JP7103887B2 - 快感情向上剤の評価又は探索方法 - Google Patents

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Description

本発明は、触覚刺激によって喚起される快感情を向上させる快感情向上剤の評価又は探索方法、及び触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法に関する。
化粧品などの日用品を使用するとき、ヒトは多様な感情を経験している。特に、化粧品を使用した際の感触によって、幸福・満足感、贅沢感、リラックス、リフレッシュ、不満、落胆等の感情が喚起される。
したがって、化粧品開発には、保湿等の機能的価値だけでなく、心地良さや幸福感・満足感といった快感情を喚起する情緒的価値が求められ、斯かる価値を付与できる素材の開発が進められている。
近年、触覚によって喚起される快感情は、Aβ線維やAδ線維とは異なる、C触覚線維と呼ばれるC線維によって脳に伝わることが報告されている。斯かるC触覚線維の興奮は、刺激の強度と速度が重要であり、筆などのブラシ部材で、秒速1~10cm、20~40Gで皮膚を撫でた時に最も強く興奮することが知られている(非特許文献1)。また、閉眼で顔肌を手のひらで包み込むように30秒間押さえる行為により、幸福・満足感、贅沢感、好緊張感などが喚起されることが明らかとなっている(非特許文献2)。
一方、オキシトシン(Oxytocin)は、9個のアミノ酸から構成されるペプチドホルモンで、主に脳の視床下部で合成されている。オキシトシンは、授乳中の母親で産生が増大することから、射乳に関与すると考えられているが、近年、女性だけでなく男性でも産生されることが明らかにされ、動物を用いた解析により、生物間の愛着/社会性形成に関与することが報告されている(非特許文献3)。またオキシトシン経鼻スプレーの使用による生体内オキシトシンの上昇で、触覚に起因する快感情が上昇することが報告されている(非特許文献4)。さらに触覚刺激であるマッサージ直後に、血中のオキシトシン量が上昇することや(非特許文献5)、父親と早期産児との30分間の皮膚接触の直後に当該父親の唾液中のオキシトシン量が上昇し、接触した30分後まで上昇が維持されることが報告されている(非特許文献6)。しかしながら、触覚に起因した快感情の喚起度合いに応じて変化する客観的な生理指標は知られておらず、本生理指標を測定するための生体試料を採取するのに適した触覚刺激後の時間も知られていないことから、触覚により喚起される快感情の向上剤の評価又は探索や、触覚によって喚起される快感情の程度を客観的に評価することは困難であった。
Loken et al., NATURE NEUROSCIENCE, Vol. 12, p547-548, 2009 引間理恵ら, 第35回日本生理心理学会大会プログラム・予稿集, 59, 2017 Lieberwirth and Wang, CURRENT OPINION IN NEUROBIOLOGY, doi: 10.1016/j.conb.2016.05.006, 2016. Andari E., et al., 2010, Proc Natl Acad Sci U S A, 107(9):4389-94. Morhenn et al., Altern. Ther. Health. Med., 18, 11-18, 2012 Cong et al., Early Hum. Dev., 91, 401-406, 2015
本発明は、触覚刺激によって喚起される快感情を向上させる快感情向上剤の評価又は探索方法、及び触覚刺激によって喚起される快感情の程度を客観的に評価する方法を提供することに関する。
本発明者らは、触覚刺激によって喚起される快感情の程度が、触覚刺激後の所定時間内に採取した唾液中のオキシトシン量の触覚刺激前後の変化率と正相関することを明らかにし、当該オキシトシン量の変化率に基づいて、当該触覚刺激によって喚起される快感情を向上させる素材の評価・探索や、当該触覚刺激によって喚起される快感情の程度を客観的且つ定量的に評価できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)以下の工程(A)~(D)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情向上剤の評価又は探索方法。
(A)試験物質の存在下、動物に触覚刺激を付与する工程
(B)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、前記触覚刺激によって喚起される快感情向上剤として評価又は選択する工程
2)以下の工程(A’)~(D’)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法。
(A’)動物に触覚刺激を付与する工程
(B’)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C’)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D’)前記オキシトシン量を基準値と比較し、前記触覚刺激によって喚起される快感情の程度を評価する工程
本発明によれば、例えば化粧品を肌に馴染ませる行為等の触覚刺激によって喚起される快感情を向上させる快感情向上剤を簡易且つ効率よく評価又は探索することができる。また、当該触覚刺激によって喚起される快感情の程度を定量的且つ客観的に評価することができる。これにより、化粧品等の皮膚外用剤の情緒的価値を高める素材の評価又は探索が可能となり、また、被験者が感じる快感情の程度を客観的に把握することができる。
触覚刺激前後の快感情の評価値差分と唾液中オキシトシン量の変化率との関連性を示すグラフ。
本発明において、「触覚刺激によって喚起される快感情」とは、ヒトを含む動物に対して触覚刺激を付与した場合に喚起される快感情を意味する。ここで、快感情には、心地良さ、幸福・満足感、豪華さ、爽快感などが包含される(門地ら、JOURNAL OF SOCIETY OF COSMETIC CHEMICALS OF JAPAN, Vol. 43, p10-18, 2009参照)。
快感情を喚起するような触覚刺激としては、C触覚線維を興奮させる刺激が挙げられ、例えば、スキンケアのための化粧品(乳液やクリーム等)を肌に馴染ませる行為、ボディケアのためのクリームやローション等を肌に馴染ませる行為、顔肌を両手で包み込むようにして軽く押さえる行為等が挙げられる。
尚、閉眼状態で顔肌を両手で包み込むようにして30秒間軽く押さえる行為により幸福・満足感が得られること(前記非特許文献2)が知られている。
後記実施例に示すとおり、閉眼状態で顔肌を両手で包み込むようにして30秒間軽く押さえることにより喚起される快感情の程度と、当該触覚刺激を与えた後の所定期間内に採取された唾液中のオキシトシン量に有意な正相関が認められた。
この結果は、触覚刺激付与後の所定期間内に採取した生体試料中のオキシトシン量に基づいて、当該触覚刺激によって喚起される快感情の程度の評価や、当該快感情を向上する素材の評価又は探索が可能であることを示す。
本発明の触覚刺激によって喚起される快感情向上剤の評価又は探索方法は、以下の工程(A)~(D)により行われる。
(A)試験物質の存在下、動物に触覚刺激を付与する工程
(B)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、前記触覚刺激によって喚起される快感情向上剤として評価又は選択する工程
工程(A)において用いられる、動物としては、オキシトシンを産生する哺乳類が挙げられ、ヒトの他、チンパンジー、サル、イヌ、ウシ、ブタ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどの非ヒト動物が挙げられる(Yamashita and Kitano, Mol. Phylogenet. Evol., 2013, 2, 520-528)
また、上記動物に投与される試験物質としては、ヒトを始めとする動物の触覚に起因する快感情向上のために使用することを所望する物質であれば、特に制限されず、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物若しくは混合物であってもよい。但し、被験動物がヒトである場合には、安全性が確保された既知の物質、例えば医薬品、化粧品、及びそれらの原料として使用されている物質や組成物であることが好ましい。
試験物質の投与形態は、経口又は非経口投与のいずれでも良いが、非経口投与の形態であるのが好ましく、具体的には、軟膏、クリーム、乳液、ローション、ジェル、エアゾール、パッチ、テープ、スプレー等の種々の形態で皮膚に塗布する形態が好ましい。
また、試験物質の投与は、触覚刺激を付与する前又は同時に行うのが好ましい。
工程(B)において動物から採取される生体試料は、具体的には、血液(血漿、血清、血球(赤血球、白血球)を含む)、尿、唾液、リンパ液などが挙げられ、好ましくは唾液、血液(血漿、血清、血球を含む)、尿が挙げられ、より好ましくは唾液である。
生体試料の採取は、上述した触覚刺激の付与直後から20分後までの間に行われるが、好ましくは15分間の間、より好ましくは10分間の間である。唾液の採取は、特に限定されず、吐唾法、ワッテ法等により行うことができる。例えば、口腔内を水で漱口後、全唾液を所定の容器内に吐出させることにより行われる。採取後の唾液は直ちにドライアイス等にて凍結保存するのが好ましい。
工程(C)において測定されるオキシトシンは、9個のアミノ酸残基からなるペプチドホルモンである。オキシトシンは、大脳の視床下部の室傍核や視索上核に存在する大細胞性神経細胞で合成され、脳下垂体後葉から血中に放出されることが知られる。
オキシトシン量の測定は、液体クロマトグラフ(HPLC)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)、あるいは酵素免疫測定法(ELISA)などの免疫学的手法により可能である。これらの測定条件は公知であり、常法に従い容易に定量できる。
前記ELISA法は、例えばOxytocin ELISA kit(Enzo)を使用して実施することができる。
次いで、オキシトシン量が基準値と比較され、オキシトシン量を増加させる試験物質が、触覚刺激に起因する快感情向上剤として評価又は選択される(工程(D))。
すなわち、オキシトシン量(例えば生体試料中のタンパク質当たりのオキシトシン量)を基準値と比較することにより、オキシトシン量を増加させる試験物質が同定される。基準値としては、異なる濃度の試験物質を投与した(より低濃度の試験物質投与群、プラセボ投与群等)場合に測定されるオキシトシン量や、試験物質投与前に測定されるオキシトシン量の他、触覚刺激を受けていない個体における所定のオキシトシン量等が挙げられる。
具体的には、より高濃度の試験物質投与群とより低濃度の試験物質投与群との間;試験物質投与群とプラセボ投与群との間;又は試験物質投与前後で、触覚刺激前又は触覚刺激後の定常状態で測定されたオキシトシン量と触覚刺激後のオキシトシン量を比較し、試験物質の投与により、若しくはより高濃度の試験物質の投与によりオキシトシン量が上昇する場合にその増加量や増加率に基づいて、又は所定のオキシトシン量を超える場合にその値に基づいて当該試験物質を、当該オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。
例えば、試験物質投与群におけるオキシトシン量が、対照群と比較して50%以上、好ましくは80%以上に増加していれば、当該試験物質を、オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。また、試験物質投与群におけるオキシトシン量が、所定のオキシトシン量(例えば、単位タンパク量当たり5pg)を超える場合に、当該試験物質を、オキシトシン量を増加させる物質として同定することができる。
そして、同定されたオキシトシン量を増加させる試験物質は、当該触覚刺激によって喚起される快感情を向上させる、快感情向上剤として評価又は選択することができる。
このようにして選択された触覚刺激によって喚起される快感情向上剤は皮膚外用剤として、或いは触覚刺激によって喚起される快感情を向上するための素材又は製剤として皮膚外用剤に配合して使用することにより、それの情緒的価値を高めることが可能である。また、快感情向上剤は、食品として、或いは食品に配合して使用することにより、例えば食品摂取後に化粧品(乳液やクリーム等)を肌に馴染ませた時の快感情を向上させ、化粧品の情緒的価値を高めることが可能である。
本発明の、触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法は、以下の工程(A’)~(D’)を含むものである。
(A’)動物に触覚刺激を付与する工程
(B’)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C’)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D’)前記オキシトシン量を基準値と比較し、前記触覚刺激によって喚起される快感情の程度を評価する工程
ここで、工程(A’)の触覚刺激の付与、工程(B’)の生体試料の採取、工程(C’)のオキシトシン量の測定は、前記の工程(A)、(B)、(C)と同様の方法により行うことできる。尚、工程(A’)における被験動物は、ヒトであるのが好ましい。
工程(D’)において、触覚刺激によって喚起される快感情の評価は、例えば、触覚刺激前又は触覚刺激後の定常状態で測定されたオキシトシン量と触覚刺激後のオキシトシン量を比較した場合のオキシトシン量の変化(絶対値量や変化率)、又は触覚刺激を受けていない個体における所定のオキシトシン量との比較に基づいて行うことができる。
例えば、触覚刺激付与直後から所定の期間内に採取した生体試料中のオキシトシン量の、触覚刺激前の値を基準とした変化率(刺激後(Post)/刺激前(Pre))に基づいて評価することが挙げられ、別の一態様としては、例えば、多数の母集団で、触覚刺激によって喚起される快感情の程度とオキシトシンの量を測定し、統計学的に処理をして少なくとも1つのカットオフ値を定め、その値よりも数値が高いまたは低いことで快感情の程度を評価することができる。
尚、快感情の程度とは、快感情の喚起度合い、強さを意味する。
また、例えば、全く良くない~非常に良い、の快感情(気持ち良さ)の程度の判定指標に関し、それらとオキシトシン量を関係づける適当な評価基準を作成し、それに基づいて被験者のオキシトシン量から被験者の快感情の程度を判定することもできる。
尚、上記触覚刺激に喚起される快感情の判定方法は、所謂人間の身体の各器官の構造又は機能を計測する等して人体から各種の資料を収集するための方法に該当し、上記の目的で使用される。すなわち、医療目的で人間の病状や健康状態等の身体状態又は精神状態を判断するものではない。斯かる意味において、本発明の触覚刺激によって喚起される快感情の判定方法は、触覚刺激によって喚起される快感情の測定方法或いは触覚刺激によって喚起される快感情の検査方法とも表記し得る。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>以下の工程(A)~(D)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情向上剤の評価又は探索方法。
(A)試験物質の存在下、動物に触覚刺激を付与する工程
(B)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D)前記オキシトシン量を基準値と比較し、オキシトシン量を増加させる試験物質を、前記触覚刺激によって喚起される快感情向上剤として評価又は選択する工程
<2>以下の工程(A)~(D)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情向上剤の評価又は探索方法。
(A)試験物質の存在下、動物に触覚刺激を付与する工程
(B)前記触覚刺激前及び、同刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D)オキシトシン量を増加させる試験物質を、前記触覚刺激によって喚起される快感情向上剤として評価又は選択する工程
<3>以下の工程(A’)~(D’)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法。
(A’)動物に触覚刺激を付与する工程
(B’)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C’)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D’)前記オキシトシン量を基準値と比較し、前記触覚刺激によって喚起される快感情の程度を評価する工程
<4>以下の工程(A’)~(D’)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法。
(A’)動物に触覚刺激を付与する工程
(B’)前記触覚刺激前及び、同刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から生体試料を採取する工程
(C’)前記採取された生体試料中のオキシトシン量を測定する工程
(D’)オキシトシン量の変化率に基づいて、前記触覚刺激によって喚起される快感情の程度を評価する工程
<5>刺激直後に行われる試料の採取が、刺激直後から好ましくは15分間、より好ましくは10分間の間に行われる、<1>~<4>のいずれかの方法。
<6>生体試料が唾液又は血液、好ましくは唾液である、<1>~<5>のいずれかの方法。
<7>触覚刺激が、皮膚外用剤を肌に馴染ませる行為による刺激である、<1>~<6>のいずれかの方法。
実施例1 触覚刺激により喚起される快感情の程度とオキシトシンとの関連性
(1)試験参加者
20-40代の健常女性8名を対象に実施した。
(2)触覚刺激と気分評価
洗浄料を用いて、全顔を洗浄して頂いた。室温23~24℃、湿度約60%の環境下で15分間の馴化を行った後に、閉眼状態で顔肌を両手で包み込むようにして30秒間軽く押さえた後、顔から手を離して開眼状態で30秒間安静にする試行を、全5回繰り返し行った。
触覚刺激前と直後に、快感情(気持ちの良さ)について、10cmのVisual analog scale(VAS; 一定の長さの直線上に感覚量の程度を表す方法。ここでは,直線の左端を「全く良くない」,右端を「非常に良い」とした)により評価し,触覚刺激の前後で評価値の差分を算出した。
(3)唾液採取
触覚刺激前と直後、30分後に、口腔内を水で漱口後、全唾液を遠沈管に10分間吐出して頂いた。唾液は直ちにドライアイスにて凍結し、-80℃にて保管した。
(4)オキシトシン・コルチゾール測定
全唾液サンプルは遠心分離(15,000rpm、10min)後の上清を使用し、測定項目に合わせて、下記に示すよう抽出/濃縮した。Bio-rad Protein assay(BIO-RAD)で、ウシ血清アルブミンで作成した検量線を基に、抽出・濃縮前の唾液中のタンパク濃度(mg/mL)を定量し、単位タンパク量当たりの各ホルモン量を算出し、刺激前の量を100とした変化率を算出した。
オキシトシン
全唾液の遠心分離後の上清(1.5~3.0mL)と等量の0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)を混和した。遠心分離(3,000rpm、30min)後の上清を、Sep-pak C18カラム(200mg、3cc、Waters)に供し、下記のように抽出を行った。C18カラムに1mLの100%アセトニトリル(ACN)、次いで10mLの0.1%TFA溶液(v/v)を通し、その後で0.1%TFA溶液(v/v)と混和した全唾液(3.0~6.0mL)を通し、10mLの0.1%TFA溶液(v/v)で洗浄した後、3mLの(95%ACN/5%(0.1%TFA溶液))(v/v)で溶出させた。溶出した溶液のACNをNガスで揮発させ、残った水溶液を凍結乾燥に供し、凍結乾燥品をOxytocin ELISA kit(Enzo)中の250μlのAssay Bufferに溶解して、上記キットを用いて定量した。
コルチゾール
遠心分離後の全唾液中のコルチゾールを、Cortisol Salivary Immunoassay Kit(Salimetrics)で定量した。
(5)結果
触覚刺激前と直後の快感情の評価値の差分と、触覚刺激直後に採取した唾液中のオキシトシン量の変化率(刺激後(Post)/刺激前(Pre))の関連性を解析した結果、図1に示すように有意な正相関が確認された(r=0.73,p<0.05,Pearsonの相関係数)。しかしながら、触覚刺激30分後に採取した唾液中のオキシトシン量の刺激前からの変化率とは、有意な相関は確認されなかった(r=-0.29,p=0.49,Pearsonの相関係数)。一方、快感情の評価値の差分と唾液中コルチゾール量とは何れの採取時間でも関連性は確認されなかった(刺激直後;r=0.43,p=0.29,刺激30分後;r=0.34,p=0.41,Pearsonの相関係数)。
このことから、触覚に起因する快感情の喚起度合いを客観的、且つ定量的に評価するには、触覚刺激付与直後から10分後までの唾液中のオキシトシン量の、触覚刺激前の値を基準とした変化率(Post/Pre)で評価することが適していることが明らかになった。

Claims (3)

  1. 以下の工程(A’)~(D’)を含む、触覚刺激によって喚起される快感情の評価方法。
    (A’)動物に触覚刺激を付与する工程
    (B’)前記刺激付与直後から20分間の間に、当該動物から唾液を採取する工程
    (C’)前記採取された唾液中のオキシトシン量を測定する工程
    (D’)前記オキシトシン量を基準値と比較し、前記触覚刺激によって喚起される快感情の程度を評価する工程
  2. 刺激直後に行われる唾液の採取が、刺激直後から10分間の間に行われる、請求項1記載の方法。
  3. 触覚刺激が、皮膚外用剤を肌に馴染ませる行為による刺激である、請求項1又は2記載の方法。
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