JP6997083B2 - 磁気ディスク基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、磁気ディスク基板の製造方法、及び基板の研磨方法に関する。
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化のためには、磁気信号の検出感度を向上させる必要がある。そこで、磁気ヘッドの浮上高さをより低下させ、単位記録面積を縮小する技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、平滑性及び平坦性の向上(表面粗さ、うねり、端面ダレの低減)や表面欠陥低減(残留砥粒、スクラッチ、突起、ピット等の低減)が厳しく要求されている。
このような要求に対して、より平滑で、傷が少ないといった表面品質向上と生産性の向上を両立させる観点から、ハードディスク基板の製造方法においては、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式が採用されることが多い。一般に、多段研磨方式の最終研磨工程、即ち、仕上げ研磨工程では、表面粗さの低減、スクラッチ等の傷の低減という要求を満たすために、コロイダルシリカ粒子を含む仕上げ用研磨液組成物が使用され、仕上げ研磨工程より前の研磨工程(粗研磨工程ともいう)では、生産性向上の観点から、アルミナ粒子やシリカ粒子を含む研磨液組成物が使用される。例えば、特許文献1~2には、シリカ粒子を砥粒として含有する研磨液組成物を粗研磨工程に用いることで、基板への粒子の突き刺さりの低減を可能とする磁気ディスク基板の製造方法が提案されている。
特開2016-069552号公報 特開2014-116057号公報
より高容量、高集積といった高密度化に対応するためには、粗研磨工程において高い研磨速度を確保しつつ、研磨後の基板表面のスクラッチ等の傷をより一層低減することが要求される。
そこで、本開示は、高い研磨速度を確保しつつ、研磨後の基板表面のスクラッチを低減できる磁気ディスク基板の製造方法を提供する。
本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となる粒子であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さである、磁気ディスク基板の製造方法に関する。
本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、前記研磨工程において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さである、磁気ディスク基板の製造方法に関する。
本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨することを含み、前記研磨において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さであり、前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法に関する。
本開示によれば、高い研磨速度を確保しつつ、研磨後の基板表面のスクラッチが低減された磁気ディスク基板を製造できるという効果が奏され、基板の生産性を維持しつつ、基板収率を向上しうる。

図1は、金平糖型シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(以下「TEM」ともいう)観察写真の一例である。 図2は、異形型シリカ粒子のTEM観察写真の一例である。 図3は、沈降法シリカ粒子のTEM観察写真の一例である。 図4は、研磨システムの一実施形態を説明するための図である。 図5は、切削深さの測定方法を説明するための図である。
本開示は、研磨工程における切削深さを所定の範囲とする、又は、所定の範囲の切削深さとなる粒子を砥粒として用いることにより、高研磨速度を確保しつつ、研磨後の基板表面のスクラッチを低減できるという知見に基づく。一般に、磁気ディスク基板の製造において、スクラッチの発生を抑制できれば基板収率も向上する。よって、本開示によれば、磁気ディスク基板の製造において、生産性を維持しつつ、基板収率を向上できる。
したがって、本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、前記研磨工程において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さである、磁気ディスク基板の製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。さらに、本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となる粒子であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さである、磁気ディスク基板の製造方法に関する。本開示に係る製造方法によれば、高研磨速度を確保しつつ、スクラッチが低減された磁気ディスク基板を高い基板収率で、生産性よく製造できるという効果が奏されうる。
一般に、磁気ディスクは、研削工程を経た被研磨基板が、粗研磨工程、仕上げ研磨工程を経て研磨され、磁性層形成工程を経て製造される。本開示に係る製造方法の研磨工程は、最終の基板品質をより向上させる観点から、粗研磨工程に適用されることが好ましい。
本開示において、基板表面のスクラッチは、例えば、光学顕微鏡により検出可能であり、スクラッチ数として定量評価できる。スクラッチ数は、具体的には実施例に記載した方法で評価できる。
本開示において「切削深さ」とは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さをいう。「凹部」は、切削痕、窪み、又は、溝を含みうる。「切削深さ」は、例えば、砥粒が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したときの凹部の深さであり、好ましくは砥粒が基板表面上に一層に配置されるような濃度の研磨液組成物で研磨したときの凹部の深さとすることができる。「砥粒が基板表面上に一層に配置されるような濃度」は、例えば、図5に示すように、複数の粒子(砥粒)が、互いに接しかつ基板厚み方向に重ならないように研磨パッド上に配置されると仮定したときの、粒子(砥粒)の濃度として算出できる。そして、切削深さは、例えば、研磨、好ましくは粗研磨に用いられる、研磨機、研磨パッド、及び研磨荷重で研磨したときに生じる凹部の深さを測定することにより算出できる。切削深さの値は、一実施形態において、砥粒が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したとき、好ましくは砥粒が基板表面上に一層に配置されるような濃度の研磨液組成物を用いて所定時間(例えば、30秒)研磨した後の基板表面における、砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値として求めることができ、具体的には、実施例に記載の測定方法により算出できる。
ここで、切削深さの測定方法の一例を示す。
切削深さは、例えば、以下の工程(i)~工程(iv)により測定することができる。
(i)被研磨基板として、基板表面の凹部の深さが所定の深さ(例えば、1.0nm以下)になるよう研磨された基板を準備する。
(ii)砥粒が基板表面上に一層に配置されるような濃度、例えば、下記式により算出される砥粒濃度の切削深さ測定用研磨液を準備する。
[砥粒濃度の算出方法]
粒子1個換算の質量(g/個)=1個換算の体積(cm3/個)×粒子の比重(g/cm3)
粒子1個換算の断面積=π×[平均二次粒子径(cm)/2]2
砥粒濃度(質量%)=研磨パッドの表面積(cm2)×[粒子1個換算の質量(g/個)/粒子1個換算の断面積(cm2/個)]/[研磨液流量(g/min)×研磨時間(min)]×100
(iii)切削深さ用研磨液を用いて被研磨基板の研磨対象面を所定時間(例えば、30秒間)研磨する。研磨条件としては、例えば、実施例に記載の条件が挙げられる。
(iv)研磨後の基板表面における、砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値を切削深さとして算出する。砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本開示に係る製造方法の研磨工程において、切削深さは、研磨速度向上の観点から、5nm以上であって、6nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、そして、スクラッチ低減の観点から、25nm以下であって、15nm以下が好ましく、9nm以下がより好ましい。前記切削深さは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、一実施形態において、5nm以上25nm以下であって、6nm以上15nm以下が好ましく、7nm以上15nm以下がより好ましい。さらに、前記切削深さは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、他の実施形態において、5nm以上25nm以下であって、5nm以上9nm以下又は10nm以上25nm以下が好ましく、6nm以上9nm以下又は10nm以上20nm以下がより好ましく、7nm以上9nm以下又は10nm以上17nm以下が更に好ましい。
[研磨液組成物]
本開示に係る製造方法の研磨工程に使用する研磨液組成物(以下、「研磨液組成物I」ともいう)は、砥粒及び水を含有する。
[砥粒]
研磨液組成物I中の砥粒は、例えば、切削深さが上述した範囲となる砥粒が挙げられる。砥粒の使用形態としては、例えば、粉末状やスラリー状(分散液)が挙げられ、研磨液組成物Iの製造容易性の観点から、スラリー状が好ましい。したがって、本開示は、磁気ディスク基板研磨用の砥粒であって、前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となる粒子である、砥粒に関する。さらに、本開示は、磁気ディスク基板研磨用砥粒を含むスラリー(分散液)であって、前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となる粒子である、スラリー(分散液)に関する。
前記砥粒としては、例えば、アルミナ粒子、シリカ粒子が挙げられ、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、好ましくはシリカ粒子である。シリカ粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、及びそれらを表面修飾したシリカが挙げられ、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、好ましくはコロイダルシリカである。
前記コロイダルシリカは、例えば、珪酸アルカリ水溶液を原料とした粒子成長による方法(以下、「水ガラス法」ともいう)、及び、アルコキシシランの加水分解物の縮合による方法(以下、「ゾルゲル法」)ともいう)により得たものが挙げられ、製造容易性及び経済性の観点から、好ましくは水ガラス法により得たものである。水ガラス法及びゾルゲル法により得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって製造できる。前記沈降法シリカは、沈降法により得られるシリカ粒子であり、製造方法については後述する。
前記砥粒として含まれるシリカ粒子は、焼成シリカ又は焼成シリカを解砕したもの(以下、これらをまとめて「焼成シリカ」ともいう)であってもよい。焼成シリカとは、例えば、上述したシリカ(コロイダルシリカを除く)を焼成することにより得たものが挙げられる。解砕とは、細かい粒子が集まって一塊になっているものをほぐして細かくすることをいう。前記砥粒中の焼成シリカの含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、50質量%未満が好ましく、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
<非球状シリカ粒子A>
前記砥粒は、シリカ粒子として、好ましくは非球状シリカ粒子A(以下、「粒子A」ともいう)を含有する。粒子Aとしては、例えば、切削深さが上述した範囲内となる粒子が挙げられる。
粒子Aの平均球形度は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.60以上が好ましく、0.63以上がより好ましく、そして、0.85以下が好ましく、0.80以下が好ましく、0.75以下がより好ましい。本開示において、粒子Aの平均球形度は、研磨液組成物Iが含有する少なくとも500個の粒子Aの球形度の平均値である。粒子Aの球形度は、例えばTEMによる観察及び画像解析ソフト等を用いて、粒子Aの投影面積Sと投影周囲長Lとを求め、以下の式から算出できる。
球形度=4π×S/L2
個々の粒子Aの球形度は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.60以上が好ましく、0.63以上がより好ましく、そして、0.85以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.75以下が更に好ましい。
粒子Aの平均短径は、研磨速度向上の観点から、100nm以上が好ましく、110nm以上がより好ましく、150nm以上が更に好ましく、180nm以上が更により好ましく、そして、スクラッチ低減の観点から、500nm以下が好ましく、450nm以下がより好ましく、420nm以下が更に好ましく、400nm以下が更に好ましく、350nm以下が更に好ましく、300nm以下が更に好ましく、250nm以下が更に好ましい。本開示において、粒子Aの平均短径は、研磨液組成物Iが含有する少なくとも500個の粒子Aの短径の平均値である。粒子Aの短径は、例えばTEMによる観察及び画像解析ソフト等を用いて、投影された粒子Aの画像に外接する最小の長方形を描いたときの、前記長方形の短辺の長さである。
粒子AのBET比表面積は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、50m2/g以下が好ましく、40m2/g以下がより好ましく、30m2/g以下が更に好ましく、そして、5m2/g以上が好ましく、10m2/g以上がより好ましく、20m2/g以上が更に好ましく、25m2/g以上が更に好ましい。本開示において、BET比表面積は、窒素吸着法(以下、「BET法」ともいう)により算出できる。具体的には、実施例に記載の測定方法により算出できる。
粒子Aの平均一次粒子径D1Aは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、60nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、75nm以上がより好ましく、80nm以上が更に好ましく、そして、250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、180nm以下が更に好ましい。
本開示において、粒子Aの平均一次粒子径D1Aは、BET比表面積S(m2/g)を用いて、下記式から算出できる。具体的には、実施例に記載の測定方法により算出できる。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
粒子Aの平均二次粒子径D2Aは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、150nm以上が好ましく、160nm以上がより好ましく、170nm以上が更に好ましく、180nm以上が更に好ましく、そして、580nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましく、350nm以下が更に好ましく、300nm以下が更に好ましく、250nm以下が更に好ましく、200nm以下が更に好ましい。
本開示において、粒子Aの平均二次粒子径D2Aとは、動的光散乱法により測定される散乱強度分布に基づく体積基準の平均粒子径をいう。本開示において「散乱強度分布」とは、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)又は準弾性光散乱(QLS:Quasielastic Light Scattering)により求められるサブミクロン以下の粒子の体積換算の粒径分布のことをいう。本開示における粒子Aの平均二次粒子径D2Aは、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。
粒子Aの形状は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、粒子Aの二次粒子径よりも粒径が小さいシリカ粒子を前駆体粒子として、複数の前駆体粒子が、凝集又は融着した形状である。粒子Aの種類としては、金平糖型のシリカ粒子Aa、異形型のシリカ粒子Ab、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Ac、及び沈降法シリカAdから選ばれる少なくとも1種のシリカ粒子であることが好ましく、異形型のシリカ粒子Ab及び沈降法シリカ粒子Adがより好ましい。粒子Aは、1種類の非球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の非球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。
本開示において、金平糖型のシリカ粒子Aa(以下、「粒子Aa」ともいう)は、球状の粒子表面に特異な疣状突起を有するシリカ粒子をいう(図1参照)。粒子Aaは、好ましくは、最も大きい前駆体粒子a1と、粒径が前駆体粒子a1の1/5以下である1個以上の前駆体粒子a2とが、凝集又は融着した形状である。粒子Aaは、好ましくは粒径の小さい複数の前駆体粒子a2が粒径の大きな1個の前駆体粒子a1に一部埋没した状態である。粒子Aaは、例えば、特開2008-137822号公報に記載の方法により、得られうる。前駆体粒子の粒径は、TEM等による観察画像において1個の前駆体粒子内で測定される円相当径、すなわち、前駆体粒子の投影面積と同じ面積である円の長径として求められうる。異形型のシリカ粒子Ab、及び、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Acにおける前駆体粒子の粒径も同様に求めることができる。
本開示において、異形型のシリカ粒子Ab(以下、「粒子Ab」ともいう)は、2個以上の前駆体粒子、好ましくは2個以上10個以下の前駆体粒子が凝集又は融着した形状のシリカ粒子をいう(図2参照)。粒子Abは、好ましくは、最も小さい前駆体粒子の粒径を基準にして、粒径が1.5倍以内の2個以上の前駆体粒子が、凝集又は融着した形状である。粒子Abは、例えば、特開2015-86102号公報に記載の方法により、得られうる。
本開示において、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Ac(以下、「粒子Ac」ともいう)は、前記粒子Abを前駆体粒子c1とし、最も大きい前駆体粒子c1と、粒径が前駆体粒子c1の1/5以下である1個以上の前駆体粒子c2とが、凝集又は融着した形状である。
粒子Aa、粒子Ab及び粒子Acの製造方法としては、例えば、水ガラス法、ゾルゲル法、及び粉砕法が挙げられ、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、水ガラス法が好ましい。
本開示において、沈降法シリカ粒子Ad(以下、「粒子Ad」ともいう)は、沈降法により製造されたシリカ粒子をいう。粒子Adの形状は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、複数の一次粒子が凝集した形状が好ましく、図3に示されるような、比較的粒径の大きい複数の一次粒子が凝集した形状がより好ましい。
粒子Adの製造方法としては、例えば、東ソー研究・技術報告 第45巻(2001)第65~69頁に記載の方法等の公知の方法が挙げられる。粒子Adの製造方法の具体例としては、珪酸ナトリウム等の珪酸塩と硫酸等の鉱酸との中和反応によりシリカ粒子を析出させる沈降法が挙げられる。前記中和反応を比較的高温でアルカリ性の条件で行うことが好ましく、これにより、シリカの一次粒子の成長が早く進行し、一次粒子がフロック状に凝集して沈降し、好ましくはこれをさらに粉砕することで、粒子Adが得られる。
粒子Aは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、粒子Aa、Ab、Ac及びAdから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、粒子Ab及び粒子Adから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。粒子A中の粒子Aa、Ab、Ac及びAdの合計量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が更により好ましく、実質的に100質量%が更により好ましい。
研磨液組成物I中の粒子Aの含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
<球状シリカ粒子B>
研磨液組成物Iは、砥粒として前記粒子Aを含有する場合、好ましくは砥粒として球状シリカ粒子B(以下、「粒子B」ともいう)をさらに含有することができる。粒子Bは、例えば、切削深さが上述した範囲内となる粒子が挙げられる。
粒子Bの平均球形度は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.85以上が好ましく、0.87以上がより好ましく、そして、同様の観点から、1.00以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。個々の粒子Bの球形度は、0.85以上が好ましく、0.87以上がより好ましく、そして、1.00以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。粒子Bの平均球形度及び球形度は、粒子Aと同じ方法で算出できる。
粒子Bの平均短径は、研磨速度向上の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、スクラッチ低減の観点から、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、110nm以下が更に好ましい。粒子Bの平均短径は、粒子Aと同じ方法で算出できる。
粒子Aの平均短径は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、粒子Bの平均短径より大きいことが好ましい。研磨液組成物I中の粒子Bの平均短径に対する粒子Aの平均短径の比(粒子Aの平均短径)/(粒子Bの平均短径)は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、1.4以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、5.6以下が好ましく、5.0以下が好ましく、4.7以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましい。
粒子Bの平均一次粒子径D1Bは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。粒子Bの平均一次粒子径D1Bは、粒子Aと同じ方法で算出できる。
粒子Bの平均二次粒子径D2Bは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、120nm以下が更に好ましい。粒子Bの平均二次粒子径D1Bは、粒子Aと同じ測定方法により算出できる。
粒子Bとしては、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられる。粒子Bとしては、例えば、一般的に市販されているコロイダルシリカが該当し得る。研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、粒子Bは、コロイダルシリカが好ましい。粒子Bは、1種類の球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。
粒子Bの製造方法としては、例えば、水ガラス法、ゾルゲル法、及び粉砕法が挙げられ、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、水ガラス法が好ましい。粒子Bの使用形態としては、スラリー状であることが好ましい。
研磨液組成物I中の粒子Bの含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、そして、経済性の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
研磨液組成物I中の砥粒が粒子A及び粒子Bを含む場合、研磨液組成物I中の粒子Bの含有量に対する粒子Aの含有量の比A/B(質量比)は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、25/75以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、99/1以下が好ましく、90/10以下がより好ましく、75/25以下が更に好ましい。粒子Aが2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせの場合、粒子Aの含有量はそれらの合計の含有量をいう。粒子Bの含有量も同様である。
研磨液組成物I中の砥粒が前記粒子A及び前記粒子B以外の他の砥粒粒子を含有する場合、その他の砥粒粒子としては、例えば、切削深さが上述した範囲内となる粒子が挙げられる。そして、研磨液組成物I中の砥粒全体に対する粒子Aと粒子Bの合計の含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、98.0質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99.0質量%以上が更に好ましく、99.5質量%以上が更により好ましく、99.8質量%以上が更により好ましく、実質的に100質量%が更により好ましい。
[pH調整剤]
研磨液組成物Iは、研磨速度向上、スクラッチ低減、及び、pHを調整する観点から、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、同様の観点から、酸及び塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸としては、例えば、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、アミド硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸等の無機酸;有機リン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;等が挙げられる。中でも、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、リン酸、硫酸、及び1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、硫酸及びリン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リン酸が更に好ましい。
塩としては、例えば、上記の酸と、金属、アンモニア及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種との塩が挙げられる。上記金属の具体例としては、周期表の1~11族に属する金属が挙げられる。これらの中でも、上記の酸の塩としては、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、上記の酸と、1族に属する金属又はアンモニアとの塩が好ましい。
研磨液組成物I中のpH調整剤の含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が更により好ましい。
[酸化剤]
研磨液組成物Iは、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、酸化剤を含有してもよい。酸化剤としては、例えば、同様の観点から、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩等が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、研磨速度向上の観点、被研磨基板の表面に金属イオンが付着しない観点、及び入手容易性の観点から、過酸化水素がより好ましい。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
研磨液組成物I中の酸化剤の含有量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、4.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
[水]
研磨液組成物Iは、媒体として水を含有する。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。研磨液組成物I中の水の含有量は、研磨液組成物の取扱いが容易になる観点から、61質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。
[その他の成分]
研磨液組成物Iは、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。他の成分としては、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。前記その他の成分は、本開示の効果を損なわない範囲で研磨液組成物I中に配合されることが好ましく、研磨液組成物I中の前記その他の成分の含有量は、0質量%以上が好ましく、0質量%超がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[アルミナ砥粒]
研磨液組成物Iは、アルミナ粒子の基板への突き刺さりを低減させたい場合、アルミナ砥粒の含有量が、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましく、アルミナ砥粒を実質的に含まないことが更に好ましい。本開示において「アルミナ砥粒を実質的に含まない」とは、アルミナ粒子を含まないこと、砥粒として機能する量のアルミナ粒子を含まないこと、又は、研磨結果に影響を与える量のアルミナ粒子を含まないこと、を含みうる。研磨液組成物I中のアルミナ粒子の含有量は、研磨液組成物I中の砥粒全量に対し、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%であることが更により好ましい。
[pH]
研磨液組成物IのpHは、研磨速度の向上及びスクラッチ低減の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、1.0以上が更により好ましく、1.2以上が更により好ましく、1.4以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、6.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましく、2.5以下が更により好ましく、2.0以下が更により好ましい。pHの調整は、前述の酸や公知のpH調整剤を用いて、調整することが好ましい。上記のpHは、25℃における研磨液組成物のpHであり、pHメータを用いて測定でき、好ましくは、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して30秒後の数値である。
[研磨液組成物の調製]
研磨液組成物Iは、例えば、粒子A及び水と、更に所望により、粒子B、pH調整剤、酸化剤及びその他の成分から選ばれる少なくとも1種とを公知の方法で配合することにより調製できる。例えば、研磨液組成物Iは、少なくとも粒子A及び水を配合してなるものとすることができる。本開示において「配合する」とは、粒子A及び水、並びに必要に応じて粒子B、pH調整剤、酸化剤及びその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。研磨液組成物Iの調製の際の各成分の配合量は、上述した研磨液組成物I中の各成分の含有量と同じとすることができる。
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨液組成物を研磨に使用する時点での前記各成分の含有量をいう。したがって、研磨液組成物Iが濃縮物として作製された場合には、前記各成分の含有量はその濃縮分だけ高くなりうる。
[被研磨基板]
本開示における被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板であり、例えば、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板が挙げられる。本開示において「Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板」とは、アルミニウム合金基材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理したものをいう。被研磨基板の表面を本開示における研磨工程で研磨した後、スパッタ等でその基板表面に磁性層を形成する工程を行うことにより、磁気ディスクを製造できうる。被研磨基板の形状は、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状が挙げられ、好ましくはディスク状の被研磨基板である。ディスク状の被研磨基板の場合、その外径は例えば10~120mmであり、その厚みは例えば0.5~2mmである。
[研磨工程]
本開示に係る製造方法の研磨工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤で被研磨基板を挟み込み、前記研磨液組成物Iを研磨面に供給し、圧力を加えながら研磨パッドや被研磨基板を動かすことにより、被研磨基板を研磨する。本開示における研磨工程は、切削深さが上述した範囲内となるように研磨条件を調整することを含むことができ、例えば、3kPa以上30kPa以下の研磨荷重において、切削深さが上述した範囲となる砥粒を選択することを含むことができる。
前記研磨工程における研磨荷重は、研磨速度及びスクラッチ低減の観点から、30kPa以下が好ましく、25kPa以下がより好ましく、20kPa以下が更に好ましく、18kPa以下が更により好ましく、16kPa以下が更により好ましく、14kPa以下が更により好ましく、そして、3kPa以上が好ましく、5kPa以上がより好ましく、7kPa以上が更に好ましく、8kPa以上が更により好ましく、9kPa以上が更により好ましい。本開示において「研磨荷重」とは、研磨時に被研磨基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。前記研磨荷重の調整は、定盤や基板等への空気圧や重りの負荷によって行うことができる。
前記研磨工程における、被研磨基板1cm2あたりの研磨量は、研磨速度向上及びスクラッチ低減の観点から、0.20mg以上が好ましく、0.30mg以上がより好ましく、0.40mg以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2.50mg以下が好ましく、2.00mg以下がより好ましく、1.60mg以下が更に好ましい。
前記研磨工程における、被研磨基板1cm2あたりの研磨液組成物Iの供給速度は、経済性の観点から、0.25mL/分以下が好ましく、0.20mL/分以下がより好ましく、0.15mL/分以下が更に好ましく、0.10mL/分以下が更により好ましく、そして、研磨速度向上の観点から、0.01mL/分以上が好ましく、0.03mL/分以上がより好ましく、0.05mL/分以上が更に好ましい。
前記研磨工程において、研磨液組成物Iを研磨機へ供給する方法としては、例えば、ポンプ等を用いて連続的に供給を行う方法が挙げられる。研磨液組成物Iを研磨機へ供給する際は、全ての成分を含んだ1液で供給する方法の他、研磨液組成物の保存安定性等を考慮して、複数の配合用成分液に分け、2液以上で供給することもできる。後者の場合、例えば供給配管中又は被研磨基板上で、上記複数の配合用成分液が混合され、本開示における研磨液組成物Iとなる。
[研磨方法]
本開示は、砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨することを含み、前記研磨において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さであり、前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法(以下、「本開示に係る研磨方法」ともいう)に関する。本開示に係る研磨方法を使用することにより、高研磨速度を確保しつつ、スクラッチが低減された磁気ディスク基板を高い基板収率で、生産性よく製造できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示に係る製造方法と同じようにすることができる。本開示に係る研磨方法は、最終の基板品質をより向上させる観点から、粗研磨工程に適用されることが好ましい。
本開示に係る製造方法及び研磨方法は、図4に示すような、粗研磨工程を行う第一の研磨機1と、洗浄工程を行う洗浄ユニット2と、仕上げ研磨工程を行う第二の研磨機3とを備える磁気ディスク基板の研磨システムにより行うことができる。したがって、本開示は、本開示における研磨液組成物Iを用いて被研磨基板を研磨(粗研磨)する研磨機1と、研磨機1で研磨した基板を洗浄する洗浄ユニット2と、研磨液組成物IIを用いて洗浄後の基板を研磨(仕上げ研磨)する研磨機3とを備える磁気ディスク基板の研磨システムに関する。仕上げ研磨で用いられる研磨液組成物IIは、仕上げ研磨後の突起欠陥低減の観点から、砥粒としてシリカ粒子を含有することが好ましい。シリカ粒子は、仕上げ研磨後の長波長うねり低減の観点から、好ましくはコロイダルシリカである。仕上げ研磨に用いられる研磨液組成物IIは、仕上げ研磨後の突起欠陥を低減する観点から、アルミナ砥粒を実質的に含まないことが好ましい。本開示において「長波長うねり」とは、500~5000μmの波長により観測されるうねりをいう。研磨後の基板表面の長波長うねりが低減されることにより、磁気ディスクドライブにおいて磁気ヘッドの浮上量を低くすることができ、磁気ディスクの記録密度向上が可能となる。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
下記のとおりに研磨液組成物Iを調製し、下記の条件の被研磨基板の研磨を行った。研磨液組成物Iの調製方法、使用した添加剤、各パラメータの測定方法、研磨条件(研磨方法)及び評価方法は以下のとおりである。
1.研磨液組成物Iの調製
表1に記載の砥粒(非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、アルミナ砥粒)、酸(リン酸)、酸化剤(過酸化水素)、及び水を用い、表3に記載の実施例1~6及び比較例1~14の研磨液組成物Iを調製した。各研磨液組成物I中の各成分の含有量は、砥粒:5質量%、リン酸:1.5質量%、過酸化水素:0.8質量%とした。各研磨液組成物IのpHは1.6であった。砥粒に用いた非球状シリカ粒子Aのタイプは、異形型シリカ粒子及び沈降法シリカ粒子であった。表1において、A1、2、8~10の異形型シリカ粒子は、水ガラス法で製造されたもの(コロイダルシリカ)であり、A7の異形型シリカ粒子は、ゾルゲル法で製造されたもの(コロイダルシリカ)であり、A3~6の沈降法シリカ粒子は、沈降法により製造されたものである。砥粒に用いた球状シリカ粒子Bは、水ガラス法により製造されたもの(コロイダルシリカ)である。pHは、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定し、電極を研磨液組成物へ浸漬して30秒後の数値を採用した(以下、同様)。
Figure 0006997083000001
2.各パラメータの測定方法
[砥粒のBET比表面積の測定方法]
BET比表面積Sは、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁(0.1mgの桁)まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(島津製作所製 マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」)を用いてBET法により測定した。
[前処理]
スラリー状の砥粒をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させた。乾燥後の試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
[砥粒の平均一次粒子径の測定方法]
砥粒の平均一次粒子径は、上記BET比表面積S(m2/g)を用いて下記式から算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
[シリカ砥粒の平均二次粒子径の測定方法]
シリカ粒子をイオン交換水で希釈し、シリカ粒子を1質量%含有する分散液を作製した。そして、該分散液を下記測定装置内に投入し、シリカ粒子の体積粒度分布を得た。得られた体積粒度分布の累積体積頻度が50%となる粒径(Z-average値)を二次粒子径とした。
測定機器 :マルバーン ゼータサイザー ナノ「Nano S」
測定条件 :サンプル量 1.5mL
:レーザー He-Ne、3.0mW、633nm
:散乱光検出角 173°
[アルミナ砥粒の平均二次粒子径の測定方法]
ポイズ530(花王社製、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)を0.5質量%含有する水溶液を分散媒として、下記測定装置内に投入し、続いて透過率が75~95%になるようにサンプル(アルミナ粒子)を投入し、その後、5分間超音波を付与した後、粒径を測定した。
測定機器 :堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA920
循環強度 :4
超音波強度:4
[砥粒の形状、及び平均短径の測定方法]
砥粒粒子をTEM(日本電子社製「JEM-2000FX」、80kV、1~5万倍)で観察した写真をパーソナルコンピュータにスキャナで画像データとして取込み、解析ソフト(三谷商事「WinROOF(Ver.3.6)」)を用いて500個の粒子の投影画像データを解析した。そして、個々の粒子の短径を求め、短径の平均値(平均短径)を得た。
3.研磨試験
被研磨基板の研磨を下記工程(1)及び(2)に従い行った。各工程の条件を以下に示す。
(1)研磨工程:研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程。
(2)洗浄工程:工程(1)で得られた基板を洗浄する工程。
[被研磨基板]
被研磨基板は、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板を用いた。この被研磨基板は、厚み1.27mm、直径95mmであった。
[工程(1):研磨]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)
被研磨基板枚数:10枚
研磨液:実施例1~9及び比較例1~17の研磨液組成物I
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー)、厚み:1.0mm、平均気孔径:30μm、表面層の圧縮率:2.5%(Filwel社製「CR200」)
定盤回転数:35rpm
研磨荷重:表3~4に記載の設定値
研磨液供給量:100mL/分(被研磨基板面1cm2あたり、0.076mL/分に相当)
研磨時間:6分
[工程(2):洗浄]
工程(1)で得られた基板を、下記条件で洗浄した。
まず、0.1質量%のKOH水溶液からなるpH12のアルカリ性洗浄剤組成物の入った槽内に、工程(1)で得られた基板を5分間浸漬する。次に、浸漬後の基板を、イオン交換水で20秒間すすぎを行う。そして、すすぎ後の基板を洗浄ブラシがセットされたスクラブ洗浄ユニットに移送し洗浄する。
4.切削深さの測定
切削深さは、下記の測定方法により測定した。
まず、上述の研磨試験に用いた被研磨基板と同様の基板を用いて、公知の方法にて粗研磨及び仕上げ研磨を行い、基板表面の凹部の深さが1.0nm以下となる基板を予め作製した。作製した基板表面の凹部の深さは、光干渉型表面形状測定機「OptiFLAT III」(KLA Tencor社製)を用い、後述する切削深さ測定条件で測定した。
次に、作製した基板に対し、砥粒濃度を表2に記載した量とし、研磨時間を30秒とした以外は、表3~4に示す実施例1~9及び比較例1~17の工程(1)と同じ条件で研磨を行った。具体的な研磨条件を以下に示す。前記砥粒濃度は、砥粒が基板表面上に一層に配置されるような濃度であって、以下の方法で算出した。
次に、研磨後の基板表面における砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値を切削深さとして算出した。すなわち、研磨後の基板を前述の工程(2)と同様に洗浄後、光干渉型表面形状測定機「OptiFLAT III」(KLA Tencor社製)を用いて、任意の断面プロファイルを取ったときの凹部の深さの最大値を後述する切削深さ測定条件で測定した。そして、基板1面当たり5点ずつ測定し、基板4枚で合計20点の測定値の平均値を切削深さとして算出し、表3~4に示した。
<研磨条件>
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)
研磨パッド:Filwel社製「CR200」
基板枚数:4枚
研磨荷重:表3~4に記載の設定値(3.6~19.3kPa)
定盤回転数:35rpm
研磨液の流量:100mL/分(基板面1cm2あたり、0.190mL/分に相当)
研磨時間:30秒
[砥粒濃度の算出方法]
切削深さは、砥粒(粒子)が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したときの凹部の深さをいう。前記条件は、研磨液組成物中の砥粒の濃度と、研磨液組成物の量とを調整することで、設定できる。ここでは、研磨液組成物中の砥粒が、図5に示すように、複数の砥粒(粒子)が、互いに接しかつ基板厚み方向に重ならないように研磨パッド上に配置されると仮定し、前記研磨液組成物中の砥粒の濃度を、下記式に基づいて算出した。算出した値を表2に示した。
<砥粒濃度の計算式>
・研磨パッドの表面積(両面):5526cm2
・シリカの比重:2.2g/cm3
・アルミナの比重:4.0g/cm3
・砥粒の粒子径:平均二次粒子径(cm)
・研磨液組成物の流量:100mL/分
・研磨時間:30秒間
・研磨液組成物の質量:50g (※研磨液の比重を1とした)
・粒子1個換算の質量(g/個)
=1個換算の体積(cm3/個)×粒子の比重(g/cm3)
=(4/3)×π×(平均二次粒子径/2)3×粒子の比重 (g/cm3)
・粒子1個換算の断面積(cm2/個)=π×(平均二次粒子径/2)2
・砥粒濃度(質量%)
=5526(cm2)×粒子1個換算の質量(g/個)/粒子1個換算の断面積(cm2/個)/50×100
<切削深さ測定条件>
測定機器:光干渉型表面形状測定機「OptiFLAT III」(KLA Tencor社製)
Radius Inside/Out:14.87mm/47.83mm
Center X/Y:55.44mm/53.38mm
Low Cutoff:2.5mm
Inner Mask:18.50mm
Outer Mask:45.5mm
Long Period:2.5mm
Wa Correction:0.9
Rn Correction:1.0
No Zernike Terms:8
Figure 0006997083000002
5.評価方法
[工程(1)の研磨速度の測定方法及び評価]
研磨前後の各基板1枚当たりの重さを計り(Sartorius社製、「BP-210S」)を用いて測定し、各基板の質量変化から質量減少量を求めた。全10枚の平均の質量減少量を研磨時間で割った値を研磨速度として下記式により算出し、さらに実施例1を100.0とした研磨速度の相対値を算出した。その結果を表3~4に示す。
質量減少量(g)={研磨前の質量(g)-研磨後の質量(g)}
研磨速度(mg/min)=質量減少量(mg)/研磨時間(min)
研磨速度の評価基準を以下に示す。
<評価基準>
研磨速度:評価
20mg/min以上:「A:研磨速度が良好で、基板収率向上が期待できる」
10mg/min以上20mg/min未満:「B:実生産には改良が必要」
10mg/min未満:「C:基板収率が大幅に低下する」
[工程(2)後のスクラッチの評価方法]
測定機器:光学製顕微鏡 本体BX60M、デジタルカメラDP70(オリンパス社製)
評価:対物レンズ200倍、中間レンズ2.5倍を使用し、暗視野観察(視野550×420μm)により、スクラッチ数を測定した。上記観察は、工程(2)後の10枚の基板から任意に2枚を選択し、基板の両面について中心から30mmの位置を90°ごとの各4点、計16点観察した。観察した画像をパーソナルコンピュータ(PC)に取り込み、画像解析ソフトWinRoof(三谷商事)にてスクラッチ数を(実施例1を100とした相対値)を算出した。その結果を表3~4に示す。
スクラッチ数の評価基準を以下に示す。
<評価基準>
スクラッチ数(相対値):評価
0超150以下 :「A:極めて発生が抑制され、更なる基板収率向上が期待できる」
150超175以下:「B:発生が抑制され、基板収率向上が期待できる」
175超200以下:「C:実生産可能」
200超 :「D:基板収率が大幅に低下する」
[アルミナ残留の評価方法]
工程(2)後の各基板の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製:S-4800)にて1万倍で観察し、アルミナ残留物の有無を確認した。
6.結果
各評価の結果を表3~4に示した。
Figure 0006997083000003
Figure 0006997083000004
表3~4に示されるように、切削深さが5nm以上25nm以下の実施例1~9では、切削深さが5nm未満の比較例1~11及び15~16、切削深さが25nm超の比較例12~14及び17に比べて、高研磨速度を確保しつつ、スクラッチが低減された。
本開示によれば、高い研磨速度を確保しつつスクラッチを低減できるから、磁気ディスク基板の製造の生産性を向上させつつ基板収率を向上できる。本開示は、磁気ディスク基板の製造に好適に用いることができる。
1…第一研磨機、2…洗浄ユニット、3…第二研磨機

Claims (11)

  1. 砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、
    前記被研磨基板は、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板であり、
    前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となる粒子であり、
    前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さであって、前記砥粒が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したときの凹部の深さである、
    磁気ディスク基板の製造方法。
    ここで、切削深さは、以下の工程(i)~工程(iv)により測定する。
    (i)被研磨基板として、基板表面の凹部の深さが1.0nm以下になるよう研磨された基板を準備する。
    (ii)下記式により算出される砥粒濃度の切削深さ測定用研磨液を準備する。
    粒子1個換算の質量(g/個)=1個換算の体積(cm 3 /個)×粒子の比重(g/cm 3 )
    粒子1個換算の断面積=π×[平均二次粒子径(cm)/2] 2
    砥粒濃度(質量%)=研磨パッドの表面積(cm 2 )×[粒子1個換算の質量(g/個)/粒子1個換算の断面積(cm 2 /個)]/[研磨液流量(g/min)×研磨時間(min)]×100
    (iii)切削深さ用研磨液を用いて被研磨基板の研磨対象面を30秒間研磨する。
    (iv)研磨後の基板表面における、砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値を切削深さとして算出する。
  2. 前記砥粒は、非球状シリカ粒子Aを含む、請求項に記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  3. 前記非球状シリカ粒子Aの平均短径が、100nm以上である、請求項に記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  4. 前記非球状シリカ粒子Aの平均二次粒子径が、170nm以上である、請求項又はに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  5. 前記砥粒中の焼成シリカの含有量が、50質量%未満である、請求項1からのいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  6. 前記研磨液組成物中のアルミナ砥粒の含有量が、0.1質量%以下である、請求項1からのいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  7. 前記研磨工程が、粗研磨工程である、請求項1からのいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  8. 砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、
    前記研磨工程において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、
    前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さであって、前記砥粒が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したときの凹部の深さである、磁気ディスク基板の製造方法。
    ここで、切削深さは、以下の工程(i)~工程(iv)により測定する。
    (i)被研磨基板として、基板表面の凹部の深さが1.0nm以下になるよう研磨された基板を準備する。
    (ii)下記式により算出される砥粒濃度の切削深さ測定用研磨液を準備する。
    粒子1個換算の質量(g/個)=1個換算の体積(cm 3 /個)×粒子の比重(g/cm 3 )
    粒子1個換算の断面積=π×[平均二次粒子径(cm)/2] 2
    砥粒濃度(質量%)=研磨パッドの表面積(cm 2 )×[粒子1個換算の質量(g/個)/粒子1個換算の断面積(cm 2 /個)]/[研磨液流量(g/min)×研磨時間(min)]×100
    (iii)切削深さ用研磨液を用いて被研磨基板の研磨対象面を30秒間研磨する。
    (iv)研磨後の基板表面における、砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値を切削深さとして算出する。
  9. 前記砥粒は、切削深さが5nm以上25nm以下となるシリカ粒子である、請求項に記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  10. 前記研磨工程は、切削深さが5nm以上25nm以下となるように研磨条件を調整することを含む、請求項1から9のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  11. 砥粒及び水を含有する研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨することを含み、
    前記研磨において、切削深さが5nm以上25nm以下であり、
    前記切削深さは、砥粒が基板表面を切削するときに生じる凹部の深さであって、前記砥粒が基板表面上に一層に配置されるような条件で研磨したときの凹部の深さであり、
    前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
    ここで、切削深さは、以下の工程(i)~工程(iv)により測定する。
    (i)被研磨基板として、基板表面の凹部の深さが1.0nm以下になるよう研磨された基板を準備する。
    (ii)下記式により算出される砥粒濃度の切削深さ測定用研磨液を準備する。
    粒子1個換算の質量(g/個)=1個換算の体積(cm 3 /個)×粒子の比重(g/cm 3 )
    粒子1個換算の断面積=π×[平均二次粒子径(cm)/2] 2
    砥粒濃度(質量%)=研磨パッドの表面積(cm 2 )×[粒子1個換算の質量(g/個)/粒子1個換算の断面積(cm 2 /個)]/[研磨液流量(g/min)×研磨時間(min)]×100
    (iii)切削深さ用研磨液を用いて被研磨基板の研磨対象面を30秒間研磨する。
    (iv)研磨後の基板表面における、砥粒粒子1個換算の凹部の深さの最大値の平均値を切削深さとして算出する。
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