上記マレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記マレイミド化合物の分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは30000未満、より好ましくは20000未満である。
上記マレイミド化合物の分子量は、上記マレイミド化合物が重合体ではない場合、及び上記マレイミド化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記マレイミド化合物の分子量は、上記マレイミド化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記マレイミド化合物の市販品としては、例えば、大和化成工業社製「BMI-4000」及び「BMI-5100」、並びにDesigner Molecules Inc.社製「BMI-3000」等が挙げられる。
上記硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基材フィルム上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるために無機充填材の分散性が良好になる。さらに、硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上であると、溶融粘度が低くなりすぎず、硬化過程で、意図しない領域に絶縁フィルムが過度に濡れ拡がりにくくなる傾向がある。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限以下であると、回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが容易になり、さらに無機充填材が不均一に存在しにくくなる傾向がある。
上記絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記硬化剤の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、誘電正接が効果的に低くなる。
[熱可塑性樹脂]
上記絶縁樹脂層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、絶縁樹脂層の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が濡れ拡がり難くなる。上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた絶縁樹脂層を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(上記熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁樹脂層の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、絶縁樹脂層の形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[硬化促進剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。絶縁樹脂層を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁樹脂層が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、絶縁樹脂層の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[溶剤]
上記絶縁樹脂層は、溶剤を含まないか又は含む。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記絶縁樹脂層を成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記絶縁樹脂層における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記絶縁樹脂層の層形状を維持できる程度に、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記絶縁樹脂層には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
上記絶縁樹脂層を得る方法としては、以下の方法等が挙げられる。押出機を用いて、絶縁樹脂層を形成するための材料を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む絶縁樹脂層を形成するための材料をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。また、基材フィルム上に絶縁樹脂層を形成するための材料を積層し、加熱乾燥させ、絶縁樹脂層を得ることもできる。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
絶縁樹脂層を形成するための材料をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである絶縁樹脂層を得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の絶縁樹脂層をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記絶縁樹脂層は、Bステージフィルムであることが好ましい。
上記絶縁樹脂層(上記絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合は、Bステージフィルム)の60℃以上180℃以下の温度領域における最低溶融粘度は、好ましくは5mPa・s以上、好ましくは10mPa・s以上である。上記最低溶融粘度が上記下限以上であると、ラミネート、プレス加工時に意図しない領域への樹脂の染み出しを防止することができ、硬化後に基材フィルムを剥離する際の剥離不良を効果的に抑えることができ、さらに、自然剥離も効果的に抑えることができる。上記絶縁樹脂層(上記絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合には、該Bステージフィルム)の60℃以上180℃以下の温度領域における最低溶融粘度の上限は特に限定されない。上記絶縁樹脂層(上記絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合には、該Bステージフィルム)の60℃以上180℃以下の温度領域における最低溶融粘度は、200mPa・s以下であってもよく、150mPa・s以下であってもよく、100mPa・s以下であってもよく、75mPa・s以下であってもよい。
上記最低溶融粘度時の温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。上記最低溶融粘度時の温度が上記上限以下であると、基材フィルムの収縮に伴う自然剥離を効果的に抑えることができる。
上記最低溶融粘度は、Rheometer装置(例えば、TAインスツルメント社製「AR-2000」)を用いて、周波数6.28rad/sec、開始温度60℃、昇温速度5℃/分、歪み21.8%の条件で動的粘弾性を測定して求められる。
絶縁樹脂層(絶縁樹脂層がBステージフィルムである場合は、Bステージフィルム)のラミネート性をより一層良好にし、絶縁樹脂層の硬化むらをより一層抑える観点からは、上記絶縁樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
(保護フィルム)
上記積層フィルムは、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルム側とは反対の表面上に保護フィルムが積層されていることが好ましい。
上記保護フィルムの材料としては、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン、並びにポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。上記保護フィルムの材料は、ポリオレフィンであることが好ましく、ポリプロピレンであることがより好ましい。
絶縁樹脂層の保護性をより一層良好にする観点からは、上記保護フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下である。
(積層フィルムの他の詳細)
本発明に係る積層フィルムは、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。上記絶縁樹脂層は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。本発明に係る積層フィルムの絶縁樹脂層によって、絶縁層を形成することができる。
多層プリント配線板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える多層プリント配線板が挙げられる。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記絶縁樹脂層により形成される。上記回路基板に接している絶縁層が、上記絶縁樹脂層により形成されてもよい。2つの絶縁層間に配置された絶縁層が、上記絶縁樹脂層により形成されてもよい。上記回路基板から最も離れた絶縁層が、上記絶縁樹脂層により形成されてもよい。複数の上記絶縁層のうち、上記回路基板から離れた絶縁層の外側の表面上に、金属層が配置されていてもよい。
(積層構造体の製造方法)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上述した積層フィルムを用いて、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層とが積層された状態で、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルムとは反対側の表面を、金属層を表面に有する積層対象部材上に積層する積層工程を備える。本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層とが積層された状態で、上記絶縁樹脂層に上記基材フィルム側からレーザーを照射し、ビアホールを形成するビアホール形成工程を備える。
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記の構成が備えられているので、上記硬化工程において、基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離を抑えることができる。
(積層工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上述した積層フィルムを用いて、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層とが積層された状態で、上記絶縁樹脂層の上記基材フィルムとは反対側の表面を、金属層を表面に有する積層対象部材上に積層する。
上記積層工程において、上記積層フィルムが上記保護フィルムを備える場合には、保護フィルムを剥離し、剥離により露出した上記絶縁樹脂層の表面を、金属層を表面に有する積層対象部材上に積層する。
上記積層工程は、ラミネートにより行われることが好ましい。上記ラミネート時の温度は、好ましくは80℃以上、好ましくは120℃以下である。
(硬化工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記絶縁樹脂層を硬化させる硬化工程を備えることが好ましい。
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記絶縁樹脂層を硬化させることが好ましい。上記硬化工程では、上記絶縁樹脂層を硬化させて、硬化物を形成する。上記硬化工程における上記絶縁樹脂層の硬化は、予備硬化であってもよい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。上記硬化工程において、上記絶縁樹脂層を予備硬化させて、Bステージフィルムを得てもよい。
上記硬化工程は、加熱により行われることが好ましい。上記加熱温度は、好ましくは130℃以上、好ましくは200℃以下である。上記加熱時間は、好ましくは30分以上、好ましくは120分以下である。
上記絶縁樹脂層を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは400nm未満、より一層好ましくは300nm以下、更に好ましくは300nm未満、特に好ましくは200nm未満、最も好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。
(ビアホール形成工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記基材フィルムと上記絶縁樹脂層とが積層された状態で、上記絶縁樹脂層に上記基材フィルム側からレーザーを照射し、ビアホールを形成する。
上記ビアホール形成工程に用いられるレーザーとしては、CO2レーザー及びUVレーザー等が挙げられる。
基材として汎用のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる観点からは、上記レーザーはCO2レーザーであることが好ましい。一方、レーザーとしてUVレーザーを用いる場合には、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及び紫外線吸収剤を含むフィルム等を用いることが好ましい。
形成されるビアホールの直径は特に限定されないが、好ましくは80μm以下である。ビアホールの直径は、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。
(デスミア工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記ビアホール形成工程後に、デスミア処理により上記ビアホールの内部のスミアを除去する工程(デスミア工程)を備えることが好ましい。上記デスミア工程を備えることにより、上記ビアホール形成工程で形成された樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを効果的に除去することができる。
上記デスミア工程には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア工程に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記デスミア工程は、上記絶縁樹脂層の表面を粗化処理する粗化処理工程を兼ねていてもよい。
(剥離工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記デスミア工程後に、上記基材フィルムを上記絶縁樹脂層から剥離する工程(剥離工程)を備えることが好ましい。
上記剥離工程は、オート剥離装置を用いて行うことが好ましい。
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記の構成が備えられているので、上記剥離工程において、基材フィルムの剥離不良を抑えることができる。
(その他の工程)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記剥離工程後に、剥離により露出した絶縁樹脂層の表面に、めっき処理により金属層を形成するめっき工程、並びに上記めっき工程後に、絶縁樹脂層をさらに硬化させる本硬化工程の各工程を備えることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(基材フィルム)
基材フィルムA(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「25X」)、厚み25μm、幅550mm、絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRa30nm)
基材フィルムB(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「386501」)、厚み38μm、幅550mm、絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRa30nm)
基材フィルムC(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PLD386502」)、厚み38μm、幅550mm、絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRa7nm)
上記算術平均粗さは、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を95.6μm×71.7μmとして測定した。なお、Thresholdを1%とし、MedianFilter(Window:Size5)、Tilt補正をした条件とした上記算術平均粗さは、無作為に選んだ測定箇所10点で測定し、測定値の平均値を採用した。
(絶縁樹脂層を形成するための材料)
以下の様にして、絶縁樹脂層を形成するための材料を用意した。
絶縁樹脂層Aを形成するための材料:
ビニルシラン処理シリカ(アドマテックス社製「SOC2」)のシクロヘキサノンスラリー(固形分70重量%)69.3重量部を用意した。このスラリーに、ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC3000H」)5.6重量部と、ビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製「830S」)5.3重量部と、フルオレン型エポキシ化合物(大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG-100」)2.0重量部とを加えた。攪拌機を用いて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、フェノールノボラック硬化剤(明和化成社製「H4」)1.6重量部と、活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)のトルエン混合溶液(固形分65重量%)13重量部とを加えて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。ビスフェノールアセトフェノン骨格フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954」)のメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン混合溶液(固形分30重量%)を用意した。該混合溶液(固形分30重量%)3.6重量部と、2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2E4MZ」)0.3重量部と、レベリング剤(楠本化成社製「LS-480」)0.1重量部とをさらに加えた。1200rpmで30分間撹拌し、絶縁樹脂層Aを形成するための材料(ワニス)を得た。
絶縁樹脂層Bを形成するための材料:
活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)をフェノールノボラック硬化剤(明和化成社製「MEH7851-H」)に変更したこと以外は、絶縁樹脂層Aを形成するための材料と同様にして、絶縁樹脂層Bを形成するための材料(ワニス)を得た。
(実施例1)
基材フィルムの表面上に絶縁樹脂層を配置する工程:
ダイコーターを用いて、基材フィルムA上に、得られた絶縁樹脂層Aを形成するための材料(ワニス)を基材の幅方向における両端部から20mmの範囲を除いて、幅510mmで塗工した後、平均温度100℃で3分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、基材フィルムA上に、厚さが40μmであり、幅が510mmである絶縁樹脂層Aを形成して積層体を得た。
積層体の幅方向における一方の端面を揃える工程:
得られた積層体の幅方向における一方の端部(他端)から内側に向かって30mmの位置、及び該他端とは反対の端部(一端)から内側に向かって18mmの位置を、スリッターを用いて10m/分の速度でスリットし、他端側の基材フィルムの端面と絶縁樹脂層の端面とを揃えた。このようにして、一端側において、絶縁樹脂層の端面に対して、基材フィルムの端面がはみだしている距離(Y)が2mmである積層フィルムを得た。
(実施例2~16及び比較例1~5)
基材フィルムの種類、絶縁樹脂層の種類、積層フィルムの一端側において絶縁樹脂層の端面に対して基材フィルムの端面がはみだしている距離(Y)を表1~3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(評価)
(1)絶縁樹脂層に対する基材フィルムの剥離強度(X)
得られた積層フィルムを、引張試験機(島津製作所社製「AG-5000B」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で測定し、絶縁樹脂層に対する基材フィルムの剥離強度(X)を測定した。
(2)Y/X
得られた積層フィルムの一端側において、絶縁樹脂層の端面に対して、基材フィルムの端面がはみだしている距離(Y)と、上記(1)で測定された絶縁樹脂層に対する基材フィルムの剥離強度(X)から、Y/Xを算出した。
(3)最低溶融粘度及び最低溶融粘度時の温度
得られた積層フィルムから基材フィルムを剥離して絶縁樹脂層を得た。得られた絶縁樹脂層について、Rheometer装置(TAインスツルメント社製「AR-2000」)を用いて、周波数6.28rad/sec、開始温度60℃、昇温速度5℃/分、歪み21.8%の条件で動的粘弾性を測定し、最低溶融粘度、及び最低溶融粘度時の温度を求めた。結果を以下に示す。
絶縁樹脂層A:最低溶融粘度98mPa・s、最低溶融粘度時の温度137℃
絶縁樹脂層B:最低溶融粘度50mPa・s、最低溶融粘度時の温度128℃
(4)自然剥離
積層工程:
エッチングにより内層回路を形成した340mm×510mmのCCL基板(日立化成工業社製「E679FG」)を用意した。CCL基板の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ-8101」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。
得られた積層フィルムを、325mm×502mmに切り出し、樹脂フィルム側から上記CCL基板の両面にセットして、ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、上記CCL基板の両面にラミネートし、未硬化積層サンプルAを得た。ラミネートは、20秒減圧して気圧を13hPa以下として100℃で20秒間プレスし、さらに100℃、圧力0.8MPaで40秒間プレスすることにより行った。
硬化工程:
上記絶縁樹脂層を、加熱温度180℃で30分間加熱し、絶縁樹脂層を予備硬化させてた。
上記硬化工程において、基材フィルムの絶縁樹脂層からの自然剥離の発生の有無を目視にて確認した。
[自然剥離の評価基準]
○:自然剥離が生じない
△:自然剥離がわずかに生じる
×:自然剥離が生じる
(5)基材フィルムの裂け(剥離不良)
上記(4)自然剥離の評価を行った後、以下の工程を行った。
ビアホール形成工程:
基材フィルムと絶縁樹脂層(Bステージフィルム)とを積層し、予備硬化した状態で、絶縁樹脂層に基材フィルム側からCO2レーザー(日立ビアメカニクス社製「LC-4KF212」)を照射し、ビアホールの上端径が60μmとなるように、基材フィルムと絶縁樹脂層とを貫通するビアホールを形成した。なお、CO2レーザーの照射条件は以下とした。
[CO2レーザーの照射条件]
加工モードBurst
周期0.100ms
パルス幅0.018ms
パルス数3ショット
アパーチャー3.5mm
2ndアパーチャー28mm
パワー3.3W
剥離工程:
上記基材フィルムを上記絶縁樹脂層から剥離した。
上記剥離工程において、基材フィルムの裂けの有無を目視にて確認した。
[基材フィルムの裂けの評価基準]
○:基材フィルムの裂けが生じない
△:基材フィルムの裂けがわずかに生じる
×:基材フィルムの裂けが生じる
積層フィルムの構成、及び結果を下記の表1~3に示す。