JP2016027517A - 磁気ディスク基板用研磨液組成物 - Google Patents

磁気ディスク基板用研磨液組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】一態様において、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できる磁気ディスク基板の製造方法を提供する。【解決手段】一態様において、(1)研磨液組成物Iを用いた研磨工程、(2)得られた基板を洗浄する工程、及び、(3)得られた基板をシリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、工程(1)と(3)を別の研磨機で行い、研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、質量比(A/B)が80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子A及びBの合計の含有量が98.0質量%を超え、非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、非球状シリカ粒子Aの粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、酸が、リン酸類、ホスホン酸又は有機ホスホン酸である製造方法。【選択図】なし

Description

本開示は、磁気ディスク基板用研磨液組成物、磁気ディスク基板の研磨方法、及び、磁気ディスク基板の製造方法に関する。
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化のためには、磁気信号の検出感度を向上させる必要がある。そこで、磁気ヘッドの浮上高さをより低下させ、単位記録面積を縮小する技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、平滑性及び平坦性の向上(表面粗さ、うねり、端面ダレの低減)や表面欠陥低減(残留砥粒、スクラッチ、突起、ピット等の低減)が厳しく要求されている。このような要求に対して、より平滑で、傷が少ないといった表面品質向上と生産性の向上を両立させる観点から、ハードディスク基板の製造方法においては、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式が採用されることが多い。一般に、多段研磨方式の最終研磨工程、即ち、仕上げ研磨工程では、表面粗さの低減、スクラッチ、突起、ピット等の傷の低減という要求を満たすために、コロイダルシリカ粒子を含む仕上げ用研磨液組成物が使用され、仕上げ研磨工程より前の研磨工程(粗研磨工程ともいう)では、生産性向上の観点から、アルミナ粒子を含む研磨液組成物が使用される。しかしながら、アルミナ粒子を砥粒として使用した場合、アルミナ粒子の基板への突き刺さりによって、メディア・ドライブの欠陥を引き起こすことがある。
そこで、アルミナ粒子を含まず、シリカ粒子を砥粒とした研磨液組成物を粗研磨工程に用いることで、基板への粒子の突き刺さりの低減を可能とする磁気ディスク基板の製造方法が提案されている(特許文献1及び2)。
一方で、研磨液組成物に含まれる酸として、リン酸やホスホン酸が使用されることもある(特許文献3)。
さらに、シリカ粒子の研磨速度を向上させるため、複数の突起を表面に有するシリカ粒子(特許文献4)や、数珠状のシリカ粒子(特許文献5)が提案されている。
特開2014−29754号公報 特開2012−29755号公報 特開2003−147337号公報 特開2013−121631号公報 特開2001−11433号公報
磁気ディスク基板の研磨工程においてアルミナ粒子を使用しない粗研磨工程及び仕上げ研磨工程を採用すれば、残留アルミナ(例えば、アルミナ付着、アルミナ突き刺さり)を無くすことができるから突起欠陥が低減する。しかし、アルミナ粒子に換えてシリカ粒子で粗研磨工程を行う場合、長周期欠陥を除去できないという問題が新たに発生することが見出された。アルミナ粒子で粗研磨工程を行う場合には、一般に、長周期欠陥の問題は起らない。長周期欠陥の除去率は基板収率と相関性が高いため、粗研磨工程において長周期欠陥の除去率のより一層の向上が望まれる。
特許文献1は、所定のパラメータで規定される非球状シリカ粒子を砥粒として粗研磨を行えば、実質的にアルミナ粒子を含まない場合であっても、粗研磨の研磨時間を大幅に長期化することなく粗研磨後の長波長うねりを低減できることを開示する。しかしながら、長周期欠陥については、より一層の除去率の向上が望まれる。
そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、非球状シリカ粒子を砥粒とする粗研磨において、粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できる磁気ディスク基板用研磨液組成物を提供する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造方法あって、
(1)研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程、
(2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、
(3)工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、前記工程(1)と(3)を別の研磨機で行い、
(i)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、
(ii)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iにおいて、前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比A/Bが80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、
(iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、
(iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、
(v)前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、
(vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板の製造方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)〜(3)を含む、磁気ディスク基板の研磨方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)の研磨を行う第一の研磨機と、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法における工程(2)の洗浄を行う洗浄ユニットと、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法における工程(3)の研磨を行う第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システムに関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板用研磨液組成物であって、
砥粒、酸、酸化剤及び水を含み、
前記砥粒は、非球状シリカ粒子A及び球状シリカ粒子Bを含有し、
前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比A/Bが80/20以上99/1以下であり、
前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、
前記非球状シリカ粒子AのCV90が、20.0%以上40.0%以下であり、
前記球状シリカ粒子BのΔCV値が0%より上10%以下、かつ、前記球状シリカBのCV90が10.0%以上35.0%以下であり、
前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、
前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、
前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板用研磨液組成物に関する。
本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法は、アルミナ粒子を使用しないから粗研磨後及び仕上げ研磨後の突起欠陥を大幅に低減できる。そして、本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できるという効果が奏され、基板の生産性を維持しつつ、基板収率を向上しうる。
図1は、異形型コロイダルシリカ砥粒の電子顕微鏡(TEM)観察写真の一例である。 図2は、金平糖型コロイダルシリカ砥粒の電子顕微鏡(TEM)観察写真の一例である。 図3は、体積粒度分布を示すグラフである。 図4は、長周期欠陥(PED)を有する基板表面を光干渉型表面形状測定機で計測した結果の一例である。 図5は、研磨システムの一実施形態を説明する図である。 図6は、磁気ディスク基板の製造方法の研磨工程の一実施形態を説明する図である。
本開示は、所定の非球状シリカ粒子及び球状シリカ粒子を砥粒として含有する研磨液組成物を用いた粗研磨工程において、該研磨液組成物に所定の酸(リン酸又はホスホン酸)を使用すると、長周期欠陥の除去率が向上し、さらに、研磨速度を大きく損ねることがないという知見に基づく。一般に、磁気ディスク基板の製造において、長周期欠陥が低減できれば基板収率が向上する。よって、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造において、生産性を維持しつつ、基板収率を向上できる。
所定の非球状シリカ粒子及び球状シリカ粒子と所定の酸との組合せで研磨速度を大きく損ねることなく長周期欠陥の除去率が向上するメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、非球状シリカ粒子はその表面形状から、充填された状態では球状シリカ粒子に比べて空隙が多い。この空隙に入る特定の大きさの粒子を配合すれば、複数の砥粒成分を含む混合系では、より砥粒の充填率が高まり、研磨時の非球状シリカ粒子特有の摩擦抵抗が緩和されるため、長周期欠陥の除去率を向上できると推定される。そして、砥粒の充填率が高まることで、基板への切削面積が増加、もしくは研磨時に印加された荷重がより基板に伝わりやすくなるため、研磨速度を維持、あるいは向上できると考えられる。さらに、研磨液組成物中にリン酸又はホスホン酸が存在することで、リン酸又はホスホン酸の腐食抑制効果により、少ない研磨量で長周期欠陥、とりわけ、PED(polish enhanced defect)の低減効率が向上すると考えられる。つまり、特定形状のシリカを用いることにより研磨速度が向上するとともにリン酸等の特定の酸を用いることにより欠陥が抑制されることにより研磨対象基板の高品質化が達成される。加えて、研磨工程面での利点として、充填率の高い砥粒を用い、且つ腐食抑制効果を有する特定の酸を用いることで、より効率良く基板に研磨液組成物が作用しうるため、研磨液組成物の供給量を従来のそれより減らしうることが考えられる。但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
すなわち、本開示は一態様において、磁気ディスク基板の製造方法あって、
(1)研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程、
(2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、
(3)工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、前記工程(1)と(3)を別の研磨機で行い、
(i)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、
(ii)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iにおいて、前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比(A/B)が80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、
(iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、
(iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、
(v)前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、
(vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板の製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。本開示に係る製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、粗研磨における研磨速度を大きく損ねることなく、仕上げ研磨後の突起欠陥を大幅に低減でき、かつ、粗研磨後の基板表面の長周期欠陥を低減できるという効果が奏されうる。
本開示において「長周期欠陥」とは、Ni―Pめっきアルミニウム基板の製造工程で発生するPED(polish enhanced defect)及びグラインド傷を含む。PEDは、アルミニウム基板にめっき成膜する工程におけるアニール工程で、基板表面に付着した水や異物に起因するアニール不足の部分をいう。グラインド傷は、めっき前のアルミニウム基板をグラインドする工程(グラインド工程)におけると砥石の削り痕をいう。長周期欠陥及びその除去率は、一又は複数の実施形態において、実施例に記載の測定器を用いて測定できる。
本開示において、「突起欠陥」は、主に、粗研磨工程後及び仕上げ研磨工程後の残留砥粒、砥粒付着、及び砥粒突き刺さりに由来すると考えられる基板表面の欠陥のことをいう。基板表面の突起欠陥は、例えば、研磨後に得られる基板表面の顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察等、表面欠陥検査装置により評価することができ、具体的には実施例に記載した方法で評価できる。
[非球状シリカ粒子A]
工程(1)で用いられる研磨液組成物Iは、上述したように、非球状シリカ粒子Aを含有する。一又は複数の実施形態において、非球状シリカ粒子Aとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられる。研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、非球状シリカ粒子Aとしては、コロイダルシリカが好ましく、下記の特定の形状をもったコロイダルシリカがより好ましい。非球状シリカ粒子Aは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、火炎溶融法やゾルゲル法で製造されたものでも構わないが、水ガラス法で製造されたシリカ粒子であることが好ましい。
[非球状シリカ粒子Aの形状]
非球状シリカ粒子Aの形状は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、複数の粒子(例えば、2以上の粒子)が凝集又は融着した形状である。非球状シリカ粒子Aは、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、及び異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3からなる群から選択される少なくとも1種類のシリカ粒子であることが好ましく、異形型のシリカ粒子A2がより好ましい。
本開示において、金平糖型のシリカ粒子A1は、一又は複数の実施形態において、球状の粒子表面に特異な疣状突起を有するシリカ粒子をいう(図2参照)。シリカ粒子A1は、一又は複数の実施形態において、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が5倍以上異なる2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状である。好ましくは粒径が小さい粒子が粒径が大きな粒子に一部埋没した状態である。前記粒径は、電子顕微鏡(TEMなど)観察画像において1つの粒子内で測定される円相当径、すなわち、粒子の投影面積と同じ面積の等価円の長径として求められうる。シリカ粒子A2及びシリカ粒子A3における粒径も同様に求めることができる。
本開示において、異形型のシリカ粒子A2は、2つ以上の粒子、好ましくは2〜10個の粒子が凝集又は融着した形状のシリカ粒子をいう(図1参照)。シリカ粒子A2は、一又は複数の実施形態において、最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状である。
本開示において、異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3は、2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状の粒子いう。シリカ粒子A3は、一又は複数の実施形態において、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した粒子に、さらに、凝集又は融着した前記粒子の最も小さいシリカ粒子の粒径を基準にして粒径が1/5以下の小さな粒子が凝集又は融着した形状である。
非球状シリカ粒子Aは、一又は複数の実施形態において、シリカ粒子A1、A2、A3のいずれか1つ、シリカ粒子A1、A2、A3のいずれか2つ、又は、シリカ粒子A1、A2、及びA3のすべてを含む。非球状シリカ粒子A中のシリカ粒子A1、A2、及びA3の合計が占める割合(含有量)は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上又は実質的に100質量%である。
[非球状シリカ粒子AのΔCV値]
非球状シリカ粒子AのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、0.0%より上であることが好ましく、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上、更により好ましくは0.4%以上である。非球状シリカ粒子AのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、10.0%未満であることが好ましく、より好ましくは8.0%以下、更に好ましくは7.0%以下、更により好ましくは4.0%以下である。非球状シリカ粒子AのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、0.0%より上10.0%未満が好ましく、より好ましくは0.2%以上8.0%以下、更に好ましくは0.3%以上7.0%以下、更により好ましくは0.4%以上4.0%以下である。
本開示においてシリカ粒子のΔCV値は、動的光散乱法により検出角30°(前方散乱)の散乱強度分布に基づき測定される粒径の標準偏差を、動的光散乱により検出角30°の散乱強度分布に基づき測定される平均粒径で除して100を掛けた変動係数の値(CV30)と、動的光散乱法により検出角90°(側方散乱)の散乱強度分布に基づき測定される粒径の標準偏差を、動的光散乱により検出角90°の散乱強度分布に基づき測定される平均粒径で除して100を掛けた変動係数の値(CV90)との差(ΔCV=CV30−CV90)をいい、動的光散乱法により測定される散乱強度分布の角度依存性を示す値をいう。ΔCV値は、具体的に実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明者は、非球状シリカ粒子の特徴を示す方法として上記記載の平均粒径(D1)、及び動的光散乱法によって測定された平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)との粒径比(D1/D2)を用いて表す従来の見方だけでは、そのシリカ粒子の研磨性能を表すことはできないと考えた。本発明者のさらなる検討によれば、非球状シリカ粒子の系全体(バルク)での状態を知る手段としてΔCV値が有効であり、これらのパラメータに着目することで、従来では知りえなかった研磨速度の低下を抑制し、長周期欠陥の除去率が向上し、突起欠陥を低減できる非球状シリカの範囲を正確に規定することができることを見出した。すなわち、非球状シリカ粒子は、その異形度によってΔCV値が異なり、ΔCV値は、非球状シリカ粒子の異形度を示す指標となりうる。例えば、非球状シリカ粒子の異形度が高くなると擬似的な多重散乱(自己散乱)が起きやすくなり、動的光散乱法により測定される散乱強度分布の角度依存性が小さくなりΔCV値が小さくなる。
本開示において「散乱強度分布」とは、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)又は準弾性光散乱(QLS:Quasielastic Light Scattering)により求められるサブミクロン以下の粒子の3つの粒度分布(散乱強度、体積換算、個数換算)のうち散乱強度の粒径分布のことをいう。
[非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)]
非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)は、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、一又は複数の実施形態において、120.0nm以上300.0nm未満が好ましい。非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、120.0nm以上が好ましく、より好ましくは150.0nm以上、更に好ましくは160.0nm以上、更により好ましくは170.0nm以上、更により好ましくは180.0nm以上、更により好ましくは190.0nm以上であり、更により好ましくは200.0nm以上である。非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、300.0nm未満が好ましく、より好ましくは260.0nm未満、更に好ましくは250.0nm未満、更により好ましくは220.0nm未満、更により好ましくは210.0nm未満である。非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは120.0nm以上260.0nm未満、より好ましくは150.0nm以上260.0nm未満、更に好ましくは160.0nm以上260.0nm未満、更により好ましくは170.0nm以上260.0nm未満、更により好ましくは180.0nm以上250.0nm未満、更により好ましくは190.0nm以上220.0nm未満、更により好ましくは200.0nm以上210.0nm未満である。
本開示においてシリカ粒子の体積平均粒径(D1)は、動的光散乱法により測定される散乱強度分布に基づく平均粒径をいい、特に言及のない場合、シリカ粒子の平均粒径とは、動的光散乱法において検出角90°で測定される散乱強度分布に基づく平均粒径をいう。本開示におけるシリカ粒子の体積平均粒径(D1)は、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。
[非球状シリカ粒子Aの粒径比(D1/D2)]
非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、2.00以上が好ましく、より好ましくは2.50以上、更に好ましくは3.00以上、更により好ましくは3.50以上である。非球状シリカ粒子Aの粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、4.00以下が好ましく、より好ましくは3.90以下、更に好ましくは3.80以下である。非球状シリカ粒子Aの粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、2.00以上4.00以下が好ましく、より好ましくは2.50以上3.90以下、更に好ましくは3.00以上3.90以下、更により好ましくは3.50以上3.80以下である。
本開示においてシリカ粒子の比表面積換算粒径(D2)は、窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積Sm2/gからD2=2720/S[nm]の式によって与えられる。
動的光散乱法によって測定された体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)との粒径比(D1/D2)は、シリカ粒子Aの異形度合いを意味し得る。一般的に動的光散乱法によって測定された体積平均粒径(D1)は、シリカ粒子が異形粒子の場合、長方向での光散乱を検出して処理を行うため、長方向と短方向の長さを考慮して異形度合いが大きいほど大きな数値となる。BET法による比表面積換算粒径(D2)は、求まる粒子の体積をベースとして球換算で表されるため、D1に比べると小さな数値となる。研磨速度の観点から粒径比(D1/D2)は、上述の範囲のなかでも大きいことが好ましい。
[非球状シリカ粒子AのCV90]
非球状シリカ粒子AのCV90は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、20.0%以上が好ましく、より好ましくは25.0%以上、更に好ましくは27.0%以上であり、そして、同様の観点から、40.0%以下が好ましく、より好ましくは38.0%以下、更に好ましくは35.0%以下、更により好ましくは32.0%以下である。非球状シリカ粒子AのCV90は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、20.0%以上40.0%以下であって、好ましくは25.0%以上38.0%以下、より好ましくは25.0%以上35.0%以下、更に好ましくは27.0%以上32.0%以下である。
本開示においてシリカ粒子のCV90は、動的光散乱法において散乱強度分布に基づく標準偏差を平均粒径で除して100を掛けた変動係数の値であって、検出角90°(側方散乱)で測定されるCV値をいう。シリカ粒子AのCV90は、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。
[非球状シリカ粒子AのCV30]
非球状シリカ粒子AのCV30は、上記CV90で示された範囲と同様に好ましい範囲となる。要はΔCV値(=CV30−CV90)との関係を保つ範囲で適宜設定される。
[研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量]
研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が更により好ましい。前記含有量は、経済性の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましい。研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点並びに経済性の観点から、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上25質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下が更に好ましく、2質量%以上15質量%以下が更により好ましい。
[非球状シリカ粒子Aの製造方法]
非球状シリカ粒子Aは、粗研磨における研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率並びに粗研磨及び仕上げ研磨後の突起欠陥低減の観点から、火炎溶融法やゾルゲル法、及び粉砕法で製造されたものでなく、水ガラス法(珪酸アルカリ水溶液を出発原料とする粒子成長法)により製造されたシリカ粒子であることが好ましい。非球状シリカ粒子Aの使用形態としては、スラリー状であることが好ましい。
シリカ粒子は、通常、1)10質量%未満の3号珪酸ソーダと種粒子(小粒径シリカ)の混合液(シード液)を反応槽に入れ、シード液を60℃以上に加熱して熟成し、2)シード液中に、3号珪酸ソーダを陽イオン交換樹脂に通して調製された酸性の活性珪酸水溶液とアルカリ(アルカリ金属または第4級アンモニウム)とを滴下してpHを一定にして球状の粒子(種粒子)を成長させ、3)反応槽内の混合液を熟成後に蒸発法や限外ろ過法で濃縮することで得られる(例えば、特開昭47−1964号公報、特公平1−23412号公報、特公平4−55125号公報、特公平4−55127号公報)。しかし、同じ製造プロセスで少し工程を変えると非球状シリカ粒子Aの製造が可能であることが多く報告されている。たとえば、活性珪酸は非常に化学的に不安定なため、意図的にCaやMgなどの多価金属イオンを反応槽内の混合液中に添加すると細長い形状のシリカゾルを製造できる。さらに、反応物(反応槽内の混合液)の温度(液温が水の沸点を越えると、混合液中の水分が蒸発し、気液界面でシリカが乾燥する)、反応物のpH(混合液のpHが9以下では、シリカ粒子の連結が起きやすい)、反応物中のSiO2/M2O(Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム)及びそのモル比(モル比30〜60では、非球状シリカが選択的に生成される)などを変えることで、非球状シリカ粒子を製造できる(例えば、特公平8−5657号公報、特許2803134号公報、特開2003−133267号公報、特開2006−80406号公報、特開2007−153671号公報、特開2009−137791号公報、特開2009−149493号公報、特開2011−16702号公報)。ただし、非球状シリカ粒子Aの製造方法はこれらに限定されて解釈されない。
非球状シリカ粒子Aの粒径分布を調整する方法は、特に限定されないが、その製造段階における粒子の成長過程で新たな核となる粒子を加えることにより所望の粒径分布を持たせる方法や、異なる粒径分布を有する2種類以上のシリカ粒子を混合して所望の粒径分布を持たせる方法等が挙げられる。
[球状シリカ粒子B]
工程(1)で用いられる研磨液組成物Iは、上述したように、球状シリカ粒子Bを含有する。一又は複数の実施形態において、球状シリカ粒子Bとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、表面修飾したシリカ等が挙げられる。研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上並びに突起欠陥の低減の観点から、球状シリカ粒子Bは、コロイダルシリカが好ましい。
本開示において「球状シリカ粒子」は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、真球に近い球形状の粒子を用いることができ、例えば球形度が0.9〜1.1のものを使用できる。「球状シリカ粒子」は、一又は複数の実施形態において、一般的に市販されているコロイダルシリカが該当し得る。
球状シリカ粒子Bは、一又は複数の実施形態において、1種類の球状シリカ粒子であってもよく、2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせであってもよい。球状シリカ粒子Bが、2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせの場合、一又は複数の実施形態において、それぞれの球状シリカ粒子は、本開示に記載される「球状シリカ粒子B」の要件を満たす。球状シリカ粒子Bは、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、粒径が異なる2種又はそれ以上の粒子を用いることが好ましい。
[球状シリカ粒子BのΔCV値]
球状シリカ粒子BのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、0.0%より上であることが好ましく、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上、更により好ましくは0.4%以上である。球状シリカ粒子BのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、10%以下が好ましく、より好ましくは10.0%未満、更に好ましくは8.0%以下、更により好ましくは7.0%以下、更により好ましくは4.0%以下である。球状シリカ粒子BのΔCV値は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、0.0%より上10%以下が好ましく、より好ましくは0.0%より上10.0%未満が好ましく、更に好ましくは0.2%以上8.0%以下、更により好ましくは0.3%以上7.0%以下、更により好ましくは0.4%以上4.0%以下である。
[球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)]
球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)は、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から6.0nm以上80.0nm以下である。球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、6.0nm以上であって、好ましくは7.0nm以上である。球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、80.0nm以下であって、好ましくは70.0nm以下、より好ましくは60.0nm以下である。球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、6.0nm以上80.0nm以下であって、好ましくは6.0nm以上70.0nm以下、より好ましくは7.0nm以上60.0nm以下である。
上述のとおり、研磨液組成物Iに含まれる球状シリカ粒子Bは、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、粒径が異なる2種又はそれ以上の粒子を用いることが好ましい。2種類の組み合わせとして、限定されない一又は複数の実施形態において、体積平均粒径(D1)が、6.0nm以上15.0nm以下の球状粒子と15.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせ、又は、15.5nm以上30.0nm以下の球状粒子と30.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせが挙げられる。
[球状シリカ粒子Bの粒径比(D1/D2)]
球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、1.00以上が好ましく、より好ましくは1.10以上、更に好ましくは1.15以上である。球状シリカ粒子Bの粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、1.50以下が好ましく、より好ましくは1.40以下、更に好ましくは1.30以下である。球状シリカ粒子Bの粒径比(D1/D2)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、1.00以上1.50以下であって、好ましくは1.10以上1.40以下、より好ましくは1.15以上1.30以下である。
[球状シリカ粒子BのCV90]
球状シリカ粒子BのCV90は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、10.0%以上が好ましく、より好ましくは15.0%以上、更に好ましくは20.0%以上であり、そして、同様の観点から、35.0%以下が好ましく、より好ましくは32.0%以下、更に好ましくは30.0%以下である。球状シリカ粒子BのCV90は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、10.0%以上35.0%以下であって、好ましくは15.0%以上32.0%以下、より好ましくは20.0%以上30.0%以下である。
[研磨液組成物I中の球状シリカ粒子Bの含有量]
研磨液組成物I中の球状シリカ粒子Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が更により好ましい。前記含有量は、経済性の観点から、3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更により好ましい。
[球状シリカ粒子Bの製造方法]
球状シリカ粒子Bは、粗研磨における研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率並びに粗研磨及び仕上げ研磨後の突起欠陥低減の観点から、火炎溶融法やゾルゲル法、及び粉砕法で製造されたものでなく、珪酸アルカリ水溶液を出発原料とする粒子成長法により製造されたシリカ粒子であることが好ましい。球状シリカ粒子Bの使用形態としては、スラリー状であることが好ましい。
[非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bとの体積粒度分布の重なり頻度]
研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの体積粒度分布の重なり頻度の合計は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、0%以上50%以下が好ましく、より好ましくは10%以上45%以下、更に好ましくは15%以上40%以下、更により好ましくは20%以上35%以下である。非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの体積粒度分布の重なり頻度は、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。異なる大きさのシリカ粒子混合物内において空隙率及びその空隙に存在する小さい粒子が適切なバランスをとることにより上記効果が発生するものと推察される。
[研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの質量比]
研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの含有量の比である質量比(A/B)は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、80/20以上であって、好ましくは85/15以上、より好ましくは88/12以上である。非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの質量比(A/B)は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、99/1以下であって、好ましくは95/5以下、より好ましくは92/8以下である。球状シリカ粒子Bが2種類又はそれ以上の球状シリカ粒子の組み合わせの場合、球状シリカ粒子Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。非球状シリカ粒子Aの含有量も同様である。
[研磨液組成物I中のその他のシリカ粒子の含有量]
一又は複数の実施形態において、研磨液組成物Iが非球状シリカ粒子A及び球状シリカ粒子B以外にシリカ粒子を含有する場合、研磨液組成物I中のシリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量は、研磨速度の低下抑制及び長周期欠陥除去率の向上の観点から、98.0質量%を超え、好ましくは98.5質量%以上、より好ましくは99.0質量%以上、更に好ましくは99.5質量%以上、更により好ましくは99.8質量%以上であり、更により好ましくは実質的に100質量%である。
[酸]
研磨液組成物Iは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸を含有する。研磨液組成物Iにおける酸の使用は、酸及び又はその塩の使用を含む。
本開示において「リン酸類」は、リン酸、及び、リン酸骨格を持つ他の類似化合物群をいう。前記類似化合物群としては、一又は複数の実施形態において、ピロリン酸が挙げられる。本開示において、特に説明のない場合「リン酸」は、一又は複数の実施形態において、無機リン酸が挙げられる。本開示において、特に説明のない場合「ホスホン酸」は、一又は複数の実施形態において、無機ホスホン酸が挙げられる。
本開示において「有機ホスホン酸」は、一又は複数の実施形態において、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの塩は単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。研磨液組成物Iの酸としては、一又は複数の実施形態において、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、リン酸、又はHEDPが好ましい。
これらの酸の塩を用いる場合は、特に限定はなく、具体的には、金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム等が挙げられる。上記金属の具体例としては、周期律表(長周期型)1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、6A、7A又は8族に属する金属が挙げられる。
研磨液組成物I中の前記酸の含有量は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、0.001質量%以上5.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上4.0質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上3.0質量%以下、更により好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下である。
研磨液組成物Iは、その効果を損なわない範囲で、一又は複数の実施形態において、リン酸類、ホスホン酸、及び有機ホスホン酸とは異なる酸を含んでもよい。
リン酸類、ホスホン酸、及び有機ホスホン酸とは異なる酸としてはその他の無機酸が好ましい。本開示において「その他の無機酸」としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、アミド硫酸等が挙げられる。一又は複数の実施形態において、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、硫酸が好ましい。
研磨液組成物I中の前記その他の無機酸の含有量は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、0.001質量%以上0.6質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上0.4質量%以下、更により好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下である。
[酸化剤]
研磨液組成物Iは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、酸化剤を含有する。酸化剤としては、同様の観点から、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩等が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)等が好ましく、研磨速度向上の観点、表面に金属イオンが付着せず汎用に使用され安価であるという観点から、過酸化水素がより好ましい。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
研磨液組成物I中の前記酸化剤の含有量は、研磨速度向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、前記含有量は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、前記含有量は、好ましくは0.01質量%以上4.0質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下である。
[その他の成分]
研磨液組成物Iには、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。これら他の任意成分は、本開示の効果を損なわない範囲で研磨液組成物I中に配合されることが好ましく、研磨液組成物I中の任意成分の総含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
[水]
研磨液組成物Iは、媒体として水を含有する。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が使用され得る。研磨液組成物I中の水の含有量は、研磨液組成物の取扱いが容易になるため、61質量%以上99質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以上98質量%以下、更に好ましくは80質量%以上97質量%以下、更により好ましくは85質量%以上97質量%以下である。
[アルミナ砥粒]
研磨液組成物Iは、突起欠陥低減の観点からアルミナ砥粒を実質的に含まないことが好ましい。本開示において「アルミナ砥粒を実質的に含まない」とは、一又は複数の実施形態において、アルミナ粒子を含まないこと、砥粒として機能する量のアルミナ粒子を含まないこと、又は、研磨結果に影響を与える量のアルミナ粒子を含まないこと、を含みうる。具体的なアルミナ粒子の研磨液組成物I中の含有量は、特に限定されるわけではないが、砥粒全体として5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、実質的に0%であることが更により好ましい。
[pH]
研磨液組成物IのpHは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、前述の酸や公知のpH調整剤を用いて、0.5以上6.0以下に調整することが好ましく、より好ましくは0.7以上4.0以下、更に好ましくは0.9以上3.0以下、更により好ましくは1.0以上3.0以下、更により好ましくは1.2以上2.5以下、更により好ましくは1.4以上2.0以下である。上記のpHは、25℃における研磨液組成物のpHであり、pHメータを用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後2分後の数値である。
[研磨液組成物Iの調製方法]
研磨液組成物Iは、例えば、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、前述の酸、前述の酸化剤、及び水と、更に所望により、他の成分とを公知の方法で混合することにより調製できる。本開示において「研磨液組成物中の含有成分の含有量」とは、研磨液組成物を研磨に使用する時点での前記成分の含有量をいう。したがって、研磨液組成物が濃縮物として作製された場合には、前記成分の含有量はその濃縮分だけ高くなりうる。前記混合は、特に制限されず、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。
したがって、本開示は、その他の態様において、研磨液組成物Iの製造方法であって、
(1)ΔCV値が0.0%より上10%未満であり、動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下である非球状シリカ粒子Aと、(2)体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下である球状シリカ粒子Bと、(3)リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸と、(4)酸化剤と、(5)水とを、非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの質量比(A/B)が80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超えるように混合すること、を含む製造方法に関する。それぞれの成分の含有量は、上述のとおりとすることができる。
[被研磨基板]
研磨液組成物Iを用いて粗研磨される被研磨基板は、磁気ディスク基板又は磁気ディスク基板に用いられる基板であり、例えば、Ni−Pめっきされたアルミニウム合金基板や、珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、結晶化ガラス、強化ガラス等のガラス基板が挙げられる。中でも、本開示で使用される被研磨基板としては、強度と扱いやすさの観点からNi−Pめっきアルミニウム合金基板が好ましい。上記被研磨基板の形状には特に制限はなく、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状であればよい。中でも、ディスク状の被研磨基板が適している。ディスク状の被研磨基板の場合、その外径は例えば2〜95mm程度であり、その厚みは例えば0.5〜2mm程度である。
[磁気ディスク基板の製造方法]
一般に、磁気ディスクは、精研削工程を経たガラス基板や、Ni−Pメッキ工程を経たアルミニウム合金基板が、粗研磨工程、仕上げ研磨工程を経て研磨され、記録部形成工程にて磁気ディスク化されて製造される。本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を有し、工程(1)と(3)とは別の研磨機で行う製造方法である。
(1)粗研磨工程:上述の研磨液組成物Iを用いて被研磨基板を研磨する工程。
(2)洗浄工程:工程(1)で得られた基板を洗浄する工程。
(3)仕上げ研磨:工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物(以下、「研磨液組成物II」ともいう)を用いて工程(2)を用いて研磨する工程。
[工程(1):粗研磨工程]
工程(1)は、一又は複数の実施形態において、研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程であって、その他一又は複数の実施形態において、研磨液組成物Iを被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッド(以下、「研磨パッドA」ともいう。)を接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を研磨する工程である。工程(1)で使用される研磨機としては、特に限定されず、磁気ディスク基板研磨用の公知の研磨機が使用できる。工程(1)における被研磨基板としては、上述の被研磨基板が挙げられる。
[工程(1)の研磨パッドA]
本開示に係る製造方法の工程(1)に使用される研磨パッドAとしては、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、ベース層と発泡した表面層とを有するスエードタイプの研磨パッドであり、前記表面層の圧縮率が2.5%以上である。
<研磨パッドAの構造>
研磨パッドAの表面層である発泡層としては、一又は複数の実施形態において、独立発泡タイプと連続発泡タイプのものが使用できるが、研磨屑の排出性の観点から連続発泡タイプのものが好ましく使用される。連続発泡タイプの研磨パッドとしては、例えば、「CMP技術基礎実例講座シリーズ第2回メカノケミカルポリシング(CMP)の基礎と実例(ポリシングパッド編)1998年5月27日資料 グローバルネット株式会社編」、或いは「CMPのサイエンス 柏木正広編 株式会社サイエンスフォーラム 第4章」に記載されたような研磨パッドが使用できる。ここでスエードタイプとは、一又は複数の実施形態において、特開平11−335979号公報に記載されているような、ベース層とベース層に対して垂直な紡錘状気孔を有する発泡層とを有する構造のことをいう。
上記スエードタイプの研磨パッドは、一又は複数の実施形態において、以下の方法により製造される。ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるベース層上に、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤にポリウレタンエラストマーを溶解させた溶液を塗布し、これを水或いは水とポリウレタンエラストマー溶液の溶剤との混合溶液中に浸漬して湿式凝固を行い、脱溶剤のための水洗、乾燥を行なう。これにより、ベース層に対して垂直な紡錘状気孔を有する発泡層がベース層上に形成される。そして、得られた発泡層の表面をサンドペーパー等で研磨することによって、表面に気孔部を有し、かつ、ベース層に対して垂直な紡錘状気孔を有する発泡層を備えたスエードタイプ研磨パッドが得られる。
<研磨パッドAの材質>
研磨パッドAのベース層の材質としては、一又は複数の実施形態において、綿等の天然繊維や合成繊維からなる不織布、スチレンブタジエンゴム等のゴム状物質を充填して得られるベース層等が挙げられるが、微小うねりの低減、及び高硬度な樹脂フィルムが得られる観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリエステルフィルムが好ましく、PETフィルムがより好ましい。研磨パッドAの発泡層(表面層)の材質としては、一又は複数の実施形態において、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等があげられるが、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、ポリウレタンエラストマーが好ましい。本明細書において、基板の「うねり」とは、粗さよりも波長の長い基板表面の凹凸をいう。
<研磨パッドAの圧縮率>
研磨パッドAの発砲層(表面層)の圧縮率は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、2.5%以上であって、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、更に好ましくは10.0%以下、更により好ましくは7.0%以下、更により好ましくは5.0%以下である。
研磨パッドの圧縮率は、日本工業規格(JIS) L1096記載の圧縮率測定方法に基づき、圧縮試験機により測定することが出来る。即ち標準圧力(100g/cm2)の下で測定した研磨パッドの厚み(T0)から、1000g/cm2の下で測定した研磨パッドの厚み(T1)を引いた値をT0で除し、その値に100を乗じることによって求めることが出来る。研磨パッドの圧縮率は、例えば、発泡層の厚みや発泡層のベース層側の気孔径サイズ、あるいはベース層の材質等によって制御できる。
<研磨パッドAの平均気孔径>
研磨パッドAの表面の気孔部の平均気孔径は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、10μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以上80μm以下、更に好ましくは20μm以上60μm以下、更により好ましくは25μm以上55μm以下である。
研磨パッド表面の気孔部の平均気孔径は、ポリウレタンエラストマー原料に対し、カーボンブラック等の顔料や、発泡を促進させる親水性活性剤、あるいはポリウレタンエラストマーの湿式凝固を安定化させる疎水性活性剤等の添加剤を添加することにより制御することが出来る。そして、上記平均気孔径は、以下の方法で求めることが出来る。先ず、研磨パッド表面を走査型電子顕微鏡で観察(好適には100〜300倍)して、画像をパーソナルコンピュータ(PC)に取り込む。そして、取り込んだ画像についてPCにて画像解析ソフトにより解析を行い、気孔部の円相当径の平均径として平均気孔径を求めることが出来る。上記画像解析ソフトとしては、例えばWinROOF(三谷商事)を用いることが出来る。
<研磨パッドAの厚み>
研磨パッドAの厚みは、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、0.7mm以上1.5mm以下が好ましく、より好ましくは0.8mm以上1.4mm以下、更に好ましくは0.8mm以上1.3mm以下、更により好ましくは0.9mm以上1.3mm以下である。
[工程(1)の研磨荷重]
本開示において研磨荷重とは、研磨時に被研磨基板の研磨面に加えられる定盤の圧力を意味する。工程(1)における研磨荷重は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、30kPa以下が好ましく、より好ましくは25kPa以下、更に好ましくは20kPa以下、更により好ましくは18kPa以下、更により好ましくは16kPa以下、更により好ましくは14kPa以下である。前記研磨荷重は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、3kPa以上が好ましく、より好ましくは5kPa以上、更に好ましくは7kPa以上、更により好ましくは8kPa以上、更により好ましくは9kPa以上である。前記研磨荷重は、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、好ましくは3kPa以上30kPa以下、より好ましくは5kPa以上25kPa以下、更に好ましくは7kPa以上20kPa以下、更により好ましくは8kPa以上18kPa以下、更により好ましくは9kPa以上16kPa以下、更により好ましくは9kPa以上14kPa以下である。前記研磨荷重の調整は、定盤や基板等への空気圧や重りの負荷によって行うことができる。
[工程(1)の研磨量]
工程(1)における、被研磨基板(直径95mm)1枚当たりの研磨量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減する観点から、110mg以上160mg以下が好ましく、より好ましくは115mg以上155mg以下、さらに好ましくは120mg以上150mg以下である。直径の異なる被研磨基板については、その面積に応じて上記範囲に準じるものとする。本開示に係る製造方法における工程(1)の研磨には、上述した所定の非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含む研磨液組成物Iを用いるから、上述の範囲の研磨量で、効果的に長周期欠陥を除去することができる。
[工程(1)における研磨液組成物Iの供給速度]
工程(1)における研磨液組成物Iの供給速度は、経済性の観点から、被研磨基板1cm2あたり2.5mL/分以下が好ましく、より好ましくは2.0mL/分以下、更に好ましくは1.5mL/分以下、更により好ましくは1.0mL/分以下、更により好ましくは0.5mL/分以下、更により好ましくは0.2mL/分以下である。前記供給速度は、研磨速度の向上の観点から、被研磨基板1cm2あたり0.01mL/分以上が好ましく、より好ましくは0.03mL/分以上、更に好ましくは0.05mL/分以上である。前記供給速度は、経済性の観点及び研磨速度の向上の観点から、被研磨基板1cm2あたり0.01mL/分以上2.5mL/分以下が好ましく、より好ましくは0.03mL/分以上2.0mL/分以下、更に好ましくは0.03mL/分以上1.5mL/分以下、更により好ましくは0.03mL/分以上1.0mL/分以下、更により好ましくは0.05mL/分以上0.5mL/分以下、更により好ましくは0.05mL/分以上0.2mL/分以下である。
[工程(1)における研磨液組成物Iの供給量]
工程(1)における研磨液組成物Iの供給量は、前記研磨液組成物Iの供給速度に依存するが、経済性の観点から、さらに低減することが好ましい。本開示は、一又は複数の実施形態において、より効率良く基板に研磨液組成物Iが作用しうるため、研磨液の供給量を従来の供給量より減らし得ることが考えられる。本開示における研磨液供給量の低減効率は、具体的には実施例に記載した方法で評価できる。
[工程(1)における研磨液組成物Iを研磨機へ供給する方法]
研磨液組成物Iを研磨機へ供給する方法としては、例えばポンプ等を用いて連続的に供給を行う方法が挙げられる。研磨液組成物Iを研磨機へ供給する際は、全ての成分を含んだ1液で供給する方法の他、研磨液組成物Iの保存安定性等を考慮して、複数の配合用成分液に分け、2液以上で供給することもできる。後者の場合、例えば供給配管中又は被研磨基板上で、上記複数の配合用成分液が混合され、研磨液組成物Iとなる。
[工程(2):洗浄工程]
工程(2)は、工程(1)で得られた基板を洗浄する工程である。工程(2)は、一又は複数の実施形態において、工程(1)の粗研磨が施された基板を、洗浄剤組成物を用いて洗浄する工程である。工程(2)における洗浄方法は、特に限定されないが、一又は複数の実施形態において、工程(1)で得られた基板を洗浄剤組成物に浸漬する方法(洗浄方法a)、及び、洗浄剤組成物を射出して工程(1)で得られた基板の表面上に洗浄剤組成物を供給する方法(洗浄方法b)が挙げられる。
<洗浄方法a>
前記洗浄方法aにおいて、基板の洗浄剤組成物への浸漬条件としては、特に制限はないが、例えば、洗浄剤組成物の温度は、安全性及び操業性の観点から20〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は、洗浄剤組成物による洗浄性と生産効率の観点から10秒〜30分間であることが好ましい。残留物の除去性及び残留物の分散性(残留物に対する洗浄性)を高める観点から、洗浄剤組成物には超音波振動が付与されていると好ましい。超音波の周波数としては、好ましくは20kHz以上2000kHz以下、より好ましくは40kHz以上2000kHz以下、更に好ましくは40kHz以上1500kHz以下である。
<洗浄方法b>
前記洗浄方法bでは、残留物に対する洗浄性や油分の溶解性を促進させる観点から、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出して、基板の表面に洗浄剤組成物を接触させて当該表面を洗浄するか、又は、洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に射出により供給し、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。更には、前記洗浄方法bでは、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出により洗浄対象の表面に供給し、かつ、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。
洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に供給する手段としては、スプレーノズル等の公知の手段を用いることができる。洗浄用ブラシとしては、特に制限はなく、例えばナイロンブラシやPVA(ポリビニルアルコール)スポンジブラシ等の公知のものを使用することができる。超音波の周波数としては、前記洗浄方法aで好ましく採用される値と同様であればよい。
工程(2)では、洗浄方法a及び/又は洗浄方法bに加えて、揺動洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄、パドル洗浄、スクラブ洗浄等の公知の洗浄を用いる工程を1つ以上含んでもよい。
[工程(2)の洗浄剤組成物]
工程(2)の洗浄剤組成物としては、一又は複数の実施形態において、アルカリ剤、水、及び必要に応じて各種添加剤を含有するものが使用できる。
<洗浄剤組成物中のアルカリ剤>
前記洗浄剤組成物で使用されるアルカリ剤は、無機アルカリ剤及び有機アルカリ剤のいずれであってもよい。無機アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。有機アルカリ剤としては、例えば、ヒドロキシアルキルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、及びコリンからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。これらのアルカリ剤は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。洗浄剤組成物の基板上の残留物に対する洗浄性の向上、及び保存安定性の向上の観点から、前記アルカリ剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、及びアミノエチルエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は、洗浄剤組成物の基板上の残留物に対する洗浄性を向上させ、かつ、洗浄剤組成物の取扱時の安全性を高める観点から、0.05質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.08質量%以上5質量%以下であるとより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であると更に好ましい。
洗浄剤組成物のpHは、基板上の残留物に対する洗浄性を向上させる観点から、8以上14以下であることが好ましく、より好ましくは9以上13以下、更に好ましくは10以上13以下、更により好ましくは11以上13以下である。なお、上記のpHは、25℃における洗浄剤組成物のpHであり、pHメータを用いて測定でき、電極の洗浄剤組成物への浸漬後2分後の数値である。
<洗浄剤組成物中の各種添加剤>
洗浄剤組成物には、アルカリ剤以外に、非イオン界面活性剤、キレート剤、エーテルカルボキシレートもしくは脂肪酸、アニオン性界面活性剤、水溶性高分子、消泡剤(成分に該当する界面活性剤は除く。)、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤等が含まれていてもよい。
洗浄剤組成物中の水以外の成分の含有量は、作業性、経済性や保存安定性向上に対し充分な効果が発現される濃縮度である事と保存安定性向上との両立の観点から、水の含有量と水以外の成分の含有量の合計を100質量%とすると、好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
洗浄剤組成物は、希釈して用いられる。希釈倍率は、洗浄効率を考慮すると、好ましくは10倍以上500倍以下、より好ましくは20倍以上200倍以下、更に好ましくは50倍以上100倍以下である。希釈用の水は、前述の研磨液組成物Iと同様のものでよい。洗浄剤組成物は、前記希釈倍率を前提とした濃縮物とすることができる。よって、濃縮物の場合には、洗浄剤組成物中の水以外の成分の含有量は、水の含有量と水以外の成分の含有量の合計を100質量%とすると、好ましくは0.02質量%以上6質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、更に好ましくは0.15質量%以上1質量%以下である。
[工程(3):仕上げ研磨工程]
工程(3)は、一又は複数の実施形態において、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて工程(2)で得られた基板の研磨対象面を研磨する工程である。工程(3)は、その他の一又は複数の実施形態において、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを工程(2)で得られた基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び前記被研磨基板の少なくとも一方を動かして前記研磨対象面を研磨する工程である。工程(3)で使用される研磨機は、突起欠陥低減の観点、及び、その他の表面欠陥を効率よく低減するため粗研磨とポア径の異なるパッドを使用する観点から、工程(1)で用いた研磨機とは別の研磨機である。
本開示に係る製造方法は、工程(1)の粗研磨工程、工程(2)の洗浄工程、及び、工程(3)の仕上げ研磨工程を含むことにより、粗研磨の研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥が低減され、仕上げ研磨後の突起欠陥が低減された基板を効率的に製造することができる。
[工程(3)の研磨液組成物II]
工程(3)で使用される研磨液組成物IIは、仕上げ研磨後の突起欠陥低減の観点から砥粒としてシリカ粒子Cを含有する。使用されるシリカ粒子Cは、仕上げ研磨後の長波長うねり低減の観点から、好ましくはコロイダルシリカである。研磨液組成物IIは、仕上げ研磨後の突起欠陥を低減する観点から、アルミナ砥粒を実質的に含まないことが好ましい。シリカ粒子Cは、一又は複数の実施形態において、球状である。本明細書において「長波長うねり」とは、500〜5000μmの波長により観測されるうねりをいう。研磨後の基板表面のうねりが低減されることにより、磁気ヘッドの浮上量が低減でき、磁気ディスク基板の記録密度向上が可能となる。
研磨液組成物IIに用いられるシリカ粒子Cの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)は、仕上げ研磨後の突起欠陥を低減する観点から、5nm以上50nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上45nm以下、更に好ましくは15nm以上40nm以下、更により好ましくは20nm以上35nm以下である。シリカ粒子Cの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)は、仕上げ研磨後の突起欠陥を低減する観点から、非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)より小さいことが好ましい。
シリカ粒子CのCV90は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の低下抑制及び仕上げ研磨後の突起欠陥を低減する観点から、10.0%以上が好ましく、より好ましくは15.0%以上、更に好ましくは20.0%以上であり、そして、同様の観点から、35.0%以下が好ましく、より好ましくは32.0%以下、更に好ましくは30.0%以下である。球状シリカ粒子BのCV90は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、10.0%以上35.0%以下であって、好ましくは15.0%以上32.0%以下、より好ましくは20.0%以上30.0%以下である。
研磨液組成物II中のシリカ粒子Cの含有量は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1.0質量%以上15質量%以下がより好ましく、3.0質量%以上13質量%以下が更に好ましく、4.0質量%以上10質量%以下が更により好ましい。
研磨液組成物IIは、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、複素環芳香族化合物、多価アミン化合物、及びアニオン性基を有する高分子から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、2種以上含有することがより好ましく、複素環芳香族化合物、多価アミン化合物、及びアニオン性基を有する高分子を含有することが更に好ましい。
研磨液組成物IIは、研磨速度を向上する観点から、酸、酸化剤を含有することが好ましい。酸、酸化剤の好ましい使用態様については、前述の研磨液組成物Iの場合と同様である。研磨液組成物IIに用いられる水、研磨液組成物IIのpH、研磨液組成物IIの調製方法については、前述の研磨液組成物Iの場合と同様である。
[工程(3)の研磨パッド]
工程(3)で使用される研磨パッドは、工程(1)で使用される研磨パッドと同種の研磨パッドが使用されうる。工程(3)で使用される研磨パッドの平均気孔径は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、1μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上40μm以下、更に好ましくは3μm以上30μm以下である。
[工程(3)の研磨荷重]
工程(3)における研磨荷重は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、16kPa以下が好ましく、より好ましくは14kPa以下、更に好ましくは13kPa以下である。前記研磨荷重は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、7.5kPa以上が好ましく、より好ましくは8.5kPa以上、更に好ましくは9.5kPa以上である。前記研磨荷重は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、7.5kPa以上16kPa以下が好ましく、より好ましくは8.5kPa以上14kPa以下、更に好ましくは9.5kPa以上13kPa以下である。
[工程(3)の研磨量]
工程(3)における、被研磨基板の単位面積(1cm2)あたりかつ研磨時間1分あたりの研磨量は、仕上げ研磨後の長波長うねり及び突起欠陥を低減する観点から、0.02mg以上が好ましく、より好ましくは0.03mg以上、更に好ましくは0.04mg以上である。前記研磨量は、生産性向上の観点からは、0.15mg以下が好ましく、より好ましくは0.12mg以下、更に好ましくは0.10mg以下である。したがって、前記研磨量は、前記と同様の観点から、0.02mg以上0.15mg以下が好ましく、より好ましくは0.03mg以上0.12mg以下、更に好ましくは0.04mg以上0.10mg以下である。
工程(3)における研磨液組成物IIの供給速度及び研磨液組成物IIを研磨機へ供給する方法については、前述の研磨液組成物Iの場合と同様である。
本開示の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、粗研磨において研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減できるから、突起欠陥が低減された磁気ディスク基板を高い基板収率で、生産性よく製造できるという効果が奏されうる。
[研磨方法]
本開示は、その他の態様として、上述した工程(1)、工程(2)、工程(3)を有する研磨方法に関する。工程(1)〜(3)における被研磨基板、研磨液組成物I、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、研磨液組成物II、シリカ粒子C、研磨方法及び条件、洗浄剤組成物、並びに洗浄方法については、上述の本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法と同様とすることができる。
本開示の研磨方法を使用することにより、一又は複数の実施形態において、粗研磨において研磨速度を大幅に損なうことなく長周期欠陥を低減できるから、突起欠陥が低減された磁気ディスク基板を高い基板収率で、生産性よく製造できるという効果が奏されうる。
本開示に係る製造方法及び研磨方法は、一又は複数の実施形態において、図5に示すような、研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨(粗研磨)する第一の研磨機51と、前記第一研磨機51で研磨した基板を洗浄する洗浄ユニット52と、研磨液組成物IIを用いて洗浄後の基板を研磨する第二の研磨機53とを備える磁気ディスク基板の研磨システムにより行うことができる。したがって、本開示は、一態様において、前記工程(1)の研磨を行う第一の研磨機と、前記工程(2)の洗浄を行う洗浄ユニットと、前記工程(3)の研磨を行う第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システムに関する。研磨液組成物I及び研磨液組成物IIは前述のとおりであり、被研磨基板、各研磨機で使用される研磨パッド、研磨方法及び条件、洗浄剤組成物、並びに洗浄方法については、上述の本開示に係る磁気ディスク基板の製造方法と同様とすることができる。
本開示にかかる研磨システムは、一又は複数の実施形態において、第一研磨機51で研磨された被研磨基板の少なくとも1枚(直径;95mmとして)に対する研磨量が好ましくは110mg以上160mg以下、より好ましくは115mg以上155mg以下、さらに好ましくは120mg以上150mg以下であることを確認する手段(研磨制御部)(図示せず)を有してもよい。該手段(研磨制御部)は、一又は複数の実施形態において、基板の研磨量に基づいて第一研磨機51を制御する。ここで、本開示に係る研磨システムの動作(磁気ディスク基板の製造方法の研磨工程)の一実施形態を図5を参照しながら図6を用いて説明する。まず、第一研磨機51によって被研磨基板を研磨(粗研磨)する(ステップS61)。そして、第一研磨機51による基板の研磨量が所定の研磨量の範囲内(ここでは110〜160mg)であるか否かを研磨制御部によって判断する(ステップS62)。前記研磨量が所定の研磨量の範囲内である場合、粗研磨後の基板を洗浄ユニット52によって洗浄し(ステップS62)、洗浄後の基板を第二研磨機53によって研磨する(ステップS63)。一方、前記研磨量が所定の研磨量の範囲内ではない場合、第一研磨機51における研磨の継続または研磨の中止を実行する(ステップS65)。
本開示は更に以下の一又は複数の実施形態に関する。
<1> (1)研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程、(2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、(3)工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、前記工程(1)と(3)を別の研磨機で行う磁気ディスク基板の製造方法であって、(i)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、(ii)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iにおいて、前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比(A/B)が80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、(iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、ここで、ΔCV値は、動的光散乱法による検出角30°における散乱強度分布に基づく標準偏差を前記散乱強度分布に基づく平均粒径で除して100を掛けた値(CV30)と、検出角90°における散乱強度分布に基づく標準偏差を前記散乱強度分布に基づく平均粒径で除して100を掛けた値(CV90)との差の値(ΔCV=CV30−CV90)であり、(iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、(v)前記球状シリカ粒子Bが、動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、(vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、磁気ディスク基板の製造方法。
<2> 前記非球状シリカ粒子Aが、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、<1>記載の製造方法。
<3> 前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が、好ましくは0.0%より上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上、更により好ましくは0.4%以上である、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が、10.0%未満であることが好ましく、より好ましくは8.0%以下、更に好ましくは7.0%以下、更により好ましくは4.0%以下である、<1>から<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が、好ましくは0.0%より上10.0%未満が好ましく、より好ましくは0.2%以上8.0%以下、更にこのましくは0.3%以上7.0%以下、更により好ましくは0.4%以上4.0%以下である、<1>から<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 前記非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)が、好ましくは120.0nm以上、より好ましくは150.0nm以上、更に好ましくは160.0nm以上、更により好ましくは170.0nm以上、更により好ましくは180.0nm以上、更により好ましくは190.0nm以上、更により好ましくは200.0nm以上である、<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7> 前記非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)が、好ましくは300.0nm未満、より好ましくは260.0nm未満、更に好ましくは250.0nm未満、更により好ましくは220.0nm未満、更により好ましくは210.0nm未満である、<1>から<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8> 前記非球状シリカ粒子Aの体積平均粒径(D1)が、好ましくは120.0nm以上300.0nm未満、より好ましくは120.0nm以上260.0nm未満、更に好ましくは150.0nm以上260.0nm未満、更により好ましくは160.0nm以上260.0nm未満、更により好ましくは170.0nm以上260.0nm未満、更により好ましくは180.0nm以上250.0nm未満、更により好ましくは190.0nm以上220.0nm未満、更により好ましくは200.0nm以上210.0nm未満である、<1>から<7>のいずれかに記載の製造方法。
<9> 前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.50以上、更に好ましくは3.00以上、更により好ましくは3.50以上である、<1>から<8>のいずれかに記載の製造方法。
<10> 前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは4.00以下、より好ましくは3.90以下、更に好ましくは3.80以下である、<1>から<9>のいずれかに記載の製造方法。
<11> 前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは2.00以上4.00以下、より好ましくは2.50以上3.90以下、更に好ましくは3.00以上3.90以下、更により好ましくは3.50以上3.80以下である、<1>から<10>のいずれかに記載の製造方法。
<12> 前記非球状シリカ粒子AのCV90は、好ましくは20.0%以上、より好ましくは25.0%以上、更に好ましくは27.0%以上である、<1>から<11>のいずれかに記載の製造方法。
<13> 前記非球状シリカ粒子AのCV90は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、更に好ましくは35.0%以下、更により好ましくは32.0%以下である、<1>から<12>のいずれかに記載の製造方法。
<14> 前記非球状シリカ粒子AのCV90は、好ましくは20.0%以上40.0%以下、より好ましくは25.0%以上38.0%以下、更に好ましくは25.0以上35.0%以下、更により好ましくは27.0%以上32.0%以下である、<1>から<13>のいずれかに記載の製造方法。
<15> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更により好ましは2質量%以上である、<1>から<14>のいずれかに記載の製造方法。
<16> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量が、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下である、<1>から<15>のいずれかに記載の製造方法。
<17> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aの含有量が、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、更に好ましくは1質量%以上20質量%以下、更により好ましくは2質量%以上15質量%以下である、<1>から<16>のいずれかに記載の製造方法。
<18> 前記非球状シリカ粒子Aが、水ガラスを原料とする粒子成長法により製造されたシリカ粒子である、<1>から<17>のいずれかに記載の製造方法。
<19> 前記球状シリカ粒子BのΔCV値が、好ましくは0.0%より上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上、更により好ましくは0.4%以上である、<1>から<18>のいずれかに記載の製造方法。
<20> 前記球状シリカ粒子BのΔCV値が、10.0%未満であることが好ましく、より好ましくは8.0%以下、更に好ましくは7.0%以下、更により好ましくは4.0%以下である、<1>から<19>のいずれかに記載の製造方法。
<21> 前記球状シリカ粒子BのΔCV値が、好ましくは0.0%より上10.0%未満が好ましく、より好ましくは0.2%以上8.0%以下、更にこのましくは0.3%以上7.0%以下、更により好ましくは0.4%以上4.0%以下である、<1>から<20>のいずれかに記載の製造方法。
<22> 前記球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)が、好ましくは6.0nm以上、より好ましくは7.0nm以上である、<1>から<21>のいずれかに記載の製造方法。
<23> 前記球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)が、好ましくは80.0nm以下、より好ましくは70.0nm以下、より好ましくは60.0nm以下である、<1>から<22>のいずれかに記載の製造方法。
<24> 前記球状シリカ粒子Bの体積平均粒径(D1)が、好ましくは6.0nm以上80.0nm以下、より好ましくは6.0nm以上70.0nm以下、更に好ましくは7.0nm以上60.0nm以下である、<1>から<23>のいずれかに記載の製造方法。
<25> 前記球状シリカ粒子Bが粒径が異なる2種類の粒子であり、前記2種類の粒子が、6.0nm以上15.0nm以下の球状粒子と15.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせ、又は、15.5nm以上30.0nm以下の球状粒子と30.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせである、<1>から<24>のいずれかに記載の製造方法。
<26> 前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.10以上、更に好ましくは1.15以上である、<1>から<25>のいずれかに記載の製造方法。
<27> 前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは1.50以下、より好ましくは1.40以下、更に好ましくは1.30以下である、<1>から<26>のいずれかに記載の製造方法。
<28> 前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が、好ましくは1.00以上1.50以下、好ましくは1.10以上1.40以下、より好ましくは1.15以上1.30以下である、<1>から<27>のいずれかに記載の製造方法。
<29> 前記球状シリカ粒子BのCV90が、好ましくは10.0%以上、より好ましくは15.0%以上、更に好ましくは20.0%以上である、<1>から<28>のいずれかに記載の製造方法。
<30> 前記球状シリカ粒子BのCV90が、好ましくは35.0%以下、より好ましくは32.0%以下、更に好ましくは30.0%以下である、<1>から<29>のいずれかに記載の製造方法。
<31> 前記球状シリカ粒子BのCV90は、好ましくは10.0%以上35.0%以下であって、より好ましくは15.0%以上32.0%以下、更に好ましくは20.0%以上30.0%以下である、<1>から<30>のいずれかに記載の製造方法。
<32> 前記研磨液組成物I中の球状シリカ粒子Bの含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.2質量%以上である、<1>から<31>のいずれかに記載の製造方法。
<33> 前記研磨液組成物I中の球状シリカ粒子Bの含有量が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下である、<1>から<32>のいずれかに記載の製造方法。
<34> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの体積粒度分布の重なり頻度の合計が、好ましくは0%以上50%以下、より好ましくは10%以上45%以下、更に好ましくは15%以上40%以下、更により好ましくは20%以上35%以下である、<1>から<33>のいずれかに記載の製造方法。
<35> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの含有量の質量比(A/B)が、好ましくは80/20以上、より好ましくは85/15以上、更に好ましくは90/10以上である、<1>から<34>のいずれかに記載の製造方法。
<36> 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの含有量の質量比(A/B)が、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは92/8以下である、<1>から<35>のいずれかに記載の製造方法。
<37> 前記研磨液組成物Iにおけるシリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が、好ましくは98.0質量%を超え、より好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99.0質量%以上、更により好ましくは99.5質量%以上、更により好ましくは99.8質量%以上であり、更により好ましくは実質的に100質量%である、<1>から<36>のいずれかに記載の製造方法。
<38> 前記研磨液組成物I中の前記酸の含有量が、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上4質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、更により好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下である、<1>から<37>のいずれかに記載の製造方法。
<39> 前記研磨液組成物Iが、アルミナ粒子を実質含まない、<1>から<38>のいずれかに記載の製造方法。
<40> 前記研磨液組成物IのpHが、好ましくは0.5以上6.0以下、より好ましくは0.7以上4.0以下、更に好ましくは0.9以上3.0以下、更により好ましくは1.0以上3.0以下、更により好ましくは1.2以上2.5以下、更により好ましくは1.4以上2.0以下である、<1>から<39>のいずれかに記載の製造方法。
<41> 前記研磨液組成物Iの研磨対象が、Ni−Pめっきアルミニウム合金基板である、<1>から<40>のいずれかに記載の製造方法。
<42> 前記工程(1)における被研磨基板(直径95mm)1枚当たりの研磨量が、好ましくは110mg以上160mg以下、より好ましくは115mg以上155mg以下、さらに好ましくは120mg以上150mg以下である、<1>から<41>のいずれかに記載の製造方法。
<43> <1>から<42>のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)〜(3)を含む、磁気ディスク基板の研磨方法。
<44> <1>から<42>のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)の研磨を行う第一の研磨機と、<1>から<42>のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(2)の洗浄を行う洗浄ユニットと、<1>から<42>のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(3)の研磨を行う第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システム。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
下記のとおりに工程(1)に用いる研磨液組成物I及び工程(3)に用いる研磨液組成物IIを調製し、工程(1)〜(3)を含む下記の条件の被研磨基板の研磨を行った。研磨液組成物の調製方法、使用した添加剤、各パラメータの測定方法、研磨条件(研磨方法)及び評価方法は以下のとおりである。
1.研磨液組成物の調製
[工程(1)(粗研磨)に用いる研磨液組成物Iの調製]
表1の非球状シリカ砥粒A及び球状シリカ粒子B(共に、コロイダルシリカ粒子)、表2の酸、過酸化水素、並びに水を用い、工程(1)に用いる研磨液組成物Iを調製した(実施例1〜16、参考例1〜9、比較例1〜6)(表2)。研磨液組成物I中の各成分の含有量は、コロイダルシリカ粒子:6.0質量%、酸:1.0−2.4質量%、過酸化水素:1.0質量%とした。研磨液組成物IのpHは1.2−1.9であった。表1のシリカ砥粒のコロイダルシリカ粒子は水ガラス法で製造されたものである。pHは、pHメータを用いて測定した(東亜ディーケーケー社製)。電極を研磨液組成物へ浸漬して2分後の数値を採用した(以下、同様)。
表1の非球状シリカ砥粒Aのタイプは、一又は複数の実施形態において、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察写真及びそれを用いた分析で判別されうる分類である。
「異形型シリカ粒子」とは、2つ以上の粒子が凝集又は融着したような形状の非球状シリカ粒子をいう。異形型シリカ粒子は、一又は複数の実施形態において、粒径が1.5倍以内の2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状の粒子をいう。
「金平糖型シリカ粒子」とは、球状の粒子表面に特異な疣状突起を有する非球状シリカ粒子をいう。金平糖型シリカ粒子は、一又は複数の実施形態において、粒径が5倍以上異なる2つ以上の粒子が凝集又は融着した形状の粒子をいう。
異形型コロイダルシリカ砥粒の電子顕微鏡(TEM)観察写真の一例を図1に、金平糖型コロイダルシリカ砥粒の電子顕微鏡(TEM)観察写真の一例を図2に示す。
表1の球状シリカ砥粒Bの「球状シリカ粒子」とは、真球に近い球形状の粒子(一般的に市販されているコロイダルシリカ)をいう。
なお、シリカ粒子の粒径は、電子顕微鏡(TEM)観察画像において1つの粒子内で測定される円相当径、すなわち、粒子の投影面積と同じ面積の等価円の長径として求められる粒径である。
[工程(3)(仕上げ研磨)に用いる研磨液組成物IIの調製]
表1のコロイダルシリカ粒子(砥粒f)、硫酸、過酸化水素、及び水を用い、研磨液組成物IIを調製した。研磨液組成物II中の各成分の含有量は、コロイダルシリカ粒子:5.0質量%、硫酸:0.5質量%、過酸化水素:0.5質量%とした。研磨液組成物IIのpHは1.4であった。研磨液組成物IIを実施例1〜16、参考例1〜9、比較例1〜6の研磨における工程(3)で使用した。
2.各パラメータの測定方法
[動的光散乱法で測定される砥粒a〜kの体積平均粒径(D1)及びCV90]
砥粒、硫酸、過酸化水素をイオン交換水に添加し、これらを混合することにより、標準試料を作製した。標準試料中における砥粒、硫酸、過酸化水素の含有量は、それぞれ0.1〜5.0質量%、0.2〜0.4質量%、0.2〜0.4質量%であり、用いるシリカ砥粒のタイプに合わせて適宜調整を行った。この標準試料を大塚電子社製の動的光散乱装置DLS−6500により、同メーカーが添付した説明書に従って、200回積算した際の検出角90°におけるMarquardt法によって得られる散乱強度分布の面積が全体の50%となる粒径を求め、シリカ粒子の体積平均粒径(D1)とした。検出角90°におけるシリカ粒子のCV値(CV90)を、上記測定法に従って測定した散乱強度分布における標準偏差を前記体積平均粒径で除して100をかけた値として算出した。
[ΔCV値]
上記CV90の測定法と同様に、検出角30°におけるシリカ粒子のCV値(CV30)を測定し、CV30からCV90を引いた値を求め、シリカ粒子A又はBのΔCV値とした。
(DLS−6500の測定条件)
検出角90°
Sampling time :2−10(μm)で適宜調整
Correlation Channel :256−512(ch)で適宜調整
Correlation Method :TI
Sampling temprature :25.0℃
検出角30°
Sampling time :4−20(μm)で適宜調整
Correlation Channel :512−2048(ch)で適宜調整
Correlation Method :TI
Sampling temprature :25℃
[砥粒a〜kのBET法による比表面積換算粒径(D2)の測定]
砥粒の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」(島津製作所製))を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
[前処理]
(a)スラリー状の砥粒を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の砥粒をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、1μmのメンブランフィルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で十分洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターを110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
[シリカ砥粒のD10、D50、及びD90]
シリカ砥粒をイオン交換水で希釈して得られる1質量%分散液を、下記測定装置内に投入し、シリカ砥粒の体積粒度分布を得た。
測定機器 :マルバーン ゼータサイザー ナノ「Nano S」
測定条件 :サンプル量 1.5mL
:レーザー He―Ne、3.0mW、633nm
:散乱光検出角 173°
そして、得られた体積粒度分布の累積体積頻度が10%、50%及び90%となる粒径を、それぞれ、D10、D50(体積平均粒子径)、及びD90とした。
[シリカ粒子の体積粒度分布の重なり頻度の合計]
シリカ砥粒のD10、D50、及びD90と同様の測定法により、シリカ粒子成分(砥粒a〜k)のそれぞれの体積粒度分布を得た。実施例1〜16及び参考例3〜9で使用する砥粒の組み合わせ(表2)において重なった粒径範囲の累積体積頻度の合計を全シリカ粒子成分の累積体積頻度(2成分混合系では200、3成分混合系では300)で除して100をかけた値を重なり頻度[%]として算出した。実施例8〜11における砥粒の組み合わせの体積粒度分布を重ねたグラフの一例を図3に示す。
[シリカ砥粒の形状]
シリカ砥粒を日本電子製透過型電子顕微鏡(TEM)(商品名「JEM−2000FX」、80kV、1〜5万倍)で観察した写真をパソコンにスキャナで画像データとして取込み、解析ソフト「WinROOF(Ver.3.6)」(販売元:三谷商事)を用いて1000〜2000個のシリカ粒子データについて形状を観察した。
[砥粒の平均二次粒子径の測定]
ポイズ530(花王社製)を0.5質量%含有する水溶液を分散媒として、下記測定装置内に投入し、続いて透過率が75〜95%になるようにサンプルを投入し、その後、5分間超音波を掛けた後、砥粒の平均二次粒子径を測定した。
測定機器 :堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA920
循環強度 :4
超音波強度:4
3.研磨条件
被研磨基板の研磨を工程(1)〜(3)に従い行った。各工程の条件を以下に示す。工程(3)は、工程(1)で使用した研磨機とは別個の研磨機で行った。
[被研磨基板]
被研磨基板は、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板を用いた。被研磨基板は、厚み1.27mm、直径95mmであった。
[工程(1):粗研磨]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)
研磨液:研磨液組成物I
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー)、厚み0.82−1.26mm、平均気孔径20−30μm、表面層の圧縮率:2.5%(Filwel、Fujibo社製)
定盤回転数:35rpm
研磨荷重:9.8kPa(設定値)
研磨液供給量:100mL/分(0.076mL/(cm2・分))
研磨時間:5分
研磨量:110mg以上160mg以下(直径95mmディスク1枚当たり)
投入した基板の枚数:10枚
[工程(2):洗浄]
工程(1)で得られた基板を、下記条件で洗浄した。
1. 0.1質量%のKOH水溶液からなるpH12のアルカリ性洗浄剤組成物の入った槽内に、工程(1)で得られた基板を5分間浸漬する。
2. 浸漬後の基板を、イオン交換水で20秒間すすぎを行う。
3. すすぎ後の基板を洗浄ブラシがセットされたスクラブ洗浄ユニットに移送し洗浄する。
[工程(3):仕上げ研磨]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)、工程(1)で使用した研磨機とは別個の研磨機
研磨液:研磨液組成物II
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー)、厚み0.9mm、平均気孔径5μm、表面層の圧縮率:10.2%(Fujibo社製)
定盤回転数:40rpm
研磨荷重:9.8kPa
研磨液供給量:100mL/分(0.076mL/(cm2・分))
研磨時間:2分
研磨量:0.04〜0.10mg/(cm2・分)
投入した基板の枚数:10枚
工程(3)後に、洗浄を行った。洗浄条件は、前記工程(2)と同条件で行った。
4.評価方法
[工程(1)の研磨速度、研磨量の測定方法及び評価]
研磨前後の各基板の重さを計り(Sartorius社製、「BP−210S」)を用いて測定し、下記式に導入することにより研磨量を求め、比較例1を100とした研磨速度の相対値を算出した。その結果を、表2に示す。
重量減少量(g)={研磨前の重量(g)−研磨後の重量(g)}
研磨量(μm)=重量減少量(g)/基板片面面積(mm2)/2/Ni−Pメッキ密度(g/cm3)×106
(基板片面面積は、6597mm2、Ni−Pメッキ密度8.4g/cm3として算出)
[工程(1)後の基板表面の長周期欠陥(PED)の評価方法]
工程(1)の研磨後の10枚の基板の両面(計20点)について、下記の条件で測定し発生率(%)を求めた。図4に示す様に基板表面に確認できる小さな斑点がPEDであり、基板表面にPEDが1点でも目視で確認できた場合、その面は長周期欠陥有りとみなした。
長周期欠陥発生率(%)
=(長周期欠陥が発生している基板面の数/20)×100
長周期欠陥発生率を下記基準で5段階評価した。すなわち、値が大きいほど長周期欠陥の発生率が低いことを意味する。その結果を、表2に示す。
[評価基準]
長周期欠陥発生率:評価
10%以下 :5「極めて発生が抑制され、基板収率向上が期待できる」
10%越20%以下:4「実生産可能」
20%越30%以下:3「実生産には改良が必要」
30%越50%以下:2「基板収率が大幅に低下する」
50%以上 :1「実生産には程遠い(一般的なシリカ砥粒を用いた場合と同じレベル)」
[測定機器]
光干渉型表面形状測定機:OptiFLAT III(KLA Tencor社製)
Radius Inside/Out:14.87mm/47.83mm
Center X/Y:55.44mm/53.38mm
Low Cutoff:2.5mm
Inner Mask:18.50mm、Outer Mask:45.5mm
Long Period:2.5mm、Wa Correction:0.9、Rn Correction:1.0
No Zernike Terms:8
[工程(1)における研磨液供給量の低減効率の評価方法]
工程(1)の研磨は、研磨液供給量を100mL/分(0.076mL/(cm2・分))にて行っているが、別途、この研磨液供給量を下記の条件で減らした際に、研磨速度の低下が10%以内で抑えられるかについて求めた。すなわち、研磨速度の低下が10%以内で抑えられる場合、生産性を大幅に損なわずに研磨液供給量の低減が可能とみなし、経済性の観点から優れることを意味する。
研磨速度の低下(%)
=(研磨液供給量を低減した条件での研磨速度)/(研磨液供給量を100mL/分での研磨速度)×100
研磨液供給量の低減効率を下記基準で4段階評価した結果を、表2に示す。
[評価基準]
研磨液供給量の低減効率(相対値):評価
30%低減可能(70mL/分で研磨速度の低下が10%以内):A「極めて経済性に優れる」
20%低減可能(80mL/分で研磨速度の低下が10%以内):B「経済性に優れる」
10%低減可能(90mL/分で研磨速度の低下が10%以内):C「経済性にやや優れる」
10%低減不可(90mL/分で研磨速度の低下が10%より上):D「実生産では研磨液供給量の低減は困難」
[工程(3)後の突起欠陥の評価方法]
測定機器:OSA7100(KLA Tencor社製)
評価:研磨液組成物IIを用いて研磨を行い、その後、無作為に4枚を選択し、各々の基板を10000rpmにてレーザーを照射して砥粒突き刺さり数を測定した。その4枚の基板の各々両面にある砥粒突き刺さり数(個)の合計を8で除して、基板面当たりの砥粒突き刺さり数(突起欠陥数)(比較例1を100とした相対値)を算出した。突起欠陥数の相対値、及び、突起欠陥数を下記基準で評価した結果を、表2に示す。
[評価基準]
突起欠陥数(相対値):評価
95未満 :A「極めて発生が抑制され、基板収率向上が期待できる」
95以上110未満 :B「実生産可能」
110以上125未満:C「実生産には改良が必要」
125以上 :D「基板収率が大幅に低下する」
5.結果
表2に示すとおり、実施例1〜16では、比較例1〜6、参考例1〜9に比べて、工程(1)における粗研磨の研磨速度を大きく損ねることなく、そして、工程(3)の仕上げ研磨後の基板の突起欠陥数を悪化させることなく、工程(1)における粗研磨後の長周期欠陥(PED)を低減できた。
さらに表2が示すとおり、実施例1〜16では、比較例1〜6、参考例1〜9に比べて、工程(1)での研磨液供給量をより低減できうる。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、研磨速度を維持しつつ長周期欠陥を低減できるから、磁気ディスク基板製造の生産性を維持しつつ基板収率を向上できる。本開示は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造に好適に用いることができる。
51…第一研磨機、52…洗浄ユニット、53…第二研磨機

Claims (14)

  1. (1)研磨液組成物Iを用いて被研磨基板の研磨対象面を研磨する工程、
    (2)工程(1)で得られた基板を洗浄する工程、及び、
    (3)工程(2)で得られた基板を、シリカ粒子Cを含有する研磨液組成物IIを用いて研磨する工程を有し、
    前記工程(1)と(3)を別の研磨機で行う磁気ディスク基板の製造方法であって、
    (i)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iは、非球状シリカ粒子A、球状シリカ粒子B、酸、酸化剤及び水を含有し、
    (ii)前記工程(1)の前記研磨液組成物Iにおいて、前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比(A/B)が80/20以上99/1以下であり、シリカ粒子全体に対する非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの合計の含有量が98.0質量%を超え、
    (iii)前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、
    (iv)前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、
    (v)前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)が6.0nm以上80.0nm以下であり、
    (vi)前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板の製造方法。
  2. 前記非球状シリカ粒子Aが、金平糖型のシリカ粒子A1、異形型のシリカ粒子A2、異形かつ金平糖型のシリカ粒子A3、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  3. 前記非球状シリカ粒子AのCV90が、20.0%以上40.0%以下である、請求項1又は2記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  4. 前記球状シリカ粒子BのΔCV値が0%より上10%以下、かつ、CV90が10.0%以上35.0%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  5. 前記工程(1)における被研磨基板1枚当たりの研磨量が110mg以上160mg以下である、請求項1から4のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  6. 前記研磨液組成物Iが、アルミナ砥粒を実質含まない、請求項1から5のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  7. 前記非球状シリカ粒子Aが、水ガラス法により製造されたシリカ粒子である、請求項1から6のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  8. 前記球状シリカ粒子Bは、粒径が異なる2種類の粒子であり、
    前記2種類の粒子が、6.0nm以上15.0nm以下の球状粒子と15.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせ、又は、15.5nm以上30.0nm以下の球状粒子と30.5nm以上70.0nm以下の球状粒子との組み合わせである、請求項1から7のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  9. 前記研磨液組成物I中の非球状シリカ粒子Aと球状シリカ粒子Bの体積粒度分布の重なり頻度の合計が、0%以上50%以下である、請求項1から8のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  10. 前記研磨液組成物IのpHが、0.5以上6.0以下である、請求項1から9のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法。
  11. 被研磨基板が、Ni−Pめっきアルミニウム合金基板である、請求項1から10のいずれかに記載された磁気ディスク基板の製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)〜(3)を含む、磁気ディスク基板の研磨方法。
  13. 請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(1)の研磨を行う第一の研磨機と、
    請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(2)の洗浄を行う洗浄ユニットと、
    請求項1から11のいずれかに記載の磁気ディスク基板の製造方法における工程(3)の研磨を行う第二の研磨機とを備える磁気ディスク基板の研磨システム。
  14. 砥粒、酸、酸化剤及び水を含み、
    前記砥粒は、非球状シリカ粒子A及び球状シリカ粒子Bを含有し、
    前記非球状シリカ粒子Aと前記球状シリカ粒子Bの質量比A/Bが80/20以上99/1以下であり、
    前記非球状シリカ粒子AのΔCV値が0.0%より上10%未満であり、
    前記非球状シリカ粒子AのCV90が、20.0%以上40.0%以下であり、
    前記球状シリカ粒子BのΔCV値が0%より上10%以下、かつ、前記球状シリカBのCV90が10.0%以上35.0%以下であり、
    前記非球状シリカ粒子Aの動的光散乱法による体積平均粒径(D1)とBET法による比表面積換算粒径(D2)の粒径比(D1/D2)が2.00以上4.00以下であり、
    前記球状シリカ粒子Bの動的光散乱法による体積平均粒径D1が6.0nm以上80.0nm以下であり、
    前記酸が、リン酸類、ホスホン酸、有機ホスホン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、磁気ディスク基板用研磨液組成物。
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