JP7096094B2 - 樹脂製透明継手 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の排水等の接続に用いられる樹脂製透明継手に関する。
一般に、マンション等の建物内部には、キッチンやトイレ等の排水機器から発生した各戸の汚水を排出するための排水管が設置されている。このような排水管を構成する管には、例えば着色されたポリ塩化ビニル管が用いられる。そして、汚水等の流体を複数の経路から合流する場合、又は二以上の管を接続する場合には、複数の受口部を有する継手が用いられる。継手の各受口部に管を挿入し、固定することによって複数の管が接続される。上記のように管を継手の受口部に固定する際には、接着剤が使用される。
特許文献1には、ポリ塩化ビニル系樹脂及び炭酸カルシウムを含有する樹脂組成物を用いて形成される耐火用管継手が紹介されている。
特許文献1の発明によれば、継手の軽量化と耐火性能の向上が図られている。
特開2011-226581号公報
しかしながら、特許文献1に記載の継手は、軽量で、かつ、耐火性能に優れるものの、顔料等の色素成分が多量に入っており、継手に対する管の挿入状態を外部から確認できない。
継手を透明にするために単に色素成分の含有量を減らすと、継手に含まれる色素成分が均一に分散せず、継手に色ムラが生じる。
この色ムラは、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を妨げ、接着剤の塗りムラを生じていた。
そこで、本発明は、接着剤の塗りムラを抑制できる樹脂製透明継手を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であり、
下記条件1及び下記条件2を満たす、樹脂製透明継手。
<条件1>
・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
<条件2>
・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
[2]着色剤を含有し、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記着色剤の含有量が0.005質量部以上0.030質量部以下であり、前記着色剤の総質量に対して前記着色剤の色素成分の含有量が2質量%以上10質量%以下である、[1]に記載の樹脂製透明継手。
[3]さらに無機難燃剤を含有し、前記無機難燃剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂製透明継手。
本発明の樹脂製透明継手によれば、接着剤の塗りムラを抑制できる。
本発明の一実施形態に係る樹脂製透明継手を示す断面図である。
本明細書において、「透明」とは、全光線透過率が40%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。全光線透過率は、継手から作製した試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合をいう。全光線透過率は、JIS K7361-1に準じて測定できる。
[樹脂製透明継手]
以下、本発明の実施の形態による樹脂製透明継手について、図面に基づいて説明する。
図1の樹脂製透明継手1は、排水管の接続に使用されるチーズ型の樹脂製透明継手である。樹脂製透明継手1は、二つの管軸O1及びO2を有し、内部に流路を有する。二つの管軸O1及びO2は、略直交する。
樹脂製透明継手1は、内部に流路を有する管状の本体部10と、この本体部10の三つの開口部にそれぞれ一体に形成された受口部12を有する。
受口部12には、受口部12の内径とほぼ同外径の管部材が挿入される。受口部12の開口部12bの内径は、本体部10の開口部の内径より大きい。
本体部10の三つの開口部のうち、二つは第1の管軸O1と同軸の円形である。
また、三つの受口部12のうち、二つは第1の管軸O1と同軸の管状である。第1の管軸O1の一端側の受口部を第1の受口部12A、他端側の受口部を第2の受口部12Bということもある。残りの一つは第2の管軸O2と同軸の管状であり、第3の受口部12Cということもある。
図1において、XおよびYは、樹脂製透明継手1を射出成形する際に用いられる射出成型用金型のキャビティ内(空間)に樹脂組成物を導入するゲートの位置を示し、樹脂製透明継手1にはゲートに対応する位置にゲート痕が形成される。
光透過率のばらつきを小さくし、色ムラを抑制する観点から、各受口部12A、12B、12Cの厚さは均一であることが好ましい。
各受口部12A、12B、12Cの厚さは、特に限定されないが、例えば、2mm以上8mm以下が好ましく、4mm以上6mm以下がより好ましい。各受口部12A、12B、12Cの厚さが上記下限値以上であると、受口部12の強度を維持しやすい。上記上限値以下であると、受口部12の視認性を向上しやすい。
本体部10の厚さは、特に限定されず、例えば、6mm以上12mm以下が好ましく、8mm以上10mm以下がより好ましい。本体部10の厚さが上記下限値以上であると、本体部10の強度を維持しやすい。上記上限値以下であると、樹脂製透明継手1の軽量化を図りやすい。
樹脂製透明継手1は、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を含有する。すなわち、樹脂製透明継手1は、樹脂組成物を成形することによって製造される。通常、樹脂製透明継手1は、樹脂組成物を射出成形することによって製造される。
樹脂製透明継手1は、樹脂製透明継手1の全体が樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。
ゲート位置をXとした場合、熱により変形しやすいゲート位置が本体部10にないため、防火区画貫通部に樹脂製透明継手1の本体部10が埋設されている場合であっても、耐火性能が低下しにくい。ゲート位置を本体部10のYとした場合、ゲートから各受口部12までの距離が等しく、より受口部12の色ムラを抑制することができる。なお、Xについては2カ所のうちいずれか一方、または両方をゲートとして用いることができる。また、X、Yの位置は例示であって、Xは受口部12の端面部分ではなく側面でもよく、受口部12A、12B、12Cの何れにあってもよく、Yは受口部12A、12B、12Cからの距離が等しくなる位置であれば本体部10のどこにあってもよい。
<樹脂組成物>
樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂はさらに塩素化されてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩化ビニルモノマーをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は架橋されていてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋方法としては、例えば、架橋剤及び過酸化物を添加する方法、電子線を照射する方法、水架橋性材料を使用する方法等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上1600以下であることが好ましく、600以上1400以下であることがより好ましい。ここで、平均重合度は、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K-6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度である。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が前記下限値以上であれば、機械的強度を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な成形性を確保できる。
樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂としては、上述した他のモノマーのポリマーが挙げられる。
樹脂組成物において、樹脂の総質量に対するポリ塩化ビニル系樹脂の含有量は、70~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましい。
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤に含まれる色素成分としては、青色染料や顔料が挙げられる。
青色染料又は顔料としては、樹脂の青色着色剤として知られている無機又は有機の青色染料又は顔料を用いることができる。青色染料又は顔料としては、500~750nmの波長域、特に550~700nmの波長域に吸収極大を有するものが好ましく、例えば、アンスラキノン系、アゾメチン系、フタロシアニン系、インディゴ系等の青色染料や、群青、紺青、コバルトブルー、インダスレンブルー、セルリアンブルー等の顔料が挙げられる。
着色剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.005質量部以上0.030質量部以下が好ましく、0.010質量部以上0.025質量部以下がより好ましく、0.015質量部以上0.025質量部以下がさらに好ましい。着色剤の含有量が上記下限値以上であると、所望の色調の樹脂製透明継手1を得られやすい。着色剤の含有量が上記上限値以下であると、樹脂製透明継手1を透明にしやすい。
着色剤の色素成分の含有量は、着色剤の総質量に対して、2質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。着色剤の色素成分の含有量が上記下限値以上であると、着色剤を過剰に配合しなくてもよい。着色剤の色素成分の含有量が上記上限値以下であると、色素成分がより均一に分散して、色ムラを抑制しやすい。
着色剤の色素成分の含有量は、紫外可視近赤外分光光度計によって測定できる。
具体的には、紫外可視近赤外分光光度計の光透過波形から測定対象が含有する色素成分を同定し、測定対象と同じ種類の着色剤を使って色が合うように調整したサンプルを用意し、そのサンプルの調整に含まれる色素成分の量を、測定対象の色素成分の含有量とする。
着色剤の色素成分以外のバインダー成分として、着色剤が粉末状の場合には金属石鹸や、ポリエチレンワックス、着色剤が液状の場合には可塑剤や、可塑剤モノマー、界面活性剤、着色剤がペレット状(所謂マスターバッチ)の場合には可塑剤モノマーや塩化ビニル樹脂等の樹脂を含有しており、これらの成分を複数含有していてもよい。
着色剤が色素成分よりもバインダー成分を多量に含有することで、微量の色素であってもポリ塩化ビニル系樹脂中に均一に分散できる。
(無機難燃剤)
樹脂組成物は、無機難燃剤を含有してもよい。無機難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の無機水酸化物や、セピオライト、ベントナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト等の無機化合物が挙げられる。これらの無機化合物は、加熱された際に吸熱作用を有して温度上昇を抑制する。このため、これらの無機化合物は、難燃剤として機能する。
水酸化マグネシウムは、脱水反応が300℃以上で生じるため、吸熱剤として水酸化マグネシウムを用いた場合には、樹脂組成物を成形して樹脂製透明継手1を作製する際に脱水反応が生じることを抑制できる。
水酸化アルミニウムは、脱水反応が200℃程度で生じるため、吸熱剤として水酸化アルミニウムを用いた場合には、火災の際に樹脂製透明継手1に伝わった熱を早めに吸熱することができる。そのため、配管材が熱膨張する前に樹脂製透明継手1が変形して耐火性を損なうことをより抑制できる。
ハイドロタルサイトは化学名をマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレートと言い、MgAl(OH)16CO・4HOなどに代表される鉱物の一種である。ハイドロタルサイトは、正に帯電した基本層[Mg1-xAl(OH)x+と、負に帯電した中間層[(COx/2・mH2O]x-からなる層状の無機化合物である。多くの2価、3価の金属がこれと同様の層状構造をとり、これらは次のような一般式で表される。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+[An- x/n・mHO]x-
2+:Mg2+、Zn2+などの2価金属イオン。
3+:Al3+、Fe3+などの3価金属イオン。
n-:CO 2-、Cl、NO などのn価アニオン。
X:0<X≦0.33。
ハイドロタルサイトは、分子間に有している結晶水が約180℃から脱水を開始し、その結晶水は約300℃で完全に脱離する。この状態までは合成ハイドロタルサイトは結晶構造を保持しているが、約350℃を超えると結晶構造が崩壊し始め、水と二酸化炭素を放出する。そして、合成ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂の熱分解温度である約200℃~300℃よりも60℃~75℃低い温度で吸熱分解を開始するため、塩化ビニル系樹脂の熱分解をハイドロタルサイトの吸熱分解で効率的に抑制することができる。
無機難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはハイドロタルサイトを併用してもよい。
樹脂製透明継手1は、無機難燃剤を含有することにより耐火性能に優れる。
無機難燃剤が、無機水酸化物の場合、無機難燃剤は塩基性である。樹脂製透明継手1に塩基性の無機難燃剤が添加されていると、ポリ塩化ビニル系樹脂は塩基性材料により脱塩酸反応が促進される。このため、継手が黄色く変色するヤケと呼ばれる現象が起きやすくなる。また、樹脂組成物を透明にするためには無機水酸化物の粒径を小さくする必要があり、無機水酸化物の表面積が増大し、より一層脱塩酸反応が促進されやすくなり、ヤケが起きやすくなる。さらに、継手が透明の場合には、継手内部のヤケが外部から見えるため、色ムラとしてより目立ってしまう。ヤケた状態の樹脂は波長380nm~480nmの光を吸収して黄色を呈する。そこで、本実施形態では、上記の着色剤として波長550nm~750nmの光を吸収する色素成分を有するものを使用し、波長380nm~480nmの吸収よりも波長550nm~750nmの吸収の方が大きくなるように調整することでヤケによる黄色を目立たなくし、色ムラの少ない継手とする。
無機難燃剤は、通常、粒子状である。無機難燃剤の体積平均粒子径は1nm以上5000nm以下であることが好ましく、1nm以上1000nm以下であることがより好ましく、10nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
なお、樹脂製透明継手1に成形された後に無機難燃剤の粒子径を測定する場合には、透過電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて樹脂製透明継手1の断面を測定し、断面に存在する無機難燃剤の粒子50個について外径の長さの平均値を算出することで、無機難燃剤の体積平均粒子径が求められる。
無機難燃剤のBET比表面積は1m/g以上40m/g以下であることが好ましく、1m/g以上20m/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
無機難燃剤の体積平均粒子径及びBET比表面積が上記数値範囲内であると、難燃剤としての効果を充分に発揮でき、樹脂製透明継手1の耐火性能を向上できる。加えて、ヤケの発生を抑制し、色ムラを抑制できる。
無機難燃剤は、その粒子表面がステアリン酸などの高級脂肪酸や、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。高級脂肪酸やシランカップリング剤により表面処理された無機難燃剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する分散性が高くなり、難燃剤としての効果をより発揮しやすくなる。また、無機難燃剤が塩基性の場合には、ポリ塩化ビニル系樹脂をヤケにくくし、黄変を防止することができる。
無機難燃剤を高級脂肪酸やシランカップリング剤により表面処理する場合、高級脂肪酸やシランカップリング剤の含有量は無機難燃剤100質量部に対して0.05質量部以上2質量部以下であることが好ましい。高級脂肪酸やシランカップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する無機難燃剤の分散性を充分に高くできる。高級脂肪酸やシランカップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、経済性の低下を抑制できる。
樹脂組成物における無機難燃剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.03質量部以上5.0質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下が特に好ましい。樹脂組成物における無機難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、樹脂製透明継手1の耐火性能を向上できる。樹脂組成物における無機難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、樹脂製透明継手1を製造する際の成形性を向上でき、樹脂製透明継手1の色ムラを抑制できる。
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記無機難燃剤以外の他の難燃剤が含まれてもよい。
他の難燃剤としては、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン;三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物;トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物;ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等のホウ酸系化合物が挙げられる。前記他の難燃剤のなかでも、ポリ塩化ビニル系樹脂の燃焼抑制効果が高いことから、三酸化アンチモンが好ましい。
(安定剤)
樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解を目的で安定剤を含有することが好ましい。安定剤としては、例えば、スズ系安定剤、Ca-Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩との混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂製透明継手1を透明にする場合にはスズ系安定剤またはCa-Zn系安定剤が好ましい。スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類などの硫黄を含まないものがさらに好ましい。Ca-Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものがさらに好ましい。
安定剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。安定剤の含有量が上記下限値以上であれば、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性を向上させることができ、上記下限値以下であれば、燃焼時においてポリ塩化ビニル系樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、熱安定化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が含まれてもよい。
これらの添加剤(任意成分)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記任意成分の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
樹脂製透明継手1は、2以上の受口部12を有し、全ての受口部12の全光線透過率が40%以上である。全ての受口部12の全光線透過率が40%以上であることにより、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。
全ての受口部12の全光線透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
また、各受口部12A、12B、12Cの全光線透過率のうち最小となる値を最小値、最大となる値を最大値とし、この最大値と最小値との差(全光線透過率の差)を小さくすることで、管と継手の接続部分の接着剤の視認性を向上し、接着剤の塗りムラを抑制できる。全ての受口部12の全光線透過率の差の最大値は、10%以下であり、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
樹脂製透明継手1は、受口部12の光透過スペクトルにおいて、波長435nm~580nmの範囲に光透過の極大値を有するか、波長435nm~580nmの範囲における光透過スペクトルの積算面積が、補色となる波長580nm~750nmの範囲における光透過スペクトルの積算面積に対して75%以上であることが好ましい。さらに、波長435nm~580nmの範囲における光透過スペクトルの積算面積が、補色となる波長580nm~750nmの範囲における光透過スペクトルの積算面積の80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。このため、樹脂製透明継手1は、ヤケによる黄色が隠蔽されて緑色~青色に見える。
本発明において、波長435nm~480nmの領域における透過率と、波長610nm~750nmの領域における透過率とを、受口部12の色ムラの有無を判断する指標とする。波長435nm~480nmの領域はヤケにより光透過率が低下する領域であり、波長610nm~750nmの領域は着色剤中の色素の光吸収により光透過率が低下する領域であり、これらの領域で透過率にバラツキが無ければ色ムラが無いと判断できるためである。
波長435nm~480nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長457nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長457nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。
<条件1>
・波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率を求める。
・全ての受口部12の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差(ばらつき)が、いずれも2.0%以下である。
ばらつきが2.0%以下であることにより、波長435nm~480nmの領域における受口部12の色ムラを抑制できる。ばらつきは、1.0%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。ばらつきの下限値は特に限定されず、例えば、0.1%以上が好ましい。
受口部12の波長457nmにおける透過率のばらつきは、次のようにして算出する。
まず、受口部12を第1の管軸O1又は第2の管軸O2の方向に任意の長さに切断し、受口部12の円周方向から等間隔に任意の3箇所を採取して試験片を得る。得られた試験片の波長457nmにおける吸収率をJIS K7361-1に準じて測定する。受口部12Aの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Aの透過率とする。同様に、受口部12Bの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Bの透過率とする。同様に、受口部12Cの3個の試験片の透過率の平均値を受口部12Cの透過率とする。各受口部12A、12B、12Cの透過率の平均値を算出し、全平均値とする。全平均値と各受口部12A、12B、12Cの透過率の最小値との差を求める。各受口部12A、12B、12Cの透過率の最大値と全平均値との差を求める。上記全平均値と上記最小値との差と、上記最大値と上記全平均値との差のうち、大きい方を波長457nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率のばらつきとする。
波長610nm~750nmの領域における透過率は、この領域の中央の波長680nmにおける透過率を測定することにより求める。
樹脂製透明継手1は、各受口部12A、12B、12Cの波長680nmにおける透過率のばらつきが2.0%以下であり、1.0%以下が好ましい。このため、各受口部12A、12B、12Cは、相互に色ムラが小さく、視認性に優れる。
受口部12の透過率は、下記条件に従う。
<条件2>
・波長680nmにおける各受口部12A、12B、12Cの透過率を求める。
・全ての受口部12の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差(ばらつき)が、いずれも2.0%以下である。
ばらつきが2.0%以下であることにより、波長610nm~750nmの領域における受口部12の色ムラを抑制できる。ばらつきは、1.0%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。ばらつきの下限値は特に限定されず、例えば、0.1%以上が好ましい。
受口部12の波長680nmにおける透過率のばらつきは、波長457nmの透過率のばらつきの場合と同様に算出する。測定に用いる試験片は、波長457nmで透過率を測定したときの試験片と同じである。
上記条件1及び上記条件2を満たすことで、樹脂製透明継手1は、肉眼でも色ムラが小さく、視認性に優れる。
[樹脂製透明継手の製造方法]
樹脂製透明継手1は、射出成形により製造される。
例えば、樹脂組成物を加熱溶融して金型内に射出し、任意の時間任意の温度で加熱し、任意の時間任意の温度で冷却することによって、所定の光透過率を有する樹脂製透明継手1が得られる。
射出成形機において、金型内に射出される直前の樹脂組成物の温度(成形温度)は170℃以上190℃以下が好ましく、180℃以上190℃以下がより好ましい。成形温度が前記範囲内であるとポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解を抑えつつ充分に溶融させて、樹脂組成物の良好な流動性が得られる。
金型で成形するときの時間は、1~10分が好ましい。上記下限値以上であると、十分に硬化させることができ、上記上限値以下であると、樹脂製透明継手1の生産性を向上しやすい。
以上、本発明の樹脂製透明継手1について、詳細に説明してきたが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明の樹脂製透明継手としては、上述の実施形態に限定されず、エルボやニップル、クロス等、受口部の数が2つや4つである樹脂製透明継手であってもよい。
以上、説明してきたように、本発明の樹脂製透明継手は、受口部の全光線透過率が40%以上であるため、透明である。加えて、本発明の樹脂製透明継手は、各受口部の透過率のばらつきが小さいため、色ムラが少ない。そのため、受口部の視認性が高められ、管と継手の接続部分の接着剤の塗りムラを抑制できる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ポリ塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業株式会社製TS640)100質量部と、着色剤としてのMPX-101ブルー(大日精化工業株式会社製、商品名)0.01質量部(色素成分の含有量5質量%)と、スズ系安定剤(日東化成株式会社製、AT-6300)2質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製、ハイワックス4202E)0.5質量部、とを配合した後、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業株式会社製)を用い、攪拌混合して樹脂組成物を得た。
前記樹脂組成物を、射出成形して、図1に示した形状のチーズ(ティー)型の継手を製造した。成形温度は170℃、金型温度は40℃、成形時間は120秒とした。このとき、金型のキャビティ内に樹脂を注入するためのゲートの位置は受口部12Aの端面部分(図1のXの2カ所)とした。
得られた継手について、以下の試験を行った。
<全光線透過率の測定>
得られた継手の色は青色であり、得られた継手の3つの受口部について、それぞれ3個の試験片を作製し、それぞれの試験片について全光線透過率を測定した。3個の試験片の平均値を各受口部の全光線透過率とした。各受口部の全光線透過率のうち最小となる値を最小値、最大となる値を最大値とした。この最大値と最小値との差を、継手の全光線透過率の差とした。結果を表1に示す。
Figure 0007096094000001
<波長457nm、波長680nmにおける透過率の測定>
全光線透過率を測定した試験片について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製V-570)を用いて、波長457nmにおける透過率、波長680nmにおける透過率を測定した。得られた9個の試験片について全平均値を算出した。
全平均値と上記最小値との差と、全平均値と上記最大値との差とを比較し、大きい方の値を透過率のばらつきとした。結果を表1に示す。
[実施例2~3、比較例1、2]
表1に示す組成の着色剤とした以外は、実施例1と同様に継手を製造した。
得られた各例の継手の色は青色であり、それぞれの継手について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
表1に示す組成の着色剤と、水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、200-06H、平均粒子径540nm)1.0質量部とを配合した以外は、実施例1と同様に継手を製造した。
得られた継手の色は緑色であり、それぞれの受口部について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
表1に示す組成の着色剤と、水酸化マグネシウム(堺化学工業株式会社製、MGZ-3、平均粒子径100nm)0.5質量部とを配合した以外は、実施例1と同様に継手を製造した。
得られた継手の色は緑色であり、それぞれの受口部について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
ゲートの位置を本体部10の端面部分(図1のYの1カ所)としたこと以外は、実施例4と同様に継手を製造した。
得られた継手の色は緑色であり、それぞれの受口部について、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、200-06H、平均粒子径540nm)に替えて、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5A、平均粒子径900nm)を3.0質量部配合したこと以外は、実施例6と同様に継手を製造した。
<視認性の評価>
得られた各例の継手に、ポリ塩化ビニル系樹脂製の樹脂管(積水化学工業(株)製、エスロン耐火VPパイプ)を挿入して、継手と樹脂管との接続部分を目視で観察することにより視認性の評価を行った。下記評価基準に従って、視認性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:接続部分が良好に視認できる。
○:やや視認しにくい部分があるが、接続部分が概ね良好に視認できる。
×:視認しにくい部分が目立ち、接続部分が良好に視認できない。
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~7は、視認性の評価が「◎」~「○」で、視認性に優れることが分かった。
一方、着色剤中の色素成分の含有量が多く、色素成分の分散が不十分だった比較例1は、色ムラが大きく、視認性の評価が「×」だった。全光線透過率が40%未満の比較例2は、透明度が劣り、視認性の評価が「×」だった。
本発明の樹脂製透明継手によれば、接着剤の塗りムラを抑制できることがわかった。
1 樹脂製透明継手
10 本体部
12 受口部
12A 第1の受口部
12B 第2の受口部
12C 第3の受口部
12b 開口部
O1 第1の管軸
O2 第2の管軸

Claims (3)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂製透明継手において、
    2以上の受口部を有し、全ての前記受口部の全光線透過率が40%以上であり、かつ、全ての前記受口部の全光線透過率の差の最大値が10%以下であり、
    下記条件1及び下記条件2を満たす、樹脂製透明継手。
    <条件1>
    ・波長457nmにおける前記受口部の透過率を求める。
    ・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
    ・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
    <条件2>
    ・波長680nmにおける前記受口部の透過率を求める。
    ・全ての前記受口部の透過率の最小値、最大値及び平均値を求める。
    ・前記最小値と前記平均値との差及び前記最大値と前記平均値との差が、いずれも2.0%以下である。
  2. 着色剤を含有し、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記着色剤の含有量が0.005質量部以上0.030質量部以下であり、
    前記着色剤の総質量に対して前記着色剤の色素成分の含有量が2質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の樹脂製透明継手。
  3. さらに無機難燃剤を含有し、前記無機難燃剤の含有量が、前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の樹脂製透明継手。
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