JP6443218B2 - 複合シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させた複合シートの製造方法に関する。
従来から、ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させた複合シートが広く検討されている。特に、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレン系ポリアミド樹脂」ということがある)を強化繊維に含浸させた複合シートは、軽くて高い機械的強度を奏することから、注目されている。
例えば、特許文献1には、所定のキシリレン系ポリアミド樹脂を繊維材料に含浸してなる複合材が記載されている。
国際公開WO2012/140785号パンフレット
ここで、本発明者が検討したところ、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させて複合シートを製造する場合において、目的とする複合シートの厚さが厚いと、キシリレン系ポリアミド樹脂が強化繊維の中心部に含浸しにくくなることが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させてなる複合シートの製造方法であって、キシリレン系ポリアミド樹脂が複合繊維に含浸しやすい複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題のもと、本発明者が検討を行った結果、強化繊維に含浸させるキシリレン系ポリアミド樹脂に所定量の水分を含ませることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは、<2>〜<14>により、上記課題は解決された。
<1>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、カール・フィッシャー法で測定した水分量が1重量%以上飽和水分量以下のポリアミド樹脂を、強化繊維シートに含浸させることを含む、複合シートの製造方法。
<2>前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂フィルムである、<1>に記載の複合シートの製造方法。
<3>3枚以上のポリアミド樹脂フィルムと、2枚以上の強化繊維シートとを交互に積層して含浸させる、<2>に記載の複合シートの製造方法。
<4>強化繊維シートの総目付けが、10〜10000g/m2である、<1>〜<3>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<5>強化繊維シートの総厚さが、0.05〜10mmである、<1>〜<4>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<6>前記ポリアミド樹脂の、温度が融点+35℃、保持時間が6分、見かけのせん断速度が36.5s-1の条件における溶融粘度が500Pa・s以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<7>前記複合シートにおける、前記ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率が、90%以上である、<1>〜<6>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<8>前記複合シートにおける、強化繊維の割合が10〜65重量%である、<1>〜<7>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<9>前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、または、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物である、<1>〜<8>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<10>ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である、<1>〜<9>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<11>ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸由来の構成単位である、<1>〜<9>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<12>前記含浸工程は、前記ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃の温度で、1〜6MPaで10〜1000秒加圧することを含む、<1>〜<11>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<13>前記複合シートの厚さが200μm以上20mm以下である、<1>〜<12>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<14>強化繊維が炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種である、<1>〜<13>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
本発明により、キシリレン系ポリアミド樹脂が強化繊維に含浸しやすい複合シートの製造方法を提供可能になった。
キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させる工程を示す概略図である。 複数のキシリレン系ポリアミド樹脂フィルムと複数の強化繊維シートを交互積層して、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させる工程を示す概略図である。 ポリアミド樹脂フィルムと強化繊維シートを交互に積層したものを、一対のロール間で熱プレスする工程を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
尚、図面中の符号は、図1〜図3において共通である。
本発明の複合シートの製造方法は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、カール・フィッシャー法で測定した水分量が1重量%以上飽和水分量以下のポリアミド樹脂を、強化繊維シートに含浸させることを特徴とする。本発明ではこのような構成とすることにより、適切に、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させることができる。
キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる形態の一例として、図1に示すように、強化繊維シート1の両面にキシリレン系ポリアミド樹脂フィルム2を重ね、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルム2を加熱(溶融)および加圧して、強化繊維シート1に含浸させ、複合シート3を得ることが挙げられる。ここで、強化繊維シートの目付けが小さければ、含浸は比較的スムーズに進行する。しかしながら、強化繊維シートの目付が大きくなると、樹脂が含浸しにくくなり、中心部まで十分に含浸しなくなる場合がある。この点について、含浸の際の加熱温度や付加する圧力を高くしたり、加熱・加圧時間を長くすれば、中心部まで含浸させることができる。しかしながら、生産性の観点からは望ましくない。これに対し、本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂にあえて水分を含ませることによって、含浸性を高めている。
また、図1において、強化繊維シート1の両面に、それぞれ、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムを2枚ずつ重ねても良いし、2枚の強化繊維シートの両面に、それぞれ、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムを1枚ずつ重ねる等の形態であってもよい。しかしながら、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムと強化繊維シートを交互に積層する方が好ましい。また、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムは、表面に凹凸状のシボを有することが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂フィルムロールから巻き出し性、強化繊維とのスタック性が改善され操作しやすくなるという利点がある。
図2は、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる形態の他の一例であって、3枚以上のポリアミド樹脂フィルム2と、2枚以上の強化繊維シート1を交互に積層して含浸させる態様を示したものである。このように、強化繊維シートの枚数が多くなると、強化繊維シートの総目付が相対的に大きくなる傾向にある。この状態で、フィルムの上面及び下面(図2の矢印の方向)から圧力を付加すると、中心部の強化繊維シートにポリアミド樹脂が含浸しにくくなる傾向にある。しかしながら、本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂にあえて水分を含ませることによって、含浸性を高め、中心部まで含浸させることに成功したものである。
キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を高くすると含浸しやすくなる理由は、キシリレン系ポリアミド樹脂が水分を含むと、キシリレン系ポリアミド樹脂の溶融粘度が下がり、含浸しやすくなるためと推定される。
また、図2において、強化繊維シートとして、強化繊維を一方向に並べてなる繊維強化シートを用いる場合、1層目の強化繊維シートと、2層目の強化繊維シートの強化繊維の繊維方向が、交差するように積層することが好ましい、3層目以降についても、同様に交差するように積層することが好ましい。
<含浸工程>
本発明では、上述のとおり、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる。含浸させる方法は特に定めるものでは無いが、キシリレン系ポリアミド樹脂を加熱して溶融し、強化繊維シートに含浸させる。この際、通常は、圧力をかけて行う。
キシリレン系ポリアミド樹脂の加熱温度は、キシリレン系ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃が好ましく、キシリレン系ポリアミド樹脂の融点+20℃〜融点+90℃がより好ましく、25〜50℃がさらに好ましい。キシリレン系ポリアミド樹脂が融点を2つ以上有する場合、上記融点は、高い方の融点とする。また、2種以上のキシリレン系ポリアミド樹脂を併用する場合、2種以上のキシリレン系ポリアミド樹脂のうち、最も高い融点を上記融点とする。
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付が大きい場合であっても、温度を従来よりも高くしなくても、適切に含浸させることが可能である。
含浸に際し、圧力をかける場合、圧力は1〜6MPaが好ましく、2〜5MPaがより好ましい。本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付が大きい場合であっても、圧力を従来より高くしなくても、適切に含浸させることが可能である。
含浸に際し、加熱および/または加圧時間は、それぞれ、10〜1000秒が好ましく、10〜800秒がより好ましい。本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付に比して、短い加熱時間、加圧時間で適切に含浸させることができる。
加熱および加圧は同時に行ってもよく、別々に行っても良い。加熱および加圧を同時に行う一例として、熱プレスが例示される。
また、加熱および加圧は、図3に示すように、ポリアミド樹脂フィルム2と強化繊維シート1を積層したものを、一対のロール間で熱プレスして行っても良い。すなわち、ポリアミド樹脂フィルムで強化繊維シートを挟んだ(交互積層した)状態でロールを用いて加熱して行うことが好ましい。図3の上側ロール4および下側ロール5のいずれも加熱ロールであっても良いし、上側ロールのみが加熱ロールで、下側ロールは加熱されていないロール(例えば、上記キシリレン系ポリアミド樹脂の融点未満の温度のロール)であっても良い。また、加熱ロールが、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムに密着してしまう場合、加熱ロールとキシリレン系ポリアミド樹脂フィルムの間に離型シート等を配しても良い。
本発明では、通常、キシリレン系ポリアミド樹脂を溶融して、強化繊維シートに含浸させるが、溶融前のキシリレン系ポリアミド樹脂の形態は、特に定めるものでは無く、上述のフィルム状の他、粉状等の形態のものも採用できる。本発明では、生産性の観点から、フィルム状のキシリレン系ポリアミド樹脂(キシリレン系ポリアミド樹脂フィルム)が好ましい。
キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムの厚さは、複合シートの厚さや複合シート中の強化繊維の含有率に応じて適宜定めることができる。ポリアミド樹脂フィルムの厚さは、例えば、上限値を、250μm未満とすることができ、200μm以下が好ましく、下限値を30μm以上とすることができ、50μm以上が好ましい。
<巻き取り工程>
上記キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させた複合フィルムは、その後、巻き取りロールによって、巻き取ることもできる。すなわち、本発明の製造方法によって得られる複合シートは、巻き取り体であってもよい。
もちろん、含浸後、所望のサイズにカットする態様も本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
<複合シートの諸性質>
本発明における複合シートの厚さは、特に定めるものでは無いが、下限値が、厚さ200μm以上のものが好ましく、250μm以上がより好ましく、500μm以上がさらに好ましく、800μm以上が一層好ましく、1mm以上がより一層好ましい。上限値は、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましく、4mm以下が一層好ましく、3mm以下がより一層好ましい。ここで、複合シートの厚さは、JIS−K 7130−1999に従って測定した厚さをいう。
本発明における複合シートの幅は、特に定めるものでは無いが、例えば、5mm〜2000mmとすることができ、120mm〜2000mmが好ましい。また、本発明の複合シートの長さは、特に定めるものでは無いが、連続複合シートとしてもよいし、所望の形状に切断した複合シートであってもよい。連続複合シートの長さとしては、1〜10,000mの範囲であることが好ましい。所望の形状に切断した複合シートの長さとしては、3cm〜2mの範囲であることが好ましい。
本発明の複合シートは、1m2当たりの重量が、50〜3000gであることが好ましく、100〜2000gであることがより好ましい。
<<含浸率>>
本発明における複合シートにおける、キシリレン系ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。一方、含浸率の上限は特に定めるものでは無く、100%であってもよい。このように含浸率を高くすることにより、振動により強い複合シートが得られる。
本発明における含浸率は、後述する本願実施例で定める方法に従って測定された値をいう。但し、測定機器については、実施例で述べるものが好ましいが、実施例で述べる機器が入手困難な場合等には、同様の性能を有する他の測定機器でも同様に測定できることは言うまでもない。以下、後述するその他の測定方法についても同様である。
<<複合シートの組成>>
本発明における複合シートは、キシリレン系ポリアミド樹脂と強化繊維を含み、キシリレン系ポリアミド樹脂と強化繊維で、全体の70重量%以上を占めることが好ましく、全体の80重量%以上を占めることがより好ましく、全体の90重量%以上を占めることが特に好ましい。
本発明における複合シートにおけるキシリレン系ポリアミド樹脂の割合は、下限値が20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、48重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明における複合シートにおける強化繊維の割合は、下限値が40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、52重量%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、80重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましい。
<キシリレン系ポリアミド樹脂>
<<ポリアミド樹脂の水分量>>
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂のカール・フィッシャー法で測定した水分量が、1重量%以上飽和水分量以下である。このような構成とすることにより、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させやすくなる。水分量の下限は、好ましくは1.3重量%以上であり、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは1.6重量%以上であり、1.8重量%以上とすることもできる。また、水分量の上限は、好ましくは8重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、一層好ましくは5重量%以下であり、より一層好ましくは4重量%以下である。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。本発明における水分量の詳細は、実施例の記載に従う。また、飽和水分量は、1.01325bar、25℃における飽和水分量をいう。
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を所定の割合とするために、キシリレン系ポリアミド樹脂に吸湿処理をすることが好ましい。吸湿処理としては、水に浸漬する、高温度下、高湿度下に静置する、等の手段が例示される。
<<キシリレン系ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移温度>>
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂の融点は、耐熱性及び溶融成形性の観点から、下限値としては、好ましくは170℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、また、上限値としては、330℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。
また、本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、同樹脂の水分量が0重量%の時のガラス転移温度をTg0としたとき、Tg0×0.7以下の温度であることが好ましく、Tg0×0.5以上Tg0×0.7以下の温度であることがより好ましい。
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移温度は、以下の方法により測定した値とする。
島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。次いで、溶融したキシリレン系ポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求めた。
<<キシリレン系ポリアミド樹脂の溶融粘度>>
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の、融点+35℃、保持時間6分、見かけのせん断速度36.5s-1における溶融粘度が500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、350Pa・s以下であることがさらに好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましく、250Pa・s以下であることが一層好ましく、200Pa・s以下であることがより一層好まく、150Pa・s以下であることがさらに一層好ましい。溶融粘度の下限値については、特に定めるものでは無いが、例えば、50Pa・s以上とすることができる。
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の溶融粘度は、後述する本願実施例で定める方法に従って測定された値をいう。
<<キシリレン系ポリアミド樹脂の組成>>
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。
ジアミン由来の構成単位は、70モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましく、90モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが特に好ましい。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンおよびこれらの混合物のいずれでも良いが、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
ジアミン由来の構成単位を構成するキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合、その割合は、全ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
ジカルボン酸由来の構成単位は、50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることが好ましく、70モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがより好ましく、80モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがさらに好ましく、90モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることが特に好ましい。
炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位は、炭素数6〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位がより好ましい。炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもキシリレン系ポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができる。
これらのジカルボン酸成分は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、キシリレン系ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂の第一の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方(さらに好ましくは、アジピン酸)に由来するキシリレン系ポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、ガスバリア性が向上する傾向にある。
また、本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂の第二の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および/またはイソフタル酸に由来し、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とイソフタル酸由来の構成単位のモル比率が30:70〜100:0であるキシリレン系ポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、成形加工性がより向上する。イソフタル酸由来の構成単位を含む場合、その割合は、全ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
また、本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂の第三の実施形態として、上記第一または第二の実施形態において、キシリレン系ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、キシリレン系ポリアミド樹脂の0.5〜5重量%が、分子量が1,000以下のキシリレン系ポリアミド樹脂である態様が例示される。
数平均分子量(Mn)を6,000〜30,000の範囲とすることにより、複合シートの強度を向上させることができる。好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、より好ましくは9,000〜26,000であり、さらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000であり、特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性が良好である。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、キシリレン系ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
また、第三の実施形態におけるキシリレン系ポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5重量%含有することが好ましい。このような低分子のキシリレン系ポリアミド樹脂成分を所定の範囲で含有することにより、キシリレン系ポリアミド樹脂の含浸性が良好となり、キシリレン系ポリアミド樹脂の強化繊維間での流動性が良好となるため、成形加工時にボイドの発生を抑制することができる。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5重量%であり、より好ましくは0.7〜4重量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5重量%であり、特に好ましくは0.9〜3重量%であり、一層好ましくは1〜2.5重量%である。
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、キシリレン系ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたキシリレン系ポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からキシリレン系ポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械特性に優れた複合材が得られやすい傾向にある。
キシリレン系ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた重量平均分子量または数平均分子量の異なる複数種のキシリレン系ポリアミド樹脂を混合したり、重合後のキシリレン系ポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02重量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
キシリレン系ポリアミド樹脂の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(メタキシリレンジアミン等のジアミン)とジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりキシリレン系ポリアミド樹脂を製造することができる。また、ジアミン成分(キシリレンジアミン等のジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもキシリレン系ポリアミド樹脂を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
本発明における複合シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他のポリアミド樹脂やエラストマー成分、その他の添加剤を含んでいてもよい。これらの成分は、通常、キシリレン系ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂組成物に添加される。ポリアミド樹脂組成物は、例えば、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムに製膜され、複合シートの製造に用いられる。
他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。他の樹脂としては、配合する場合、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド66およびポリアミド6の少なくとも1種が好ましい。
本発明における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。これらのエラストマーとしては、キシリレン系ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを含む場合、エラストマーの配合量は、ポリアミド樹脂組成物の5〜20重量%が好ましく、10〜15重量%がより好ましい。
また、他の実施形態として、ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物の3重量%以下であることをいい、さらには、1重量%以下であることをいう。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。これらの配合量はポリアミド樹脂組成物の10重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
上記ポリアミド樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が80重量%以上を占めることが好ましく、90重量%以上を占めることがより好ましい。
<強化繊維シート>
本発明で用いる複合シートは強化繊維シートを含む。強化繊維シートとは、強化繊維を主成分(例えば、全量の90重量%以上が強化繊維)とする層状のものをいい、強化繊維を一方向に並べてなるシートや、強化繊維の織物、編み物および不織布などが例示され、強化繊維の織物が好ましい。
強化繊維シートの総目付は、10〜10000g/m2が好ましく、20〜5000g/m2がより好ましく、50〜8000g/m2がさらに好ましい。ここで、目付とは、1平方メートルあたりの重量(g)をいい、強化繊維シートが、後述するとおり処理剤で処理されている場合は、処理剤を含む重量とする。
また、強化繊維シートの総厚さは、0.05〜10mmが好ましく、0.1〜8mmがより好ましい。ここで、厚さは、JIS−K 7130に従って測定した値をいう。ここで、総厚さとは、強化繊維シートが1枚の場合、1枚の強化繊維シートの厚さをいい、強化繊維シートが2枚以上である場合、2枚以上の強化繊維シートの合計厚さをいう。 繊維強化シートの厚さは、原料強化繊維の繊度(フィラメント数)やその開繊具合で調整できる。また、強化繊維シートが織物である場合、打ち込み密度によっても調整可能である。
本発明において、繊維強化シートを構成する繊維は、10mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが好ましい。本発明で使用する強化繊維の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜10,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の無機繊維または、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維;などが挙げられ、無機繊維が好ましい。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維およびガラス繊維が好ましく用いられ、炭素繊維がより好ましい。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
本発明で用いる強化繊維は、処理剤で処理されていてもよい。処理剤とは、表面処理剤または収束剤が例示される。前記処理剤の量は、強化繊維の0.001〜3.0重量%であることが好ましく、0.1〜2.0重量%であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。またエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
処理剤は1種類のみ用いても良いし、2種類以上用いても良い。
強化繊維による処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、強化繊維を、処理剤を含む液(例えば、水溶液)に浸漬し、強化繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を強化繊維の表面にエアブローすることもできる。さらに、処理剤で処理されている強化繊維の市販品を用いてもよいし、市販品の処理剤を洗い落してから、再度、所望の量となるように、処理しなおしても良い。
<複合シートの用途>
本発明の製造方法により得られる複合シートは、繊維強化樹脂材料として、例えば、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<合成例1 MPXD10>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油(株)製TAグレード)10kg(49.4mol)及び酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に攪拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MPXD10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、213℃、数平均分子量は、15400であった。
<合成例2:MXD10の合成>
原料キシリレンジアミンを全てメタキシリレンジアミンにした以外は合成例1と同様に合成し、MXD10を得た。融点は190℃で、数平均分子量は15100であった。
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱瓦斯化学製、グレードS6001)、融点237℃、数平均分子量16800
PA6:ポリアミド樹脂6(宇部興産製、グレード1022B)、融点220℃、数平均分子量22000
<溶融粘度>
ポリアミド樹脂の融点+35℃、保持時間6分、見かけのせん断速度36.5s-1における溶融粘度は以下の方法により測定した。
測定装置は、(株)東洋精機製のキャピログラフD−1、ダイ:直径1mm×10mm長さを用いた。測定樹脂サンプルは、ペレットを40℃、相対湿度80%の常圧下に任意時間静置して吸水率を調整した。吸水率を調整したペレットをダイに投入して溶融粘度を測定した。
<強化繊維シート>
炭素繊維シート:三菱レイヨン製、TR3110M、目付200g/m2、1枚当たりの厚さ1mm
ガラス繊維シート:日東紡績製、WF 350 100 BS6、目付328g/m2、1枚当たりの厚さ1mm
<実施例1>
<<ポリアミド樹脂フィルムの製造>>
真空乾燥機により乾燥したポリアミド樹脂を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して押出成形し、表面に凹凸状シボを設けたステンレス製の対ロールにより、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPaで加圧し、フィルム表面にシボを有するフィルムを成形した。
得られたポリアミド樹脂フィルムの平均厚さは100μmであった。
得られたポリアミド樹脂を40℃、相対湿度80%の常圧下に、4時間静置して、調湿した。
<<ポリアミド樹脂の水分量の測定>>
ポリアミド樹脂の水分量は、以下の方法により測定した。
25℃、三菱化学アナリテック社製、水分計CA200と、サンプルチャージャーVA−236Sを用い、上記調湿したポリアミド樹脂フィルムから1.0gを切り出し、設定温度は融点−5℃とし、検出開始までの待機時間を0秒とし、測定時間を30分間とし、カール・フィッシャー法で水分量を測定した。ブランクとして試料量0gに対して同条件で水分量を測定した。次式により、試料の水分量を計算した。
((試験片の水分量)―(ブランクの水分量))/(試験片の重量) (重量%)
<<含浸>>
上記で得られたキシリレン系ポリアミド樹脂フィルム8枚と、強化繊維シート7枚とを、両外側がポリアミド樹脂になるように、交互に積層し、表1に記載の温度、圧力および時間で、熱プレスし、複合シートを得た。得られた複合シートの厚さおよび複合シート中の強化繊維の割合は、表1に記載した。
<<含浸率の測定>>
得られた複合シートの含浸率を以下の方法により測定した。
得られた複合シートから2cmx2cmのシートを切り取り、X線CT−scan(ヤマト製、TDM 1000H−II)を使用して断面写真を撮影した。得られた断面写真に対し、強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、複合シートを構成する強化繊維シートのうち、膜面に垂直な断面において、最も中央に位置する強化繊維シートに対応する部分に熱可塑性樹脂が含浸した領域/撮影した領域(単位%)として示した。複合シートを構成する強化繊維シートが1枚の場合は、前記強化繊維シートに対応する部分における含浸率をいい、複合シートを構成する強化繊維シートが偶数枚の場合は、中央に位置する2枚の強化繊維シートのうち、含浸率の低い方の強化繊維シートに対応する領域における含浸率をいう。
結果を下記表1に示す。
<実施例2〜5、比較例1、2>
実施例1において、表1に示す通り、材料等を変更し、他は同様に行った。結果を表1に示す。
Figure 0006443218
上記表から明らかなとおり、所定の水分率のキシリレン系ポリアミド樹脂を含浸させることにより、含浸率の高い複合シートを製造できた(実施例1〜5)。これに対し、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量が少ない場合、含浸率が劣ってしまった(比較例1)。また、キシリレン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を用いた場合、所定の水分量としても、含浸率が劣ってしまった(比較例2)。
実施例6
上記で得られたMPXD10から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものを40℃、相対湿度80%の常圧下に、4時間静置して調湿した後に、供給スタンドに設置した。また、炭素繊維シートのロールを供給スタンドに設置した。前記ロール状のポリアミド樹脂フィルム3枚とロール状の炭素繊維シート2枚を交互に積層するように巻き出し、一対のロール間で熱プレスした。ライン速度は1cm/分、ロール温度は上側、下側共に290℃とした。安定した複合シートが得られた。また、含浸率は、95.2%であった。
比較例3
上記で得られたMPXD10から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものを、PA6から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものに変更した以外、実施例6と同様に行った。ポリアミド樹脂フィルムが巻き出し中互いに貼り付き、安定した複合シートが得られなかった。実用レベルの複合フィルムが得られなかったため、含浸率を求められなかった。
1 強化繊維シート
2 ポリアミド樹脂フィルム
3 複合シート
4 上側ロール
5 下側ロール

Claims (14)

  1. ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、カール・フィッシャー法で測定した水分量が1重量%以上飽和水分量以下のポリアミド樹脂を、強化繊維シートに含浸させることを含む、複合シートの製造方法。
  2. 前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂フィルムである、請求項1に記載の複合シートの製造方法。
  3. 3枚以上のポリアミド樹脂フィルムと、2枚以上の強化繊維シートとを交互に積層して含浸させる、請求項2に記載の複合シートの製造方法。
  4. 強化繊維シートの総目付けが、10〜10000g/m2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  5. 強化繊維シートの総厚さが、0.05〜10mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  6. 前記ポリアミド樹脂の、温度が融点+35℃、保持時間が6分、見かけのせん断速度が36.5s-1の条件における溶融粘度が500Pa・s以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  7. 前記複合シートにおける、前記ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率が、90%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  8. 前記複合シートにおける、強化繊維の割合が10〜65重量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  9. 前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、または、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  10. ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  11. ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸由来の構成単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  12. 前記含浸工程は、前記ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃の温度で、1〜6MPaで10〜1000秒加圧することを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  13. 前記複合シートの厚さが200μm以上20mm以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
  14. 強化繊維が炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
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