JP7342439B2 - 延伸フィルムおよび多層体 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、脂肪族ポリアミド樹脂を55~96.7質量%、メタキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を3~25質量%、および無機層状化合物を0.3~20質量%含むポリアミド樹脂組成物からなるフィルムであって、前記フィルムの縦方向の屈折率Nxおよび横方向の屈折率Nyが1.560以上であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムが開示されている。
一般式(1)
しかしながら、近年の技術革新に伴い、ポリアミド樹脂の延伸フィルムも多方面で利用されるようになり、キシリレンジアミン由来の構成単位を含むポリアミド樹脂を用いた延伸フィルムも、さらに多種類のものが求められるようになっている。
特に、本発明では、高い靭性を維持しつつ、引張弾性率が向上した延伸フィルムおよび多層体を提供することを目的とする。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂(A)を含む樹脂組成物から形成され、前記ポリアミド樹脂(A)がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数11~14のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、延伸フィルム。
<2>前記キシリレンジアミンは、10~90モル%のメタキシリレンジアミンと、90~10モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含む、<1>に記載の延伸フィルム。
<3>前記キシリレンジアミンは、40~80モル%のメタキシリレンジアミンと、60~20モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含む、<1>に記載の延伸フィルム。
<4>前記キシリレンジアミンは、51~75モル%のメタキシリレンジアミンと、49~25モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含む、<1>に記載の延伸フィルム。
<5>前記ジカルボン酸が、1,12-ドデカン二酸を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の延伸フィルム。
<6>前記ポリアミド樹脂(A)の含有量が前記樹脂組成物の90質量%超である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の延伸フィルム。
<7>前記樹脂組成物が、さらに、前記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂(B)を含み、前記ポリアミド樹脂(A)の含有量が前記樹脂組成物の10~90質量%であり、前記ポリアミド樹脂(B)の含有量が前記樹脂組成物の90~10質量%である、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の延伸フィルム。
<8>前記ポリアミド樹脂(B)が、脂肪族ポリアミド樹脂(B1)および半芳香族ポリアミド樹脂(B2)の少なくとも1種を含む、<7>に記載の延伸フィルム。
<9>前記脂肪族ポリアミド樹脂(B1)が、ポリアミド6、ポリアミド66およびポリアミド12からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<8>に記載の延伸フィルム。
<10>前記半芳香族ポリアミド樹脂(B2)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が10のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<8>または<9>に記載の延伸フィルム。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の延伸フィルムを含む多層体。
このように、キシリレンジアミンと炭素数11~14のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸等から合成されるポリアミド樹脂から形成されるフィルムを延伸することにより、高い靭性を維持しつつ、引張弾性率が向上した延伸フィルムが得られる。特に、ポリアミド樹脂(A)を含む樹脂組成物から形成される未延伸のフィルムと比較して、引張弾性率を格段に向上させることが可能になる。さらに、引張弾性率が高くなると、靭性が低下する傾向にあるが、本発明では、靭性も高いレベルで維持することができる。
本発明で用いる樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)を含む。
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数11~14のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。このようなポリアミド樹脂(A)を用いることにより、高い靭性を維持しつつ、引張弾性率が高い延伸フィルムが得られる。
ガラス転移温度とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。具体的には、DSC装置を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させたポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求めることができる。
前記樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)に加え、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂(B)を含んでいてもよい。
ポリアミド樹脂(B)はその種類等は特に定めるものではなく、公知のポリアミド樹脂を用いることができ、脂肪族ポリアミド樹脂(B1)および半芳香族ポリアミド樹脂(B2)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂(B2)は、全構成単位の30~70モル%(好ましくは40~60モル%)が芳香族を含むポリアミド樹脂をいい、好ましくは、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が芳香族を含有するジアミンに由来するポリアミド樹脂であり、より好ましくはジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~10のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂b」と言うことがある)である。
本発明で用いる樹脂組成物は、上述のとおり、ポリアミド樹脂(A)を必須成分とし、さらに、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂(B))を含んでいてもよい。
前記樹脂組成物の第一の実施形態は、ポリアミド樹脂(A)の含有量が前記樹脂組成物の90質量%超である形態である。本実施形態において、ポリアミド樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物中、92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
樹脂組成物には、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂や添加剤を含んでいてもよい。
また、樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、例えば、本発明の延伸フィルム(または樹脂組成物)において、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂(A)およびポリアミド樹脂(B)の総量の5質量%以下であることをいう。
本発明の延伸フィルムの延伸倍率は、2.0倍以上であることが好ましく、2.2倍以上であることがより好ましい。上限は、例えば、5.0倍以下であり、4.0倍以下、3.0倍以下であっても十分に性能要求を満たす。
特に、本発明では、引張弾性率、破壊点強度および破壊点伸び率のすべてについて、上記範囲を満たす延伸フィルムとすることができる。
本発明の延伸フィルムの長さは、特に定めるものではないが、通常、1m以上であり、例えば、ロールトゥロールで連続生産する場合は、10m以上であろう。上限は、例えば、10,000mである。
本発明の延伸フィルムは、公知の方法で製造できる。例えば、溶融押出した未延伸フィルムを延伸し、芯材に巻き取ることで製造できる。延伸は、1方向のみに行ってもよいし(1軸延伸)、直交する2方向に行ってもよく(2軸延伸)、2軸延伸が好ましい。フィルムの搬送方向(Machine direction、「MD」ということがある)またはフィルムの幅方向(Transverse Direction、「TD」ということがある)の1方向(より好ましくは、MD)、または、MDおよびTDの2方向に延伸することが好ましい。2軸延伸の場合、2方向の延伸は同時に行ってもよいし、逐次に行ってもよい。
MD延伸は、周速速度の異なるロール間を、未延伸フィルムを通過させて、延伸することができる。この場合、未延伸フィルムが後に通過する方が、周速速度が速くなるように設定される。また、テンターを用いて延伸することもできる。一方、TD延伸は、テンターを用いて延伸することができる。また、バッチ式の二軸延伸機を用いてもよい。
その他、本発明の延伸フィルムの製造方法は、国際公開第2017/010390号の段落0049~0053および図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の延伸フィルムは、そのまま用いてもよいが、本発明の延伸フィルムを含む多層体として用いてもよい。例えば、本発明の延伸フィルムと他のフィルムの多層体である。他のフィルムとしては、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等が例示される。
多層体の詳細は、国際公開第2017/010390号の段落0054および図2の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の延伸フィルムは、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
<ポリアミドMP12(30)の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、精秤した1,12-ドデカン二酸60.00molを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下で180℃まで昇温し、1,12-ドデカン二酸を溶解させ均一な流動状態とした。これに、ジアミン成分の30mol%をパラキシリレンジアミン、70mol%をメタキシリレンジアミンとしたパラ/メタキシリレンジアミン60molを撹拌下に160分を要して滴下した。この間、反応系内圧は常圧とし、内温を連続的に250℃まで昇温させ、またパラ/メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。パラ/メタキシリレンジアミン滴下終了後、250℃の液温を保持して10分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600Torrまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を260℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.3MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後ペレット形状に切断し、溶融重合品のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂(MP12(30))の融点は206℃、ガラス転移温度は56℃、相対粘度は2.10であった。
ジアミン成分の40mol%をパラキシリレンジアミン、60mol%をメタキシリレンジアミンと変更し、ポリアミドMP12(30)と同条件で合成を行った。
得られたポリアミド樹脂(MP12(40))の融点は216℃、ガラス転移温度は57℃、相対粘度は2.10であった。
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、精秤したセバシン酸60.00molを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下で180℃まで昇温し、セバシン酸を溶解させ均一な流動状態とした。これに、ジアミン成分の30mol%をパラキシリレンジアミン、70mol%をメタキシリレンジアミンとしたパラ/メタキシリレンジアミン60molを撹拌下に160分を要して滴下した。この間、反応系内圧は常圧とし、内温を連続的に250℃まで昇温させ、またパラ/メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。パラ/メタキシリレンジアミン滴下終了後、250℃の液温を保持して10分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600Torrまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を260℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.3MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後ペレット形状に切断し、溶融重合品のペレットを得た。
MXD6:メタキシリレンジアミンとアジピン酸から合成されるポリアミド樹脂、三菱ガス化学社製、MXナイロン 6000
N12:ポリアミド12、宇部興産社製、3024U
N6:ポリアミド6、宇部興産社製、1022B
<フィルムの製造>
表1~3に示すポリアミド樹脂(表2、表3は、質量比である)を、ダイから溶融押出した。具体的には、溶融混練したポリアミド樹脂を、厚み135μmとなるように押し出た。その後、二軸延伸装置(テンター法、EX105S、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、MD方向およびTD方向にそれぞれ2.25倍となるように延伸を行った後、180℃で熱固定しながら緩和して延伸フィルムを得た。
未延伸フィルム(上記押出後、冷却したフィルム)および延伸フィルムについて、以下の通り、各種特性の評価を行った。結果を下記表1~3に示す。
JIS K 7127:1994に従い、10mm幅の短冊を用い、50mm/分の試験速度で測定した。測定に際し、延伸フィルムのMD方向に引張り試験を行い、チャック間距離を50mmとした。
Claims (4)
- ポリアミド樹脂(A)を含む樹脂組成物から形成され、
前記ポリアミド樹脂(A)がジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数11~14のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、
前記キシリレンジアミンは、10~90モル%のメタキシリレンジアミンと、90~10モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含み、
前記炭素数11~14のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が、1,12-ドデカン二酸を含み、
前記ポリアミド樹脂(A)の含有量が前記樹脂組成物の90質量%超である、
延伸フィルム。 - 前記キシリレンジアミンは、40~80モル%のメタキシリレンジアミンと、60~20モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含む、請求項1に記載の延伸フィルム。
- 前記キシリレンジアミンは、51~75モル%のメタキシリレンジアミンと、49~25モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含む、請求項1に記載の延伸フィルム。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の延伸フィルムを含む多層体。
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