JP7096714B2 - 研磨液組成物用シリカスラリー - Google Patents

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本発明は、研磨液組成物用シリカスラリー、これを含む研磨液キット、及び研磨液組成物の製造方法に関する。また、本発明は、磁気ディスク基板の製造方法及び基板の研磨方法に関する。
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化のためには、磁気信号の検出感度を向上させる必要がある。そこで、磁気ヘッドの浮上高さをより低下させ、単位記録面積を縮小する技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、平滑性及び平坦性の向上(表面粗さ、うねり、端面ダレの低減)や表面欠陥低減(残留砥粒、スクラッチ、突起、ピット等の低減)が厳しく要求されている。このような要求に対して、より平滑で、傷が少ないといった表面品質向上と生産性の向上を両立させる観点から、ハードディスク基板の製造方法においては、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式が採用されることが多い。一般に、多段研磨方式の最終研磨工程、即ち、仕上げ研磨工程では、表面粗さの低減、スクラッチ、突起、ピット等の傷の低減という要求を満たすために、コロイダルシリカ粒子を含む仕上げ用研磨液組成物が使用され、仕上げ研磨工程より前の研磨工程(粗研磨工程ともいう)では、生産性向上の観点から、アルミナ粒子を含む研磨液組成物が使用される。しかしながら、アルミナ粒子を砥粒として使用した場合、アルミナ粒子の基板への突き刺さりによって、メディア・ドライブの欠陥を引き起こすことがある。
そこで、アルミナ粒子を含まず、シリカ粒子を砥粒として含有する研磨液組成物を粗研磨工程に用いることで、基板への粒子の突き刺さりの低減を可能とする磁気ディスク基板の製造方法が提案されている(特許文献1~2)。
一方で、自動車塗装や建築物塗装等の塗装面を研磨するための研磨液組成物であって、研磨粒子として平均粒子径が0.3~3μmのα―アルミナを含み、増粘剤としてアルカリ増粘型アクリルポリマーを含む研磨液組成物が開示されている(特許文献3)。
さらに、CMP用の研磨液組成物であって、研磨粒子として酸化セリウム粒子を含み、分散剤として、共重合成分としてのポリアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤を含む、研磨液組成物が開示されている(特許文献4)。
特開2014-29755号公報 特開2014-116057号公報 特開2010-163553号公報 特開2003-059868号公報
磁気ディスク基板の研磨工程においてアルミナ粒子を使用しない粗研磨工程及び仕上げ研磨工程を採用すれば、アルミナの付着や突き刺さり等によるアルミナの残留が抑制され、研磨後の基板表面の突起欠陥を低減できる。しかし、アルミナ粒子に代えて粒径の大きいシリカ粒子で粗研磨工程を行う場合、シリカスラリー中の沈降したシリカ粒子の再分散性が悪いという問題が新たに発生することが見出された。再分散性の悪化は、研磨速度の低下をもたらし、長周期欠陥等の基板品質を悪化させるため、長期保存後のシリカスラリーにおけるシリカ粒子の再分散性を向上させることが望まれる。
そこで発明は、長期保存後のシリカ粒子の再分散性が優れた研磨液組成物用シリカスラリーを提供する。また、本発明は、長期保存後の研磨液組成物用シリカスラリーを用いても、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保とが可能な研磨液組成物を提供する。
本発明の一態様は、シリカ粒子、再分散性向上剤、及び水を含み、再分散性向上剤が、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンであり、25℃におけるpHが8.0以上12.0以下の、研磨液組成物用シリカスラリーである。
本発明の別の態様は、本発明の研磨液組成物用シリカスラリー(第1液)と、前記研磨液組成物用シリカスラリーとは別の容器内に収容された酸性水溶液(第2液)とを含み、前記第1液と前記第2液とを混合したときの25℃におけるpHが0.5以上6.0以下である、研磨液キットである。
本発明の更に別の態様は、本発明の研磨液組成物用シリカスラリーと酸とを混合して、25℃におけるpHを0.5以上6.0以下とする工程を含む、研磨液組成物の製造方法である。
本発明の更に別の態様は、本発明の研磨液組成物用シリカスラリーを用いて調製された磁気ディスク基板用研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法である。
本発明の更に別の態様は、本発明の研磨液組成物用シリカスラリーを用いて調製された研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含み、前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法である。
本発明によれば、長期保存後のシリカ粒子の再分散性が優れた研磨液組成物用シリカスラリーを提供できる。そのため、本発明の研磨液組成物用シリカスラリーを研磨液組成物の調製に用いれば、長期保存後の研磨液組成物用シリカスラリーを用いても、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保が行える、という効果が奏される。
本発明の研磨液組成物用シリカスラリー(以下「シリカスラリー」と略称する場合もある。)は、砥粒としてシリカ粒子を含み、再分散性向上剤としてアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを含有することにより、長期保存後のシリカ粒子の再分散性が優れるという知見に基づく。また、本発明の研磨液組成物の調製に本発明のシリカスラリーを用いるので、長期保存後のシリカスラリーを用いて調製された研磨液組成物を粗研磨に用いても、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保とが行える、という知見に基づく。
一般に、磁気ディスク基板の製造に用いる研磨液組成物においてシリカ粒子の分散性が良好であれば、長周期欠陥のみならず、長波長うねり等の他の基板品質も向上する。本発明では、高研磨速度が担保され、且つ、長期保存後のシリカスラリーの使用による基板品質への悪影響が抑制されることが相まって、磁気ディスク基板の生産性の向上が期待できる。
本発明において、シリカ粒子の再分散性が優れ、その結果、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保が行えるメカニズムの詳細については明らかではないが、以下のように推察される。
シリカスラリーにおいて、粒径が比較的大きいシリカ粒子は自重により保存中に沈降し、固いケーキング層を形成する。研磨液組成物の調製のために、シリカスラリーを攪拌し酸等の他の成分と混合する際、シリカ粒子の一次粒子同士が強固に凝集したままであると、被研磨基板の凹凸表面に対してシリカ粒子の物理力が作用し辛くなるため研磨速度が低下し、シリカ粒子の粒径が大きくなることによりうねり等の悪化や長周期欠陥の除去性の悪化が発生する。
これに対して、本発明では、アルカリ性下では水和し(水溶性であり)、3次元網目構造を形成することにより増粘し、当該3次元網目構造によってシリカ粒子の凝集を抑制し、酸性下では水中に球体で存在して減粘させるという、pH依存の粘度スイッチング特性を有したアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが、シリカスラリーに含まれており、且つ、シリカスラリーの25℃におけるpHが8.0以上12.0以下である。そのため、長期保存後においても、シリカスラリーにおけるシリカ粒子の再分散性は良好である。そして、本発明のシリカスラリーに酸等を添加して、酸性の研磨液組成物を調製する場合、長期保存後のシリカスラリーを用いた場合でも、シリカスラリー中のシリカ粒子の再分散性が良好であるので、研磨液組成物において、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保とが行える。アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、前記粘度スイッチング特性を有するため、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを含有することによる前記増粘が、酸性の研磨液組成物において、研磨速度へ与える悪影響は小さい。本発明の研磨液キットにおいても、本発明のシリカスラリーを1液として含むので、高研磨速度の確保と良好な基板品質の担保とを両立できる。ただし、本発明はこれらのメカニズムに限定して解釈されない。
本発明では、「高研磨速度の確保」の程度は、製造直後のシリカスラリーを用いて調製される研磨液組成物を用いた場合の研磨速度と、速度低下率によって評価できる。速度低下率は、例えば、後述の実施例に記載の方法により算出できる。
すなわち、本発明のシリカスラリーは、シリカ粒子(成分a)、再分散性向上剤(成分b)、及び水を含み、再分散性向上剤(成分b)が、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンであり、25℃におけるpHが8.0以上12.0以下である、シリカスラリーに関する。
本願において、基板の「うねり」とは、粗さよりも波長の長い基板表面の凹凸をいう。本願において「長波長うねり」とは、500~5000μmの波長により観測されるうねりをいう。研磨後の基板表面の長波長うねりが低減されることにより、磁気ディスクドライブにおいて磁気ヘッドの浮上量を低くすることができ、磁気ディスクの記録密度の向上が可能となる。
本願において、「PED(polish enhanced defect)」とは、研磨仕上げ後に基板表面に出現する浅い凹み状の欠陥のことをいう。このPEDは、例えば、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板の製造工程で発生する。アルミニウム合金基板にめっき成膜する工程におけるアニール工程で、基板表面に付着した水や異物に起因するアニール不足の部分をいい、研磨時に基板表面の浅い凹み状の欠陥として発生する。「グラインド傷」とは、メッキ前のアルミニウム合金基板をグラインドする工程において発生する砥石の削り痕のことをいう。PEDやグラインド傷はまとめて「長周期欠陥」とも呼ばれている。長周期欠陥の発生率は、長周期欠陥の除去率を評価するための指標であり、実施例に記載の測定器を用いて測定できる。
[シリカ粒子]
本発明のシリカスラリーは、砥粒としてシリカ粒子(成分a)を含有する。シリカ粒子は、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは非球状シリカ粒子A(以下、「粒子A」とも言う。)を含み、長周期欠陥の低減と高研磨速度の確保の両立の観点から、好ましくは粒子Aと球状シリカ粒子B(以下、「粒子B」とも言う。)の両方を含む。シリカ粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降法シリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられる。
高研磨速度の確保の観点から、粒子Aとしては、コロイダルシリカ又は沈降法シリカが好ましい。シリカ粒子が粒子Aのみからなる場合、粒子Aは、長周期欠陥の低減の観点からコロイダルシリカが好ましく、シリカ粒子が粒子Aと粒子Bの両方を含む場合、粒子Aは、高研磨速度の確保の観点から沈降シリカが好ましい。粒子Aは、1種類の非球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の非球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。粒子Bとしては、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点、並びに突起欠陥の低減の観点から、コロイダルシリカが好ましい。粒子Bは、1種類の球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。
粒子Aの製造方法としては、例えば、東ソー研究・技術報告 第45巻(2001)第65~69頁に記載の方法等の公知の方法が挙げられる。粒子Aの製造方法の具体例としては、珪酸ナトリウム等の珪酸塩と硫酸等の鉱酸との中和反応によりシリカ粒子を析出させる沈降法が挙げられる。前記中和反応を比較的高温でアルカリ性の条件で行うことが好ましく、これにより、シリカの一次粒子の成長が早く進行し、一次粒子がフロック状に凝集して沈降し、前記沈降法シリカが得られる。コロイダルシリカは、水ガラスやアルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましく、水ガラスから得たものであることがより好ましい。水ガラスから得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
粒子Bは、火炎溶融法、ゾルゲル法、及び粉砕法で製造されたものでもよいが、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点、並びに粗研磨及び仕上げ研磨後の突起欠陥の低減の観点から、珪酸アルカリ水溶液を出発原料とする粒子成長法(以下、「水ガラス法」ともいう)により製造されたシリカ粒子であることが好ましい。粒子Bの使用形態としては、スラリー状であることが好ましい。
本発明のシリカスラリー中のシリカ粒子(成分a)の含有量は、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして、製造適正の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
シリカ粒子(成分a)のBET比表面積は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の両立の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、そして、同様の観点から、50m2/g以下が好ましく、45m2/g以下がより好ましい。なお、シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含む場合のシリカ粒子(成分a)のBET比表面積は、両粒子のBET比表面積と配合比率(質量比)とから算出できる。
シリカ粒子(成分a)のBET換算による平均一次粒子径D1は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。なお、シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含む場合のシリカ粒子(成分a)のD1は、両粒子のD1と、配合比率(質量比)とから算出できる。
シリカ粒子(成分a)の平均二次粒子径D2は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、150nm以上が好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、580nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましく、350nm以下が更により好ましい。なお、シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含む場合のシリカ粒子(成分a)のD2は、両粒子のD2と、配合比率(質量比)とから算出できる。
(非球状シリカ粒子)
本発明のシリカスラリーは、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは非球状シリカ粒子Aを含有する。粒子Aは、1種類の非球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の非球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。
粒子Aの平均球形度は、長周期欠陥の低減の観点から、0.60以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、そして、同様の観点から、0.85以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.75以下が更に好ましい。
本願において、粒子Aの平均球形度は、少なくとも200個の粒子Aの球形度の平均値である。粒子Aの球形度は、例えばTEMによる観察及び画像解析ソフト等を用いて、粒子Aの投影面積Sと投影周囲長Lとを求め、以下の式から算出できる。
球形度=4π×S/L2
個々の粒子Aの球形度は、前記平均球形度と同様、0.60以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、そして、同様の観点から、0.85以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.75以下が更に好ましい。
粒子Aの平均短径は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましく、180nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、500nm以下が好ましく、450nm以下がより好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aのみからなり、粒子Aがコロイダルシリカである場合、粒子Aの平均短径は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましく、180nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、500nm以下が好ましく、450nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましく、300nm以下が更により好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含み、粒子Aが沈降法シリカである場合、粒子Aの平均短径は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、150nm以上が好ましく、180nm以上がより好ましく、そして、同様の観点から、500nm以下が好ましく、450nm以下がより好ましい。
本願において、粒子Aの平均短径は、本発明のシリカスラリーが含有する少なくとも200個の粒子Aの短径の平均値である。粒子Aの短径は、例えばTEMによる観察及び画像解析ソフト等を用いて、投影された粒子Aの画像に外接する最小の長方形を描いたときの、前記長方形の短辺の長さである。同様に、粒子Aの長径は、前記長方形の長辺の長さである。
粒子AのBET比表面積は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の両立の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、そして、同様の観点から、50m2/g以下が好ましく、40m2/g以下がより好ましく、30m2/g以下が更に好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aのみからなり、粒子Aがコロイダルシリカである場合、粒子AのBET比表面積は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、20m2/g以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50m2/g以下が好ましく、40m2/g以下がより好ましく、30m2/g以下が更に好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含み、粒子Aが沈降法シリカである場合、粒子AのBET比表面積は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、そして、同様の観点から、50m2/g以下が好ましく、40m2/g以下がより好ましく、30m2/g以下が更に好ましく、20m2/g以下が更により好ましい。
本願において、粒子Aの平均一次粒子径D1は、BET比表面積S(m2/g)を用いて、下記式から算出できる。具体的には、実施例に記載の測定方法により算出できる。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
粒子AのBET換算による平均一次粒子径D1は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aのみからなり、粒子Aがコロイダルシリカである場合、粒子AのD1は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、150nm以下が更により好ましく、120nm以下が更により好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含み、粒子Aが沈降法シリカである場合、粒子AのD1は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、90nm以上が好ましく、120nm以上がより好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。
粒子Aの平均二次粒子径D2は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、150nm以上が好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、580nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましく、350nm以下が更により好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aのみからなり、粒子Aがコロイダルシリカである場合、粒子AのD2は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、150nm以上が好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、400nm以下が好ましく、350nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましく、250nm以下が更により好ましい。
シリカ粒子(成分a)が粒子Aと粒子Bの両方を含み、粒子Aが沈降法シリカである場合、粒子AのD2は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、150nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、220nm以上が更に好ましく、250nm以上が更により好ましく、300nm以上が更により好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、580nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましく、350nm以下が更により好ましい。
本願において、粒子Aの平均二次粒子径D2とは、光散乱法により測定される散乱強度分布に基づく体積基準の平均粒子径をいう。本願において「散乱強度分布」とは、動的光散乱法(DLS:DynamicLight Scattering)又は準弾性光散乱(QLS:Quasielastic Light Scattering)又は、静的光散乱法(レーザ回折/散乱法)により求められる、サブミクロン以下の粒子の体積換算の粒径分布のことをいう。本願における粒子Aの平均二次粒子径D2は、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。
粒子Aの平均二次粒子径D2と平均一次粒子径D1との粒径比(D2/D1)は、高研磨速度の確保及び長周期欠陥の低減の観点から、1.4以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、そして、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.8以下が更に好ましい。
本願において、粒径比(D2/D1)は、粒子Aの異形度合いを意味し得る。一般的に光散乱法によって測定される平均二次粒子径D2は、粒子が異形粒子の場合、長方向での光散乱を検出して処理を行うため、長方向と短方向の長さを考慮して異形度合いが大きいほど大きな数値となる。BET法によって測定される比表面積値から換算される平均一次粒子径D1は、求まる粒子の体積をベースとして球換算で表されるため、平均二次粒子径D2に比べると小さな数値となる。高研磨速度の確保の観点から、粒径比(D2/D1)は、上述の範囲のなかでも大きいことが好ましい。
粒子Aの形状は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、好ましくは、複数の一次粒子が凝集した形状である。
本発明のシリカスラリー中の粒子Aの含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が更により好ましい。
(球状シリカ粒子B)
本発明の研磨液組成物は、上述したように、長周期欠陥の低減と高研磨速度の確保の観点から、成分aとして、好ましくは、球状シリカ粒子B(以下、「粒子B」ともいう)を更に含有し、特に、粒子Aが沈降法シリカある場合、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは、粒子Bを含有する。
本願において、粒子Bの平均球形度は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点、及び粗研磨並びに仕上げ研磨後の突起欠陥の低減の観点から、0.85よりも大きいと好ましく、0.87以上がより好ましく、そして、同様の観点から、1.00以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。個々の粒子Bの球形度は、0.85よりも大きいと好ましく、0.87以上がより好ましく、そして、1.00以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。粒子Bの平均球形度及び球形度は、粒子Aと同じ方法で算出できる。
粒子Bの平均球形度は、長周期欠陥の低減の観点から、粒子Aの平均球形度よりも大きいことが好ましい。粒子Aと粒子Bとの平均球形度の差は、うねり低減の観点から、0.02以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.08以上が更に好ましく、0.1以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.30以下が更に好ましい。
粒子Bの平均短径は、粒子Aの平均短径よりも小さい。粒子Bの平均短径は、高研磨速度の確保の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、長周期欠陥の低減の観点から、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、110nm以下が更に好ましい。粒子Bの平均短径は、粒子Aと同じ方法で算出できる。
本発明の研磨液組成物中の粒子Aと粒子Bとの平均短径の比(粒子Aの平均短径)/(粒子Bの平均短径)は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.5以上が更に好ましく、そして、高研磨速度の確保の観点から、13.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、8.0以下が更に好ましく、6.0以下が更により好ましい。
粒子BのBET比表面積は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、20m2/g以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、55m2/g以下がより好ましく、45m2/g以下が更に好ましく、35m2/g以下が更により好ましい。
粒子BのBET換算による平均一次粒子径D1は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。粒子BのBET換算による平均一次粒子径は、粒子Aと同じ方法で算出できる。
粒子Bの動的散乱法による平均二次粒子径D2は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、120nm以下が更に好ましい。粒子Bの平均二次粒子径は、粒子Aと同じ測定方法により算出できる。
本発明のシリカスラリー中の粒子Bの含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、そして、経済性の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。
本発明のシリカスラリー中の粒子Aと粒子Bの質量比A/Bは、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、25/75以上が更に好ましく、40/60以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、99/1以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、75/25以下が更に好ましい。粒子Bが2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせの場合、粒子Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。粒子Aの含有量も同様である。
本発明のシリカスラリーが粒子A及び粒子B以外のシリカ粒子を含有する場合、シリカスラリー中のシリカ粒子全体に対する粒子Aと粒子Bの合計の含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、98.0質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.0質量%以上が更に好ましく、99.5質量%以上が更により好ましく、99.8質量%以上が更により好ましく、実質的に100質量%が更により好ましい。
[再分散性向上剤]
本発明のシリカスラリーは、再分散性向上剤(成分b)としてアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを含有する。アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、アルカリ性下では、水和し(水溶性であり)且つシリカ粒子に吸着して3次元網目構造の形成することにより増粘し、酸性下では、水中に球体で存在して減粘させるという、pH依存の粘度スイッチング特性を有する。ここで、「水溶性」とは、水(20℃)に対して2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
本発明のシリカスラリーは、前記再分散性向上剤(成分b)を含んでいるので、本発明のシリカスラリーに酸等を添加して、例えば、25℃におけるpHを、0.5以上6.0以下、好ましくは1.0以上3.0以下とした場合に、シリカスラリーの25℃の粘度を、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは7.0mPa・s以下、更に好ましくは5.0mPa・s以下とし、そして、好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは1.0mPa・s以上、更に好ましくは1.5mPa・s以上、更により好ましくは2.0mPa・s以上とすることができる。
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンとしては、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、pH1.0以上3.0以下では水中で粒状であり、pH8.0以上12.0以下では酸基が中和されることで可溶化し、水中に拡散する重合体が好ましく、酸基がカルボキシル基であるアルカリ増粘型のカルボン酸系重合体がより好ましく、カルボン酸系共重合体が更に好ましく、当該カルボン酸系共重合体は、下記第一単量体単位を2種以上含むカルボン酸系共重合体、及び下記第一単量体単位と下記第二単量体単位とを含むカルボン酸系共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体が好ましく、下記第一単量体単位と下記第二単量体単位とを含むカルボン酸系共重合体がより好ましい。
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンが前記カルボン酸系共重合体である場合、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、単量体単位として、第一単量体単位と第二単量体単位のみを含んでいてもよいが、第一単量体単位と第二単量体単位に加えて更に下記第三単量単位を含んでいると好ましい。第三単量単位としては、架橋剤等が挙げられ、架橋剤としては、増粘効果が高いジアリルフタレートが好ましい。
前記カルボン酸系重合体に含まれる、全単量体単位に対する、第一単量体単位のモル%と第二単量体単位モル%の合計は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、90質量%以上が好ましく、94質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、同様の観点から、100質量%以下好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.8質量%以下が更に好ましく、99.5質量%以下が更に好ましく、99.0質量%以下が更により好ましい。
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンの製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の方法が挙げられる。アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、水中において、アルカリにより中和された状態にある。塩としては、アンモニウム塩;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第一単量体としては、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。塩としては、アンモニウム塩又はナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。
第二単量体としては、前記不飽和カルボン酸およびその塩以外の単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド等が挙げられるが、これらのなかでも、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記カルボン酸系共重合体における、第一単量体単位と第二単量体単位のモル比(第一単量体単位のモル%/第二単量体単位のモル%)は、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上、更により好ましくは35/65以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下である。
前記カルボン酸系重合体において、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、好ましくは、第一単量体が、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種であり、当該第一単量体と共にカルボン酸系重合体を形成する第二単量体が、好ましくはアクリル酸アルキル及び(メタ)アクリル酸アルキルから選ばれる少なくとも1種であり、第三単量体がジアリルフタレートであると好ましい。
前記カルボン酸系共重合体の数平均分子量は、シリカ粒子の再分散性の向上の観点から、好ましくは50万以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは500万以下、より好ましくは400万以下であり、更に好ましくは300万以下である。数平均分子量は、例えば以下のようにして測定できる。
前記数平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定できる。
<GPC条件>
カラム:ガードカラムα , 分析カラム α-M 2本 直列
溶離液:60mmol/L H3PO4、50mmol/L LiBr/DMF
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
標準物質:ポリスチレン
アルカリ増粘型のカルボン酸系共重合体の好ましい市販品の具体例としては、東亜合成(株)製のアロンシリーズA-7075、A-7055、B-300K、B-500、ローム・アンド・ハース社製のプライマルTT-615、TT-935(いずれもコポリメタクリル酸系の水性エマルジョン)等が挙げられる。
本発明のシリカスラリー中のシリカ粒子と再分散性向上剤の質量比は、シリカ粒子の再分散性向上の観点から、シリカ粒子100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましい。
本発明のシリカスラリー中の再分散性向上剤の含有量は、シリカ粒子の再分散性向上の観点から、固形分換算で、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。
[水]
本発明のシリカスラリーは、媒体として水を含有する。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。シリカスラリー中の水の含有量は、シリカスラリーの取扱いが容易になる観点から、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。70質量%以下が更により好ましく、65質量%以下が更により好ましい。
[その他の成分]
本発明のシリカスラリーは、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。他の成分としては、pH調整剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲でシリカスラリー中に含有されることが好ましく、シリカスラリー中の前記その他の成分の含有量は、0質量%以上が好ましく、0質量%超がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[pH調整剤]
本発明のシリカスラリーのpHは、シリカ粒子の再分散性向上の観点からアルカリ性であり、8.0以上12.0以下である。本発明のシリカスラリーの調製の際、必要に応じて、pH調整剤が用いられてもよい。pH調整剤としては、例えば、アルカリ化合物であり、例えば、アンモニア、及び水酸化カリウム,水酸化ナトリウム等の無機アルカリ化合物;アルキルアミン、及びアルカノールアミン等の有機アルカリ化合物;等が挙げられる。なかでも、シリカ粒子の再分散性向上の観点から、アンモニア、水酸化ナトリウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、アンモニア及び水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
[アルミナ粒子]
本発明のシリカスラリーは、突起欠陥の低減化の観点から、アルミナ粒子の含有量が、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましく、アルミナ粒子を実質的に含まないことが更に好ましい。本発明において「アルミナ粒子を実質的に含まない」とは、アルミナ粒子を含まないこと、砥粒として機能する量のアルミナ粒子を含まないこと、又は、研磨結果に影響を与える量のアルミナ粒子を含まないこと、を含みうる。アルミナ粒子のシリカスラリー中の含有量は、シリカスラリー中の砥粒全量に対し、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%であることが更により好ましい。
[pH]
本発明のシリカスラリーのpHは、シリカ粒子の再分散性向上の観点から、8.0以上であり、8.2以上が好ましく、8.5以上がより好ましく、9.0以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、12.0以下であり、11.0以下が好ましく、10.8以下がより好ましく、10.5以下が更に好ましく、10.0以下が更により好ましい。pHの調整は、前述のpH調整剤を用いて、調整することが好ましい。上記のpHは、25℃におけるシリカスラリーのpHであり、pHメータを用いて測定でき、好ましくは、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して30秒後の数値である。
本発明のシリカスラリーの粘度は、シリカ粒子の再分散性向上の観点から、好ましくは20mPa・s以上であり、50mPa・s以上がより好ましく、100mPa・s以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10,000mPa・s以下が好ましく、5,000mPa・s以下がより好ましく、1,000mPa・s以下が更に好ましく、800mPa・s以下が更により好ましい。粘度は、25℃のシリカスラリーにおける値である。
[研磨液組成物の製造方法]
本発明の研磨液組成物は、例えば、本発明のシリカスラリーと、酸と、更に所望により、酸化剤及びその他の成分とを公知の方法で配合し、25℃におけるpHを、0.5以上6.0以下、好ましくは1.0以上3.0以下とすることにより製造できる。したがって、本発明は、少なくともシリカ粒子、再分散性向上剤、及び水を配合する工程を含む、研磨液組成物の製造に用いられるシリカスラリーの製造方法に関する。さらに、本発明は、少なくともシリカ粒子、再分散性向上剤及び水を配合する工程を含み、必要に応じて25℃におけるpHを、0.5以上6.0以下、好ましくは1.0以上3.0以下に調整する工程を含む、研磨液組成物の製造方法に関する。
本発明において「配合する」とは、シリカ粒子、再分散性向上剤及び水を同時に又は任意の順に混合すること、シリカスラリー、酸、更に必要に応じて酸化剤及びその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、プロペラ攪拌機、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器等を用いて行うことができる。研磨液組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、研磨液組成物中の各成分の好ましい含有量と同じである。
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、シリカ粒子の分散性の観点から、好ましくは以下の工程を有する。
工程1:水と、酸と、任意で酸化剤及びその他の成分を混合し、25℃におけるpHが6.0以下の酸性水溶液を調整する工程
工程2:前記酸性水溶液と、本発明のシリカスラリーとを、混合する工程
工程1において、得られる酸性水溶液のpHは、研磨液組成物のpHが所望の値となるように調整されることが好ましく、3.0以下が好ましく、そして、0.5以上が好ましい。
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、前記酸性水溶液と本発明のシリカスラリーとを混合する前又は後に、水を添加する工程を含んでいてもよい。前記酸性水溶液と本発明のシリカスラリーとを混合する前に水を添加する場合は、水は、例えば、本発明のシリカスラリーに添加すればよい。当該水は、シリカスラリーに含まれる水でよい。特に、本発明のシリカスラリー中のシリカ粒子の含有量が、10質量%以上70質量%以下である場合、本発明の研磨液組成物の製造方法は、前記水を添加する工程を含むと好ましい。
[研磨液組成物]
本発明の研磨液組成物中のシリカ粒子の含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
本発明の研磨液組成物中の再分散性向上剤の含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。
[pH]
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、1.0以上が更により好ましく、1.2以上が更により好ましく、1.4以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、6.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましく、2.5以下が更により好ましく、2.0以下が更により好ましい。pHの調整は、後述の酸、必要に応じて酸化剤を用いて調整することが好ましい。上記のpHは、25℃における研磨液組成物のpHであり、測定方法は、シリカスラリーのpHの測定方法と同じである。
[酸]
酸としては、例えば、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、アミド硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸等の無機酸;有機リン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;等が挙げられる。中でも、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、リン酸、硫酸、及び1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、硫酸及びリン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リン酸が更に好ましい。
研磨液組成物中の酸の含有量は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が更により好ましい。
[酸化剤]
本発明の研磨液組成物は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、酸化剤を含有してもよい。酸化剤としては、例えば、同様の観点から、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩等が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、高研磨速度の確保の観点、被研磨基板の表面に金属イオンが付着しない観点、及び入手容易性の観点から、過酸化水素がより好ましい。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
研磨液組成物中の前記酸化剤の含有量は、高研磨速度の確保の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、4.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
[水]
本発明の研磨液組成物は、媒体として水を含有する。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。研磨液組成物中の水の含有量は、研磨液組成物の取扱いが容易になる観点から、61質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。
[その他の成分]
本発明の研磨液組成物は、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。他の成分としては、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲で研磨液組成物中に含有されることが好ましく、研磨液組成物中の前記その他の成分の含有量は、0質量%以上が好ましく、0質量%超がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
本発明において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨液組成物を研磨に使用する時点での前記各成分の含有量をいう。したがって、本発明の研磨液組成物が濃縮物として作製された場合には、前記各成分の含有量はその濃縮分だけ高くなりうる。
[粘度]
本発明の研磨液組成物の粘度は、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減の観点から、10mPa・s以下が好ましく、7.0mPa・s以下がより好ましく、5.0mPa・s以下が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.5mPa・s以上が好ましく、1.0mPa・s以上がより好ましく、1.5mPa・s以上が更に好ましく、2.0mPa・s以上が更により好ましい。上記粘度は、25℃における研磨液組成物の粘度であり、測定方法は、シリカスラリーの粘度の測定方法と同じである。
[研磨液キット]
本発明の研磨液キットは、研磨液組成物を製造するためのキットであって、前記シリカ粒子を含むシリカスラリーが容器に収納された容器入りシリカスラリーを含む、研磨液キットに関する。本発明の研磨液キットは、前記容器入りシリカスラリーとは別の容器に収納されたpH6.0以下の酸性水溶液を更に含むことができる。本発明によれば、砥粒としてシリカ粒子を使用した場合でも、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減が行える研磨液組成物が得られうる研磨液キットを提供できる。
本発明の研磨液キットとしては、例えば、前記シリカ粒子を含むシリカスラリー(第1液)と、被研磨物の研磨に用いる研磨液組成物に配合され得る他の成分を含む酸性水溶液(第2液)とが、相互に混合されていない状態で保存されており、これらが使用時に混合される研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。酸性水溶液に配合され得る成分としては、例えば、酸、酸化剤等が挙げられる。前記第1液及び第2液には、各々必要に応じて任意成分が含まれていても良い。該任意成分としては、例えば、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。
[被研磨基板]
本発明の研磨液組成物が研磨の対象とする被研磨基板、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板であり、例えば、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板や、珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、結晶化ガラス、強化ガラス等のガラス基板が挙げられ、コストと扱いやすさの観点からNi-Pメッキされたアルミニウム合金基板が好ましい。本発明において「Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板」とは、アルミニウム合金基材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理したものをいう。被研磨基板の表面を本開示にかかる研磨液組成物を用いて研磨する工程の後、スパッタ等でその基板表面に磁性層を形成する工程を行うことにより、磁気ディスクを製造できうる。被研磨基板の形状には、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状が挙げられ、好ましくはディスク状の被研磨基板である。ディスク状の被研磨基板の場合、その外径は、例えば10~120mmであり、その厚みは、例えば0.5~2mmである。
一般に、磁気ディスクは、研削工程を経た被研磨基板が、粗研磨工程、仕上げ研磨工程を経て研磨され、磁性層形成工程を経て製造される。本発明の研磨液組成物は、粗研磨工程における研磨に使用されることが好ましい。
[磁気ディスク基板の製造方法]
本発明は、本発明の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程(以下、「本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、磁気ディスク基板の製造方法(以下、「本発明の基板製造方法」ともいう。)に関する。
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤で被研磨基板を挟み込み、本発明の研磨液組成物を研磨面に供給し、圧力を加えながら研磨パッド及び被研磨基板のうちの何れか一方又は双方を動かすことにより、被研磨基板を研磨する。
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程における研磨荷重は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、30kPa以下が好ましく、25kPa以下がより好ましく、20kPa以下が更に好ましく、そして、3kPa以上が好ましく、5kPa以上がより好ましく、7kPa以上が更に好ましい。本発明において「研磨荷重」とは、研磨時に被研磨基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。研磨荷重の調整は、定盤や基板等への空気圧や重りの負荷によって行うことができる。
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程における、被研磨基板1cm2あたりの研磨量は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、0.20mg以上が好ましく、0.30mg以上がより好ましく、0.40mg以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2.50mg以下が好ましく、2.00mg以下がより好ましく、1.60mg以下が更に好ましい。
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程における被研磨基板1cm2あたりの研磨液組成物の供給速度は、経済性の観点から、2.5mL/分以下が好ましく、2.0mL/分以下がより好ましく、1.5mL/分以下が更に好ましく、そして、高研磨速度の確保の観点から、被研磨基板1cm2あたり0.01mL/分以上が好ましく、0.03mL/分以上がより好ましく、0.05mL/分以上が更に好ましい。
本発明の研磨液組成物を研磨機へ供給する方法としては、例えば、ポンプ等を用いて連続的に供給を行う方法が挙げられる。研磨液組成物を研磨機へ供給する際は、全ての成分を含んだ1液で供給する方法の他、研磨液組成物の保存安定性等を考慮して、複数の配合用成分液に分け、2液以上で供給することもできる。後者の場合、例えば供給配管中又は被研磨基板上で、上記複数の配合用成分液が混合され、本発明の研磨液組成物となる。
本発明の基板製造方法によれば、粗研磨において研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥の低減が可能であることから、突起欠陥が低減された磁気ディスク基板を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
[研磨方法]
本発明は、本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程を含む、磁気ディスク基板の研磨方法(以下、本発明の研磨方法ともいう)に関する。
本発明の研磨方法を使用することにより、粗研磨において研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥の低減が可能であることから、突起欠陥が低減された磁気ディスク基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本発明の基板製造方法と同じようにすることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
1.砥粒スラリーの調製
表1の砥粒(非球状シリカ粒子A1~A3、非球状アルミナ粒子A4、球状シリカ粒子B1)、表3の再分散性向上剤(成分b)又はその比較対象物、及び水を用い、実施例1~14及び比較例1~7の砥粒スラリーを調製した。砥粒スラリー中の各成分の含有量は、砥粒:30-50質量%(A1:40重量%、A2:40重量%、A3:30重量%、A4:45重量%、B1:50重量%)、再分散性向上剤(成分b)又はその比較対象物:表3に記載の量、残余は水である。実施例1~14及び比較例1~7の砥粒スラリーの25℃におけるpHは10である。尚、粒子A及び粒子Bの詳細は、表1に記載の通りである。
非球状シリカ粒子A1,A2はコロイダルシリカであり、非球状シリカ粒子A3は沈降法シリカであり、粒子Bは水ガラス法により製造されたコロイダルシリカである。砥粒スラリーのpHは、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定し、電極を研磨液組成物へ浸漬して30秒後の数値を採用した(以下、同様)。
表3中のA-7075、A-7055、B-500、B-300Kは、いずれもアルカリ増粘性ポリマーエマルジョンであり、カルボン酸系共重合体であり、いずれも、第一単量体単位と第二単量体単位を含む。
Figure 0007096714000001
2.研磨液組成物の調製
[粗研磨に用いる研磨液組成物の調製]
酸(リン酸)と酸化剤(過酸化水素)と水とを混合して酸性水溶液(pH=1.5)を調整した。「1.砥粒スラリーの調製」に記載の方法で調製された砥粒スラリーの調製後直ちに又は3カ月間静置後に、実施例1~14及び比較例1~7の砥粒スラリーと酸性水溶液と混合して、研磨液組成物1~21を調製した。研磨液組成物1~21中の各成分の含有量は、砥粒:5.0質量%、再分散性向上剤(成分b)又はその比較対象物:表3に記載の量、リン酸:1.5質量%、過酸化水素:0.8質量%とした。残量は水である。研磨液組成物1~21の25℃におけるpHは1.6である。
[仕上げ研磨に用いる研磨液組成物Cの調製]
表2のコロイダルシリカ粒子(砥粒a)、硫酸、過酸化水素、及び水を用い、仕上げ研磨に用いる研磨液組成物Cを調製した。研磨液組成物C中の各成分の含有量は、コロイダルシリカ粒子:5.0質量%、硫酸:0.5質量%、過酸化水素:0.5質量%とした。研磨液組成物CのpHは1.4であった。この研磨液組成物Cを、後述の仕上げ研磨工程で使用した。砥粒aの詳細は、表2に記載のとおりである。
Figure 0007096714000002
3.各パラメータの測定方法
[砥粒のBET比表面積の測定方法]
BET比表面積Sは、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁(0.1mgの桁)まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(島津製作所製 マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」)を用いてBET法により測定した。
[前処理]
スラリー状の粒子をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させた。乾燥後の試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
[砥粒のBET比表面積及び平均一次粒子径D1の測定方法]
砥粒の平均一次粒径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
(1)シリカ粒子の平均一次粒径(nm)=2727/S=6/(ρ×S)
ρ:物質の密度(kg/m3
(2)アルミナ粒子の平均一次粒径(nm)=1508/S
[砥粒の平均二次粒子径の測定方法]
(1)シリカ粒子A1,A2,B1の平均二次粒子径の測定方法
シリカ粒子をイオン交換水で希釈し、シリカ粒子を1質量%含有する分散液を作製した。そして、該分散液を下記測定装置内に投入し、シリカ粒子の体積粒度分布を得た。得られた体積粒度分布の累積体積頻度が50%となる粒径(Z-average値)を二次粒子径とした。
測定機器 :マルバーン ゼータサイザー ナノ「Nano S」
測定条件 :サンプル量 1.5mL
:レーザー He-Ne、3.0mW、633nm
:散乱光検出角 173°
(2)シリカ粒子A3の平均二次粒子径の測定方法
(2-1)シリカ粒子A3
水を分散媒として、下記測定装置内に投入し、続いて透過率が75~95%になるようにサンプル(シリカ粒子A3)を投入し、その後、5分間超音波を付与した後、粒径を測定した。
(2-2)アルミナ粒子A4
ポイズ530(花王社製、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)を0.5質量%含有する水溶液を分散媒として、下記測定装置内に投入し、続いて透過率が75~95%になるようにサンプル(アルミナ粒子4A)を投入し、その後、5分間超音波を付与した後、粒径を測定した。
測定機器 :堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA920
循環強度 :4
超音波強度:4
[砥粒の平均短径及び平均球形度の測定方法]
砥粒をTEM(日本電子社製「JEM-2000FX」、80kV、1~5万倍)で観察した写真をパーソナルコンピュータにスキャナで画像データとして取込み、解析ソフト(三谷商事「WinROOF(Ver.3.6)」)を用いて500個の砥粒の投影画像について下記の通り解析した。
個々の砥粒の短径を求め、短径の平均値(平均短径)を得た。さらに、個々の砥粒の面積Sと周囲長Lとから、下記式により個々の砥粒の球形度を算出し、球形度の平均値(平均球形度)を得た。
球形度=4π×S/L2
[砥粒aのD10、D50、及びD90]
砥粒aをイオン交換水で希釈して得られる1質量%分散液を、下記測定装置内に投入し、シリカ砥粒の体積粒度分布を得た。
測定機器 :マルバーン ゼータサイザー ナノ「Nano S」
測定条件 :サンプル量 1.5mL
:レーザー He―Ne、3.0mW、633nm
:散乱光検出角 173°
そして、得られた体積粒度分布の累積体積頻度が10%、50%及び90%となる粒径を、それぞれ、D10、D50(体積平均粒子径)、及びD90とした。
4.再分散性
シリカ粒子のシリカスラリーにおける再分散性は、沈降率(%)で評価した。沈降率は、全固形分を100としたときの全固形分に対する沈降量(g)の割合である。調製後3か月静置したシリカスラリーを、振とう機(宮本理研工業社製「MW-YS」)にて、30秒間、回転速度100rpmにて振とうし、上澄み液を除去した残余を沈降量とした。沈降率が小さいほど、シリカスラリーの再分散性が良好であることを意味する。
[評価基準]
A:沈降率0%以上1%未満
B:沈降率1%以上3%未満
C:沈降率3%以上
5.研磨条件
被研磨基板の研磨を下記工程(1)~(3)に従い行った。各工程の条件を以下に示す。工程(3)は、工程(1)で使用した研磨機とは別個の研磨機で行った。
(1)粗研磨工程:研磨液組成物1~21を用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程。
(2)洗浄工程:工程(1)で得られた基板を洗浄する工程。
(3)仕上げ研磨工程:研磨液組成物Cを用いて工程(2)で得られた基板の研磨対象面を研磨する工程。
[被研磨基板]
被研磨基板は、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板を用いた。この被研磨基板は、厚み1.27mm、直径95mmであった。
[工程(1):粗研磨]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)
被研磨基板枚数:10枚
研磨液:研磨液組成物1~21
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー)、厚み:1.0mm、平均気孔径:30μm、表面層の圧縮率:2.5%(Filwel社製)
定盤回転数:35rpm
研磨荷重:9.8kPa(設定値)
研磨液供給量:100mL/分(被研磨基板面1cm2あたり、0.076mL/min
に相当)
研磨時間:6分
[工程(2):洗浄]
工程(1)で得られた基板を、下記条件で洗浄した。
まず、0.1質量%のKOH水溶液からなるpH12のアルカリ性洗浄剤組成物の入った槽内に、工程(1)で得られた基板を5分間浸漬する。次に、浸漬後の基板を、イオン交換水で20秒間すすぎを行う。そして、すすぎ後の基板を洗浄ブラシがセットされたスクラブ洗浄ユニットに移送し洗浄する。
[工程(3):仕上げ研磨]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)、工程(1)で使用した研磨機とは別個の研磨機
被研磨基板枚数:10枚
研磨液:研磨液組成物C
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー)、厚み:0.9mm、平均気孔径:5μm、表面層の圧縮率:10.2%(Fujibo社製)
定盤回転数:40rpm
研磨荷重:9.8kPa
研磨液供給量:100mL/分(被研磨基板面1cm2あたり、0.076mL/minに相当)
研磨時間:2分
工程(3)後に、洗浄を行った。洗浄条件は、前記工程(2)と同条件で行った。
6.評価方法
[工程(1)の研磨速度の測定方法及び評価]
研磨前後の各基板1枚当たりの重さを計り(Sartorius社製、「BP-210S」)を用いて測定し、各基板の質量変化から質量減少量を求めた。全10枚の平均の質量減少量を研磨時間で割った値を研磨速度として下記式により算出し、その結果を、表3に示した。
質量減少量(g)={研磨前の質量(g)-研磨後の質量(g)}
研磨速度(mg/min)=質量減少量(mg)/研磨時間(min)
また、下記式により速度低下率(%)を算出し、その結果を表3に示した。
速度低下率(%)=100-3か月静置後の研磨速度÷製造直後の研磨速度×100
速度低下率:評価
-5%以上5%未満 :「A:研磨速度に優れ、更なる基板収率向上が期待できる」
5%以上10%未満 :「B:研磨速度が良好で、基板収率向上が期待できる」
10%以上 :「C:実生産には改良が必要」
[工程(1)後の基板表面の長周期欠陥の評価方法]
工程(1)の研磨後の10枚の基板の両面(計20点)について、工程(2)を行った後、下記の条件で測定し発生率(%)を求めた。基板表面に肉眼で確認できる小さな斑点がPEDであり、基板表面にそれが1点でも確認できた場合、その面は長周期欠陥有りとみなした。
長周期欠陥発生率(%)
=(長周期欠陥が発生している基板面の数/20)×100
長周期欠陥発生率を下記基準で5段階評価した。すなわち、評価の値が大きいほど長周期欠陥の発生率が低いことを意味する。その結果を表3に示す。
[評価基準]
長周期欠陥発生率:評価
10%以下 :「5:極めて発生が抑制され、基板収率向上が期待できる」
10%越20%以下:「4:実生産可能」
20%越30%以下:「3:実生産には改良が必要」
30%越50%以下:「2:基板収率が大幅に低下する」
50%越 :「1:実生産には程遠い(一般的なシリカ砥粒を用いた場合と同じレベル)」
[測定機器]
光干渉型表面形状測定機:「OptiFLAT III」(KLA Tencor社製)Radius Inside/Out:14.87mm/47.83mm
Center X/Y:55.44mm/53.38mm
Low Cutoff:2.5mm
Inner Mask:18.50mm
Outer Mask:45.5mm
Long Period:2.5mm
Wa Correction:0.9
Rn Correction:1.0
No Zernike Terms:8
[アルミナ残留の評価方法]
研磨後の各基板の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製:S-4000)にて1万倍で観察し、下記の3段階評価をした。
A:表面にアルミナ残留物が全く観察されないもの
B:表面にわずかにアルミナ残留物が観察されたもの
C:表面にアルミナ残留物が観察されたもの
7.結果
各評価の結果を表3に示した。
Figure 0007096714000003
例えば、実施例2と比較例2とを対比すると、表3に示されるように、実施例2のシリカスラリーの方が、比較例2のシリカスラリーよりも沈降率が顕著に小さくなっており、再分散性向上剤を含むことによりシリカ粒子の再分散性が向上している。実施例1と比較例1、実施例6と比較例3との対比においても同様である。
また、製造直後のシリカスラリーを用いて調製された研磨剤組成物を用いた場合、実施例2と比較例2について、研磨速度に顕著な差が見られないが、製造から3か月静置後のシリカスラリーを用いて調製された研磨剤組成物を用いた場合、比較例2では、研磨速度が顕著に低下したが、実施例2ではほとんど変わらなかった。また、製造から3か月静置後のシリカスラリーを用いて調製された研磨剤組成物を用いた場合、実施例2の方が比較例2よりも、長周期欠陥の発生率が顕著に低かった。実施例1と比較例1、実施例と比較例3との対比においても同様である。
分散剤としてよく知られたPEG(重量平均分子量6,000)を用いた比較例5のシリカスラリーにおいては、シリカ粒子の再分散性は悪かった。比較例6では、重量平均分子量がより大きいPEGを用いることにより、再分散性の評価は良好となったが、研磨速度が遅かった。比較例7のシリカスラリーの調製に用いたポリアクリル酸は、カルボン酸系重合体であるが、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンにあたらない。
表3に示されるように、再分散性向上剤としてアルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを含有する実施例1~14のシリカスラリーは、当該アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを含まない比較例1~4のシリカスラリーに比べて、長期保存後のシリカ粒子の再分散性が優れている。そして、長期保存された実施例1~14のシリカスラリーを用いて調製された研磨液組成物1~14は、研磨液組成物15~21に比べて、高研磨速度の確保と長周期欠陥の低減が行える。
本発明によれば、長期保存後においても、高研磨速度の確保と長周期欠陥等の基板品質の悪化抑制とが両立できるから、当該基板品質が良好な磁気ディスク基板の製造の生産性を向上できる。本発明は、磁気ディスク基板の製造に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. シリカ粒子、再分散性向上剤、及び水を含み、
    再分散性向上剤が、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンであり、
    25℃におけるpHが8.0以上12.0以下であり、
    25℃における粘度が20mPa・s以上であり、
    pHを0.5以上6.0以下とした場合に、25℃における粘度が10mPa・s以下となる、研磨液組成物用シリカスラリー。
  2. 前記再分散性向上剤が、アルカリ増粘型のカルボン酸系重合体である、請求項1に記載の研磨液組成物用シリカスラリー。
  3. 前記シリカ粒子が、非球状シリカ粒子を含む、請求項1又は2に記載の研磨液組成物用シリカスラリー。
  4. 前記非球状シリカ粒子の平均二次粒子径が、150nm以上580nm以下である、請求項3に記載の研磨液組成物用シリカスラリー。
  5. 前記研磨液組成物が、磁気ディスク基板用研磨剤組成物である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物用シリカスラリー。
  6. 請求項1から5のいずれかの項に記載の研磨液組成物用シリカスラリー(第1液)と、前記研磨液組成物用シリカスラリーとは別の容器内に収容された酸性水溶液(第2液)とを含み、前記第1液と前記第2液とを混合したときの25℃におけるpHが0.5以上6.0以下である、研磨液キット。
  7. 請求項1から5のいずれかの項に記載の研磨液組成物用シリカスラリーと酸とを混合して、25℃におけるpHを0.5以上6.0以下とする工程を含む、研磨液組成物の製造方法。
  8. 前記研磨液組成物用シリカスラリーにおけるシリカ粒子の含有量が10質量%以上70質量%以下であり、前記工程において、更に水を混合する、請求項7に記載の研磨液組成物の製造方法。
  9. 請求項1から5のいずれかの項に記載の研磨液組成物用シリカスラリーを用いて調製された磁気ディスク基板用研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
  10. 前記被研磨基板が、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基である、請求項9に記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  11. 請求項1から5のいずれかの項に記載の研磨液組成物用シリカスラリーを用いて調製された研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含み、
    前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
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