JP4342871B2 - 極細炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents

極細炭素繊維及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は炭素繊維に関し、更に詳しくは、高強度と高弾性率とを兼備する極細炭素繊維に関する。
極細炭素繊維は高強度、高弾性率、高導電性、軽量等の優れた特性を有している事から、高性能複合材料のフィラーとして使用されている。その用途は、従来からの機械的強度向上を目的とした補強用フィラーに留まらず、炭素材料に備わった高導電性を生かし、電磁波シールド材、静電防止材用の導電性樹脂フィラーとして、あるいは樹脂への静電塗料のためのフィラーとしての用途が期待されている。また炭素材料としての化学的安定性、熱的安定性と微細構造との特徴を生かし、フラットディスプレー等の電界電子放出材料としての用途も期待されている。
このような、高性能複合材料用としての極細炭素繊維の製造法として、1)気相法を用いた炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;以下VGCFと略す)製造法、2)樹脂組成物の溶融紡糸から製造する方法の2つが報告されている。
気相法を用いた製造法としては、たとえばベンゼン等の有機化合物を原料とし、触媒としてフェロセン等の有機遷移金属化合物をキャリアーガスとともに高温の反応炉に導入し、基盤上に生成させる方法(例えば、特許文献1を参照。)、浮遊状態でVGCFを生成させる方法(例えば、特許文献2を参照。)、あるいは反応炉壁に成長させる方法(例えば、特許文献3を参照。)等が開示されている。しかし、これらの方法で得られる極細炭素繊維は高強度、高弾性率を有するものの、繊維の分岐が多く、補強用フィラーとしては性能が非常に低いといった問題があった。また、コスト高になるといった問題もあった。
一方、樹脂組成物の溶融紡糸から炭素繊維を製造する方法としては、フェノール樹脂とポリエチレンとの複合繊維から極細炭素繊維を製造する方法(例えば、特許文献4を参照)が開示されている。該方法の場合、分岐構造の少ない極細炭素繊維が得られるが、フェノール樹脂は完全非晶であるため、配向形成しにくく、且つ難黒鉛化性であるため得られる極細炭素繊維の強度、弾性率の発現は期待できない等の問題があった。
特開昭60−27700号公報(公報第2−3頁) 特開昭60−54998号公報(公報第1−2頁) 特許第2778434号公報(公報第1−2頁) 特開2001−73226号公報(公報第3−4頁)
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題を解決し、分岐構造の無い高強度・高弾性率の極細炭素繊維を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、前記極細炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、
広角X線測定で評価した網平面間の距離(d002)が0.335nm〜0.360nmの範囲にあり、網平面群の厚さ(Lc)が1.0nm〜150nmの範囲にあり、繊維径が0.001μm〜2μmの範囲にあって、且つ実質的に分岐構造を有さない、極細炭素繊維。
によって達成することができる。
また、本発明の他の目的は、
(1)熱可塑性樹脂100重量部と、ピッチ、ポリアクリロニトリル、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾアゾール、およびアラミド類からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性炭素前駆体1〜150重量部とからなる樹脂組成物を100〜400℃の雰囲気温度下で成形して、前駆体成形体を製造し、
(2)前駆体成形体に含まれる熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化前駆体成形体を形成し、
(3)安定化前駆体成形体から熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成し、そして
(4)繊維状炭素前駆体を不活性ガス雰囲気下で炭素化もしくは黒鉛化する、
請求項1記載の炭素繊維の製造方法によって達成される。
本発明の炭素繊維は、従来知られていた炭素繊維よりも分岐構造が少ないために補強用フィラーとして優れた特性を有する。また、フェノール樹脂とポリエチレンとの複合繊維から得られる炭素繊維に比べ、優れた機械特性を与える。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維は、広角X線測定で評価した網平面間の距離(d002)が0.335nm〜0.340nmの範囲にあり、網平面群の厚さ(Lc)が10nm〜150nmの範囲にあり、繊維径が0.001μm〜2μmの範囲にあって、且つ実質的に分岐構造を有さない、極細炭素繊維である。
ここで、前記網平面間の距離(d002)が0.335nm〜0.340nmの範囲を逸脱すると、炭素繊維の強度が著しく低下してしまい、一方、前記網平面群の厚さ(Lc)が10nm未満であると、炭素繊維の弾性率が著しく低下してしまい、また前記網平面群の厚さ(Lc)が150nmを超えると、炭素繊維の弾性率は著しく高くなるものの、強度が著しく低下する。高強度、高弾性率の炭素繊維として、より好ましい範囲は網平面間の距離(d002)が0.335nm〜0.340nmの範囲にあり、網平面群の厚さ(Lc)が10nm〜130nmの範囲にあることである。
本発明の炭素繊維は、その繊維径が0.001μm〜2μmの範囲にあることが必要である。この範囲内にあるときには、特に極細の炭素繊維として、各種用途に有用に用いることができる。なお、繊維径が2μmより大きい場合、高性能複合材料用フィラーとしての性能は著しく低下する。一方、繊維径が0.001μm未満であると、得られる炭素繊維集合体のかさ密度が非常に小さくなり、ハンドリングに劣るものとなる。
本発明における極細炭素繊維は、実質的に分岐構造を有さないものである。ここで、実質的に分岐構造を有さないとは、繊維そのものが分岐している部分を持たないこと、すなわち、主体とする極細炭素繊維からいわば枝状の極細繊維が生じていないことをいうが、本発明の目的とする補強用フィラーとしての性能が維持される範囲内で分岐構造を有する繊維を除外するものでは無い。
また、繊維長(L)と繊維径(D)との間に下記関係式(1)が成り立つことが好ましい。
30 < L/D (1)
ここで、L/Dが30以上であると、高性能複合材料用フィラーとしての性能が著しく向上する。より好ましくはL/Dが50以上である。上記条件を満足したときには、高性能複合材料用フィラーとして、さらに優れた機械特性を有する炭素繊維を得ることができる。
本発明において、上記条件を満足する炭素繊維は、例えば、(1)熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体とからなる樹脂組成物から、例えば、熱可塑性樹脂100重量部と、ピッチ、ポリアクリロニトリル、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾアゾール、およびアラミド類からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性炭素前駆体1〜150重量部とからなる樹脂組成物を100〜400℃の雰囲気温度下で成形して前駆体成形体を製造し、(2)前駆体成形体に含まれる熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化前駆体成形体を形成し、(3)安定化前駆体成形体から熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成し、そして(4)繊維状炭素前駆体を不活性ガス雰囲気下で炭素化もしくは黒鉛化することで得ることができる。
以下に、本発明で使用する(1)熱可塑性樹脂、(2)熱可塑性炭素前駆体について説明し、ついでこの熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体から、(3)樹脂組成物を製造する方法、次いで(4)樹脂組成物から炭素繊維を製造する方法、の順に詳細に説明する。
(1)熱可塑性樹脂:
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、安定化前駆体成形体製造後に容易に除去される必要がある。このため、不活性ガス雰囲気下、350℃以上600℃未満の温度で5時間保持することで、初期重量の15wt%以下、より好ましくは10wt%以下、さらには5wt%以下にまで分解する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
このような熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が好ましく使用される。これらの中でもガス透過性が高く、容易に熱分解しうる熱可塑性樹脂として、例えば下記一般式(I)で表されるポリオレフィン系の熱可塑性樹脂やポリエチレンなどが好ましく使用される。
Figure 0004342871
上記一般式(I)で表される化合物の具体的な例としては、ポリ−4−メチルペンテン−1やポリ−4−メチルペンテン−1の共重合体、例えばポリ−4−メチルペンテン−1にビニル系モノマーが共重合したポリマーなどを例示することができる。また、ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンの単独重合体またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体などのエチレンと他のビニル系単量体との共重合体等が挙げられる。
また、エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。他のビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステルなどが挙げられる。
また、本発明の熱可塑性樹脂は熱可塑性炭素前駆体と容易に溶融混練および溶融成型できるという点から、非晶性の場合、ガラス転移点が250℃以下、結晶性の場合、結晶融点が300℃以下であることが好ましい。
(2)熱可塑性炭素前駆体:
本発明に用いられる熱可塑性炭素前駆体は酸素雰囲気下200℃以上350℃未満で0.05〜30時間保持した後、次いで酸素雰囲気下350℃以上600℃未満の温度で5時間保持した際、初期重量の80wt%以上が残存する化合物を用いるのが好ましい。
上記条件で、残存量が初期重量の80%未満であると、熱可塑性炭素前駆体から充分な炭化率で炭素繊維を得ることができず、好ましくない。より好ましくは、上記条件において初期重量の85%以上が残存することである。
上記条件を満たす熱可塑性炭素前駆体として具体的には、レーヨン(セルロース)、ピッチ、ポリα−クロロアクリロニトリル、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾアゾール、およびアラミド類等が挙げられ、これらの中でピッチ、ポリカルボジイミドが好ましく、ピッチがさらに好ましい。
また、ピッチの中でも一般的に高強度、高弾性率の期待されるメソフェーズピッチが好ましい。ここで、メソフェーズピッチとは溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうる化合物を指す。メソフェーズピッチの原料としては石炭や石油の蒸留残渣を使用してもよく、有機化合物を使用しても良いが、安定化や炭素化もしくは黒鉛化のしやすさから、ナフタレン等の芳香族炭化水素を原料としたメソフェーズピッチが好ましい。
上記熱可塑性炭素前駆体は熱可塑性樹脂100重量部に対し1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部を使用しうる。熱可塑性炭素前駆体の使用量が150重量部以上であると所望の分散径を有する前駆体成形体が得られず、1重量部以下であると目的とする炭素繊維を安価に製造する事ができない等の問題が生じるため好ましくない。
(3)樹脂組成物の製造:
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体から製造される。熱可塑性炭素前駆体の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部である。熱可塑性炭素前駆体の使用量が150重量部を超えると所望の分散径を有する前駆体成形体が得られず、1重量部未満であると目的とする炭素繊維を安価に製造する事ができない等の問題が生じるため好ましくない。熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体とから樹脂組成物を製造する方法は、溶融状態における混練が好ましい。熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体の溶融混練は公知のものを必要に応じて用いる事ができ、例えば一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。これらの中で上記熱可塑性炭素前駆体を熱可塑性樹脂に良好にミクロ分散させるという目的から、同方向二軸押出機が好ましく使用される。溶融混練温度としては100℃〜400℃で行なうのが好ましい。溶融混練温度が100℃未満であると、熱可塑性炭素前駆体が溶融状態にならず、熱可塑性樹脂とのミクロ分散が困難であるため好ましくない。一方、400℃を超える場合、熱可塑性樹脂及び熱可塑性炭素前駆体の分解が進行するためいずれも好ましくない。溶融混練温度のより好ましい範囲は150℃〜350℃である。また、溶融混練の時間としては0.5〜20分間、好ましくは1〜15分間である。溶融混練の時間が0.5分間未満の場合、熱可塑性炭素前駆体のミクロ分散が困難であるため好ましくない。一方、20分間を超える場合、極細炭素繊維の生産性が著しく低下し好ましくない。本発明では、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体から溶融混練により樹脂組成物を製造する際に、酸素ガス含有量10%未満のガス雰囲気下で溶融混練することが好ましい。本発明で使用する熱可塑性炭素前駆体は酸素と反応することで溶融混練時に変性不融化してしまい、熱可塑性樹脂中へのミクロ分散を阻害することがある。このため、不活性ガスを流通させながら溶融混練を行い、できるだけ酸素ガス含有量を低下させることが好ましい。より好ましい溶融混練時の酸素ガス含有量は5%未満、さらには1%未満である。
上記の方法で得た樹脂組成物は、熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmとなるのが好ましい。樹脂組成物中で熱可塑性炭素前駆体は島相を形成し、球状あるいは楕円状となる。ここで言う分散径とは樹脂組成物中に含まれる熱可塑性炭素前駆体の球形の直径または楕円体の長軸径を意味する。
熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmの範囲を逸脱すると、高性能複合材料用としての炭素繊維フィラーを製造することが困難となることがある。熱可塑性炭素前駆体の分散径のより好ましい範囲は0.01〜30μmである。また、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体からなる樹脂組成物を、300℃で3分間保持した後、熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmであることが好ましい。
一般に、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体との溶融混練で得た樹脂組成物を、溶融状態のままで保持しておくと時間と共に熱可塑性炭素前駆体が凝集する。熱可塑性炭素前駆体の凝集により、分散径が50μmを超えると、高性能複合材料用としての炭素繊維フィラーを製造することが困難となることがある。熱可塑性炭素前駆体の凝集速度の程度は、使用する熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体の種類により変動するが、より好ましくは300℃で5分間、さらに好ましくは300℃で10分間以上、0.01〜50μmの分散径を維持していることが好ましい。
(4)樹脂組成物から炭素繊維を製造する方法:
樹脂組成から、炭素繊維を得るにあたっては、まず樹脂組成物から前駆体成形体を100〜400℃の雰囲気下で成形する。該成形体としては、特に形状を問わないがハンドリングの観点から繊維状あるいはフィルム状であることが好ましい。なお、ここで言う繊維状とは繊維径0.5〜100μm、繊維軸方向の長さ1m以上の形態を指す。また、フィルム状とは厚さが1〜500μmのシート形態を指す。
ここで、成形体として繊維状とする場合には、溶融混練した樹脂組成物を紡糸口金より溶融紡糸することにより、熱可塑性炭素前駆体を含有した複合繊維形態として前駆体成形体を得る方法などを例示することができる。溶融紡糸する際の紡糸温度としては150℃〜400℃、好ましくは180℃〜350℃である。紡糸引取り速度としては10m/分〜2000m/分である事が好ましい。上記範囲を逸脱すると所望の繊維状前駆体成形体が得られないため好ましくない。熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体とを溶融混練して得た樹脂組成物を、紡糸口金より溶融紡糸する際、溶融状態のままで配管内を送液し紡糸口金より溶融紡糸する事が好ましく、熱可塑性樹脂と熱可塑性炭素前駆体の溶融混練から紡糸口金吐出までの移送時間は10分間以内である事が好ましい。
他方、前駆体成形体としてフィルム状成形体とする場合には、例えば2枚の板で樹脂組成物を挟みこんでおき、片方の板のみを回転させるか、2枚の板を異方向に回転させるか、または、同方向で異速度で回転させることでせん断が付与されたフィルムを作成する方法、圧縮プレス機により樹脂組成物に急激に応力を加えてせん断が付与されたフィルムを作成する方法、回転ローラーによりせん断が付与されたフィルムを作成する方法などを例示することができる。
また、溶融状態または軟化状態にある繊維状またはフィルム状の成形体を延伸することで、前駆体成形体に含まれる熱可塑性炭素前駆体をさらに伸長することも好ましく行うことができる。これらの処理は、100℃〜400℃、より好ましくは150℃〜380℃で実施するのが好ましい。
次いで、得られた前駆体成形体に含まれる熱可塑性炭素前駆体を安定化処理し安定化前駆体成形体を形成する。ここで、熱可塑性炭素前駆体の安定化は炭素化もしくは黒鉛化された炭素繊維を得るために必要な工程であり、これを実施せず次工程である熱可塑性樹脂の除去を行った場合、熱可塑性炭素前駆体が熱分解したり融着したりするなどの問題が生じる。安定化の方法としては酸素などのガス気流処理、酸性水溶液などの溶液処理など公知の方法で行なう事ができるが、生産性の面からガス気流下での不融化が好ましい。使用するガス成分としては前記熱可塑性樹脂への浸透性および熱可塑性炭素前駆体への吸着性の点から、また熱可塑性炭素前駆体を低温で速やかに不融化させうるという点から酸素および/またはハロゲンガスを含む混合ガスである事が好ましい。ハロゲンガスとしては、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、沃素ガスを挙げることができるが、これらの中でも臭素ガス、沃素ガスが特に好ましい。ガス気流下での不融化の具体的な方法としては、温度50〜350℃、好ましくは80〜300℃で、5時間以下、好ましくは2時間以下、さらには30分間以下で所望のガス雰囲気下に曝すことが好ましい。
また、上記不融化により前駆体成形体中に含まれる熱可塑性炭素前駆体の軟化点は著しく上昇し、所望の炭素繊維を得るという目的から軟化点が400℃以上となる事が好ましく、500℃以上である事がさらに好ましい。
次いで、安定化前駆体成形体中に含まれる熱可塑性樹脂を除去し、繊維状炭素前駆体のみを分離するが、この工程では、炭素繊維前駆体の熱分解をできるだけ抑え、かつ熱可塑性樹脂を分解除去し、繊維状炭素前駆体のみを分離する必要がある。熱可塑性樹脂を分解除去する方法としては、例えば溶剤により熱可塑性樹脂を溶解させる方法、熱分解により熱可塑性樹脂を分解除去する方法を例示することができる。
最後に、熱可塑性樹脂を除いた繊維状炭素前駆体を不活性ガス雰囲気中で炭素化もしくは黒鉛化して炭素繊維を製造するが、得られる炭素繊維の繊維径としては0.001μm〜2μmであり、0.001μm〜1μmである事が好ましい。
上記の繊維状炭素前駆体の炭素化もしくは黒鉛化において使用される不活性ガスとしては窒素、アルゴン等があげられ、温度は500℃〜3500℃、好ましくは800℃〜3000℃である。なお、炭素化もしくは黒鉛化する際の、酸素濃度は20ppm以下、さらには10ppm以下であることが好ましい。上記方法を実施すれば、目的とする炭素繊維を得ることが出来る。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
(1)樹脂組成物中における熱可塑性炭素前駆体の分散粒子径:
試料を任意の面で切断したときの切断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)を用いて観察し、島状に分散している熱可塑性炭素前駆体の粒子径を求めた。
(2)繊維状前駆体成形体の繊維径:
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)を用いて観察して求めた。
(3)炭素繊維の広角X線測定:
理学電気株式会社製のRU−300を用いた。なお、網平面間の距離(d002)は2θの値から、網平面群の厚さ(Lc)はピークの半値幅からそれぞれ求めた。
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてポリ−4−メチルペンテン−1(TPX:グレードRT−18[三井化学株式会社製])100重量部と熱可塑性炭素前駆体としてメソフェーズピッチAR−HP(三菱ガス化学株式会社製)11.1部を同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX−30、バレル温度290℃、窒素気流下)で溶融混練して樹脂組成物を作成した。この条件で得られた熱可塑性炭素前駆体の熱可塑性樹脂中への分散径は0.05〜2μmであった。また、樹脂組成物を300℃で10分間保持したが、熱可塑性炭素前駆体の凝集は認められず、分散径は0.05〜2μmであった。
上記樹脂組成物を300℃で紡糸口金より紡糸し、前駆体成形体(炭素繊維前駆体を島成分として含有した海島型複合繊維)を作成した。この複合繊維の繊維径は20μmであり、断面におけるメソフェーズピッチの分散径はすべて2μm以下であった。次に、前駆体成形体を空気中、200℃で20時間保持して安定化前駆体成形体を得た。
次に、安定化前駆体成形体を窒素ガス雰囲気下、5℃/分の昇温速度で450℃まで昇温し、450℃で5時間保持することで、熱可塑性樹脂を除去した繊維状炭素前駆体を形成した。この繊維状炭素前駆体を窒素雰囲気下中で30℃から1000℃まで2℃/分の昇温速度で昇温して炭素繊維を得た。
この炭素繊維をアルゴンガス雰囲気下、20℃/分の昇温速度で2700℃まで昇温して黒鉛化を実施した。黒鉛化した炭素繊維の広角X線測定から、グラファイト層の網平面間距離(d002)は0.338nm、網平面群の厚さ(Lc)は12.0nmであった。
なお、得られた炭素繊維を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)により撮影した写真図を示す。
実施例1の操作によって得られた炭素繊維を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)により撮影した写真図(30000倍)である。

Claims (9)

  1. 広角X線測定で評価した網平面間の距離(d002)が0.335nm〜0.340nmの範囲にあり、網平面群の厚さ(Lc)が10nm〜150nmの範囲にあり、繊維径が0.001μm〜2μmの範囲にあって、且つ実質的に分岐構造を有さない、極細炭素繊維。
  2. 繊維長(L)と繊維径(D)とが下記関係式(1)を満足する、請求項1記載の極細炭素繊維。
    30 < L/D (1)
  3. (1)熱可塑性樹脂100重量部と、ピッチ、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾアゾール、およびアラミド類からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性炭素前駆体1〜150重量部とからなる樹脂組成物を100〜400℃の雰囲気温度下で成形して、前駆体成形体を製造し、
    (2)前駆体成形体に含まれる熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化前駆体成形体を形成し、
    (3)安定化前駆体成形体から熱可塑性樹脂を除去して繊維状炭素前駆体を形成し、そして
    (4)繊維状炭素前駆体を不活性ガス雰囲気下で炭素化もしくは黒鉛化する、
    請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  4. 熱可塑性樹脂が下記一般式(I)で表される請求項3記載の製造方法。
    Figure 0004342871
  5. 熱可塑性樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1及び/又はその共重合体である、請求項4記載の製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂がポリエチレン及び/又はその共重合体である、請求項4記載の製造方法。
  7. 熱可塑性炭素前駆体がメソフェーズピッチからなる、請求項4記載の製造方法
  8. 前駆体成形体が、樹脂組成物を紡糸することによって得られる前駆体繊維である、請求項3記載の製造方法。
  9. 前駆体成形体が、樹脂組成物を製膜することによって得られる前駆体フィルムである、請求項4記載の製造方法。
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