JP7103886B2 - 肌の質感改善剤の探索方法 - Google Patents
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1)以下の工程(A)~(C)を含む、肌の質感改善剤の評価又は探索方法。
(A)動物に試験物質を摂取又は投与する工程
(B)前記動物から採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(C)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、肌の質感改善剤として評価又は選択する工程
2)被験者から採取された生体試料中のオキシトシン量を測定し、オキシトシン量に基づいて当該被験者の肌の質感を評価する、肌の質感評価方法。
(A)動物に試験物質を摂取又は投与する工程
(B)前記動物から採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(C)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、肌の質感改善剤として評価又は選択する工程
オキシトシンは、9個のアミノ酸残基からなるペプチドホルモンである。オキシトシンは、大脳の視床下部の室傍核や視索上核に存在する大細胞性神経細胞で合成され、脳下垂体後葉から血中に放出されることが知られる。
オキシトシン量の測定は、液体クロマトグラフ(HPLC)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、あるいは酵素免疫測定法(ELISA)などの免疫学的手法により可能である。これらの測定条件は公知であり、常法に従い容易に定量できる。
前記ELISA法は、例えばOxytocin ELISA kit(Enzo)を使用して実施することができる。
すなわち、オキシトシン量(例えば生体試料中のタンパク質当たりのオキシトシン量)を基準値と比較することにより、オキシトシン量を増加させる試験物質が同定される。基準値としては、異なる濃度の試験物質を投与した(より低濃度の試験物質投与群、プラセボ投与群等)場合に測定されるオキシトシン量や、試験物質投与前に測定されるオキシトシン量の他、触覚刺激を受けていない個体における所定のオキシトシン量等が挙げられる。
具体的には、より高濃度の試験物質投与群とより低濃度の試験物質投与群との間;試験物質投与群とプラセボ投与群との間;又は試験物質投与前後で、オキシトシン量を比較し、試験物質の投与により又はより高濃度の試験物質の投与によりオキシトシン量が上昇する場合にその増加量や増加率に基づいて、又は所定のオキシトシン量を超える場合にその値に基づいて当該試験物質を、当該オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。
例えば、試験物質投与群におけるオキシトシン量が、対照群と比較して20%以上、好ましくは50%以上に増加していれば、当該試験物質を、オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。また、試験物質投与群におけるオキシトシン量が、所定のオキシトシン量(例えば、単位タンパク量当たり5pg)を超える場合に、当該試験物質を、オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。
そして、同定されたオキシトシン量を増加させる試験物質は、肌の質感改善剤として評価又は選択することができる。
ここで、生体試料中のオキシトシン量の測定は、前記と同様の方法により行うことできる。
肌の質感の評価手法としては、例えば、多数の母集団で、各肌の質感とオキシトシンの量を測定し、統計学的に処理をして少なくとも1つのカットオフ値を定め、その値よりも数値が高いまたは低いことで肌の質感の程度を評価することができる。
また、例えば肌の質感がつやであれば、つや感がある~つや感がない肌の質感の判定指標に関し、それらとオキシトシン量を関係づける適当な評価基準を作成し、それに基づいて被験者のオキシトシン量から被験者の肌の質感を判定することもできる。
<1>以下の工程(A)~(C)を含む、肌の質感改善剤の評価又は探索方法。
(A)動物に試験物質を摂取又は投与する工程
(B)前記動物から採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(C)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、肌の質感改善剤として評価又は選択する工程
<2>被験者から採取された生体試料中のオキシトシン量を測定し、オキシトシン量に基づいて当該被験者の肌の質感を評価する、肌の質感評価方法。
<3>生体試料が血液、血清、血漿、尿又は唾液である<1>又は<2>の方法。
<4>肌の質感が、ハリ、つや、透明感及び色ムラから選ばれる1種以上である<1>~<3>のいずれかの方法。
<5>動物が非ヒト動物である<1>の方法。
(1)方法
20-40代の健常女性89名を対象に実施した。
口腔内を水で漱口後、全唾液を遠沈管に10分間吐出して頂いた。唾液は直ちにドライアイスにて凍結し、-80℃にて保管した。
洗浄料を用いて、全顔を洗浄して頂いた。恒温恒湿室(室温20-23℃、湿度40-60%)で20分間の馴化を行った後、頬部の機器計測を行った。皮膚水分蒸散量はTEWA meter TM300(Courage+Khazaka社製)で、角層水分量はCorneometer CM825(Courage+Khazaka社製)で、皮膚色はCM-2600d(コニカミノルタ社製)で、皮膚拡大観察による皮膚表面解析はVisio scan VC98 USB(Courage+Khazaka社製)で測定した。
全唾液サンプルは遠心分離(15,000rpm、10min)後の上清を使用し、測定項目に合わせて、下記に示すよう抽出/濃縮した。Bio-rad Protein assay(BIO-RAD)で、ウシ血清アルブミンで作成した検量線を基に唾液タンパク濃度(mg/ml)を定量し、単位タンパク量当たりの各ホルモン量を算出した。
全唾液の遠心分離後の上清(1.5~3.0ml)と等量の0.1%(v/v) トリフルオロ酢酸(TFA)を混和した。遠心分離(3,000rpm、30min)後の上清を、Sep-pak C18カラム(200mg、3cc、Waters)に供し、下記のように抽出を行った。
C18カラムに1mlの100%アセトニトリル(ACN)、次いで10mlの0.1%TFA溶液(v/v)を通し、その後で0.1%TFA溶液(v/v)と混和した全唾液(3.0~6.0ml)を通し、10mlの0.1%TFA溶液(v/v)で洗浄した後、3mlの(95%ACN/5%(0.1%TFA溶液))(v/v)で溶出させた。溶出した溶液のACNをN2ガスで揮発させ、残った水溶液を凍結乾燥に供した。Oxytocin ELISA kit(Enzo)を用いて定量した。
遠心分離後の全唾液中のコルチゾールを、Cortisol Salivary Immunoassay Kit(Salimetrics)で定量した。
a)肌の機器計測データとオキシトシンとの関連性
各機器測定データと唾液中のオキシトシン量との関連性を検討した結果、表1に示すように相関を示す項目は確認されなかった。一方で、唾液中のコルチゾール量と皮膚水分蒸散量に有意な正相関が確認された。
目視評価による肌の質感のスコア値と唾液中オキシトシン量との関連性を検討した結果、表2に示すように、色ムラ、ハリ、つや、キメの整い感、肌表面のなめらかさ、透明感のスコア値と唾液中オキシトシン量が有意な相関を示すことが明らかになった。一方で唾液中コルチゾール量と相関を示す項目は認められなかった。
(1)方法
20-50代の健常男・女性、合計10名を対象に実施した。
チークブラシで前腕伸側を自身で5分間撫でた。刺激は快感情を喚起する触覚刺激を受容するC線維を活性化する約3-5cm/secの速さ、30-50gの荷重で行った(Loken et al., NATURE NEUROSCIENCE, Vol. 12, p547-548, 2009)。
チークブラシによる刺激直前、刺激30分後の唾液を実施例1(2)と同様に採取した。
実施例1(5)と同様に唾液中のオキシトシンとコルチゾールを定量した。バソプレシンはArg8-Vasopressin ELISA Kit(Enzo)を用いて定量した。データはチークブラシで刺激する前の値を基準とした変化割合で示した。
a)チークブラシ刺激によるオキシトシンの変化
チークブラシ刺激前後の各ホルモンの変化を検討した結果、図1に示すように、唾液中オキシトシン量が有意に上昇することが明らかになった。一方で、唾液中バソプレシン(オキシトシンと構造や分泌メカニズムが類似)、コルチゾールは変化しなかった。
(1)方法
20-40代の健常女性22名を対象に実施した。
チークブラシで2回/日(朝と晩)、3分間、前腕の伸側部を自身で、4週間撫でた。刺激は快感情を喚起する触覚刺激を受容するC線維を活性化する約3-5cm/secの速さ、30-50gの荷重で行った(Loken et al., NATURE NEUROSCIENCE, Vol. 12, p547-548, 2009)。
実施例1(2)と同様に触覚刺激開始前と4週間刺激後の唾液を採取した。4週間刺激後の唾液は、最後の刺激から少なくとも2時間空けて採取した。
実施例1(2)と同様に唾液中のオキシトシンを定量した。
実施例1(3)と同様に目視評価を行った。
(6)結果
a)唾液中オキシトシン量の変化
チークブラシで前腕を4週間撫でることにより、図2に示すように唾液中オキシトシン量が上昇する傾向を示すことが明らかになった。
生体内のオキシトシンが上昇するチークブラシで前腕を撫でる刺激を4週間継続することにより、図3に示すように顔肌の肌表面のなめらかさのスコア値が向上する傾向を示すことが明らかになった。
Claims (2)
- 被験者から採取された唾液中のオキシトシン量を測定し、当該オキシトシン量に基づいて当該被験者の肌の質感を評価する、肌の質感評価方法。
- 肌の質感が、ハリ、つや、透明感及び色ムラから選ばれる1種以上である請求項1記載の方法。
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JP2002525337A (ja) | 1998-09-25 | 2002-08-13 | エントルテク メディカル アーベー | 細胞再生をもたらすオキシトシン活性物質の使用 |
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WO2019230647A1 (ja) | 2018-05-29 | 2019-12-05 | 花王株式会社 | シートの快感情喚起性能の評価方法及び快感情喚起シート |
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2018
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手で触れたときにやわらかさ・心地よさを実感するほど唾液中のオキシトシン量が増えることを確認,2020年10月13日,https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201013-001/ |
手の平で物に触れる行動と唾液中のオキシトシン量との関連性を確認,花王株式会社 ニュースリリース [オンライン],2019年01月29日,https://www.kao.com/jp/corporate/news/2019/20190129-001/,[検索日2019.08.08],インターネット |
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