JP7099964B2 - 液圧式打撃装置 - Google Patents
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Description
フロントヘッド300は、シリンダ100の前側に配設され、ロッド310が前進後退可能に摺嵌される。フロントヘッド300の内部には、打撃室301が形成され、打撃室301内でロッド310の後端をピストン200の先端が打撃する。バックヘッド400Pは、シリンダ100の後側に配設され、バックヘッド400Pの内部に形成された後退室401P内をピストン200の後端部が前後に移動する。
これにより、大径部201と中径部203の径差からなるピストン前室110の受圧面積、および大径部202と小径部204の径差からなるピストン後室111の受圧面積は、ピストン後室111側の方が大きくなっている(以下、ピストン前室110とピストン後室111の受圧面積の差を「受圧面積差」という)。
高圧回路101はポンプPに接続され、高圧回路101の途中部分に高圧アキュムレータ140が設けられている。低圧回路102はタンクTに接続され、低圧回路102の途中部分に低圧アキュムレータ141が設けられている。切換弁機構130は、シリンダ100Pの内外の適所に配設される公知の切換弁であり、後述するバルブ制御通路122から給排される圧油によって作動し、ピストン後室111を高圧と低圧とに交互に切換える。
ピストン前進制御ポート112は、前側のショートストロークポート112a、および後側のロングストロークポート112bを有し、ショートストロークポート112aとバルブ制御通路122との間に設けられた可変絞り112cの操作によってショートストロークとロングストロークの間を無断階に切換え可能になっている。可変絞り112cを全開にするとショートストロークとなり、全閉にするとロングストロークとなる。
切換弁機構130は、ピストン前進制御ポート112がピストン前室110と連通してバルブ制御通路122に圧油が供給されると、ピストン後室通路121を高圧回路101に連通する位置に切換えられる。また、切換弁機構130は、ピストン後退制御ポート113が排油ポート114と連通して圧油がバルブ制御通路122からタンクTへと排出されると、ピストン後室通路121を低圧回路102に連通する位置へと切換えられる。
ここで、図8において、従来の液圧式打撃装置では、ピストン前進制御ポート112には、ロングストロークポート112bとショートストロークポート112aとが併設されていることを説明したが、ショートストローク化することによって、ロングストロークの設定よりも打撃数を増加することができる。
同図において、点線がロングストローク設定の線図であり、L1が全ストローク、L2がピストン後退加速区間(ピストンが後退を開始してから、ピストン前進制御ポートがピストン前室と連通してバルブが切換えられてピストン後室が高圧に切換えられるまで)、L3がピストン後退減速区間(ピストン後室が高圧に切換えられてピストンが後方ストロークエンドに到るまで)、Vlongが打撃点におけるピストン速度である。また、実線がショートストローク設定の線図であり、同様に、L1´が全ストローク、L2´がピストン後退加速区間、L3´がピストン後退減速区間、Vshortが打撃点におけるピストン速度である。
ピストン200は、中実の円筒体であり、その略中央に大径部201、202を有する。大径部201の前側には中径部203が、大径部202の後側には小径部204がそれぞれ設けられている。大径部201と202の略中央には、円環状のバルブ切換溝205が形成されている。
上記ピストン200は、シリンダ100の内部に摺嵌されることで、シリンダ100内にピストン前室110とピストン後室111とがそれぞれ画成されている。ピストン前室110は、ピストン前室通路120を介して高圧回路101に常時接続されている。一方、ピストン後室111は、後述する切換弁130の切換えによって、ピストン後室通路121を介して高圧回路101と低圧回路102とをそれぞれ交互に連通可能になっている。
ピストン前室110とピストン後室111との間には、前方から後方に向けてそれぞれ所定間隔離隔して、ピストン前進制御ポート112、ピストン後退制御ポート113、および排油ポート114が設けられている。ピストン前進制御ポート112とピストン後退制御ポート113には、バルブ制御通路122から分岐した通路がそれぞれ接続されている。排油ポート114は排油通路123を介してタンクTに接続されている。
バックヘッド400は、シリンダ100の後側に配設されている。バックヘッド400の内部には、後退室401およびその後方に加圧室402が形成されている。後退室401の内径は、ピストン小径部204が前後移動する際に影響が無いように設定され、加圧室402の内径は、後退室401の内径よりも径大に設定されている。後退室401と加圧室402の境界には端面403が形成されている。
一般的な液圧式打撃装置においては、ピストン200とロッド310の打撃界面、すなわち、ピストン中径部203とロッド310の後端部の外径は略同じ寸法に設定されている。その理由は、ピストン200がロッド310を打撃して発生する応力波の伝達効率を高めるためであり、同様の理由で、本実施形態では、増速ピストン410の小径部411の外径がピストン小径部204の外径と略同径に設定されている。
本実施形態の液圧式打撃装置は、ピストン前室110が常時高圧接続されているので、ピストン200は常時後方へと付勢され、ピストン後室111が切換弁機構130の作動により高圧接続されると、上記受圧面積差によってピストン200は前進し、ピストン後室111が切換弁機構130の作動により低圧接続されるとピストン200は後退する。
ここで、本実施形態の液圧式打撃装置の打撃機構は、従来の液圧式打撃装置に対して、バックヘッド400に増速ピストン410を設けた点に特徴がある。
そして、本実施形態の液圧式打撃装置では、一のピストン後退行程の途中であって、ピストン200が後退してピストン前進制御ポート112が開く前、すなわち、切換弁機構130が切り換って後室111が高圧となりピストン200が制動を受ける前のタイミングでピストン200が増速ピストン410に当接する。これにより、ピストン200には、本実施形態の増速ピストン410による推力(「補助推力」とする)が作用する(同図(b)参照)。
その後もピストン200は慣性によって後退を続けるが、上述の補助推力と通常推力とが合算してピストン200に作用するため、ピストン200は、通常の後方ストロークエンドよりも前方の位置で後退から前進に転じる。この間に加圧室402から排出された圧油は高圧アキュムレータ140に蓄圧される(同図(d)参照)。
やがて、上記段付面413が端面403に当接して増速ピストン410の前方ストロークに達すると、ピストン200は、増速ピストン410と離れて通常推力のみで前進し(同図(e))、所定の打撃位置まで達してロッド310を打撃する(同図(f))。以下、上述のサイクルを繰り返すことにより、打撃動作が連続して行われる。
図3に示す変位-速度線図と図2との関係は、ピストン200が後退して増速ピストン410に当接するまで(図2(a))はL21に相当する。また、ピストン200が増速ピストン410と当接し(図2(b))、制動を受けながら後退して後室111が高圧に切換えられる(図2(c))まで、すなわち、後退加速中のピストン200に、前室圧による後退力と補助推力のみが作用する状態はL2b区間に相当する。さらに、後方ストロークエンドまで後退(図2(d))、すなわち、ピストン200に補助推力と通常推力の合算推力が作用する後退減速区間はL3b区間に相当する。
図3に示すように、本実施形態の液圧式打撃装置においては、ピストン200が増速ピストン410と当接している区間以外は、ロングストローク仕様の打撃機構として作動しており、後退時の最大速度はV2からV21に変化しているが、ピストン200がロッド310を打撃する際の速度は、V1のままで変わらないことが見て取れる。
(1)ピストン打撃速度が増速ピストン410との当接位置に影響を受けないことについて
ピストン質量m、前室受圧面積Sf、後室受圧面積Sr、増速ピストン受圧面積Sb、打撃圧Pwとする。前後室受圧面積差ΔS=Sr-Sfとし、前室受圧面積SfのΔSに対する比をnとする。
図3に示すように、バルブ切換位置が打撃点からL2の距離にある打撃装置において、増速ピストン410がバルブ切換位置よりもL2b手前でピストン200と当接する場合、増速ピストンなしの場合のバルブ切換時のピストン後退最高速度をV2、その時のピストン運動エネルギをE2、増速ピストン410と衝突する時のピストン速度をV21とすると、その時のピストン運動エネルギE21は、以下の式(1)となる。
改めて、増速ピストンありを増速ピストンなしと比較すると、増速ピストンありの場合、ピストン200との衝突位置に関わらず、増速ピストン410が後退行程でピストン運動エネルギを減少させる仕事EBと、逆に、前進行程でピストン運動エネルギを増加させる仕事EFは向きが異なるだけで絶対値が等しい。つまり、
|EB|=|EF|=SbPW(L2b+L3b)
したがって、これらは相殺される。すなわち、増速ピストン410と当接前後のピストン200の運動エネルギは、増速ピストンなしの場合と何ら変わらないことになる。
図4において、各行程の所要時間を求める。まず、後退行程L21区間のピストン200に作用する力積と運動量変化の関係は、以下の式(8)となる。
実際に幾つかの異なる仕様のピストン200・増速ピストン410の組合せに対し、当接位置を変えて打撃数を計算し、衝突位置と打撃数の関係に着目すると、総じて当接するタイミングをバルブ切換タイミングよりも早くすればするほど(言い換えれば、当接位置をバルブ切換位置より前に移動するほど)打撃数は上昇するが、あるタイミング・位置でピークを迎え、それを超えると逆に打撃数が減少する傾向にある。打撃数の変化率やピークを迎える位置は、ピストン200の仕様、即ち前後室受圧面積の関係や増速ピストン410の受圧面積により変化する。
図5からわかるように、当接位置L21を、L210およびL211に変更すると、当接時のピストン速度は、V21からV210とV211へと変化し、バルブ切換までのストロークL2bは、L2b0とL2b1へと変化する。また、ピストン200が増速ピストン410から離れる際のピストン速度V12は、V120とV121へと変化する。しかし、いずれの場合も、その後のストローク速度線図は、増速ピストンなしの場合と同じ軌跡を描く。そのため、ピストン打撃速度V1は一定である。
図6からわかるように、ピストン後退時の推力に対して増速ピストン410の推力を増減すると、バルブ後退切替時のピストン速度は、V2bからV2b´とV2b"へと変化し、バルブ後退切換え位置からピストン後死点までのストロークL3bは、L3b´とL3b"へと変化する。しかし、いずれの場合も、増速ピストン410が離れて以降のストローク速度線図は、同じ軌跡を描く。そのため、ピストン打撃速度V1は一定である。
また、本実施形態の液圧式打撃装置では、ショートストローク化してもピストン200がロッド310を打撃する際のピストン打撃速度V1は変化しない。そのため、1打撃当たりの打撃エネルギを減ずることなく打撃数を増加させるので、打撃機構の高出力化が可能となる。
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して説明したが、本発明に係る液圧式打撃装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しなければ、その他の種々の変形や各構成要素を変更することが許容されることは勿論である。
また、上記実施形態に係る液圧式打撃装置は、ピストン前室を常時高圧とするとともに、ピストン後室を高低圧に切り替えてピストン200を前進後退させる、いわゆる「後室高低圧切換え式」の液圧式打撃装置を例に説明したが、これに限定されない。
また、例えば上記第一実施形態では、ピストン200が前進に転じた直後、高圧アキュムレータ140に蓄圧された圧油が加圧通路404を介して加圧室402へと速やかに供給され、これにより、ピストン200が増速ピストン410によって強力に付勢されて速やかに加速する例を示したが、これに限定されず、例えば、図7に第二実施形態を示すように、増速ピストン410専用の付勢アキュムレータ142を更に備える構成とすることができる。
第二実施形態の構成であれば、付勢アキュムレータ142を加圧室402の近傍に配置することで、アキュムレータの利用効率を高め、また、切換弁機構130の作動への影響を抑制するとともに、増速ピストン410の作動の一層の安定化を図ることができる。
ここで、図1に示す、第一実施形態の液圧式打撃装置において、ピストン200が後退して増速ピストン410に衝突すると、その衝撃は加圧室402の圧油を介して加圧通路404に伝搬して切換弁機構130へ達するところ、切換弁機構130に圧油の衝撃が作用すると切換弁機構130の作動が不安定となるおそれがある。
ここで、全ての油圧回路において、通路面積が大きいほど圧力損失が少なくなり油圧効率が向上するところ、図1に示す、第一実施形態液圧式打撃装置において、高圧通路121とピストン後室111の受圧面積の関係と加圧通路404と加圧室402の受圧面積の関係に着目すると、仮に、高圧通路121と加圧通路404の通路面積を同じに設定すると、受圧面積に対する通路面積は加圧通路404側の方が小さいことが見て取れる。受圧面積に対して通路面積が小さいということは圧力損失が大きいということであり、すなわち、高圧通路121に対して加圧通路404は相対的に圧力損失が大きいといえる。
なお、方向規制手段として逆止弁を例に説明したが、逆止弁に代えて絞りを採用しても同様の作用効果を得ることができる。すなわち、絞りで発生する抵抗は、通過する圧油の流速の二乗に比例することから、加圧室402へと流入する場合と、増速ピストン410の後退に伴い加圧室402からポンプPへと流出する場合とでは、流出する方が過剰に大きい値となる。したがって、絞りは加圧室402への圧油の供給を許容するとともに逆方向への圧油の移動を規制する際、流出する方が過剰に大きい値となるため、加圧室402側への圧油の供給のみを許容する方向規制手段として機能する。
101 高圧回路
102 低圧回路
110 ピストン前室
111 ピストン後室
112 ピストン前進制御ポート
113 ピストン後退制御ポート
114 排油ポート
120 ピストン前室通路
121 ピストン後室通路
122 バルブ制御通路
123 排油通路
130 切換弁機構
140 高圧アキュムレータ
141 低圧アキュムレータ
142 付勢アキュムレータ
200 ピストン
201 大径部(前)
202 大径部(後)
203 中径部
204 小径部
205 バルブ切換溝
300 フロントヘッド
301 打撃室
310 ロッド
400 バックヘッド
401 後退室
402 加圧室
403 端面
404 加圧通路
410 増速ピストン(付勢手段)
411 小径部
412 大径部
413 段付面
P ポンプ
T タンク
Claims (5)
- シリンダと、該シリンダの内部に摺嵌されたピストンと、該ピストンの外周面と前記シリンダの内周面との間に画成されて軸方向の前後に離隔配置されたピストン前室およびピストン後室と、前記ピストン前室および前記ピストン後室の少なくとも一方を高圧回路および低圧回路の少なくとも一方に切換えて前記ピストンを駆動する切換弁機構と、前記シリンダの前記ピストン前室と前記ピストン後室との間に配設され、前記ピストンの前後進動によって前記高圧回路と前記低圧回路とに接断されるピストン制御ポートとを備え、前記切換弁機構を前記ピストン制御ポートから給排される圧油によって駆動する液圧式打撃装置であって、
前記ピストンの後方に設けられて圧油によって推力を発生させて前記ピストンにピストン後退行程の途中で当接して前記ピストンを前方へと付勢して増速する増速手段を備え、
前記増速手段は、当該増速手段と前記ピストンとが当接を開始するタイミングが、前記ピストンが前記切換弁機構によって制動を受けるタイミングよりも早く設定されていることを特徴とする液圧式打撃装置。 - 前記増速手段は、前記高圧回路から供給される圧油によって推力が発生する増速ピストンである請求項1に記載の液圧式打撃装置。
- 前記高圧回路には、高圧回路用の高圧アキュムレータが介装されており、
前記増速ピストンは、前記ピストンの後方に設けられた加圧室内に摺嵌され、
前記加圧室は、前記高圧アキュムレータが介装された位置よりも下流側の位置で前記高圧回路に接続された加圧通路を介して前記高圧回路からの圧油が供給されるように構成されている請求項2に記載の液圧式打撃装置。 - 前記加圧通路には、前記加圧室の近傍の位置に、増速ピストン用の付勢アキュムレータが介装されている請求項3に記載の液圧式打撃装置。
- 前記加圧通路に、前記付勢アキュムレータよりも圧油供給源側であり、かつ、前記付勢アキュムレータに近接する位置に、前記加圧室への圧油の供給を許容するとともに逆方向への圧油の移動を規制する方向規制手段を更に備える請求項4に記載の液圧式打撃装置。
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