(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態のウインチ制御装置20(図2参照)を備える作業機械1について説明する。
作業機械1は、図1に示すように、建設作業などの作業を行う機械である。例えば、作業機械1は、移動式クレーンに作業装置19を設けたものである。作業機械1は、下部走行体11と、上部旋回体13と、ブーム15と、ブーム起伏装置17と、作業装置19と、ウインチ制御装置20(図2参照)と、を備える。
下部走行体11は、作業機械1を走行させる部分であり、例えばクローラなどを備える。
上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回可能である。上部旋回体13は、キャブ13aと、カウンターウエイト13bと、を備える。キャブ13aは、作業機械1の操作者が作業機械1を操作する部屋(空間)を形成する。カウンターウエイト13bは、作業機械1の能力を上げるための、おもりである。ここで、上部旋回体13の長手方向、かつ、水平方向を、前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、カウンターウエイト13bからキャブ13aに向かう側を前側X1とする。前側X1は、ブーム15が地面と平行になるようにブーム15を伏せた状態にしたときに、上部旋回体13に対してブーム15が突出する側である。前後方向Xにおいて、前側X1とは反対側を後側X2とする。
ブーム15は、上部旋回体13に対して起伏自在に、上部旋回体13に取り付けられる。ブーム15は、例えばラチス構造を有するラチスブームでもよく、例えば箱型構造を有する箱型ブームでもよい。ブーム15は、シーブ15aを備える。シーブ15aは、作業装置19をブーム15側に引き寄せるためのロープ31(図1では主巻ロープ31A)が掛けられる滑車である。
ブーム起伏装置17は、上部旋回体13に対してブーム15を起伏させる。ブーム起伏装置17は、例えば、ガントリ17aと、ブーム起伏ロープ17bと、を備える。ガントリ17aは、上部旋回体13に取り付けられ、ブーム15よりも後側X2に配置される。ブーム起伏ロープ17bは、ガントリ17aに設けられたシーブに掛けられ、起伏ウインチW1により巻き取りおよび繰り出しされる。
作業装置19は、ブーム15により吊り上げられ、作業を行う装置である。作業装置19は、フロントアタッチメントである。作業装置19は、例えば、基礎土木作業を行う、基礎土木機器である。作業装置19は、基礎土木作業以外の作業を行う装置でもよい。具体的には例えば、作業装置19は、バイブロハンマ、グラブバケット、または、リフチングマグネットなどである。
ウインチ制御装置20(図2参照)は、ウインチ30の作動を制御する装置(回路)である。図2に示すように、ウインチ制御装置20は、ウインチ30と、状態切換弁51(状態切換部)と、圧力制御弁61と、ブレーキ力調整部63と、を備える。
ウインチ30は、ロープ31(ワイヤロープ)の巻き取りおよび繰り出しを行う。図1に示すように、ウインチ30は、上部旋回体13に配置される(搭載される、取り付けられる)。図1に示す例では、ウインチ30は、上部旋回体13の前後方向X中央部分、および、上部旋回体13の後側X2部分に配置される。ウインチ30は、上部旋回体13の前側X1部分に配置されてもよい。ウインチ30は、ブーム15などに配置されてもよい。ウインチ30の数は、図1に示す例では3であり、2以下でもよく、4以上でもよい。例えば、ウインチ30には、主巻ウインチ30Aと、補巻ウインチ30Bと、サードウインチ30Cと、がある。ロープ31には、主巻ロープ31Aと、補巻ロープ31Bと、サードロープ31Cと、がある。主巻ウインチ30Aは、主巻ロープ31Aの巻き取りおよび繰り出しを行う。補巻ウインチ30Bは、補巻ロープ31Bの巻き取りおよび繰り出しを行う。サードウインチ30Cは、サードロープ31Cの巻き取りおよび繰り出しを行う。
これらのウインチ30およびロープ31は、例えば次のように用いられる。前側X1から後側X2に、主巻ウインチ30A、補巻ウインチ30B、サードウインチ30C、の順で配置される。主巻ウインチ30Aおよび主巻ロープ31Aは、作業装置19を支持する。さらに詳しくは、主巻ロープ31Aは、主巻ウインチ30Aから繰り出され、ブーム15のシーブ15aに掛けられ、ブーム15の内部を経由し、作業装置19をブーム15側(後側X2)に引っ張る。補巻ウインチ30Bおよび補巻ロープ31Bは、作業装置19を吊り上げ、作業装置19を巻き上げおよび巻き下げる(上下方向に移動させる)。補巻ロープ31Bは、ブーム15の先端部のシーブに掛けられる(サードロープ31Cも同様)。サードウインチ30Cおよびサードロープ31Cは、作業装置19以外の吊荷を吊り上げ、吊荷を巻き上げおよび巻き下げる。作業装置19以外の吊荷は、例えば杭Piなどである。なお、主巻ウインチ30A、補巻ウインチ30B、およびサードウインチ30Cの、配置および用途は変更されてもよい。例えば、補巻ウインチ30Bが杭Piの巻き上げおよび巻き下げを行い、サードウインチ30Cが作業装置19の巻き上げおよび巻き下げを行ってもよい。
このウインチ30は、ロープ31の張力によりロープ31を繰り出し可能なフリー状態(フリーモード)になることが可能に構成される(フリー状態の詳細は後述)。一方、ロープの巻き取りなどを行う装置であっても、フリー状態にならない装置は、本発明におけるウインチ30に含まれない。例えば、ブーム起伏ロープ17bの巻き取りおよび繰り出しを行う起伏ウインチW1は、本発明におけるウインチ30に含まれない。また、例えば、作業装置19などにつながれたロープを、引っ張り続けるタグラインW2が設けられる場合がある。タグラインW2は、軽い力で、ロープを常に引っ張る。上記「軽い力」は、例えば、作業装置19の巻き上げなどはできないが、作業装置19の揺れは抑制できる程度の力である。このタグラインW2は、本実施形態のウインチ30には含まれない。なお、タグラインW2は、例えば、上部旋回体13の前側X1端部などに配置される。また、ウインチ30は、タグラインW2に比べ、大きい力でロープ31を巻き取ることができる。図2に示すように、ウインチ30は、ウインチドラム33と、モータ35と、減速機37と、クラッチ40(ブレーキ装置)と、を備える。
ウインチドラム33には、ロープ31が巻かれる。モータ35は、ウインチドラム33を駆動する(回転させる)。モータ35は、例えば油圧モータである。減速機37は、モータ35の回転速度を減速し、モータ35からウインチドラム33に回転力を伝える。減速機37は、例えば遊星歯車機構を有する。
クラッチ40(ブレーキ装置)は、モータ35とウインチドラム33との連結の状態(連結の度合い)を切り換える。クラッチ40は、ウインチドラム33の回転に対してブレーキをかける。クラッチ40は、ハウジング41と、クラッチ板43と、クラッチシリンダ45と、スプリング47と、を備える。
ハウジング41は、例えば上部旋回体13(図1参照)に固定される。
クラッチ板43は、ハウジング41内に配置される、摩擦板である。クラッチ板43には、ハウジング41に対して固定された固定クラッチ板と、ハウジング41に対して回転可能な回転クラッチ板と、がある。これらのクラッチ板43・43どうしが圧接および離間(圧接解除)することで、モータ35とウインチドラム33との連結の状態が切り換わる。
クラッチシリンダ45は、クラッチ板43・43どうしの圧接と離間とを切り換える。クラッチシリンダ45は、例えば油圧シリンダである。クラッチシリンダ45は、クラッチ板43を押圧可能なピストン45aと、圧接室45bと、離間室45cと、を備える。離間室45cは、ポンプP1に連通する。
スプリング47は、クラッチ板43・43どうしを圧接させる側にピストン45aを付勢する。具体的には、スプリング47は、ハウジング41に対してピストン45aを付勢する。
状態切換弁51(状態切換部)は、ウインチ30の状態を、連結状態(連結モード)と、フリー状態(フリーモード)と、に切り換える。状態切換弁51は、クラッチ40の状態を切り換える弁(クラッチバルブ)である。状態切換弁51は、例えば切換弁であり、例えば電磁切換弁であり、例えば油圧切換弁でもよい。状態切換弁51の切換位置には、連結位置51aと、フリー位置51bと、がある。
連結位置51aは、ウインチ30を連結状態にする。連結状態は、モータ35の駆動力をウインチドラム33に伝えることが可能な状態である。連結状態は、モータ35が駆動することによる、ロープ31の巻き取りおよび繰り出しが可能な状態である。状態切換弁51の切換位置が連結位置51aのとき、状態切換弁51は、ポンプP1と圧接室45bとを連通させる。
フリー位置51bは、ウインチ30をフリー状態にする。フリー状態は、ロープ31の張力により、ウインチドラム33からロープ31を繰り出すことが可能な状態(自然繰り出し可能な状態)である。フリー状態は、ロープ31を繰り出す向きにモータ35を回転させなくても、ウインチドラム33からロープ31を繰り出すことが可能な状態である。ただし、フリー状態でも、ウインチドラム33の回転に対するブレーキ力(以下、単に「ブレーキ力」ともいう)が所定の大きさ以上の場合は、ウインチドラム33からロープ31を繰り出すことが不可能となる。状態切換弁51の切換位置がフリー位置51bのとき、状態切換弁51は、ポンプP1と圧接室45bとを遮断し、圧力制御弁61と圧接室45bとを連通させる。
圧力制御弁61は、ブレーキ力調整部63の指令を、油圧に変換する弁である。圧力制御弁61は、ウインチ30がフリー状態のときに(状態切換弁51の切換位置がフリー位置51bのときに)、ブレーキ力を制御(調整)する弁である。圧力制御弁61は、例えば比例減圧弁であり、例えば電磁比例減圧弁である。圧力制御弁61は、圧力制御弁61に入力される油圧に応じて開度が変わる弁などでもよい。
ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力の大きさ(ブレーキの効き具合、強さ)を、操作者による操作(調整、設定)に応じて指令する。ブレーキ力調整部63は、圧力制御弁61の開度を指令することで、ブレーキ力を指令する。
このブレーキ力調整部63は、ブレーキ力の指令を、いわば半固定にする。さらに詳しくは、ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされるまでは、ブレーキ力を維持する指令をする。ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされた場合は、ブレーキ力調整部63の操作に応じてブレーキ力を変更する指令をする。
このブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を次のように指令できる。クラッチ40がウインチドラム33に作用させることが可能なブレーキ力の範囲の中で、最小のブレーキ力(最小ブレーキ力)と、最大のブレーキ力(最大ブレーキ力)と、の間のブレーキ力を、中間ブレーキ力とする。ブレーキ力調整部63は、ウインチ30のブレーキ力が中間ブレーキ力となるように指令できる。ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力が最小ブレーキ力となるように指令できてもよく、ブレーキ力が最大ブレーキ力となるように指令できてもよい。ブレーキ力調整部63が指令可能なブレーキ力の大きさは、非連続的(離散的)な大きさでもよく、連続的でもよい。すなわち、ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を連続的に可変に指令できてもよく、ブレーキ力を非連続的に可変に指令できてもよい。
このブレーキ力調整部63は、操作者が直接操作可能なものであり、例えば操作者が手で操作可能(手元操作可能)なものである。ブレーキ力調整部63は、図1に示す荷(例えば作業装置19、杭Piなど)を作業者が見ながら操作可能な位置に配置される。ブレーキ力調整部63(図2参照)は、例えばキャブ13a内に配置され、キャブ13a内以外の位置に配置されてもよい。例えば、ブレーキ力調整部63は、ウインチ30とは異なる位置に配置される。ブレーキ力調整部63は、例えば半固定の可変抵抗を有する部品でもよく、例えば半固定の可変コンデンサを有する部品などでもよい。具体的には例えば、ブレーキ力調整部63は、半固定抵抗と回転部(ツマミなど)とを備えるトリマなどである。この場合、ブレーキ力調整部63は、回転部の角度位置(トリマ位置)に応じた指令を出力する。上記の回転部を、レバー、または、スライド部(直線移動可能なツマミなど)などに代えてもよい。
(作動)
作業機械1は、次のように作動するように構成される。
(連結状態)
図2に示すウインチ30が連結状態のときのウインチ制御装置20の作動は、次の通りである。状態切換弁51の切換位置が、連結位置51aとされる。ポンプP1の吐出油は、状態切換弁51を介して、圧接室45bに流入する。また、ポンプP1の吐出油は、状態切換弁51を介さずに、離間室45cに流入する。その結果、離間室45cの圧力と圧接室45bの圧力とが同じ(またはほぼ同じ)になる。また、スプリング47が、ピストン45aを付勢する(ピストン45aの推力が発生する)。その結果、クラッチ板43が互いに圧接する。この状態でモータ35が駆動すると、モータ35の駆動力が、減速機37を介して、ウインチドラム33に伝わる。ウインチドラム33が回転すると、ロープ31が巻き取りおよび繰り出しされる。状態切換弁51の切換位置が連結位置51aの場合、状態切換弁51は、圧力制御弁61と圧接室45bとを遮断する。よって、ブレーキ力調整部63による指示は、ブレーキ力に影響しない。
(フリー状態)
ウインチ30がフリー状態のときのウインチ制御装置20の作動は、次の通りである。状態切換弁51の切換位置が、フリー位置51bとされる。ポンプP1の吐出油は、状態切換弁51を介さずに、クラッチシリンダ45の離間室45cに流入する。状態切換弁51の切換位置がフリー位置51bの場合、状態切換弁51は、ポンプP1と圧接室45bとを遮断する。よって、ポンプP1の吐出油は、圧接室45bには流入しない。一方、油圧源P2の吐出油は、圧力制御弁61と、状態切換弁51(フリー位置51b)とを介して、圧接室45bに流入する。
ブレーキ力調整部63の指令に応じて、圧力制御弁61の開度が変わり、圧接室45bの圧力が変わる。圧接室45bの圧力に応じて、ウインチ30の(クラッチ40の)ブレーキ力が変わる。具体的には、圧接室45bの圧力が低いほど、スプリング47の付勢力に対抗する向きのピストン45aの推力が、大きくなる。よって、圧接室45bの圧力が低いほど、クラッチ板43板どうしの圧接の力が小さく(弱く)なり、ブレーキ力が小さくなる。よって、ブレーキ力調整部63の指令を調整することで、ブレーキ力を任意の大きさに調整できる。なお、フリー状態のとき、例えば、モータ35は、ブレーキがかかった状態で停止する。
操作者が、ウインチ30のブレーキ力の大きさ(強弱)をブレーキ力調整部63で調整する。その結果、ロープ31の張力(高張力、低張力)を調整できる。よって、ロープ31の張力を調整することで、ロープ31が垂れ下がりすぎることを抑制できる。また、ロープ31の張力を調整できる結果、ウインチドラム33の回転速度(減速、増速)を調整でき、ロープ31の繰り出しの速度を調整できる。その結果、図1に示すロープ31に取り付けられた荷(例えば作業装置19、杭Piなど)の移動速度を調整できる。例えば、荷(作業装置19など)の前側X1への移動(振り出し)の速度を調整できる。例えば、吊荷(作業装置19、杭Piなど)の落下速度(降下速度)を調整でき、落下速度の最大値を抑制できる。
ここで、操作者によるブレーキペダル(例えば図3に示すブレーキペダル273を参照)の操作力(踏力、踏み具合)に応じてブレーキ力が変わる技術であって、図2に示すブレーキ力調整部63を備えない技術を「従来技術」とする。従来技術では、ブレーキ力を微調整するには、操作者は、ブレーキペダルの操作力を微調整する必要がある。そのため、ブレーキ力の微調整が困難である。一方、本実施形態では、ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされるまでブレーキ力を維持するように指令し、ブレーキ力を変更する操作がなされた場合は操作に応じてブレーキ力を変更するように指令する。よって、ブレーキ力を微調整するには、操作者は、ブレーキ力調整部63による指令を変更する操作をしたり、この操作をやめたりすればよい。具体的には例えば、操作者は、ブレーキ力調整部63のツマミを回転させたり、回転を止めたり(例えば手を離したり)すればよい。よって、従来技術に比べ、ブレーキ力の微調整を容易に行える。
従来技術では、一定の操作力で操作者がブレーキペダルを踏み続けることは困難である。そのため、ブレーキ力を一定に保つことは困難である。一方、本実施形態では、ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされるまでブレーキ力を維持するように指令する。よって、ウインチ30のブレーキ力を容易に一定に保つことができる。
フリー状態のウインチ30を用いた作業(後述)が複数回行われる場合がある。従来技術では、複数回の作業において、繰り返し(毎回)同じ操作力で操作者がブレーキペダルを踏むことは困難である。そのため、繰り返し同じブレーキ力で作業することは困難である。一方、本実施形態では、複数回の作業において、図2に示すブレーキ力調整部63の指令の大きさを維持した場合、繰り返し同じブレーキ力で作業できる。
さらに詳しくは、まず、フリー状態のウインチ30を用いて、ブレーキ力調整部63の指令に応じた大きさのブレーキ力で、作業(作業αとする)が行われる。次に、ウインチ30を用いて、作業αとは異なる作業(作業βとする)が行われる。作業βは、例えば、ブレーキ力調整部63とは異なる指令(例えば図3に示すブレーキペダル273など)に応じたブレーキ力での作業でもよい。作業βは、例えば、ウインチ30を連結状態として、ロープ31の巻き取りおよび繰り出しの少なくともいずれかを行う作業でもよい。作業βの後、作業αと同様の作業(作業γとする)が行われるとする。この場合、ブレーキ力調整部63の指令を、作業αから作業γまで維持すれば、作業γでのブレーキ力を、作業αでのブレーキ力と同じ大きさにできる。その結果、フリー状態のウインチ30を用いた作業が複数回行われる場合に、ブレーキ力を毎回同じ大きさにできる。その結果、ロープ31の張力を毎回同じにできる。その結果、荷の速度を毎回同じにできる。なお、ブレーキ力調整部63の指令が、作業αから作業γまでの間に変更された場合でも、作業γでのブレーキ力を、作業αでのブレーキ力と同じ大きさになるように容易に微調整できる。
なお、特許文献1には、ボルト(同文献の段落0018)や減圧弁(同文献の段落0025)を用いて、クラッチのブレーキ特性を変えることが記載されている。しかし、同文献に記載の技術では、操作者がブレーキペダルの操作をやめる(ペダルストローク量をゼロにする)と、ブレーキが必ず解除される(同文献の図3参照)。そのため、特許文献1に記載の技術において、フリー状態のウインチを用いた作業を複数回行う場合に、毎回同じブレーキ力で作業することは困難である。
(フリー状態を用いた作業の具体例(その1))
フリー状態のウインチ30を用いた作業の具体例は、次の通りである。図1に示す主巻ウインチ30Aが連結状態にされる。そして、主巻ウインチ30Aが、モータ35(図2参照)の駆動力により、主巻ロープ31Aを巻き取る。これにより、作業装置19が、ブーム15側に引き寄せられる。次に、主巻ウインチ30Aがフリー状態にされる。このとき、作業装置19をブーム15の近傍に引き寄せた状態(支持した状態)で保持できるように、主巻ウインチ30Aのブレーキ力が調整される。次に、ブーム15が伏せられる(起伏下げ操作がされる)。すると、主巻ウインチ30Aからブーム15のシーブ15aまでの距離が長くなる。すると、ブーム15の角度に合わせて(追従して)、主巻ロープ31Aが、主巻ウインチ30Aから繰り出される。このとき、主巻ウインチ30Aから主巻ロープ31Aを繰り出しできるように、かつ、作業装置19をブーム15の近傍に引き寄せた状態で保持できるように、主巻ウインチ30Aのブレーキ力を、操作者が調整できる。よって、作業装置19を所望の位置に留めておくことができる。
次に、補巻ウインチ30Bおよび補巻ロープ31Bを用いて、杭Piが吊り上げられる。次に、主巻ロープ31Aが、主巻ウインチ30Aからフリー状態で繰り出される。すると、作業装置19が、ブーム15の近傍の位置から前側X1に移動する(振り出される)。このとき、主巻ロープ31Aが垂れ下がり過ぎないように、主巻ウインチ30Aのブレーキ力を、操作者が調整できる。なお、このとき、主巻ウインチ30Aを連結状態として、主巻ロープ31Aを繰り出してもよい。次に、作業装置19が、杭Piの上側Z1端部に取り付けられる。
次に、主巻ウインチ30A、補巻ウインチ30B、および、サードウインチ30Cが、フリー状態とされる。そして、例えば作業装置19が振動することで、杭Piが地中に打ち込まれる。すると、杭Piおよび作業装置19の下側Z2への移動に合わせて(追従して)、各ウインチ30から各ロープ31が繰り出される。このとき、各ロープ31が垂れ下がり過ぎないように、各ウインチ30のブレーキ力を、操作者が調整できる。
杭Piが所望の深さまで打ち込まれると、サードウインチ30Cおよびサードロープ31Cが、作業装置19を巻き上げる。そして、次の杭Pi(打ち込まれた杭Piとは別の杭Pi)を打ち込む作業が行われる。このような作業が、複数回(繰り返し)行われる。
(フリー状態を用いた作業の具体例(その2))
フリー状態のウインチ30を用いて、次の作業が行われてもよい。例えばオールケーシング工法などでは、バケット状の作業装置19を用いて、土砂の掘削、引き上げ、および排出を繰り返す作業が行われる。このバケット状の作業装置19は、ハンマーグラブでもよく、クラムシェルでもよい。作業装置19を用いた土砂の掘削は、次のように行われる。作業装置19が、ロープ31でブーム15の先端から吊り下げられる。この状態で、ウインチ30をフリー状態とすることで、作業装置19を落下させる(フリーフォールさせる)。なお、ウインチ30は、主巻ウインチ30Aでもよく、補巻ウインチ30Bでもよく、サードウインチ30Cでもよい。そして、作業装置19が、地面や掘削面に着地し、作業装置19の落下のエネルギーを使って、土砂を掘削する。次に、作業装置19が土砂をつかみ、作業装置19がウインチ30により巻き上げられることで、土砂が引き上げられる。次に、作業装置19が開かれることで、土砂が排出される。そして、再び、作業装置19をフリーフォールさせることで、土砂を掘削する。
作業装置19をフリーフォールさせる際に、作業装置19の落下に対して(ウインチドラム33(図2参照)の回転に対して)、軽いブレーキ(軽ブレーキ)がかけられる場合がある。例えば、作業装置19の質量が大きく、作業装置19の落下速度が大きすぎる場合などに、ブレーキがかけられる。この場合、上記の従来技術では、操作者は、フリーフォールが行われる際にブレーキペダルを踏む必要がある。また、このような掘削作業では、通常、作業装置19を多数回フリーフォールさせる。そのため、操作者は、多数回(長時間にわたって)、ブレーキペダルを踏んだり離したりする必要がある。また、操作者は、ブレーキ力が適切な大きさになるように、ブレーキペダルの操作力を毎回調整する必要がある。そのため、操作者の疲労が増大するおそれがある。一方、本実施形態では、操作者がブレーキ力調整部63を調整することで、作業装置19の落下速度を調整でき、落下速度の最大値を抑制できる。よって、操作者は、ブレーキペダルを踏んだり離したりする必要がない。よって、操作者がフットブレーキを毎回操作する場合に比べ、操作者の疲労を軽減できる。また、操作者がブレーキ力調整部63を調整することで、作業装置19をフリーフォールさせる際のブレーキ力を、毎回同じ大きさに(一定に)設定できる。よって、ブレーキ力の大きさを操作者が毎回調整する必要がある場合に比べ、操作者の疲労を軽減できる。なお、上記の作業以外にも、フリー状態のウインチ30を用いた作業を様々に行うことができる。
図2に示すウインチ制御装置20による効果は次の通りである。
(第1の発明の効果)
ウインチ制御装置20は、ウインチドラム33と、モータ35と、状態切換弁51(状態切換部)と、クラッチ40(ブレーキ装置)と、ブレーキ力調整部63と、を備える。ウインチドラム33には、ロープ31が巻かれる。モータ35は、ウインチドラム33を駆動する。状態切換弁51は、連結状態と、フリー状態と、を切り換える。連結状態は、モータ35の駆動力をウインチドラム33に伝えることが可能な状態である。フリー状態は、ロープ31の張力によりウインチドラム33からロープ31を繰り出すことが可能な状態である。クラッチ40は、フリー状態のときに、ウインチドラム33の回転に対してブレーキをかける。ブレーキ力調整部63は、クラッチ40によるブレーキ力の大きさを、操作者による操作に応じて指令する。
[構成1-1]ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされるまでブレーキ力を維持するように指令する。
[構成1-2]ブレーキ力調整部63は、ブレーキ力を変更する操作がなされた場合は操作に応じてブレーキ力を変更するように指令する。
ウインチ制御装置20は、上記[構成1-1]および[構成1-2]を備える。よって、ブレーキ力を変更する操作がなされるまでブレーキ力を維持するような構成を備えない場合(例えばブレーキペダルのみでブレーキ力を調整する場合など)に比べ、ウインチ30のブレーキ力を容易に微調整できる。その結果、ロープ31の張力を容易に調整でき、ウインチドラム33の回転速度を容易に調整できる。また、上記[構成1-1]により、ブレーキ力を容易に一定に維持できる。具体的には例えば、フリー状態のウインチ30を用いた作業中(1回の作業中)に、一定のブレーキ力で作業を行いやすい。また、具体的には例えば、フリー状態のウインチ30を用いた複数回の作業において、毎回同じブレーキ力で作業を行いやすい。
(第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態のウインチ制御装置220について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態のウインチ制御装置220のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付すなどして、説明を省略した。共通点の説明を省略する点については、後述する他の実施形態の説明も同様である。相違点は、ブレーキ力調整部263の構成、圧力制御弁271を備える点、ブレーキペダル273を備える点、および、高位選択部280を備える点である。
ブレーキ力調整部263は、モニタ263aの表示物の操作に応じて指令を出力するものである。モニタ263aは、例えばタッチパネルを備える。モニタ263aは、例えばキャブ13a(図1参照)内に配置される。モニタ263aの表示物は、文字、図形、記号、またはこれらを組み合わせたものなどである。モニタ263aの表示物には、ブレーキ力を大きくするための表示物と、ブレーキ力を小さくするための表示物と、がある。モニタ263aの表示物は、例えば上向きおよび下向きの矢印などの図形を含んでもよく、例えば「+」および「-」、ならびに「アップ」および「ダウン」などの文字を含んでもよい。モニタ263aは、通常、ブレーキ力調整部263以外の用途にも使えるものである。そのため、他の用途に使用されているモニタ263aの表示を制御するソフトウェアを変更することで、ブレーキ力調整部263を設けることができる。よって、ブレーキ力調整部263専用の部品(トリマ、レバーなど)が不要になる。よって、ブレーキ力調整部263にかかるコストを抑制できる。
圧力制御弁271は、ブレーキペダル273の指令を、油圧に変換する弁である。圧力制御弁271は、ウインチ30がフリー状態のときに、ブレーキ力を制御(調整)する。圧力制御弁271は、圧力制御弁61とは別の弁である。圧力制御弁271は、圧力制御弁271に入力される荷重の大きさに応じて開度が変わる弁である。圧力制御弁271は、圧力制御弁271に入力される信号(電気信号または油圧など)に応じて開度が変わる弁でもよい。
ブレーキペダル273は、操作者により加えられる操作力(踏力)に応じて、ブレーキ力の大きさを指令する。ブレーキペダル273は、圧力制御弁271の開度を指令することで、ブレーキ力を指令する。ブレーキペダル273は、操作力が大きいほど、ブレーキ力を大きくする指令をする。ブレーキペダル273は、操作力が所定値未満(例えばゼロ)の場合、ブレーキ力がゼロになるように指令する。ブレーキペダル273は、例えばブレーキ力調整部263の近傍に配置され、例えばキャブ13a(図1参照)内に配置される。
高位選択部280は、ブレーキ力調整部263によるブレーキ力の指令、および、ブレーキペダル273によるブレーキ力の指令のうち、ブレーキ力の大きい方の指令を選択する。高位選択部280は、ブレーキ力調整部263の指令に対応する油圧と、ブレーキペダル273の指令に対応する油圧と、のうち高い方の油圧を選択する、シャトル弁である。高位選択部280は、2つの入口と、1つの出口と、を備える。高位選択部280の一方の入口は、圧力制御弁61の出口につながれる。高位選択部280のもう一方の入口は、圧力制御弁271の出口につながれる。高位選択部280が選択した圧油は、状態切換弁51を介して、圧接室45bに流入する。その結果、ウインチ30のブレーキ力は、高位選択部280で選択された指令に応じた大きさになる。
(作動)
第1実施形態のウインチ制御装置20の作動に対する、ウインチ制御装置220の作動の相違点は次の通りである。
ウインチ30が連結状態からフリー状態になるときのウインチ制御装置220の作動は、例えば次の通りである。ブレーキペダル273が所定の大きさの操作力で操作された状態で、状態切換弁51が、連結位置51aからフリー位置51bに切り換えられる。すると、油圧源P3の吐出油は、圧力制御弁271、高位選択部280、および状態切換弁51を介して、圧接室45bに流入する。なお、油圧源P3は、油圧源P2と兼用でもよく、兼用でなくてもよい。その結果、ウインチ30にブレーキがかかる。このとき、ウインチドラム33は回転しない。なお、ブレーキペダル273の上記「所定の大きさの操作力」は、このときにウインチドラム33が回転しないような大きさの操作力である。次に、ブレーキペダル273の操作力が、減らされる(緩められる)。すると、圧接室45bの圧油は、状態切換弁51を介して、タンクTに戻る。すると、ピストン45aの推力が、スプリング47の付勢力に対抗する向きに発生する。すると、クラッチ板43・43どうしの圧接の力が弱くなる。よって、ブレーキペダル273の操作力が小さいほど、圧接室45bの圧力が小さくなり、クラッチ板43・43どうしの圧接の力が弱くなり、ブレーキ力が小さくなる。
ブレーキペダル273の操作力がさらに減らされると、ブレーキペダル273のブレーキ力の指令が、ブレーキ力調整部263のブレーキ力の指令よりも、小さいブレーキ力の指令になる場合がある。この場合、高位選択部280は、ブレーキ力調整部263の指令(に対応する油圧)を出力する。その結果、第1実施形態と同様に、ウインチ30のブレーキ力は、ブレーキ力調整部263の指令に応じたブレーキ力になる。一方、ブレーキペダル273のブレーキ力の指令が、ブレーキ力調整部263のブレーキ力の指令よりも、大きいブレーキ力の指令になる場合、高位選択部280は、ブレーキペダル273のブレーキ力の指令を出力する。その結果、ウインチ30のブレーキ力は、ブレーキ力調整部263の指令に応じたブレーキ力になる。
(作業の例)
ブレーキ力調整部263とブレーキペダル273とを用いた作業は、例えば次のように行われる。ウインチ30のブレーキ力が、ブレーキ力調整部263の指令に応じた大きさになっているとする。このときに、操作者が、ブレーキ力調整部263で指令しているブレーキ力よりも大きいブレーキ力を、ブレーキペダル273で指令する。すると、ウインチ30のブレーキ力は、ブレーキペダル273の操作力に応じたブレーキ力になる。よって、操作者は、ブレーキ力調整部263およびブレーキペダル273のどちらでも、ブレーキ力を設定(調整、操作)できる。
また、ウインチ30のブレーキ力が、ブレーキ力調整部263の指令に応じた大きさになっているとする。このときに、即座にブレーキ力を大きく(強く)したい場合がある。このような場合、操作者が、ブレーキ力調整部263を操作しなくても、ブレーキペダル273を操作すれば、即座に強いブレーキ力が得られる。
また、操作者が、ブレーキペダル273でブレーキ力を操作することで、吊荷を落下させる作業(いわば通常のフリーフォール作業)を行う場合がある。このときに、ブレーキペダル273の操作力がゼロになっても、ブレーキ力調整部263で調整したブレーキ力は発生する。よって、いわば軽ブレーキをかけることができ、吊荷の落下速度を抑制できる。
例えば、上記「フリー状態を用いた作業の具体例(その2)」では、図1に示す作業装置19をフリーフォールさせ、作業装置19を地面や掘削面に着地させた。このとき、ウインチ30にブレーキがかかっていなければ、作業装置19のフリーフォール時に回転したウインチドラム33(図2参照)が、作業装置19の着地後も回転したままとなり、不要なロープ31がウインチ30から繰り出される。そこで、作業装置19が着地した時点で、操作者が、図3に示すブレーキペダル273を踏み込み、ウインチドラム33を停止させる場合がある。このとき、ブレーキペダル273の操作力が弱くても(例えばゼロでも)、少なくともブレーキ力調整部263で調整したブレーキ力は発生する。よって、不要なロープ31がウインチ30から繰り出されることを抑制できる。
図1に示す作業装置19をフリーフォールさせ、作業装置19を地面や掘削面に着地させる作業には、図3に示す本実施形態の方が、第1実施形態よりも適している。一方、上記「フリー状態を用いた作業の具体例(その1)」のような、図1に示すブーム15に対する作業装置19の位置を変える作業には、本実施形態よりも第1実施形態の方が適している。
図3に示すウインチ制御装置220による効果は次の通りである。
(第2の発明の効果)
ウインチ制御装置220は、ブレーキペダル273と、高位選択部280と、を備える。
[構成2]ブレーキペダル273は、操作者により加えられる操作力に応じてブレーキ力の大きさを指令する。高位選択部280は、ブレーキ力調整部263によるブレーキ力の指令、および、ブレーキペダル273によるブレーキ力の指令のうち、ブレーキ力の大きい方の指令を選択する。
上記[構成2]により、ブレーキ力調整部263だけでなく、ブレーキペダル273でも、ブレーキ力を操作できる。また、上記[構成2]により、ブレーキペダル273を操作することで、ブレーキ力調整部263を操作しなくても、ウインチ30のブレーキ力を、ブレーキ力調整部263が指令しているブレーキ力よりも大きくできる。
(第3の発明の効果)
[構成3]ウインチ制御装置220は、高位選択部280を備える。高位選択部280は、ブレーキ力調整部263の指令に対応する油圧と、ブレーキペダル273の指令に対応する油圧と、のうち大きい方の油圧を選択するシャトル弁である。
上記[構成3]により、ブレーキ力の大きい方の指令の選択(上記[構成2]参照)を、確実に行える。
(第3実施形態)
図4を参照して、第3実施形態のウインチ制御装置320について、第2実施形態との相違点を説明する。主な相違点は、ウインチ制御装置320が、第1圧力センサ381と、第2圧力センサ382と、コントローラ390と、を備える点である。また、ウインチ制御装置320は、ペダルセンサ375を備えてもよい。
ペダルセンサ375は、ブレーキペダル273の操作を検出する。ペダルセンサ375は、ブレーキペダル273の操作の有無のみを検出できてもよく、ブレーキペダル273の操作量(連続的に可変である操作量)を検出できてもよい。ペダルセンサ375は、例えば、接触式のセンサでもよく、非接触式のセンサでもよく、角度センサなどでもよい。ペダルセンサ375は、後述する第2圧力センサ382とは別に設けられる。
第1圧力センサ381は、ブレーキ力調整部263の指令に対応する油圧Paを検出する。第1圧力センサ381は、圧力制御弁61の出口と高位選択部280の入口との間の油路の油圧Paを検出する。
第2圧力センサ382は、ブレーキペダル273の指令に対応する油圧Pbを検出する。第2圧力センサ382は、圧力制御弁271の出口と高位選択部280の入口との間の油路の油圧Pbを検出する。
コントローラ390は、信号の入出力、演算、各機器の制御などを行う。コントローラ390には、第1圧力センサ381および第2圧力センサ382のそれぞれの検出値(油圧Paおよび油圧Pb)が入力される。コントローラ390には、第1圧力センサ381の検出値とは別に、ブレーキ力調整部263の指令が入力されてもよい。コントローラ390には、第2圧力センサ382の検出値とは別に、ブレーキペダル273の指令が入力されてもよく、例えばペダルセンサ375の検出値が入力されてもよい。コントローラ390は、クラッチ40の状態を制御する。コントローラ390は、例えば、状態切換弁51の状態を制御し、状態切換弁51の切換位置(連結位置51a、フリー位置51b)を切り換える。
(作動)
第2実施形態のウインチ制御装置220(図3参照)の作動に対する、本実施形態のウインチ制御装置320の作動の相違点は、次の通りである。コントローラ390には、異常条件が設定される。異常条件は、第1圧力センサ381の検出値および第2圧力センサ382の検出値に関する異常を判定するための条件である。コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定した場合、クラッチ40にブレーキを掛けさせるように制御する。異常条件には、差圧異常条件と、検出値異常条件と、が含まれる。コントローラ390は、差圧異常条件が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判断してもよい。コントローラ390は、差圧異常条件と、第1の他の条件と、が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判断してもよい。コントローラ390は、検出値異常条件が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判断してもよい。コントローラ390は、検出値異常条件と、第2の他の条件と、が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判断してもよい。
(差圧異常条件)
コントローラ390は、第1圧力センサ381の検出値(以下「油圧Paの検出値」ともいう)と、第2圧力センサ382の検出値(以下「油圧Pbの検出値」ともいう)とが、同一または略同一である場合、差圧異常条件が満たされたと判定する。具体的には、コントローラ390は、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値との差が、「差圧異常閾値」以下である場合に、差圧異常条件が満たされたと判定する。コントローラ390は、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値との差が差圧異常閾値よりも大きい場合に、差圧異常条件が満たされないと判定する。
コントローラ390が差圧異常条件を判定する理由は次の通りである。本実施形態では、高位選択部280は、シャトル弁である。この高位選択部280の弁体380a(例えばボール状など)は、油圧Paと油圧Pbとの圧力差によって移動する。高位選択部280の2つの入口のうち、圧力が低い方の入口が弁体380aに閉じられ、圧力が高い方の入口が開く。しかし、油圧Paと油圧Pbとが同一または略同一の場合、弁体380aが、2つの入口の中間位置に配置される場合がある。すると、弁体380aが、高位選択部280の出口を塞ぐ(詰まらせる)場合がある。すると、油が、高位選択部280から下流側(状態切換弁51側)に、適切に流れない場合がある。そのため、ブレーキ力調整部263およびブレーキペダル273の指示に基づくブレーキ力に比べ、クラッチ40の実際のブレーキ力が、小さくなる場合がある。例えば、ブレーキ力調整部263およびブレーキペダル273でブレーキを掛ける指示をしているにもかかわらず、クラッチ40でブレーキが掛からない場合がある。そこで、コントローラ390は、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値との差が、「差圧異常閾値」以下であるか否かを判定する(差圧異常条件を判定する)。そして、差圧異常条件が満たされた場合に、コントローラ390は、クラッチ40に強制的にブレーキを掛けさせる場合がある。
差圧異常閾値は、コントローラ390に設定された値である。差圧異常閾値は、コントローラ390に予め設定された一定値でもよい。差圧異常閾値は、何らかの検出値(例えば、油圧Paの検出値、油圧Pbの検出値など)に基づいて、コントローラ390に設定されてもよい。この場合、差圧異常閾値と、上記「何らかの検出値」と、の関係がコントローラ390に予め設定されてもよい。差圧異常閾値は、高位選択部280(シャトル弁)の特性に応じて設定されてもよい。差圧異常閾値は、油圧源P2および油圧源P3の油圧に応じて設定されてもよい。差圧異常閾値は、油圧Paの検出値および油圧Pbの検出値に応じて設定されてもよい。差圧異常閾値は、ウインチ30に要求されるブレーキの必要性に応じて設定されてもよい。
例えば、コントローラ390は、差圧異常条件が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判定し、クラッチ40にブレーキを掛けさせる制御を行ってもよい。また、例えば、コントローラ390は、差圧異常条件が満たされ、かつ、「第1の他の条件」が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判定し、クラッチ40にブレーキを掛けさせる制御を行ってもよい。上記「第1の他の条件」は、例えば、差圧異常条件が満たされた状態が所定時間(例えばコントローラ390に設定された時間)継続したことなどでもよく、その他条件でもよい。
(検出値異常条件)
コントローラ390は、油圧Paの検出値および油圧Pbの検出値の少なくともいずれかに異常がある場合、検出値異常条件が満たされたと判定する。具体的には、コントローラ390は、油圧Paの検出値および油圧Pbの検出値の少なくともいずれかが、「検出値異常範囲」内である場合、検出値異常条件が満たされたと判定する。コントローラ390は、油圧Paおよび油圧Pbのいずれも、検出値異常範囲内ではない場合、検出値異常条件が満たされないと判定する。
検出値異常範囲は、異常な検出値の範囲としてコントローラ390に設定された範囲である。検出値異常範囲は、ウインチ制御装置320の各構成要素の特性などに応じて、設定される。
油圧Paおよび油圧Pbの検出値は、例えば次のような場合に異常な値になる。[異常の例A1]第1圧力センサ381が故障している場合、油圧Paの検出値が異常な値となる。第2圧力センサ382が故障している場合、油圧Pbの検出値が異常な値となる。[異常の例A2]高位選択部280に異常がある場合、油圧Paおよび油圧Pbの少なくともいずれかの検出値が異常な値となる場合がある。例えば、弁体380aの移動がゴミなど(コンタミネーション)に妨げられることで、高位選択部280内の油路が詰まり、油圧Paおよび油圧Pbの少なくともいずれかの検出値が異常な高圧になる場合がある。[異常の例A3]ウインチ制御装置320の他の各構成要素(状態切換弁51、圧力制御弁61、圧力制御弁271、油圧源P2、油圧源P3、油圧配管など)の異常により、油圧Paおよび油圧Pbの少なくともいずれかの検出値が異常な値となる場合がある。
油圧Paの検出値は、例えば次の場合などに、検出値異常範囲内であるとコントローラ390に判定される。以下では、検出値異常範囲内であるとコントローラ390に判定されることを、単に「異常である」という(油圧Pbについても同様)。[判定の例B1]第1圧力センサ381の故障により、油圧Paの検出値がゼロなどの場合、油圧Paの検出値が異常であると判定される。[判定の例B2]ブレーキ力調整部263の指令に応じて油圧Paが変化するところ、油圧Paの検出値が、ブレーキ力調整部263で調整可能な油圧Paの範囲外である場合は、油圧Paの検出値が異常であると判定される。例えば、ブレーキ力調整部263で調整可能な油圧Paの最大値(既定のパイロット圧)よりも、油圧Paの検出値の方が大きい場合、油圧Paの検出値は異常であると判定される。[判定の例B3]ブレーキ力調整部263の指令に応じて油圧Paが変化し、また、ブレーキ力調整部263の指令がコントローラ390に入力される。コントローラ390には、ブレーキ力調整部263の指令に対応する正常な油圧Paの範囲が設定される。ここで、油圧Paの検出値が、ブレーキ力調整部263の指令に対応した正常な油圧Paの範囲内ではない場合、油圧Paの検出値は異常であると判定される。
油圧Pbの検出値は、例えば次の場合などに、異常であると判定される。[判定の例C1]上記[判定の例B1]と同様に、油圧Pbの検出値がゼロなどの場合、油圧Pbの検出値が異常であると判定される。[判定の例C2]上記[判定の例B2]と同様に、油圧Pbの検出値が、ブレーキペダル273で調整可能な油圧Pbの範囲外である場合は、油圧Pbの検出値が異常であると判定される。[判定の例C3]上記[判定の例B3]と同様に、油圧Pbの検出値が、ブレーキペダル273の指令に対応した正常な油圧Pbの範囲内ではない場合、油圧Pbの検出値は異常であると判定される。例えば、ブレーキペダル273が踏まれているが、油圧Pbの検出値が低い場合(例えばタンクTの圧力の場合)、油圧Pbの検出値は異常であると判定される。また、ブレーキペダル273が踏まれていないが、油圧Pbの検出値が高い場合(例えば油圧源P3の圧力の場合)、油圧Pbの検出値は異常であると判定される。
例えば、コントローラ390は、検出値異常条件が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判定し、クラッチ40にブレーキを掛けさせる制御を行ってもよい。コントローラ390は、検出値異常条件が満たされ、かつ、「第2の他の条件」が満たされた場合に、異常条件が満たされたと判定し、クラッチ40にブレーキを掛けさせる制御を行ってもよい。上記「第2の他の条件」は、例えば、検出値異常条件が満たされた状態が所定時間(例えばコントローラ390に設定された時間)継続したことなどでもよい。
(クラッチ40にブレーキを掛けさせる制御)
コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定した場合、クラッチ40にブレーキを掛けさせる(いわば緊急クラッチする)ように制御する。この場合、コントローラ390は、ウインチ30の状態を連結状態に切り換える。具体的には例えば、コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定した場合、状態切換弁51を切り換え、例えば連結位置51aに切り換える。その結果、ウインチ30が、いわば緊急停止する。さらに詳しくは、ウインチ30が連結状態になると、モータ35とウインチドラム33とが連結される。このとき、モータ35にはブレーキがかかっているため、ウインチドラム33にブレーキがかかる。その結果、ウインチドラム33が停止する。なお、コントローラ390は、異常条件が満たされた場合、状態切換弁51を用いずに、クラッチ40にブレーキを掛けさせてもよい。この場合、コントローラ390は、例えば、状態切換弁51とは別の弁を用いて、クラッチ40に(例えば圧接室45bに)油を供給するような制御をしてもよい。
(効果)
図4に示すウインチ制御装置320による効果は次の通りである。
(第4の発明の効果)
[構成4-1]ウインチ制御装置320は、第1圧力センサ381と、第2圧力センサ382と、コントローラ390と、を備える。第1圧力センサ381は、ブレーキ力調整部263の指令に対応する油圧Paを検出する。第2圧力センサ382は、ブレーキペダル273の指令に対応する油圧Pbを検出する。コントローラ390には、第1圧力センサ381および第2圧力センサ382の検出値が入力される。
[構成4-2]コントローラ390には、第1圧力センサ381の検出値および第2圧力センサ382の検出値に関する異常を判定するための異常条件が設定される。コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定した場合、クラッチ40(ブレーキ装置)にブレーキを掛けさせる制御を行う。
上記[構成4-2]により、第1圧力センサ381の検出値および第2圧力センサ382の検出値に関する異常がある場合に、クラッチ40でブレーキを掛けることができる。
(第5の発明の効果)
[構成5]第1圧力センサ381の検出値と第2圧力センサ382の検出値との差が、差圧異常閾値以下である場合、コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定する(さらに詳しくは、異常条件が満たされたと判定する場合がある)。差圧異常閾値は、コントローラ390に設定された値である。
上記[構成5]により、第1圧力センサ381の検出値と第2圧力センサ382の検出値との差が、差圧異常閾値以下の場合に、クラッチ40でブレーキを掛けることができる。
(第6の発明の効果)
[構成6]第1圧力センサ381の検出値、および第2圧力センサ382の検出値の少なくともいずれかが、検出値異常範囲内の場合、コントローラ390は、異常条件が満たされたと判定する(さらに詳しくは、異常条件が満たされたと判定する場合がある)。検出値異常範囲は、コントローラ390に設定された範囲である。
上記[構成6]により、第1圧力センサ381の検出値、および第2圧力センサ382の検出値の少なくともいずれかが、検出値異常範囲内である場合、クラッチ40でブレーキを掛けることができる(上記[構成4-2]参照)。
(第9の発明の効果)
[構成9]コントローラ390は、クラッチ40にブレーキを掛けさせるように制御するときに、状態切換弁51(状態切換部)を切り換えることで、連結状態(モータ35の駆動力をウインチドラム33に伝えることが可能な状態)にする。
上記[構成9]により、異常条件が満たされたときに、状態切換弁51を用いずに(例えば状態切換弁51とは別のバルブを用いて)、クラッチ40にブレーキを掛けさせる場合に比べ、ウインチ制御装置320を簡素に構成できる。
(第4実施形態)
図5を参照して、第4実施形態のウインチ制御装置420について、図4に示すウインチ制御装置320との相違点を説明する。ウインチ制御装置320では、高位選択部280は、シャトル弁であった。一方、図5に示すように、第4実施形態のウインチ制御装置420では、高位選択部480は、切換弁である。
高位選択部480は、コントローラ390が出力する指令に基づいて切り換えられる切換弁である。コントローラ390が高位選択部480に出力する指令は、第1圧力センサ381および第2圧力センサ382の検出値に基づく指令である。例えば、高位選択部480は、電磁切換弁である。具体的には、コントローラ390が出力した電気信号が、直接的に高位選択部480に入力され、高位選択部480の切換位置が切り換えられる。また、例えば、コントローラ390が出力した電気信号が、この電気信号とは異なる指令(例えば油圧など)に変換され、変換された指令に基づいて、高位選択部480が切り換えられてもよい。高位選択部480は、ブレーキ力調整部選択位置480aと、ブレーキペダル選択位置480bと、を備える。ブレーキ力調整部選択位置480aは、圧力制御弁61と状態切換弁51とを連通させ、圧力制御弁271と状態切換弁51とを遮断する。ブレーキペダル選択位置480bは、圧力制御弁271と状態切換弁51とを連通させ、圧力制御弁61と状態切換弁51とを遮断する。
(作動)
図4に示す第3実施形態のウインチ制御装置320の作動に対する、図5に示す本実施形態のウインチ制御装置420の作動の相違点は、次の通りである。
油圧Paの検出値が、油圧Pbの検出値よりも大きい場合、コントローラ390は、高位選択部480をブレーキ力調整部選択位置480aに切り換える。油圧Paの検出値が、油圧Pbの検出値よりも小さい場合、コントローラ390は、高位選択部480をブレーキペダル選択位置480bに切り換える。
図4に示すウインチ制御装置320では、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値とが同圧(または略同圧)の場合、コントローラ390は、強制的にクラッチ40にブレーキを掛けさせた。一方、図5に示すウインチ制御装置420では、コントローラ390は次のように作動する。油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値とが等しい場合、コントローラ390は、ブレーキ力調整部263によるブレーキ力の指令と、ブレーキペダル273によるブレーキ力の指令と、のうち一方のみを選択するように高位選択部480を切り換える。具体的には、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値とが等しい場合、コントローラ390は、高位選択部480を、ブレーキ力調整部選択位置480aおよびブレーキペダル選択位置480bのいずれか一方に切り換える。この場合、ブレーキ力調整部選択位置480aおよびブレーキペダル選択位置480bのどちらに切り換えるかは、コントローラ390に予め設定される。ブレーキ力調整部263の指令と、ブレーキペダル273の指令とのうち、どちらを優先させるかは、コントローラ390に予め設定される。
なお、ウインチ制御装置420でも、第3実施形態と同様に、コントローラ390は、検出値異常条件が満たされた場合、異常条件が満たされたと判断する場合がある。コントローラ390は、異常条件が満たされたと判断した場合、クラッチ40にブレーキを掛けさせるように制御する(第3実施形態と同様)。
(効果)
図5に示すウインチ制御装置420による効果は次の通りである。
(第7の発明による効果)
ウインチ制御装置420は、上記[構成4-1]と同様の構成を備える。
[構成7]高位選択部480は、第1圧力センサ381の検出値および第2圧力センサ382の検出値に基づく指令であってコントローラ390が出力する指令に基づいて切り換えられる切換弁である。
上記[構成7]により、次の効果が得られる。図5に示すように高位選択部280がシャトル弁の場合、油圧Paの検出値と油圧Pbの検出値とが同圧または略同圧の場合、高位選択部280の下流側に油が流れないまたは流れにくい場合がある。一方、上記[構成7]では、高位選択部480は、コントローラ390に切り換えられる切換弁である。よって、高位選択部480は、ブレーキ力調整部263によるブレーキ力の指令と、ブレーキペダル273によるブレーキ力の指令と、のうち一方のみを、コントローラ390の指令に基づいて選択できる。よって、高位選択部480で選択した指令に対応する油圧(油圧Paまたは油圧Pb)の油を、高位選択部480の下流側に流すことができる。その結果、ブレーキ力調整部263またはブレーキペダル273の指令に応じて、クラッチ40でブレーキをかけやすい。
(第8の発明による効果)
[構成8]第1圧力センサ381の検出値、および第2圧力センサ382の検出値の少なくともいずれかが、検出値異常範囲内である場合、コントローラ390は、クラッチ40(ブレーキ装置)にブレーキを掛けさせるように制御する。検出値異常範囲は、コントローラ390に設定された範囲である。
上記[構成8]により、第1圧力センサ381の検出値、および第2圧力センサ382の検出値の少なくともいずれかが、検出値異常範囲内である場合に、クラッチ40でブレーキを掛けることができる。
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、図2~図5に示す回路の接続は変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。
例えば、図3に示す第2実施形態のブレーキ力調整部263(モニタ263aを用いたもの)を、図2に示す第1実施形態のブレーキ力調整部63(例えばトリマなど)に代えてもよい。例えば、油圧を用いた構成を、電気(電力、電気信号など)を用いた構成としてもよい。例えば、電気を用いた構成を、油圧を用いた構成としてもよい。例えば、ブレーキ力調整部63は、圧力制御弁61に油圧(パイロット圧)の指令を出力してもよい。例えば、高位選択部280は、圧力が高い方の油圧を選択するものでなくてもよく、電流値などの値が高い方の電気信号を選択するものでもよい。