JP6565179B2 - ライナーおよび圧力容器 - Google Patents

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Description

本発明はライナーおよび圧力容器に関する。特に、各種ガスのための圧力容器のライナーに関する。
従来から、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、LPG(liquefied petroleum gas)、代替フロン、メタン、水素等の気体成分を長期間に亘り保持するために、ガスバリア性に優れた圧力容器が用いられている。
例えば、特許文献1には、金属製または、樹脂製ライナーの外周を補強繊維と樹脂からなる繊維強化プラスチック製のシェルで覆った圧力容器において、前記繊維強化プラスチックの圧縮強度が1700MPa以上で、かつ、繊維直交方向の伸度が1.2%以上であることを特長とする圧力容器が開示されている。
また、特許文献2には、ボンベ本体が、プラスチック製内筒、薄葉金属層および繊維強化プラスチック層にて構成されていることを特徴とするボンベが開示されている。
さらに、特許文献3には、圧力容器であって、所定の流体の漏洩を遮断する樹脂製のライナー層と、前記ライナー層よりも外側に形成され、耐圧性を有する、繊維強化プラスチック製の第1の層と、前記ライナー層と、前記第1の層との間に配置され、前記第1の層よりも伸びが大きいプラスチックから成る第2の層を備えることを特徴とする圧力容器が開示されている。
特開2000−249294号公報 特開平1−105099号公報 特開2010−038216号公報
上述のとおり、圧力容器の軽量化の観点から、樹脂製ライナーを用いることが検討されている。そして、樹脂製ライナーを補強するため、樹脂製ライナーの外周に繊維強化樹脂からなる外層を設けることが行われている。しかしながら、ライナーが樹脂製である場合、圧力容器の中にあるガスが、ライナーの壁を透過してしまう場合がある。このとき、ライナーと外層の間に隙間があると、この隙間にガスが溜まってしまうことがあり、圧力容器が変形する等の問題が起こる場合がある。
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、軽量でガスバリア性の高いライナーおよび前記ライナーを有する圧力容器を提供することを目的とする。
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、圧力容器のライナーに、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸している複合材料を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<11>により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸している複合材料から構成される圧力容器のライナー。
<2>前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンである、<1>に記載のライナー。
<3>前記ライナーの、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、0.10cc・mm/m2・day・atm以下である、<1>または<2>に記載のライナー。
<4>前記ライナーのボイド率が10%以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載のライナー。
<5>前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、<2>〜<4>のいずれかに記載のライナー。
<6>前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<2>〜<5>のいずれかに記載のライナー。
<7>前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方に由来する、<2>〜<4>のいずれかに記載のライナー。
<8>前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸に由来する、<2>〜<4>のいずれかに記載のライナー。
<9>前記連続繊維が炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種である、<1>〜<8>のいずれかに記載のライナー。
<10>前記ライナーにおける連続繊維の割合が、10〜80V/V%である、<1>〜<9>のいずれかに記載のライナー。
<11><1>〜<10>のいずれかに記載のライナーを有する、圧力容器。
本発明により、軽量でガスバリア性の高いライナーを提供および圧力容器を提供可能になった。
本発明の圧力容器の構造の一例を示す断面概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
ライナー
本発明の圧力容器のライナーは、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸している複合材料から構成される。本発明の圧力容器のライナーは、通常は、複合材料のみからなるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいることを排除するものではない。
本発明のライナーは、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、0.10ml・mm/m2・day・atm以下であることが好ましく、0.01ml・mm/m2・day・atm以下とすることもできる。下限値は、特に定めるものではないが、実用性を考えると、例えば、0.0001ml・mm/m2・day・atm以上とすることもできる。
気体透過係数における気体は、本発明のライナーに封入可能である気体である限り特に定めるものでは無いが、通常、25℃、1atmで気体であるガスをいい、反応性の低いものが好ましい。具体的には、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、LPG、代替フロン、メタン、水素が例示される。
本発明のライナーは、ボイド率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが一層好ましく、5%以下であることがより一層好ましく、4%以下とすることもできる。
本発明におけるボイド率とは、後述する実施例で定める方法で特定された値をいう。実施例で記載する測定機器等が、廃版等により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する測定機器で測定することができる。以下の測定方法についても同様である。
ボイド率を低くすることにより、ガスバリア性をより向上させることができる。ボイド率を低くする手段としては、複合材料のボイド率を低くすることが挙げられる。
本発明のライナーの厚さは、特に定めるものではないが、100〜6000μmであることが好ましく、400〜4000μmであることがより好ましい。
本発明のライナーにおける連続繊維の割合は、10V/V%以上であることが好ましく、20V/V%以上がより好ましく、30V/V%以上であることがさらに好ましく、さらには、40V/V%以上とすることもでき、特には、45V/V%以上とすることもできる。また、80V/V%以下であることが好ましく、70V/V%以下がより好ましく、さらには、60V/V%以下とすることもでき、特には、55V/V%以下とすることもできる。
ここで、V/V%とは、ライナーの体積に対する、該ライナー中の連続繊維の体積の割合を示す単位であり、ライナーにおける連続繊維の割合は、後述する実施例で述べる方法で測定した値をいう。
本発明ライナーは、連続繊維が規則的に配列していることが好ましい。規則的に配列しているとは、ライナーに含まれる連続繊維の70質量%以上が、一定の方向性を持って並んでいることをいう。一定の方向性とは、螺旋状、縦方向、横方向またはこれらの組み合わせが例示される。尚、本発明でいう螺旋状、縦方向、横方向は、厳密な螺旋状等の配列に加え、当業者に一般的に解釈される程度の誤差を含む趣旨である。
<複合材料>
複合材料は、連続繊維と、前記連続繊維に含浸したポリアミド樹脂を含み、連続繊維と連続繊維に含浸したポリアミド樹脂組成物からなっていてもよい。
本発明で用いる複合材料は、連続繊維とポリアミド樹脂が全体の80質量%以上を占めることが好ましい。
以下、ポリアミド樹脂および連続繊維について説明する。
<<ポリアミド樹脂>>
本発明で用いる複合材料は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6T、ジアミン由来の構成単位に少なくとも一つの芳香環を含むポリアミド樹脂などが挙げられる。
本発明では、ジアミン由来の構成単位に少なくとも一つの芳香環を含むポリアミド樹脂が好ましく、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンであるポリアミド樹脂がより好ましい。
さらに、ジアミン由来の構成単位は、70モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましい。キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンおよびこれらの混合物のいずれでも良いが、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましい。
ジアミン由来の構成単位を構成するキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を含むジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合、その割合は、全ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
ジカルボン酸由来の構成単位は、50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることが好ましく、70モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがより好ましく、80モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがさらに好ましい。
炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数6〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位がより好ましい。炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができる。
これらのジカルボン酸成分は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明で用いるポリアミド樹脂の第一の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方(さらに好ましくは、アジピン酸)に由来するポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、ガスバリア性が向上する傾向にある。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂の第二の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および/またはイソフタル酸に由来し、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とイソフタル酸由来の構成単位のモル比率が30:70〜100:0であるポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、成形加工性がより向上する。イソフタル酸由来の構成単位を含む場合、その割合は、全ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂の第三の実施形態として、第一の実施形態のポリアミド樹脂と、ポリアミド66およびポリアミド6の少なくとも1種との混合物が例示される。本実施形態においては、第一の実施形態のポリアミド樹脂と、ポリアミド66およびポリアミド6の合計の質量比が、95:5〜25:75であることが好ましく、95:5〜51:49であることがより好ましく、95:5〜60:40であることがさらに好ましく、90:10〜70:30であることが特に好ましい。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂の第四の実施形態として、上記第一〜第三の実施形態において、ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、ポリアミド樹脂の0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下のポリアミド樹脂である態様が例示される。
数平均分子量(Mn)を6,000〜30,000の範囲の範囲とすることにより、複合材料の強度を向上させることができる。好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、より好ましくは9,000〜26,000であり、さらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000であり、特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性が良好である。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
また、第四の実施形態におけるポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することが好ましい。このような低分子のポリアミド樹脂成分を所定の範囲で含有することにより、ポリアミド樹脂の含浸性が良好となり、ポリアミド樹脂の強化繊維間での流動性が良好となるため、成形加工時にボイドの発生を抑制することができる。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、特に好ましくは0.9〜3質量%であり、一層好ましくは1〜2.5質量%である。
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械特性に優れた複合材が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた重量平均分子量または数平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、100μm単層フィルムにおけるJIS K−7127に準拠した引張弾性率が、1.2GPa以上であることが好ましく、1.5〜4.0GPaであることがより好ましい。
また、100μm単層フィルムにおける、JIS K−7127に準拠した引張破断強度が、3MPa以上であることが好ましく、5〜100MPaであることがより好ましい。
ポリアミド樹脂の融点は、耐熱性及び溶融成形性の観点から、好ましくは170〜330℃の範囲、より好ましくは200〜320℃の範囲である。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
ポリアミド樹脂の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(メタキシリレンジアミン等のジアミン)とジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミド樹脂を製造することができる。また、ジアミン成分(キシリレンジアミン等のジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
本発明で用いる複合材料は、エラストマー成分等の添加剤を含むいわゆるポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸させたものであってもよい。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを含む場合、エラストマーの配合量は、ポリアミド樹脂組成物の5〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。
また、他の実施形態として、ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物の3質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下であることをいう。
また、上記したポリアミド樹脂組成物は、一種類もしくは複数のポリアミド樹脂をブレンドして使用することもできる。本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、上述のポリアミド樹脂の第一の実施形態〜第四の実施形態のいずれかのポリアミド樹脂が全体の70質量%を占めることが好ましく、80質量%以上を占めることがより好ましい。本発明では特に第一の実施形態のポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。これらの配合量はポリアミド樹脂組成物の10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
<<連続繊維>>
本発明で用いる複合材料は連続繊維を含む。連続繊維とは、10cmを超える繊維長を有する繊維束をいう。本発明で使用する連続繊維束の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜10,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
連続繊維束は、平均繊度が、50〜2000tex(g/1000m)であることが好ましく、60〜800texであることがより好ましく、60〜500texであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、加工がより容易となり、得られる織物の弾性率・強度がより優れたものとなる。
連続繊維束の平均引張弾性率は、50〜1000GPaであることが好ましい。このような範囲とすることにより、成形品の強度がより優れたものとなる。
連続繊維束の平均引張弾性率は、50〜1000GPaであることが好ましく、200〜700GPaであることがより好ましい。
連続繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の無機繊維または、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維;などが挙げられ、無機繊維が好ましい。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維およびガラス繊維が好ましく用いられ、炭素繊維がより好ましい。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
本発明で用いる連続繊維は、処理剤で処理されていてもよい。処理剤とは、表面処理剤または収束剤が例示される。前記処理剤の量は、連続繊維の0.001〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.5〜1.1質量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。またエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
処理剤は1種類のみ用いても良いし、2種類以上用いても良い。
連続繊維による処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、連続繊維を、処理剤を含む液(例えば、水溶液)に浸漬し、連続繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を連続繊維の表面にエアブローすることもできる。さらに、処理剤で処理されている連続繊維の市販品を用いてもよいし、市販品の処理剤を洗い落してから、再度、所望の量となるように、処理しなおしても良い。
<ライナーの製造方法>
本発明のライナーは、公知の方法によって製造できる。本発明のライナーは、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸している複合材料から構成されていればよく、すなわち、ライナーの状態となったときに、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸した状態となっていればよい。従って、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸した状態の複合材料、例えば、テープ状の複合材料をライナーの形状に配して加熱成形してもよいし、ポリアミド樹脂繊維と連続繊維からなる織物や混繊糸などをライナーの形状に配してから加熱して、ポリアミド樹脂を連続繊維に含浸させつつ、成形してもよい。さらには、連続繊維をライナーの形状に配した後、ポリアミド樹脂を含浸させる態様であってもよい。
テープ状の複合材料は、一方向に引き揃えた連続繊維を開繊しながら、溶融ポリアミド樹脂を含浸させる方法や、一方向に引き揃えた連続繊維に、ポリアミド樹脂フィルムを重ねて加熱して含浸させる方法によって製造できる。
織物としては、経糸と緯糸の一方が、ポリアミド樹脂組成物からなる連続ポリアミド樹脂繊維であり、他方が連続繊維である織物が例示される。混繊糸としては、連続ポリアミド樹脂繊維と連続繊維からなる混繊糸が挙げられる。かかる混繊糸は、撚りが掛っていることが好ましい。また、混繊糸を用いた織物や編み物も好ましく採用できる。
本発明では、フィラメントワインディング法やテープワインディング法などによって、複合材料、織物や混繊糸を型の外周に巻き、加熱成形してから型を除去する方法が好ましい。また、レジントランスファーモールディング(RTM)法などによって、型の外周に、連続繊維を適用した後、真空下等で、ポリアミド樹脂を含浸させることによっても製造できる。
ここで、ライナーを製造するにあたり、筒状の型を用い、ライナーの上部及び下部については、別途、加熱加工して形成してもよいし、ライナーを一体的に成形した後に、ライナーの開口部から型を除去して成形してもよい。
ライナーの開口部から型を除去する場合、セラミックの型のように破壊等によって、除去できるものが例示される。
加熱温度は、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物が、溶融する温度以上とする必要があり、ポリアミド樹脂の種類や分子量によっても異なるが、ポリアミド樹脂の融点+10℃以上がより好ましく、融点+20℃以上がさらに好ましい。加熱温度の上限値としては、ポリアミド樹脂の融点+100℃以下がより好ましく、融点+80℃以下がさらに好ましい。ここでのポリアミド樹脂は、複合材料を構成するポリアミド樹脂である。
加熱時間は特に定めるものではないが、通常は、10秒〜10分である。
また、加圧してもよく、加圧する際のプレス圧力は1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が特に好ましい。加熱加圧は、減圧下、特には真空下で行うのが好ましい。このような条件で行うと、得られるライナー中のボイド率を低くすることができる。
本発明のライナーは、圧力容器のライナーとして用いられる。図1は、本発明の圧力容器10の構造の一例を示す断面概略図であって、1はライナーを、2は保護層を、3は口金を、4はボスを、5はバルブを示している。
口金3は、例えば、略円筒状を成し、ライナー1と保護層2との間の位置で、固定されている。口金3の略円筒状の開口部が、圧力容器10の開口部として機能する。口金3は、ステンレス、アルミニウム等他の金属からなるものであってもよいし、樹脂製でもよい。バルブ5は、例えば、円柱状の部分に、雄ねじが形成された形状であり、口金3の内側面に形成されている雌ねじに螺合されることにより、バルブ5によって、口金3の開口部が閉じられる。ボス4は、例えば、アルミニウムから成り、一部分が外部に露出した状態で組みつけられ、タンク内部発熱および吸熱を、外部に導く働きをするものである。尚、本発明において、口金3、ボス4、バルブ5は、公知の他の手段によって置き換えたりすることもでき、本発明の圧力容器における必須構成要件ではない。
図1に記載の圧力容器では、ライナー1の表面に保護層2を含んでいる。図1における保護層は、断熱または断冷のための保護層であるが、本発明の圧力容器において必須の構成要件ではない。また、ライナー1の外側に設ける層としては、保護層に限らず、塗料や錆止めを含む層、ガスバリア層であってもよい。これらの層は、1層のみであっても良いし、2層以上であってもよい。また、ライナーの表面に何ら層を有していなくてもよい。
特に、本発明のライナーは、ライナー自体が高いガスバリア性を有するので、圧力容器の本体部分に、ライナー以外の、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、気体透過係数が、0.10cc・mm/m2・day・atm以下の層を設けない構成とすることもできる。そのため、圧力容器を構成する層の数を減らすことができ、圧力容器の軽量化も達成できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<ポリアミド樹脂MXD6の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、さらに次亜リン酸ナトリウム一水和物の配合量を12978mg(122.5mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として151ppm)及び酢酸ナトリウムの配合量を6914mg(84.29mmol)になるよう入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13895g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂MXD6を得た。
<ポリアミド樹脂MXD6Iの合成>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸のみに代わって、アジピン酸14094.3g(96.444mol)およびイソフタル酸1022.8g(6.156mol)を添加した以外は、上記ポリアミド樹脂MXD6の合成と同様に溶融重合して、ポリアミド樹脂MXD6Iを得た。
<ポリアミド樹脂MP10の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油製、セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでメタキシリレンジアミン4172g(30.63mol)とパラキシリレンジアミン1788g(13.13mol%)の混合ジアミンを撹拌下で滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。混合ジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。
<その他のポリアミド樹脂>
PA6:宇部興産製、ナイロン6 、UBEナイロン1022B。
<連続繊維>
CF:炭素繊維、東レ製、エポキシ系樹脂で表面処理されているものを用いた。
<その他の複合材料>
ポリアミド6(PA6)を含浸させた一方向炭素繊維テープ(carbon fiber unidirectional tape)、TenCate PERFORMANCE COMPOSITES社製、TenCate Cetex(登録商標)TC910 NYLON6
<実施例1>
ポリアミド樹脂MXD6を30mmφのスクリューとTダイを備える単軸押出機にて押出成形し、20μm厚のキャストフィルムを得た。
連続繊維束として炭素繊維を、平均流速20m/秒で流れる空気流中へ、空気の流れ方向に対してほぼ直交する方向から、空気流中を通過する際に、通過方向に沿った長さ30mmに対して60mm(10mmに対して20mm)たるむようにたるみを与えながら導入して開繊処理を施し、炭素繊維シートを得た。
得られた炭素繊維シートを280℃に加熱しながら(以下、この温度を「含浸温度」という)、連続的に前記キャストフィルムと貼り合わせ、幅200mmのテープ状の複合材料を得た。
セラミック製の型の周りに、上記テープ状の複合材料をテープワインディング法によって、螺旋状に巻いた。テープは、2層以上となるように2方向から螺旋状に巻いた。その後、280℃で加熱し、溶融成形した。セラミック製の型を砕いて除去し、ライナーを得た。
以下の方法に従って、ライナーのボイド率、ライナーにおける連続繊維の割合、ライナーの酸素透過係数、ライナーのアルゴン透過係数、ライナーの窒素透過係数、ライナーの水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率を測定した。
<<ライナーのボイド率の測定方法>>
ライナーのボイド率を以下の方法に従って測定した。
得られたライナーの一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、ライナーの厚み方向に沿った断面(本実施例では、図1で示す断面とした)が露出するように研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス製)を使用して撮影した。得られた断面写真に対し、ボイド領域を、画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。測定値に基づいて、(ライナーの断面のボイド領域/ライナーの断面積)×100を算出した。1つのライナーにおいて、上記測定を3か所で行い、その平均値を小数点第一位で四捨五入して、ボイド率(単位%)とした。
<<ライナーにおける連続繊維の割合の測定方法>>
ライナーにおける連続繊維の割合は、以下の方法に従って測定した。
ライナーにおける連続繊維の割合は、JIS 7075 燃焼法に従って測定した。
ライナーにおける連続繊維の割合の単位は、V/V%で示した。
<<ライナーの酸素透過係数の測定方法>>
上記で得られた複合材料の温度23℃、相対湿度50%における酸素透過係数を以下の方法に従って測定した。
酸素透過率測定装置(モダンコントロール製、OX-TRAN2/21)を使用して、複合材料の酸素透過率を23℃、相対湿度60%の条件下で測定し、複合材料の酸素透過係数を以下の式を用いて計算した:
1/R1 = DFT/P
P=R1*DFT
ここで、
1 = 複合材料の酸素透過率(ml/m2・day・MPa)
DFT = 複合材料の厚み(mm)
P = 複合材料の酸素透過係数
気体透過係数の単位は、ml/m2・day・MPaおよびml・mm/m2・day・atmに換算した値で示した。気体透過係数は、材料固有の値であり、厚さに関係しない値である。従って、複合材料の透過係数は、ライナーの気体透過係数に等しい。
<<ライナーのアルゴン透過係数の測定方法>>
ガス透過測定装置(GTRテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にてJIS K7126−1:2006差圧法に準じて複合材料のアルゴンガス透過率を求め、上記ライナーの酸素透過係数の算出方法に準じて、アルゴン透過係数を測定した。
<<ライナーの窒素透過係数の測定方法>>
ガス透過測定装置(GTRテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にてJIS K7126−1:2006差圧法に準じて複合材料の窒素ガス透過率を求め、上記ライナーの酸素透過係数の算出方法に準じて、窒素透過係数を測定した。
<<水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率>>
複合材料を連続繊維がほぼ直交するように交互に積層し、下記表に記載のライナーに巻いた後の含浸温度で加熱して、10mm×80mm×厚み4mmの試験片を作製した。得られた試験片について、JIS K6911に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG5000B)にて、常温で曲げ強度(MPa)を測定した。また、試験片を1ヵ月間、常温常圧で水に浸漬した後、同様にして曲げ強度を測定した。水浸漬前の曲げ強度/水浸漬後の曲げ強度×100を水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率(%)とした。
<実施例2〜8>
実施例1において、樹脂の種類、含浸温度、ライナーに巻いた後の加熱温度を下記表に示す通り変更し、他は同様に行って、実施例のライナーを得た。実施例7および実施例8はポリアミド樹脂MXD6とPA6をペレット状態で混合したものを30mmφのスクリューとTダイを備える単軸押出機にて押出成形し、20μm厚のキャストフィルムを得た以外は実施例1と同様にして実施した。
<実施例9>
実施例1において、複合材料として、TenCate Cetex TC910 NYLON6を用い、他は同様に行ってライナーを得た。
結果を下記表に示す。
Figure 0006565179
上記結果から明らかなとおり、本発明のライナーは、気体透過係数が低かった。
1 ライナー
2 保護層
3 口金
4 ボス
5 バルブ
10 圧力容器

Claims (9)

  1. ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸している複合材料から構成されるライナーを有する圧力容器であって、
    前記ライナーは、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、0.10cc・mm/m 2 ・day・atm以下であり、
    前記圧力容器の本体部分に、前記ライナー以外の、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、0.10cc・mm/m 2 ・day・atm以下の層を有さない圧力容器。
  2. 前記ライナーのボイド率が10%以下である、請求項1に記載の圧力容器。
  3. 前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンである、請求項1または2に記載の圧力容器
  4. 前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する、請求項に記載の圧力容器
  5. 前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項3または4に記載の圧力容器
  6. 前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方に由来する、請求項に記載の圧力容器
  7. 前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸に由来する、請求項に記載の圧力容器
  8. 前記連続繊維が炭素繊維およびガラス繊維から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の圧力容器
  9. 前記ライナーにおける連続繊維の割合が、10〜80V/V%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の圧力容器
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