JP2020075383A - 繊維強化樹脂材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱プレスしても、織物中の強化繊維の配向の乱れが少ない繊維強化樹脂材料の製造方法の提供。【解決手段】第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層し、開放系のプレス機で熱プレスすることを含み、前記第一の基材および第二の基材が、それぞれ独立に樹脂を含む、繊維強化樹脂材料の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、繊維強化樹脂材料の製造方法に関する。具体的には、開放系のプレス機を用いた繊維強化樹脂材料の製造方法に関する。
繊維強化樹脂材料は、繊維材料とマトリックス樹脂を組み合わせたもので、軽量で剛性が高いことから、各種産業に、広く用いられている。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれもが用いられている。ここで、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を利用したものについては、特許文献1〜4に記載がある。
特に、繊維強化樹脂材料を、プレス機を用いて製造することが検討されている。例えば、特許文献4には、ポリアミド樹脂と長繊維を、第1の金属箔と第2の金属箔で挟んで熱プレスし、前記熱プレス後、第1の金属箔および第2の金属箔を剥離することを含み、前記第1の金属箔は、前記ポリアミド樹脂または長繊維と接する側の表面に、エポキシ樹脂100重量部に対し、ケイ素原子を含む化合物1〜30重量部を含む組成物を有し、前記ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来する、長繊維強化複合材料の製造方法が開示されている。しかしながら、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物の熱プレスについては記載がない。
特開昭64−81826号公報 特開昭57−120409号公報 特開2011−102360号公報 特開2017−066255号公報
近年、上記のような繊維強化樹脂材料として、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を熱プレスしたものが検討されている。しかしながら、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を熱プレスしようとすると、織物中の強化繊維の配向が乱れてしまうことが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、熱プレスしても、織物中の強化繊維の配向の乱れが少ない繊維強化樹脂材料を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行ったところ、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を複数プライ(ply)、つまり、複数枚重ねた時、熱プレス機のプレス面に近い領域、例えば、上記織物の内、表層に近い2プライ程度において、強化繊維の配向の乱れが生じることが分かった。そして、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層し、開放系のプレス機で熱プレスすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<20>により、上記課題は解決された。
<1>第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層し、開放系のプレス機で熱プレスすることを含み、前記第一の基材および第二の基材が、それぞれ独立に樹脂を含む、繊維強化樹脂材料の製造方法。
<2>前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂繊維から構成される糸である、<1>に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<3>前記強化繊維は、連続強化繊維であり、前記熱可塑性樹脂繊維は、連続熱可塑性樹脂繊維である、<1>または<2>に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<4>前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、カバリング糸である、<3>に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<5>前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、芯糸が強化繊維であり、鞘糸が熱可塑性樹脂繊維であるカバリング糸である、<3>に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<6>前記強化繊維が炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<7>前記熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の、温度が融点+20℃、剪断速度1216sec-1、保持時間6分における溶融粘度が10〜1000Pa・secである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<8>前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリアミド樹脂を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<9>前記熱可塑性樹脂繊維が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<10>前記織物の少なくとも一方向の端部が、中心部よりも強化繊維の割合が多い、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<11>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、熱プレス後、10〜500μmの厚さである、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<12>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方に含まれる樹脂が、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂である、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<13>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方は、樹脂が90質量%以上を占める、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<14>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、前記熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤を含む、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<15>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、前記熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂とは、異なる分類の樹脂を含む、<1>〜<14>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<16>前記第一の基材と該第一の基材と隣接している織物の熱プレス後の接着力、および、第二の基材と該第二の基材と隣接している織物の熱プレス後の接着力の少なくとも一方が、0.01〜5N/15mmである、<1>〜<15>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法;接着力とは繊維強化樹脂材料を縦150mm×横15mmの長方形に切り出し、繊維強化樹脂材料の片末端から基材を剥がし、剥がした基材と、基材を剥がした繊維強化樹脂材料をそれぞれチャックで挟み、180度方向に引っ張る際にかかる力をいう。
<17>前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む材料である、<15>または<16>に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<18>強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を2プライ以上積層することを含む、<1>〜<17>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<19>前記熱プレスの後、該熱プレスされた材料から、前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方を剥がす工程を含む、<1>〜<18>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
<20>前記熱プレスされた材料をロールに巻き取ることを含む、<1>〜<19>のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
本発明により、熱プレスしても、織物中の強化繊維の配向の乱れが少ない繊維強化樹脂材料を提供可能になった。
強化繊維の配向の乱れを示す概略図である。図1において、1は織物を、2は強化繊維を示す。 強化繊維の配向の乱れを示すX線顕微鏡写真である。 接着力の測定方法を示す図である。図3において、10は繊維強化樹脂材料を、11は第一の基材を、12は第二の基材を、13は織物を、14はチャックをそれぞれ示している。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層し、開放系のプレス機で熱プレスすることを含み、前記第一の基材および第二の基材が、それぞれ独立に樹脂を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、熱プレスしても、織物中の強化繊維の配向の乱れが少ない繊維強化樹脂材料を提供可能になる。すなわち、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を複数プライ重ねた時、熱プレス機のプレス面に近い領域、例えば、上記織物の内、プレス面に近い2プライ程度において、図1に示すように強化繊維の配向の乱れが生じる。また、図2は実際に、プレス面に近い領域の強化繊維の配向の乱れが生じた状態を示すX線顕微鏡写真である。しかしながら、内部(厚み方向の中心部)領域では、強化繊維の配向が乱れないことが分かった。この理由は、熱プレス機のプレス面に近い領域では、樹脂が流動しやすく、そのため、表層の強化繊維の配向が乱れやすいことにあると推測された。そこで、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を、第一の基材と第二の基材とで挟んだ状態で、開放系のプレス機で熱プレスすることにより、上記課題を解決することに成功したものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層する。第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材は、それぞれ、1プライであってもよいし、2プライ以上であってもよい。
第一の基材および第二の基材(以下、「第一の基材等」ということがある)は、それぞれ独立に、1プライであることが好ましい。一方、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物は、2プライ以上を積層することが好ましく、3プライ以上を積層することがより好ましく、5プライ以上を積層することがさらに好ましく、7プライ以上を積層することが一層好ましい。また、積層数の上限は、50プライ以下を積層することが好ましく、40プライ以下を積層することがより好ましく、15プライ以下を積層することがさらに好ましい。第一の基材等を2プライ以上積層する場合、これらは、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を2プライ以上積層する場合、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物および第二の基材は、該順に積層するが、第一の基材と強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、および、第二の基材と強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物は、通常、隣接している。第一の基材を2プライ以上有する場合は、最も、織物に近い側の第一の基材が織物に接していればよい。織物および第二の基材についても同様である。
さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の層(材料)を含んでいてもよい。例えば、2プライ以上の強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物の間に樹脂フィルムや強化繊維シート、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む織物以外の材料(例えば、不織布)などを含む形態が例示される。
本発明では、熱プレス前の、プレスされる材料(すなわち、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物および第二の基材、ならびに必要に応じ配される他の材料)を重ねた厚さが1〜50mmであることが好ましく、5〜40mmであることがより好ましい。また、該熱プレスされる材料を熱プレスした後の材料の厚さが0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜4mmであることがより好ましい。
本発明における熱プレスの温度は特に定めるものではないが、熱可塑性樹脂繊維が溶融する温度以上であることが必要である。例えば、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準とした場合、Tg+50〜300℃であることが好ましく、Tg+70〜250℃であることがより好ましく、Tg+100〜200℃であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である場合、熱プレス温度は、前記結晶性熱可塑性樹脂の融点Tmを基準として、Tm+5〜100℃であることが好ましく、Tm+10〜90℃であることがより好ましく、Tm+20〜80℃であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂繊維が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合、含有量が最も多い成分のTgまたはTmを熱可塑性樹脂のTgまたはTmとする。熱可塑性樹脂繊維が2種以上の樹脂を等量含む場合、最も高いTgまたはTmを有する樹脂のTgまたはTmとする。
本発明における熱プレスの圧力は特に定めるものではないが、1〜6MPaが好ましく、2〜5MPaがより好ましく、3〜5MPaがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の強化繊維への含浸が促進され、得られる繊維強化樹脂材料中のボイドをより減少させることが可能となる。熱プレスの時間は、10秒〜3分間が好ましく、30秒〜2分30秒間がより好ましい。このような範囲とすることにより、得られる繊維強化樹脂材料の変色(例えば、黄色化)を抑えつつ、熱可塑性樹脂を適切に含浸させることができる。
本発明では、開放系のプレス機で熱プレスする。開放系のプレス機とは、成形品の形状に対し、大気に開放されている部分が少なくとも一か所ある状態で熱プレスする装置をいう。このような開放系のプレス機は、プレス成形時に開放部から熱可塑性樹脂が漏れてしまい、熱可塑性樹脂の漏れによっても、強化繊維の配向が乱れてしまう。本発明では、第一の基材および第二の基材を用いて熱プレスすることにより、熱可塑性樹脂が漏れても、強化繊維の配向の乱れを効果的に抑制できる。
本発明で用いるプレス機としては、特に定めるものではないが、例えば、汎用のプレス機、ロールプレス機、ベルトプレス機、特に、ダブルベルトプレス機を用いることができる。ダブルベルトプレス機は、例えば、特開2017−066255号公報の段落0012および図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の製造方法では、熱プレスされた材料(すなわち、第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物および第二の基材、ならびに必要に応じ配される他の材料を熱プレスした材料)をそのまま、繊維強化樹脂材料としてもよい。熱プレスされた材料をそのまま繊維強化樹脂材料として用いる場合、第一の基材および第二の基材には、織物とは異なる機能を付与することが好ましい。この詳細は後述する。
本発明の製造方法では、また、前記熱プレスされた材料から、前記第一の基材および第二の樹脂の少なくとも一方(好ましくは両方)を含む基材を剥がす工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、単に、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を熱プレスする場合と異なり、強化繊維の配向の乱れを少なくした繊維強化樹脂材料、特に、プリプレグが得られる。
熱プレスされた材料から第一の基材等を剥がす場合も剥がさない場合も、さらに、得られた繊維強化樹脂材料にさらに、他の機能層等を付与してもよいことは言うまでもない。具体的には、繊維強化樹脂材料と金属板や金属箔を貼りあわせるなどの態様が例示される。
本発明の製造方法では、熱プレスされた材料をロールに巻き取ることを含んでいてもよい。熱プレスされた材料から第一の基材等を剥がす場合、第一の基材等を剥がしてから、ロールに巻き取ってもよいし、ロールに巻き取って、使用時に剥がしてもよい。
次に、本発明で用いる織物について説明する。
本発明で用いる織物は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む。本発明における織物は、強化繊維が規則的に配列しているものである。本発明では、強化繊維が一方向、すなわち、経糸方向または緯糸方向にのみ規則的に配列していてもよいし、二方向、すなわち、経糸方向および緯糸方向の両方向に規則的に配列していてもよい。
本発明で用いる織物の第一の実施形態は、織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方が、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸である形態である。この場合、経糸および緯糸の他方は、強化繊維を糸として用いてもよいし、熱可塑性樹脂繊維を糸として用いてもよいし、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であってもよい。本発明では、織物を構成する経糸および緯糸の両方が強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であることが好ましい。特に、織物を構成する経糸および緯糸の両方が、それぞれ、詳細を後述するカバリング糸であることが好ましい。
本発明で用いる織物の第二の実施形態は、織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方が、強化繊維を糸として用い、他方が熱可塑性樹脂繊維を糸として用いた態様が例示される。
本発明では、第一の実施形態が好ましい。また、第一の実施形態および第二の実施形態において、経糸および緯糸として、それぞれ、1種の糸を用いてもよいし、2種以上の糸を用いてもよい。さらに、第一の実施形態と第二の実施形態を組み合わせた織物であってもよい。例えば、経糸および緯糸の少なくとも一方が、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であり、他方が強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸と熱可塑性樹脂繊維の両方を用いる形態などが例示される。
強化繊維と樹脂繊維から構成される糸は、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であることが好ましい。また、本発明では短繊維の強化繊維や短繊維の熱可塑性樹脂繊維をよりあわせる等の手段によって、糸状にして用いてもよい。
強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸は、具体的には、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される混繊糸、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される組み紐、編み紐、強化繊維の長手方向に対し、カバリング糸が挙げられ、カバリング糸が好ましい。カバリング糸を用いた場合、特に、加工中の強化繊維の切断による強度低下および強化繊維の脱離による作業環境悪化の抑制効果がより効果的に発揮される。
カバリング糸とは、1本または複数本の芯糸に、1本または複数本の鞘糸を巻きつけたものをいう。芯糸が複数本の糸で構成される場合、これらの糸は引き揃えられていても、撚り合わされていてもよい。鞘糸が複数本の糸で構成される場合、これらの糸は互いに独立していても、引き揃えられていても、撚り合わされていてもよい。本発明では、カバリング糸製造の効率性の観点から、芯糸は1本であることが好ましく、鞘糸は、1〜5本であることが好ましい。本発明において、2〜5本の鞘糸が用いられる場合、毛羽発生を抑制できることから、これらの糸は撚り合わされていることが好ましい。通常は、芯糸に、鞘糸がらせん状に巻きつけられる。また、鞘糸は一方向に巻きつけられていてもよいし、二方向以上(特に、二方向)に巻きつけられていてもよい。本発明では、一方向に巻きつけられていることが好ましい。
本発明におけるカバリング糸の第一の実施形態は、芯糸が強化繊維を含む形態である。カバリング糸であって、芯糸が強化繊維を含む場合に、特に、強化繊維の配向が乱れやすい。そのため、本発明の方法を適用する効果が顕著に発揮される。
カバリング糸の第一の実施形態においては、芯糸が強化繊維であり、鞘糸が熱可塑性樹脂繊維であるカバリング糸であることが好ましい。より具体的には、強化繊維の長手方向に対し、熱可塑性樹脂繊維をらせん状に巻きつけた糸である。
また、カバリング糸の第一の実施形態においては、芯糸がカバリング糸以外の強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であり、鞘糸が強化繊維および/または熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であることも好ましい。より好ましくは、芯糸がカバリング糸以外の強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸であり、鞘糸が熱可塑性樹脂繊維から構成される糸である。
本発明におけるカバリング糸の第二の実施形態は、芯糸が熱可塑性樹脂繊維であり、鞘糸が強化繊維を含む糸である形態である。
強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維で全体の80質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、95質量%以上を占めることがさらに好ましい。
本発明で用いる強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸としては、上記の他、WO2014/136662号公報に記載の混繊糸、WO2016/039242号公報に記載の混繊糸、WO2017/033746号公報に記載の材料、WO2016/159340号公報に記載の複合材料、特開2016−210027号公報に記載の材料、特開2017−110322号公報の段落0010〜0033に記載の複合糸が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明における織物は、特に制限はなく、平織、八枚朱子織、四枚朱子織、綾織等のいずれでもよい。また、いわゆるバイアス織、ジャガード織でもよい。さらに、特開昭55−30974号公報に記載されているように実質的に屈曲を有しないいわゆるノンクリンプ織物であってもよい。
本発明における織物は、強化繊維の割合が20〜80体積%であることが好ましく、30〜70体積%であることがより好ましく、35〜65体積%であることが一層好ましい。また、強化繊維の割合が15〜85質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、機械物性と成形加工性により優れる傾向にある。
また、樹脂繊維の割合が15〜85質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、ドレープ性能に優れ、成形加工しやすい傾向にある。
さらに、本発明における織物は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維以外の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明における織物は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維の合計が80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることが一層好ましい。また、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維の合計が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明における織物の目付は、50〜10000g/m2であることが好ましく、75〜9000g/m2であることがより好ましく、100〜8000g/m2であることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明における織物は、織物の少なくとも一方向の端部が、中心部よりも強化繊維の割合が多い構成であってもよい。このような構成とすることにより、内部から流れ出た樹脂を端部の強化繊維がトラップすることができる。ここで、織物の少なくとも一方向とは、織物の経糸方向および緯糸方向の内の一方向をいう。端部とは、経糸方向の織物の長さまたは緯糸方向の織物の幅のうち、織物の端から10%以内の領域をいい、5%以内の領域であってもよい。また、織物の端部とは、具体的には、織物の端1〜20cmの領域をいう。本発明の製造方法において、連続的に繊維強化樹脂材料を製造する場合、緯糸方向の端部が中心部よりも強化繊維の割合が多いことが好ましい。
本発明では、織物の中心部(織物の端から10%以内の領域以外の領域)に含まれる織物の単位面積当たりの強化繊維の体積を100としたとき、織物の端部(織物の端から10%以内の領域)に含まれる織物の単位面積当たりの強化繊維の体積が110〜200であることが好ましく、150〜200であることがより好ましい。
本発明における織物の他の実施形態として、経糸方向および緯糸方向によって構成される織物面に対し垂直な方向に、第三の繊維が織り込まれている態様である。第三の繊維を織り込むことにより、強化繊維が固定され、強化繊維の配向をより乱れにくくすることができる。
第三の繊維は、熱プレス時に溶融してもよいし、溶融しなくてもよいが、溶融しないことが好ましい。第三の繊維は、強化繊維であってもよいし、樹脂繊維(熱可塑性樹脂繊維、熱硬化性樹脂繊維)であってもよいし、それ以外の繊維であってもよいが、樹脂繊維が好ましく、熱可塑性樹脂繊維がより好ましい。
第三の繊維として、熱可塑性樹脂繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準とした場合、Tg+10〜300℃であることが好ましく、Tg+30〜280℃であることがより好ましく、Tg+50〜260℃であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である場合、前記結晶性熱可塑性樹脂の融点Tmを基準として、Tm+10〜200℃であることが好ましく、Tm+20〜190℃であることがより好ましく、Tm+30〜180℃であることがさらに好ましい。
第三の繊維は、1プライの織物に織り込まれていてもよいし、2プライ以上の織物を重ねた状態で織り込まれていてもよい。2プライ以上の織物を重ねた状態で織り込むことにより、織物間の剥離による成形品の強度の低下を効果的に抑制できる。
第三の繊維は、上記織物面に対し、クリンプの角度が10〜80度であることが好ましく、20〜70度であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、得られる成形品の機械的強度を効果的に向上させ、かつ、強化繊維の配向をより効果的に抑制できる。
次に、本発明で用いる強化繊維について説明する。本発明で用いる強化繊維は、織物を構成する。本発明で用いる強化繊維は、短繊維であっても、長繊維(連続強化繊維)であってもよいが、連続強化繊維が好ましい。連続強化繊維とは、30mm以上の数平均繊維長を有する強化繊維をいい、50cm以上の数平均繊維長を有する連続強化繊維であることが好ましい。本発明で使用する連続強化繊維の数平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
本発明で用いる強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることがより好ましく、ガラス繊維の少なくとも1種であることが特に好ましい。また、強化繊維の配向の回復効果の観点からは、炭素繊維の少なくとも一種であることが好ましい。
本発明で用いる強化繊維は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
前記処理剤の量は、強化繊維の0.001〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.5〜1.1質量%であることがさらに好ましい。
本発明で用いる強化繊維は、モノフィラメントであってもよいが、マルチフィラメントであることが好ましい。
次に、本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維について説明する。
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維は、短繊維であってもよいし、長繊維(連続繊維)であってもよく、連続繊維が好ましい。連続繊維とは、30mm以上の数平均繊維長を有する繊維をいい、50cm以上の数平均繊維長を有する繊維であることが好ましい。本発明で使用する連続繊維の数平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維は、モノフィラメントであってもよいが、マルチフィラメントであることが好ましい。
本発明で用い脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主成分(通常は、組成物の90質量%以上が、好ましくは95質量%以上が熱可塑性樹脂)とするものであり、他に、必要に応じ、公知の添加剤等を適宜配合したものである。本発明の実施形態の一例として、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂は、特定の1種の樹脂が全体の80質量%以上を占める態様が挙げられ、さらには、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂は、特定の1種の樹脂が全体の90質量%以上を占める態様も挙げられる。また、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂は、2種以上のブレンドであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、繊維強化樹脂材料に用いる熱可塑性樹脂を広く使用することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリアミド樹脂およびポリアセタール樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂繊維がポリアミド樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂中のポリアミド樹脂の割合が、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましい。
本発明では、熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の、温度が融点+20℃、剪断速度1216sec-1、保持時間6分における溶融粘度が10Pa・sec以上であることが好ましく、25Pa・sec以上であることがより好ましく、100Pa・sec以上、150Pa・sec以上であってもよい。前記溶融粘度の上限値は、1000Pa・sec以下であることが好ましく、750Pa・sec以下であることがより好ましく、500Pa・sec以下であることがさらに好ましく、400Pa・sec以下であることが一層好ましく、300Pa・sec以下であることがより一層好ましい。このような溶融粘度とすることにより、含浸速度が上がり、生産性により優れた繊維強化材料が得られる。
ポリアミド樹脂としては、公知のポリアミド樹脂が用いられる。
例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド樹脂、および、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド9T、詳細を後述するXD系ポリアミド樹脂等の半芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。半芳香族ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂の全構成単位のうち、40〜60モル%が芳香環を含む構成単位であることをいう。
また、ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「XD系ポリアミド樹脂」ということがある)がより好ましい。
XD系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の、50モル%以上が、好ましくは70モル%以上が、さらに好ましくは90モル%以上が、一層好ましくは95モル%以上が、より一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミン)に由来する。また、XD系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の、50モル%以上が、好ましくは70モル%以上が、さらに好ましくは90モル%以上が、一層好ましくは95モル%以上が、より一層好ましくは99モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
XD系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン構成単位の50モル%以下であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸異性体を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸を配合する場合、配合割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
本発明では、XD系ポリアミド樹脂を構成する全構成単位の好ましくは90モル%以上が、より好ましくは95モル%以上が、さらに好ましくは99モル%以上が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成される。
本発明で用いることができるXD系ポリアミド樹脂として、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂、ポリメタキシリレンセバカミド樹脂、ポリパラキシリレンセバカミド樹脂、および、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合キシリレンジアミンをアジピン酸と重縮合してなるポリメタキシリレン/パラキシリレン混合アジパミド樹脂が好ましく、より好ましいものは、ポリメタキシリレンセバカミド樹脂、ポリパラキシリレンセバカミド樹脂、および、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合キシリレンジアミンをセバシン酸と重縮合してなるポリメタキシリレン/パラキシリレン混合セバカミド樹脂である。これらのポリアミド樹脂は成形加工性が特に良好となる傾向にある。
本発明で用いるXD系ポリアミド樹脂は、温度が融点+20℃、剪断速度1216sec-1、保持時間6分における溶融粘度が10Pa・sec以上であることが好ましく、25Pa・sec以上であることがより好ましく、100Pa・sec以上、150Pa・sec以上であってもよい。前記溶融粘度の上限値は、1000Pa・sec以下であることが好ましく、750Pa・sec以下であることがより好ましく、500Pa・sec以下であることがさらに好ましく、400Pa・sec以下であることが一層好ましく、300Pa・sec以下であることがより一層好ましい。このような溶融粘度とすることにより、含浸性をより向上でき、さらに、変色(例えば、黄色化)のさらなる低減をはかることができる。
XD系ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、原料ジカルボン酸成分およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤、重合温度、重合時間を適宜選択することにより調整できる。
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、150〜310℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜110℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温(25℃)から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
上述のとおり、熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂組成物からなることがより好ましい。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主成分とするものであり、添加剤等が含まれていてもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物はエラストマー成分を含んでいてもよい。
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマーおよびポリスチレン系エラストマーである。これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
エラストマー成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特には10質量%以下である。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤、滑剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
次に、本発明で用いる第一の基材および第二の基材について説明する。第一の基材および第二の基材は、樹脂を含む基材であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
第一の基材等に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂が好ましい。樹脂は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
第一の基材等は、熱プレス前および熱プレス後について、それぞれ、10〜500μmの厚さであることが好ましく、20〜400μmの厚さであることがより好ましい。第一の基材等の厚さは、通常、熱プレス前と熱プレス後でほぼ同一の厚さである。ほぼ同一の厚さとは、熱プレス前と熱プレス後の第一の基材等の厚さの差が、熱プレス前の第一の基材等の厚さの1/20以下であることをいう。
第一の基材等は、樹脂と強化繊維でその90質量%以上を占めることが好ましい。また、第一の基材等は、上記強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物とは異なるものである。
本発明における第一の基材等の第一の実施形態は、第一の基材および第二の基材の少なくとも一方は、樹脂が90質量%以上、より好ましくは95質量%以上を占める態様である。このような構成とすることにより、熱プレスによる強化繊維の配向の乱れを効果的に抑制できる。
第一の実施形態では、第一の基材等に含まれる樹脂は、織物を構成する熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂と、その90質量%以上、より好ましくは95質量%以上が共通することが好ましい。このような形態をすることにより、第一の基材等と織物の密着性を高くすることができる。
また、第一の実施形態では、第一の基材等に含まれる樹脂は、織物を構成する熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂と、その20質量%、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上を異なる組成とすることもできる。この形態は、熱プレスした後に、第一の基材等を剥がす態様に好ましく用いられる。さらに、後述する第四の実施形態および第五の実施形態と組み合わせて行うことが好ましい。
本発明における第一の基材等の第二の実施形態は、第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤を含む態様である。このような構成とすることにより、織物を積層した部分とは異なる機能を付与することができる。熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤とは、熱可塑性樹脂繊維中の配合量が0.01質量%以下、好ましくは0.001質量%以下の添加剤をいい、全く含まれない添加剤であることがより好ましい。熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、着色剤、離型剤、滑剤等が例示され、安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、難燃剤、滑剤が好ましい。上記熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤の第一の基材等における配合量は、適宜定めることができるが、例えば、0.1〜5質量%とすることができる。
本発明における第一の基材等の第三の実施形態は、第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む材料である形態である。強化繊維を配合した基材を用いることにより、熱プレスされた材料から、第一の基材等を剥がしやすくなる。第三の実施形態における第一の基材等は、織物、不織布、プリプレグ、UDテープ等が例示される。本発明では、プレス機に近い表層付近の強化繊維の配向が乱れるが、内層では強化繊維の配向は乱れにくい。そこで、強化繊維の配向が乱れる表層付近を剥がすことによって、強化繊維の配向の乱れを抑制した材料が得られる。
本発明における第一の基材等の第四の実施形態は、第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、前記熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂とは、異なる分類の樹脂を含む形態である。本発明において、樹脂の分類とは、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメチルメタアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂に区分される。従って、上述の樹脂のうち2種の樹脂は、互いに異なる分類となる。このように、熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂とは異なる分類に含まれる樹脂を用いることにより、樹脂同士の接着性を低くすることができる。
第四の実施形態のバリエーションとして、例えば、織物を構成する熱可塑性樹脂繊維にポリアミド樹脂を用いた場合、ポリプロピレン樹脂を含む基材を用いることができる。ポリアミド樹脂は吸湿しやすいが、ポリプロピレン樹脂を含む基材を設けることにより、得られる繊維強化樹脂材料の吸湿性が抑制される。
本発明における第一の基材等の第五の実施形態は、第一の基材と該基材と隣接している織物の熱プレス後の接着性、および、第二の基材と該基材と隣接している織物の熱プレス後の接着力の少なくとも一方が、0.01〜5N/15mmである形態である。このように第一の基材等と、織物の接着力を適度に低くすることにより、織物を熱プレスしても、強化繊維の配向が乱れず、かつ、熱プレスされた材料から第一の基材等を容易に剥がすことができる。織物との接着力の低い材料としては、例えば、織物を構成する熱可塑性樹脂繊維にポリアミド樹脂を用いた場合、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示される。
接着力は、繊維強化樹脂材料を縦150mm×横15mmの長方形に切り出し、繊維強化樹脂材料の片末端から基材を剥がし、剥がした基材と、基材を剥がした繊維強化樹脂材料をそれぞれチャックで挟み、180度方向に引っ張る際にかかる力をいう。
本発明では、第一の基材等の第一〜第五の実施形態をそれぞれ組み合わせた形態であってもよい。例えば、第一の実施形態と第二の実施形態を組み合わせた形態として、第一の基材等に含まれる樹脂は、織物を構成する熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂と、その90質量%以上が共通し、かつ、第一の基材等が、熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤を含む態様である。
本発明の製造方法で得られる繊維強化樹脂材料は、強化繊維の配向の維持率が90%以上であることが好ましい。配向の乱れは、後述する実施例に記載の方法に従って評価される。
本発明における繊維強化樹脂材料は、プリプレグとして好ましく用いることができる。また、本発明における繊維強化樹脂材料は、そのまま加工成形してもよいし、何層かを積層して、加工成形してもよい。
一例として、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法にて、繊維強化樹脂材料を製造し、前記繊維強化樹脂材料を複数層積層して、加熱加工することを含む、成形品の製造方法、ならびに、前記成形品の製造方法により得られる成形品が例示される。本発明における繊維強化樹脂材料から得られる成形品の例としては、プレス成形品、ロームフォーム成形品、ハイブリッド成形品が例示される。繊維強化樹脂材料から得られる成形品の最薄肉部の厚さとしては、用途等に応じて適宜定めることができるが、例えば、1mm〜10mmとすることができる。
本発明における繊維強化樹脂材料の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。その他、特開2017−110322号公報の段落0038に記載の用途にも用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
1.原材料
<熱可塑性樹脂>
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学社製、グレードS6011)、溶融粘度280Pa・sec、融点237℃、ガラス転移温度85℃
MXD6’:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学社製、グレードS6001)、溶融粘度138Pa・sec、融点237℃、ガラス転移温度85℃
PA6:宇部興産社製、1024B、溶融粘度310Pa・sec、融点224℃、ガラス転移温度50℃
PP:ポリプロピレン樹脂、三菱ケミカル社製、グレードFY6、融点165℃、ガラス転移温度 0℃
<強化繊維>
ガラス繊維:日東紡績社製、ECDE150−1/0 1.0Z
炭素繊維:三菱ケミカル社製、TR−50S
<MP10の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油(株)製TAグレード)10kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を、溶融したセバシン酸に攪拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂(MP10)を得た。
<溶融粘度の測定方法>
溶融粘度は、キャピラリーレオメーターを用いて、温度が融点+20℃、剪断速度1216sec-1、保持時間6分で測定した。本実施例では、キャピラリーレオメーターは、株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフ1D」を用いた。キャピラリー径は1.0mmのものを用いた。
<融点およびガラス転移温度の測定方法>
示差走査熱量の測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。示差走査熱量計を用い、上記で得られたポリアミド樹脂(ペレット状のもの)を砕いて示差走査熱量計の測定パンに仕込み、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温(25℃)から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点(Tm)を求めた。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点(Tg)を求めた。示差走査熱量計としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)社製「DSC−60」を用いた。
2.織物の製造
<糸(経糸および緯糸)の製造方法>
真空乾燥機を用いて150℃、7時間乾燥させた熱可塑性樹脂(表1または表2のもの、MXD6、MP10、PA6、MXD6’)を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出した。押出した樹脂をエアブローで冷却して固化した。下部が処理剤に浸漬したロールを介して繊維に処理剤を塗布し、複数のガイドを通してロールにて巻き取りながら集束、延伸を施して熱可塑性樹脂繊維を得た。
次いで、強化繊維(表1または表2のもの、ガラス繊維、炭素繊維)が60質量%(40体積%7)、熱可塑性樹脂繊維が40質量%(60体積%)の割合になるように、強化繊維の長手方向に対し、熱可塑性樹脂繊維をらせん状に巻きつけ、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸(カバリング糸)を得た。
<織物の製造方法>
上記で得られた強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸を、経糸及び緯糸として、レピア織機を用いて製織した。打ち込み本数は経糸44本/25mm、緯糸32本/25mmとした。得られた織物は、目付200g/m2、厚さ200μm、熱可塑性樹脂繊維の割合40質量%、強化繊維の割合60質量%であった。
3.基材の製造
<製造例10>
上記MXD6およびポリアミド6、PPを用いて、それぞれ、以下の方法により、フィルムを製造した。
真空乾燥機により乾燥したポリアミド樹脂を、直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、500mm幅のTダイを介して押出成形し、表面に凹凸状シボを設けたステンレス製の対ロールにより、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPaで加圧し、フィルム表面にシボを有するフィルムを成形した。
得られたMXD6フィルムの平均厚さは50μmであった。
得られたポリアミド6フィルムの平均厚さは50μmであった。
得られたPPフィルムの平均厚さは50μmであった。
<熱硬化性樹脂フィルム>
熱硬化性樹脂の基材として、東レ・デュポン製、カプトン(登録商標)フィルム(200V、厚さ50μm)を用いた。尚、カプトンフィルムは、400℃以上では可塑化するが、事実上、熱硬化性樹脂フィルムとして用いられているものである。
<不織布の製造>
PET不織布(東レ製、D5300、目付300g/m2)と、ガラス繊維不織布(日東紡績社製、MC 450 A、目付450 g/m2)を1プライずつ積層してニードルパンチ処理したものを、搬送速度1.0分/mでHELD社製のダブルベルトプレス機のスチールベルト間に投入し、300℃、4MPaの圧力で2分間連続熱プレスし、連続して4MPaに加圧したまま140℃で1分間冷却し、PET繊維とガラス繊維を含む糸から構成される不織布を得た。
不織布の厚さは0.5mmであった。
4.繊維強化樹脂材料の製造
表1または表2に示す様に、第一の基材、10プライの織物、第二の基材を前記順に積層し、搬送速度1.0分/mでHELD社製のダブルベルトプレス機のスチールベルト間に投入し、300℃、4MPaの圧力で2分間連続熱プレスし、連続して4MPaに加圧したまま140℃で1分間冷却し、繊維強化樹脂材料(プレス成形品)を得た。得られた繊維強化樹脂材料(プレス成形品)の厚さは、1.1mmであった。また、第一の基材および第二の基材は、いずれの繊維強化樹脂材料(プレス成形品)についても、熱プレス前とほぼ同じ厚さであった。
次いで、一部の実施例については、熱硬化性樹脂フィルム基材やPPフィルム基材等を剥がした。
5.強化繊維の配向の乱れ
繊維強化樹脂材料(プレス成形品)から経糸と緯糸に直交するように10mmx10mmの領域を5個所選択し、それぞれの領域から経糸の強化繊維を1本選択した。その強化繊維が直線距離10mmを通過するのに要した長さを計測した。その長さを10mmで割った値を配向の乱れとして以下の段階で評価した。表層部と厚さ方向の中央部のX線像を、CT−scan(ヤマト社製、TDM 1000H−II)を使用して、測定した。画像解析は、画像解析ソフトA像くん(旭化成エンジニアリング社製)を用いて任意の強化繊維を選択し、その長さを測定した。
A:1.05以下:乱れが小さい
B:1.05を超え1.10未満:やや乱れている
C:1.10以上:非常に乱れている
6.基材を剥がした後の表面外観
実施例8、9、11、12に関し、得られた繊維強化樹脂材料(プレス成形品)に対して、一対または一本のロールで基材を連続的に剥がしとった。表面外観は強化繊維の毛羽立ちや表面の凹凸を鑑みて、以下の通り評価した。
A:毛羽立ちも凹凸も少なく、良好に使用可能
B:毛羽立ちや凹凸の両方またはいずれかがややあるものの、使用可能
C:毛羽立ちや凹凸の両方またはいずれかが顕著で使用不可
7.接着力測定
得られた繊維強化樹脂材料(プレス成形品)の接着力は図3に示す方法に従って測定した。すなわち、繊維強化樹脂材料11を縦150mm×横15mmの長方形に切り出し、繊維強化樹脂材料の片末端から部分的に第一の基材11を剥がし、剥がした第一の基材11と、第一の基材11を剥がした後の材料(第二の基材12と織物13からなる材料)をそれぞれチャックで挟み、180度方向に引っ張る際にかかる力を測定した。装置は東洋精機製、ストログラフEIIを用いて、50mm/minの速さで23℃、50%RH(相対湿度)環境下で測定した。単位はN/15mmである。
上記表から明らかなとおり、本発明の製造方法で得られる繊維強化樹脂材料(プレス成形品)は、表層部および中央部の強化繊維の配向の乱れが抑制されており、プレス成形品の外観にも優れていた(実施例1〜12)。さらに、基材を剥がした後の表面に毛羽立ちや凸凹が抑制されていた(実施例7、実施例8、実施例10、実施例11および実施例12)。
これに対し、本発明の製造方法以外の製造方法で得られた繊維強化樹脂材料(プレス成形品)は、中央部の強化繊維の配向の乱れは起きなかったが、表層部の強化繊維の配向が乱れており、プレス成形品の外観も劣っていた(比較例1)。
1 織物
2 強化繊維
10 繊維強化樹脂材料
11 一の基材
12 第二の基材
13 織物
14 チャック

Claims (20)

  1. 第一の基材、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物、第二の基材を前記順に積層し、開放系のプレス機で熱プレスすることを含み、前記第一の基材および第二の基材が、それぞれ独立に樹脂を含む、繊維強化樹脂材料の製造方法。
  2. 前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂繊維から構成される糸である、請求項1に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  3. 前記強化繊維は、連続強化繊維であり、前記熱可塑性樹脂繊維は、連続熱可塑性樹脂繊維である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  4. 前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、カバリング糸である、請求項3に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  5. 前記織物を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、芯糸が強化繊維であり、鞘糸が熱可塑性樹脂繊維であるカバリング糸である、請求項3に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  6. 前記強化繊維が炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂の、温度が融点+20℃、剪断速度1216sec-1、保持時間6分における溶融粘度が10〜1000Pa・secである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリアミド樹脂を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂繊維が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  10. 前記織物の少なくとも一方向の端部が、中心部よりも強化繊維の割合が多い、請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  11. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、熱プレス後、10〜500μmの厚さである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  12. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方に含まれる樹脂が、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  13. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方は、樹脂が90質量%以上を占める、請求項1〜12のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  14. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、前記熱可塑性樹脂繊維には実質的に含まれない添加剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  15. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、前記熱可塑性樹脂繊維に含まれる樹脂とは、異なる分類の樹脂を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  16. 前記第一の基材と該第一の基材と隣接している織物の熱プレス後の接着力、および、第二の基材と該第二の基材と隣接している織物の熱プレス後の接着力の少なくとも一方が、0.01〜5N/15mmである、請求項1〜15のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法;接着力とは繊維強化樹脂材料を縦150mm×横15mmの長方形に切り出し、繊維強化樹脂材料の片末端から基材を剥がし、剥がした基材と、基材を剥がした繊維強化樹脂材料をそれぞれチャックで挟み、180度方向に引っ張る際にかかる力をいう。
  17. 前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方が、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む材料である、請求項15または16に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  18. 強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成された織物を2プライ以上積層することを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  19. 前記熱プレスの後、該熱プレスされた材料から、前記第一の基材および第二の基材の少なくとも一方を剥がす工程を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
  20. 前記熱プレスされた材料をロールに巻き取ることを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
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