JP6523070B2 - 極細炭素繊維の製造方法及び極細炭素繊維並びにこの極細炭素繊維を含む炭素系導電助剤 - Google Patents
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Description
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
(2)前記樹脂複合繊維の表面に気相状態の酸化性物質を流通させ、前記樹脂複合繊維と前記酸化性物質とを接触させて安定化し、樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
を含むことを特徴とする極細炭素繊維の製造方法。
(3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
をさらに含む〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の極細炭素繊維の製造方法。
本発明の極細炭素繊維の製造方法は、
(1)熱可塑性樹脂及びメソフェーズピッチから成る組成物を溶融状態で成形することにより前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る工程と、
(2)前記樹脂複合繊維の表面に気相状態の酸化性物質を流通させ、前記樹脂複合繊維と前記酸化性物質とを接触させて安定化し、樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
を含む。
本発明の極細炭素繊維の製造方法は、上記(2)と(4)との間に以下の(3)の工程、
(3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
を含むことが好ましい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、樹脂複合安定化繊維を製造後、容易に除去される必要がある。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリ乳酸等が好ましく使用される。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましく用いられる。
メソフェーズピッチとは溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうるピッチである。本発明で使用するメソフェーズピッチとしては、石炭や石油の蒸留残渣を原料とするものや、ナフタレン等の芳香族炭化水素を原料とするものが挙げられる。例えば、石炭由来のメソフェーズピッチは、コールタールピッチの水素添加・熱処理を主体とする処理、水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする処理等により得られる。
本発明の製造方法において用いられる、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとから成る組成物(以下、メソフェーズピッチ組成物ともいう)は、熱可塑性樹脂100質量部とメソフェーズピッチ1〜150質量部とを含んで成る。メソフェーズピッチの含有量は5〜100質量部であることが好ましい。メソフェーズピッチの含有量が150質量部を超えると所望の分散径を有する樹脂複合繊維が得られず、1質量部未満であると目的とする炭素繊維を安価に製造することができない等の問題が生じるため好ましくない。
上記のメソフェーズピッチ組成物から樹脂複合繊維を製造する方法としては、所望の炭素繊維が作製できれば限定されないが、メソフェーズピッチ組成物を紡糸口金より溶融紡糸する方法、メソフェーズピッチ組成物を矩形口金より溶融製膜する方法を例示することができる。これにより、樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチの初期配向性を高くすることができる。
上記のようにして得られた樹脂複合繊維は、該樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチ繊維を安定化(不融化ともいう)して樹脂複合安定化繊維が作製される。安定化は、該樹脂複合繊維の表面に気相状態の酸化性物質を流通させて接触させることにより行う。酸化性物質としては、空気、酸素、オゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物又はハロゲンが例示される。
次に、上述のようにして得られる樹脂複合安定化繊維は、その中に含まれる熱可塑性樹脂が除去されて安定化繊維が分離される。この工程では、安定化繊維の熱分解を抑制しながら、熱可塑性樹脂を分解・除去する。熱可塑性樹脂を分解・除去する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を溶剤を用いて除去する方法や、熱可塑性樹脂を熱分解して除去する方法が挙げられる。
上記安定化繊維を不活性ガス雰囲気下で炭素化及び/又は黒鉛化することにより、本発明の極細炭素繊維が得られる。その際に使用する容器としては、黒鉛製のルツボ状のものが好ましい。ここで、炭素化とは比較的低温(好ましくは1000℃程度)で加熱することをいい、黒鉛化とはさらに高温で加熱(好ましくは3000℃程度)することにより黒鉛の結晶を成長させることをいう。
本発明の炭素繊維の製造方法は、粉砕処理工程を有していても良い。粉砕処理は、熱可塑性樹脂除去工程、及び/又は、炭化焼成工程において実施するのが好ましい。粉砕方法としては、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、インペラーミル、カッターミル等の微粉砕機を適用することが好ましく、粉砕後に必要に応じて分級を行ってもよい。湿式粉砕の場合、粉砕後に分散媒体を除去するが、この際に2次凝集が顕著に生じるとその後の取り扱いが非常に困難となる。このような場合は、乾燥後、ボールミルやジェットミル等を用いて解砕操作を行うことが好ましい。
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維は、例えば非水電解質二次電池用の電極を構成する導電助剤として有用である。
なお、この極細炭素繊維は、全体として繊維状の形態を有していればよく、例えば、上記アスペクト比の好ましい範囲未満のものが接触したり結合したりして一体的に繊維形状を持っているもの(例えば、球状炭素が数珠状に連なっているもの、極めて短い少なくとも1本または複数本の繊維が融着等によりつながっているものなど)も含む。
本発明の炭素系導電助剤は、上述した本発明の極細炭素繊維を含んで構成される。本発明の炭素系導電助剤は、本発明の極細炭素繊維のみからなるものであってもよく、本発明の極細炭素繊維とアセチレンブラック等の公知の導電助剤とを併用して複合化したもの等であってもよい。
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)を用いて観察及び写真撮影を行った。極細炭素繊維等の平均繊維径は、得られた電子顕微鏡写真から無作為に300箇所を選択して繊維径を測定し、それらのすべての測定結果(n=300)の平均値である。平均繊維長についても同様に算出した。
X線回折測定はリガク社製RINT−2100を用いてJIS R7651法に準拠し、格子面間隔(d002)及び結晶子大きさ(Lc)(六角網面積層方向)を測定した。
キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni−Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し、水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下、480℃で熱処理した後、減圧して低沸点分を除き、メソフェーズピッチを得た。このメソフェーズピッチをフィルターを用いて温度340℃でろ過を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精製されたメソフェーズピッチを得た。
熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(MFR=2g/10min)90質量部及び熱可塑性炭素前駆体として参考例1で得られたメソフェーズピッチ(メソフェーズ率90.9%、軟化点303.5℃)10質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM−26SS」、バレル温度300℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を調製した。このメソフェーズピッチ組成物をシリンダー式単孔紡糸機を用いて、380℃の紡糸口金より紡糸し、樹脂複合繊維(メソフェーズピッチ繊維を島成分とする海島型複合繊維)を作製した。
熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(MFR=1g/10min)84質量部及び熱可塑性炭素前駆体として参考例1で得られたメソフェーズピッチ(メソフェーズ率90.9%、軟化点303.5℃)16質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM−26SS」、バレル温度300℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を調製した。上記メソフェーズピッチ組成物をシリンダー式単孔紡糸機を用いて、330℃の紡糸口金より紡糸し、樹脂複合繊維(メソフェーズピッチ繊維を島成分とする海島型複合繊維)を作製した。
参考例2で得られた樹脂複合繊維を、反応容器に仕込み、気相状態の酸化性物質として酸素を0.7体積%含む窒素との混合ガスを流速0.0025m/sで吹き込みながら180分間保持することにより、メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。その際の反応系内の温度は340℃であった。
次に、上記樹脂複合安定化繊維を、真空ガス置換炉中で窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化繊維を得た。
得られた安定化繊維をエタノール/イオン交換水混合溶媒(体積比=1/1)中に加え、ミキサーで10分間粉砕することにより分散させた。得られた分散液はろ過した。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図1に示した。
参考例3で得られた樹脂複合繊維を用い、酸化性物質として、空気92体積%と二酸化窒素8体積%との混合ガスを用いて流速を0.00043m/sで260分間保持したこと以外は実施例1と同様に操作を行った。その際の反応系内の温度は55℃であった。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図2に示した。
参考例3で得られた樹脂複合繊維を用い、流速を0.00085m/sで160分間保持したこと以外は実施例2と同様に操作を行った。その際の反応系内の温度は60℃であった。
実施例1の酸化性物質を空気100%に変更し、流速を2m/sに変更したこと以外は実施例1と同様に操作を行った。その際、酸化性物質を吹き込んでから保持時間が300分間以上必要であり、反応系内の温度は340℃であった。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図3に示したが、安定化繊維に熱可塑性樹脂由来の異物が多少残っていることが確認された。
実施例1の酸化性物質をオゾン0.3体積%と空気99.7体積%の混合ガスに変更し、流速を0.0025m/sで180分間保持したこと以外は実施例1と同様に操作を行った。その際の反応系内の温度は100℃であった。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図4に示した。
実施例1で得られた安定化繊維を流量1l/minの窒素下で室温から1000℃まで5℃/minの条件で昇温し、1000℃到達後30分間保持することで炭素化を行い、さらにアルゴンガス雰囲気下、3時間かけて室温から3000℃まで昇温することで極細炭素繊維を作製した。得られた極細炭素繊維は乾式ジェットミルにて解砕処理を行った。
得られた極細炭素繊維の平均繊維径は400nm、平均繊維長は15μmであり、分岐構造は見られなかった。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3374nm、結晶子大きさ(Lc)(六角網面積層方向)は37.1nmであった。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図5に示す。
実施例3で得られた安定化繊維を実施例6と同様に操作して、極細炭素繊維を得た。得られた極細炭素繊維の平均繊維径は234nm、平均繊維長は15μmであり、分岐構造は見られなかった。また、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が0.3372nm、結晶子大きさ(Lc)(六角網面積層方向)は62.3nmであった。ここで撮影した電子顕微鏡写真を図6に示す。
Claims (5)
- (1)熱可塑性樹脂100質量部とメソフェーズピッチ1〜150質量部とからなる組成物を溶融状態で成形することにより前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る工程と、
(2)前記樹脂複合繊維の表面に気相状態の酸化性物質(但し、空気のみである場合を除く)を流通速度0.0001〜0.01m/sで流通させることにより、前記樹脂複合繊維と前記酸化性物質とを接触させて安定化し、樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
を含むことを特徴とする極細炭素繊維の製造方法。 - 前記酸化性物質が、酸素と窒素との混合ガス、オゾンと空気との混合ガス、又は窒素酸化物と空気との混合ガスである請求項1に記載の極細炭素繊維の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜25g/10min.のポリエチレンである請求項1又は2に記載の極細炭素繊維の製造方法。
- 前記メソフェーズピッチのメソフェーズ率が、90%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。
- 前記安定化工程の後であって前記炭化焼成工程の前に、
(3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
をさらに含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。
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