JP7108726B2 - 安定化メソフェーズピッチ変性体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、安定化メソフェーズピッチ変性体及びその製造方法に関する。詳しくは、熱可塑性樹脂中に安定化メソフェーズピッチを含有してなる複合体を、特定雰囲気下で加熱することで得られる安定化メソフェーズピッチ変性体及びその製造方法に関する。
カーボンナノ材料、特に、平均繊維径が1μm以下である極細炭素繊維は、高結晶性、高導電性、高強度、高弾性率、軽量等の優れた特性を有していることから、高性能複合材料のナノフィラーとして使用されている。その用途は、機械的強度向上を目的とした補強用ナノフィラーに留まらず、炭素材料に備わった高導電性を生かし、各種電池やキャパシタの電極への添加材料、電磁波シールド材、静電防止材用の導電性ナノフィラーとして、あるいは樹脂向けの静電塗料に配合するナノフィラーとしての用途が検討されている。また、炭素材料としての化学的安定性、熱的安定性、微細構造の特徴を生かし、フラットディスプレー等の電界電子放出材料としての用途も期待されている。
例えば、特許文献1には、(1)熱可塑性樹脂100質量部と、熱可塑性炭素前駆体であるメソフェーズピッチ1~150質量部と、からなる混合物から前駆体成型体を形成する工程、(2)前駆体成型体を安定化処理に付して前駆体成形体中の熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化樹脂組成物を形成する工程、(3)安定化樹脂組成物から熱可塑性樹脂を、減圧下で除去して繊維状炭素前駆体を形成する工程、(4)繊維状炭素前駆体を炭素化もしくは黒鉛化する工程、を経る炭素繊維の製造方法が開示されている。
国際公開第2009/125857号公報
特許文献1に記載された方法は、混合物成型体から熱可塑性樹脂を減圧下で除去して安定化メソフェーズピッチ変性体を形成する。したがって、熱可塑性樹脂の除去工程において、減圧処理が必要になるため、工程が長時間化しするとともに煩雑化する。さらには、特許文献1に記載された方法は、減圧下において加熱するため、除去する熱可塑性樹脂への熱伝導が低くなる。そのため、減圧度(真空度)によっては熱可塑性樹脂の一部が除去できずに残存する場合(残炭形成)がある。その結果、最終的に得られる極細炭素繊維中に、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として残存することがあり、導電性や強度、弾性率の低下が生じている。したがって、混合物成型体の目付を十分に低くして、残炭形成を抑制することが必要であり、低効率である。
本発明の目的は、熱可塑性樹脂中に安定化メソフェーズピッチが含有してなる複合体から、残炭形成の抑制された安定化メソフェーズピッチ変性体及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂の除去を行うにあたり特定の条件を設定することで、効率的に所定の性状を有する安定化メソフェーズピッチ変性体を得ることができ、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体は、炭素化工程及び/又は黒鉛化工程を経て炭素繊維としても、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれないため、高物性の極細炭素繊維が提供できることを見出した。以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
〔1〕 元素分析法で測定される酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.1以上であって、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.02以上であり、かつX線光電子分光法で測定されるN1s軌道由来のピークがピリジン型の芳香族N(398eV)とピロール型芳香族NH(400eV)とを含むことを特徴とする安定化メソフェーズピッチ変性体。
〔2〕 前記安定化メソフェーズピッチ変性体の形態が繊維状であり、平均繊維径が100~900nmである〔1〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体。
〔3〕 熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体を、溶剤の存在下で加熱することを特徴とする〔1〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔4〕 加熱温度が溶剤の融点以上沸点未満であり、加熱時間が0.5~5時間である、〔3〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔5〕 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂100質量部と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して前記安定化メソフェーズピッチが1~150質量部と、から成る複合体である、〔3〕又は〔4〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔6〕 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂中に前記安定化メソフェーズピッチが分散して成る複合体である、〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔7〕 前記複合体の目付けが20000g/m以下である〔3〕~〔6〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔8〕 熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体を、水蒸気雰囲気下で加熱することを特徴とする〔1〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔9〕 加熱温度が350~600℃であり、加熱時間が0.01~5時間である、〔8〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔10〕 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂100質量部と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して前記安定化メソフェーズピッチが1~150質量部と、から成る複合体である、〔8〕又は〔9〕に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔11〕 前記水蒸気雰囲気が、酸素濃度が50体積ppm以下の水蒸気雰囲気である、〔8〕~〔10〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔12〕 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂中に前記安定化メソフェーズピッチが分散して成る複合体である、〔8〕~〔11〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔13〕 前記複合体の目付けが20000g/m以下である〔8〕~〔12〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
〔14〕 前記複合体の目付けX(kg/m)と、加熱時間Y(分)と、が下式(1)
Y≧2.5X+3 ・・・(式1)
を満たす〔8〕~〔13〕のいずれかに記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
本発明によれば、残炭形成の抑制された安定化メソフェーズ系ピッチ変性体を提供することができ、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体は、炭素化工程及び/又は黒鉛化工程を経て炭素繊維としても、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれないため、高物性の極細炭素繊維が提供できる。
実施例2のメソフェーズピッチ変性体のSEM写真(200倍)である。 実施例2メソフェーズピッチ変性体のXPSスペクトルである。 実施例3のメソフェーズピッチ変性体のSEM写真(200倍)である。 比較例1のメソフェーズピッチ変性体のSEM写真(1000倍)である。 比較例1のメソフェーズピッチ変性体のSEM写真(5000倍)である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において、平均繊維長とは特に断りのない限り、画像解析粒度分布計を用いて測定される体積平均値を意味する。また、平均繊維径とは、特に断りのない限り、電子顕微鏡写真を画像解析することで測定され平均値を意味する。また、本発明において、安定化処理後のメソフェーズピッチを「安定化メソフェーズピッチ」ともいう。
本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体は、元素分析法で測定される酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.1以上であって、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.02以上であり、かつX線光電子分光法で測定されるN1s軌道由来のピークがピリジン型の芳香族N(398eV)とピロール型芳香族NH(400eV)とを含む。
O/Cは、0.1~0.3であることが好ましく、0.1~0.2であることがより好ましい。
N/Cは、0.02~0.1であることが好ましく、0.02~0.05であることがより好ましい。
X線光電子分光法で測定されるN1s軌道由来のピークは、ピリジン型の芳香族N(398eV)、及びピロール型芳香族NH(400eV)がそれぞれ、ベースラインに対して強度が0.1E+4以上であることが好ましく、0.2E+4以上であることが好ましい。
上記の範囲にある、安定化メソフェーズピッチ変性体であれば、炭素化工程及び/又は黒鉛化工程を経て炭素繊維としても、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれないため、高物性の炭素繊維とすることが可能である。
本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体は、形態が繊維状であり、その平均繊維径は100~900nmであることが好ましく、100~600nmであることがより好ましく、150~400nmであることが特に好ましい。
このような範囲にあれば、炭素化工程及び/又は黒鉛化工程を経て得られる炭素繊維はいわゆるナノカーボン材料であるので、前掲の通り、高結晶性、高電導性、高強度、軽量等の特性から、高性能複合材料のフィラーとして好適に用いることができる。
本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体は、形態が繊維状であり、その平均繊維長は1μm以上であることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることが特に好ましい。繊維長が上記一定長程度あれば、フィラーとしての高電導性付与の度合が更に向上する。
安定化メソフェーズピッチ変性体を炭素繊維にするにあたっては、常法に従えばよく、公知の炭素化及び/又は黒鉛化の条件を設定すれば極細炭素繊維を作製することができる。
このようにして作製される極細炭素繊維は、実質的に分岐構造を有さない直線構造であって、かつ、平均繊維径が10~900nm、好ましくは100~600nmである。ここで、分岐構造を実質的に有さないとは、分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。
上記より得られた極細炭素繊維は、例えば非水電解質二次電池用の電極を構成する導電助材として有用である。非水電解質二次電池用の電極を構成する導電助材として用いる場合、極細炭素繊維の平均繊維長(L)と平均繊維径(D)との比(アスペクト比:L/D)は30以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。アスペクト比を30以上とすることにより、電極内において極細炭素繊維による導電パスが効率的に形成され、得られる電池のサイクル特性を高くすることができる。30未満の場合、電極内において極細炭素繊維による導電パスの形成が不十分になり易く、電極の膜厚方向の抵抗値が十分に低下しない場合がある。比(L/D)の上限値は特に限定されないが、一般に10000以下であり、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。
なお、この極細炭素繊維は、全体として繊維状の形態を有していればよく、例えば、上記アスペクト比の好ましい範囲未満のものが接触したり結合したりして一体的に繊維形状を持っているもの(例えば、球状炭素が数珠状に連なっているもの、極めて短い少なくとも1本または複数本の繊維が融着等によりつながっているものなど)も含む。
また、上記極細炭素繊維は、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が、0.335~0.350nmの範囲である。
このように、本発明の安定化メソフェーズ系ピッチ変性体から得られた極細炭素繊維は結晶性が非常に高いので、電気伝導性や熱伝導性に優れている。
また、この極細炭素繊維を導電助材として用いる場合は、単独で用いてもよく、アセチレンブラック等の公知の導電助剤とを併用して複合化したもの等であってもよい。
本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体を、溶剤の存在下で加熱することにより、前記複合体から前記熱可塑性樹脂を除去する方法を採用することができる。
加熱の温度は、取扱い性の観点から溶剤の融点以上沸点未満あることが好ましい。加熱の時間としては、加熱温度ないし、溶剤の熱可塑性樹脂溶解能との関連があるが、0.5~5時間程度で設定すればよい。
溶剤としては、熱可塑性樹脂を溶解し、メソフェーズピッチへの影響を与えないものであればいずれも用いることが可能である。溶解対象となる熱可塑性樹脂によって、より溶解性の高い溶媒が使用される。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであれば、シクロヘキサン、デカリン、トルエン等を用いることができ、ポリカーボネートであれば、塩化メチレンやテトラヒドロフランを用いることができる。
本発明の製造方法では、複合体を、支持基材上に目付け20000g/m以下で保持して行うことが好ましい。支持基材に保持することによって、熱可塑性樹脂除去時の安定化メソフェーズピッチ変性体の凝集を抑制することができる。さらには、溶剤通過性を保つことが可能となり、溶剤除去の効率化、及び熱可塑性樹脂の溶解物の系外への排出を行い易くなる。支持基材の材質としては、溶剤や加熱によって変形や腐食を生じないことが必要である。また、支持基材の耐熱温度としては、上記の熱可塑性樹脂除去工程の加熱温度で変形しなければいずれも採用することができる。ステンレスなどの金属材料やアルミナ、シリカなどのセラミックス材料を用いることができる。
また、支持基材の形態としては、面垂直方向への溶媒通過性を有する形状であることが好ましい。このような形状としては、網目構造が例示される。
本発明において、熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体としては、熱可塑性樹脂を海成分とし、安定化メソフェーズピッチを島成分とする海島構造を有する複合体が例示される。熱可塑性樹脂から成るマトリクス樹脂中にメソフェーズピッチを分散してメソフェーズピッチ組成物を作製し、このメソフェーズピッチ組成物を各種形状に成形することにより、熱可塑性樹脂中に分散するメソフェーズピッチの形状が制御される。メソフェーズピッチが所期の形状となり、マトリクス樹脂が不要となった後、該マトリクス樹脂は除去される。
また、本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体を、水蒸気雰囲気下で加熱することにより、前記複合体から前記熱可塑性樹脂を熱分解して除去する方法を採用することができる。
ここで言う水蒸気雰囲気とは、200℃以上の水蒸気が50体積%以上、好ましくは80体積%以上満たされていることである。
熱可塑性樹脂の除去は、水蒸気雰囲気により不活性雰囲気が保たれている中で行う。ここでいう不活性雰囲気とは、その酸素濃度が50体積ppm以下であることが好ましく、30体積ppm以下であることがより好ましく、20体積ppm以下であることがさらに好ましい。また、水蒸気以外の不活性ガスが含まれていても良い。不活性ガスとしては、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどが挙げられる。
熱分解の温度は、350~600℃であることが好ましく、380~550℃であることがより好ましい。熱分解の温度が350℃未満である場合、安定化メソフェーズピッチの熱分解は抑えられるものの、熱可塑性樹脂の熱分解を十分行うことができない場合がある。一方、600℃を超える場合、熱可塑性樹脂の熱分解は十分行うことができるものの、安定化メソフェーズピッチまでが熱分解される場合があり、収率が低下し易い。熱分解の時間としては、0.01~5時間であることが好ましく、0.05~3時間であることがより好ましい。
本発明の製造方法では、複合体を、支持基材上に目付け20000g/m以下で保持して行うことが好ましい。支持基材に保持することによって、熱可塑性樹脂除去時の安定化メソフェーズピッチ変性体の凝集を抑制することができる。さらには、通気性を保つことが可能となり、加熱の効率化、及び熱可塑性樹脂の分解物の系外への排出を行い易くなる。支持基材の材質としては、溶剤や加熱によって変形や腐食を生じないことが必要である。また、支持基材の耐熱温度としては、上記の熱可塑性樹脂除去工程の熱分解温度で変形しないことが必要であることから、600℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。このような材質としては、ステンレスなどの金属材料やアルミナ、シリカなどのセラミックス材料を挙げることができる。
また、支持基材の形態としては、面垂直方向への通気性を有する形状であることが好ましい。このような形状としては、網目構造が例示される。
上記樹脂複合安定化繊維の目付けX(kg/m)と、熱分解の時間Y(分)と、は下式(1)
Y≧2.5X+3 ・・・(式1)
を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、残炭率が低い安定化メソフェーズピッチ変性体を製造することができる。
本発明において、熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体としては、熱可塑性樹脂を海成分とし、安定化メソフェーズピッチを島成分とする海島構造を有する複合体が例示される。熱可塑性樹脂から成るマトリクス樹脂中にメソフェーズピッチを分散してメソフェーズピッチ組成物を作製し、このメソフェーズピッチ組成物を各種形状に成形することにより、熱可塑性樹脂中に分散するメソフェーズピッチの形状が制御される。メソフェーズピッチが所期の形状となり、マトリクス樹脂が不要となった後、該マトリクス樹脂は除去される。
<熱可塑性樹脂>
本発明における熱可塑性樹脂は、熱分解ないし溶剤により系外に除去され得る熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリ乳酸等が好ましい。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましく用いられる。
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1及びこれらを含む共重合体が挙げられる。系外に除去し易いという観点からは、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、気相法・溶液法・高圧法直鎖状低密度ポリエチレンなどの低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどの単独重合体又はエチレンとα-オレフィンとの共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体などのエチレンと他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、JIS K 7210(1999年度)に準拠して測定されたメルトマスフローレート(MFR)が0.1~25g/10minであることが好ましく、0.1~15g/10minであることがより好ましく、0.1~10g/10minであることが特に好ましい。MFRが上記範囲であると、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好にミクロ分散することができる。また、メソフェーズピッチ組成物を成形する際に、熱可塑性樹脂中のメソフェーズピッチが引き延ばされることにより、得られる安定化メソフェーズピッチ変性体を繊維形状にすることができる。本発明で使用する熱可塑性樹脂は、メソフェーズピッチと容易に溶融混練できるという点から、非晶性の場合はガラス転移温度が250℃以下、結晶性の場合は融点が300℃以下であることが好ましい。
<原料メソフェーズピッチ>
メソフェーズピッチとは、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうるピッチである。本発明で使用する原料としてのメソフェーズピッチ(以下、「原料メソフェーズピッチ」ということがある)としては、石炭や石油の蒸留残渣を原料とするものや、ナフタレン等の芳香族炭化水素を原料とするものが挙げられる。例えば、石炭由来の原料メソフェーズピッチは、コールタールピッチの水素添加・熱処理を主体とする処理、水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする処理等により得られる。
原料メソフェーズピッチの光学的異方性含有量(メソフェーズ率)は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、原料メソフェーズピッチの軟化点は100~400℃であることが好ましく、150~350℃であることがより好ましい。
<複合体>
本発明において、熱可塑性樹脂と安定化メソフェーズピッチとから成る複合体(以下、単に「複合体」ともいう)としては、熱可塑性樹脂と、この熱可塑性樹脂100質量部に対して1~150質量部の安定化メソフェーズピッチと、を含んで成る複合体が例示される。安定化メソフェーズピッチの含有量は5~100質量部であることが好ましい。安定化メソフェーズピッチの含有量が150質量部を超えると、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好に分散することができない場合がある。また、安定化メソフェーズピッチの含有量が1質量部未満であると、熱可塑性樹脂を除去して安定化メソフェーズピッチを得るための処理コストが上昇する。
以下に、本発明の安定化メソフェーズピッチ変性体、さらには極細炭素繊維を製造する方法について説明する。
先ず、熱可塑性樹脂中に原料メソフェーズピッチを分散して、熱可塑性樹脂と原料メソフェーズピッチの混合物(以下、「メソフェーズピッチ組成物」ともいう)が作製される。
メソフェーズピッチ組成物は、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとを溶融状態において混練することにより作製できる。
熱可塑性樹脂と原料メソフェーズピッチとの溶融混練は公知の装置を用いて行うことができる。例えば、一軸式混練機、二軸式混練機、ミキシングロール、バンバリーミキサーからなる群より選ばれる1種類以上を用いることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂中に原料メソフェーズピッチを良好にミクロ分散させるという目的から、二軸式混練機を用いることが好ましく、特に各軸が同方向に回転する二軸式混練機を用いることが好ましい。
混練温度としては、熱可塑性樹脂と原料メソフェーズピッチとが溶融状態であれば特に制限されないが、100~400℃であることが好ましく、150~350℃であることが好ましい。混練温度が100℃未満であると、原料メソフェーズピッチが溶融状態にならず、熱可塑性樹脂中にミクロ分散させることが困難であるため好ましくない。一方、400℃を超える場合、熱可塑性樹脂及び原料メソフェーズピッチの分解が進行するため好ましくない。
溶融混練の時間としては、0.5~20分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましい。溶融混練の時間が0.5分間未満の場合、原料メソフェーズピッチのミクロ分散が困難であるため好ましくない。一方、20分間を超える場合、生産性が著しく低下するため好ましくない。
本発明で使用する原料メソフェーズピッチは、溶融混練時に酸素と反応することにより変性してしまい、熱可塑性樹脂中へのミクロ分散を阻害することがある。このため、不活性雰囲気下で溶融混練を行い、酸素と原料メソフェーズピッチとの反応を抑制することが好ましい。溶融混練は、酸素ガス含有量が10体積%未満の不活性雰囲気下で行うことが好ましく、酸素ガス含有量が5体積%未満の不活性雰囲気下で行うことがより好ましく、酸素ガス含有量が1%体積未満の不活性雰囲気下で行うことが特に好ましい。
平均繊維径が100~900nmである繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を製造するためには、メソフェーズピッチ組成物における原料メソフェーズピッチの分散径を0.01~50μmとすることが好ましく、0.01~30μmとすることがより好ましい。メソフェーズピッチ組成物中における原料メソフェーズピッチの分散径が0.01~50μmの範囲を逸脱すると、極細炭素繊維を製造することが困難となることがある。即ち、0.01μm未満である場合、繊維形状を維持することが困難であり、繊維長が短くなり易い。また、50μmを超える場合、極細の繊維を製造することが困難であり、繊維径が大きくなり易い。
なお、メソフェーズピッチ組成物中において、原料メソフェーズピッチは球状又は楕円状の島相を形成するが、本発明における分散径とは、島成分が球状の場合はその直径を意味し、楕円状の場合はその長軸径を意味する。
上記0.01~50μmの分散径は、メソフェーズピッチ組成物を300℃で3分間保持した後においても上記範囲内を維持していることが好ましく、300℃で5分間保持した後においても維持していることがより好ましく、300℃で10分間保持した後においても維持していることが特に好ましい。一般に、メソフェーズピッチ組成物を溶融状態で保持しておくと、熱可塑性樹脂中において原料メソフェーズピッチが時間の経過と共に凝集する。原料メソフェーズピッチが凝集して、その分散径が50μmを超えると、所望の安定化メソフェーズピッチ変性体や炭素繊維を製造することが困難となる場合がある。メソフェーズピッチ組成物中における原料メソフェーズピッチの凝集速度は、使用する熱可塑性樹脂及び原料メソフェーズピッチの種類により変動する。
メソフェーズピッチ組成物は、熱可塑性樹脂中に分散する原料メソフェーズピッチを繊維形状にするために、紡糸等により成形される(以下、成形後のメソフェーズピッチ組成物を「樹脂複合繊維」ともいう)。
メソフェーズピッチ組成物を成形する方法としては、メソフェーズピッチ組成物を紡糸口金より溶融紡糸する方法、メソフェーズピッチ組成物を矩形口金より溶融製膜する方法、射出成型などを例示することができる。これにより、メソフェーズピッチ組成物に含まれる原料メソフェーズピッチを伸長して初期配向性が高い状態で繊維形態に成形することができる。
成形する際の温度は、原料メソフェーズピッチの溶融温度よりも高いことが必要であり、150~400℃であることが好ましく、180~350℃であることがより好ましい。400℃を超える場合、原料メソフェーズピッチの変形緩和速度が大きくなり、繊維の形態を保つことが難しくなる。
樹脂複合繊維は、その後の冷却工程において冷却されてもよい。冷却工程としては、溶融紡糸の場合、紡糸口金の下流の雰囲気を冷却する方法が例示される。溶融製膜の場合、矩形口金の下流に冷却ドラムを設ける方法が例示される。冷却工程を設けることにより、原料メソフェーズピッチが伸長により変形する領域を制御でき、ひずみの速度を制御することができる。また、冷却工程を設けることにより、紡糸又は製膜後の樹脂複合繊維を直ちに冷却固化させて安定した成形が可能となる。
次いで、樹脂複合繊維は、内部に含まれる原料メソフェーズピッチに対して安定化処理(不融化処理ともいう)が施される。なお、本発明において、安定化処理後の原料メソフェーズピッチを「安定化メソフェーズピッチ」ともいう。安定化処理は、樹脂複合繊維に気相状態の窒素酸化物を含むガスを接触させることにより行われる。(安定化処理後の樹脂複合繊維を「樹脂複合安定化繊維」ともいう。)
上記ガスは窒素酸化物単独であっても良いし、その他の酸化性気体と併用しても良い。酸化性気体としては、空気、酸素及びこれらの混合物が例示される。酸化性気体と併用すると、原料メソフェーズピッチに対する安定化反応によって還元された窒素酸化物を再び酸化して窒素酸化物とすることができるため、窒素酸化物を効率良く使用することができ、生産性が向上する。また、上記ガスには、酸化性気体以外の気体が含まれていても良い。酸化性気体以外の気体としては、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。
安定化の反応温度は、25~100℃が好ましい。この範囲の温度で安定化処理することにより、反応熱による熱暴走が抑制され、樹脂複合繊維が過度に融着することを防ぎ、樹脂複合繊維に含まれる安定化メソフェーズピッチの配向性が高く維持される。
安定化の処理時間は、10~200分間が好ましく、20~110分間が好ましい。
上記安定化処理により得られる安定化メソフェーズピッチは、その軟化点が著しく上昇している。安定化メソフェーズピッチの軟化点は400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがさらに好ましい。軟化点が400℃以上であることにより、後工程で熱可塑性樹脂を熱分解する際の安定化メソフェーズピッチの軟化が抑制される。
樹脂複合安定化繊維の形態は、繊維状である場合、50~350dtexであることが好ましく、シート状やその他の形状であれば厚みが10μm~2mmであることが好ましい。
次に、上述のようにして得られる樹脂複合安定化繊維を、溶剤ないし水蒸気雰囲気下で加熱して、熱可塑性樹脂を除去する。この工程では、安定化メソフェーズピッチの分解等を抑制しながら、熱可塑性樹脂を除去することにより、残炭の抑制された安定化メソフェーズピッチ変性体を得る。熱可塑性樹脂の除去の条件は、上述したとおりである。
本発明の熱可塑性樹脂の除去方法によって製造される安定化メソフェーズピッチ変性体は、熱可塑性樹脂由来の異物(残炭)が生じ難い。具体的には、残炭率が安定化メソフェーズピッチ変性体の質量に対して0.1質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以下である。
この範囲にあれば、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体を、炭素化工程及び/又は黒鉛化工程を経て炭素繊維としても、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれないため、高物性の極細炭素繊維が提供できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例中の各種測定や分析は、それぞれ以下の方法に従って行った。
(1)安定化メソフェーズピッチ変性体の形状の確認
走査型電子顕微鏡(株式会社JEOL製 JCM-6000)を用いて観察及び写真撮影を行った。
(2)安定化メソフェーズピッチ変性体のXPS測定
X線光電子分光装置(THERMO SCIENTIFIC社製)を用いてNarrow ScanにてN1s軌道由来のスペクトル測定を行った。
(3)元素分析(窒素、炭素)
元素分析装置 NCH-22F型(株式会社住化分析センター製)を用いて、TCD検出方式にて測定を行った。
(4)元素分析(酸素)
元素分析装置 EMGA-920(株式会社堀場製作所製)を用いて、NDIR検出方式にて測定を行った。
(5)残炭率
熱可塑性樹脂を除去した後の安定化メソフェーズピッチ変性体の質量(g)をA、熱可塑性樹脂を除去する際の目付(g/m)をB、およびメソフェーズピッチ組成物中の原料メソフェーズピッチの質量比をCとして以下の式を用いて、1mあたりの残炭率を算出した。
残炭率(%)=A/(B×1×C)×100-100
[参考例1] (原料メソフェーズピッチの製造方法)
キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni-Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し、水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下、480℃で熱処理した後、減圧して低沸点分を除き、メソフェーズピッチを得た。このメソフェーズピッチを、フィルターを用いて温度340℃でろ過を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精製された原料メソフェーズピッチを得た。
[参考例2] (樹脂複合繊維の製造方法1)
熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(Exceed(登録商標)1018HA、Exxon Mobil製、MFR=1g/10min)80質量部、及び参考例1で得られた原料メソフェーズピッチ(メソフェーズ率90.9%、軟化点303.5℃)20質量部を同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM-26SS」、バレル温度300℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を調製した。上記メソフェーズピッチ組成物を、シリンダー式単孔紡糸機を用いて、340℃の紡糸口金より紡糸し、樹脂複合繊維(原料メソフェーズピッチを島成分とし、直鎖状低密度ポリエチレンを海成分とする海島型複合繊維)を作製した。
[参考例3] (樹脂複合繊維の製造方法2)
直鎖状低密度ポリエチレンを60質量部、原料メソフェーズピッチを40質量部とし、紡糸口金360℃とした以外は参考例2と同様に樹脂複合繊維を作製した。
[参考例4] (樹脂複合安定化繊維の製造方法1)
参考例2で得られた樹脂複合繊維2.5kgを反応容器(容積33L)に仕込み、室温下、反応容器系内に二酸化窒素を含む混合ガスを300分間かけて導入した。これにより、原料メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。
[参考例5] (樹脂複合安定化繊維の製造方法2)
参考例3で得られた樹脂複合繊維2.5kgを反応容器(容積33L)に仕込み、室温下、反応容器系内に二酸化窒素を含む混合ガスを720分間かけて導入した。これにより、原料メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。
[実施例1]
参考例4で得られた複合安定化繊維を、フラスコに仕込み、溶剤としてのシクロヘキサン中で、50℃、1時間加熱することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化メソフェーズピッチ変性体を得た。得られた安定化メソフェーズピッチ変性体の質量より残炭率を求めたところ0%であった。
この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を元素分析法で測定したところ、酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.12であり、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.03であった。また、X線光電子分光法で測定されたN1s軌道由来のピークを確認したところ、ピリジン型の芳香族N(398eV)、及びピロール型芳香族NH(400eV)のピークが観察された。
得られたメソフェーズピッチ変性体を炭素繊維としたところ、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれていないものが得られた。
[比較例1]
参考例4で得られた複合安定化繊維を、フラスコに仕込み、シクロヘキサン中で、50℃、0.017時間加熱することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化メソフェーズピッチ変性体を得た。この安定化メソフェーズピッチ変性体の電子顕微鏡写真を図4、5に示した。繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体が存在していることは確認されたが、一方で熱可塑性樹脂が残存している様子が観察された。また、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体の質量より残炭率を求めたところ15%であった。
この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を元素分析法で測定したところ、酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.07であり、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.01であった。また、X線光電子分光法で測定されたN1s軌道由来のピークを確認したところ、ピリジン型の芳香族N(398eV)、及びピロール型芳香族NH(400eV)のピークが観察されなかった。
得られたメソフェーズピッチ変性体を炭素繊維としたところ、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれていた。
[実施例2]
参考例4で得られた複合安定化繊維を、目付けが540g/mになるようSUS304製の金網に載置して炉に仕込み、水蒸気雰囲気下、500℃(炉の設定温度)、0.08時間加熱することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を得た。なお、複合安定化繊維を炉に入れた直後の水蒸気雰囲気は100体積%であり、樹脂の除去とともに、水蒸気雰囲気は98体積%となった(2体積%は樹脂の分解ガス)。この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体の電子顕微鏡写真を図1に示したが、熱可塑性樹脂が残存していない様子が観察された。また、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体の質量より残炭率を求めたところ0%であった。なお、図1からわかるように、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体は凝集した凝集体や束状のものは見られず、きれいに分散していた。
この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を元素分析法で測定したところ、酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.11であり、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.03であった。また、X線光電子分光法で測定されたN1s軌道由来のピークを図2に示したが、ピリジン型の芳香族N(398eV)、及びピロール型芳香族NH(400eV)のピークが観察された。
得られたメソフェーズピッチ変性体を炭素繊維としたところ、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれていないものが得られた。
[実施例3]
参考例5で得られた複合安定化繊維を、目付けが1350g/mになるように載置して炉に仕込み、水蒸気雰囲気下、500℃、0.17時間加熱することにより、熱可塑性樹脂を除去して繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を得た。なお、複合安定化繊維を炉に入れた直後の水蒸気雰囲気は100体積%であり、樹脂の除去とともに、水蒸気雰囲気は96.5体積%となった(3.5体積%は樹脂の分解ガス)。この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体の電子顕微鏡写真を図3に示したが、熱可塑性樹脂が残存していない様子が観察された。また、得られた安定化メソフェーズピッチ変性体の質量より残炭率を求めたところ0%であった。
この繊維状の安定化メソフェーズピッチ変性体を元素分析法で測定したところ、酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.11であり、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.04であった。また、X線光電子分光法で測定されたN1s軌道由来のピークを確認したところ、ピリジン型の芳香族N(398eV)、及びピロール型芳香族NH(400eV)のピークが観察された。
得られたメソフェーズピッチ変性体を炭素繊維としたところ、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として含まれていないものが得られた。

Claims (7)

  1. 元素分析法で測定される酸素Oと炭素Cの元素組成比(O/C)が0.1~0.3であって、窒素Nと炭素Cの元素組成比(N/C)が0.02~0.1であり、かつX線光電子分光法で測定されるN1s軌道由来のピークがピリジン型の芳香族N(398eV)とピロール型芳香族NH(400eV)とを含む安定化メソフェーズピッチ変性体であって、
    残炭率が前記安定化メソフェーズピッチ変性体の質量に対して0.1質量%以下であることを特徴とする安定化メソフェーズピッチ変性体。
  2. 前記安定化メソフェーズピッチ変性体の形態が繊維状であり、平均繊維径が100~900nmである請求項1に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体。
  3. 熱可塑性樹脂と、安定化メソフェーズピッチと、から成る複合体を、溶剤の存在下で加熱することを特徴とする請求項1に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
  4. 加熱温度が溶剤の融点以上沸点未満であり、加熱時間が0.5~5時間である、請求項3に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
  5. 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂100質量部と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して前記安定化メソフェーズピッチが1~150質量部と、から成る複合体である、請求項3又は4に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
  6. 前記複合体が、前記熱可塑性樹脂中に前記安定化メソフェーズピッチが分散して成る複合体である、請求項3~5のいずれか1項に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
  7. 前記複合体の目付けが20000g/m以下である請求項3~6のいずれか1項に記載の安定化メソフェーズピッチ変性体の製造方法。
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