以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状等は、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面(インク吐出部)8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、記録ヘッド8を図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
図5(a)~(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
図6(a)~(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、図4(c)以後の搬送工程について説明する。
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
その後の搬送経路は、図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
図8(a)はメンテナンスユニット16が待機ポジションにある状態を示す斜視図であり、図8(b)はメンテナンスユニット16がメンテナンスポジションにある状態を示す斜視図である。図8(a)は図1に対応し、図8(b)は図7に対応している。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、メンテナンスユニット16は図8(a)に示す待機ポジションにあり、キャップユニット10は鉛直方向上方に移動しており、ワイピングユニット17はメンテナンスユニット16の内部に収納されている。キャップユニット10はy方向に延在する箱形のキャップ部材10aを有し、これを記録ヘッド8の吐出口面8aに密着させることにより、吐出口からのインクの蒸発を抑制することができる。また、キャップユニット10は、キャップ部材10aに予備吐出等で吐出されたインクを回収し、回収したインクを不図示の吸引ポンプに吸引させる機能も備えている。キャップユニット10により回収されたインクは、メンテナンスカートリッジ(廃インク容器)16bに収容される。メンテナンスカートリッジ16bで収容されるインク量が所定量を上回ったと判断されると、操作パネル104などを介してユーザに交換作業を促す。
一方、図8(b)に示すメンテナンスポジションにおいて、キャップユニット10は鉛直方向下方に移動しており、ワイピングユニット17がメンテナンスユニット16から引き出されている。ワイピングユニット17は、ブレードワイパユニット171とバキュームワイパユニット172の2つのワイパユニットを備えている。
ブレードワイパユニット171には、吐出口面8aをx方向に沿ってワイピングするためのブレードワイパ171aが吐出口の配列領域に相当する長さだけy方向に配されている。ブレードワイパユニット171を用いてワイピング動作を行う際、ワイピングユニット17は、記録ヘッド8がブレードワイパ171aに当接可能な高さに位置決めされた状態で、ブレードワイパユニット171をx方向に移動する。この移動により、吐出口面8aに付着するインクなどはブレードワイパ171aに拭き取られる。
ブレードワイパ171aが収納される際のメンテナンスユニット16の入り口には、ブレードワイパ171aに付着したインクを除去するとともにブレードワイパ171aにウェット液を付与するためのウェットワイパクリーナ16aが配されている。ブレードワイパ171aは、メンテナンスユニット16に収納される度にウェットワイパクリーナ16aによって付着物が除去されウェット液が塗布される。そして、次に吐出口面8aをワイピングしたときにウェット液を吐出口面8aに転写し、吐出口面8aとブレードワイパ171a間の滑り性を向上させている。
一方、バキュームワイパユニット172は、y方向に延在する開口部を有する平板172aと、開口部内をy方向に移動可能なキャリッジ172bと、キャリッジ172bに搭載されたバキュームワイパ172cとを有する。バキュームワイパ172cは、キャリッジ172bの移動に伴って吐出口面8aをy方向にワイピング可能に配されている。バキュームワイパ172cの先端には、不図示の吸引ポンプに接続された吸引口が形成されている。このため、吸引ポンプを作動させながらキャリッジ172bをy方向に移動すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに付着したインク等は、バキュームワイパ172cによって拭き寄せられながら吸引口に吸い込まれる。この際、平板172aと開口部の両端に設けられた位置決めピン172dは、バキュームワイパ172cに対する吐出口面8aの位置合わせに利用される。
<記録装置のプリント部と記録ヘッドの周辺構造について>
次に、本実施形態において、記録装置1のプリント部2と、記録ヘッド8の周辺構造について説明する。
図9(a)は、フロントドアが閉じられた状態の記録装置の斜視図である。図9(b)は、フロントドアが開かれた状態の記録装置の斜視図である。
記録装置1は、筐体4のプリント部2のフロント(正面)側にて、排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆うフロントドア21を備える。フロントドア21および筐体4には、ロック機構22のドアラッチ22aおよびドアフック22bがそれぞれ設けられている。ロック機構22は、フロントドア21が閉じられた状態の閉位置において、所定の動作指示を受け付けたときのみドアラッチ22aとドアフック22bとが係合したフロントドア21のロック状態を解除する構造となっている。所定の動作指示として、フロントドア21を開ける作業(フロントドアオープン作業)を伴う機器の交換などのメンテナンス動作指示が挙げられる。メンテナンス動作指示は、例えば、記録ヘッド8の交換、インクタンクユニット14の交換、およびメンテナンスカートリッジ16bの交換などである。フロントドア21のロック状態が解除されてロック解除状態となると、フロントドア21は開閉可能な状態となる。これにより、プリント部2に配置されたインクタンクユニット14、メンテナンスユニット16のメンテナンスカートリッジ16bなどに対して筐体4のフロント側からユーザなどがアクセス可能となる。メンテナンス動作指示などの所定の動作指示以外の動作指示を受け付けたときには、フロントドア21のロック状態が解除されず、フロントドア21は、プリント部2のフロント側を覆い、閉じられた状態である閉位置において開閉不可能な状態で維持される。そのため、プリント部2に配置された記録ヘッド8、インクタンクユニット14、メンテナンスユニット16のメンテナンスカートリッジ16bなどに対して筐体4のフロント側からユーザなどがアクセス不可能な状態で維持される。すなわち、ロック機構22は、フロントドア21を閉位置に固定するロック状態とロック解除状態とで切替可能に構成されている。なお、記録ヘッド8に対して筐体4のフロント側からのユーザなどのアクセスは、詳細につき後述する通り、所定の条件を満たし、かつ、所定の操作が行われるまでは、不可能な状態で維持される。
また、筐体4のプリント部2のフロント側には、フロントドア21の裏面側に設けられた突起部26と係合するインターロック機構25が設けられている。インターロック機構25は、ユーザなどによりフロントドア21が閉位置から開かれた位置にあり突起部26との係合が解除された状態であると、後述のホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給を遮断するように構成されている。ホルダ移動装置は、ヘッドホルダ31(図10参照)を移動させる。インターロック機構25は、フロントドア21が閉じられ閉位置にあり突起部26と係合した状態であると、ホルダ移動装置及びキャップユニット10へ電力が供給されるように構成されている。このような遮断動作を行う遮断装置であるインターロック機構25を備えることで、フロントドア21が開かれ突起部26との係合が解除されると、ホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給を遮断することになる。これにより、ホルダ移動装置によるヘッドホルダ31の移動動作の機能と、キャップユニット10によるインクの吸引動作の機能とが無効にされた状態となり、フロントドア21で覆われていた筐体4のフロント側は、ユーザなどが作業し易い環境となる。ホルダ移動装置によるヘッドホルダ31の移動動作の機能と、キャップユニット10によるインクの吸引動作の機能とを無効にする機能禁止のための機構は、インターロック機構に限定されるものではない。例えば、フロントドア21の開閉状態を検知した信号に基づいて、ホルダ移動装置やキャップユニット10の動作を切り替える回路を用いることも可能である。
図10(a)は、ヘッドホルダの斜視図である。図10(b)は、ヘッドホルダから記録ヘッドを引き出した状態の斜視図である。図10(c)は、ヘッドホルダドアの斜視図である。図10(d)は、ヘッドホルダの部分拡大図である。
記録ヘッド8は、y方向に延在する箱形のヘッドホルダ31に搭載される。ヘッドホルダ31には、y方向にて一方の端部に開口部31aが設けられており、ヘッドホルダ31は、開口部31aを通じて記録ヘッド8を着脱可能な構造となっている。すなわち、ヘッドホルダ31は、ユーザが記録ヘッド8をy方向にスライドさせて開口部31aを通じてヘッドホルダ31内部に押し込んで搭載したり、内部から開口部31aを通じて引き出して取り外したりすることが可能な構造となっている。ヘッドホルダ31の開口部31a周囲の枠部31bには、回転軸32aを中心に回転可能なヘッドホルダドア32が設けられている。すなわち、ヘッドホルダ31には、記録ヘッド8の着脱時に開閉可能なヘッドホルダドア32が設けられている。ヘッドホルダドア32には、ロックプレート32bと、ロックプレート32bのスライド操作を行うためのヘッドホルダドアロック解除スライドレバー(以下、スライドレバーと記す)32cとが設けられている。ヘッドホルダドア32が閉じられた状態の閉位置において、スライドレバー32cの操作により、ロックプレート32bの先端部がヘッドホルダドア32の外側に突出してヘッドホルダ31の枠部31bに係合する。これにより、ヘッドホルダドア32がロックされた状態となる。スライドレバー32cの操作により、ロックプレート32bをスライドさせてロックプレート32bの先端部をヘッドホルダドア32の外側へ突出しない位置に位置づけることで、ヘッドホルダドア32のロックが解除された状態となる。なお、ヘッドホルダドア32が開閉状態は、不図示のセンサなどにより検知可能となっている。
ヘッドホルダ31の開口部31a近傍には、記録ヘッド8側と筐体4側とで信号を送受信可能なヘッド信号ケーブル33が配置されている。なお、ヘッド信号ケーブル33は、ユーザなどの作業により記録ヘッド8側と接続および接続解除、かつ移動可能となっており、記録ヘッド8の交換作業時には、記録ヘッド8側との接続が解除される。ヘッドホルダ31の開口部31aに対しy方向で反対側となる他端部近傍には、インク供給チューブ34の一方の端部が接続されるインク供給ジョイント部35が配置されている。インク供給ジョイント部35は、ジョイント駆動ユニット38の作動により、ヘッドホルダ31側との接続と切断が行われるように構成されている。なお、インク供給チューブ34の他方の端部は、筐体4のインク供給経路に接続されている。ヘッドホルダ31内にてインク供給ジョイント部35近傍には、搭載された記録ヘッド8側に接続される電源コネクタ36が配置されている。電源コネクタ36は、ヘッドホルダ31の外側に設けられた電源供給ケーブル37を介して筐体4の電源供給回路と接続している。
なお、ヘッドホルダ31は、不図示のホルダ移動装置により、記録位置、待機位置、メンテナンス位置、キャップクローズ位置、および後述する記録ヘッド交換位置(第一の位置)などの位置に移動可能となっている。メンテナンスカートリッジ16bは、キャップユニット10と接続され、筐体4(メンテナンスユニット16)に対して着脱可能なインク容器である。本実施形態では、記録ヘッド8が上述のメンテナンス位置にあるとき、記録ヘッド8から吐出されるインクを上述の吸引ポンプ(インク移動手段)によりキャップユニット10からメンテナンスカートリッジ16bに移動させるように構成されている。なお、メンテナンスカートリッジ16bの筐体4への着脱状態は、不図示のセンサなどにより検知可能となっている。
<記録ヘッド交換について>
次に、本実施形態において、記録ヘッドを交換する際の処理の詳細について、説明する。
図11は、フロントドアオープン作業を伴う記録ヘッド交換作業時のフローチャートである。図11に示す記録ヘッド交換作業時のシーケンスは、ユーザからの指示に基づいて、メンテナンス制御部210によって実行される。なお、ユーザからの指示は、操作パネル104などを通じて受け付けられる。
ステップS1101においてメンテナンス制御部210は、インク供給制御部209にインクタンクユニット14の加圧状態を開放する処理を実行させる。インク供給制御部209は、インクタンクユニット14から記録ヘッド8への加圧供給を停止し、インク供給経路内を大気開放する。これにより、インクタンクユニット14は、加圧が開放された状態となる。図12(a)は、インクタンクユニットの加圧を開放した状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図12(a)左図に示すように、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bがドアラッチ22aと係合したロック状態となっている。フロントドア21は筐体4のフロント側にて排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆った状態で固定されている。図12(a)右図に示すように、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側開口部周辺にあっては、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、開口部23と一致せず、当該開口部23下方部分と一部分がオーバーラップする状態で保持される。そのため、仮に、ユーザが記録ヘッド8を交換しようとして、ヘッドホルダドア32を開こうとしても、ヘッドホルダドア32が閉じられた位置から開かれる位置への移動が規制板24で制限され妨げられる。その結果、ユーザの記録ヘッド8へのアクセスが防止される。なお、ステップS1101の処理時にあっては、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)の配置場所は、図12(a)右図で示される場所に限定されるものではなく、記録位置や記録ヘッド交換位置などの場所とすることも可能である。
ステップS1102においてメンテナンス制御部210は、インクタンクユニット14の圧力開放処理によりインクタンクユニット14の加圧状態が開放されると、記録ヘッド8をキャップクローズ位置に移動させる。キャップクローズ位置は、圧力開放処理時と比べて、上方であって後述の記録ヘッド交換位置より下方となる中間位置である。図12(b)は、記録ヘッドをキャップクローズ位置に移動した状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図12(b)右図に示すように、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側にあっては、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、開口部23下方部分と一部分がオーバーラップする状態で保持される。そのため、仮に、ユーザが記録ヘッド8を交換しようとして、ヘッドホルダドア32を開こうとしても、ヘッドホルダドア32の開位置への移動が規制板24により制限され妨げられていることから、ユーザの記録ヘッド8へのアクセスが防止される。なお、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bは、図12(b)左図に示すように、ドアラッチ22aと係合したロック状態が維持されている。フロントドア21は筐体4のフロント側にて排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆った状態で固定されている。
ステップS1103においてメンテナンス制御部210は、記録ヘッド8の吐出口面8aにキャップ部材10aを当接させてキャップクローズする。。
ステップS1104においてメンテナンス制御部210は、不図示の吸引ポンプにより記録ヘッド8内のインクを吸引する。記録ヘッド8内から吸引されたインクは、インク供給ユニット15へ戻すことで、廃インクが低減される。
ステップS1105においてメンテナンス制御部210は、ステップS1103の記録ヘッド内インク回収処理の終了を検知すると、記録ヘッド8を記録ヘッド交換位置に移動させる。記録ヘッド交換位置は、キャップクローズ位置と比べて、上方であって、ヘッドホルダ31が筐体4の開口部23と同じ高さとなる位置である。図12(c)は、記録ヘッドを記録ヘッド交換位置に移動した状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図12(c)右図に示すように、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側にあっては、記録ヘッド8は、高さ方向にて、ステップS1102と比べて上方へ移動し、開口部23と一致した位置で保持される。すなわち、記録ヘッド8は、高さ方向にて、開口部23下方部分とオーバーラップしないため、ヘッドホルダドア32の開位置への移動が規制板24によって規制されない位置で保持される。なお、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bは、図12(c)左図に示すように、ドアラッチ22aと係合したロック状態が維持されている。
ステップS1106においてメンテナンス制御部210は、ジョイント駆動ユニット38を作動させて、記録ヘッド8からインク供給ジョイント部35を離間させる。これにより、インク供給チューブ34の記録ヘッド8側との接続が解除されることになる。
これらのステップS1101~S1106の処理が行われることにより、記録ヘッド交換作業時のフロントドア21の開放条件を満たすことになる。すなわち、フロントドア21で覆われた箇所に対する、ユーザなどのアクセス条件を満たすことになり、ユーザなどによる記録ヘッド8の交換作業を実施可能な状態となる。
ステップS1107においてメンテナンス制御部210は、フロントドア21のロック状態を解除する。図12(d)は、フロントドアのロックが解除された状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図12(d)左図に示すように、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bは、ドアラッチ22aとの係合が解除された状態となっており、フロントドア21は筐体4のフロント側に対して開閉自在な状態で保持される。なお、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側にあっては、図12(d)右図に示すように、記録ヘッド8は、高さ方向にて、開口部23と一致し、ステップS1105で位置づけられた状態で保持される。
ステップS1108においてユーザなどがフロントドア21を開放する。図13(a)は、フロントドアが開かれた状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図13(a)左図に示すように、フロントドア21が開放された状態となる。この作業により、インターロック機構25と突起部26との係合が解除された状態となることから、ホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給が遮断される。なお、フロントドア21で覆われていた筐体4のフロント側にあっては、図13(a)右図に示すように、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、開口部23と一致し、ステップS1105で位置づけられた状態で保持される。
ステップS1109においてユーザなどにより記録ヘッド8の交換作業が行われる。先ず、ユーザなどにより記録ヘッド8の引き出し準備作業が行われる。ユーザがスライドレバー32cを操作して、ロックプレート32bによるヘッドホルダドア32のロック状態を解除し、ヘッドホルダドア32を開放する。図13(b)は、記録ヘッド交換作業にてヘッドホルダドアが開かれた状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図13(b)左図および右図に示すように、スライドレバー32cの操作によりロックプレート32bによるヘッドホルダドア32のロック状態が解除され、ユーザなどによりヘッドホルダドア32が開放される。次に、ユーザが、ヘッド信号ケーブル33を記録ヘッド8側との接続を解除する。これにより、記録ヘッド8をヘッドホルダ31から引き出すことが可能な状態となる。
そして、ユーザにより、ヘッドホルダ31の開口部31aを通じて記録ヘッド8の引き出し作業が行われる。図13(c)は、記録ヘッド交換作業にて記録ヘッド8が筐体4から引き出された状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図13(c)左図および右図に示すように、記録ヘッド8が筐体4の開口部23を通じて筐体4のフロント側にて手前側に引き出されることになる。記録ヘッド8が引き出されることにより、記録ヘッド8は、ヘッドホルダ31の電源コネクタ36との接続が解除されることになる。
よって、ヘッドホルダ31(筐体4)に搭載されていた古い記録ヘッド8が取り外されることになる。
そして、ユーザによって新品の記録ヘッド8の取り付け作業が、ヘッドホルダ31(筐体4)に搭載されていた古い記録ヘッド8の取り外し作業の手順と逆の手順で行われる。先ず、ユーザなどにより新品の記録ヘッド8が筐体4のフロント側から開口部23を通じてヘッドホルダ31内に押し込まれてヘッドホルダ31(筐体4)内に搭載される。これにより、新品の記録ヘッド8の不図示の電源コネクタは、ヘッドホルダ31の電源コネクタ36と接続される。次に、ユーザなどによりヘッド信号ケーブル33の移動作業および記録ヘッド8側との接続作業、ヘッドホルダドア32の閉止作業が行われ、スライドレバー32cの操作により、ヘッドホルダドア32がロック状態となる。
なお、ステップS1109において、記録ヘッド8のみを交換する作業について説明したが、インクタンクユニット14やメンテナンスカートリッジ16bの交換作業を併せて行うことも可能である。フロントドア21が開放状態であることで、インクタンクユニット14やメンテナンスカートリッジ16bが配置されている箇所に対して、ユーザは、筐体4のフロント側から直接アクセスすることができる。そのため、筐体4に取り付けられていた古いインクタンクユニット14およびメンテナンスカートリッジ16bを新品のインクタンクユニット14およびメンテナンスカートリッジ16bに交換する作業は、ユーザなどにとって容易である。
ステップS1110においてユーザなどがフロントドア21を閉止する。この作業により、インターロック機構25と突起部26とが係合した状態となることから、ホルダ移動装置及びキャップユニット10へ電力が供給される。
ステップS1111においてメンテナンス制御部210は、フロントドア21の閉止を検知すると、フロントドア21を、ドアラッチ22aとドアフック22bとが係合したロック状態にする。これにより、フロントドア21は筐体4のフロント側にて排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆った状態で固定される。
ステップS1112においてメンテナンス制御部210は、インクタンクユニット14が装着されているか否かを判定する。インクタンクユニット14の装着を検出し、インクタンクユニット14が装着されていると判定した場合にはステップS1113に移行する。インクタンクユニットの装着を検出せず、インクタンクユニット14が装着されていないと判定した場合にはステップS1107に戻り、ステップS1107~S1111の処理が再び行われる。
ステップS1113においてメンテナンス制御部210は、メンテナンスカートリッジ16bが装着されているか否かを判定する。メンテナンスカートリッジ16bの装着を検出し、メンテナンスカートリッジ16bが装着されていると判定した場合にはステップS1114に移行する。メンテナンスカートリッジ16bの装着を検出せず、メンテナンスカートリッジ16bが装着されていないと判定した場合にはステップS1107に戻り、ステップS1107~S1112の処理が再び行われる。
ステップS1114においてメンテナンス制御部210は、ヘッドホルダドア32が閉じられているか否かを判定する。ヘッドホルダドア32の閉止を検出し、ヘッドホルダドア32が閉じられていると判定した場合にはステップS1115に移行する。ヘッドホルダドア32の閉止を検出せず、ヘッドホルダドア32が閉じられていないと判定した場合にはステップS1107に戻り、ステップS1107~S1113の処理が再び行われる。
ステップS1115においてメンテナンス制御部210は、ヘッドホルダ31の電源コネクタ36が記録ヘッド8の不図示の電源コネクタと接続されているか否かを判定する。これら電源コネクタの接続を検出し、記録ヘッド8とヘッドホルダ31間で電源コネクタが接続されていると判定した場合にはステップS1116に移行する。電源コネクタの接続を検出せず、電源コネクタが記録ヘッドとヘッドホルダ間で接続されていないと判定した場合にはステップS1107に戻り、ステップS1107~S1114の処理が再び行われる。
ステップS1116においてメンテナンス制御部210は、ヘッド信号ケーブル33が記録ヘッド8側と接続されているか否かを判定する。ヘッド信号ケーブル33の接続を検出し、ヘッド信号ケーブル33が接続されていると判定した場合にはステップS1117に移行する。ヘッド信号ケーブル33の接続を検出せず、ヘッド信号ケーブル33が接続されていないと判定した場合にはステップS1107に戻り、ステップS1107~S1115の処理が再び行われる。
ステップS1117においてメンテナンス制御部210は、ジョイント駆動ユニット38を作動させて、記録ヘッド8にインク供給ジョイント部35を接続させる。これにより、インク供給チューブ34が記録ヘッド8側と接続することになる。
ステップS1118においてメンテナンス制御部210は、インク供給ジョイント部35の接続を検知すると、記録ヘッド8をキャップクローズ位置に移動させる。
ステップS1119においてメンテナンス制御部210は、記録ヘッド8の吐出口面8aにキャップ部材10aを当接させてキャップクローズする。
ステップS1120においてメンテナンス制御部210は、インク供給ユニット15により記録ヘッド8内へインクを充填する。
ステップS1121においてメンテナンス制御部210は、記録ヘッド8内インク充填処理の終了を検知すると、記録ヘッド8の吐出口面8aに対してメンテナンスユニット16によるクリーニング処理が行われる。
ステップS1101~S1121の処理が行われることで、筐体4のヘッドホルダ31に搭載されていた古い記録ヘッド8を新品の記録ヘッド8に交換することができる。
なお、ステップS1121の処理の後に、必要に応じて記録ヘッド8へのインク供給ジョイントの接続処理、記録ヘッド8のキャップクローズ位置への移動が行われる。
記録ヘッド8を交換する指示が受け付けられると、フロントドア21の開放条件を満たすための動作が行われた後に、フロントドア21のロック状態が解除される。そして、ユーザがフロントドア21を開くことで、記録ヘッド8、インクタンクユニット14、メンテナンスカートリッジ16bなどに対してアクセス可能となる。このように所定の条件を満たし、かつ、所定の操作が行われて初めて、ユーザなどが記録ヘッド8、インクタンクユニット14、メンテナンスカートリッジ16bなどに対してアクセス可能となる。そのため、ユーザなどによる誤った手順での記録ヘッド8などの交換作業を未然に防止することができる。また、記録ヘッド8が配置される箇所だけではなく、インクタンクユニット14及びメンテナンスカートリッジ16bが配置される箇所を含めた範囲全体を1つのフロントドア21で覆っている。そのため、記録ヘッド8、インクタンクユニット14、メンテナンスカートリッジ16bのそれぞれにカバーを設置する必要が無く、その分コスト増を抑えることができる。
フロントドア21が閉位置から開かれた位置にあるとき、インターロック機構25と突起部26との係合が解除されて、ホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給が遮断される。これにより、ホルダ移動装置によるヘッドホルダ31の移動動作の機能と、キャップユニット10によるインクの吸引動作の機能が無効にされた状態となり、フロントドア21で覆われていた筐体4のフロント側は、ユーザなどが作業し易い環境となる。
<インクタンクユニット及びメンテナンスカートリッジ交換について>
次に、本実施形態において、インクタンクユニット及びメンテナンスカートリッジを交換する際の処理の詳細について、説明する。
図14は、フロントドアオープン作業を伴うインクタンクユニット及びメンテナンスカートリッジ交換作業時のフローチャートである。図14に示すインクタンクユニット及びメンテナンスカートリッジ交換作業時のシーケンスは、ユーザからの指示に基づいて、メンテナンス制御部210によって実行される。ここでは、上述した記録ヘッド交換作業時のフローチャートと同じ処理を行うステップについての説明を簡略化または省略し、記録ヘッド交換作業時のフローチャートと相違するステップについて、詳細に説明する。
ステップS1401においてメンテナンス制御部210は、ステップS1101と同様、インク供給制御部209にインクタンクユニット14の圧力開放処理を実行させる。図15(a)は、図12(a)と同様、インクタンクユニット14の加圧を開放した状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図15(a)左図に示すように、フロントドア21はロック状態となっており、フロントドア21は筐体4のフロント側にて排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆った状態で固定されている。図15(a)右図に示すように、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側開口部周辺にあっては、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、開口部23と一致せず、当該開口部23下方部分と一部分がオーバーラップする状態で保持される。
ステップS1402においてメンテナンス制御部210は、ステップS1102と同様、インクタンクユニット14の圧力開放処理によりインクタンクユニット14の加圧状態が開放されると、記録ヘッド8をキャップクローズ位置に移動させる。図15(b)は、図12(b)と同様、記録ヘッドをキャップクローズ位置に移動した状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図15(b)右図に示すように、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側にあっては、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、開口部23下方部分と一部分がオーバーラップする状態で保持される。すなわち、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、記録ヘッド8を着脱可能な状態の第一の位置ではない位置に配置される。すなわち、ヘッドホルダ31は、記録ヘッド8を着脱不能な状態の第二の位置に配置される。なお、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bは、図15(b)左図に示すように、ドアラッチ22aと係合したロック状態が維持されている。
ステップS1403においてメンテナンス制御部210は、記録ヘッド8の吐出口面8aにキャップ部材10aを当接させてキャップクローズする。
これらのステップS1401~S1403の処理が行われることにより、インクタンクユニット及びメンテナンスカートリッジ交換作業時のフロントドア21の開放条件を満たすことになる。すなわち、フロントドア21で覆われた箇所に対する、ユーザなどのアクセス条件を満たすことになり、ユーザなどによるインクタンクユニット14及びメンテナンスカートリッジ16bの交換作業を実施可能な状態となる。
ステップS1404においてメンテナンス制御部210は、ステップS1107と同様、フロントドア21のロック状態を解除する。図15(c)は、フロントドアのロックが解除された状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図15(c)左図に示すように、フロントドア21のロック機構22のドアフック22bは、ドアラッチ22aとの係合が解除された状態となっており、フロントドア21は筐体4のフロント側に対して開閉自在な状態で保持される。なお、フロントドア21で覆われる筐体4のフロント側にあっては、図15(c)右図に示すように、記録ヘッド8は、高さ方向にて、ステップS1402で位置づけられた状態で保持される。
ステップS1405においてユーザなどが、ステップS1108と同様、フロントドア21を開放する。図15(d)は、フロントドアが開かれた状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図15(d)左図に示すように、フロントドア21が開放された状態となる。この作業により、インターロック機構25と突起部26との係合が解除された状態となることから、ホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給が遮断される。なお、フロントドア21で覆われていた筐体4のフロント側にあっては、図15(d)右図に示すように、ヘッドホルダ31(記録ヘッド8)は、高さ方向にて、ステップS1402で位置づけられた状態で保持される。
ステップS1406においてユーザなどによりインクタンクユニット14及びメンテナンスカートリッジ16bの交換作業が行われる。ユーザにより筐体4からインクタンクユニット14が引き出される。図16は、インクタンクユニット交換作業にてインクタンクユニット14が筐体4から引き出された状態であって、記録装置全体と、記録装置のフロント側開口部周辺の説明図である。図16左図および右図に示すように、インクタンクユニット14が筐体4のフロント側にて手前側に引き出されることになる。このとき、インクタンクユニット14と筐体4との接続が解除されることになる。
そして、ユーザによる新品のインクタンクユニット14の取り付け作業が、古いインクタンクユニット14の取り外し作業の手順と逆の手順で行われる。ユーザなどにより新品のインクタンクユニット14が筐体4のフロント側から古いインクタンクユニット14が取り付けられていた箇所に押し込まれる。これにより、新品のインクタンクユニット14と筐体4との接続が行われることになる。なお、ステップS1406において、インクタンクユニット14のみを交換する作業について説明したが、インクタンクユニット14の代わりにメンテナンスカートリッジ16bの交換作業を行うことも可能である。また、メンテナンスカートリッジ16bの交換作業を併せて行うことも可能である。メンテナンスカートリッジ16bを交換する場合、フロントドア21が開放状態であることで、メンテナンスカートリッジ16bが取り付けられている箇所に対して、ユーザは、筐体4のフロント側から直接アクセスすることができる。そのため、筐体4に取り付けられていた古いメンテナンスカートリッジ16bを新品のメンテナンスカートリッジ16bに交換する作業がユーザにとって容易である。
ステップS1407においてユーザなどが、ステップS1110と同様、フロントドア21を閉止する。この作業により、インターロック機構25と突起部26とが係合した状態となることから、ホルダ移動装置及びキャップユニット10へ電力が供給される。
ステップS1408においてメンテナンス制御部210は、ステップS1110と同様、フロントドア21の閉止を検知すると、フロントドア21を、ドアラッチ22aとドアフック22bとが係合したロック状態にする。これにより、フロントドア21は筐体4のフロント側にて排出トレイ13下方から第1カセット5A上方に亘る範囲全体を覆った状態で固定される。
ステップS1409においてメンテナンス制御部210は、インクタンクユニット14が装着されているか否かを判定する。インクタンクユニット14の装着を検出し、インクタンクユニット14が装着されていると判定した場合にはステップS1410に移行する。インクタンクユニット14の装着を検出せず、インクタンクユニット14が装着されていないと判定した場合にはステップS1404に戻り、ステップS1404~S1408の処理が再び行われる。
ステップS1410においてメンテナンス制御部210は、メンテナンスカートリッジ16bが装着されているか否かを判定する。メンテナンスカートリッジ16bの装着を検出し、メンテナンスカートリッジ16bが装着されていると判定した場合には、本処理が終わる。メンテナンスカートリッジ16bの装着を検出せず、メンテナンスカートリッジ16bが装着されていないと判定した場合にはステップS1404に戻り、ステップS1404~S1409の処理が再び行われる。
インクタンクユニット14またはメンテナンスカートリッジ16bを交換する指示が受け付けられると、フロントドア21の開放条件を満たすための動作が行われた後に、フロントドア21のロック状態が解除される。そして、ユーザがフロントドア21を開くことで、ユーザなどがインクタンクユニット14、メンテナンスカートリッジ16bなどに対してアクセス可能となる。このように所定の条件を満たし、かつ、所定の操作が行われて初めて、ユーザなどがインクタンクユニット14、メンテナンスカートリッジ16bなどに対してアクセス可能となる。そのため、ユーザなどによる誤った手順でのインクタンクユニット14やメンテナンスカートリッジ16bなどの交換作業を未然に防止することができる。また、インクタンクユニット14及びメンテナンスカートリッジ16bが配置される箇所だけではなく、記録ヘッド8が配置される箇所を含めた範囲全体を1つのフロントドア21で覆っている。そのため、記録ヘッド8、インクタンクユニット14及びメンテナンスカートリッジ16bのそれぞれにカバーを設置する必要が無く、その分コスト増を抑えることができる。また、インクタンクユニット14やメンテナンスカートリッジ16bの交換の際は、記録ヘッド8のフロントドア21が物理的に開けない状態にすることで、ユーザが誤って記録ヘッド8にアクセスすることが抑制される。
さらに、インクタンクユニット14またはメンテナンスカートリッジ16bの交換時は、記録ヘッド8の交換時と比較してロック機構22の解除に必要な動作が少ない。そのため、記録ヘッド8を交換する時よりも早くロック機構22を解除することができ、交換に必要な時間を短縮することができる。
フロントドア21が閉位置から開かれた位置にあるとき、インターロック機構25と突起部26との係合が解除されて、ホルダ移動装置及びキャップユニット10への電力供給が遮断される。これにより、ホルダ移動装置によるヘッドホルダ31の移動動作の機能と、キャップユニット10によるインクの吸引動作の機能とが無効にされた状態となり、フロントドア21で覆われていた筐体4のフロント側は、ユーザなどが作業し易い環境となる。
メンテナンス制御部210は、操作パネル104に入力された動作指示に応じてホルダ移動装置、インク供給ユニット15、およびロック機構22を制御することから、ユーザからの動作指示に対応した動作を確実に各機器に実行させることができる。
<その他の実施形態>
上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。