JP7124830B2 - 樹脂組成物、成形品およびフィルム - Google Patents
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Description
特に、ポリアミド樹脂を用いた樹脂組成物に関する。
また、特許文献2には、酸素バリア性に優れたポリアミド樹脂として、キシリレンジアミンと、イソフタル酸と、アジピン酸とを反応させて得られるポリアミド樹脂が開示されている(特許文献2)。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、酸素バリア性が湿度に依存しにくく、かつ、透明性が高い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた成形品およびフィルムを提供することを目的とする。
<1>ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位が90モル%を超えてアジピン酸に由来し、前記ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)、樹脂組成物。
<2>前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の30~90モル%がアジピン酸に由来する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、前記ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含み、前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%がアジピン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する、<1>に記載の樹脂組成物。
<6>前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~59モル%がアジピン酸に由来し、70~41モル%がイソフタル酸に由来する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記ポリアミド樹脂(A)は結晶性ポリアミド樹脂であり、前記ポリアミド樹脂(B)は非晶性ポリアミド樹脂であり、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)を構成する構成単位と、前記ポリアミド樹脂(B)を構成する構成単位の60モル%以上が共通する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記ポリアミド樹脂(B)が非晶性ポリアミド樹脂である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記ポリアミド樹脂(B)の分散度である、Mw/Mnが1.5~3.5である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成される成形品。
<11><1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる層を有する成形品。
<12><1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されるフィルム。
<13>延伸されている、<12>に記載のフィルム。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位が90モル%を超えてアジピン酸に由来する。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂(A)の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましいアジピン酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸化合物等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、アジピン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、ジカルボン酸由来の構成単位の10モル%未満であり、より好ましくは1~8モル%、特に好ましくは1~5モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂(A)は、通常、結晶性樹脂であり、その融点は、190~300℃であることが好ましく、200~270℃であることがより好ましく、210~250℃であることがさらに好ましい。本発明における融点は、特開2016-216661号公報の段落0017の記載に従って測定され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、リン原子を3~300質量ppmの割合で含むことが好ましく、4~250質量ppmの割合で含むことがより好ましく、20~200質量ppmの割合で含むことがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)。このようなポリアミド樹脂を配合することにより、透明性および酸素バリア性をより向上させることができる。本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、通常、非晶性樹脂である。非晶性樹脂を用いることにより、透明性をより向上させることができる。非晶性樹脂とは、明確な融点を持たない樹脂であり、具体的には、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。
本発明におけるポリアミド樹脂(B)の好ましい実施形態の一例は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、35モル%以上であり、40モル%以上が好ましく、41モル%以上がより好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、70モル%以下であり、67モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、62モル%以下がさらに好ましく、60モル%以下が一層好ましく、58モル%以下であってもよい。このような範囲とすることにより、ヘイズがより低下する傾向にあり好ましい。
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸が好ましい。
ポリアミド樹脂(B)はテレフタル酸由来の構成単位を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリアミド樹脂(B)に含まれるイソフタル酸のモル量の5モル%以下であり、3モル%以下が好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。このような構成とすることにより、適度な成形加工性が維持され、ガスバリア性が湿度によってより変化しにくくなる。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、カルシウム原子を含むことが好ましい。カルシウム原子を含むことにより、透明性をより向上させることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、リン原子を3~300質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3~0.7となる割合で含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、透明性がより高く、黄色度(YI)が低く、加熱処理後の透明性により優れた樹脂組成物が得られる。カルシウム原子は、次亜リン酸カルシウムに由来することが好ましい。
リン原子濃度およびカルシウム原子濃度は、WO2017/090556号公報の段落0037の記載に従って測定され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)のブレンド比は、ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂(A)23~77質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)77~23質量部を含むことがより好ましく、ポリアミド樹脂(A)45~77質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)55~23質量部を含むことが一層好ましく、ポリアミド樹脂(A)45~65質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)55~35質量部を含むことがより一層好ましく、ポリアミド樹脂(A)45~60質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)55~40質量部を含むことがさらに一層好ましく、ポリアミド樹脂(A)45~55質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)55~45質量部を含むことが特に一層好ましい。
ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)は、それぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂を構成する全構成単位のうち、イソフタル酸に由来する構成単位の割合は、10~40モル%であることが好ましく、20~40モル%であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、このような構成とすることにより、適度な成形加工性が維持され、ガスバリア性が湿度によってより変化しにくくなる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)を構成する構成単位と、ポリアミド樹脂(B)を構成する構成単位の60モル%以上が共通することが好ましく、64モル%以上が共通することがより好ましく、67モル%以上が共通することがさらに好ましい。このような構成とすることにより、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の相溶性を向上させることができ、透明性に優れた樹脂組成物が得られる。上記共通する構成単位の上限は、95モル%以下であり、90モル%以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、結晶性ポリアミド樹脂であるポリアミド樹脂(A)と、非晶性ポリアミド樹脂であるポリアミド樹脂(B)をブレンドする。このような構成とすることにより、適度な成形加工性が維持され、ガスバリア性が湿度によってより変化しにくくなる。
また、ポリアミド樹脂(B)の分散度(Mw/Mn)を1.5~4.5にすることが好ましく、1.5~3.5にすることがより好ましく、2.0~2.6にすることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、フィルムの製膜性をより向上させることが可能になる。
本発明の樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)は、上記の関係を組み合わせて満たすことが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)以外の他のポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、他のポリアミド樹脂の含有量がポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の合計含有量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は酸化反応促進剤を含んでいてもよい。酸化反応促進剤を含むことで、本発明の樹脂組成物からなる成形品のガスバリア性をさらに高めることができる。
酸化反応促進剤は、酸化反応促進効果を奏するものであればよいが、ポリアミド樹脂の酸化反応を促進する観点から、遷移金属元素を含む化合物が好ましい。遷移金属元素としては、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅および亜鉛から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酸素吸収能を効果的に発現させる観点から、コバルト、鉄、マンガン、およびニッケルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、コバルトがさらに好ましい。
このような酸化反応促進剤としては、上記金属単体の他、上述の金属を含む低価数の酸化物、無機酸塩、有機酸塩または錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β-ジケトンまたはβ-ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。
特に本発明では酸素吸収能が良好に発現することから、上記金属原子を含むカルボン酸塩、炭酸塩、アセチルアセトネート錯体、酸化物およびハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、オクタン酸塩、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびアセチルアセトネート錯体から選ばれる少なくとも1種を使用することがより好ましく、オクタン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト等のコバルトカルボキシレート類を使用することがさらに好ましい。
成形品中の遷移金属濃度は、公知の方法、例えばICP発光分光分析、ICP質量分析、蛍光X線分析等を用いて測定することができる。
上記酸化反応促進剤は、1種を単独で、および2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、100μm厚さの単層フィルムに成形した時のヘイズを2.5%以下とすることができ、さらには1.0%以下とすることができ、特には0.7%以下、0.6以下、0.5以下とすることもできる。ヘイズの下限値は0%が望ましいが、0.1%以上、さらには0.2%以上でも十分に要求性能を満たし得る。ヘイズは、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明の樹脂組成物は、100μm厚さの単層フィルムに成形した時の23℃、相対湿度60%における酸素透過係数(OTC60)を、1cc・mm/(m2・day・atm)以下、さらには0.1cc・mm/(m2・day・atm)以下、特には、0.09cc・mm/(m2・day・atm)以下とすることができる。前記23℃、相対湿度60%における酸素透過係数の下限値は0cc・mm/(m2・day・atm)が望ましいが、0.01cc・mm/(m2・day・atm)以上でも十分に要求性能を満たし得る。
本発明の樹脂組成物は、また、100μm厚さの単層フィルムに成形した時の23℃、相対湿度90%における酸素透過係数(OTC90)を、2.0cc・mm/(m2・day・atm)以下、さらには1.0cc・mm/(m2・day・atm)以下、特には、0.3cc・mm/(m2・day・atm)以下とすることができる。前記23℃、相対湿度90%における酸素透過係数の下限値は0cc・mm/(m2・day・atm)が望ましいが、0.05cc・mm/(m2・day・atm)以上でも十分に要求性能を満たし得る。
本発明の樹脂組成物は、さらに、相対湿度(RH)60%の雰囲気下で測定した酸素透過係数(OTC60)に対する、23℃、相対湿度(RH)90%の雰囲気下で測定した酸素透過係数の変化率(OTC90)(OTC90/OTC60)を、5.5未満とすることができ、さらには4.5未満とすることができ、特には2.8未満とすることができる。下限値については、特に定めるものではないが、例えば、1.0以上、1.2以上、1.5以上、1.7以上とすることができる。
酸素透過係数(OTC)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、ポリアミド樹脂と、必要に応じ配合される他の成分とをV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、各々の樹脂をドライブレンドする方法や、予めメルトブレンドする方法や、一部をマスターバッチ化し、希釈する方法も採用することができる。
本発明は、また、本発明の樹脂組成物から形成される成形品に関する。さらに、本発明は、本発明の樹脂組成物からなる層を有する成形品に関する。すなわち、本発明の樹脂組成物は、各種成形品に成形加工することができる。本発明の樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。
本発明は、また、本発明の樹脂組成物から形成されるフィルムに関する。本発明のフィルムは、単層フィルムまたは多層フィルムとして用いることができる。
単層フィルムとしては、厚さを、5~1000μmとすることができ、さらには、15~500μmとすることもでき、特には、50~200μmとすることもできる。
単層フィルムは、ラップ、あるいは各種形状のパウチ、容器の蓋材、ボトル、カップ、トレイ、チューブ等の包装容器に好ましく利用できる。
多層フィルムは、本発明の樹脂組成物から形成される層を少なくとも1層含む多層フィルムである。多層フィルムは、ラップ、あるいは各種形状のパウチ、容器の蓋材、ボトル、カップ、トレイ、チューブ等の包装容器に好ましく利用できる。
単層フィルムおよび多層フィルムの詳細は、特開2016-169291号公報の段落0085~0123の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物は、容器に好ましく用いられる。容器の形状は特に限定されず、例えば、ボトル、カップ、チューブ、トレイ、タッパウェア等の成形容器であってもよく、また、パウチ、スタンディングパウチ、ジッパー式保存袋等の袋状容器であってもよい。
攪拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付きの50L反応缶に、アジピン酸15kg、次亜リン酸ナトリウム一水和物13.1gおよび酢酸ナトリウム6.9gを仕込み、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて180℃に昇温し、アジピン酸を均一に溶融させた後、系内を撹拌しつつ、これにメタキシリレンジアミン13.9kgを、170分を要して滴下した。この間、内温は連続的に245℃まで上昇させた。なお重縮合により生成する水は、分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温をさらに260℃まで昇温し、1時間反応を継続した後、ポリマーを反応缶下部のノズルからストランドとして取り出し、水冷後ペレット化してポリマーを得た。
次に、上記の操作にて得たポリマーを加熱ジャケット、窒素ガス導入管、真空ラインを備えた50L回転式タンブラーに入れ、回転させつつ系内を減圧にした後、純度99容量%以上の窒素で常圧にする操作を3回行った。その後、窒素流通下にて系内を140℃まで昇温させた。次に系内を減圧にし、さらに190℃まで連続的に昇温し、190℃で30分保持した後、窒素を導入して系内を常圧に戻した後、冷却してポリアミド樹脂A-1を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、237℃、数平均分子量は26,000であった。
以下の方法に従って表1に示すポリアミド樹脂B-1を合成した。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸6,001g(41.06mol)、イソフタル酸6,821g(41.06mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)1.73g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として30質量ppm)、酢酸ナトリウム1.11gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸カルシウムのモル比は1.33とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約21kgのポリアミド樹脂ペレットB-1を得た。得られたポリアミド樹脂(B-1)は、115℃、24時間の条件で真空乾燥した。
樹脂B-1は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,500であった。
合成例B-1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比が40:60となるように調整し、他は同様に行ってポリアミド樹脂B-2を得た。得られたポリアミド樹脂(B-2)は、115℃、24時間の条件で真空乾燥した。
樹脂B-2は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,000であった。
合成例B-1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比が60:40となるように調整し、他は同様に行ってポリアミド樹脂B-3を得た。得られたポリアミド樹脂(B-3)は、105℃、24時間の条件で真空乾燥した。
樹脂B-3は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,800であった。
撹拌機、分縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた調整容器に、精秤したアジピン酸6,001g(41.06mol)、イソフタル酸6,821g(41.06mol)、メタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を内温115℃にて調合した。つづいて、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)1.73g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として30質量ppm)、酢酸ナトリウム1.11gを投入して、30分間撹拌し、塩の混合溶液とした。その混合溶液を反応容器に移送し、容器内温度190℃、容器内圧1.0MPaの条件下で撹拌して反応させた。留出する水を系外に除き、容器内温度が270℃になった時点で、容器内圧を60分間かけて常圧に戻した。常圧で撹拌を行ない、所定の溶融粘度に到達した時点で撹拌を停止し、30分間放置した。その後、反応容器下部のストランドダイから溶融樹脂を取り出して、これを水冷後ペレット化し、約21kgのポリアミド樹脂(B-4)のペレットを得た。得られたポリアミド樹脂(B-4)は、115℃、24時間の条件で真空乾燥した。
樹脂B-4は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。数平均分子量は13,500であった。
ポリアミド樹脂0.2gと35質量%硝酸水溶液8mLをTFM変性PTFE容器(3M社製)に入れ、マイルストーンゼネラル(株)製、ETHOS Oneを用いて内部温度230℃で30分間、マイクロウエーブ分解を行った。分解液を超純水で定容し、ICP測定溶液とした。(株)島津製作所製、ICPE-9000を用いて、リン原子濃度を測定した。
分散度は、GPC測定により求めた。具体的には、装置として東ソー社製「HLC-8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM-H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めた。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。
<単層フィルムの作製>
表1に示すポリアミド樹脂(A)ペレットおよびポリアミド樹脂(B)ペレットを、表1に示す比率でドライブレンドし、その後、Tダイ付き単軸押出機(プラスチック工学研究所社製、PTM-30)に供給し、混練した。押出温度260℃にて押出し、幅150mm、厚み100μmの単層フィルムを作製した。
上記で得られた単層フィルムについて、ヘイズ(HAZE)を測定した。ヘイズの測定は、JIS K7136に準じて行った。
上記で得られた単層フィルムについて、23℃、相対湿度(RH)60%の雰囲気下、等圧法にて、酸素透過係数(OTC)を測定した。また、上記で得られた単層フィルムについて、23℃、相対湿度(RH)90%の雰囲気下、等圧法にて、酸素透過係数を測定した。
酸素透過係数は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、製品名:「OX-TRAN(登録商標) 2/21」)を使用して測定した。
23℃、相対湿度(RH)60%の雰囲気下で測定した酸素透過係数に対する、23℃、相対湿度(RH)90%の雰囲気下で測定した酸素透過係数の変化率から以下の通り評価した。評価C以上が実用レベルである。
A:OTC90/OTC60が、2.8未満
B:OTC90/OTC60が、2.8以上4.5未満
C:OTC90/OTC60が、4.5以上5.5未満
D:OTC90/OTC60が、5.5以上
上記で得られた単層フィルム(幅150mm)の製膜性について、以下の通り評価した。すなわち、単層フィルムの幅方向の中央部に対する端から15mmの距離の部位(最端部)の厚みの差を以下の通り算出し、評価した。C以上が実用レベルである。
[(幅方向の中央部-最端部の厚み)/幅方向の中央部]×100(単位:%)
A: ±7%未満
B: ±8.5%未満(Aに該当するものを除く)
C: ±10%未満(A、Bに該当するものを除く)
D: ±10%以上
実施例1において、下記表1に示す通り変更し、他は同様に行って実施例2~6および参考例1
の単層フィルムを得た。実施例1と同様に評価した。
また、ポリアミド樹脂(B)として、分散度が1.5~3.5の範囲内のポリアミド樹脂を用いることにより、製膜性により優れたフィルムが得られた(実施例1~5)。
これに対し、ポリアミド樹脂(A)のみを配合し、ポリアミド樹脂(B)を配合しない場合(参考例1)、実用レベルではあるものの、本発明の樹脂組成物に比べ、酸素バリア性が湿度に依存しやすかった。
また、実施例1~6において、酸化反応促進剤(ステアリン酸コバルト(II)、関東化学社製)をポリアミド樹脂成分100質量部に対し、100質量ppmとなるように配合し、他は同様に行ってフィルムを得た。OTC90およびOTC60のいずれも、0.01cc・mm/(m2・day・atm)以下であった。
Claims (13)
- ポリアミド樹脂(A)10~90質量部に対し、ポリアミド樹脂(B)90~10質量部を含み、
前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位が90モル%を超えてアジピン酸に由来し、
前記ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する(但し、合計が100モル%を超えることはない)、樹脂組成物。 - 前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の30~65モル%がアジピン酸に由来する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂(A)20~80質量部に対し、前記ポリアミド樹脂(B)80~20質量部を含み、
前記ポリアミド樹脂(A)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、
前記ポリアミド樹脂(B)におけるジアミン由来の構成単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、
前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~65モル%がアジピン酸に由来し、70~35モル%がイソフタル酸に由来する、請求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記ポリアミド樹脂(B)におけるジカルボン酸由来の構成単位の、30~59モル%がアジピン酸に由来し、70~41モル%がイソフタル酸に由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(B)が非晶性ポリアミド樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(A)は結晶性ポリアミド樹脂であり、前記ポリアミド樹脂(B)は非晶性ポリアミド樹脂であり、かつ、前記ポリアミド樹脂(A)を構成する構成単位と、前記ポリアミド樹脂(B)を構成する構成単位の60モル%以上が共通する、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(B)の分散度である、Mw/Mnが1.5~3.5である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される成形品。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層を有する成形品。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されるフィルム。
- 延伸されている、請求項12に記載のフィルム。
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