JP6443218B2 - 複合シートの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、所定のキシリレン系ポリアミド樹脂を繊維材料に含浸してなる複合材が記載されている。
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸させてなる複合シートの製造方法であって、キシリレン系ポリアミド樹脂が複合繊維に含浸しやすい複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
<1>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、カール・フィッシャー法で測定した水分量が1重量%以上飽和水分量以下のポリアミド樹脂を、強化繊維シートに含浸させることを含む、複合シートの製造方法。
<2>前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂フィルムである、<1>に記載の複合シートの製造方法。
<3>3枚以上のポリアミド樹脂フィルムと、2枚以上の強化繊維シートとを交互に積層して含浸させる、<2>に記載の複合シートの製造方法。
<4>強化繊維シートの総目付けが、10〜10000g/m2である、<1>〜<3>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<5>強化繊維シートの総厚さが、0.05〜10mmである、<1>〜<4>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<6>前記ポリアミド樹脂の、温度が融点+35℃、保持時間が6分、見かけのせん断速度が36.5s-1の条件における溶融粘度が500Pa・s以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<7>前記複合シートにおける、前記ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率が、90%以上である、<1>〜<6>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<8>前記複合シートにおける、強化繊維の割合が10〜65重量%である、<1>〜<7>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<9>前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、または、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物である、<1>〜<8>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<10>ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である、<1>〜<9>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<11>ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸由来の構成単位である、<1>〜<9>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<12>前記含浸工程は、前記ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃の温度で、1〜6MPaで10〜1000秒加圧することを含む、<1>〜<11>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<13>前記複合シートの厚さが200μm以上20mm以下である、<1>〜<12>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
<14>強化繊維が炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種である、<1>〜<13>のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
尚、図面中の符号は、図1〜図3において共通である。
キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる形態の一例として、図1に示すように、強化繊維シート1の両面にキシリレン系ポリアミド樹脂フィルム2を重ね、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルム2を加熱(溶融)および加圧して、強化繊維シート1に含浸させ、複合シート3を得ることが挙げられる。ここで、強化繊維シートの目付けが小さければ、含浸は比較的スムーズに進行する。しかしながら、強化繊維シートの目付が大きくなると、樹脂が含浸しにくくなり、中心部まで十分に含浸しなくなる場合がある。この点について、含浸の際の加熱温度や付加する圧力を高くしたり、加熱・加圧時間を長くすれば、中心部まで含浸させることができる。しかしながら、生産性の観点からは望ましくない。これに対し、本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂にあえて水分を含ませることによって、含浸性を高めている。
また、図1において、強化繊維シート1の両面に、それぞれ、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムを2枚ずつ重ねても良いし、2枚の強化繊維シートの両面に、それぞれ、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムを1枚ずつ重ねる等の形態であってもよい。しかしながら、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムと強化繊維シートを交互に積層する方が好ましい。また、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムは、表面に凹凸状のシボを有することが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂フィルムロールから巻き出し性、強化繊維とのスタック性が改善され操作しやすくなるという利点がある。
図2は、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる形態の他の一例であって、3枚以上のポリアミド樹脂フィルム2と、2枚以上の強化繊維シート1を交互に積層して含浸させる態様を示したものである。このように、強化繊維シートの枚数が多くなると、強化繊維シートの総目付が相対的に大きくなる傾向にある。この状態で、フィルムの上面及び下面(図2の矢印の方向)から圧力を付加すると、中心部の強化繊維シートにポリアミド樹脂が含浸しにくくなる傾向にある。しかしながら、本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂にあえて水分を含ませることによって、含浸性を高め、中心部まで含浸させることに成功したものである。
キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を高くすると含浸しやすくなる理由は、キシリレン系ポリアミド樹脂が水分を含むと、キシリレン系ポリアミド樹脂の溶融粘度が下がり、含浸しやすくなるためと推定される。
また、図2において、強化繊維シートとして、強化繊維を一方向に並べてなる繊維強化シートを用いる場合、1層目の強化繊維シートと、2層目の強化繊維シートの強化繊維の繊維方向が、交差するように積層することが好ましい、3層目以降についても、同様に交差するように積層することが好ましい。
本発明では、上述のとおり、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させる。含浸させる方法は特に定めるものでは無いが、キシリレン系ポリアミド樹脂を加熱して溶融し、強化繊維シートに含浸させる。この際、通常は、圧力をかけて行う。
キシリレン系ポリアミド樹脂の加熱温度は、キシリレン系ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃が好ましく、キシリレン系ポリアミド樹脂の融点+20℃〜融点+90℃がより好ましく、25〜50℃がさらに好ましい。キシリレン系ポリアミド樹脂が融点を2つ以上有する場合、上記融点は、高い方の融点とする。また、2種以上のキシリレン系ポリアミド樹脂を併用する場合、2種以上のキシリレン系ポリアミド樹脂のうち、最も高い融点を上記融点とする。
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付が大きい場合であっても、温度を従来よりも高くしなくても、適切に含浸させることが可能である。
含浸に際し、圧力をかける場合、圧力は1〜6MPaが好ましく、2〜5MPaがより好ましい。本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付が大きい場合であっても、圧力を従来より高くしなくても、適切に含浸させることが可能である。
含浸に際し、加熱および/または加圧時間は、それぞれ、10〜1000秒が好ましく、10〜800秒がより好ましい。本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を1重量%以上としているため、強化繊維シートの総目付に比して、短い加熱時間、加圧時間で適切に含浸させることができる。
加熱および加圧は同時に行ってもよく、別々に行っても良い。加熱および加圧を同時に行う一例として、熱プレスが例示される。
また、加熱および加圧は、図3に示すように、ポリアミド樹脂フィルム2と強化繊維シート1を積層したものを、一対のロール間で熱プレスして行っても良い。すなわち、ポリアミド樹脂フィルムで強化繊維シートを挟んだ(交互積層した)状態でロールを用いて加熱して行うことが好ましい。図3の上側ロール4および下側ロール5のいずれも加熱ロールであっても良いし、上側ロールのみが加熱ロールで、下側ロールは加熱されていないロール(例えば、上記キシリレン系ポリアミド樹脂の融点未満の温度のロール)であっても良い。また、加熱ロールが、キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムに密着してしまう場合、加熱ロールとキシリレン系ポリアミド樹脂フィルムの間に離型シート等を配しても良い。
キシリレン系ポリアミド樹脂フィルムの厚さは、複合シートの厚さや複合シート中の強化繊維の含有率に応じて適宜定めることができる。ポリアミド樹脂フィルムの厚さは、例えば、上限値を、250μm未満とすることができ、200μm以下が好ましく、下限値を30μm以上とすることができ、50μm以上が好ましい。
上記キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させた複合フィルムは、その後、巻き取りロールによって、巻き取ることもできる。すなわち、本発明の製造方法によって得られる複合シートは、巻き取り体であってもよい。
もちろん、含浸後、所望のサイズにカットする態様も本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
本発明における複合シートの厚さは、特に定めるものでは無いが、下限値が、厚さ200μm以上のものが好ましく、250μm以上がより好ましく、500μm以上がさらに好ましく、800μm以上が一層好ましく、1mm以上がより一層好ましい。上限値は、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましく、4mm以下が一層好ましく、3mm以下がより一層好ましい。ここで、複合シートの厚さは、JIS−K 7130−1999に従って測定した厚さをいう。
本発明における複合シートの幅は、特に定めるものでは無いが、例えば、5mm〜2000mmとすることができ、120mm〜2000mmが好ましい。また、本発明の複合シートの長さは、特に定めるものでは無いが、連続複合シートとしてもよいし、所望の形状に切断した複合シートであってもよい。連続複合シートの長さとしては、1〜10,000mの範囲であることが好ましい。所望の形状に切断した複合シートの長さとしては、3cm〜2mの範囲であることが好ましい。
本発明の複合シートは、1m2当たりの重量が、50〜3000gであることが好ましく、100〜2000gであることがより好ましい。
本発明における複合シートにおける、キシリレン系ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。一方、含浸率の上限は特に定めるものでは無く、100%であってもよい。このように含浸率を高くすることにより、振動により強い複合シートが得られる。
本発明における含浸率は、後述する本願実施例で定める方法に従って測定された値をいう。但し、測定機器については、実施例で述べるものが好ましいが、実施例で述べる機器が入手困難な場合等には、同様の性能を有する他の測定機器でも同様に測定できることは言うまでもない。以下、後述するその他の測定方法についても同様である。
本発明における複合シートは、キシリレン系ポリアミド樹脂と強化繊維を含み、キシリレン系ポリアミド樹脂と強化繊維で、全体の70重量%以上を占めることが好ましく、全体の80重量%以上を占めることがより好ましく、全体の90重量%以上を占めることが特に好ましい。
本発明における複合シートにおけるキシリレン系ポリアミド樹脂の割合は、下限値が20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、48重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明における複合シートにおける強化繊維の割合は、下限値が40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、52重量%以上であることがさらに好ましい。上限値としては、80重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましい。
<<ポリアミド樹脂の水分量>>
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂のカール・フィッシャー法で測定した水分量が、1重量%以上飽和水分量以下である。このような構成とすることにより、キシリレン系ポリアミド樹脂を強化繊維シートに含浸させやすくなる。水分量の下限は、好ましくは1.3重量%以上であり、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは1.6重量%以上であり、1.8重量%以上とすることもできる。また、水分量の上限は、好ましくは8重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、一層好ましくは5重量%以下であり、より一層好ましくは4重量%以下である。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。本発明における水分量の詳細は、実施例の記載に従う。また、飽和水分量は、1.01325bar、25℃における飽和水分量をいう。
本発明では、キシリレン系ポリアミド樹脂の水分量を所定の割合とするために、キシリレン系ポリアミド樹脂に吸湿処理をすることが好ましい。吸湿処理としては、水に浸漬する、高温度下、高湿度下に静置する、等の手段が例示される。
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂の融点は、耐熱性及び溶融成形性の観点から、下限値としては、好ましくは170℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、また、上限値としては、330℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。
また、本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、同樹脂の水分量が0重量%の時のガラス転移温度をTg0としたとき、Tg0×0.7以下の温度であることが好ましく、Tg0×0.5以上Tg0×0.7以下の温度であることがより好ましい。
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の融点およびガラス転移温度は、以下の方法により測定した値とする。
島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。次いで、溶融したキシリレン系ポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求めた。
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の、融点+35℃、保持時間6分、見かけのせん断速度36.5s-1における溶融粘度が500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、350Pa・s以下であることがさらに好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましく、250Pa・s以下であることが一層好ましく、200Pa・s以下であることがより一層好まく、150Pa・s以下であることがさらに一層好ましい。溶融粘度の下限値については、特に定めるものでは無いが、例えば、50Pa・s以上とすることができる。
本発明におけるキシリレン系ポリアミド樹脂の溶融粘度は、後述する本願実施例で定める方法に従って測定された値をいう。
本発明で用いるキシリレン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。
ジアミン由来の構成単位は、70モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましく、90モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが特に好ましい。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンおよびこれらの混合物のいずれでも良いが、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合、その割合は、全ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位は、炭素数6〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位がより好ましい。炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもキシリレン系ポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましい。
これらのジカルボン酸成分は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5重量%であり、より好ましくは0.7〜4重量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5重量%であり、特に好ましくは0.9〜3重量%であり、一層好ましくは1〜2.5重量%である。
キシリレン系ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた重量平均分子量または数平均分子量の異なる複数種のキシリレン系ポリアミド樹脂を混合したり、重合後のキシリレン系ポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。他の樹脂としては、配合する場合、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド66およびポリアミド6の少なくとも1種が好ましい。
本発明における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
また、他の実施形態として、ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物の3重量%以下であることをいい、さらには、1重量%以下であることをいう。
上記ポリアミド樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が80重量%以上を占めることが好ましく、90重量%以上を占めることがより好ましい。
本発明で用いる複合シートは強化繊維シートを含む。強化繊維シートとは、強化繊維を主成分(例えば、全量の90重量%以上が強化繊維)とする層状のものをいい、強化繊維を一方向に並べてなるシートや、強化繊維の織物、編み物および不織布などが例示され、強化繊維の織物が好ましい。
強化繊維シートの総目付は、10〜10000g/m2が好ましく、20〜5000g/m2がより好ましく、50〜8000g/m2がさらに好ましい。ここで、目付とは、1平方メートルあたりの重量(g)をいい、強化繊維シートが、後述するとおり処理剤で処理されている場合は、処理剤を含む重量とする。
また、強化繊維シートの総厚さは、0.05〜10mmが好ましく、0.1〜8mmがより好ましい。ここで、厚さは、JIS−K 7130に従って測定した値をいう。ここで、総厚さとは、強化繊維シートが1枚の場合、1枚の強化繊維シートの厚さをいい、強化繊維シートが2枚以上である場合、2枚以上の強化繊維シートの合計厚さをいう。 繊維強化シートの厚さは、原料強化繊維の繊度(フィラメント数)やその開繊具合で調整できる。また、強化繊維シートが織物である場合、打ち込み密度によっても調整可能である。
本発明において、繊維強化シートを構成する繊維は、10mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが好ましい。本発明で使用する強化繊維の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜10,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる複合シートは、繊維強化樹脂材料として、例えば、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油(株)製TAグレード)10kg(49.4mol)及び酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に攪拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MPXD10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、213℃、数平均分子量は、15400であった。
原料キシリレンジアミンを全てメタキシリレンジアミンにした以外は合成例1と同様に合成し、MXD10を得た。融点は190℃で、数平均分子量は15100であった。
ポリアミド樹脂の融点+35℃、保持時間6分、見かけのせん断速度36.5s-1における溶融粘度は以下の方法により測定した。
測定装置は、(株)東洋精機製のキャピログラフD−1、ダイ:直径1mm×10mm長さを用いた。測定樹脂サンプルは、ペレットを40℃、相対湿度80%の常圧下に任意時間静置して吸水率を調整した。吸水率を調整したペレットをダイに投入して溶融粘度を測定した。
炭素繊維シート:三菱レイヨン製、TR3110M、目付200g/m2、1枚当たりの厚さ1mm
ガラス繊維シート:日東紡績製、WF 350 100 BS6、目付328g/m2、1枚当たりの厚さ1mm
<<ポリアミド樹脂フィルムの製造>>
真空乾燥機により乾燥したポリアミド樹脂を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して押出成形し、表面に凹凸状シボを設けたステンレス製の対ロールにより、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPaで加圧し、フィルム表面にシボを有するフィルムを成形した。
得られたポリアミド樹脂フィルムの平均厚さは100μmであった。
得られたポリアミド樹脂を40℃、相対湿度80%の常圧下に、4時間静置して、調湿した。
ポリアミド樹脂の水分量は、以下の方法により測定した。
25℃、三菱化学アナリテック社製、水分計CA200と、サンプルチャージャーVA−236Sを用い、上記調湿したポリアミド樹脂フィルムから1.0gを切り出し、設定温度は融点−5℃とし、検出開始までの待機時間を0秒とし、測定時間を30分間とし、カール・フィッシャー法で水分量を測定した。ブランクとして試料量0gに対して同条件で水分量を測定した。次式により、試料の水分量を計算した。
((試験片の水分量)―(ブランクの水分量))/(試験片の重量) (重量%)
上記で得られたキシリレン系ポリアミド樹脂フィルム8枚と、強化繊維シート7枚とを、両外側がポリアミド樹脂になるように、交互に積層し、表1に記載の温度、圧力および時間で、熱プレスし、複合シートを得た。得られた複合シートの厚さおよび複合シート中の強化繊維の割合は、表1に記載した。
得られた複合シートの含浸率を以下の方法により測定した。
得られた複合シートから2cmx2cmのシートを切り取り、X線CT−scan(ヤマト製、TDM 1000H−II)を使用して断面写真を撮影した。得られた断面写真に対し、強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、複合シートを構成する強化繊維シートのうち、膜面に垂直な断面において、最も中央に位置する強化繊維シートに対応する部分に熱可塑性樹脂が含浸した領域/撮影した領域(単位%)として示した。複合シートを構成する強化繊維シートが1枚の場合は、前記強化繊維シートに対応する部分における含浸率をいい、複合シートを構成する強化繊維シートが偶数枚の場合は、中央に位置する2枚の強化繊維シートのうち、含浸率の低い方の強化繊維シートに対応する領域における含浸率をいう。
結果を下記表1に示す。
実施例1において、表1に示す通り、材料等を変更し、他は同様に行った。結果を表1に示す。
上記で得られたMPXD10から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものを40℃、相対湿度80%の常圧下に、4時間静置して調湿した後に、供給スタンドに設置した。また、炭素繊維シートのロールを供給スタンドに設置した。前記ロール状のポリアミド樹脂フィルム3枚とロール状の炭素繊維シート2枚を交互に積層するように巻き出し、一対のロール間で熱プレスした。ライン速度は1cm/分、ロール温度は上側、下側共に290℃とした。安定した複合シートが得られた。また、含浸率は、95.2%であった。
上記で得られたMPXD10から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものを、PA6から構成されるポリアミド樹脂フィルムであってロール状のものに変更した以外、実施例6と同様に行った。ポリアミド樹脂フィルムが巻き出し中互いに貼り付き、安定した複合シートが得られなかった。実用レベルの複合フィルムが得られなかったため、含浸率を求められなかった。
2 ポリアミド樹脂フィルム
3 複合シート
4 上側ロール
5 下側ロール
Claims (14)
- ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、カール・フィッシャー法で測定した水分量が1重量%以上飽和水分量以下のポリアミド樹脂を、強化繊維シートに含浸させることを含む、複合シートの製造方法。
- 前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂フィルムである、請求項1に記載の複合シートの製造方法。
- 3枚以上のポリアミド樹脂フィルムと、2枚以上の強化繊維シートとを交互に積層して含浸させる、請求項2に記載の複合シートの製造方法。
- 強化繊維シートの総目付けが、10〜10000g/m2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 強化繊維シートの総厚さが、0.05〜10mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記ポリアミド樹脂の、温度が融点+35℃、保持時間が6分、見かけのせん断速度が36.5s-1の条件における溶融粘度が500Pa・s以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記複合シートにおける、前記ポリアミド樹脂の強化繊維への含浸率が、90%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記複合シートにおける、強化繊維の割合が10〜65重量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、または、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸由来の構成単位である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記含浸工程は、前記ポリアミド樹脂の融点+10℃〜融点+100℃の温度で、1〜6MPaで10〜1000秒加圧することを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 前記複合シートの厚さが200μm以上20mm以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
- 強化繊維が炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合シートの製造方法。
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