JP2022032492A - 植物性蛋白素材及び食品 - Google Patents

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Kenta Nakanishi
真也 中村
Shinya Nakamura
菜央 井川
Nao IGAWA
純 酒井
Jun Sakai
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Abstract

【課題】加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる植物性蛋白素材及びこれを含む食品を提供する。【解決手段】組織化された植物性蛋白と、上記組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルと、これらを被覆する被膜とを有し、上記被膜の融点が、上記保湿ゲルの融点よりも35℃以上高く、上記保湿ゲルの融点が100℃未満であることを特徴とする植物性蛋白素材。【選択図】なし

Description

本発明は、植物性蛋白素材及び食品に関する。
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白が使用される傾向が強まっている。
植物性蛋白は、加工食品の分野で広く利用されており、日本農林水産省において、「植物性たん白の日本農林規格」によって定義付けされている。この規格において、植物性蛋白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテン等から選ばれるものとされている。そして、植物性蛋白の種類は、粉末状植物性蛋白、ペースト状植物性蛋白、粒状植物性蛋白及び繊維状植物性蛋白と区分されている。
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化された植物性蛋白素材は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織化された植物性蛋白素材が用いられている。
一方、組織化された植物性蛋白素材の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれや消失感が挽肉に比べて劣るという点が挙げられる。このような組織化された蛋白素材の食感改良について様々な研究がなされてきている。
例えば、特許文献1には、植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散しており、水と固体状の油脂との重量比率を2:1~2:6とすることにより、ソフト感及びジューシー感を付与した挽肉もしくは挽肉様加工品が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、食肉構造化タンパク質製品と、食肉様の属性(油脂性、芳香、味覚、色)を付与する作用剤放出システムとを含む食肉用食品が開示されている。
特開2011-139684号公報 米国特許4554166号公報
しかしながら、特許文献1で開示された挽肉もしくは挽肉様加工品では、加熱調理により固体状の油脂の融点を超えると油脂が液化して流出してしまい、加熱調理後にはジューシー感が損なわれるといった問題があった。
また、特許文献2では、タンパク質を含む繊維物質表面上にアルギン酸カルシウムフイルムを形成し、この繊維をゲルで固めた模造海老が開示されている。
しかしながら、このような模造海老を調理しても、天然の海老のジューシー感を再現できなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる植物性蛋白素材及びこれを含む食品を提供することを目的とする。
本発明は、組織化された植物性蛋白と、上記組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルと、これらを被覆する被膜とを有し、上記被膜の融点が、上記保湿ゲルの融点よりも35℃以上高く、上記保湿ゲルの融点が100℃未満であることを特徴とする植物性蛋白素材である。
本発明の植物性蛋白素材では、上記被膜の融点と上記保湿ゲルの融点を所定の範囲に制御することにより、加熱調理をしたとしても、上記保湿ゲルが流出することを抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができる。
また、本発明の植物性蛋白素材では、組織化された植物性蛋白と、組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルとが被膜に被覆された構成を有する(1つの構成の中に組織化された植物性蛋白と、保湿ゲルとを有する)。そのため本発明の植物性蛋白素材を咀嚼するごとに保湿ゲルが放出されるので、ジューシー感の持続性にも優れる。
本明細書において、「組織化された植物性蛋白」とは、植物性蛋白であり、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された粒状植物性蛋白及び/又は繊維状植物性蛋白からなる肉様の組織を有するもののことを意味する。また、「組織化された植物性蛋白」には、「層状」に組織化されたものを含み、「層状」とは、「植物性たん白の日本農林規格」に規定されたものとは若干異なり、2次元的に広がる所定の厚さの組織が複数積層されて層状となった構造のものを意味する。
本発明の植物性蛋白素材は、植物性蛋白素材の全体の重量に対する保湿ゲルの重量を以下の式(I)を満たすように調整してなることが好ましい。
5%<[(M(10)-M(80))/M(10)]×100(%)<80%・・・式(I)
上記保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで上記植物性蛋白素材を破砕した場合の10℃における植物性蛋白素材の重量をM(10)、保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで上記植物性蛋白素材を破砕した場合の80℃における植物性蛋白素材の重量をM(80)とそれぞれ定義する。
保湿ゲルの重量を上記範囲に調整することにより、加熱調理による保湿ゲルが流出することを好適に抑制することができ、加熱調理後におけるジューシー感をより一層維持することができる。
本発明の植物性蛋白素材は、上記保湿ゲルが、油脂を含むことが好ましい。
保湿ゲルが油脂を含むことにより、ジューシー感を好適に付与するとともに、豊かな風味を付与することができる。
本発明の植物性蛋白素材は、上記保湿ゲルに含まれる油脂が、固形分油脂であることが好ましい。
油脂が固形分油脂であることにより、保湿ゲルの融点と固形分油脂の融点との差により、複雑な(奥深い)ジューシー感を付与することができる。
本発明の植物性蛋白素材は、上記油脂が植物性原料からなることが好ましい。
保湿ゲルに含まれる油脂が、植物性原料からなることにより、宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができる。また、飽和脂肪酸や脂質の含有量が少なくなるので、健康の観点からも好ましい。
本発明の植物性蛋白素材は、上記組織化された植物性蛋白が、層状又は繊維状であることが好ましい。
組織化された植物性蛋白が層状又は繊維状であることにより、植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与するとともに、保湿ゲルを好適に内包させることができる。
本発明の植物性蛋白素材は、上記保湿ゲルが、炭水化物を含むことが好ましい。
保湿ゲルが炭水化物を含むことにより、炭水化物が保湿ゲルに含まれる水分を水和することで、保湿性を高められる。また、風味を好適に付与することもできる。
本発明の食品は、本発明の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする。
本発明の食品は、本発明の蛋白素材を含むことにより、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる。
本発明によれば、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる植物性蛋白素材及びこれを含む食品を提供することができる。
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白と、上記組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルと、これらを被覆する被膜とを有し、上記被膜の融点が、上記保湿ゲルの融点よりも35℃以上高く、上記保湿ゲルの融点が100℃未満であることを特徴とする。
本発明の植物性蛋白素材では、以下の効果を得ることができる。
本発明の植物性蛋白素材では、上記被膜の融点と上記保湿ゲルの融点を所定の範囲に制御することにより、加熱調理をしたとしても、上記保湿ゲルが流出することを抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができる。
また、本発明の植物性蛋白素材では、組織化された植物性蛋白と、組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルとが被膜に被覆された構成を有する(1つの構成の中に組織化された植物性蛋白と、保湿ゲルとを有する)。そのため本発明の植物性蛋白素材を咀嚼するごとに保湿ゲルが放出されるので、ジューシー感の持続性にも優れる。
(組織化された植物性蛋白)
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白を有する。
組織化された植物性蛋白は、蛋白質原料を用いて形成されることが好ましい。
蛋白質原料としては、例えば、大豆、エンドウマメ、黄色エンドウ、ソラマメ、緑豆、米、カボチャ、アルファルファ、レンズマメ、ビーン、クローバ、ハッショウマメ、フリホールアカマメ、フリホールクロマメ、アオイマメ、ひよこ豆、小麦、トウモロコシ、キャノーラ、ハギ属、甘草、ハウチワマメ、メスキート、イナゴマメ、ピーナッツ、タマリンド、フジ属、カシア属、ガルバンゾ、コロハ、及び、グリーンピース等の植物に由来する蛋白が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
蛋白質原料としては、脱脂されたものであっても良いし、粉末状のものであってもよく、精製蛋白、濃縮蛋白であってもよいし、それらをペースト状にしたものであってもよい。
組織化された植物性蛋白は、蛋白質原料と、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等とを複合して形成することもできる。
炭水化物としては糖類や食物繊維が挙げられ、具体的には、果糖、ブドウ糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、水飴、カップリングシュガー、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖,還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール、還元水飴等)、デキストリン、及び、澱粉類(生澱粉、加工澱粉等)が挙げられる。
また、食物繊維としては、寒天、アルギン酸塩、大豆レシチン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、結晶セルロース、増粘多糖類(カラギーナン、カシアガム、セルロースガム、カードランガム、グアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、こんにゃく、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンチンガム)等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
脂質としては、例えば、アマニ油、エゴマ油、シソ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、エッセンシャルオイル、アーモンド油、アロエベラ油、キョウニン油、アボカド油、バオバブ油、キンセンカ油、キャノーラ油、ツキミソウ油、グレープシードオイル、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカダミア油、天然油、ニーム油、非水素化油、部分的水素化油、ラッカセイ油、合成油、植物油、ω-脂肪酸(例えば、アラキドン酸、ω-3-脂肪酸、ω-6-脂肪酸、ω-7-脂肪酸、ω-9-脂肪酸)、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、及び、魚油等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
脂質としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
栄養分としては、例えば、ビタミン類、ミネラル(ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、カルシウム、及び、亜鉛等)、ポリフェノール類やカロテノイド類やサポニン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
調味成分としては、例えば、ジンジャーエキス、ニンジンエキス、トマトエキス等の野菜エキス、エビエキス、カニエキス、牡蠣エキス、ホタテエキス等の魚介エキスもしくは魚介風味の植物性エキス、ビーフエキス、ボークエキス、チキンエキス等の畜肉系エキスもしくは畜肉風味の植物性エキス、酵母エキス、砂糖、塩、お酢、醤油、味噌、みりん、コンソメ、グルタミン酸ソーダ等のアミノ酸調味成分、こしょう等の香辛料、及び、香料(草根、木皮、花、果実、果皮又はその他動植物を素材として調製された天然香料や、コーヒー由来、紅茶由来、緑茶由来、ウーロン茶由来、ココア由来、ハーブ由来、スパイス由来、フルーツ由来の合成香料等)等の調味成分が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
従来の作用剤放出システムとしてろう分子等を閉じ込めたカプセルを使用した場合には、食肉構造化タンパク質製品(組織化された植物性蛋白)とカプセルとが別々の構成として存在するために、作用剤放出システムが局在化して味が不均一になるといった問題があった。被膜により被覆された領域内(組織化された植物性蛋白)に調味成分が含まれることにより、調味成分が局在化せず、カプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
また、調味成分としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
組織化された植物性蛋白を、蛋白質原料と、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等とを複合して形成する場合、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等は、蛋白質原料100重量部に対して、0.1~500重量部含むことが好ましく、50~300重量部含むことがより好ましい。
組織化された植物性蛋白は、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤等を含んでもよい。
組織化された植物性蛋白は、その形状は特に限定されないが、粒状、層状、繊維状等、いかなる形状であっても用いることができる。
なかでも、層状又は繊維状であることが好ましい。植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与するとともに、後述する保湿ゲルを好適に内包させることができるからである。
組織化された植物性蛋白が「層状」である場合、「植物性たん白の日本農林規格」に規定されたものとは若干異なり、2次元的に広がる所定の厚さの組織が複数積層されて層状となった構造を有する。
この場合、構成する層状植物性蛋白の厚みが0.01μm~1000μmであることが好ましく、外力により層状方向に引き裂くことができる構造であることが好ましい。
なお、組織化された植物性蛋白が層状である場合、厚みとは、乾燥状態における層状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した最も短い部分を計測して得られた値の平均値を意味し、積層数は、層状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した平均値を意味する。
組織化された植物性蛋白が「繊維状」である場合、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された繊維状植物性蛋白からなる肉様の組織を有する。
この場合、平均繊維径が0.01μm~1000μmであることが好ましく、外力により線維方向に引き裂くことができる構造であることが好ましい。
また、アスペクト比が、10以上であることが好ましい。アスペクト比は、繊維長/平均繊維径により計算される。
なお、組織化された植物性蛋白が繊維状である場合、平均繊維径及びアスペクト比は、乾燥状態における繊維状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した平均値を意味する。
組織化された植物性蛋白は、吸水率が200%以上、600%未満であることが好ましい。
後述する保湿ゲルを好適に内包させることができ、ジューシー感を好適に付与することができるからである。
吸水率の測定方法としては、例えば、組織化された植物性蛋白の10gを試料として200mLビーカーに入れ、そこに98℃の水を200g加えて5分間静置する。その後、篩を用いて5分間水切りを行った後、湯戻し後の試料の重量を測定し、下記数式により吸水率を算出することができる。
吸水率(%)=(湯戻し後の試料の重量/試料10g中の固形分重量)×100
組織化された植物性蛋白は、植物性蛋白素材の全体の重量に対して、5~80重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
組織化された植物性蛋白の重量が上記範囲であることにより、植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与するとともに、保湿ゲルを好適に内包させることができる。
(保湿ゲル)
本発明の植物性蛋白素材は、保湿ゲルを有する。
保湿ゲルは、融点が100℃未満である。
そのため、調理時に加熱することにより保湿ゲルが融解されるため、咀嚼により被膜が崩壊すると融解した保湿ゲルが流出するのでジューシー感に優れる。
保湿ゲルの融点は、80℃未満であることが好ましく、60℃未満であることがより好ましい。
保湿ゲルとしては、例えば、カラギーナン(κタイプ、ιタイプ、λタイプ)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースガム、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸エステル、グアガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、カードラン、プルラン、コラーゲン、ゼラチン、アミノ酸各種及びそれらのペプチド、寒天、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、昆布酸、大豆蛋白、大豆レシチン、及び、結晶セルロース等のゲル化剤を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、保湿ゲルとしては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
保湿ゲルにおけるゲル化剤の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、0.3~20重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることがより好ましい。
保湿ゲルは、水を含有することが好ましい。
水の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、40~99.7重量%であることが好ましく、80~99重量%であることがより好ましい。
保湿ゲルは、炭水化物を含むことが好ましい。
保湿ゲルが炭水化物を含むことにより、炭水化物が保湿ゲルに含まれる水分を水和することで、保湿性を高められる。また、風味を好適に付与することもできるからである。
炭水化物としては、上述した組織化された植物性蛋白で記載したものや、ゲル化剤として記載したものを適宜選択して用いることができる。
保湿ゲルは、油脂を含むことができる。
保湿ゲルが油脂を含むことにより、ジューシー感を好適に付与するとともに、豊かな風味を付与することができるからである。
油脂としては、上述した組織化された植物性蛋白で脂質として記載したものを適宜選択して用いることができる。
油脂は、固形分油脂であることが好ましい。
油脂が固形分油脂であることにより、保湿ゲルの融点と固形分油脂の融点との差により、複雑な(奥深い)ジューシー感を付与することができるからである。
固形分油脂の融点は、60℃以下であることが好ましい。
油脂は、乳化剤で乳化させて含有させることもできる。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤を用いることができ、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、糖脂質、オリゴペプチド、リポペプチド、リン脂質、及び、サポニン等が挙げられる。
油脂は、植物性原料からなることが好ましい。
保湿ゲルに含まれる油脂が、植物性原料からなることにより、宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。また、飽和脂肪酸や脂質の含有量が少なくなるので、健康の観点からも好ましい。
油脂の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、0.1~30重量%であることが好ましく、1~20重量%であることがより好ましい。
油脂の含有量が上記範囲であることにより、植物性蛋白素材にジューシー感を好適に付与できるからである。
保湿ゲルは、調味成分及び栄養分を含むことが好ましい。
調味成分、栄養分としては、上述した組織化された植物性蛋白で記載したものを適宜選択して用いることができる。
保湿ゲルに調味成分が含まれることにより、調味成分が局在化せず、従来のカプセル内に調味材を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
また、調味成分としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
保湿ゲルにおける調味成分の含有量は、付与したい味や風味に応じて適宜調整すればよい。
保湿ゲルは、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤、増粘剤、結着剤等を添加してもよい。
保湿ゲルは、植物性蛋白素材の全体の重量に対する保湿ゲルの重量が、以下の式(I)を満たすように調整してなることが好ましい。
5%<[(M(10)-M(80))/M(10)]×100(%)<80%・・・式(I)
保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで植物性蛋白素材を破砕した場合の10℃における植物性蛋白素材の重量をM(10)、保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで植物性蛋白素材を破砕した場合の80℃における植物性蛋白素材の重量をM(80)とそれぞれ定義する。
保湿ゲルの重量を上記範囲に調整することにより、加熱調理による保湿ゲルが流出することを好適に抑制することができ、加熱調理後におけるジューシー感をより一層維持することができるからである。
M(10)及びM(80)の測定は下記の方法で行うことができる。
10℃の条件で、植物性蛋白素材をフードプロセッサー等にて粉砕した後、粉砕した植物性蛋白素材10gを測り取り、これをM(10)とする。
次いで、粉砕した植物性蛋白素材10gを吸湿性素材(スポンジ生地等)上に静置して100gの荷重を掛け、80℃に加熱したオーブン内にて10分間放置した後、吸湿性素材の重量を測定し、吸湿性素材の重量差(粉砕した植物性蛋白素材を静置する前の吸湿性素材の重量と、オーブン内にて10分間放置した後の重量差)からM(80)を求める。
(被膜)
本発明の植物性蛋白素材は、被膜を有する。
被膜の融点は、保湿ゲルの融点よりも35℃以上高い。
被膜の融点を所定の範囲に制御することにより、加熱調理をしたとしても、保湿ゲルが流出することを抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができる。
被膜の融点は、保湿ゲルの融点よりも40℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。
被膜としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、寒天、こんにゃく、カラギーナン(κタイプ、ιタイプ、λタイプ)、ジェランガム、ペクチン、及び、キサンタンガム等の炭水化物を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、カルボキシメチルセルロースナトリウム、タラガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、カードラン、プルラン、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、コラーゲン、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、昆布酸、大豆蛋白、セルロースガム、ヒドロキシプロピルセルロース、大豆レシチン及び、結晶セルロース等のゲル化剤を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、被膜としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
これらの中でも、アルギン酸ナトリウム、ペクチン等の金属イオンにより凝固する成分が好ましい。
金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウム、アルミニウムイオン等が挙げられる。
カルシウムイオンを供給するカルシウム塩として、例えば乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム等を、マグネシウムイオンを供給するマグネシウム塩として、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を、アルミニウム塩として、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム等を例示できる。
被膜の厚みとしては、0.01μm~1000μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましい。
被膜の厚みが上記範囲であることにより、加熱調理をしたとしても、保湿ゲルが流出することを好適に抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができる。
なお、マイクロスコープで観察し、最も厚みが小さくなる部分を計測して得られた値を被膜の厚みとする。
(植物性蛋白素材)
本発明の植物性蛋白素材は、上述した構成を有するため、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる。
本発明の植物性蛋白素材は、レオメーターにより測定した25℃における硬さが200~3000kN/mであることが好ましい。
なお、レオメーターにより測定した硬さは、直径3mmの円柱のプランジャーを試料厚さの95%まで押し込んだ時に、プランジャーが受ける圧力として定める。
本発明の植物性蛋白素材は、保水率が40~90%であることが好ましく、50~85%であることがより好ましい。
保水率は、105℃で4時間乾燥した前後の重量差より求めることができる。
(植物性蛋白素材の製造方法)
本発明の植物性蛋白素材の製造方法としては特に限定されないが、例えば、組織化された植物性蛋白を作製し、組織化された植物性蛋白に保湿ゲルを内包させた後、被膜を形成して植物性蛋白素材を製造する方法等が挙げられる。
組織化された植物性蛋白の作製方法としては特に限定されないが、例えば、蛋白質原料と、必要に応じて、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等をエクストルーダー(押出成型機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった蛋白質原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出し、組織を所望な程度に膨化させ、次いで細断もしくは破砕、乾燥・冷却、整粒工程を経ることにより、組織化された植物性蛋白を作製することができる。
加圧加熱処理は、公知のエクストルーダーを用い、公知の方法に従って行なうことができる。混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有するエクストルーダーを用いることが望ましい。
エクストルーダーの加熱条件は、80~150℃が望ましい。また、整粒方法としてはふるいや風力分級などの方法を採用することができる。さらに、パワーミルのように破砕とふるいによる整粒を同時に行う方法でもよい。吸水率は、原料組成、エクストルーダーの加熱温度により調整することができる。
保湿ゲルの作製方法としては特に限定されないが、例えば、沸騰水中にゲル化剤を加えて保湿ゲル水溶液を作製し、この保湿ゲル水溶液中に組織化された植物性蛋白を加えた後、静置をして組織化された植物性蛋白に、保湿ゲル水溶液を内包させる。その後、保湿ゲル水溶液を内包する組織化された植物性蛋白を取り出し、冷却を行うことにより保湿ゲル水溶液をゲル化させて保湿ゲルを形成することができる。
保湿ゲル水溶液において、ゲル化剤は、保湿ゲル水溶液の重量に対して、0.1~50重量%であることが好ましい。
被膜の形成方法としては、金属塩を添加して金属イオンを含む水溶液に、上述した保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を浸漬させる。その後、金属イオンを含む水溶液に炭水化物を溶解させ、金属イオンと炭水化物とを接触させて凝固させることにより被膜を形成することができる。これにより植物性蛋白素材を製造することができる。
金属イオンを含む水溶液は、結着剤を含有してもよい。
結着剤としては、例えば、トランスグルタミナーゼ、でんぷん等を使用することができる。
金属イオンを含む水溶液には、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤等を添加してもよい。
(食品及びその製法)
本発明の食品は、本発明の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする。
そのため、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができ、かつ、ジューシー感の持続性にも優れる。
本発明の食品は、例えば、本発明の植物性蛋白素材を円柱状、楕円柱状等の凹型成形治具に入れ、凸型成形治具を用いて加圧して成形して食品成形体とすることにより得られる。成形治具の形状は円柱状や楕円柱状に限定されず、食品に応じて選択できる。また、加圧成形は、凹型、凸型治具を用いた一軸プレス以外に、多軸プレス、等方プレス(冷間静水圧プレス)等を使用してもよい。さらに、成形した後、エビ、カニ、魚、肉、麺類等各食品によく見られる形状に切削加工することもできる。
また、本発明の植物性蛋白素材を成形した食品成形体をゲル化剤溶液や被膜を形成するための溶液中に浸漬して食品成形体中にゲル化剤を浸透させたり、食品成形体の表面に被膜を形成してもよい。例えば、本発明の植物性蛋白素材の被膜形成のためにアルギン酸ナトリウム水溶液及びカルシウム塩水溶液を使用した場合には、当該植物性蛋白素材を含む食品成形体を塩化カルシウムや乳酸カルシウム等のカルシウム塩水溶液に浸漬して被膜の凝固反応を進行させることで、食品成形体が加熱調理中に崩れないように植物性蛋白素材同士の結着性を改善することができる。
さらに、本発明の植物性蛋白素材にデンプン、トランスグルタミナーゼ等の結着剤や市販の植物性蛋白粒子、着色剤、調味成分等を加えて、成形して食品成形体とすることもできる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
(実施例1)
[組織化された植物性蛋白の作製]
脱脂大豆40重量部、粉末状大豆蛋白45重量部、小麦蛋白15重量部、コーンスターチ5重量部からなる主原料粉を混合し二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し120重量部の水を供給しながらダイヘッド温度140℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、φ25mmの開口を持つ冷却ダイから押出して組織化された植物性蛋白を作製した。
組織化された植物性蛋白はフードプロセッサーにより粉砕し、ミンチ状の組織化された植物性蛋白を作製した。組織化された植物性蛋白は85℃の恒温器にて乾燥を行い、乾燥体を得た。
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にカッパー型カラギーナン(WR-78-J)を2重量%、カツオだしを添加し攪拌し、保湿ゲル水溶液を得た。
組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、組織化された植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を得た。
[被膜の形成]
5%の塩化カルシウムを含む水溶液に、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を浸漬させた後、2重量%の濃度のペクチン(IL-6M)に60℃で10秒程度浸漬させ、ペクチンを凝固させて被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(カラギーナンゲル)の融点は60℃、被膜(ペクチンゲル)の融点は120℃以上であり、両者の融点差は60℃以上であった。
(実施例2)
脱脂大豆85重量部、粉末状大豆蛋白15重量部からなる主原料粉を混合し、二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し20重量部の水を供給しながらダイヘッド温度120℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、厚み1mm幅15mmのスリットダイから押出してシート状の組織化された植物性蛋白を作製した。シート状の組織化された植物性蛋白は出口にて押出方向に対して垂直方向にカットし、平均幅5mmの棒状の組織化された植物性蛋白を作製した。
組織化された植物性蛋白は85℃の恒温器にて乾燥を行い、乾燥体を得た。
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にカッパー型カラギーナン(WR-78-J)を1重量%、キサンタンガム(SATIAKINE CX90)1重量%、サラダ油15重量%、コンソメエキスを添加し攪拌し、保湿ゲル水溶液を得た。
組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、組織化された植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する植物性蛋白を得た。
[被膜の形成]
5%の硫酸カルシウムを含む水溶液に、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を浸漬させた後、2重量%の濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(IL-6M)に60℃で10秒程度浸漬させ、アルギン酸ナトリウムを凝固させて被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(カラギーナン/キサンタンガム)の融点は40℃、被膜(アルギン酸ゲル)の融点は120℃以上であり、両者の融点差は80℃以上であった。
(実施例3)
[組織化された植物性蛋白の作製]
脱脂大豆99重量部、ポリリン酸塩1重量部からなる主原料粉を混合し二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し40重量部の水を供給しながらダイヘッド温度120℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、8mm角の開口を持つダイから押出して組織化された植物性蛋白を作製した。
組織化された植物性蛋白はフードプロセッサーにより粉砕し、ミンチ状の組織化された植物性蛋白を作製した。組織化された植物性蛋白は85℃の恒温器にて乾燥を行い、乾燥体を得た。
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にカッパー型カラギーナン(WR-78-J)を1重量%、寒天1重量%、サラダ油15重量%、コンソメエキスを添加し攪拌し、保湿ゲル水溶液を得た。組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、組織化された植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を得た。
[被膜の形成]
被膜は実施例2と同様の条件で作成した。
保湿ゲル(カラギーナン/寒天)の融点は65℃、被膜(アルギン酸ゲル)の融点は120℃以上であり、両者の融点差は55℃以上であった。
(実施例4)
[組織化された植物性蛋白の作製]
分離大豆タンパク85重量部、小麦タンパク10重量部、コーンスターチ5重量部からなる主原料粉を混合し二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し20重量部の水を供給しながら出口ダイヘッド温度135℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、φ2mmの開口を持つダイから押出して組織化された植物性蛋白を作製した。
組織化された植物性蛋白はフードプロセッサーにより粉砕し、ミンチ状の組織化された植物性蛋白を作製した。組織化された植物性蛋白は85℃の恒温器にて乾燥を行い、乾燥体を得た。
保湿ゲルと被膜の形成は実施例3と同様の条件で行い、植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(カラギーナン/寒天)の融点は65℃、被膜(アルギン酸ゲル)の融点は120℃以上であり、両者の融点差は55℃以上であった。
(比較例1)
実施例2と同様の条件で作成した組織化された植物性蛋白を用意する。
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にアルギン酸ナトリウム2重量、サラダ油15重量%、コンソメエキスを添加し攪拌し、保湿ゲル水溶液を得た。
組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を得た。
5%の硫酸カルシウムを含む水溶液に、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を浸漬させた後、2重量%の濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(IL-6M)に60℃でカルシウムイオンが十分に拡散するように一晩浸漬させ、アルギン酸ナトリウムを凝固させて被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(アルギン酸ゲル)の融点は120℃以上、被膜(アルギン酸ゲル)の融点は120℃以上であり、両者の融点差はなかった。
(比較例2)
保湿ゲルの作製においてカッパー型カラギーナンに代えてHAジェランガムを2重量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして植物性蛋白素材及び保湿ゲルを作製した。
[被膜の形成]
保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を2重量%の濃度の寒天に60℃で10秒程度浸漬させ、その後冷蔵庫で冷却して寒天を凝固させて被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(HAジェランガムゲル)の融点は90℃、被膜(寒天)の融点は95℃であり、両者の融点差は5℃であった。
(比較例3)
保湿ゲルの作製においてカッパー型カラギーナン2重量%溶液に代えて寒天3重量%溶液を使用し、被膜の形成においてペクチンに代えてグルコマンナンを使用したこと以外は実施例1と同様にして植物性蛋白素材を作製した。
保湿ゲル(寒天)の融点は103℃、被膜(グルコマンナンゲル)の融点は147℃であり、両者の融点差は44℃であった。
(比較例4)
実施例1と同様にして、組織化された植物性蛋白及び保湿ゲルを作製し、これを植物性蛋白素材とした(被膜を形成しなかった)。
[肉様食品の作製]
実施例1~4、比較例1、3、4で得られた植物蛋白素材を個別にそれぞれ円柱状の凹型の容器に入れて上から凸型の治具で加圧しながら成形品(食品成形体)を作り、成形品をさらに10%の塩化カルシウム溶液に含浸させることで被膜成分を完全に凝固させ、それぞれの肉様食品を作製した。
比較例2で得られた植物蛋白素材を円柱状の凹型の容器に入れて凸型の治具で上から加圧しながら成形品(食品成形体)を作り、成形品をさらに冷却させることで被膜成分を完全に凝固させ、肉様食品を作製した。
<評価結果>
(硬さの測定)
作製した植物性蛋白素材の硬さについてレオメーターにて評価した。なお、測定に際してはプランジャーの押し込み面(径3mm)よりも十分大きな素材を試料とした。
直径3mmのプランジャーを備えるレオメーター(SUN RHEO METER CR-100)を用い、試料厚さの95%まで押し込んだ時に、プランジャーが受ける圧力を測定し、その値を硬さ(kN/m)とした。なお、測定温度は25℃とした。
(保湿ゲルの重量変化)
作製した植物性蛋白素材を10℃の条件でフードプロセッサーにて破砕した後、粉砕した植物性蛋白素材10gを測り取り、これをM(10)とした。
次いで、粉砕した植物性蛋白素材10gを吸湿性素材(スポンジ生地等)上に静置して100gの荷重を掛け、80℃に加熱したオーブン内にて10分間放置した後、吸湿性素材の重量を測定し、吸湿性素材の重量差(粉砕した植物性蛋白素材を静置する前の吸湿性素材の重量と、オーブン内にて10分間放置した後の重量差)からM(80)を求めた。その後、得られた重量M(10)及び重量M(80)を用いて、[(M(10)-M(80))/M(10)]×100(%)を算出した((%)で表記)。
(官能評価)
肉様食品を180℃で加熱後、ジューシーさを、任意の5名の評価者の官能評価の平均点により評価した。
<ジューシーさ>
5点 ジューシーさが持続する
4点 ややジューシーな食感
3点 ややパサパサした食感
2点 パサパサした食感
1点 粉っぽい食感
Figure 2022032492000001
組織化された植物性蛋白と、組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルと、これらを被覆する被膜とを有し、保湿ゲル及び被膜の融点が所定の範囲であった実施例の植物性蛋白素材を用いた肉様食品では、ジューシー感の持続性に優れることが確認された。また、実施例の植物性蛋白素材は、保湿ゲルよりも十分に融点が高い被膜により被覆されているため、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができると考えられる。
一方で、比較例1及び3の植物性蛋白素材を用いた肉様食品は、保湿ゲルの融点が高すぎるために、加熱後においても保湿ゲルがゲル化した状態であるため、ジューシー感に劣っていた。
また、比較例2の植物性蛋白素材を用いた肉様食品においても、保湿ゲルと被膜の融点の差が小さすぎるので、加熱後においてもゲル化した状態の保湿ゲルが残っているため、ジューシー感に劣っていた。
また、比較例4の植物性蛋白素材を用いた肉様食品は、被膜を有さないために、咀嚼とともに保湿ゲルが一度に流出してしまうため、ジューシー感が持続性せず、パサパサした食感であった。比較例4の植物性蛋白素材では、加熱調理をすると、被膜を有さないので保湿ゲルが溶解して流出してしまうため、加熱調理後のジューシー感に劣ると考えられる。

Claims (8)

  1. 組織化された植物性蛋白と、前記組織化された植物性蛋白に内包される保湿ゲルと、これらを被覆する被膜とを有し、
    前記被膜の融点が、前記保湿ゲルの融点よりも35℃以上高く、
    前記保湿ゲルの融点が100℃未満である
    ことを特徴とする植物性蛋白素材。
  2. 前記植物性蛋白素材の全体の重量に対する前記保湿ゲルの重量を以下の式(I)を満たすように調整してなる請求項1に記載の植物性蛋白素材。
    5%<[(M(10)-M(80))/M(10)]×100(%)<80%・・・式(I)
    前記保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで前記植物性蛋白素材を破砕した場合の10℃における植物性蛋白素材の重量をM(10)、前記保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで前記植物性蛋白素材を破砕した場合の80℃における植物性蛋白素材の重量をM(80)とそれぞれ定義する。
  3. 前記保湿ゲルが、油脂を含む請求項1又は2に記載の植物性蛋白素材。
  4. 前記保湿ゲルに含まれる油脂が、固形分油脂である請求項3に記載の植物性蛋白素材。
  5. 前記油脂が、植物性原料からなる請求項3又は4のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材。
  6. 前記組織化された植物性蛋白が、層状又は繊維状である請求項1~5のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材。
  7. 前記保湿ゲルが、炭水化物を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする食品。

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WO2023171304A1 (ja) * 2022-03-11 2023-09-14 富士フイルム株式会社 タンパク質食品素材の製造方法及びタンパク質食品素材

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