JP7101008B2 - エポキシ樹脂粉体塗料 - Google Patents

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Description

本発明は管内面用に適したエポキシ樹脂粉体塗料に関する。詳しくは、貯蔵安定性、放冷硬化性に優れ、塗装外観、耐食性、機械強度に優れた塗膜を得ることのできる管内面用に適した粉体塗料に関する。
現在産業・生活施設として埋設されているガス、水道、石油、ケーブル保護管等は、管内面を防食処理されているが、中でも上下水道用に使用される管の内面には、その防食性の高さからエポキシ樹脂脂粉塗料が使用されている。
埋設管に対するエポキシ樹脂粉体塗料の塗装方法としては、回転吹き付け法、静電塗装法、流動浸漬法、溶射法が用いられる。直管には回転吹き付け法が一般的であり、異形管、バルブ等には静電塗装法、流動浸漬法が一般的に使用される。静電塗装法は、被塗物であるダクタイル鋳鉄異形管を150~250℃に予熱し、塗装台に設置又は吊り下げた状態で、空気搬送した粉体塗料をその内面に吹き付ける事により塗膜層を形成し、同温度で10~20分程度の後加熱、或いは後加熱なしの放冷により硬化塗膜を得るものである。
異形管は、口径の異なる直管の接続や分岐部分に使用されるため、形状や大きさが多岐にわたる。曲管や甲切管などは構造上ローラー回転による塗装は困難で、被塗物である異形管を吊り下げた状態で内面に塗装する。塗装には手作業による塗装ガンをもちいたスプレーや、近年ロボットによるスプレー塗装も行われている。
一方、従来の回転吹き付け塗装方法や塗装ガンを用いたスプレー塗装方法では、塗装時に吐出する全ての粉体粒子が被塗物に塗着、塗膜形成するわけでない。塗装時の余剰分は集塵され一部が再塗装に用いられるに留まり、その多くは廃棄される。また作業環境中に滞留後系外へ放出されるものも無視できないのが現状である。
近年、そういった作業効率及び作業環境や、エネルギーコスト削減の観点からからも、粉体塗料の歩留まり向上を目的とした塗装方法も行われつつある。
特許文献1~3で粉体塗装方法及び粉体塗装装置として、真空下及び減圧下で粉体塗料を塗装する方法及び装置が提案されているが、エポキシ樹脂粉体塗料を用いて管の内面に塗装し塗膜外観及び塗膜物性を満足する粉体塗料の具体的提案には至っていない。
この分野では、工業的にも、平滑な膜厚を確保し、管内面の予熱雰囲気下を通過することによる貯蔵安定性を満足する粉体塗料がないことが課題となっている。
特開平7-328494号公報 特開平2003-33699号公報 特開平10-337515号公報
本発明は、減圧下において予熱された中空体の内面に塗着させ、その後加熱昇温することない塗装方法であっても、均一な塗膜厚で良好な塗膜外観を得ることができ、かつ防食性、機械特性、衛生性等基本的な塗膜物性を得られる管内面用等として適したエポキシ樹脂粉体塗料を提供するものである。
本発明者らは、特定のゲルタイム、特定の粒度分布と嵩密度を有する粉体塗料が上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、150~280℃の範囲の一定の予熱温度に加熱された中空の被塗物内面に、減圧下に粉体塗料を吸引、塗着させ、それを硬化させて硬化塗膜を形成する塗装方法で使用する粉体塗料であって、上記粉体塗料がエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び顔料(C)を含み、粉体塗料の粒度分布におけるD10が5μm以上及びD90が200μm以下であり、嵩密度が0.4~0.8g/cmであり、上記予熱温度におけるゲルタイムが20~60秒であることを特徴とするエポキシ樹脂粉体塗料である。
上記エポキシ樹脂(A)としては、ビスフェノール類のエピクロルヒドリンによるエポキシ化物であり、エポキシ当量が700~3000g/eq.であり、軟化点が70~130℃であるエポキシ樹脂が好ましく挙げられる。
また、上記ビスフェノール類としては、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA又はビスフェノールA挙げられる。
上記硬化剤(B)としては、イミダゾリン誘導体及び/又はイミダゾール誘導体が好ましく挙げられる。
上記顔料(C)としては、酸化鉄、黄色酸化鉄、シリカ粉、石英系粉、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1つが好ましく挙げられる。
上記被塗物としては、直管又は異形管がある。
また、本発明は上記のエポキシ樹脂粉体塗料で塗装された直管又は異形管である。
更に本発明は、150~280℃の範囲内の一定温度に予熱した中空の被塗物を架台上に配置し、被塗物内部を減圧下において塗料供給槽から粉体塗料を吸引して被塗物内面に塗着させ、そのまま硬化塗膜を形成することができる塗装方法であって、上記粉体塗料として、上記エポキシ樹脂粉体塗料を使用することを特徴とする塗装方法である。
また、本発明は上記の塗装方法で塗装された直管又は異形管である。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、減圧下の塗装方法において中空被塗物の内面にピンホール、タレ等のない塗膜外観に優れ、また、耐食性、機械強度に優れた塗膜を得ることができる。更に、防食性、機械特性、衛生性等基本的な塗膜物性を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び顔料(C)を必須成分として含有する。
エポキシ樹脂粉体塗料の粒度分布は、D10が5μm以上、D90が200μm以下の範囲であり、好ましくはD10が10μm以上、D90が150μm以下の範囲であり、より好ましくはD10が20μm以上、D90が130μm以下の範囲である。粒度分布でD10が小さいと、塗装中に余剰分が管内を通過回収される前に硬化しやすく、内面に付着すると塗膜がザラつく要因となりやすく、D90が大きすぎると塗装前の塗料貯蔵槽での対流が不均一になりやすく、不安定な吐出になる恐れがある。ここで、D10は重量通過百分率であり、その目開きで10wt%が通過する。
エポキシ樹脂粉体塗料の嵩密度は、0.4~0.8g/cmの範囲であり、好ましくは0.45~0.75g/cmの範囲であり、より好ましくは0.5~0.7g/cmの範囲である。嵩密度は使用する材料の比重にもよるが、嵩密度が小さすぎると塗装前の流動時に浮遊する粒子が多くなり、予熱した被塗物を設置した時に塗着してしまい膜厚の均一性に不利になる可能性があり、嵩密度が大きすぎると塗装前の塗料貯蔵槽で対流させるときに不安定になる恐れがある。
エポキシ樹脂粉体塗料の被塗物の予熱温度におけるゲルタイムは、20秒~80秒の範囲であり、好ましくは30秒~70秒の範囲であり、より好ましくは40秒~60秒の範囲である。ゲルタイムが早いと塗膜が溶融し平滑になる前に硬化、流動性を損ない、塗膜外観が凹凸になる恐れやざらつく恐れがあり、遅いと塗装終了後硬化が不十分となり、管の端部等にタレを生じ、膜厚が不均一となる恐れがあり、また後加熱を施さないと十分な塗膜物性を発現しない恐れがある。予熱温度に対するゲルタイムが20秒~80秒であると塗装後の加熱がなくとも、塗膜外観が良好で、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。
次に、エポキシ樹脂(A)について説明する。
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量(g/eq.)は、好ましくは700~3000の範囲であり、より好ましくは900~2500の範囲であり、更に好ましくは1000~2000の範囲である。エポキシ当量が小さいと粉体塗料とした場合の貯蔵安定性が悪くなり、長期保管したときブロッキングをおこし、塗料として使用できなくなる恐れがある。エポキシ当量が大きいと溶融粘度が高くなり、粉体塗料とした場合ゲルタイムを調整しても流動性が悪く外観が凹凸等の不良になる恐れがある。エポキシ当量が700~3000の範囲であれば、粉体塗料とした場合、貯蔵安定性に問題のない粉体塗料が得られ、塗膜外観が良好で、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。
エポキシ樹脂(A)の軟化点は、好ましくは70~130℃の範囲であり、より好ましくは90~120℃の範囲であり、更に好ましくは100~115℃の範囲である。軟化点が低いと粉体塗料のブロッキング性が悪くなる恐れがあり、軟化点が高いと粉体塗料とした場合ゲルタイムが早くなり、塗料の流動性が悪くなる恐れがあり、ゲルタイムを調整しても流動性が悪く塗膜表面の平滑性が損なわれる恐れがある。軟化点が70~130℃の範囲であれば、粉体塗料とした場合、ブロッキング性に問題のない粉体塗料が得られ、塗膜外観が良好で、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、固形であれば特に制限は無いが、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、フェニル基又はα-メチルベンジル基が好ましく、メチル基又はα-メチルベンジル基がより好ましい。置換基の数としてはフェノール環に対し、1又は2個がよい。エポキシ樹脂(A)としては、具体的にはビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂には、通常ビスフェノール類とエピクロルヒドリンの縮重合反応によって得られる直接法エポキシ樹脂と、ビスフェノール類と大過剰のエピクロルヒドリンの縮合反応によって得られる液状ビスフェノール型エポキシ樹脂を、更にビスフェノール類と付加重合させて得られる間接法エポキシ樹脂がある。
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、直接法エポキシ樹脂及び間接法エポキシ樹脂のいずれでもよいが、直接法エポキシ樹脂が好ましい。直接法エポキシ樹脂は、間接法エポキシ樹脂に比較して分子量分布が狭く、硬化前には溶融粘度の低い粉体塗料が得られる。
なお、ビスフェノール類には市販のビスフェノールFのように、2つのフェノール環を有する2核体の他に、3つ以上のフェノール環を有する多核体を含有するものが存在する。そのため、ビスフェノール類の2核体純度はゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定で、70面積%以上が好ましく、90面積%以上がより好ましい。特に間接法エポキシ樹脂の製造には、95面積%以上の高純度のビスフェノール類を使用することが好ましい。
次に、硬化剤(B)について説明する。
本発明で使用する硬化剤(B)としては、イミダゾリン誘導体、イミダゾール誘導体又はこれらの混合物が好ましい。イミダゾリン誘導体としては、例えば、メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば、メチルイミダゾール、ドデシルイミダゾール、フェニルイミダゾール等や、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド等の四級塩類や、2-メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物や、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン等のトリアジン環含有物等が挙げられる。
これらの中では、イミダゾリン誘導体としては、2-フェニルイミダゾリンが、イミダゾール誘導体としては、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン又は2-フェニルイミダゾールが特に好ましい。これらの硬化剤であれば、粉体塗料とした場合、特定のゲルタイムを効果が得られる範囲にする調整が簡単にできるので、塗膜外観が良好で、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。
また、特性を損なわない範囲で、有機酸ヒドラジド、変性芳香族アミンアダクト、トリメリット酸とエチレングリコールを主体とした酸無水物の併用を妨げるものではない。
硬化剤(B)の配合量は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲がこの好ましく、1~6質量部の範囲がより好ましい。配合量が少ないと粉体塗料とした場合のゲルタイムが遅くなり、硬化が不十分な塗膜になる恐れがある。配合量が多いと粉体塗料とした場合のゲルタイムが速くなり、得られる塗膜もシワ、ザラツキ等外観不良を起こす恐れがあり、また貯蔵安定性が悪くなる恐れがある。硬化剤(B)の配合量が0.1~10質量部の範囲であれば、粉体塗料とした場合のゲルタイムが適切な範囲となり、貯蔵安定性に問題のない粉体塗料が得られる。そして、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。粉体塗料のゲルタイムと硬化時の溶融粘度を調整するために2種以上の硬化剤を混合して使用することができる。
次に、顔料(C)について説明する。
顔料(C)としては、粉体塗料で一般的に使用される着色顔料、体質顔料、光輝顔料、及び防錆顔料等が使用できる。これらの顔料は単独で使用してもよいし、同一系の顔料を2種類以上併用しても良く、また、異なる系の顔料を組み合わせて使用してもよい。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、チタン黄、ベンガラ、リトポン、及び酸化アンチモン等の無機系顔料や、ハンザイエロー5G、パーマネントエローFGL、シアニンブルー、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーRS、パーマネントレッドF5RK、ブリリアントファーストスカーレットG、シアニングリーン、カルバゾール、キナクリドンレッド、及びカーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、シリカ粉、石英系粉、珪藻土、酸化亜鉛、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、及びアルミナ等の無機顔料や、内部構造が多孔質、中空構造又は架橋タイプ等の樹脂ビーズを代表とするプラスチック顔料が挙げられる。
光輝顔料としては、例えば、アルミニウム粉、ニッケル粉、ステンレス粉、銅粉、ブロンズ粉、金粉、銀粉、マイカ(雲母)、グラファイト、ガラスフレーク、金属コーティングした硝子粉、金属コーティングしたマイカ粉、金属コーティングしたプラスチック粉、薄片化加工したプラスチック粉、及び鱗片状酸化鉄等が挙げられる。
防錆顔料としては、例えば、縮合リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マンガン等が挙げられる。
これらの顔料の内、酸化鉄、黄色酸化鉄、シリカ粉、石英系粉、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びカーボンブラックが好ましく、石英系粉、酸化チタン及びカーボンブラックがより好ましい。また、顔料の平均粒径は1~50μmが好ましく、5~50μmがより好ましい。
顔料(C)の配合量は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、10~100質量部の範囲が好ましく、20~80質量部の範囲がより好ましく、30~70質量部の範囲が更に好ましく、40~60質量部に範囲が特に好ましい。配合量が少ないと、硬化過程での溶融粘度が低く、硬化過程での溶融粘度が低く、ピンホールの発生制御の効果が得られない恐れがあり、また放冷による硬化性が不足し、塗膜の機械特性、防食性等、基本物性も悪くなる恐れがある。配合量が多いと、塗料の流動性が悪く、平滑な塗膜を得られない恐れがあり、更にピンホール発生をはじめとする塗膜外観不良を防ぐことが困難になる恐れがある。顔料の配合量が10~100質量部の範囲であれば、平塗膜外観が良好で、機械特性、防食性等の基本物性も良好な塗膜が得られる。また、粉体塗料の嵩密度を調整するために2種以上の顔料を混合して使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料には、本発明の目的を阻害しない限り、一般塗料用添加剤として、可塑剤、硬化促進剤、架橋促進触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ止剤、酸化防止剤、表面調整剤、流れ性調整剤、及び消泡剤等を必要に応じで配合してもよい。酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。流れ性調整剤や表面調整剤としては、アクリル系重合体等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料は、中空の被塗物の内面、好ましくは管内面の塗装に適用される。この場合、プロバック法、サクション法等で使用される。すなわち、所定の管を150~280℃、好ましくは170~250℃、より好ましくは180~230℃の範囲のうちの一定の温度に予熱した後、架台上に設置し、管内部を減圧にし、塗料流動槽等の塗料供給槽から粉体塗料を管内部に吸引させることで、管内面に塗着する。そして、その予熱温度でそのまま硬化塗膜を形成する塗装方法に適する。
塗着しなかった粉体塗料は塗料供給槽に戻され、循環使用される。この塗装方法では、粉体塗料が被塗物表面に付着する力は被塗物表面に形成された溶融層の粘着力によるもののため、良好な硬化塗膜を得るためには、粉体塗料の粒度分布、嵩密度とともに、予熱温度での硬化速度(ゲルタイム)を管理することが重要になる。本発明のエポキシ樹脂粉体塗料であれば、厚みの均一性、防食性等の基本的な塗膜物性を備え、ピンホールの発生等の無い良好な硬化塗膜を得ることができるとともに、リサイクル使用も可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。また、実施例において、特に断りがない限り、「部」及び「%」は質量基準によるものである。エポキシ当量の単位は、g/eq.である。
エポキシ樹脂の評価は次の方法による。
(1)エポキシ当量:JIS K7236に準拠して測定した。
(2)軟化点:JIS K7234に準拠して測定した。
実施例、比較例で得られた粉体塗料の評価方法を以下に示す。
(1)ゲルタイム:200℃に加熱したホットプレート上に粉体塗料0.1gを乗せ溶融した時点からフッ素樹脂製丸棒で掻き混ぜ、ゲル化するまでの時間を測定した。
(2)粒度分布D10,D90:粒度分布計による湿式レーザー回析法で測定した。
(3)嵩密度:パウダーテスターを用い100cmの容器に一定振動でロートから塗料を投入する、容器上部にあふれた塗料を擦切り、容器ごとの重量を測定して嵩密度(g/cm)を算出した。
(4)ブロッキング性:粉体塗料を40℃で2週間貯蔵した後の塗料の状態を以下の判定で表示した。
ブロッキングなし:○、 ブロッキングあり:×
塗膜物性の評価方法を以下に示す。
(1)可撓性試験は、JIS Z 5528、5.4.4の規格に従い、JIS Z 2247でエリクセン試験を行い、可撓性を判断した。
3mm以上:○、 3mm未満:×
(2)耐衝撃性試験は、JIS Z 5528、5.4.3の規格に従い、JIS K 5400、8.3.2でデュポン衝撃試験を行った。撃ち型は半径1/4インチで500gの錘を50cmの高さから落とした。
割れ、はがれなし:○、 割れ、はがれあり:×
(3)塗膜外観試験
塗装管内面を目視にて塗膜外観異常を評価した。
異常なし:〇、 異常あり:×
異常ありの場合、異常の種類により次のように記した。
ザラツキ:×1
凹凸:×2
シワ:×3
(4)MEKラビングテスト
硬化性の確認としてMEKラビングテスト(1kg荷重/10往復)を行い、以下の基準で判断した。
塗膜付着なし:○、 塗膜付着あり:×
合成例1
撹拌機、窒素導入管、側温抵抗体、滴下装置及び冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに49%苛性ソーダ水溶液110.6部と水399部を仕込み、撹拌しながら系内水分を窒素置換した。次にビスフェノールF(新日鉄住金化学株式会社製、2核体純度97面積%)を200部添加し、系内温度を50℃に制御して撹拌溶解した。次いで、エピクロルヒドリン110.5部を滴下ロートから投入した。投入後、系内温度を92℃に制御して2時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン330部を加え15分間撹拌後静置して、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い、水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(A-1)を得た。エポキシ当量は1350、軟化点は92℃であった。
合成例2
250部のエピクロルヒドリンを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行い、エポキシ樹脂(A-2)を得た。エポキシ当量は900、軟化点は84℃であった。
合成例3
102部のエピクロルヒドリンを使用した以外は合成例1と同様の装置、操作を行い、エポキシ樹脂(A-3)を得た。エポキシ当量は2500、軟化点は119℃であった。
合成例4
撹拌機、窒素導入管、側温抵抗体、滴下装置及び冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、YDF-8170(新日鉄住金化学株式会社製、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量159)500部とビスフェノールF126部を仕込み120℃で溶解した後、トリフェニルホスホニュウムブロマイド0.12部添加し160℃で2時間反応した。その後、ビスフェノールFを150部仕込み130℃で溶解しトリフェニルホスホニュウムブロマイドを0.15部添加し180℃で5時間加熱し反応を終了して、エポキシ樹脂(A-4)を得た。エポキシ当量は2500、軟化点は118℃であった。
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
[エポキシ樹脂(A)]
合成例1~4で得られたエポキシ樹脂(A-1)~エポキシ樹脂(A-4)
[硬化剤(B)]
2PZL:2-フェニルイミダゾリン,四国化成工業株式会社製、キュアゾール2PZL
2MZ-A:2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン,四国化成工業株式会社製、キュアゾール2MZ-A
2PZ:2-フェニルイミダゾール,四国化成工業株式会社製、キュアゾール2PZ
[顔料(C)]
珪石粉:平均粒径50μm,
酸化チタン:着色顔料、テイカ株式会社製、JR-301
カーボンブラック:着色顔料、三菱化学株式会社製、MA-100
[その他]
モダフロー:アクリル系重合体,日本モンサント株式会社製、モダフローIII
実施例1
エポキシ樹脂(A)としてエポキシ樹脂(A-1)100部、硬化剤(B)として2PZL2.0部と2MZ-A0.2部と2PZ0.5部、顔料(C)として珪石粉50部と酸化チタン12部とカーボンブラック0.3部、その他の添加剤としてモダフロー0.4部を混合した。混合物をヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、形式10B)を用いてドライブレンドし、次いでエクストルーダー(池貝鉄工株式会社製、PCM-30)を用いて100℃で溶融混練を行い、冷却ロールを用いて厚さ3~5mmまでフレーキングし、常温まで冷却後に微粉砕、分級により粉体塗料を得た。塗料物性を表1に示した。
1.2mm×70mm×150mmのSPCC-SB鋼板を200℃の熱風循環オーブン中で30分間予熱した。予熱後取り出し垂直に吊るした状態で塗装ブースに設置して、塗装ガンで膜厚が200~300μmになるように上下1往復半塗装した。塗装後、室温で常温になるまで放冷して、可撓性試験用の試験板を得た。評価結果を表1に示した。
2.0mm×70mm×150mmのSPCC-SB鋼板を200℃の熱風循環オーブン中で30分間予熱した。予熱後取り出し垂直に吊るした状態で塗装ブースに設置して、塗装ガンで膜厚が300μmになるように上下1往復半塗装した。塗装後、室温で常温になるまで放冷して、耐衝撃性試験用及びMEKラビングテスト用の試験板を得た。評価結果を表1に示した。
50mmφ×100mmLの鋼管を200℃の熱風循環オーブン中で30分間予熱した。予熱後取り出し、予熱した鋼管の両端に耐熱ホースを繋ぎ、片方にアスピレーターを設置し系内減圧にした後、もう片方のホースの先端を塗料供給槽に挿しこみ鋼管と供給層の間に設置したボールバルブを1秒間開放し鋼管内に塗料を通過させ、鋼管内面に塗料を塗着、そのまま塗膜を形成させ、室温まで放冷して、塗膜外観試験用の試験管を得た。この時、粉体塗料を2g/10秒で吐出できるよう減圧を調整した。塗膜の厚みは約300μmで均一な塗膜が形成されていた。評価結果を表1に示した。
実施例2~8
表1の処方の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、粉体塗料、試験板及び試験管を得た。実施例1と同様の試験を行い、その結果を表1に示した。
比較例1~5
表2の処方の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、粉体塗料、試験板及び試験管を得た。実施例1と同様の試験を行い、その結果を表2に示した。
Figure 0007101008000001
Figure 0007101008000002

Claims (9)

  1. 150~280℃の範囲の一定の予熱温度に加熱された中空の被塗物内面に、減圧下に粉体塗料を吸引、塗着させ、それを硬化させて硬化塗膜を形成する塗装方法で使用する粉体塗料であって、上記粉体塗料がエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び顔料(C)を含み、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、硬化剤(B)を0.1~10質量部、顔料(C)を10~100質量部の範囲で含み、硬化剤(B)がイミダゾリン誘導体及びイミダゾール誘導体を含み、粉体塗料の粒度分布におけるD10が5μm以上及びD90が200μm以下であり、嵩密度が0.4~0.8g/cmであり、上記予熱温度におけるゲルタイムが20~60秒であることを特徴とするエポキシ樹脂粉体塗料。
  2. エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール類のエピクロルヒドリンによるエポキシ化物であり、エポキシ当量が700~3000g/eq.であり、軟化点が70~130℃である請求項1に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
  3. ビスフェノール類が、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA及びビスフェノールAから選ばれる少なくとも1つである請求項2に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
  4. イミダゾリン誘導体が2-フェニルイミダゾリンであり、イミダゾール誘導体が2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン及び/又は2-フェニルイミダゾールである請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
  5. 顔料(C)が、酸化鉄、黄色酸化鉄、シリカ粉、石英系粉、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1つである請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
  6. 被塗物が、直管又は異形管である請求項1~5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂粉体塗料で塗装された直管又は異形管。
  8. 150~280℃の範囲内の一定温度に予熱した中空の被塗物を架台上に配置し、被塗物内部を減圧下において塗料供給槽から粉体塗料を吸引して被塗物内面に塗着させ、そのまま硬化塗膜を形成することができる塗装方法であって、上記粉体塗料として、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び顔料(C)を含み、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、硬化剤(B)を0.1~10質量部、顔料(C)を10~100質量部の範囲で含み、硬化剤(B)がイミダゾリン誘導体及びイミダゾール誘導体を含み、粉体塗料の粒度分布におけるD10が5μm以上及びD90が200μm以下であり、嵩密度が0.4~0.8g/cmであり、上記予熱温度におけるゲルタイムが20~60秒であるエポキシ樹脂粉体塗料を使用することを特徴とする塗装方法。
  9. 請求項8に記載の塗装方法で直管又は異形管を塗装することを特徴する塗装された直管又は異形管の製造方法。
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