JP7119397B2 - ゼオライトおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゼオライトおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳細には、炭化水素化合物又は低級カルボニル化合物の転化・異性化に適した平均粒子径が100nm以下の表面に酸点が存在しないゼオライトに関するものである。
中細孔ゼオライトは、芳香族化合物相当のサイズの細孔を利用した高選択性触媒として用いられている。中細孔ゼオライトで代表的なMFI型ゼオライトを触媒として用いた例として、トルエンの不均化(例えば特許文献1参照。)、キシレンの異性化(例えば特許文献2参照。)などが挙げられる。これらの反応は主に、中細孔ゼオライトのミクロ細孔の特徴を利用したものである。中細孔ゼオライトのミクロ細孔は、入口径がおよそ0.5nmであり、この細孔径に近接した分子径を持つ分子の有効な反応場となると考えられる。
一方で、ゼオライト表面の酸点における非選択的反応は、一般的に望ましいものではない。これらの非選択的反応はしばしば、生成物収量の低下、生成物選択率の低下、コーク析出による触媒の失活を招く。
そこで、ゼオライト表面における望ましくない反応を抑制するために、嵩高い試剤で表面のアルミニウムを抽出する、または表面を被覆することにより表面の酸点を減少または消去する方法が提案されている。
そして、MFI構造を有するゼオライトをシリケートで被覆することで、外表面の酸点を低減したゼオライトの製造と、それによるp-キシレンの選択的な製造法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
また、嵩高いジアルキルアミン試剤でゼオライトの表面酸点を被覆することで、表面酸性度を減少させる方法が提案されている(例えば特許文献4、5参照。)。
特許第4014279号公報 特許第2598127号公報 特許第6029654号公報 米国特許第4520221号公報 米国特許第4568768号公報
しかし、特許文献4、5に提案されたアミンによる表面酸点の被覆においては、高温でアミンが脱離もしくは分解するという課題を有する。また、特許文献3に提案のゼオライトをシリケートで被覆する方法においては、被覆に複数回の水熱合成が必要となるという課題がある。そして、これらの課題を伴わない比較的容易な酸点の除去方法としては水蒸気によるアルミニウムの脱離が挙げられるが、この方法では一般的にゼオライト表面のアルミニウムのみを選択的に除去することができず、細孔内のアルミニウムまでも除去してしまい、細孔内の酸点の低下をも招くものであった。
そこで、ゼオライト表面のアルミニウムを選択的に除去することにより、実質的に表面に酸点を有さず、細孔内のみに酸点を有するゼオライトは、炭化水素又は低級カルボニル化合物の転化反応や異性化反応において高活性、長寿命と高選択性を有するものとして期待されるものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ゼオライトの製造の際に特定の処理工程を施すことにより、表面酸点のみを選択的に除去した新規なゼオライトを得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(i)~(iv)の特性を満足することを特徴とするゼオライト。
(i)平均粒子径(以下、PDと記す。)がPD≦100nmである。
(ii)骨格構造が10員環構造である。
(iii)表面に酸点を有さない。
(iv)酸量が0.1~1.0mmol/gである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のゼオライトは、(i)PD≦100nmのものであり、特に熱安定性にも優れるものであることから、3nm≦PD≦100nmであることが望ましく、更に5nm≦PD≦100nmであることが望ましい。ここで、PDが100nmを越えるものである場合、得られたゼオライトを脂肪族炭化水素の転化反応・異性化反応に用いた場合、反応効率に劣るものとなる。
なお、PDは、例えばゼオライトの外表面積から以下の式(1)を用いて算出して求めることができる。
PD=6/S(1/2.29×10+0.18×10-6) (1)
(ここで、Sは外表面積(m/g)を示すものである。)
また、式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t-plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6~1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きからゼオライトの外表面積を求めるものである。
本発明のゼオライトは、(ii)骨格構造が10員環構造を有する、ものである。10員環の骨格構造を有するゼオライトとしては、例えばAEL、EUO、FER、HEU、MEU、MEL、MFI、NES型などのゼオライトを挙げることができ、中でも脂肪族炭化水素の転化反応・異性化反応に適したものとなることからMFI、FER、MEL型ゼオライトが好ましく、特にMFI型ゼオライトであることが好ましい。
本発明のゼオライトは、(iii)表面に酸点を有さない、ものである。
ここで、ゼオライトの表面酸点とは、その言葉の意味する通り、ゼオライトの表面に存在する酸点を示すものである。通常、ゼオライトは、その表面及び(ミクロ)細孔内に酸点を有するものであり、表面に酸点を有さないとは、(ミクロ)細孔内のみに酸点を有するものと言えるものである。そして、ゼオライトとしての調製・入手が容易であることから、表面をシリケート、ジアルキルアミン試薬等により被覆されていない未修飾表面を有するゼオライトであることが好ましい。
そして、ゼオライトの表面の酸点(表面に酸点が存在しないこと)の確認としては、その確認を行うことが可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、例えば酸点に対する吸着性を有する2,4-ジメチルキノリンの吸着により確認することが可能である(Characterization of acid sites on the external surface of zeolites,Reaction Kinetics and Catalysis Letters,vol.67,p.281(1999)参照。)。2,4-ジメチルキノリンは、ゼオライト(細孔内を含む)に存在する酸点(-OH)との吸着性質を有しているが、ゼオライトの(ミクロ)細孔径が2,4-ジメチルキノリン分子より小さい場合、(ミクロ)細孔内に侵入することができず、(ミクロ)細孔内の酸点と吸着することは出来ない。つまり、ゼオライト表面の酸点のみと吸着するものとなる。よって、ゼオライトの表面に存在する酸点(-OH)への2,4-ジメチルキノリンの吸着が観測されない場合には、ゼオライトの表面に酸点が存在しないと判断することができる。
より具体的な方法としては、ゼオライトの前処理として400℃で2時間の脱気・脱水処理を行ったゼオライトの150℃における赤外吸収スペクトル測定を行う。そして、脱気・脱水処理を行ったゼオライトに2,4-ジメチルキノリンガスを導入して10分間吸着させ、150℃での排気により余剰2,4-ジメチルキノリンを除き、2,4-ジメチルキノリン吸着ゼオライトの調製を行い150℃における赤外吸収スペクトル測定を行う。つまり、2,4-ジメチルキノリン吸着前後の赤外吸収の差スペクトルにおいて、3600~3650cm-1の範囲で赤外線吸収の差(減少)が確認できない場合に表面に酸点が存在しないと判断することができる。なお、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面のシラノール部位にも吸着するが、シラノールのO-H伸縮振動に由来する吸収は、3700~3800cm-1に観測される。一方、ゼオライト表面の酸点のO-H伸縮振動に由来する吸収は、3600~3650cm-1に観測され、2,4-ジメチルキノリンを吸着して酸点のO-H伸縮振動に由来する吸収3600~3650cm-1の範囲に赤外吸収スペクトルの減少がみられることは、2,4-ジメチルキノリンがゼオライトの表面酸点に吸着したことを示す。
本発明のゼオライトは、(iv)酸量が0.1~1.0mmol/gであり、好ましくは0.1~0.6mmol/gのものである。ここで、酸量が1.0mmol/gを越えるゼオライトである場合、炭化水素の転化・異性化反応に用いた際にコーク付着がしやすいものとなり、転化・異性化反応の失活が速くなる。酸量が0.1mmol/g未満のゼオライトである場合、該炭化水素の転化・異性化反応の際の活性が低いものとなる。なお、本発明のゼオライトにおける酸量とは、本発明のゼオライトが(iii)表面に酸点を有さない、ものであることから、基本的には(ミクロ)細孔内における酸点の量となるものである。
酸量の測定としては、一般的に酸量の測定方法として知られている方法を用い測定することが可能であり、例えばアンモニア-TPD法(アンモニア昇温脱離法による固体酸性質測定,触媒,vol.42,p.218(2000)参照。)に準じた方法により測定することができる。具体的には、室温でゼオライトにアンモニアを飽和吸着させ、100℃に加熱して測定雰囲気中に残存するアンモニアの除去を行った後、昇温速度10℃/分で700℃までの昇温過程で測定されるアンモニアのピークの内、強酸点を示す高温側で脱離するアンモニア量をもって固体酸量とする方法を挙げることができる。
本発明のゼオライトは、そのSiO/Al比としてはゼオライトと称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、中でも、脂肪族炭化水素の転化・異性化反応に用いた際に、その効率に優れるものとなることから、SiO/Al=20~300であるものが好ましく、特に耐熱性、反応選択性、生産性に優れるものとなることから、SiO/Al=30~200であることが好ましい。
本発明のゼオライトの製造方法としては、上記(i)~(iv)に記載の特性を満足するゼオライトの製造が可能であれば如何なる方法をも用いることは可能である。そして、表面に酸点を有さないゼオライト、つまり、ゼオライト表面の酸点の選択的な除去方法としては、(i)~(ii)の特性を満足するゼオライトを製造する際の焼成処理(熱処理)の一部又は全部を水熱(スチーム)処理とし、該焼成処理の前後にイオン交換処理を付加する方法を挙げることができる。
そして、(i)~(ii)の特性を満足するゼオライトの合成方法としては、一般的な公知の方法を用いることにより、PD≦100nmであり、10員環の骨格構造を有するゼオライトとすることができ、具体的にはカチオンとしてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物、有機構造指向剤とアルミノシリケートゲルとを混合し、得られた結晶物を焼成することにより製造することができる。その際のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含む化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を挙げることでき、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。有機構造指向剤としては、例えばテトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物等を挙げることができる。また、アルミノシリケートゲルとしては、例えば不定形アルミノシリケートゲルを挙げることができる。
さらに、(i)~(iv)の特性を満足するゼオライトとする際には、上記により得られた結晶物を焼成する前にイオン交換を行い、焼成の際の一部又は全部を水熱処理とし、その後、更にイオン交換を行う方法により製造を行うことが可能となる。
その際の焼成条件としては、処理温度としては300~900℃が好ましく、特に400~700℃であることが好ましい。処理時間は、工業的には好ましくは10分~40時間である。雰囲気としては、例えば窒素、空気、酸素、アルゴン、その他不活性ガスのうち一つもしくは二つ以上の組み合わせのガスをも挙げることができる。そして、該焼成工程の一部又は全部を水熱(スチーム)処理を行うことにより、プロトン酸点のアルミニウムが脱離される。水熱処理の処理温度としては400~750℃が好ましく、特に500~650℃が好ましい。また、水蒸気濃度は10~100%が好ましく、特に40~90%であることが好ましい。
また、イオン交換は、焼成工程の前後に行うものであり、複数回のイオン交換に分割して行ってもよい。また、イオン交換は、塩化アンモニウム、塩酸、硝酸等の酸を用いたイオン交換が挙げられ、塩酸、硝酸によるものが好ましい。また、イオン交換は水での洗浄で代用することもできる。
本発明のゼオライトは、脱水剤、各種触媒、構造規制剤等の各種用途に用いることができ、特に脂肪族炭化水素又は低級カルボニル化合物の転化・異性化反応等の触媒として適したものとなる。
本発明は、表面酸点を除去した微結晶中細孔ゼオライトに関するものであり、このような特異な性質をもつゼオライトは、脂肪族炭化水素又は低級カルボニル化合物の転化・異性化の際に高活性、高選択性、高耐コーキング性を期待できるものとなる。
以下、本発明の具体的例示を実施例として説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
~ゼオライトの外表面積の測定~
ゼオライトの外表面積は、窒素吸着測定により測定した。
窒素吸着測定としては、窒素吸着装置((商品名)Belsorp-max,マイクロトラック・ベル社製)を用い、吸脱着とも40torr/stepの条件で測定した。外表面積は、t-plot法により、吸着層の厚み(t=0.6~1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。
~平均粒子径の測定~
ゼオライトの外表面積から前記式(1)を用いて平均粒子径を算出した。式(1)中、Sは外表面積(m/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。
~SiO/Al比の測定~
ゼオライトのSiO/Alモル比は、ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定し、求めた。
~2,4-ジメチルキノリン吸着赤外吸収分光測定~
赤外吸収分光の測定は一般的なFT-IR測定装置((商品名)Varian 660-IR,アジレント・テクノロジー株式会社製)に真空下でのIR測定装置用部品((商品名)マルチモードセル,エス・ティ・ジャパン社製)を組み合わせて用いた。試料はディスク成型した後、セルに入れ、真空排気下、10℃/分で400℃まで昇温し、2時間保持した。150℃に冷却後、2,4-ジメチルキノリン吸着前の赤外吸収スペクトルを測定した。2,4-ジメチルキノリンガスを導入し、10分間吸着させ、150℃で1時間真空排気した後、2,4-ジメチルキノリン吸着後の赤外吸収スペクトルを測定した。2,4-ジメチルキノリン吸着後の赤外吸収スペクトルと吸着前のスペクトルの差をとり、吸着による赤外吸収の変化を測定した。
~(MFI型)ゼオライトの製造~
特開2013-227203公報を参考にその製造を行った。
~(MEL型)ゼオライトの製造~
特開2016-153366公報を参考にその製造を行った。
実施例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=48、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
得られた乾燥粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させた。空気下、550℃で1時間焼成後、600℃、80%の水蒸気で2時間処理した。
得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させ、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径40nm、SiO/Alモル比は68、酸量は0.23mmol/gであった。
得られたMFI型ゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図1に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークは減少せず、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが大幅に減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面のシラノールのみに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在しないことを確認した。
得られたMFI型ゼオライトを400kgf/cmで1分間成型した後に粉砕し約1mmのペレットとし、該ペレットを用い、エチレンの転化・異性化反応を行った。反応条件は下記のように設定した。
反応温度:600℃
流通ガス:エチレン50mol%+窒素50mol%の混合ガス、100ml/分
ペレット重量:1.5g
反応管:内径16mmのステンレス製反応管
反応圧力:0.1MPa
反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。ガス成分は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-1700)を用いて分析した。充填剤は、Waters社製PorapakQ(商品名)またはGLサイエンス社製MS-5A(商品名)を用いた。液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-2015)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC-1)を用いた。
エチレンを転化させた際のエチレン転化率とベンゼン、トルエン、キシレン収率の時間変化をエチレンの転化・異性化反応の結果として表1に示す。高いエチレン転化率およびベンゼン、トルエン、キシレン収率が長時間安定したものであった。
Figure 0007119397000001
比較例1
オートクレーブによるゼオライトの結晶化、洗浄、乾燥操作まで実施例1と同様に行った。
得られた乾燥粉末を、空気下、550℃で焼成後、得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させ、ゼオライトを得た。
得られたゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径41nm、SiO/Alモル比は46、酸量は0.36mmol/gであった。
得られたゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図1に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークと、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面の酸点とシラノールに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在することを確認した。
得られたゼオライトを用い、実施例1と同様の方法により、エチレンの転化・異性化反応を行った。
その結果を表2に示す。ペレット表面にコークの蓄積が発生し、長時間の安定した反応を行うことができなかった。
Figure 0007119397000002
比較例2
比較例1で得られたゼオライトを600℃、55%の水蒸気で3分間処理した。
得られたゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径41nm、SiO/Alモル比は54、酸量は0.22mmol/gであった。
得られたゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図1に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークと、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面の酸点とシラノールに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在することを確認した。
得られたゼオライトを用い、実施例1と同様の方法により、エチレンの転化・異性化反応を行った。
その結果を表3に示す。エチレン転化率が急激に低下すると共に、転化・異性化効率も低いものであった。
Figure 0007119397000003
比較例3
比較例1で得られたゼオライトを600℃、80%の水蒸気で2時間処理した。
得られたゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径41nm、酸量は0.07mmol/gであった。
得られたゼオライトを用い、実施例1と同様の方法により、エチレンの転化・異性化反応を行った。
その結果を表4に示す。比較例3はエチレンの転化・異性化効率が低いものであった。
Figure 0007119397000004
実施例2
SiO/Alモル比を変更して実施例1と同様の手法により、ゼオライトの結晶化、洗浄、および乾燥を行った。
得られた乾燥粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させた。空気下、550℃で1時間焼成後、600℃、60%の水蒸気で4時間処理した。
得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させ、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径36nm、SiO/Alモル比は57、酸量は0.26mmol/gであった。
得られたMFI型ゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図2に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークは減少せず、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが大幅に減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面のシラノールのみに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在しないことを確認した。
得られたMFI型ゼオライトを400kgf/cmで1分間成型した後に粉砕し約1mmのペレットとし、該ペレットを用い、プロピレンの転化・異性化反応を行った。反応条件は下記のように設定した。
反応温度:600℃
流通ガス:プロピレン50mol%+窒素50mol%の混合ガス、100ml/分
ペレット重量:1.5g
反応管:内径16mmのステンレス製反応管
反応圧力:0.1MPa
プロピレンを転化させた際のプロピレン転化率とベンゼン、トルエン、キシレン収率の時間変化をプロピレンの転化・異性化反応の結果として表5に示す。高いプロピレン転化率およびベンゼン、トルエン、キシレン収率が長時間安定したものであった。
Figure 0007119397000005
比較例4
オートクレーブによるゼオライトの結晶化、洗浄、乾燥操作まで実施例2と同様に行った。
得られた乾燥粉末を、空気下、550℃で焼成後、得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させた。得られた粉末を600℃、55%の水蒸気で5分間処理した。
得られたゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径38nm、SiO/Alモル比は30、酸量は0.24mmol/gであった。
得られたゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図2に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークと、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面の酸点とシラノールに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在することを確認した。
得られたゼオライトを用い、実施例2と同様の方法により、プロピレンの転化・異性化反応を行った。
その結果を表6に示す。プロピレン転化率が急激に低下すると共に、転化・異性化効率も低いものであった。
Figure 0007119397000006
実施例3
テトラブチルアンモニウム(以降、TBAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化カリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=57、TBA/Siモル比=0.12、K/Siモル比=0.071、OH/Siモル比=0.18、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、110℃で攪拌しながら8日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
得られた乾燥粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させた。空気下、550℃で1時間焼成後、600℃、80%の水蒸気で5時間処理した。
得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させ、MEL型ゼオライトを得た。
得られたMEL型ゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径18nm、SiO/Alモル比は94、酸量は0.10mmol/gであった。
得られたMEL型ゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図3に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークは減少せず、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが大幅に減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面のシラノールのみに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在しないことを確認した。
得られたMEL型ゼオライトを400kgf/cmで1分間成型した後に粉砕し約1mmのペレットとし、該ペレットを用い、アセトンの低級炭化水素への転化反応を行った。反応条件は下記のように設定した。
反応温度:550℃
流通ガス:アセトン50mol%+窒素50mol%の混合ガス、100ml/分
ペレット重量:1.0g
反応管:内径16mmのステンレス製反応管
反応圧力:0.1MPa
アセトンを転化させた際のアセトン転化率とエチレン、プロピレン収率の時間変化をアセトンの低級炭化水素への転化反応の結果として表7に示す。高いアセトン転化率が長時間安定し、エチレン、プロピレン収率も高いものであった。
Figure 0007119397000007
比較例5
オートクレーブによるゼオライトの結晶化、洗浄、乾燥操作まで実施例3と同様に行った。
得られた乾燥粉末を、空気下、550℃で焼成後、得られた粉末を1mol/Lの塩酸中に分散し、ろ過、乾燥させた。得られた粉末を600℃、80%の水蒸気で5分間処理した。
得られたゼオライトは、10員環骨格構造を有し、平均粒子径17nm、SiO/Alモル比は54、酸量は0.11mmol/gであった。
得られたゼオライトに2,4-ジメチルキノリンを吸着させた前後の赤外吸収の差スペクトルを図3に示す。3605cm-1のゼオライト酸点のOHに由来するピークと、3700~3800cm-1のシラノールのOHに由来するピークが減少した。したがって、2,4-ジメチルキノリンはゼオライト表面の酸点とシラノールに吸着しており、ゼオライトの表面には酸点が存在することを確認した。
得られたゼオライトを用い、実施例3と同様の方法により、アセトンの低級炭化水素への転化反応を行った。
その結果を表8に示す。アセトン転化率が急激に低下すると共に、エチレンプロピレン収率も低く推移した。
Figure 0007119397000008
本発明のゼオライトは表面酸点が存在しないこと特徴とした微結晶中細孔ゼオライトであり、例えば低級オレフィンの炭化水素原料の転化・異性化反応の際に特異的な安定性・効率を発現し、その産業的価値は極めて高いものである。
;実施例1及び比較例1、2で得られたゼオライト(2,4-ジメチルキノリン吸着前後)の赤外吸収スペクトルを示す図である。 ;実施例2及び比較例4で得られたゼオライト(2,4-ジメチルキノリン吸着前後)の赤外吸収スペクトルを示す図である。 ;実施例3及び比較例5で得られたゼオライト(2,4-ジメチルキノリン吸着前後)の赤外吸収スペクトルを示す図である。

Claims (6)

  1. 下記(i)~(iv)の特性を満足することを特徴とするゼオライト。
    (i)窒素吸着法のt-plot解析によって算出した外表面積より以下の式(1)を用いて算出した平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
    (ii)骨格構造が10員環構造であり、中細孔ゼオライトである。
    (iii)表面に酸点が存在しない。
    (iv)細孔内の酸量が0.1~1.0mmol/gである。
    PD=6/S(1/2.29×10+0.18×10-6) (1)
    (ここで、Sは外表面積(m/g)を示すものである。)
  2. SiO/Al比が20~300であることを特徴する請求項1に記載のゼオライト。
  3. MFI型ゼオライト、MEL型ゼオライト及びFER型ゼオライトよりなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライト。
  4. 表面に被覆を有さないゼオライトであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のゼオライト。
  5. 少なくともアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物、有機構造指向剤並びにアルミノシリケートゲルを原料として中細孔ゼオライトを製造する際に、焼成処理の前に塩化アンモニウム、塩酸、硝酸又は水によるイオン交換処理を行い、焼成処理の一部または全部を水熱処理とし、焼成処理の後に塩化アンモニウム、塩酸又は硝酸によるイオン交換処理を行うことを特徴とする表面に酸点が存在しないゼオライトの製造方法
  6. 水熱処理を、温度400~750℃、水蒸気濃度10~100%、時間10分~40時間の条件下の水熱処理とすることを特徴とする請求項5に記載の表面に酸点が存在しないゼオライトの製造方法。
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