JP7411498B2 - 研磨液組成物 - Google Patents

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Description

本開示は、研磨液組成物、磁気ディスク基板の製造方法、及び、基板の研磨方法に関する。
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化のためには、単位記録面積を縮小し、弱くなった磁気信号の検出感度を向上させる必要がある。そのため、磁気ヘッドの浮上高さをより低くするための技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、平滑性及び平坦性の向上(表面粗さ、うねり、端面ダレの低減)や表面欠陥低減(残留砥粒、スクラッチ、突起、ピット等の低減)が厳しく要求されている。
このような要求に対して、より平滑で、傷が少ないといった表面品質向上と生産性の向上を両立させる観点から、磁気ディスク基板の製造方法においては、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式が採用されることが多い。一般に、平滑性という要求を満たすために、コロイダルシリカ粒子を含む研磨剤が使用され、生産性向上の観点から、アルミナ粒子を砥粒として含む研磨液組成物が使用される。しかしながら、アルミナ粒子を砥粒として使用した場合、アルミナ粒子の基板への突き刺さりによって、磁気ディスク基板や、磁気ディスク基板に磁性層が施された磁気ディスクの欠陥を引き起こすことがある。
そこで、例えば、特許文献1及び2には、アルミナ粒子を含まず、シリカ粒子を砥粒として含有する研磨液組成物が提案されている。
特開2018-81733号公報 特開2019-182987号公報
アルミナ粒子に代えてシリカ粒子を砥粒とした従来の研磨液組成物では、アルミナの付着や突き刺さり等によるアルミナの残留が抑制され、研磨後の基板表面の突起欠陥を低減できる。しかし、アルミナ粒子に代えてシリカ粒子を砥粒とした研磨液組成物を使用する場合、短波長うねりを低減させるためには、アルミナ粒子を含む研磨液組成物よりも長時間の研磨時間を要し、生産性が低下するという問題がある。
そこで、本開示は、シリカ粒子を砥粒とする研磨において、研磨速度の向上と、研磨後の基板表面の短波長うねりの低減が可能な研磨液組成物を提供する。
本開示は、一態様において、シリカ粒子、及び水系媒体を含有し、前記シリカ粒子は、遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布において小粒径側からの累積頻度が10%、90%となる粒子径をそれぞれD10、D90としたとき、D10が70nm以下であり、D90が200nm以下であり、前記粒度分布の尖度が3以下である、研磨液組成物に関する。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含む、半導体基板、サファイア基板及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造方法に関する。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、被研磨基板が、半導体基板、サファイア基板及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法に関する。
本開示によれば、シリカ粒子を砥粒とする研磨において、研磨速度の向上と、研磨後の基板表面の短波長うねりの低減が可能になるという効果が奏されうる。
図1は、金平糖型コロイダルシリカ砥粒の透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」ともいう)観察写真の一例である。 図2は、異形型コロイダルシリカ砥粒のTEM観察写真の一例である。 図3は、シリカ粒子A2(実施例2)及びシリカ粒子A6(比較例1)のCPS測定による粒度分布を示す図である。 図4は、シリカ粒子A2(実施例2)及びシリカ粒子A6(比較例1)のDLS測定による粒度分布を示す図である。
シリカ粒子を砥粒として用いた場合の研磨速度を向上させる方法の一つとして、レーザー回折散乱法(DLS)による粒度分布のブロード化や、電子顕微鏡による個数換算の累積粒度分布のブロード化が知られている。
しかし、本発明者らが検討した結果、DLSによる粒度分布がブロード化されたシリカ粒子や電子顕微鏡による個数基準の累積粒度分布がブロード化されたシリカ粒子では、研磨速度の向上が不十分、または短波長うねりの発生の抑制が不十分であった。
驚くべきことに、これらの粒子は、遠心沈降法を用いて粒度分布を測定すると、連続的にブロードな粒度分布ではなく、一又は少数の高いピークが存在する分布、すなわち、従来技術(DLSによる粒度分布や電子顕微鏡による個数基準の累積粒度分布)で算出される尖度と比べて、高い尖度の粒度分布であることが見いだされた。
本開示は、遠心沈降法による粒度分布から算出される尖度が所定の小さい範囲になるように調整されたシリカ粒子を用いると、研磨速度の向上と、短波長うねり発生の抑制が可能になるという知見に基づく。一般に、磁気ディスク基板の製造において、短波長うねりを低減できれば研磨時間の短縮につながり、生産性も向上する。
すなわち、本開示は、一態様において、シリカ粒子、及び水系媒体を含有し、前記シリカ粒子は、遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布において小粒径側からの累積頻度が10%、90%となる粒子径をそれぞれD10、D90としたとき、D10が70nm以下であり、D90が200nm以下であり、前記粒度分布の尖度が3以下である、研磨液組成物(以下、「本開示の研磨液組成物」ともいう)に関する。
本開示の効果発現のメカニズムは明らかではないか、以下のように推察される。
シリカ粒子の遠心沈降法による粒度分布のブロード化は、局所的な粒径の偏りを減らして様々な粒子径を存在させる。これにより、例えば、大径粒子と小径粒子の二成分を混合したときよりも、研磨中の研磨パッドと被研磨基板との間における粒子の充填率が高くなるという効果がもたらされると考えられる。そのため、被研磨基板に対する粒子の接触面積がより拡大し、基板の切削面積が増加するため研磨速度を向上できると考えられる。さらに、シリカ粒子の遠心沈降法による粒度分布が、極端な小径粒子割合の低下や大径粒子割合の増加が抑制されたブロードな粒度分布であることにより、短波長うねりの発生を抑制することができると考えられる。また、遠心沈降法による粒度分布が連続的にブロード化されたシリカ粒子を含有する研磨液組成物に、非球状シリカをさらに含有させた場合、短波長うねりが更に低減され、研磨速度をより向上できると考えられる。
従来技術のDLSでは、粒子の散乱強度を見ているが、散乱強度は一般的に大径粒子の方が大きく、大径粒子が多い場合は全体的に大径粒子寄りの分布となると考えられる。また、SEMでは、画像上の粒径を直接見ているが、小径粒子程個数が多いため平均を取ると全体的に小径側に引っ張られた分布になると考えられる。これに対し、本開示で採用される遠心沈降法では、粒子の光透過率を見ているが、遠心分離により粒径毎の粒子の光透過率を見ることができ、DLSやSEMよりも分解能が高いと考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示において基板の「うねり」とは、粗さよりも波長の長い基板表面の凹凸をいう。本開示において「短波長うねり」とは、例えば、80~500μmの波長により観測されるうねりをいう。研磨後の基板表面の短波長うねりが低減されることにより、磁気ディスクドライブにおいて磁気ヘッドの浮上高さを低くすることができ、磁気ディスクの記録密度の向上が可能となる。基板表面の短波長うねりは、実施例に記載の方法により測定できる。
[シリカ粒子A(成分A)]
本開示の研磨液組成物は、砥粒として、シリカ粒子A(以下、「成分A」ともいう)を含有する。成分Aの使用形態としては、スラリー状であることが好ましい。成分Aは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
成分Aの遠心沈降法による重量換算での粒子径D10は、短波長うねり低減の観点から、70nm以下であって、60nm以下が好ましく、55nm以下がより好ましい。また、研磨速度向上の観点から、成分Aの粒子径D10は、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上がより好ましく、45nm以上が更に好ましい。より具体的には、成分AのD10は、30nm以上70nm以下が好ましく、40nm以上60nm以下がより好ましく、45nm以上55nm以下が更に好ましい。
成分Aの遠心沈降法による重量換算での粒子径D90は、短波長うねり低減の観点から、200nm以下であって、170nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。また、研磨速度向上の観点から、成分Aの粒子径D90は、80nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。より具体的には、成分AのD90は、80nm以上200nm以下が好ましく、90nm以上170nm以下がより好ましく、100nm以上150nm以下が更に好ましい。
成分Aの遠心沈降法による重量換算での粒子径D50は、研磨速度向上及び短波長うねり低減の観点から、180nm未満が好ましく、130nm以下がより好ましく、90nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Aの粒子径D50は、60nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、75nm以上が更に好ましい。より具体的には、成分AのD50は、60nm以上180nm以下が好ましく、70nm以上130nm以下がより好ましく、75nm以上90nm以下が更に好ましい。
本開示において、D10、D50及びD90とはそれぞれ、遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布において小径側からの累積頻度が10%、50%、90%となる粒径をいう。本開示において、遠心沈降法は、一又は複数の実施形態において、粒子を沈降速度差によってサイズごとに分級して検出する方法(ディスク遠心沈降光透過法)である。遠心沈降法による粒度分布は、例えば、ディスク遠心式粒子径分布測定装置(CPS Disc Centrifuge)を用いて測定できる。以下の説明において、遠心沈降法による粒度分布は、「CPS測定による粒度分布」ということもある。具体的には、実施例に記載の測定方法により算出できる。
成分Aの粒子径D90と粒子径D10との比(D90/D10)は、短波長うねり低減の観点から、1.7以上が好ましく、1.9以上がより好ましく、2.2以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、3以下が好ましく、2.9以下がより好ましく、2.8以下が更に好ましい。より具体的には、成分AのD90/D10は、1.7以上3以下が好ましく、1.9以上2.9以下がより好ましく、2.2以上2.8以下が更に好ましい。
成分Aの粒子径D90と粒子径D50との比(D90/D50)は、短波長うねり低減の観点から、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下が更に好ましい。より具体的には、成分AのD90/D50は、1.2以上2以下が好ましく、1.4以上1.9以下がより好ましく、1.5以上1.8以下が更に好ましい。
成分Aのスパンは、研磨速度向上及び短波長うねり低減の観点から、180nm未満が好ましく、160nm以下がより好ましく、140nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Aのスパンは、30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、60nm以上が更に好ましい。より具体的には、成分Aのスパンは、30nm以上180nm未満が好ましく、50nm以上160nm以下がより好ましく、60nm以上140nm以下が更に好ましい。本開示において、スパンは、式(D90-D10)により算出される値である。
成分Aの遠心沈降法による粒度分布の尖度(kurtosis)は、研磨速度向上及び短波長うねり低減の観点から、3以下であって、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、1以下が更に好ましく、0.5以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Aの前記粒度分布の尖度は、-3以上が好ましく、-2以上がより好ましく、-1.5以上が更に好ましく、-1以上が更に好ましく、-0.5以上が更に好ましい。より具体的には、成分Aの前記粒度分布の尖度は、-3以上3以下が好ましく、-2以上2.5以下がより好ましく、-1.5以上2以下が更に好ましく、-1以上1以下が更に好ましく、-0.5以上0.5以下が更に好ましい。本開示において、尖度(kurtosis)は、下記式により算出される値であり、遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布の鋭さを表す尺度である。尖度は0近いほど、正規分布に近い。
ただし、上記式中、nはデータの個数、xはデータ全体の平均値、sはデータ全体の標準偏差である。
成分Aの遠心沈降法による粒径分布を調整する方法の一実施形態としては、例えば、シリカ粒子の成長過程において、粒子成長時間、粒子温度、粒子濃度等を調整する方法が挙げられる。成分Aの遠心沈降法による粒径分布を調整する方法の他の実施形態としては、例えば、その製造段階における粒子の成長過程で新たな核となる粒子を加えることにより所望の粒径分布を持たせる方法、異なる粒径分布を有する2種類以上のシリカ粒子を混合して所望の粒径分布を持たせる方法等が挙げられる。
成分Aの平均二次粒子径は、研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、90nm以上が好ましく、95nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましく、そして、短波長うねり低減の観点から、180nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、110nm以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの平均二次粒子径は、90nm以上180nm以下が好ましく、95nm以上120nm以下がより好ましく、100nm以上110nm以下が更に好ましい。本開示において、成分Aの平均二次粒子径とは、動的光散乱法により測定される散乱強度分布に基づく平均粒径をいう。本開示において「散乱強度分布」とは、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)又は準弾性光散乱(QLS:Quasielastic Light Scattering)により求められるサブミクロン以下の粒子の体積換算の粒径分布のことをいう。本開示における成分Aの平均二次粒子径は、具体的には実施例に記載の方法により得ることができる。
成分Aとしては、コロイダルシリカ、湿式法シリカ(沈降法シリカ)、ヒュームドシリカ、粉砕シリカ、及びそれらを表面修飾したシリカ等が挙げられる。研磨速度向上と短波長うねり低減の観点から、成分Aは、コロイダルシリカ及び湿式法シリカから選ばれる少なくとも1種が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。
前記コロイダルシリカは、例えば、珪酸アルカリ水溶液を原料とした粒子成長による方法(以下、「水ガラス法」ともいう)、及び、アルコキシシランの加水分解物の縮合による方法(以下、「ゾルゲル法」)ともいう)により得たものが挙げられ、製造容易性及び経済性の観点から、好ましくは水ガラス法により得たものである。水ガラス法及びゾルゲル法により得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって製造できる。
前記沈降法シリカは、沈降法により得られるシリカ粒子である。沈降法シリカ粒子の製造方法としては、例えば、東ソー研究・技術報告 第45巻(2001)第65~69頁に記載の方法等の公知の方法が挙げられる。沈降法シリカ粒子の製造方法の具体例としては、例えば、珪酸ナトリウム等の珪酸塩と硫酸等の鉱酸との中和反応によりシリカ粒子を析出させる沈降法が挙げられる。前記中和反応を比較的高温でアルカリ性の条件で行うことが好ましく、これにより、シリカの一次粒子の成長が早く進行し、一次粒子がフロック状に凝集して沈降し、好ましくはこれをさらに粉砕することで、沈降法シリカ粒子が得られる。
成分Aの形状は、非球状でも球状でもよい。研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、成分Aは、一又は複数の実施形態において、球状シリカ粒子であることが好ましく、その他の一又は複数の実施形態において、球状シリカ粒子及び非球状シリカ粒子を含むものであることが好ましい。本開示において、球状シリカ粒子とは、粒子の平均アスペクト比が1.2未満となるシリカ粒子であり、非球状シリカ粒子とは、粒子の平均アスペクト比が1.2以上となるシリカ粒子のことである。平均アスペクト比とは、公知の走査型電子顕微鏡(SEM)および公知の画像解析システムを用いて、粒子の各々について求めた最小内接四角の長径/短径比の単純平均値である。
成分Aが非球状シリカ粒子を含む場合、非球状シリカ粒子の形状は、研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、非球状シリカ粒子の二次粒子径よりも粒径が小さいシリカ粒子を前駆体粒子として、複数の前駆体粒子が、凝集又は融着した形状が挙げられる。非球状シリカ粒子の種類としては、例えば、金平糖型のシリカ粒子Aa、異形型のシリカ粒子Ab、及び、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Acから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本開示において、金平糖型のシリカ粒子Aa(以下、「粒子Aa」ともいう)は、球状の粒子表面に特異な疣状突起を有するシリカ粒子をいう。粒子Aaは、好ましくは、最も大きい前駆体粒子a1と、粒径が前駆体粒子a1の1/5以下である1個以上の前駆体粒子a2とが、凝集又は融着した形状である。粒子Aaは、好ましくは粒径の小さい複数の前駆体粒子a2が粒径の大きな1個の前駆体粒子a1に一部埋没した状態である。粒子Aaは、例えば、特開2008-137822号公報に記載の方法により、得られうる。前駆体粒子の粒径は、TEM等による観察画像において1個の前駆体粒子内で測定される円相当径、すなわち、前駆体粒子の投影面積と同じ面積である円の長径として求められうる。異形型のシリカ粒子Ab、及び、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Acにおける前駆体粒子の粒径も同様に求めることができる。
本開示において、異形型のシリカ粒子Ab(以下、「粒子Ab」ともいう)は、2個以上の前駆体粒子、好ましくは2個以上10個以下の前駆体粒子が凝集又は融着した形状のシリカ粒子をいう(図1参照)。粒子Abは、好ましくは、最も小さい前駆体粒子の粒径を基準にして、粒径が1.5倍以内の2個以上の前駆体粒子が、凝集又は融着した形状である。粒子Abは、例えば、特開2015-86102号公報に記載の方法により、得られうる。
本開示において、異形かつ金平糖型のシリカ粒子Ac(以下、「粒子Ac」ともいう)は、前記粒子Abを前駆体粒子c1とし、最も大きい前駆体粒子c1と、粒径が前駆体粒子c1の1/5以下である1個以上の前駆体粒子c2とが、凝集又は融着した形状である。
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が更により好ましく、そして、経済性の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上25質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下が更に好ましく、2質量%以上15質量%以下が更により好ましい。成分Aが2種以上のシリカ粒子からなる場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Aが球状シリカ粒子と非球状シリカ粒子を含む場合、研磨速度向上及び短波長うねり低減の観点から、成分Aにおける球状シリカ粒子の割合は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、そして、100%未満が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましく、60%以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Aにおける非球状シリカ粒子の割合は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましく、そして、0%超が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、40%以上が更に好ましい。
成分Aの製造方法としては、例えば、珪酸ナトリウム等の珪酸アルカリ金属塩を原料とし、水溶液中で縮合反応させて粒子を成長させる水ガラス法、またはテトラエトキシシラン等のアルコキシシランを原料とし、アルコール等の水溶性有機溶媒を含有する水中で縮合反応させて成長させるアルコキシシラン法で得られる。
[水系媒体]
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A及び必要に応じて配合される後述する任意成分(成分B、成分C、その他の成分)を除いた残余とすることができる。
[酸(成分B)]
本開示の研磨液組成物は、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、酸(以下、「成分B」ともいう)を含有してもよい。本開示において、酸の使用は、酸及び/又はその塩の使用を含む。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
成分Bとしては、例えば、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、アミド硫酸等の無機酸;有機リン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;等が挙げられる。中でも、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、成分Bとしては、リン酸、硫酸及び1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、硫酸及びリン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、リン酸が更に好ましい。これらの酸の塩としては、例えば、上記の酸と、金属、アンモニア及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種との塩が挙げられる。上記金属の具体例としては、周期表の1~11族に属する金属が挙げられる。これらの中でも、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、上記の酸と、1族に属する金属又はアンモニアとの塩が好ましい。
本開示の研磨液組成物が成分Bを含有する場合、本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が更により好ましい。より具体的には、成分Bの含有量は、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下が更により好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[酸化剤(成分C)]
本開示の研磨液組成物は、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、酸化剤(以下、「成分C」ともいう)を含有してもよい。成分Cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
成分Cとしては、同様の観点から、例えば、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、硝酸類、硫酸類等が挙げられる。これらの中でも、成分Cとしては、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、研磨速度向上の観点、被研磨基板の表面に金属イオンが付着しない観点及び入手容易性の観点から、過酸化水素がより好ましい。
本開示の研磨液組成物が成分Cを含有する場合、本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、研磨速度の更なる向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、研磨速度の更なる向上及び短波長うねりの更なる低減の観点から、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Cの含有量は、0.01質量%以上4質量%以下が好ましく、0.05質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[その他の成分]
本開示の研磨液組成物は、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、腐食抑制剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤、水溶性高分子等が挙げられる。前記その他の成分は、本開示の効果を損なわない範囲で研磨液組成物中に含有されることが好ましく、本開示の研磨液組成物中の前記その他の成分の含有量は、0質量%以上が好ましく、0質量%超がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。より具体的には、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0質量%超10質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
[アルミナ砥粒]
本開示の研磨液組成物は、突起欠陥低減の観点から、アルミナ砥粒を実質的に含まないことが好ましい。本開示において「アルミナ砥粒を実質的に含まない」とは、一又は複数の実施形態において、アルミナ粒子を含まないこと、砥粒として機能する量のアルミナ粒子を含まないこと、又は、研磨結果に影響を与える量のアルミナ粒子を含まないこと、を含みうる。具体的には、本開示の研磨液組成物中のアルミナ砥粒の含有量は、一又は複数の実施形態において、突起欠陥の低減の観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%が更に好ましい。また、本開示の研磨液組成物中のアルミナ粒子の含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨液組成物中の砥粒全量に対し、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%であることが更により好ましい。
[pH]
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度の更なる向上、及び短波長うねりの更なる低減の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましく、1以上が更により好ましく、1.2以上が更により好ましく、1.4以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、9未満であって、6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましく、2.5以下が更により好ましく、2以下が更により好ましい。より具体的には、本開示の研磨液組成物のpHは、0.5以上9未満が好ましく、0.5以上6以下がより好ましく、0.7以上4以下が更に好ましく、1以上3以下が更に好ましい。pHは、前述の酸(成分B)や公知のpH調整剤を用いて調整することができる。上記のpHは、25℃における研磨液組成物のpHであり、pHメータを用いて測定でき、好ましくは、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して2分後の数値である。
[研磨液組成物の製造方法]
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、水系媒体、及び必要に応じて任意成分(成分B、成分C及びその他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも成分A及び水系媒体を配合する工程を含む、研磨液組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、水系媒体、及び必要に応じて任意成分(成分B、成分C及びその他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。シリカスラリー及び研磨液組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、上述した本開示に係る研磨液組成物中の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、使用時、すなわち、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点における前記各成分の含有量をいう。本開示の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストをさらに低くできる点で好ましい。本開示の研磨液組成物の濃縮物は、使用時に、必要に応じて前述の水で適宜希釈して使用すればよい。
[研磨液キット]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を製造するための研磨液キットであって、成分A及び水系媒体を含むシリカ分散液が容器に収容された容器入りシリカ分散液を含む、研磨液キット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。本開示に係る研磨液キットは、前記容器入りシリカ分散液とは別の容器に収納された、成分B及び成分Cの少なくとも一方を含む添加剤水溶液をさらに含むことができる。本開示によれば、砥粒としてシリカ粒子を使用した場合でも、研磨速度の向上と、研磨後の基板表面の短波長うねりの低減が可能な研磨液組成物を得ることができる。
本開示の研磨液キットの一実施形態としては、例えば、成分A及び水系媒体を含むシリカ分散液(スラリー)と、必要に応じて成分B及び成分Cを含む添加剤水溶液とを相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。シリカ分散液に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の全量でもよいし、一部でもよい。前記シリカ分散液及び前記添加剤水溶液にはそれぞれ必要に応じて上述したその他の成分が含まれていてもよい。
[被研磨基板]
被研磨基板は、一又は複数の実施形態において、半導体基板、LED基板、及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造に用いられる基板が好ましい。半導体基板は、例えば、シリコンウエーハである。LED基板は、例えば、サファイア基板である。本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造に好適に用いられる。すなわち、本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板用研磨液組成物である。磁気ディスク基板としては、例えば、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板又はガラス基板等が挙げられる。本開示において「Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板」とは、アルミニウム合金基材の表面を研削後、無電解Ni-Pメッキ処理したものをいう。被研磨基板の表面を本開示の研磨液組成物を用いて研磨する工程の後、スパッタ等でその基板表面に磁性層を形成する工程を行うことにより磁気ディスク基板を製造できる。被研磨基板の形状は、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状が挙げられ、好ましくはディスク状の被研磨基板である。ディスク状の被研磨基板の場合、その外径は例えば10~120mmであり、その厚みは例えば0.5~2mmである。
一般に、磁気ディスクは、研削工程を経た被研磨基板が、粗研磨工程、仕上げ研磨工程を経て研磨され、磁性層形成工程を経て製造される。本開示に係る研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、粗研磨工程における研磨に使用されることが好ましい。
[基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、基板の製造方法(以下、「本開示の基板製造方法」ともいう。)に関する。本開示の基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、半導体基板、サファイア基板、及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造方法である。本開示の基板製造方法における、本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程は、例えば、粗研磨工程である。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤で被研磨基板を挟み込み、本開示の研磨液組成物を研磨面に供給し、圧力を加えながら研磨パッドや被研磨基板を動かすことにより、被研磨基板を研磨することができる。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程における研磨荷重は、研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、3kPa以上が好ましく、5kPa以上がより好ましく、7kPa以上が更に好ましく、そして、30kPa以下が好ましく、25kPa以下がより好ましく、20kPa以下が更に好ましい。より具体的には、研磨荷重は、3kPa以上30kPa以下が好ましく、5kPa以上25kPa以下がより好ましく、7kPa以上20kPa以下が更に好ましい。本開示において「研磨荷重」とは、研磨時に被研磨基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。研磨荷重の調整は、定盤や基板等への空気圧や重りの負荷によって行うことができる。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程における、被研磨基板1cm2あたりの研磨量は、研磨速度の確保及び短波長うねり低減の観点から、0.2mg以上が好ましく、0.3mg以上がより好ましく、0.4mg以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2.5mg以下が好ましく、2mg以下がより好ましく、1.6mg以下が更に好ましい。より具体的には、被研磨基板1cm2あたりの研磨量は、0.2mg以上2.5mg以下が好ましく、0.3mg以上2mg以下がより好ましく、0.4mg以上1.6mg以下が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程における被研磨基板1cm2あたりの研磨液組成物の供給速度は、経済性の観点から、2.5mL/分以下が好ましく、2mL/分以下がより好ましく、1.5mL/分以下が更に好ましく、そして、研磨速度向上の観点から、0.01mL/分以上が好ましく、0.03mL/分以上がより好ましく、0.05mL/分以上が更に好ましい。より具体的には、被研磨基板1cm2あたりの研磨液組成物の供給速度は、0.01mL/分以上2.5mL/分以下が好ましく、0.03mL/分以上2mL/分以下がより好ましく、0.05mL/分以上1.5mL/分以下が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物を研磨機へ供給する方法としては、例えば、ポンプ等を用いて連続的に供給を行う方法が挙げられる。研磨液組成物を研磨機へ供給する際は、全ての成分を含んだ1液で供給する方法の他、研磨液組成物の保存安定性等を考慮して、複数の配合用成分液に分け、2液以上で供給することもできる。後者の場合、例えば供給配管中又は被研磨基板上で、前記複数の配合用成分液が混合され、本開示の研磨液組成物となる。
本開示の基板製造方法によれば、研磨速度の向上と、研磨後の基板表面の短波長うねりの低減が可能となるため、基板品質が向上した基板(例えば、磁気ディスク基板)を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
[研磨方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含む、基板の研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。本開示の研磨方法は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板を研磨するための研磨方法である。本開示の研磨方法における、本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程は、例えば、粗研磨工程である。
本開示の研磨方法を使用することにより、研磨速度の向上と、研磨後の基板表面の短波長うねりの低減が可能となるため、基板品質が向上した基板(例えば、磁気ディスク基板)の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示の基板製造方法と同じようにすることができる。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
1.研磨液組成物の調製
シリカ粒子(成分A)、酸(成分B)、酸化剤(成分C)、及び水を混合し、表1に示す実施例1~6及び比較例1~5の研磨液組成物を調製した。研磨液組成物中の各成分の含有量(有効分)は、シリカ粒子(成分A):6質量%、酸(成分B):1質量%、酸化剤(成分C):1質量%とした。水の含有量は、成分A、成分B及び成分Cを除いた残余である。実施例1~6及び比較例1~5の研磨液組成物は、アルミナ砥粒を含んでいない。砥粒に用いたシリカ粒子(成分A)は、水ガラス法により製造されたものである。実施例1~6及び比較例1~5の研磨液組成物のpHは1.5であった。pHは、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて25℃にて測定し、電極を研磨液組成物へ浸漬して2分後の数値を採用した。
研磨液組成物の調製に用いた成分A、成分B及び成分Cには以下のものを使用した。
<成分A>
(シリカ粒子A1~A5の調製)
水酸化アンモニウムを含有する水性シリカゾルのヒール(元粒子)に、分布を調節した金属珪素を導入し、アンモニア存在下で珪素と水とを反応させてシリカ粒子を成長させ、ヒール中のシリカ濃度と表面積および反応混合物中のシリカの生成速度を調節する。このとき、既存のヒール上でシリカを重合させ、水性シリカゾル中の粒子サイズを増大させることにより(ビルドアップ)、従来よりも分布が広く尖度の低いシリカ粒子A1~A5(球状シリカ)を調製した。球状シリカ粒子A1~A5の平均アスペクト比は1.05であった。
(シリカ粒子A6~A9の詳細)
A6:球状シリカ粒子[コロイダルシリカ(水ガラス法)、尖度未調整サンプル1](平均アスペクト比:1.05)
A7:球状シリカ粒子[コロイダルシリカ(水ガラス法)、SI-80(日揮触媒化成社製)](平均アスペクト比:1.05)
A8:非球状シリカ粒子[異形型、尖度未調整サンプル2](平均アスペクト比:1.30)
A9:非球状シリカ粒子[異形型、尖度未調整サンプル3](平均アスペクト比:1.25)
<成分B>
リン酸[濃度75%、日本化学工業社製]
<成分C>
過酸化水素[濃度35質量%、ADEKA社製]
2.各パラメータの測定方法
[遠心沈降法(CPS測定)によるシリカ粒子の粒子径D10、D50及びD90の測定方法]
シリカ粒子をイオン交換水で希釈し、シリカ粒子を0.4質量%含有する分散液を調製して試料とし、下記測定装置を用いて遠心沈降法による粒度分布を測定した。遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布において小径側からの累積頻度が10%、50%、90%となる粒径をそれぞれD10、D50、D90とした。
<測定条件>
測定装置:CPS Instruments社製の「CPS DC24000 UHR」
測定範囲:0.02~3μm
粒子の消衰係数:0.1
粒子の形状因子:1.2 or 1.0
回転数:18,000rpm
校正用標準粒子径:0.476μm
標準粒子密度:1.0465(13%、34℃)
密度勾配溶液:スクロース水溶液(8%、24%)
溶媒の粘度:1.16cp(13%、34℃)
溶媒の屈折率:1.3592(18%、34℃)
測定温度:15~45℃
測定時間:3~420分
[遠心沈降法(CPS測定)による粒度分布の尖度]
成分Aの尖度は、上記遠心沈降法(CPS)により得られる重量換算での粒度分布のデータをもとに、下記式により算出した。
ただし、上記式中、nはデータの個数、xはデータ全体の平均値、sはデータ全体の標準偏差である。
[DLS測定によるシリカ粒子の粒子径D10、D50及びD90の測定方法]
シリカ粒子をリン酸及びイオン交換水と混合して1質量%シリカ粒子分散液を調製した。なお、実施例6では、球状シリカ粒子A4と非球状シリカ粒子A9との質量比が60/40となるように配合した。調製した1質量%シリカ粒子分散液を、下記測定装置内に投入し、下記条件で測定した。得られた粒度分布において、小径側からの累積体積頻度が10%、50%、90%となる粒子径をそれぞれD10、D50、D90とした。なお、DLSによるD50は、シリカ粒子の平均二次粒子径(体積平均粒子径)とした。測定結果を表1に示した。
<測定条件>
測定機器:マルバーン ゼータサイザー ナノ「Nano S」
サンプル量:1.5mL
レーザー : He-Ne、3.0mW、633nm
散乱光検出角:173°
[SEM測定によるシリカ粒子の粒子径D10、D50及びD90の測定方法]
シリカ粒子をイオン交換水と混合して0.1質量%シリカ粒子分散液を調整した。調整した0.1%シリカ粒子分散液をSEM(日立ハイテクノロジーズ製、FE-4800、30kV、1~10万倍)で観察し、得られた写真をパーソナルコンピュータにスキャナで画像データとして取込み、画像解析ソフト(三谷商事「WinROOF(Ver.3.6)」)を用いて500個のシリカ粒子の投影画像解析をした。得られた粒度分布において、小径側からの累積体積頻度が10%、50%、90%となる粒子径をそれぞれD10、D50、D90とした。
[DLSによる粒度分布の尖度、及びSEMによる粒度分布の尖度の測定方法]
DLSによる粒度分布の尖度、及び、SEMによる粒度分布の尖度は、CPSによる粒度分布の尖度の測定方法と同様の方法を用いて算出した。
[シリカ粒子の平均アスペクト比]
シリカ粒子をTEM(日本電子社製「JEM-2000FX」、80kV、1~5万倍)で観察した写真を、パーソナルコンピュータにスキャナで画像データとして取込み、解析ソフト(三谷商事「WinROOF(Ver.3.6)」)を用いて500個のシリカ粒子の投影画像について下記の通り解析した。
個々のシリカ粒子の短径及び長径を求め、長径を短径で除した値からアスペクト比の平均値(平均アスペクト比)を得た。
3.基板の研磨
調製した実施例1~6及び比較例1~5の研磨液組成物を用いて、下記の研磨条件で被研磨基板を研磨した。
[研磨条件]
研磨機:両面研磨機(9B型両面研磨機、スピードファム社製)
被研磨基板:Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板、厚さ0.8mm、直径95mm、枚数10枚
研磨液:研磨液組成物
研磨パッド:スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー、厚み1.0mm、平均気孔径30μm、表面層の圧縮率2.5%、Filwel社製)
定盤回転数:40rpm
研磨荷重:9.8kPa(設定値)
研磨液供給量:60mL/min
研磨時間:5分間
4.評価方法
[研磨速度の評価]
実施例1~6及び比較例1~5の研磨液組成物の研磨速度は、以下のようにして評価した。まず、研磨前後の各基板の重さを計り(Sartorius社製、「BP-210S」)を用いて測定し、各基板の質量変化から質量減少量を求めた。全10枚の平均の質量減少量を研磨時間で割った値を研磨速度とし、下記式に導入することにより算出した。そして、比較例1の研磨速度を100とした相対値を算出した。
質量減少量(g)={研磨前の質量(g)-研磨後の質量(g)}
研磨速度(g/min)=質量減少量(g)/研磨時間(min)
[短波長うねりの評価]
研磨後の10枚の基板から任意に2枚を選択し、選択した各基板の両面を任意の4点(計16点)について、下記の条件で測定した。その16点の測定値の平均値を基板の短波長うねりとして算出した。そして、比較例1の短波長うねりを100とした相対値を算出した。
<測定条件>
機器:Zygo NewView7300
レンズ:2.5倍 Michelson
ズーム比:0.5倍
リムーブ:Cylinder
フィルター:FFT Fixed Band Pass
うねり波長:80~500μm
エリア:4.33mm×5.77mm
5.結果
各評価の結果を表1に示した。
表1に示されるように、所定のシリカ粒子を用いた実施例1~6の研磨液組成物は、比較例1~5に比べて、研磨速度が向上し、短波長うねりが低減されていた。
さらに、シリカ粒子A2(実施例2)及びシリカ粒子A6(比較例1)について、CPS測定による粒度分布とDLS測定による粒度分布を図3~4に示した。
図4に示されるように、シリカ粒子A2(実施例2)及びシリカ粒子A6(比較例1)のDLS測定による粒度分布では、ほぼ同様の連続的なブロードな粒度分布であっても、図3に示されるように、シリカ粒子A6(比較例1)のCPS測定による粒度分布では2つのピークが確認され、連続的なブロードな粒度分布ではなく、シリカ粒子A2(実施例2)よりも尖度が高い粒度分布であることが確認された。
本開示によれば、研磨速度を向上させ、研磨後の短波長うねりを低減できるから、基板品質が向上した基板の生産性を向上できる。本開示は、磁気ディスク基板の製造に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. シリカ粒子、及び水系媒体を含有し、
    前記シリカ粒子は、遠心沈降法により得られる重量換算での粒度分布において小粒径側からの累積頻度が10%、90%となる粒子径をそれぞれD10、D90としたとき、D10が70nm以下であり、D90が200nm以下であり、前記粒度分布の尖度が3以下である、研磨液組成物。
  2. 前記シリカ粒子のD10が30nm以上であり、D90が80nm以上であり、前記粒度分布の尖度が-3以上である、請求項1に記載の研磨液組成物。
  3. 前記シリカ粒子は、前記粒度分布において小粒径側からの累積頻度が50%となる粒子径をD50としたとき、D50が70nm以上180nm未満である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
  4. 前記シリカ粒子の粒子径D90と粒子径D10との比(D90/D10)が1.7以上3以下である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
  5. 前記粒度分布において小粒径側からの累積頻度が50%となる粒子径をD50としたとき、前記シリカ粒子の粒子径D90と粒子径D50との比(D90/D50)が1.2以上2以下である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
  6. 前記シリカ粒子は、球状シリカ粒子である、請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物。
  7. 前記シリカ粒子は、球状シリカ粒子及び非球状シリカ粒子を含む、請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物。
  8. 前記シリカ粒子における球状シリカ粒子の割合が10%以上100%未満であり、
    前記シリカ粒子における非球状シリカ粒子の割合が90%以下0%超である、請求項7に記載の研磨液組成物。
  9. 前記研磨液組成物が、アルミナ砥粒を実質的に含有しない、請求項1から8のいずれかに記載の研磨液組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含む、半導体基板、サファイア基板及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造方法。
  11. 請求項1から9のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含み、
    被研磨基板が、半導体基板、サファイア基板及び磁気ディスク基板から選ばれる少なくとも1種の基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
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