JP7114208B1 - 凍結乾燥卵黄風食品およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】湯戻し時にとろりとした半熟卵黄特有の食感を復元可能な凍結乾燥卵黄風食品を提供する。【解決手段】アルギン酸アルカリ金属塩および脱アシルジェランガムから選択される1種または2種以上のゲル化剤と、油脂と、卵黄食味成分とを含む凍結乾燥卵黄風食品。好ましくは玉形状を有し、前記ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムであり、前記卵黄食味成分が粉末乾燥卵黄である。【選択図】図1

Description

本発明は、凍結乾燥され、湯戻しが可能で、半熟卵黄の風味を有する食品、およびかかる食品の製造方法に関する。
水や湯で復元可能な凍結乾燥かき卵が、スープやラーメンに広く利用されている。例えば、特許文献1~5には、食感や外観が改善された凍結乾燥かき卵が記載されている。一方で、即席麺の具材として、麺の上に生の卵黄を載せ、熱湯を注いで半熟状態にして食べることが行われている。しかし、半熟の卵黄を再現する凍結乾燥食品は従来存在しなかった。
特開2019-176789号公報 特開2015-084702号公報 特開2015-050971号公報 特開2014-161245号公報 特開2006-296235号公報
半熟卵黄は、加熱により表層が半凝固状態となり、内部はとろりとした液状を保っている。凍結乾燥によって半熟卵黄風味の食品を製造する場合、湯戻し時に半熟卵黄特有のとろりとした食感を復元することが困難であった。卵黄の主成分は脂質であるが、油脂を単に凍結乾燥しただけでは、熱湯で復元したときに溶け散ってしまい、とろりとした食感は得られない。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、湯戻し時にとろりとした半熟卵黄特有の食感を復元可能な凍結乾燥卵黄風食品を提供することを目的とする。
本発明の凍結乾燥卵黄風食品は、アルギン酸アルカリ金属塩および脱アシルジェランガムから選択される1種または2種以上のゲル化剤と、油脂と、卵黄食味成分とを含む。この構成によって、湯戻ししたときにとろりとした半熟卵黄特有の食感が復元できる。
好ましくは、前記凍結乾燥卵黄風食品は卵黄様の玉形状を有する。これにより、湯戻ししたときに玉形状を維持したまま、とろりとした半熟卵黄特有の食感が復元できるので、食したときに半熟卵黄らしさを一層強く感じることができる。
好ましくは、前記ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムである。これにより、凍結乾燥卵黄風食品の製造時および湯戻し時の玉形状の保形性が高まる。
好ましくは、前記卵黄食味成分が粉末乾燥卵黄である。卵黄食味成分として本物の卵黄成分を含むことで、より卵黄らしい風味が得られる。また、卵黄成分として粉末乾燥卵黄を用いることで、凍結乾燥卵黄風食品が多孔性となり、湯戻し性が向上する。
好ましくは、上記凍結乾燥卵黄風食品は乳化剤をさらに含む。製造時に乳化剤を用いることにより製造が容易になる。
本発明の凍結乾燥卵黄風食品の製造方法は、アルギン酸アルカリ金属塩および脱アシルジェランガムから選択される1種または2種以上のゲル化剤、油脂、卵黄食味成分および水が混合されたエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンを可溶性カルシウム塩溶液と反応させて形成物を得る工程と、前記形成物を凍結乾燥する工程とを有する。
本発明の凍結乾燥卵黄風食品、または凍結乾燥卵黄風食品の製造方法によれば、油脂および卵黄食味成分を含むエマルジョンをゲル化した皮膜で包むことにより、湯戻しした時にとろりとした半熟卵黄特有の食感が得られる。
一実施形態の凍結乾燥卵黄風食品の製造フロー図である。
本発明の凍結乾燥卵黄風食品の一実施形態について、まずその構成を説明する。なお、以下において、各成分の含有量とは、乾燥した状態における凍結乾燥卵黄風食品中の各成分の割合を意味する。
本実施形態の凍結乾燥卵黄風食品は、カルシウム(Ca)反応性ゲル化剤によって形成された皮膜に油脂および卵黄食味成分を含む内容物が包まれている。内容物にはその他に、乳化剤、増粘剤、増量剤、酸化防止剤、調味料、着色料等の添加剤が含まれる。また、内容物にはCa反応性ゲル化剤の一部も含まれる。以上のうちゲル化剤、油脂および卵黄食味成分が必須成分である。
凍結乾燥卵黄風食品の形状は特に限定されないが、湯戻しして噛んだときに、ゲル化した表層の内部からとろりとした液状の内容物が出てくることが感じられるように、ある程度の大きさの塊であることが好ましい。凍結乾燥卵黄風食品の形状は、例えば、スクランブルエッグのような粒形状やダイス状に切断した形状とすることができる。凍結乾燥卵黄風食品は、より好ましくは、卵黄様の玉形状を有する。卵黄様の玉形状とは、生卵の状態での卵黄の形状、または半熟卵において白身皮膜に覆われた卵黄様の形状のことをいう。
皮膜は、後述するように、Ca反応性ゲル化剤がCaイオンと反応してゲル化して形成されたものである。Ca反応性ゲル化剤は、アルギン酸アルカリ金属塩および脱アシルジェランガムから選択される。アルギン酸アルカリ金属塩としては、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸カリウムが挙げられる。脱アシルジェランガムは低アシルジェランガムまたはLAジェランガムとも呼ばれる。これらのゲル化剤は、他のCa反応性ゲル化剤、例えばペクチン等と比較して、玉形状の崩れにくいしっかりとした皮膜を形成することができ、また、殺菌処理等のための加熱工程でもゲルが融けることがない。ゲル化剤は、各種のアルギン酸アルカリ金属塩や脱アシルジェランガムから選択された1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。ゲル化剤は、より好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。脱アシルジェランガムと比較して、よりしっかりとした皮膜を形成でき、製造過程および湯戻し時の保形性により優れるからである。また、Caイオンとの反応速度が速く、皮膜を形成する時間が短縮できるからである。
Ca反応性ゲル化剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上である。Ca反応性ゲル化剤が少なすぎると、玉形状に形成することが難しいし、湯戻し時に皮膜が破れて内容物中の油脂が溶け散りやすいからである。一方、Ca反応性ゲル化剤の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。Ca反応性ゲル化剤が多すぎると、食感が固くなりすぎるからである。
油脂の種類は特に限定されず、各種の植物油脂や動物油脂などを用いることができる。植物油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、パーム油、米油、サラダ油等が挙げられる。動物油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、鶏脂等が挙げられる。また、油脂としては、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。油脂は、特に好ましくは豚脂である。とろりとした半熟卵黄の風味を良く再現した凍結乾燥卵黄風食品が得られるからである。なお、本明細書中で「油脂」とは卵黄食味成分以外のものをいう。
内容物中の油脂は、球状の微粒子が凝集した形態で存在する。製造時に乳液の分散相であったものが、その形状を維持されたものである。これにより、凍結乾燥卵黄風食品を湯戻ししたときに乳液が復元されて、軟らかくとろりとした食感が得られる。球状微粒子の粒径は、体積基準での平均粒径が、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。球状微粒子が大きいほど製造が難しいからである。一方、球状微粒子には粒径が1μm未満であるような小さなものが含まれるが、体積基準での平均粒径が、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。球状微粒子がある程度の大きさを有することによって、湯戻ししたときにとろりとした食感が得られるからである。
油脂の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。油脂が少なすぎると、湯戻し後の食感がさらっとしすぎるからである。一方、油脂の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。油脂が多すぎると、湯戻し時に溶け散りやすいからである。溶け散るとは、油脂が熱湯中に溶け出して分散してしまうことをいう。
卵黄食味成分は、卵黄の風味付けに欠かせない成分である。卵黄食味成分としては、好ましくは、液状卵黄や粉末乾燥卵黄などの卵黄成分を用いる。凍結乾燥卵黄風食品が本物の卵黄成分を含むことで、より卵黄らしい風味が得られるからである。卵黄食味成分としては、より好ましくは粉末乾燥卵黄を用いる。湯戻し性が向上するからである。凍結乾燥卵黄風食品が卵黄様の玉形状を有する場合には、湯戻し時に湯が中心部まで浸入することを要する。粉末乾燥卵黄を用いると、玉が多孔性となって湯が侵入しやすくなる。したがって、卵黄食味成分の配合量を増やす場合は、粉末乾燥卵黄を用いることが特に好ましい。粉末乾燥卵黄としては、スプレードライ法などによって製造されたものを用いることができる。
卵黄食味成分の含有量は、液状卵黄を用いる場合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、粉末乾燥卵黄を用いる場合は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。卵黄食味成分が少なすぎると、湯戻し後の卵黄の風味が薄すぎるからである。一方、卵黄食味成分の含有量は、液状卵黄を用いる場合は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。液状卵黄が多すぎると、湯戻し性が悪くなるからである。また、卵黄食味成分の含有量は、粉末乾燥卵黄を用いる場合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。粉末乾燥卵黄が多すぎると、湯戻し後の食感がざらつくからである。
内容物は、好ましくは乳化剤を含む。後述するように、原料に乳化剤を添加することで、製造工程で内容物を乳化させやすいからである。乳化剤としては、乳化を安定させる公知の乳化剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、飽和脂肪酸モノグリセリド、飽和脂肪酸ポリグリセリンエステルなどを用いることができる。
内容物が乳化剤を含むことは必須ではないが、乳化剤を含む場合はその含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。乳化剤が多いほど、乳化が安定して、工程ロスが減らせるからである。一方、乳化剤の含有量は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。乳化剤が多すぎると味を損なうからである。
内容物は、好ましくは増粘剤を含む。増粘剤は、主として、製造工程における造粒の容易さを目的として添加される。増粘剤としては、Ca反応性のないものを用いる。増粘剤としては、例えば、λカラギーナン、タマリンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、グァーガム、HMペクチン、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム等を用いることができる。増粘剤は、一種を単独で用いても良く、互いに反応しない二種以上を組み合わせて用いてもよい。内容物が増粘剤を含むことは必須ではないが、増粘剤を含む場合、その含有量は好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。
内容物は、好ましくは味付けのために各種の調味料を含む。例えば、食塩、砂糖、しょうゆ、各種畜肉エキス、グルタミン酸やイノシン酸などの旨味成分などである。内容物に含まれる調味料は、より正確には、凍結乾燥によって製造時に配合された調味料から水分および揮発分が除去された調味料成分である。調味料の添加の有無、種類および含有量は、製品の目的に応じて決定する。調味料を添加することは必須ではないが、調味料を添加する場合、その含有量は好ましくは0.1質量%~20質量%である。
内容物は、好ましくは着色料を含む。本実施形態の凍結乾燥卵黄風食品では、卵黄食味成分以外の油脂を多く含むので、卵黄様に黄色を濃くするためである。着色料の含有量は、所望の色合いと着色料の種類に応じて、適当に決定することができる。
内容物は、好ましくは酸化防止剤を含む。酸化防止剤としてはビタミンEなどを用いることができる。内容物が酸化防止剤を含むことは必須ではないが、酸化防止剤を含む場合、その含有量は好ましくは0.1質量%~1.0質量%である。
内容物は、デキストリン等の増量剤を含んでいてもよい。増量剤は味や食感にあまり影響しないので、油脂の一部を増量剤で置き換えることができる。増量剤の含有量は、好ましくは0質量%~20質量%である。増量剤が多すぎると、湯戻し時にとろりとした風合いを損なうからである。
内容物は上記以外の添加剤を含んでいてもよい。
次に、本発明の凍結乾燥卵黄風食品の製造方法の一実施形態を図1のフローに沿って説明する。
ゲル化剤、増粘剤および乳化剤を水と混合して混合液を作製する。このとき、ゲル化剤、増粘剤については、予めアルコールに分散して水と混合する。
得られた混合液を撹拌しながら、油脂を少しずつ加えて乳化させる。この操作は油脂の融点以上の温度で行う。混合液が乳化剤を含む場合は、油脂を加えることで全体が容易に乳化して、O/W型(水中油滴型)の乳液を形成することができる。これにより、以後の工程中に油脂が流れ出すことがない。また、製品を湯戻ししたときに乳液が復元されて、軟らかくとろりとした食感が得られる。混合液が乳化剤を含まない場合でも、撹拌条件等を適切に設定することによって乳化は可能であるが、乳化剤を用いることで乳化が安定する。
得られた乳液(エマルジョン)に粉末乾燥卵黄等の卵黄食味成分、調味料および着色料を加える。卵黄食味成分として液状卵黄を用いる場合は、上記混合液を作製する段階で調味料や着色料とともに混合しておいてもよい。
卵黄食味成分等を加えた乳液を可溶性Ca塩の水溶液と反応させて形成する。製品を卵黄様の玉形状とする場合は、好ましくは、卵黄食味成分等を加えた乳液を可溶性Ca塩の水溶液中に棒状に押し出して、所望の幅で切断する。Ca塩溶液中に押し出す棒の直径や切断する幅は、製品の玉形状に合わせて決定することができる。Ca塩溶液中に乳液が押し出され、切断されると、CaイオンがCa反応性ゲル化剤の繊維同士を結合してネットワークが形成されて水に不溶性のゲルを形成する。これによってゲル化した皮膜に乳液が包まれた玉が形成される。例えばゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを用いた場合は、乳液表面のアルギン酸にCaイオンが吸着してゲル化し、アルギン酸カルシウムの皮膜を形成する。皮膜の内部には、油脂および卵黄食味成分を含む乳液が保持される。内部の乳液には未反応のアルギン酸ナトリウムが残っている。
Ca反応性ゲル化剤は、多価の金属イオンと反応してゲル化するので、例えば塩化マグネシウム溶液に滴下してMgイオンと反応させて造粒することも可能である。しかし、形成される皮膜の強度や製品の味などの点から、Caイオンと反応させてゲル化することが好ましい。可溶性Ca塩溶液としては、塩化カルシウム溶液、乳酸カルシウム溶液などが挙げられるが、好ましくは塩化カルシウム溶液を用いる。形成される皮膜の強度が高く、粒の形状が崩れにくく、ゲル化反応速度も大きいからである。
形成された玉をCa塩溶液から回収して水で洗浄し、ゲル化に寄与しなかった余剰のカルシウム分を除去する。余剰のカルシウムはエグ味の原因となり、製品の味を損なうからである。
玉をトレイ等に入れて加熱殺菌し、庫内温度が-20~-30℃の冷凍庫中で予備凍結し、真空凍結乾燥機で凍結乾燥する。これにより、材料中の水分、アルコール分および揮発成分が除去される。
以上により、Ca反応性ゲル化剤によって形成された皮膜に、油脂および卵黄食味成分を含む内容物が包まれ、玉形状を有する、凍結乾燥卵黄風食品が得られる。
油脂として豚脂、卵黄食味成分として乾燥粉末卵黄を用いて、配合比を様々に変えて凍結乾燥卵黄風食品を作製した。
使用した材料は次のとおりである。
・油脂:豚脂(純正ラード)
・増量剤:デキストリン(松谷化学工業株式会社、パインデックス#2)
・卵黄食味成分:スプレードライ法による乾燥粉末卵黄
・調味料:チキンパウダー
・着色料:パプリカ色素
・乳化剤:ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社 、DKエステルF-110)
・酸化防止剤:ビタミンE(三菱ケミカルフーズ株式会社、P-20)
・ゲル化剤:アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ、IL-6M)
・増粘剤:グァーガム(オルガノフードテック株式会社、オルノーG2)
・分散媒:エタノール
実施例1~7の凍結乾燥卵黄風食品を次の方法により、各種材料の配合比率を変えて作製した。ゲル化剤と増粘剤をエタノールで溶いて、乳化剤、酸化防止剤とともに水と混合して副材料の混合液を調製した。混合液を80℃に保持して撹拌しながら、50~60℃のラードを少しずつ加えて乳化させた。得られた乳液に乾燥粉末卵黄、調味料、着色料を加えて撹拌、混合した。卵黄食味成分を添加した後の乳液を、塩化カルシウム水溶液中に直径約27mmの棒状に押し出して、幅10~15mmで切断して、鶏卵の卵黄と同程度の大きさの玉形状に形成した。形成された玉を回収し、水で洗浄して余剰のカルシウム分を除去した後、トレイに充填して80℃の蒸気で20分間加熱殺菌した。トレイを庫内温度が-25℃の冷凍庫に入れて予備凍結した後、真空度80Paで、玉温度を一定に保ちながら22時間真空凍結乾燥した。
実施例8の凍結乾燥卵黄風食品を、上記と同様に、ただし、ラードの一部を増量剤で置き換えて作製した。増量剤は、上記副材料の混合液に加えて用いた。
表1に各凍結乾燥卵黄風食品について各材料の配合比と評価結果を示す。配合比は、「乾燥前」が秤量に基づく値、「乾燥後」が水およびエタノールを除いて計算した値である。評価結果の「◎」は結果が極めて優れていること、「○」は優れていること、「△」は許容できる範囲であることを意味し、具体的には次のとおりである。
(保形性)
◎:作製過程および湯戻し時を通じて玉形状を維持している
△:作製過程または湯戻し時に玉形状が崩れたものがある
(湯戻し性)
95℃以上の熱湯で湯戻ししたときに、
◎:2分以内に玉形状の中心部まで復元される
○:2分超、3分以内に玉形状の中心部まで復元される
△:3分後では玉形状の中心部に、復元されない部分が残った
(湯戻し後の味・食感等)
◎:味、食感ともに極めて優れている
○:味、食感ともに優れている
△:味または食感に劣る部分がある
Figure 0007114208000002
表1に示した実施例1~8のすべてで湯戻し可能な半熟卵黄風食品が得られた。特に、実施例1ではすべて評価項目において極めて良い結果が得られた。また、実施例8では、実施例1と比較すると湯戻しに時間がかかり、湯戻し後の風味が若干薄かったが、すべて評価項目において極めて良い、または良い結果が得られた。
保形性に関して、実施例1、3、4、6~8では、作製過程および湯戻し時を通じて、玉形状が崩れるものはなかった。実施例2および5では、真空凍結乾燥中に玉形状が崩れるものや湯戻し時に溶け散るものがあった。実施例2および5ではラードの量に対してゲル化剤の量が少ないために、保形性が劣ったと考えられる。湯戻し性に関して、実施例1、2、6、7では熱湯をかけて2分後には玉形状の中心部まで全体が半熟卵黄様の性状に復元されていた。実施例4、8では熱湯をかけて2分後には中心部に復元されていない部分が残ったが、3分後には中心部まで半熟卵黄様の性状が復元できた。実施例3および5では、熱湯をかけても玉形状のままでは3分後でも中心部に復元されていない部分が残った。湯戻し後の風味に関して、実施例1、2、5、8では、とろりとしてコクがある半熟卵黄特有の食感と味がよく再現された。特に、実施例1では、半熟卵黄の味が最もよく再現されていた。実施例3では皮膜が固いことが食感を損ねていた。実施例4では、豚脂が少ないために、とろりとした食感が足りなかった。実施例6では風味が淡泊で、実施例7は食感がざらついた。
本発明の凍結乾燥卵黄風食品は単体で用いる他、凍結乾燥された卵白風食品と組み合わせて用いることができる。例えば、卵黄風食品を卵白風食品に埋め込んでポーチドエッグ風とすることや、卵黄風食品の全体を卵白風食品で覆って半熟ゆで卵様とすることができる。

Claims (9)

  1. アルギン酸アルカリ金属塩から選択される1種または2種以上のゲル化剤と、油脂と、卵黄食味成分とを含む、
    凍結乾燥卵黄風食品。
  2. 卵黄様の玉形状を有する、
    請求項1に記載の凍結乾燥卵黄風食品。
  3. 前記ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムである、
    請求項1または2に記載の凍結乾燥卵黄風食品。
  4. 前記卵黄食味成分が粉末乾燥卵黄である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の凍結乾燥卵黄風食品。
  5. 乳化剤をさらに含む、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の凍結乾燥卵黄風食品。
  6. アルギン酸アルカリ金属塩から選択される1種または2種以上のゲル化剤、油脂、卵黄食味成分および水が混合されたエマルジョンを得る工程と、
    前記エマルジョンを可溶性カルシウム塩溶液と反応させて形成物を得る工程と、
    前記形成物を凍結乾燥する工程と、
    を有する凍結乾燥卵黄風食品の製造方法。
  7. 前記形成物が、前記エマルジョンを前記可溶性カルシウム塩溶液中に棒状に押し出して、切断することにより形成される卵黄様の玉形状物である、
    請求項6に記載の凍結乾燥卵黄風食品の製造方法。
  8. 前記ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムである、
    請求項6または7に記載の凍結乾燥卵黄風食品の製造方法。
  9. 前記卵黄食味成分が粉末乾燥卵黄である、
    請求項6~8のいずれか一項に記載の凍結乾燥卵黄風食品の製造方法。
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