JP2002525337A - 細胞再生をもたらすオキシトシン活性物質の使用 - Google Patents

細胞再生をもたらすオキシトシン活性物質の使用

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ケルスティン ユヴネス−モベルグ,
トマス ルンデベルグ,
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Abstract

(57)【要約】 本発明は細胞再生を改善させるためのオキシトシン活性物質の使用に関する。また、本発明は細胞再生を改善させるための少なくとも1つのオキシトシン活性物質を含む薬学的組成物に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、細胞再生をもたらすオキシトシン活性物質の使用に関する。本発明
はまた、細胞再生をもたらす少なくとも1つのオキシトシン活性物質を含む薬学
的組成物に関する。
【0002】発明の背景 オキシトシンは、単離および配列決定が行われた最初のペプチドホルモンの1
つであった。オキシトシンは、ジスルフィド結合が1位と6位との間で形成され
る2個のシステイン残基を有するノナペプチドであり、下記の式に対応する:
【化3】
【0003】 長い間、オキシトシンに起因する他にない作用は、乳汁噴出および子宮収縮に
対するその刺激作用であったが、この数十年において、オキシトシンは中枢神経
系(CNS)において広範囲の作用スペクトルを示すことが見出された。オキシ
トシンは、母性行動および性行動だけでなく、記憶過程および学習過程の調節、
ならびに摂食および運動などの様々なタイプの行動の調節に関わっていることが
示唆されている。オキシトシンは、心血管機能、体温調節、痛み閾値および体液
平衡の調節に関わっていることもまた示唆されている。オキシトシンが様々な免
疫学的プロセスの調節に関与していることもまた明らかにされている。最近、オ
キシトシンの注射は、反復投与後、血圧の低下をもたらし、増大した体重増加の
長期間の持続作用が明らかにされている。中枢的な刺激物質として、オキシトシ
ンは、哺乳動物の母子間の相互作用に重要な役割を果たしている。その製品は、
幼少者において予防的に使用することもでき、例えば、胎児期中のストレス状態
に依存する疾患のその後の発症を防止するために新生児または幼児において既に
使用されている。そのような状態は、発作、心筋梗塞、高血圧および糖尿病など
の心臓/血管の疾患であり得る。
【0004】 種々の方法がオキシトシンの合成的製造について記載されている。例えば、商
業的な方法が米国特許第2,938,891号および同第3,076,797号
に記載されている。
【0005】 ヒト身体において、オキシトシンは、視床下部の室傍核(PVN)および視索
上核(SON)で産生される。オキシトシンは、これらの核において同様に産生
されるバソプレシンと2個のアミノ酸が異なるだけである。SONおよびPVN
の大細胞のオキシトシン作動性ニューロンは、PVN突起に起源を有する小細胞
性ニューロンをCNS内の多数の領域に送り出している。オキシトシン産生細胞
は、ペプチド作動性ニューロンだけでなく、コリン作動性ニューロン、カテコー
ルアミン作動性ニューロンによって刺激される。子宮、卵巣、精巣、胸腺、副腎
髄質および膵臓などの脳以外の種々の組織にオキシトシンが存在することが明ら
かにされ、オキシトシンがこれらの組織において局所的に作用していることが示
唆されている。
【0006】 脳領域および循環系へのオキシトシンの平行した分泌が授乳などのいくつかの
刺激に応答して生じるが、他の刺激により、脳または下垂体に末端があるオキシ
トシン作動性ニューロンの異なる活性化が引き起こされ得る。
【0007】 本発明においては、オキシトシンは、適用される場合には常に、オキシトシン
に加えて、さらに同じ性質を示す前駆体、代謝誘導体、オキシトシンアゴニスト
またはオキシトシンアナログをいう。
【0008】 オキシトシンの構造と類似した構造を有するオキシトシン誘導体(すなわち、
化合物)がいくつか存在する。オキシトシン以外のオキシトシン誘導体が、オキ
シトシン分子の部分と同様にオキシトシンの細胞再生作用をもたらし得ることが
予備的に示されている。オキシトシン以外のオキシトシン誘導体またはオキシト
シン分子の部分を使用して細胞再生を改善させることはどの刊行物にも記載され
ていない。
【0009】 実験において、オキシトシンは、中枢的な作用として、ラットにおいて中枢性
α−レセプターの活性を増大させることが明らかにされている。このレセプタ
ーは阻害作用を有し、そして環状AMPを活性化するα−レセプターを介して
主に媒介される脳におけるノルアドレナリンの活性化局面を中和する。α−レ
セプターの刺激がα−レセプターの刺激よりも大きい場合、活性は緩和に変わ
り、成長および治癒に向かうエネルギーは遮断される。すなわち、エネルギーは
ストレスまたは筋肉の収縮および活動のために使用されなくなる。結果として、
副交感神経の緊張が交感神経の緊張を上回り、筋組織は弛緩する。オキシトシン
はヒトにおいても類似した作用を示すと考えられ得る。動物に給餌しているとき
に(すなわち、反復的なオキシトシン分泌を特徴とする状況において)、オキシ
トシンを反復投与した後の実験動物に認められるすべての作用が見られる。オキ
シトシンによるα−レセプターに対する作用がどのように媒介されているかは
不明であるが、従来のオキシトシンレセプター媒介作用によるものではないと考
えられる。
【0010】 オキシトシンの作用は、オキシトシンの放出を増大させ、かつ/またはエスト
ロゲンなどのレセプターの数または親和性を増大させる薬物、あるいはαアゴ
ニスト作用を有する薬物(クロニジンなど)と組み合わせて投与することによっ
て拡大または強化され得る。
【0011】 今回、オキシトシンの胎児成長刺激(実施例1)、卵巣の成熟化および機能の
強化(実施例2)(すなわち、インビトロおよびインビボでの受精に役立つ不妊
に対する作用、ならびに精子および卵の産生を増大させる作用)、末梢神経障害
および中枢神経障害の回復刺激(実施例3)、ヒト皮膚樹状細胞の刺激(実施例
4)、皮膚ケラチノサイトの刺激(実施例5)、皮質骨厚さの刺激(実施例6)
、アポトーシスの低下(実施例7)、ホルボールエステルおよびオキサゾロンに
より誘導される炎症からの保護(実施例8)、老化皮膚およびバリア形成に対す
る作用(実施例9)、および細胞のエネルギー消費の減少(実施例10)が明ら
かにされた。これらの実施例は、オキシトシンまたはオキシトシン活性物質が細
胞再生のために使用され得ることを示している。
【0012】発明の要旨 本発明は、細胞再生を改善させるオキシトシン活性物質の使用に関する。本発
明はまた、有効濃度の少なくとも1つのオキシトシン活性物質を混合物で、ある
いは少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と一緒に含む薬
学的組成物に関する。そのような薬学的組成物は、細胞再生を改善させるために
使用することができる。
【0013】発明の詳細な説明 本発明の目的は、細胞再生をもたらすオキシトシン様活性物質の使用である。
オキシトシン活性物質の例には、下記の化合物が含まれる:
【化4】 オキシトシン
【化5】 メソトシン すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがIleであり
、XがGlnであり、YがIleであり、ZがGlyである。
【化6】 イソトシン すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがIleであり
、XがSerであり、YがIleであり、ZがGlyである。
【化7】 アネトシン すなわち、請求項2および4において、VがPheであり、WがValであり
、XがArgであり、YがThrであり、ZがGlyである。
【0014】 アネトシンはミミズから単離された。これは、Oumi T、Ukena K
、Matsushima O、Ikeda T、Fujita T、Minak
ata H、Nomoto K、「アネトシン:ミミズ(Eisenia fo
etida)から単離されたオキシトシン関連ペプチド」、Biochem B
iophys Res Commun、1994年1月14日;198(1):
393〜399に記載されている。他のオキシトシン活性物質もまた使用するこ
とができる。そのような物質は、オキシトシン、メソトシン、イソトシンおよび
アネトシンの天然に存在する変化体、アナログおよび誘導体であり、あるいはそ
れらの人為的に改変された変化体、アナログおよび誘導体などである。このよう
な物質は、これらのホルモンにおいて、少なくとも1つのアミノ酸の付加、挿入
、除去または置換を行うことによって得ることができる。オキシトシン様活性物
質とは、前駆体、代謝誘導体(例えば、代謝分解産物)などの代謝物、アゴニス
ト、または同じ性質を示す本明細書中に記載された物質のアナログであることも
また理解される。代謝誘導体または代謝分解産物は、例えば、オキシトシン、メ
ソトシン、イソトシンおよびアネトシンなどから、1つまたは複数のアミノ酸が
分子の一端または両端から除かれた9アミノ酸を有するオキシトシン様ペプチド
であり得る。好ましくは、1個、2個または3個のアミノ酸をカルボキシ末端か
ら除くことができる(すなわち、Glyだけ、GlyおよびLeu、またはGl
yおよびLeuおよびPro)。好ましくは、1個、2個または3個のアミノ酸
をアミノ末端から除くことができる(すなわち、Cysだけ、CysおよびTy
r、またはCysおよびTyrおよびIle)。好ましくは、1個、2個または
3個のアミノ酸をカルボキシ末端から除くことができ(すなわち、Glyだけ、
GlyおよびLeu、またはGlyおよびLeuおよびPro)、かつ1個、2
個または3個のアミノ酸をアミノ末端から除くことができる(すなわち、Cys
だけ、CysおよびTyr、またはCysおよびTyrおよびIle)。これら
の変化体は、免疫学的方法によって、例えば、RIA(放射免疫アッセイ)、I
RMA(放射測定法)、RIST(放射免疫吸着試験)、RAST(放射アレル
ゲン吸着試験)によって、オキシトシン、メソトシン、イソトシンまたはアネト
シンのアナログであることを確かめることができる。
【0015】 上記に言及されているように、オキシトシン分子の部分フラグメントが細胞再
生をもたらし得ることが示されている。好ましくは、オキシトシン分子のこのよ
うな部分フラグメントは、ジスルフィド架橋の外側のアミノ酸を除くことによっ
て得られる。オキシトシン分子の部分フラグメントの例には、下記の化合物が含
まれる:
【化8】 配列番号1 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがIleであり
、XがGlnであり、Yは存在せず、Zは存在しない。
【化9】 配列番号2 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがIleであり
、XがGlnであり、YがLeuであり、Zは存在しない。
【0016】 また、コンピュターシミュレーションによって新しいオキシトシン活性化合物
を作製することも可能である。コンピュターシミュレーションに関する方法は当
業者により知られており、例えば、欧州特許公報EP 0660 210 A2
に記載されている。7個の新しい化合物(すなわち、下記のペプチド)がコンピ
ュターシミュレーションにより作製された:
【化10】 配列番号3 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがValであり
、XがThrであり、YがLeuであり、ZがGlyである。
【化11】 配列番号4 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがHophであ
り、XがThrであり、YがValであり、ZがGlyである。
【化12】 配列番号5 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがPheであり
、XがCitであり、YがLeuであり、ZがGlyである。
【化13】 配列番号6 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがChaであり
、XがArgであり、YがHosであり、ZがAlaである。
【化14】 配列番号7 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがValであり
、XがDabaであり、YがDabaであり、ZがAlaである。
【化15】 配列番号8 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがHophであ
り、XがDabaであり、YがCitであり、ZがAlaである。
【化16】 配列番号9 すなわち、請求項2および4において、VがTyrであり、WがPheであり
、XがArgであり、YがValであり、ZがAlaである。 上式において、Chaは、シクロヘキシルアラニン:
【化17】 を表し、 Hophは、ホモフェニルアラニン:
【化18】 を表し、 Citは、シトルリン:
【化19】 を表し、 Dabaは、ジアミノ酪酸:
【化20】 を表し、 Hosは、ホモセリン:
【化21】 を表す。
【0017】 本発明はまた、D型およびL型の両方の上記ペプチドに関する。特に、本発明
はL型に関する。そのペプチド配列を反転させることによって、D型をL型に変
換することができる。D型およびL型の作用は同じである。このようなペプチド
および上記のペプチドは、当業者に知られている方法によって、例えば、Mer
rifield,P.B.(「固相合成」、Angew.Chemie、198
5、第97巻、801頁)に従って作製することができる。
【0018】 化合物がオキシトシン作用を有することを、下記のCassoni,P.によ
る刊行物に記載されている試験、および下記の実施例による試験などの試験によ
って確かめることができる。
【0019】 表現「細胞再生」により、損傷を受けた細胞を置換するための、存在する細胞
および新しい細胞の制御された有益な生成ならびに細胞の成熟化によるヒトまた
は動物の身体修復が理解される。存在する細胞の生成は、細胞全体の活力化およ
びその成長刺激(例えば、神経細胞における樹状突起および軸索などの成長)を
意味し得る。従って、神経および筋肉のジストロフィー状態、例えば、多発性硬
化症(MS)および筋肉リウマチを治療することができる(Cassoni,P
.、Sapino,A.、Fortunati,N.、Munaron,L.、
Chini,B.およびBussolati,G.)。これに対して、オキシト
シンは、MDA−MB231ヒト乳ガン細胞の増殖を、環状アデノシン一リン酸
タンパク質キナーゼAを介して阻害する。Int.J.Cancer、72、3
40〜344(1997)には、乳ガン細胞の阻害が記載されているが、身体内
の損傷細胞がどのように置換されるかについては記載されていない。
【0020】 新しい細胞の生成および細胞の成熟化はまた、心筋麻痺または心臓発作、萎縮
、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの変性疾患、乾癬、骨粗鬆症、移
植後、平衡障害、子宮破裂、肝臓破裂、腎臓破裂の後での治癒過程において、女
性不妊症を改善するために、例えばガン治療後での血液細胞(例えば、赤血球、
白血球およびリンパ球)の増殖を回復させるために、家畜の体重を増大させるた
めに、ヒトの感覚を増大させるために(例えば、老化の結果として損なわれた視
力、聴力、嗅覚および味覚を改善するために)、失禁問題を軽減するために、皮
膚を若返らせて、老化の結果としてのしわを妨げるための化粧品適用において、
治癒能を増大させるために手術前に、そして毛および爪の成長を助けるために重
要であり得る。
【0021】 本発明の別の目的は、有効濃度の少なくとも1つのオキシトシン活性物質を混
合物で、あるいは少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と
一緒に含む薬学的組成物に関する。
【0022】 オキシトシン活性物質の例には、メソトシン、イソトシン、アネトシン、配列
番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列
番号7、配列番号8および配列番号9が含まれる。
【0023】 本発明による薬学的組成物は、オキシトシンの作用を拡大または強化する物質
を含有することができる。そのような物質は、オキシトシンの放出を増大させ、
かつ/またはエストロゲンなどのレセプターの数または親和性を増大させること
ができ、あるいはαアゴニスト作用を有する薬剤(クロニジンなど)である。
【0024】 薬学的組成物は、製薬分野の当業者に知られている方法で調製される。キャリ
アまたは賦形剤は、有効成分のビヒクルまたは媒体として作用し得る固体、半固
体または液体の物質であり得る。好適なキャリアまたは賦形剤がこの分野では知
られている。薬学的組成物は、経口使用、非経口使用または局所的使用に合わせ
ることができ、錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液剤、懸濁剤などとして患者に投与
することができる。
【0025】 薬学的組成物は、例えば、不活性な希釈剤とともに、あるいは食用キャリアと
ともに経口投与することができる。薬学的組成物はゼラチンカプセルに包むこと
ができ、あるいは錠剤に圧縮することができる。経口的な治療投与の場合、本発
明による化合物は賦形剤と配合することができ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤
、エリキシル剤、坐剤、シロップ剤、オブラート剤、チューインガム剤などとし
て使用することができる。このような調製物は、有効成分である本発明による化
合物を少なくとも4重量%含み得るが、特定の形態に従って変化させることがで
き、好適には、ユニット物の4〜70重量%とすることができる。組成物に含有
される有効成分の量は非常に高いために、投与に適した単位投薬形態にされる。
【0026】 錠剤、ピル剤、カプセル剤、トローチ剤などもまた、少なくとも1つの下記の
補助剤を含むことができる:結合剤(微結晶セルロース、トラガカントゴムまた
はゼラチンなど)、賦形剤(デンプンまたはラクトースなど)、崩壊剤(アルギ
ン酸、プリモゲル(Primogel)、トウモロコシデンプンなど)、滑沢剤
(ステアリン酸マグネシウムまたはステロテクス(Sterotex)など)、
滑剤(コロイド状二酸化シリカなど)、および甘味剤(サッカロースまたはサッ
カリンなど)を加えることができ、あるいは風味剤(ペパーミント、サリチル酸
メチルまたはオレンジ風味剤など)を加えることができる。単位投薬形態がカプ
セル剤である場合、上記タイプに加えて、ポリエチレングリコールまたは油脂な
どの液体キャリアを含むことができる。他の単位投薬形態は、単位投薬形態の物
理的形態を改変する他の種々の物質(例えば、コーティング剤)を含むことがで
きる。従って、錠剤またはピル剤は、糖、セラックまたは他の腸溶コーティング
剤でコーティングすることができる。シロップ剤は、有効成分に加えて、甘味剤
としてのサッカロース、ならびにいくつかの保存剤、色素および風味剤を含むこ
とができる。このような種々の組成物を調製するために使用される材料は、使用
量で、薬学的に純粋で非毒性でなければならない。
【0027】 非経口投与の場合、本発明による化合物は溶液または懸濁物に配合することが
できる。非経口投与は、消化管を経由するのではなく、むしろ、皮下、筋肉内、
眼窩内、嚢内、髄腔内、胸骨内、静脈内、鼻腔内、肺内のような特定の他の経路
を介した注入、尿管を介した注入、点眼薬による注入、直腸的または膣的な注入
(例えば、坐剤、膣坐剤、クリームまたは軟膏として)、家畜の乳管を介した注
入、骨髄などの組織への注入などをいう。骨髄はまた、インビトロで治療するこ
とができる。このような調製物は、少なくとも0.1重量%の本発明による活性
化合物を含み得るが、本発明による活性化合物を約0.1〜50重量%に変化さ
せることができる。そのような組成物に含有される有効成分の量は非常に大きい
ので、好適な投薬物にされる。
【0028】 溶液剤または懸濁剤または、少なくとも1つの下記の補助剤を含むことができ
る:無菌希釈剤(注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グ
リセロール、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など)、抗菌剤(ベンジ
ルアルコールまたはメチルパラベンなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸または重
亜硫酸ナトリウムなど)、キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸など)、緩衝
剤(酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)、および張性調節剤(塩化ナトリウム
またはデキストロースなど)。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、
あるいはガラスまたはプラスチックから作製された多回投薬容器に入れることが
できる。
【0029】 局所投与の場合、本発明による化合物は、溶液剤、懸濁剤または軟膏に配合す
ることができる。このような調製物は、本発明による活性化合物を少なくとも0
.1重量%で含み得るが、本発明による活性化合物を約0.1〜50重量%に変
化させることができる。そのような組成物に含有される有効成分の量は非常に大
きいので、好適な投薬物にされる。投与は、皮膚の透過性を高める接触、圧力、
マッサージ、熱、加温または赤外光を皮膚に当てることによって促進させること
ができる(Hirvonen,J.、Kalia,YN.およびGuy,RH.
)。イオン導入によるペプチドの経皮送達(Nat Biotechnol、1
996年12月;14(13):1710〜1713)には、加えられた電場の
駆動力を使用する、皮膚を介した薬物輸送を高める方法が記載されている。好ま
しくは、イオン導入は微塩基性pHで行われる。
【0030】 他の投与形態には、肺を介した吸入、口を介した口内投与、および小腸を介し
た腸内投与がある。これらは、当業者に知られている手段で行うことができる。
【0031】 本明細書中に記載されたすべての刊行物は、それらによって参考として援用さ
れる。「含む」という表現により、「に限定する」ことではなく、「包含する」
ことが理解される。従って、言及されていない他の物質、添加剤またはキャリア
が存在してもよい。
【0032】 本発明は下記の実施例により例示される。下記の実施例は、本発明を例示する
ことを目的とするだけであり、いかなる点においても本発明を限定しない。
【0033】実施例 実施例1−胎児成長の刺激 材料および方法 動物 未経産の雌性Sprague−Dawleyラット(体重±12g)をB&K
Universal AB(Sollentuna、スウェーデン)から入手
した。動物を、温度(20±1℃)および湿度(45〜55%)が調節され、0
600hから1800hまで照明される部屋内のケージに1匹ずつ入れた。餌は
ペレット規定食(Lactamin、Vadstena、スウェーデン)であっ
た。動物には、飲み水を自由に摂取させた。母体の体重を、最初の4週間は毎週
測定し、その後、妊娠1日目、14日目および20日目に測定し、また授乳1日
目および20日目に測定した。子供の体重を、授乳1日目、5日目、10日目、
15日目および20日目に記録した。この研究は、動物実験に関するストックホ
ルム倫理委員会により承認された。
【0034】動物実験 購入時に動物を2群に分けた。1群は自由摂食させ、もう1群は餌を制限した
。餌制限の動物には、実験期間中を通じて、自由摂食させた動物により消費され
た餌の70%を平均して与えた。4週間後、ラットを交配させ、妊娠したと見な
した(妊娠1日目)。翌朝、精子が膣塗抹に見出された。自由摂食妊娠ラットお
よび餌制限妊娠ラットを、オキシトシン治療およびコントロールの2つのグルー
プに分けた。妊娠1日目〜5日目の期間中、オキシトシン治療動物にはオキシト
シン(1mg/kg体重)を1日に1回注射し、コントロール動物には生理食塩
水(0.9%NaCl)を皮下に注射した。自由摂食動物および餌制限動物を妊
娠14日目および20日目に屠殺し、そして自由摂食母体および子供のグループ
を授乳20日目に屠殺した。妊娠ラットは、妊娠23日目の午後に子供を出産し
た。翌日を授乳1日目と見なした。1日目に同腹子を選び、8匹の子供/母体と
した。自由摂食および餌制限を行った未交配ラットを、交配ラットの妊娠1日目
に対応する時に屠殺した。従って、下記の12群がこの実験に含まれた:NaC
l治療された未交配の自由摂食(n=8)、NaCl治療された未交配の餌制限
(n=8)、NaCl治療された妊娠14日目の自由摂食(n=4)、NaCl
治療された妊娠14日目の餌制限(n=8)、NaCl治療された妊娠20日目
の自由摂食(n=10)、NaCl治療された妊娠20日目の餌制限(n=10
)、NaCl治療された授乳20日目の自由摂食(n=4)、オキシトシン治療
された妊娠14日目の自由摂食(n=4)、オキシトシン治療された妊娠14日
目の餌制限(n=9)、オキシトシン治療された妊娠20日目の自由摂食(n=
12)、オキシトシン治療された妊娠20日目の餌制限(n=13)、オキシト
シン治療された授乳20日目の自由摂食(n=3)。
【0035】 母体の体幹血液を断頭によって採取した。子宮近傍領域および腹膜後腔領域の
母体の脂肪組織、肝臓、個々の胎児および胎盤(妊娠20日目のみ)を取り出し
て重量測定した。断頭直後に、体幹血液を、10IU/mLヘパリン(Loev
ens Laekemedel、Malmoe、スウェーデン)および500I
U/mLアプロチニン(Bayer AB、Stockholm、スウェーデン
)を含む冷却プラスチックチューブに採取した。サンプルを直ちに遠心分離して
、血漿を集めて冷凍した(−20℃)。
【0036】血液サンプルの分析 オキシトシンは、Marchini G、Lagercrantz H、Uv
naes−Moberg K(「新生児における血漿ガストリンおよびカテコー
ルアミン類とのその関係」、J Dev Physiol、1990、14:1
47〜155)によって記載されているようにして、500μlのアッセイ緩衝
液(0.1%のBSAを含む0.05Mリン酸塩緩衝液、pH7.5)に溶解し
た血漿(500μl)をSep−PakC18カートリッジ(Water Co
rporation、Milford、MA、アメリカ)で精製した後に放射免
疫アッセイ(RIA)で測定した。オキシトシンの濃度を、50μlの抗体A1
9(Euro−Diagnostica AB、Malmoe、スウェーデン)
とともに+4℃で24時間インキュベーションした精製血漿(100μl)で測
定した。比活性が2200Ci/mmolのトレーサー(125I)−Tyr −オキシトシン(DuPont NEN Research Products
、Boston、MA、アメリカ)の50μlを加えて、+4℃で48時間イン
キュベーションを続けた。抗体および(125I)−Tyr−オキシトシンを
、0.1%のBSAを含む0.05Mリン酸塩緩衝液に希釈した。アルギニン−
バソトシンとの交差反応性は0.01%であり、リジン−バソプレシンとの交差
反応性は<0.01%であり、アルギニン−バソトシンとの交差反応性は0.1
%であった。結合画分を、第2のウサギ抗体であるDecanting Sus
pension3(Pharmacia&Upjohn Diagnostic
s AB、Uppsala、スウェーデン)とともにサンプルをインキュベーシ
ョンすることによって非結合画分から分離した。サンプルを10分間遠心分離(
1700xg)して、上清を捨て、沈殿物における放射能を測定した。検出限界
は3.2pmol/lであった。アッセイ内およびアッセイ間の変動係数は、そ
れぞれ、18%および26%であった。
【0037】統計分析 結果は、平均±SDとして表される。自由摂食および餌制限のコントロール動
物における妊娠効果を、変動の補正として、栄養効果(自由摂食対餌制限)およ
び妊娠日数(未交配、14日目および20日目)についてツーウェイANOVA
により評価した。オキシトシン治療の効果を、変動の補正として、栄養効果(自
由摂食および餌制限)、治療(オキシトシン対生理食塩水)および妊娠日数(1
4日目対20日目)についてスリーウェイANOVAにより評価した。有意な相
互作用が認められる場合、計画された比較を行い、オキシトシン治療群と対応す
るNaCl治療群との差を評価した。タンパク質分解活性の差および出産後の子
供体重の差を、オキシトシン治療群とNaCl治療群との間で、独立手段のスチ
ューデントt−検定によって評価した。結果は、p<0.05のときに有意と見
なした。
【0038】結果 オキシトシン治療ラットは、妊娠期間中の正味の体重増加がそのNaCl治療
対応体よりも小さい傾向があった(p=0.06)(図1)。妊娠20日目にお
いて、自由摂食させたオキシトシン治療ラットは、生理食塩水治療ラットと比較
して、相対的(正味体重の%)に少ない子宮近傍の脂肪組織(図2)および腹腔
後膜の脂肪組織(図3)を含有したが、妊娠初期においては、オキシトシン治療
ラットと生理食塩水治療ラットとの間で子宮近傍および腹腔後膜の脂肪組織の量
には差がなかった。
【0039】 自由摂食させたオキシトシン治療母体から得られた胎児および胎盤は、NaC
l治療ラットから得られた受胎産物および子供と比較して、妊娠20日目におい
てより大きく、出産体重はより大きかった(表1)。自由摂食させたオキシトシ
ン治療母体およびNaCl治療母体から得られた子供間の出産後の体重における
差はその後認められなかった。自由摂食群とは対照的に、餌制限群では、胎児体
重に対するオキシトシンの効果はなかった(表1)。
【表1】
【0040】考察 オキシトシンは、自由摂食動物の胎児体重に対して、小さいが、有意な有益な
作用を有していたが、授乳期間中の出生後の成長に対してはさらなる作用を有し
ていなかった。他の用量のオキシトシンを投与することによって、胎児成長をさ
らに高めることができると考えられる。オキシトシンの作用は、妊娠期間中の投
与時期に依存して変化し得ると考えられる。本発明により、オキシトシンが、受
精卵がまだ着床していない妊娠の最初の5日間にわたって注射された。従って、
胎児の成長に対するオキシトシンの刺激作用は、例えば、胎盤の栄養移動能また
は妊娠後期における母体の体貯蔵物を移動させる母体の能力に対する正の作用を
有する変化した母体の妊娠適応によって説明することができる。
【0041】実施例2−卵巣の成熟化および機能の強化 ニューロトロフィン(NT)は、中枢神経系および末梢神経系の両方で神経集
団の分化および生存において重要な役割を果たしている。少なくとも4つの異な
るNTが卵巣において見出されている。
【0042】材料および方法 動物 この動物モデルは、Petersson M.、Alster P.、Lun
deberg T.およびUvnaes−Moberg K.、「オキシトシン
は雌性ラットおよび雄性ラットにおいて長期間の血圧低下を生じさせる」、Ph
ysiology&Behavior、第60巻、第5号、1311頁〜131
5頁(1996)に記載されているが、雌性ラットのみを使用した。実験を2系
統で行った。雌性Sprague−Dawleyラット(230〜250g)を
使用してsc注射した。動物を実験の少なくとも3週間前に購入し、ケージあた
り5匹すつ入れ、餌および水を自由に摂取させた。照明は12/12hの明/暗
サイクルで行った。室温は20±2℃であった。発情期の段階を膣塗抹の顕微鏡
検査によって調べた。
【0043】実験計画 NaCl、オキシトシン(0.01mg/kg、0.1mg/kgおよび1m
g/kg)(Ferring、Malmoe、スウェーデン)および再度のNa
Clを雌性ラットに5日間連続してsc投与した。5日間の治療期間は、ラット
の発情期の継続期間が含まれるように選ばれた。薬物は、生理学的生理食塩水に
溶解され、1mL/kgの容量で注射された。コントロール動物には、全治療期
間中にわたりNaClをsc投与した(1mL/kg)。
【0044】結果 結果から、コントロールと比較して、オキシトシン治療ラットでは、PCR、
ノーザンブロットおよびオートラジオグラフィーにより明らかにされるように、
NGFtrkAレセプター(22%≧コントロール)およびNGF(26%≧コ
ントロール)の(NGF遺伝子の刺激による)発現および合成が卵巣で増大して
いたことが示される。これにより、卵胞生成およびその後の卵胞発達の増大がも
たらされる(OjedaおよびDissen、Ovarian develop
ment、32頁(1994))。
【0045】実施例3−末梢神経障害および中枢神経障害の回復 材料および方法 動物 この動物モデルは、Petersson M.、Alster P.、Lun
deberg T.およびUvnaes−Moberg K.、「オキシトシン
は雌性ラットおよび雄性ラットにおいて長期間の血圧低下を生じさせる」、Ph
ysiology&Behavior、第60巻、第5号、1311頁〜131
5頁(1996)に記載されている。実験を2系統で行った。Sprague−
Dawleyの雌雄ラット(230〜250g)を使用してsc注射し、雄性S
prague−Dawleyラット(335〜375g)には脳室内(icv)
注入した(B&K Universal AB、Sollentuna、スウェ
ーデン)。動物を実験の少なくとも3週間前に購入し、ケージあたり5匹ずつ入
れ、一方、icvカニューレ装着動物は1匹ずつ入れ、餌および水を自由に摂取
させた。照明は12/12hの明/暗サイクルで行った。室温は20±2℃であ
った。雌性ラットの場合、発情期の段階を膣塗抹の顕微鏡検査によって調べた。
【0046】icv注入するための手術 50mg/kgのペントバルビターツナトリウム(Apoteksbolag
et、スウェーデン)を腹腔内注射(ip)して麻酔した後、頭骨を外し、導入
カニューレ(21g)を歯科用アクリルセメントで頭骨に定位固定した。その座
標は、ブレグマの後方1.00mmであり、ブレグマの外側1.30mmであっ
た。導入カニューレは硬膜に達したが、硬膜内には侵入せず、ニードルの先端は
側脳室内にあった。動物を手術後1週間回復させた。実験終了時に、導入カニュ
ーレの位置を、2μlのトルイジンブルーを注射することによって調べた。
【0047】実験計画 NaCl、オキシトシン(0.01mg/kg、0.1mg/kgおよび1m
g/kg)(Ferring、Malmoe、スウェーデン)および再度のNa
Clを雌雄ラットに5日間連続してsc投与した。5日間の治療期間は、雌性ラ
ットの発情期の継続期間が含まれるように選ばれた。薬物は、生理学的生理食塩
水に溶解され、1mL/kgの容量で注射された。コントロール動物には、全治
療期間中にわたりNaClをsc投与した(1mL/kg)。
【0048】 別の実験では、オキシトシンを、長期間icvカニューレを装着した雄性ラッ
トに5日間にわたって5μlの容量でicv投与した(1μg/kg)。コント
ロール動物には5μlの生理食塩水をicv投与した。
【0049】NGFの役割 中枢神経系および末梢神経系の成長、分化および損傷細胞の再生に関する強力
な因子である神経成長因子(NGF)は、近年、ヒトの神経変性事象における細
胞損傷プロセスを逆転させ得る潜在的な治療剤として示されている。NGFは血
液脳関門を通過せず、NGFの中枢投与には侵襲的な手術手法が必要であるため
に、脳においてインビボのNGF合成を調節する物質の発見は、NGFの考えら
れる臨床的使用にとって極めて有用である。また、NGFは、末梢の感覚ニュー
ロンおよび交感系ニューロンの成長および分化において非常に重要な役割を果た
している標的由来の成長因子である。NGFは、外科的または化学的に傷つけら
れた末梢神経の細胞損傷の回復だけでなく、糖尿病性神経障害、ハンセン病、虚
血後の冠動脈神経支配、および勃起機能の回復をも促進することが明らかにされ
ている。これらの報告の結果として、NGFは、末梢神経障害を治療する際に役
割を有することが考えられる。多数の神経細胞が局所的および循環性のNGFを
産生することができるために、考えられる取り組みは、NGFのインビボでのア
ップレギュレーションを誘導する化合物を同定することである。
【0050】中枢作用 この研究の目的は、成体ラットの脳におけるNGF含有量がオキシトシンの末
梢(皮下、sc)投与によって影響され得るかどうかを分析することであった。
視床下部および海馬におけるNGF濃度を、NGFの高感度な免疫酵素的アッセ
イを使用して分析した。
【0051】 表2には、オキシトシンをsc注射したラットの海馬および視床下部における
脳NGFレベル(pg/g組織)に関して得られた結果が、生理食塩巣のコント
ロール動物と比較して示されている。
【表2】
【0052】 表2の結果は、オキシトシンのsc注射により脳内のNGFレベルが調節され
得るを示唆している。
【0053】末梢作用 scオキシトシンの末梢作用を評価するために、ラットにおける2つのモデル
の末梢神経障害を使用した。1つは、(カプサイシンの使用による)末梢の感覚
神経系が関与するものであり、もう1つは、(6−ヒドロキシドーパミン、6−
OHDAの使用による)末梢の交感神経系が関与するものである。この研究にお
いて、本発明者らはこれらの動物モデルを使用して、オキシトシンの外部投与が
、虹彩/後肢に対して6−OHDAにより誘導される変化、および後肢に対する
カプサイシンによる変化に影響するかどうかを調べた。下記の表には、生理食塩
水コントロール動物と比較して、オキシトシンをsc注射したラットに関して得
られた結果が示されている:虹彩における末梢NGFレベル(pg/g組織)(
表3)および後肢における末梢NGFレベル(pg/g組織)(表4:6−OH
DAおよび表5:カプサイシン)。
【表3】
【表4】
【表5】
【0054】 この治療が何らかの生理学的重要性を有しているかどうかを明らかにするため
に、ホットプレート応答を使用した。表6には、カプサイシン+生理食塩水およ
びカプサイシン+オキシトシンでそれぞれ治療された動物に関する舌なめまでの
時間(飛びはね応答)が示されている。
【表6】
【0055】 表3〜表6の結果は、オキシトシンの反復投与は損傷組織でのNGF含有量を
増大させること、およびこれは機能的意味を有し得ることを示している。
【0056】実施例4−ヒト皮膚樹状細胞の刺激 材料および方法 Demotz他(J.Immunol、143:3881〜3886)によっ
て記載された破傷風トキソイド(TT)モデルを使用した。この研究において、
本発明者らは、破傷風トキソイド誘導T細胞増殖モデル(増殖アッセイ)に対す
るオキシトシンの作用を調べることを試みた。本発明者らは、大部分のスウェー
デン人患者がTTのワクチン接種の経歴を有し、循環性のTT特異的メモリーT
細胞を有しているためにTTをモデル抗原として使用した。オキシトシンの作用
を試験するために、1群の樹状細胞をオキシトシンとともに予備インキュベーシ
ョンし、1群の樹状細胞を生理食塩水とともに予備インキュベーションした。休
止CD4陽性T細胞を応答細胞として使用した。樹状細胞を、TTを用いて37
℃で2時間パルス処理して、5x100,000個の応答細胞とインキュベーシ
ョンした。刺激因子:応答細胞の比は1:1,000、1:100および1:1
0であった。これらの培養物における増殖応答を3日後に測定した。
【0057】樹状細胞 樹状細胞は、リンパ様組織のT細胞依存領域に存在する抗原提示細胞のファミ
リーに属する。樹状細胞はまた、抗原のヒト身体内への侵入が生じ得るバリア域
(皮膚、肺および消化管など)にも見出されている。最近の証拠により、皮膚樹
状細胞の役割が、接触過敏反応(TseおよびCooper、1990、J I
nvest Derm、94:267)において、乾癬(Nestle他、19
94、J Clin Invest、94:202〜209)において、リンパ
増殖疾患(Nestle他、1995、Dermatol、190:265〜2
80)において示されている。樹状細胞は、細菌由来スーパー抗原および可溶性
タンパク質抗原のT細胞への提示能について研究されている(Nestleおよ
びNickoloff、1995、Adv Exp Med Biol、378
:111〜116)。
【0058】結果 表7には、生理食塩水で予備インキュベーションされた樹状細胞と比較したと
きの、オキシトシンで予備インキュベーションされた樹状細胞に対する刺激細胞
の数を関数とする3H−チミジン取り込みがカウント/分(cpm)の単位で示
されている。
【表7】 表7の結果は、オキシトシンにより、樹状細胞のTT特異的T細胞増殖の誘導
が増大させることを示している。
【0059】実施例5−皮膚ケラチノサイトの刺激 材料および方法 Rheinwald JGおよびGreen H(「ヒト表皮ケラチノサイト
細胞株の連続培養:単一細胞からの角質化コロニーの形成」、Cell、6:3
31〜334(1975))の手法をヒトケラチノサイトの培養に使用した。こ
の手法では、ウシ下垂体抽出物および上皮成長因子が補充された無血清ケラチノ
サイト培地が使用された。3代〜5代の継代を行った初代培養のケラチノサイト
を使用した。その後、ケラチノサイトをオキシトシンまたは生理食塩水で刺激し
た。その後、細胞培地を、酵素結合免疫吸着アッセイ(サンドイッチELISA
)を使用してTGF−b1について分析した。
【0060】ケラチノサイト療法 TGF−b1は、分化、形態形成および傷害治癒において重要な様々なマトリ
ックスタンパク質の合成および沈着を刺激する最も効果的な成長因子の1つであ
ることがよく知られている(Goldstein RH、Foliks CF、
Pilch PF、Smith BDおよびFine A、「ヒト肺繊維芽細胞
の培養物におけるインスリンおよびインスリン様成長因子Iによるコラーゲン生
成の刺激」、Endocrinol、124:964〜970(1989);R
oberts ABおよびSporn MB、The Handbook of
Experimental Pharmacology、Peptide G
rowth Factors and their Receptors(Sp
orn MDおよびRoberts AB(編)、Springer−Verl
ag、Heidelberg、1989年)、419頁〜472頁;Hill
DJ、Logan A、McGarry M、De Sousa D:「塩基性
繊維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子−IおよびII、インスリンならび
に形質転換成長因子−β1の相互作用による単離ウシ成長板軟骨細胞におけるタ
ンパク質およびマトリックス分子の合成調節」、J Endocrinol、1
33:363〜373(1992))。重傷な皮膚傷害(多くの場合には熱傷)
の患者に移植するために、ケラチノサイトをインビボでコンフルエンスになるま
で培養する方法もた確立されている(Green H、Kehinde Oおよ
びThomas J:「移植に好適な多様な上皮への培養ヒト表皮細胞の成長」
、Proc Nat Acad Sci(USA)、76:5665〜5668
(1979))。従って、ケラチノサイト療法は、熱傷後だけでなく、皮膚の他
の先天的異常および後天的異常に関する新規治療法の無数の可能性を提供する。
【0061】結果 表8には、細胞培地におけるTGF−b1濃度がpg/mLの単位で示されて
いる。
【表8】 表8の結果は、オキシトシンにより、ケラチノサイトからのTGF−b1の産
生が増大することを示している。
【0062】実施例6−皮質骨厚さの刺激 材料および方法 Oestenson他(J Diabetes Complications
、1997年11月;11(6):319〜322)の手法を使用した。Oes
tenson他は、長期間の遺伝性のインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)
の非肥満動物モデル、すなわち、8月齢のGoto−Kakizaki(GK)
ラットにおける皮質骨厚さの減少によって示される骨減少症の発生を研究した。
さらに、運動神経の伝達速度をGKラットで測定した。月齢および体重を合わせ
たWistarラットをコントロールとして使用した。GKラットは、コントロ
ールのラットと比較して、腹腔内グルコース耐性試験において著しいグルコース
不耐性を示した。約15%減少した皮質骨の厚さが、GKラットの中足骨(p<
<0.001)および上腕骨(p<<0.05)のX線分析で明らかになった。
座骨神経で測定された運動神経の伝達速度もまた、末梢神経障害の兆候として、
月齢を合わせたコントロールラットと比較してGKラットでは(10%)減少し
た(p<<0.05)。従って、GKラットは、肥満のない糖尿病性骨疾患の研
究に適したNIDDMモデルであると考えられる。
【0063】 自発性糖尿病ラットにおけるオキシトシンの作用を研究するために、scオキ
シトシンおよび生理食塩水の作用を調べた:3匹のラット(コントロール)には
生理食塩水を与え、3匹のラットを、屠殺前の6ヶ月間にわたって月に5日間、
オキシトシンで1日に1回(1mg/kg体重)で治療した。その後、右上腕骨
を取り出し、X線撮影法に供した(Selby、Diabetic Med、5
:423〜428、1988;Bouillon Calcif Tissue
int、49:155〜160、1991)。ラットの上腕骨の平面X線写真
を撮影し、精密カリパスによるそれぞれの骨の骨幹の幅および内側の非皮質幅を
測定することによって分析した。皮質厚指数を、外側幅を内側の(海綿状)骨幹
幅で除することによって算出した。
【0064】結果 生理食塩水を与えた自発性糖尿病ラット(コントロールラット)では、皮質骨
厚指数は1.9±0.3であり、オキシトシン治療ラットでは2.1±0.2で
あった。この結果は、オキシトシンが皮質骨の厚さを刺激していることを示して
いる。
【0065】実施例7−ケラチノサイトにおけるサルファーマスタード誘導細胞死(アポトー シス)の減少 材料および方法 正常なヒト上皮ケラチノサイトを初代培養物として得て、血清を含まないケラ
チノサイト成長培地で維持した。
【0066】サルファーマスタードの作用 サルファーマスタードは、カルシウム−カルモジュリン経路およびカスパーゼ
依存経路を介して皮膚に水疱を誘導する。サルファーマスタードは強力なアルキ
ル化剤であるために、非プリン部位によるDNA損傷、およびヌクレオチド内結
合分解の活性化を誘導するその能力が、発疱に至る1つの可能な経路として高め
られる。
【0067】 DNA鎖の切断を誘導する他の薬剤と類似して、サルファーマスタードは、細
胞死(アポトーシス)を誘導すると考えられている機構である、細胞のニコチン
アミドアデニンジヌクレオチドおよびアデノシン三リン酸の濃度を著しく低下さ
せる核タンパク質ポリADPリボースポリメラーゼを刺激する。
【0068】 サルファーマスタードはケラチノサイトにおいてアポトーシスを誘導し得るこ
とが明らかにされているので、ケラチノサイトに、サルファーマスタードによる
処理と平行してオキシトシンを投与した。
【0069】実験計画 正常なヒト上皮ケラチノサイトを、組織培養フラスコで70〜80%のコンフ
ルエンスになるまで成長させ、その後、100μMまたは300μMの最終濃度
にケラチノサイト成長培地で希釈されたサルファーマスタードに1mMのオキシ
トシンの存在下または非存在下で曝した。細胞生存率を細胞のトリパンブルー排
除能によって定した。
【0070】結果 アポトーシスは、大きさがヌクレオソーム程度のラダーの出現を特徴とする。
100μMのサルファーマスタードで治療された正常なヒト上皮ケラチノサイト
から単離されたDNAは無傷であった。これは、300μMのサルファーマスタ
ードおよび1mMのオキシトシンで治療された正常なヒト上皮ケラチノサイトの
場合にも認められた。一方、300μMのサルファーマスタードで治療された正
常なヒト上皮ケラチノサイトは、アガロースゲル電気泳動および臭化エチジウム
染色の後での目視検査で、大きさがヌクレオソーム程度のラダーが認められた。
24時間でのトリパンブルー排除は、コントロール細胞では97%であり、30
0mUのサルファーマスタードおよびオキシトシンによる治療の後では88%で
あり、300mUのサルファーマスタードのみで治療された細胞では57%であ
った。
【0071】 まとめると、オキシトシンはサルファーマスタードの毒性を低下させる。この
ことは、抗アポトーシス作用を示している。
【0072】 実施例8−ホルボールエステルおよびオキサゾロンで誘導される炎症からの保
【0073】材料および方法 動物 Charles Riverから得られる雌性のBALB/CマウスおよびC
rl:NMRIBRマウスを使用した。これらを、14日間の順応期間の後、腹
腔マクロファージの採取(BALB/C)のために、そしてアレルギー性接触皮
膚炎および刺激性接触皮膚炎の誘導(Crl:NMRIBR)のために使用した
【0074】実験計画 インビトロ実験において、オキシトシンを、5%または10%の熱不活化ウシ
胎児血清が補充されたRPMI1640(Gibco Life Techno
ogies、英国)に溶解した。ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタ
ミン、2−メルカプトエタノール、大腸菌由来のリポ多糖(LPS)、オキサゾ
ロンおよびデキサメタゾンをSigmaから入手し、組換えマウスインターフェ
ロン−γ、インターロイキン(IL)−1−β、腫瘍壊死因子(TNF)−αお
よびIL−10の酵素結合免疫吸着アッセイキットをGenzymeから得た。
RPMI1640には、ペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミンおよび2
−メルカプトエタノールを補充した。チオグリコラート誘発マクロファージを、
Lam他(Can J Infect Dis、3:94〜100、1992)
によって報告されているようにして得た。腹腔洗浄を、5%のウシ胎児血清を含
有する冷RPMIの10mLを使用して行った。マクロファージを同じ培地で洗
浄して、2x10,000,000細胞/2mLを、24ウエルプレート(Nu
nc)において、LPS、10ng/mLの各サイトカインタンパク質および亜
硝酸塩、ならびに100μg/mLのオキシトシンの存在下または非存在下、3
7℃で、加湿空気雰囲気中の5%COのもとで6時間および24時間培養した
。サイトカインを、市販のキットを使用して分析し、亜硝酸塩を、標準的なグリ
ースアッセイ(Green他、Anal Biochem、126:131〜1
38、1982)を使用して分析した。テトラデカノイルホルボール−13−ア
セタート(Sigma)で誘導される刺激性接触皮膚炎を、10μlの0.01
%TPAを8匹のマウスからなる群の左耳の内面に局所的に塗布することによっ
て開始させた。局所的治療は、刺激する30分前に、試験領域を化合物またはビ
ヒクルDAE244(ジメチルアセトアミド:アセトン:エタノール;2:4:
4、vol/vol/vol)で治療した。右耳は、刺激および治療を行うこと
なく放置した。同一の治療を、陽性コントロールとして、デキサメタゾンで治療
を行った。刺激を加えた6時間後、標準的な条件のもとで動物を屠殺して、耳を
切断した。炎症を耳重量の増大として評価した(Staite他、Blood、
88:2973〜2979、1996)。オキシトシンの効き目を、ビヒクル−
コントロールの相対的な炎症阻害率として計算した。
【0075】病理学的機構 高濃度の前炎症性サイトカインおよび一酸化窒素は、様々なアレルギー疾患お
よび炎症疾患に関係する病理学的機構に関与することが考えられている。抗原刺
激または炎症攻撃の後、ヒスタミンおよびセロトニンなどのマスト細胞由来の媒
介因子が血管拡張を誘導して、血管の透過性を増大させ、その結果、水腫形成お
よび腫れが生じることが十分に確立されている。ジニトロフルオロベンゼンによ
り誘導される過敏性応答において、インターロイキンのmRNAの発現が表皮で
検出された。これらの条件で、ケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、マクロフ
ァージおよびリンパ球は、部分的には、表皮における増大した量のサイトカイン
が局所的にそれらにより産生されることによって誘導される病理に寄与している
と考えられている。アトピー性皮膚炎では、サイトカインのインターフェロン−
γの発現が慢性の湿疹性皮膚障害を持続させていると考えられている(Ther
pen他、J Allergy Clin Immunol、97:828〜8
37、1996)。NOが、いくつかの皮膚病において認められている免疫学的
反応および炎症反応の強力な媒介因子であることもまた明らかにされている(M
orita他、J Invest Dermatol、107:549〜552
、1996)。安全で効果的な治療法が炎症性皮膚疾患に求められている。いく
つかの確立された治療法が炎症性皮膚疾患に求められている。皮膚炎に関してい
くつかの確立された効果的な局所的治療および全身的治療が得られているが、そ
のすべてはいくらかの重篤な副作用で悩まされ、そのいくつかの処理は、その使
用を制限するさらなる不便な面を有している(Brethnach、Textb
ook of Dermatology、Blackwell、2961〜30
36、1992;Hay他、Textbook of Dermatology
、Blackwell、Oxford、1391〜1458、1992;Rob
ertsonおよびMaibach、Topical Corticoster
oids、Karger、Basel、163〜169、1992)。
【0076】 目的は、活性化マクロファージによる前炎症性媒介因子を産生するインビトロ
モデル、ならびに刺激性およびアレルギー性の接触皮膚炎の動物モデルを使用し
て、オキシトシンの強力な抗炎症作用を評価することであった。その理由は、炎
症プロセスが阻害された場合、細胞再生が促進されるからである。
【0077】結果 LPS活性化マクロファージによる培養上清におけるサイトカイン放出の抑制 オキシトシンの存在下で、または培地単独で24時間インキュベーションされ
たマクロファージは、検出できるほどの量のサイトカインを培養上清に放出しな
かった。LPSによる上清の活性化は、培養上清へのIL−1−β(32±11
pg/mL)、TNF−α(2122±186pg/mL)、IL−10(98
±22pg/mL)およびIFN−γ(2118±387pg/mL)の著しい
放出をもたらした。LPSおよびオキシトシンの両方を用いた細胞の同時培養は
それらの放出を阻害した:IL−1−β(62%の阻害)、TNF−α(28%
の阻害)、IL−10(68%の阻害)およびIFN−γ(12%の阻害)。
【0078】LPS活性化マクロファージによる培養上清における亜硝酸塩(NO代謝物)の 阻害 オキシトシンの存在下で、または培地単独で24時間インキュベーションされ
たマクロファージは、検出できるほどの量の亜硝酸塩を培養上清に放出しなかっ
た。LPSを用いた上清の活性化(インキュベーション)は高レベルの亜硝酸塩
を誘導した(8.2±3.6μMの亜硝酸塩)。LPSおよびオキシトシンの両
方を用いたマクロファージの同時培養は、亜硝酸塩の生成を著しく抑制した(4
.3±1.2μMの亜硝酸塩)。
【0079】ホルボールエステルオキサゾロンによって引き起こされる耳の炎症の抑制 オキシトシンの潜在的なインビボ作用を評価するために、耳の水腫を、正常な
マウスの耳にホルボールエステル溶液を塗ることによって誘導した。オキシトシ
ン(1mg/耳)およびビヒクルを、接触刺激を誘導する30分前に耳に塗布し
た。ビヒクル治療群の耳介の重量(mg単位)は34.3±6.1であり、オキ
シトシン治療群では17.9±9.7であり、著しく減少していた。オキシトシ
ンの抗炎症作用を、オキサゾロンで誘導される耳の炎症においても調べた。この
モデルでは、マウスを、オキサゾロンで、剃毛した腹部に感作した。7日後、接
触過敏性を、ハプテンを耳に塗布することによって誘発させた。局所的に塗布さ
れたオキシトシンの抗炎症作用を、ハプテンを塗布した30分後に調べた。治療
の効き目を24時間後に評価した。ビヒクルで治療した後の耳介重量(mg)は
32.6±7.5mgであり、オキシトシン(1mg/耳)を局所塗布した後で
は19.6±8.7mgであった。
【0080】 まとめると、本発明者らの知見により、オキシトシンは、活性化されたマクロ
ファージを使用したインビトロ研究から示唆されるように前炎症性媒介因子の放
出を抑制することよって、ホルボールエステルおよびオキサゾロンで誘導される
耳の炎症に対する保護作用を示すことが示唆される。
【0081】実施例9−老化皮膚およびバリア形成に対するオキシトシン治療の効果 材料および方法 Hanley他、J Invest Dermatol、106:404〜4
11(1996);Hanley他、J Clin Invest、97:25
76〜2584(1996)のプロトコルを使用した。
【0082】これまでの研究 保護バリアは生命にとって必須であるので、表皮および角質層の発達は出生前
に完了しなければならない(Komuves他、J Invest Derma
tol、1998年9月;111(3):429〜433)。表皮の透過性バリ
アは、脂質に富むマトリックスに埋もれた角質細胞から構成される。子宮発達に
おいて密接に平行しているラット胎児の皮膚発達の外植片モデルを使用した最近
の研究により、ホルモン、および核レセプターファミリーに属する他の活性化因
子が、脂質代謝、および細胞外脂質ラメラの形成を刺激することによって透過性
バリアの個体発生を調節することが明らかにされている。Komuves他の結
果は、いくつかのホルモンおよび核ホルモンレセプター活性化因子が、ケラトヒ
アリン顆粒および角質化外皮の両方の重要な成分に影響する胎児発達時の表皮分
化を調節していることを明らかにしている。従って、様々なリガンド/核レセプ
ター活性化因子は、透過性バリアの個体発生だけでなく、角質層形成に必須な構
造タンパク質の発現をも促進する。
【0083】 これまでの研究により、表皮透過性バリアおよび肺の個体発生は胎児ラットに
おいて平行して生じていることが明らかにされている。性もまた肺の成熟化に影
響している。すなわち、オスでは遅れた発達を示す。性ステロイドホルモンは、
肺の成熟化に対して反対の作用を示す。エストロゲン類は促進し、アンドロゲン
類は阻害する。最近の研究において、Hanley他(1996)は、水の経皮
的喪失として測定される皮膚のバリア形成が雄性胎児ラットにおいて遅れること
を明らかにしている。エストロゲンを妊娠母体に投与することによって、胎児の
バリア発達が形態および機能の両方において促進される。十分なバリアはまた、
エストロゲンを補充した培地においてインビトロでインキュベーションされた皮
膚の外植片でより早く形成される。対照的に、ジヒドロテストステロンは、イン
ビボおよびインビトロの両方でバリア形成を遅らせる。最後に、妊娠ラットをア
ンドロゲンアンタゴニストのフルタミドで治療することによって、バリア形成の
性差がなくなる。
【0084】 老化した表皮は、変化した薬物透過性、刺激接触皮膚炎に対する増大した感受
性、および多くの場合には重篤な乾燥症を示す。これらは、老化した表皮バリア
の障害を示唆している。表皮老化の機能的、構造的および生化学的な基礎を明ら
かにするために、Ghadially他(J Clin Invest、199
5年5月;95(5):2281〜2290)は、若年者(20〜30才)対高
齢者(>80才)のヒト被験者において、そしてマウスモデルにおいてバリア機
能を比較した。高齢者ヒトおよび老齢マウスの両方における基礎的な水の経皮喪
失は正常値よりも低かった。しかし、老化したバリアは、アセトンまたはテープ
剥離のいずれかでより容易に乱された(高齢者対若年者の被験者において、それ
ぞれ、18±2剥離対31±5剥離)。さらに、アセトン治療またはテープ剥離
のいずれかの後で、バリアは、高齢者の場合、若年被験者の場合よりも遅く回復
した(若年ヒト被験者では24時間および72時間でそれぞれ50%および80
%であったが、これに対して高齢被験者では24時間で15%の回復であった)
。その後の6日間ではさらに遅れた。バリア回復における同様な差が老齢マウス
対若年マウスで認められた。総脂質含有量は老齢マウスの角質層で(約30%)
減少していたが、(セラミド1を含む)セラミド、コレステロールおよび遊離脂
肪酸の分布は変化していなかった。さらに、正常な量のエステル化された超長鎖
脂肪酸が存在していた。最後に、角質層のラメラ二重層は、正常な基本構造およ
び大きさを示していたが、数が巣状に減少し、ラメラ体含有量の分泌が低下して
いた。従って、基礎的な条件のもとでの老化表皮におけるバリア機能の評価は、
バリアの一体性およびバリア修復がともに著しく異常であるために誤解されてい
る。これらの機能的な変化は、角質層空隙におけるラメラ二重層の低下をもたら
すすべての重要な角質層脂質の全体的な不足に起因し得る。これらの一連の知見
により、外因的および環境的な攻撃に対する本質的に老化した皮膚の増大した感
受性が説明され得る。
【0085】結果 (研究プロトコルにおいてエストロゲンと交換された)オキシトシンを投与す
ることの効果の検討において、本発明者らの結果は、オキシトシンは皮膚に対す
る直接的な作用によって皮膚のバリア形成を促進することを示している。別の1
連の研究において、本発明者らは、オキシトシンの局所的適用が老化皮膚におけ
る総脂質含有量に影響するかどうかを調べることを試みた。オキシトシンを21
日間にわたって毎日反復的に適用することによって、総脂質含有量が老化皮膚に
おいて1.1〜1.6%増大した。このことは、オキシトシンの局所的適用は、
外因性および環境的な攻撃に対する保護作用を有し得ることを示唆している。
【0086】実施例10−細胞のエネルギー消費の減少 この研究の目的は、細胞内Ca2+に対するオキシトシンの作用を調べること
であった。本発明者らは、ヒト結腸腫瘍細胞株HT−29およびパッチクランプ
技術を使用した。近年、Sand他(Am J Physiol、1997年1
0月;273(4Pt1):C1186〜C1193)はパッチクランプ技術を
使用して、HT−29細胞に対するカルバコール(CCh)の作用を調べた。C
Chに曝しているとき、細胞(n=23)は、Cl−の平衡電位(E(Cl−)
;−48mV)の近くまで分極し、その後、膜電位が振動し始めた(16/23
細胞)。電圧クランプ実験において、全細胞電流における類似した振動が明らか
にされ得る。全細胞伝導率は、コントロール溶液における225±25pSから
6.728±1.165pSにまで増大した(平均±SE、n=17)。置換実
験(浴溶液において22mMのCl−、E(Cl−)=0mV)において、反転
電位は、−41.6±2.2mV(平均±SE、n=9)から−3.2±2.0
mV(平均±SE、n=7)にまで変化した。細胞をカルシウム感受性蛍光色素
のfluo3で負荷し、同時にパッチクランプ処理した場合、CChは、蛍光お
よび膜電位の同時的な振動パターンを引き起こした。細胞結合パッチにおいて、
CChで活性化された電流は、ピペットでのコントロール溶液の場合には1.9
±3.7mV(平均±SE、n=11)の相対膜電位で、そしてピペットでの1
5mMのCl−溶液の場合には46.2±5.3mV(平均±SE、n=10)
の相対膜電位で反転した。高濃度のK(144mM)は反転電位を大きく変化
させなかった(p<<または=0.05、n=8)。裏返しにしたパッチにおい
て、19pS(n=7)の伝導率を有するカルシウム依存性Cl−チャンネルが
明らかにされ得る。Sand他は、CChにより、カルシウム依存性Cl−チャ
ンネルおよびK透過性が関与する膜電位の振動が引き起こされると結論した。
【0087】結果 同じ条件を使用して、本発明者らは、1mMオキシトシンの作用を調べた。オ
キシトシンに曝しているとき、細胞(n=2)は、Cl−の平衡電位(E(Cl
−);−48mV)の近くまで分極し、その後、膜電位が振動し始めた。電圧ク
ランプ実験において、全細胞電流における類似した振動が明らかにされ得る。全
細胞伝導率は、コントロール溶液における234±26pSから6.262±1
.434pSにまで増大した(平均+/−SE、n=2)。細胞をカルシウム感
受性蛍光色素のfluo3で負荷し、同時にパッチクランプ処理した場合、オキ
シトシンは、蛍光および膜電位の同時的な振動パターンを引き起こした。細胞結
合パッチにおいて、オキシトシンで活性化された電流は、2.62の相対膜電位
で反転した。裏返しにしたパッチにおいて、14pS(n=2)の伝導率を有す
るカルシウム依存性Cl−チャンネルが明らかにされ得る。まとめると、オキシ
トシンは、エネルギー消費を低下させる。
【0088】 オキシトシンによる刺激は細胞内Ca2+振動を増大させることが見出された
。細胞内Ca2+での振動は、種々の細胞タイプに共通したパターンである。C
2+振動において、細胞は、周期および振幅の両方について外部刺激に対する
応答を調節する能力を有する。Words他(Nature、319:600〜
602、1986)による研究において、カルシウム振動がラットの肝細胞で認
められた。Words他は、カルシウム過渡電流の周期により、カルシウムシグ
ナルを開始させるホルモンに対する応答が決定されることを示唆した。エネルギ
ーの観点から、カルシウム過渡電流は細胞内のカルシウム負荷を低下させ、従っ
て、活性化されるカルシウム貯蔵器官の膜におけるATP消費のカルシウムポン
プの必要性を低下させる。[Ca2+]の持続した増大は細胞を損傷し得ること
もまたよく知られている(Shuttleworthe,T.J.J.Exp.
Biol.200:303〜314、1997)。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、餌制限または自由摂食させ、NaClおよびオキシトシンで治療され
た母体における妊娠の最初の14日間および20日間における母体の正味重量(
総体重−子宮重量(胎児および胎盤組織を含む))の増大を示す。栄養摂取効果
(p<0.001)、治療効果(p=0.06)、妊娠日数効果(ns)、有意
な相互作用は認められない。四角はSEMを表し、棒はSDを表す。
【図2】 図2は、餌制限または自由摂食させ、NaClおよびオキシトシンで治療され
た母体における妊娠14日目および20日目の子宮近くの脂肪組織を示す。栄養
摂取効果(p<0.001)、治療効果(ns)、妊娠日数効果(ns)、相互
作用(妊娠日数x治療)(p<0.05)、他の有意な相互作用は認められない
。*自由摂食させたオキシトシン治療群とNaCl治療群との妊娠20日目にお
ける有意(p<0.05)差。四角はSEMを表し、棒はSDを表す。
【図3】 図3は、餌制限または自由摂食させ、NaClおよびオキシトシンで治療され
た母体における妊娠14日目および20日目の腹膜後腔の脂肪組織を示す。栄養
摂取効果(p<0.001)、治療効果(ns)、妊娠日数効果(ns)、相互
作用(妊娠日数x治療)(p<0.05)、他の有意な相互作用は認められない
。*自由摂食させたオキシトシン治療群とNaCl治療群との妊娠20日目にお
ける有意(p<0.05)差。四角はSEMを表し、棒はSDを表す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年11月6日(2000.11.6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【化1】 式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
ら選択され、 Yは、Ile、Leu、Thr、無し、Val、Hos、DabaおよびCi
tからなる群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される。
【化2】 (式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
ら選択され、 Yは、Ile、Leu、Thr、無し、Val、Hos、DabaおよびCi
tからなる群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される) からなる群から選択されることを特徴とする、胎児成長刺激、ヒト皮膚樹状細胞
の刺激、皮膚ケラチノサイトの刺激、皮質骨厚さの刺激、アポトーシスの低下、
ホルボールエステルおよびオキサゾロンにより誘導される炎症からの保護、老化
皮膚およびバリア形成に対する作用のための薬学的組成物。
【請求項8】 有効濃度の少なくとも1つのオキシトシン活性物質を含むこ
とを特徴とする、胎児成長を促進させるための組成物。
【手続補正書】
【提出日】平成13年6月7日(2001.6.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【化1】 式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
ら選択され、 Yは、Ile、Leu、Thr、無し、Val、Hos、DabaおよびCi
tからなる群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される。
【化2】 (式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
ら選択され、 Yは、Ile、Leu、Thr、無し、Val、Hos、DabaおよびCi
tからなる群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される) からなる群から選択されることを特徴とする、胎児成長刺激、ヒト皮膚樹状細胞
の刺激、皮膚ケラチノサイトの刺激、皮質骨厚さの刺激、アポトーシスの低下、
ホルボールエステルおよびオキサゾロンにより誘導される炎症からの保護、老化
皮膚およびバリア形成に対する作用のための薬学的組成物。
【化22】 式中、 XはLeu又は単結合である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 13/10 A61P 17/00 15/08 25/02 17/00 25/28 25/02 27/00 25/28 43/00 107 27/00 C07K 7/16 ZNA 43/00 107 A61K 37/34 // C07K 7/16 ZNA 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD ,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL, PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,S L,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US ,UZ,VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C084 AA17 AA18 BA26 DB28 MA02 ZA02 ZA20 ZA32 ZA81 ZB22 4C086 AA01 AA02 BC38 MA02 ZC80 4H045 AA30 BA14 BA15 BA32 CA40 DA34 EA21

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インビトロおよびインビボで不妊症を治療すること、ならび
    に末梢神経障害および中枢神経障害を治療することなどの細胞再生を改善させる
    ための薬学的組成物を調製するための、オキシトシン活性物質の使用。
  2. 【請求項2】 前記オキシトシン活性物質は下記の化合物からなる群から選
    択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用: 【化1】 式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
    れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
    ら選択され、 Yは、Ile、Leu、無し、Val、Hos、DabaおよびCitからな
    る群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される。
  3. 【請求項3】 前記オキシトシン活性物質は、オキシトシン、メソトシン、
    イソトシン、アネトシン、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、
    配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9の化合物か
    らなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
  4. 【請求項4】 有効濃度の少なくとも1つのオキシトシン活性物質を混合物
    で、あるいは少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤ととも
    に含み、かつ前記オキシトシン活性物質が、オキシトシン以外の下記の化合物: 【化2】 (式中、 Vは、TyrおよびPheからなる群から選択され、 Wは、Ile、Val、Hoph、PheおよびChaからなる群から選択さ
    れ、 Xは、Gln、Ser、Thr、Cit、ArgおよびDabaからなる群か
    ら選択され、 Yは、Ile、Leu、無し、Val、Hos、DabaおよびCitからな
    る群から選択され、 Zは、Gly、無しおよびAlaからなる群から選択される) からなる群から選択されることを特徴とする、細胞再生を改善させるための薬学
    的組成物。
  5. 【請求項5】 前記オキシトシン活性物質は、メソトシン、イソトシン、ア
    ネトシン、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配
    列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9の化合物からなる群から選
    択されることを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
  6. 【請求項6】 前記組成物は、オキシトシンの放出を増大させ、かつ/また
    はエストロゲンなどのレセプターの数または親和性を増大させる物質、あるいは
    αアゴニスト作用を有する薬物(クロニジンなど)を含むことを特徴とする、
    請求項4または5に記載の薬学的組成物。
  7. 【請求項7】 前記有効濃度が4〜70重量%であり、好ましくは0.1〜
    50重量%であることを特徴とする、請求項4〜6に記載の薬学的組成物。
  8. 【請求項8】 前記組成物は、心筋麻痺または心臓発作、萎縮、パーキンソ
    ン病およびアルツハイマー病などの変性疾患、乾癬、骨粗鬆症、移植後、平衡障
    害、子宮破裂、肝臓破裂、腎臓破裂の後での治癒過程において、例えばガン治療
    後での血液細胞(例えば、赤血球、白血球およびリンパ球)の増殖を回復させる
    ために、家畜の体重を増大させるために、ヒトの感覚を増大させるために(例え
    ば、老化の結果として損なわれた視力、聴力、嗅覚および味覚を改善するために
    )、失禁問題を軽減するために、皮膚を若返らせて、老化の結果としてのしわを
    妨げるための化粧品適用において、治癒能を増大させるために手術前に、そして
    毛および爪の成長を助けるために使用されることを特徴とする、請求項4〜7に
    記載の薬学的組成物。
  9. 【請求項9】 有効濃度の少なくとも1つのオキシトシン活性物質を含むこ
    とを特徴とする、胎児成長を促進させるための組成物。
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