JP4474807B2 - フィルム用ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の酸化防止剤を特定量含有するフィルム用ポリアミド組成物および食品包装用ポリアミドフィルムに関する。詳しくは、熱安定性、酸化安定性に優れ、かつ、レトルト処理後でも、機械的性質、特に、引張強度保持率が高いなど実用的性質が良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物、および食品包装用ポリアミドフィルム、特に、レトルト包装用フィルムとして好適に使用されるポリアミドフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂からなるフィルムは、ガスバリヤ性、強靭性、耐ピンホール性、耐熱性あるいは耐油性などの諸特性が優れている。そのため、ポリアミドは包装用フィルム、特に食品包装用分野を中心に、単層フィルムあるいはラミネートフィルムの基材として、また、他樹脂との共押出による多層フィルムの構成素材として使用されている。近年、特に、レトルト食品包装用フィルムとしての需要が増加している。
【0003】
ポリアミド樹脂からフィルムを製造する場合、樹脂の流動性や生産性を考慮して、使用するポリアミド樹脂の融点より50〜100℃程度、高い温度で溶融混練し、製膜することが多い。この様な温度でポリアミド樹脂を保持した場合、ポリアミド樹脂は部分的な架橋や劣化することがあり、ゲル状物を生成したり、着色したりすることがある。そのため、長時間連続してフィルムを製造した場合や製造を途中で中断するような間欠的な方法でフィルムを製造した場合、製造されたフィルムの表面にゲル状物が多数発生することがあり、フィルムとしての商品価値が低下することがあった。
【0004】
また、レトルト食品包装に使用されるフィルムは、内容物を充填後、滅菌処理されるが、近年、レトルト処理は約130℃の熱水や水蒸気で処理されることが多く、処理条件が厳しくなっている。このような条件でポリアミドフィルムを処理した場合、ポリアミドフィルムの機械的性質、特に、引張強度の低下が大きくなったり、透明性が低下するなど実用的な性質が損なわれることがあった。
【0005】
従来、フィルムを長時間連続製造した場合でも、ゲル状物の発生や着色が少ないなど熱安定性が良好なポリアミド樹脂に関する開発やレトルト処理を受けても、実用的性質の低下が少ないフィルム用ポリアミド樹脂に関する研究開発が進められている。熱安定性、酸化安定性が良好なポリアミド樹脂組成物に関しては、例えば、特開昭59−25826号公報、特開昭59−231089号公報、特開昭62−149679号公報、特開平6−16928号公報などにポリアミド樹脂とヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルを含む熱安定性の改良されたポリアミド樹脂組成物が開示されている。また、特開平4−28727号公報、特開平7−268209号公報などには、レトルト処理で実用的性質の低下が少ないレトルト食品包装用ポリアミドフィルムが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭59−25826号公報、特開昭59−231089号公報、特開昭62−149679号公報には、ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルを含む熱安定性、酸化安定性の改良されたポリアミド樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これら先行文献には、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性、酸化安定性に関する具体的なデータは開示されていない。また、フィルム用途に関する具体的な記載もなく、レトルト処理によるポリアミドフィルムの実用的性質への影響についても技術開示や示唆がなされていない。
特開平6−16928号公報にはポリアミド樹脂組成物の熱安定性、酸化安定性が改良されることが開示されているが、リン系酸化防止剤は必須の構成成分である。また用途面でフィルムに関する記載はなく、レトルト処理による実用的性質への影響についても何等の技術開示や示唆がなされていない。
【0007】
特開平4−28727号公報は、特定の末端変性ポリアミド系樹脂よりなるレトルト食品包装用フィルムが開示されていが、このポリアミド系樹脂の熱安定性、酸化安定性に関しては、何等の記載も示唆もされていない。
また、特開平7−268209号公報には、特定の酸化防止剤が配合されたポリアミド組成物からなるレトルト食品包装用フィルムが開示しているが、このポリアミド系樹脂の熱安定性、酸化安定性に関しては、何等の記載も示唆もされていない。
【0008】
熱安定性、酸化安定性の改良されたポリアミド樹脂組成物に関する技術やレトルト処理を受けても、実用的性質の低下が小さいレトルト食品包装用ポリアミドフィルムに関する技術はそれぞれ開示されている。しかし、熱安定性、酸化安定性が良好で、かつ、レトルト処理を受けても実用的性質の低下が小さいフィルム用ポリアミド樹脂に関する技術の開示は見当たらない。
そのため、食品包装用材料分野では、熱安定性、酸化安定性が良好で、かつ、レトルト処理を受けても実用的性質の低下が小さいフィルム用ポリアミド樹脂の開発が要望されている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の要望を満たすフィルム用ポリアミド樹脂を目的に種々検討した結果、特定の酸化防止剤が特定量配合されたポリアミド樹脂組成物により目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)ポリアミド樹脂 100重量部、
(B)一般式(1)で表されるヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル 0.01〜1.0重量部
を含有するフィルム用ポリアミド樹脂組成物である。
【化2】
Figure 0004474807
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される(A)ポリアミド樹脂は、3員環以上のラクタム、アミノ酸、またはジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を重合、または共重合することによって得られるポリアミド樹脂である。
これらの重合、または共重合は溶融重合、溶液重合や固相重合など公知のポリアミドの重合方法で行うことができる。製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機などの混練反応押出機など、公知のポリアミド製造装置を用いることができる。
【0012】
3員環以上のラクタムとしては、例えば、ε―カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、α―ピロリドン、α―ピペリドンなどを挙げることができる。アミノ酸としては、例えば、6―アミノカプロン酸、7―アミノヘプタン酸、9―アミノノナン酸、11―アミノウンデカン酸、12―アミノドデカン酸などを挙げることができる。
【0013】
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,3−/1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス−(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどの脂環族ジアミン、およびメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0014】
ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパチン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
本発明においては、上記の3員環以上のラクタム、アミノ酸、またはジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩の重合、または共重合により製造されるホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合して用いることができる。
【0015】
使用される(A)ポリアミド樹脂の具体例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66(ナイロン6とナイロン66のコポリマー、以下、コポリマーは同様に記載)、ナイロン6/610、ナイロン6/611、ナイロン6/12、ナイロン6/612、ナイロン6/6T、ナイロン6/6I、ナイロン6/66/610、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/612、ナイロン66/6T、ナイロン66/6I、ナイロン6T/6I、ナイロン66/6T/6Iなどが挙げられる。好ましいポリアミド樹脂としては、得られる成形品の耐熱性、機械的強度、透明性や経済性、入手の容易さなどを考慮して、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/66/12である。
【0016】
本発明で使用される(A)ポリアミド樹脂は、JIS K6810に準じ、98%硫酸中濃度1%、温度25℃の条件で測定された相対粘度ηrが、2〜6、好ましくは2〜5の範囲のものである。相対粘度が低すぎると、得られる成形品の機械的強度が不十分なことがあり、高すぎるとフィルム製造が困難になることがある。
【0017】
本発明において使用される、(B)一般式(1)で表されるヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルは(以下、これを単にヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルと呼ぶ。)、3−(3−アルキルー5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、またはその酸塩化物、酸無水物などの反応性誘導体と3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン類とを公知の方法で反応させることにより製造することができる。
【化3】
Figure 0004474807
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0018】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルにおいて、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基を示すが、熱および酸化安定性の点でメチル基が好ましい。ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルの具体例としては、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−エチルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、3,9−ビス[2−〔2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−イソプロピルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンなどがあるが、これらの中では、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンが好ましく使用される。
【0019】
本発明のポリアミド組成物は、(A)ポリアミド樹脂100重量部と、(B)ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル0.01〜1.0重量部、好ましくは、0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.25重量部を含有するものである。ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルの配合量が0.01重量部未満になると、改良効果が必ずしも充分に発揮されず、また1.0重量部を超えて配合しても、それに見合う効果の向上が期待できず、経済的に不利となる。
【0020】
また、本発明のポリアミド組成物には、得られるフィルムの特性を損なわない範囲内で、ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル以外の公知のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレンフォスファイトなどのリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む耐候剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ママグネシウムなどの金属石鹸、メチレンビスアミド、エチレンビスアミドなどのビスアミド化合物、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、アルキルスルホネート、第4級アンモニウムサルフェートなどの帯電防止剤、シリカ、タルク、モンモリナイトなどの各種フィラー、ブロッキング防止剤、染料、顔料などの各種添加剤が配合されていてもよい。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルおよび必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合することによって製造される。例えば、タンブラーやミキサーなどの公知の混合装置を使用し、ポリアミド樹脂とヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルとをドライブレンドして製造する方法、ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルを可溶な溶媒に溶解させた溶液をポリアミド樹脂に散布した後、溶媒を蒸発させて製造する方法、ポリアミド樹脂とヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルを公知の一軸または二軸の押出機を用いて溶融混練して、製造する方法などがある。
【0022】
本発明のポリアミド樹脂組成物からフィルムを製造する方法としては、公知のポリアミドのフィルム製造方法を適用することができる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物を押出機で溶融混練し、T−ダイあるいはコートハンガーダイによりフラットフィルム状に押出し、キャスティングロール面上にキャスティング、冷却してフィルムを製造するキャスティング法、リング状ダイにより筒状に溶融押出したチューブ状物を空冷あるいは水冷してフィルムを製造するチューブラー法等がある。製造されたフィルムは未延伸の状態で使用できるが、通常、延伸フィルムとして使用されることが多い。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、同時二軸延伸フィルム、逐次二軸延伸フィルムなどであり、これらは、ロール式一軸延伸法、テンター式逐次二軸延伸法、テンター式同時二軸延伸法、チューブラー延伸法など公知の延伸方法によって製造される。また、延伸工程はポリアミドフィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、ポリアミドフィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。
【0023】
延伸フィルムの延伸倍率は使用用途によって異なるが、通常、一軸延伸フィルムの場合、1.5〜5倍、好ましくは、1.8〜3.5倍である。また、テンター式二軸延伸フィルムは、通常、フィルム製造の巻取方向(縦方向)の延伸倍率は1.5〜4倍、巻取方向と直角の方向(横方向)の延伸倍率は1.5〜5倍である。チューブラー法で延伸する場合、縦方向1.5〜4倍、横方向1.5〜4倍である。
【0024】
更に、本発明のポリアミド組成物から得られるフィルムは、他の高分子フィルムやアルミニウム箔などと積層体にして、使用することができる。積層される他の高分子フィルムとしては低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂などから得られるフィルムを挙げることができる。
【0025】
ポリアミドフィルムと他の高分子フィルムとの積層体を製造する方法は、公知の方法が適用できる。例えば、ポリアミドフィルムと他の1種もしくは2種以上の高分子フィルムを接着剤で接着する方法や、ポリアミド樹脂と1種もしくは2種以上の他の高分子フィルムを構成する高分子化合物を、接着性樹脂を介して多層口金から溶融共押出しする方法などを適用することができる。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物から得られるフィルムは熱安定性、酸化安定性が良好で、長時間連続運転しても、ゲル状物の発生が少なく、かつ、レトルト処理を受けても、実用的性質の低下が小さいため、生麺、加工食品、漬物、肉類などの食品包装用材料に適しており、特に、レトルト食品包装用材料として好適に利用される。
【0027】
【実施例】
以下において実施例および比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例に限定されないのは勿論である。以下、実施例、比較例で使用したポリアミド樹脂、酸化防止剤、評価方法を記載する。
【0028】
1.使用したナイロン樹脂、酸化防止剤
(A):ナイロン6:宇部興産株式会社製 UBE NYLON 1022B,相対粘度3.6)
(B−1):3,9-ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン:住友化学工業株式会社製 商品名 スミライザー GA−80
(B−2):ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 商品名 イルガノックス1010
(B−3):オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 商品名 イルガノックス1076
(P):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 商品名 イルガフォス168
【0029】
2.ゲル状物の評価方法
ポリアミド樹脂と酸化防止剤を二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒し、ペレットを製造した。このペレットを乾燥後、再度、同一条件で造粒し、製造したペレットを乾燥した。このペレットをTダイを備えた単軸押出機(ユニオンプラスチック製USV25−28−200)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数40rpm、冷却ロール温度40℃の条件に設定し、厚さ40μmのポリアミドフィルムを30分間製造した後、押出機設定温度を維持した状態でスクリューを停止して、フィルムの製造を1時間中断した。それから、スクリューを回転させ、ポリアミドフィルムの製造を再開し、ポリアミドフィルムを30分間製造した後、再度、押出機設定温度を維持した状態でスクリューを停止して、フィルムの製造を1時間中断した。この操作をもう一度繰り返した後、フィルムの製造を再開し、スクリューの回転開始から30分後のフィルムをフィルムゲルカウンター(FUTEC製フッィシュアイカウンター)を使用して、0.04m当り、径200μm以上のゲル状物個数をオンラインで測定した。ゲル状物の数が少ないほど、熱安定性は良好となる。
【0030】
3.黄色度YIの評価法
(1)黄色度YI評価用フィルムの作成
ポリアミド樹脂と酸化防止剤を二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒し、ペレットを製造した。このペレットを乾燥後、再度、同一条件で造粒し、製造したペレットを乾燥した。このペレットをTダイを備えた単軸押出機(プラスチック工学研究所製40mmφEx)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数40rpm、冷却ロール温度40℃の条件に設定し、厚さ150μmの評価用ポリアミドフィルムを製造した。
(2)黄色度YIの評価
上記で得た評価用フィルムを180℃のオーブン中に5時間保持し、エージング処理を行った。エージング処理前後の評価用フィルムからそれぞれ縦5.0cm、横5.0cmのサンプルを切出し、カラーコンピューター(スガ試験機株式会社製 SM−5−IS−2B)を使用して、黄色度YIを測定した。耐熱変色性の指標値として、エージング処理前後のフィルムの黄色度YIの変化値ΔYIを求めた。変化値ΔYIが小さいほど酸化安定性(耐熱変色性)は良好となる。
ΔYI=(エージング処理後のYI)−(エージング処理前のYI)
【0031】
4.レトルト処理評価
(1)レトルト処理評価用フィルムの作成
ポリアミド樹脂と酸化防止剤を二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒し、ペレットを製造、乾燥した。このペレットをTダイを備えた単軸押出機(プラスチック工学研究所製、Plaborφ40Ex型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数40rpm、冷却ロール温度30℃の条件に設定して、厚さ100μmのポリアミドフィルムを製造した。このフィルムからサンプルを切出し、評価用の未延伸フィルムとした。
次いで、未延伸フィルムから縦90mm、横90mmのサンプルを切出し、岩本製作所製二軸延伸機に取付け、延伸温度70℃で同時二軸延伸を行い、縦2.8倍、横2.8倍に延伸した後、210℃で熱固定して、レトルト処理を行う二軸延伸フィルムを得た。
【0032】
(2)レトルト処理
上記で得られた二軸延伸フィルム(縦150mm、横150mm)をレトルト食品用オートクレーブ(トミー精工製、SR−240)に入れ、135℃、全圧3.2kg/cm(ゲージ圧)、空気分圧1.0kg/cm(ゲージ圧)の条件で30分間処理した。
【0033】
(3)引張強度保持率の測定
引張強度はASTM D−882に準じて測定した。
引張強度保持率は[(レトルト処理後引張強度)/(レトルト処理前引張強度)]×100(%)で求めた。引張強度保持率の値が高いほどレトルト処理による影響が小さいことを示す。
【0034】
実施例1〜3、比較例1〜4
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、それぞれ第1表に示した量の(B)酸化防止剤を配合し、前記の方法でフィルムを製造し、熱安定性、酸化安定性、およびレトルト処理評価用フィルム作成した。このフィルムを使用し、フィルム表面のゲル状物の数、黄色度YIおよび引張強度を測定し、結果を第1表に示した。
【0035】
【表1】
Figure 0004474807
【0036】
【発明の効果】
本発明の、ポリアミド樹脂と特定のヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルを含有するポリアミド樹脂組成物は、熱,酸化安定性に優れ、かつレトルト処理後の引張強度保持率が高く、耐熱水性の良好なフィルム用ポリアミド樹脂組成物であり、特に、食品包装用フィルム用途に好適なポリアミド樹脂組成物である。

Claims (2)

  1. (A)ポリアミド樹脂 100重量部、
    (B)3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン0.01〜1.0重量部を含有するレトルト包装用フィルム用ポリアミド樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のレトルト包装用フィルム用ポリアミド樹脂組成物から得られるレトルト包装用ポリアミドフィルム。
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