以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
実施の形態1.
図1は、エスカレーターの例を示す断面図である。エスカレーターは、トラス1、及びステップ2を備える。トラス1は、上下の階に架け渡される。乗客は、ステップ2に乗って乗り口(図示せず)から降り口3に移動する。即ち、図1は、上りのエスカレーターを示す。図1に示すエスカレーターは、下りのエスカレーターでも良い。
降り口3の下方に、機械室4が設けられる。機械室4は、トラス1の内部に形成された空間である。機械室4は、床板5によって塞がれる。床板5は、降り口3の床を形成する。機械室4に、電動機6及び制御装置7が設けられる。電動機6は、スプロケット8を駆動する。制御装置7は、電動機6を制御する。
スプロケット8が設けられた軸9に、スプロケット10及び11が設けられる。スプロケット10及び11は、スプロケット8と共に回転する。スプロケット10に、ステップチェーン12が巻き掛けられる。ステップチェーン12に多数のステップ軸13が設けられる。各ステップ軸13にステップ2が固定される。これにより、ステップチェーン12に多数のステップ2が連結される。ステップチェーン12に牽引されることにより、ステップ2は移動する。
スプロケット11に、手摺チェーン14が巻き掛けられる。手摺チェーン14は、電動機6の駆動力を駆動装置15に伝達する。駆動装置15は、移動手摺16を駆動する。
ステップチェーン12及び手摺チェーン14は、エスカレーターで使用されるチェーンの一例である。エスカレーターにおいて他のチェーンが使用されても良い。例えば、駆動装置15に、移動手摺16に接触するローラを回転させるためのチェーンが備えられる。
保守員は、エスカレーターの点検において、これらのチェーンの伸び率を測定し、測定した伸び率を基準値と比較する。保守員は、当該基準値を決めるために、チェーンのサイズを特定する必要がある。以下に、エスカレーターで使用されているチェーンのサイズを特定するための工具について詳しく説明する。
先ず、図2及び図3を参照し、チェーンの構造について説明する。図2は、チェーンの例を示す側面図である。図3は、チェーンの例を示す平面図である。チェーンは、内リンク20、及び外リンク21を備える。
内リンク20は、一対の内プレート22、一対のブシュ23、及び一対のローラ24を備える。一対の内プレート22は、互いに対向するように配置される。各ブシュ23は、一対の内プレート22を連結する。ローラ24は、ブシュ23に回転可能に設けられる。ブシュ23は、ローラ24を貫通する。ローラ24は、一対の内プレート22の間に配置される。
外リンク21は、一対の外プレート25、及び一対のピン26を備える。一対の外プレート25は、内リンク20を間に挟んで互いに対向するように配置される。各ピン26は、一対の外プレート25を連結する。ピン26は、ブシュ23を貫通する。これにより、外リンク21と内リンク20とが連結される。
図4は、実施の形態1における特定用工具30の例を示す図である。特定用工具30は、板部材31、及び紐状部材32を備える。一例として、板部材31は、一定の厚さを有する鉄板からなる。板部材31には、エスカレーターで使用され得るチェーンの外プレート25の幅W1(図2参照)に応じた複数の切欠きが形成されている。
具体的に、図4に示す例では、上記切欠きを形成するための対向部33~40が板部材31に備えられている。対向部33及び対向部34は互いに対向する。対向部33と対向部34とによって、距離L1の幅を有する切欠き41が形成される。距離L1は、表記「RS80」によって特定されるチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。即ち、対向部33及び対向部34は、RS80のチェーンの外プレート25がその間にちょうど嵌まるように設けられている。
対向部35及び対向部36は互いに対向する。対向部35と対向部36とによって、距離L2の幅を有する切欠き42が形成される。距離L2は、表記「RS60」によって特定されるチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。距離L2は、距離L1より小さい。図4に示す例では、切欠き42は、切欠き41の内側で開口する。
対向部37及び対向部38は互いに対向する。対向部37と対向部38とによって、距離L3の幅を有する切欠き43が形成される。距離L3は、表記「RS50」によって特定されるチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。距離L3は、距離L2より小さい。図4に示す例では、切欠き43は、切欠き42の内側で開口する。
対向部39及び対向部40は互いに対向する。対向部39と対向部40とによって、距離L4の幅を有する切欠き44が形成される。距離L4は、表記「RS40」によって特定されるチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。距離L4は、距離L3より小さい。図4に示す例では、切欠き44は、切欠き43の内側で開口する。
また、板部材31に貫通孔45が形成される。紐状部材32は、貫通孔45を用いて板部材31に連結される。
図4は、対向部34の縁、対向部36の縁、対向部38の縁、及び対向部40の縁が一直線状に配置される例を示す。図5は、特定用工具30の他の例を示す図である。対向部34の縁、対向部36の縁、対向部38の縁、及び対向部40の縁は、図5に示す例のように、一直線状に配置されなくても良い。
図6は、特定用工具30を用いてチェーンのサイズを特定する方法を説明するための図である。保守員は、図6に示すように特定用工具30をチェーンに宛がう。具体的に、保守員は、紐状部材32を指或いは手首に掛けた状態で板部材31を保持する。そして、保守員は、チェーンの外プレート25に対して板部材31を側方から当てる。保守員は、外プレート25がちょうど嵌まる切欠きを見つけることにより、チェーンのサイズを特定することができる。図6に示す例であれば、保守員は、使用されているチェーンがRS60のチェーンであると特定できる。
特定用工具30を用いることにより、保守員は、例えばチェーンが狭い機械室4の奥まった場所に配置されている場合であっても、そのチェーンのサイズを容易に特定することができる。
本実施の形態では、特定用工具30の板部材31に4つの切欠き41~44が形成される例について説明した。これは一例である。板部材31に2つ或いは3つの切欠きしか形成されていなくても良い。板部材31に5つ以上の切欠きが形成されていても良い。
図7は、特定用工具30の他の例を示す図である。図8は、図7に示す特定用工具30をA方向から見た図である。図7及び図8に示す特定用工具30は、図4に示す例と同様に、板部材31に対向部33~40が備えられる。また、板部材31に切欠き41~44が形成される。一方、図7及び図8に示す特定用工具30は、切欠き41~44がそれぞれ独立して板部材31に形成されている点で図4に示す例と相違する。
図7及び図8に示す例では、切欠き41及び切欠き42は、横に並ぶように配置される。切欠き41及び切欠き42は、同じ方向に開口する。切欠き43及び切欠き44は、横に並ぶように配置される。切欠き43及び切欠き44は、同じ方向に開口する。切欠き44は、切欠き41が開口する方向とは反対の方向に開口する。切欠き43は、切欠き42が開口する方向とは反対の方向に開口する。
また、図7及び図8に示す特定用工具30は、紐状部材32の代わりに折返し部46を備える点で図4に示す例と相違する。折返し部46は、板部材31に設けられる。折返し部46は、板部材31に直交するように配置される。保守員は、折返し部46を持って特定用工具30をチェーンに宛がう。特定用工具30を落としてしまうことを防止するため、折返し部46に紐状部材32が連結されても良い。
図9は、図7及び図8に示す特定用工具30を用いてチェーンのサイズを特定する方法を説明するための図である。図7及び図8に示す特定用工具30を用いる場合、保守員は、特定用工具30を図9に示すように立てた状態でチェーンに宛がっても良い。図7及び図8に示す例であれば、特定用工具30をチェーンの外プレート25に宛がう際に、当該外プレート25に隣接する外プレート25に板部材31が干渉しない。
図10は、特定用工具30の他の例を示す図である。図10(a)は、特定用工具30の正面図を示す。図10(b)は、特定用工具30の側面図を示す。図10(c)は、特定用工具30の平面図を示す。図10に示す特定用工具30は、板部材31、及び板部材47を備える。
一例として、板部材31及び板部材47は、それぞれ、一定の厚さを有する鉄板からなる。板部材47は、板部材31に設けられる。板部材47は、板部材31に直交するように配置される。図10に示す例では、板部材31と板部材47とは、全体としてL字状に形成されている。
板部材31は、互いに対向する対向部33及び34と互いに対向する対向部39及び40とを備える。即ち、板部材31に、切欠き41及び切欠き44が形成される。切欠き44は、切欠き41が開口する方向とは反対の方向に開口する。
板部材47は、互いに対向する対向部35及び36と互いに対向する対向部37及び38とを備える。即ち、板部材47に、切欠き42及び切欠き43が形成される。切欠き43は、切欠き42が開口する方向とは反対の方向に開口する。
図11は、図10に示す特定用工具30を用いてチェーンのサイズを特定する方法を説明するための図である。図10に示す特定用工具30を用いる場合、保守員は、特定用工具30を図11に示すように板部材47を立てた状態でチェーンに宛がっても良い。板部材47は板部材31に対して直角に設けられているため、図11に示すように特定用工具30がチェーンの外プレート25に宛がわれても、当該外プレート25に隣接する外プレート25に板部材31は干渉しない。板部材31をチェーンに宛がう場合も同様である。
図10に示す例において、板部材47は、板部材31に対して斜めに設けられても良い。かかる場合、板部材31に直交する方向から見て、板部材47は、切欠き41及び切欠き44に重ならない位置に配置されることが好ましい。また、板部材47に直交する方向から見て、板部材31は、切欠き42及び切欠き43に重ならない位置に配置されることが好ましい。
図12は、特定用工具30の他の例を示す図である。図12は、ボックス型の特定用工具30を示す。図12(a)は、特定用工具30の正面図である。図12(b)は、特定用工具30の平面図である。図12に示す特定用工具30は、筒部材48、及び板部材49~52を備える。
一例として、板部材49~52は、それぞれ、一定の厚さを有する長方形状の鉄板からなる。板部材49~52は、筒部材48の一方の縁部に設けられる。板部材49~52は、それぞれの表面が同一平面上に配置されるように互いに平行に配置される。板部材49~52により、エスカレーターで使用され得るチェーンの外プレート25の幅W1(図2参照)に応じた複数の溝が形成される。
具体的に、図12に示す例では、上記溝を形成するための対向部53~60が板部材49~52に備えられる。なお、対向部53~60は、図4に示す例において対向部33~40が有する機能と同様の機能を有する。
対向部53及び対向部54は互いに対向する。対向部53は板部材49に備えられる。対向部54は板部材50に備えられる。対向部53と対向部54とによって、距離L1の幅を有する溝61が形成される。上述したように、距離L1は、RS80のチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。即ち、板部材49と板部材50との間には、RS80のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝61が形成されている。
対向部55及び対向部56は互いに対向する。対向部55は板部材50に備えられる。対向部56は板部材51に備えられる。対向部55と対向部56とによって、距離L2の幅を有する溝62が形成される。上述したように、距離L2は、RS60のチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。即ち、板部材50と板部材51との間には、RS60のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝62が形成されている。図12に示す例では、溝62は溝61に対して直交するように配置される。
対向部57及び対向部58は互いに対向する。対向部57は板部材51に備えられる。対向部58は板部材52に備えられる。対向部57と対向部58とによって、距離L3の幅を有する溝63が形成される。上述したように、距離L3は、RS50のチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。即ち、板部材51と板部材52との間には、RS50のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝63が形成されている。図12に示す例では、溝63は、溝61に対して一直線状となり、且つ溝62に対して直交するように配置される。
対向部59及び対向部60は互いに対向する。対向部59は板部材52に備えられる。対向部60は板部材49に備えられる。対向部59と対向部60とによって、距離L4の幅を有する溝64が形成される。上述したように、距離L4は、RS40のチェーンの外プレート25の幅W1に合わせて設定されている。即ち、板部材52と板部材49との間には、RS40のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝64が形成されている。図12に示す例では、溝64は、溝62に対して一直線状となり、且つ溝61及び溝63に対して直交するように配置される。
また、筒部材48には、保持する際の滑り止めとして機能する複数の貫通孔65が形成されている。
図13は、図12に示す特定用工具30を用いてチェーンのサイズを特定する方法を説明するための図である。保守員は、図13に示すように特定用工具30をチェーンに宛がう。具体的に、保守員は、チェーンの外プレート25に対して筒部材48の一方の縁部側を当てる。保守員は、外プレート25がちょうど嵌まる溝を見つけることにより、チェーンのサイズを特定することができる。図13に示す例であれば、保守員は、使用されているチェーンがRS60のチェーンであると特定できる。
図12及び図13は、特定用工具30の筒部材48の一方の縁部側に4つの溝61~64が形成される例を示す。これは一例である。特定用工具30に2つ或いは3つの溝しか形成されていなくても良い。特定用工具30に5つ以上の溝が形成されていても良い。
図14は、特定用工具30の他の例を示す図である。図14(b)は、特定用工具30の正面図を示す。図14(a)は、特定用工具30の平面図を示す。図14(c)は、特定用工具30の底面図を示す。
図14は、図12に示す例と同様に、ボックス型の特定用工具30を示す。図14に示す特定用工具30は、図12に示す例と同様に、溝61~64が形成される。図12に示す例では筒部材48の一方の縁部側に4つの溝が形成されていたが、図14に示す例では、筒部材48の一方の縁部側に2つの溝が、もう一方の縁部側に2つの溝が形成される。図14に示す特定用工具30は、筒部材48と、板部材49、50a、50b、51、52a、及び52bとを備える。
一例として、板部材49、50a、50b、51、52a、及び52bは、それぞれ、一定の厚さを有する長方形状の鉄板からなる。板部材49、50a、及び52aは、筒部材48の一方の縁部に設けられる。板部材49、50a、及び52aは、それぞれの表面が同一平面上に配置されるように互いに平行に配置される。板部材49、50a、及び52aにより、エスカレーターで使用され得るチェーンの外プレート25の幅W1(図2参照)に応じた2つの溝が形成される。具体的に、図14に示す例では、上記2つの溝を形成するための対向部53、54、59、及び60が板部材49、50a、及び52aに備えられる。
対向部53及び対向部54は互いに対向する。対向部53は板部材49に備えられる。対向部54は板部材50aに備えられる。対向部53と対向部54とによって、距離L1の幅を有する溝61が形成される。即ち、板部材49と板部材50aとの間には、RS80のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝61が形成されている。
対向部59及び対向部60は互いに対向する。対向部59は板部材52aに備えられる。対向部60は板部材49に備えられる。対向部59と対向部60とによって、距離L4の幅を有する溝64が形成される。即ち、板部材52aと板部材49との間には、RS40のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝64が形成されている。図14に示す例では、溝64は、溝61に対して直交するように配置される。
板部材50b、51、及び52bは、筒部材48のもう一方の縁部に設けられる。板部材50b、51、及び52bは、それぞれの表面が同一平面上に配置されるように互いに平行に配置される。板部材50b、51、及び52bにより、エスカレーターで使用され得るチェーンの外プレート25の幅W1に応じた2つの溝が形成される。具体的に、図14に示す例では、上記2つの溝を形成するための対向部55~58が板部材50b、51、及び52bに備えられる。
対向部55及び対向部56は互いに対向する。対向部55は板部材50bに備えられる。対向部56は板部材51に備えられる。対向部55と対向部56とによって、距離L2の幅を有する溝62が形成される。即ち、板部材50bと板部材51との間には、RS60のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝62が形成されている。
対向部57及び対向部58は互いに対向する。対向部57は板部材51に備えられる。対向部58は板部材52bに備えられる。対向部57と対向部58とによって、距離L3の幅を有する溝63が形成される。即ち、板部材51と板部材52bとの間には、RS50のチェーンの外プレート25がちょうど嵌まる溝63が形成されている。図14に示す例では、溝63は、溝62に対して直交するように配置される。
保守員は、図14に示す特定用工具30を用いてチェーンのサイズを特定する場合、図13に示す例と同様に特定用工具30をチェーンに宛がう。保守員は、外プレート25がちょうど嵌まる溝を見つけることにより、チェーンのサイズを特定することができる。
特定用工具30をチェーンの外プレート25に宛がう際に当該外プレート25に隣接する外プレート25に板部材52aが干渉することを防止するため、板部材52aは、対向部53の延長線上に配置されていないことが好ましい。同様に、板部材50aは、対向部60の延長線上に配置されていないことが好ましい。板部材50bは、対向部57の延長線上に配置されていないことが好ましい。板部材52bは、対向部56の延長線上に配置されていないことが好ましい。