JP7095440B2 - エマルジョン組成物 - Google Patents
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Description
[1]ポリウレタン樹脂エマルジョン及びエマルジョン型シリコーン化合物を含むエマルジョン組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂エマルジョンが、ポリウレタン樹脂及び水を含み、
前記ポリウレタン樹脂エマルジョンを120℃で2時間乾燥することにより得られる、厚さ0.1mmのポリウレタン樹脂フィルムのヤング率が0.001MPa~15MPaである、及び/又は、前記フィルムの100%モジュラス応力が0.001MPa~4.0MPa以下であることを特徴とする、エマルジョン組成物。
[2]エマルジョン組成物の固形分中に占めるシリコーン化合物の重量百分率が、0.5~30%である、[1]のエマルジョン組成物。
[3]シリコーン化合物がアクリルシリコーン型樹脂である、[1]又は[2]のエマルジョン組成物。
[4]更に、アクリル樹脂エマルジョンを含み、固形分中に占めるアクリル樹脂の重量百分率が0.1~90%である、[1]~[3]のいずれかのエマルジョン組成物。
[5]アクリル樹脂のガラス転移温度が15℃以下である、[4]のエマルジョン組成物。
[6]エマルジョン組成物を120℃で2時間乾燥することにより得られる厚さ0.1mmのフィルムのヤング率が、0.001MPa~15MPaである、及び/又は、前記フィルムの100%モジュラス応力が、0.001MPa~4.0MPaである、[1]~[5]のいずれかのエマルジョン組成物。
[7][1]~[6]のいずれかのエマルジョン組成物を含む、インク。
[8][1]~[6]のいずれかのエマルジョン組成物を含む、捺染用インク。
[9][1]~[6]のいずれかのエマルジョン組成物を含む、スクリーン印刷捺染用インク。
エマルジョン組成物は、ポリウレタン樹脂エマルジョン及びエマルジョン型シリコーン化合物を含む。エマルジョン組成物は、更にアクリル樹脂エマルジョンを含むことができる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリウレタン樹脂及び水を含有する。具体的には、ポリウレタン樹脂エマルジョンは、水系媒体にポリウレタン樹脂が分散された、ポリウレタン樹脂の水性分散体である。「ポリウレタン樹脂エマルジョン」は、「水分散型ポリウレタン樹脂」又は「水性ポリウレタン樹脂分散体」ともいわれる。
ポリウレタン樹脂は、(a)ポリオールの骨格及び(b)ポリイソシアネート化合物の骨格を有するものであれば特に限定されない。ポリウレタン樹脂は、更に、任意の骨格として、(c)酸性基含有ポリオールの骨格、(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物の骨格、(e)末端停止剤の骨格、(f)ブロック化剤の骨格、(g)鎖延長剤の骨格、からなる群より選択される1以上の更なる骨格を有することができる。
ポリオール(但し、(c)酸性基含有ポリオールを除く)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するものであれば特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール(例えば、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリジエンポリオール等)等が挙げられる。柔軟性及び耐加水分解性に優れることから、(a)ポリオールは、ポリカーボネートポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
(a)ポリオールは、単独であってもよく、複数種を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールは、分子中にカーボネート結合を有するポリオールであれば特に限定されない。ポリカーボネートポリオールは、例えば、ジオール等のポリオールモノマーがカーボネート結合したものであることが好ましい。また、ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオール1分子中のカーボネート結合の平均数以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
炭酸エステルは、単独であってもよく、複数種を併用してもよい。
ポリエーテルポリオールは、分子中にエーテル結合を有するポリオールであれば特に限定されず、1分子中のエーテル結合の平均数未満の数のカーボネート結合及び/又はエステル結合を含有していてもよい。ポリエーテルポリオールは、例えば、環状エーテルの開環重合やエポキシ化合物の開環重合により得られる、アルキレン基がエーテル結合したものであることが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、1,6-へキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等のポリエステルジオールが挙げられる。
その他のポリオールは、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及び(c)酸性基含有ポリオール以外のポリオールである。その他のポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリジエンポリオール、低分子量ジオール等が挙げられる。
(a)ポリオールは、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。その場合、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールの数平均分子量は、特に限定されないが、400~8,000であることが好ましく、400~4,000であることが特に好ましい。ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールの数平均分子量が400~8,000である場合、ポリウレタン樹脂エマルジョンの粘度を適切にできると共に、ポリウレタン樹脂エマルジョンの取り扱い性が良好になる。また、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールのソフトセグメントとしての性能が向上するため、エマルジョン組成物を用いて塗膜を形成した場合に、塗膜に割れが発生しにくく、更に、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールと、イソシアネート化合物との反応性を向上させることができるため、ウレタン樹脂の製造を効率的に行うことができる。
(b)ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
(c)酸性基含有ポリオールは、一分子中に2個以上の水酸基(但し、フェノール性水酸基を含まない)と、1個以上の酸性基を有するポリオールである。ポリウレタン樹脂が、更に、(c)酸性基含有ポリオール骨格を有している場合、ポリウレタン樹脂エマルジョンが保護コロイド、乳化剤及び/又は界面活性剤を含んでいなくても、水性樹脂分散体組成物の水への分散安定性が向上する。
(c)酸性基含有ポリオールは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
(c’)中和剤は、(c)酸性基含有ポリオールの酸性基を中和することができるものであれば特に限定されず、酸性基の種類等に応じて適宜選択できる。(c’)中和剤としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP)等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類;アンモニア等が挙げられる。(c’)中和剤は、好ましくは有機アミン類であり、より好ましくは3級アミンであり、特に好ましくはトリエチルアミンである。
(c’)中和剤は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物としては、特に制限されないが、酸性基と水酸基(但し、フェノール性水酸基を含まない)とを1分子中にそれぞれ1つずつ有する化合物が挙げられる。ここで、酸性基は、(c)酸性基含有ポリオールで前記したとおりである。
(e)末端停止剤は、ポリウレタン樹脂末端のウレタン化反応及び/又は鎖延長反応を停止できる成分である。(e)末端停止剤としては、(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物以外の化合物であって、イソシアナト基と反応する基を1つ有する化合物が挙げられる。イソシアナト基と反応する基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等を合計1つ持つ化合物が挙げられ、具体例としては、例えばn-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のモノアミン;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール等が挙げられる。
(e)末端停止剤は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
(f)ブロック化剤は、80~180℃で解離する、イソシアネート基のブロック化剤である。(f)ブロック化剤としては、例えば、マロン酸エステル系化合物、好ましくはマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル系化合物;1,2-ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(DMPZ)等のピラゾール系化合物;1,2,4-トリアゾール、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系化合物;ジイソプロピルアミン、カプロラクタム等が挙げられる。(f)ブロック化剤は、解離温度の観点から、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物及びマロン酸エステル系化合物からなる群より選ばれる一種以上が好ましい。(f)ブロック化剤は、保存安定性及び低温熱架橋性が高い観点から、ピラゾール系化合物がより好ましく、3,5-ジメチルピラゾール(DMPZ)が特に好ましい。
(f)ブロック化剤は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
(g)鎖延長剤としては、イソシアナト基と反応する基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で2つ以上有するポリアミン化合物、ポリオール化合物、並びに水が挙げられる。
(g)鎖延長剤は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂エマルジョンを120℃で2時間乾燥することにより得られる、厚さ0.1mmのポリウレタン樹脂フィルムのヤング率が0.001MPa~15MPa、及び/又は、前記ポリウレタン樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.001MPa~4.0MPaである。ポリウレタン樹脂フィルムのヤング率及び100%モジュラス応力の両方が前記範囲外である場合、柔軟性及びタックフリー性の少なくとも一方が劣る。前記ポリウレタン樹脂フィルムは、ヤング率が0.01MPa~8MPa、及び/又は前記ポリウレタン樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.01MPa~1.8MPaであることが好ましく、ヤング率が0.1MPa~4MPa、及び/又は前記ポリウレタン樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.1MPa~1.0MPaであることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂のヤング率及び100%モジュラス応力がこのような範囲である場合、被記録媒体の中でも伸縮しやすい布帛に対して印刷を行った捺染物が、柔軟性に優れ、これにより、塗布下地の柔軟な風合いを阻害しない捺染物が得られたり、捺染物の破断及びひび割れを防ぐことができる。
ポリウレタン樹脂フィルムのヤング率及び/又は100%モジュラス応力は、例えば、(b)ポリイソシアネート化合物として、環構造を含有するポリイソシアネートを用いることで、増加させることができ、(b)ポリイソシアネート化合物、環構造を含有しないポリイソシアネートを用いることで、減少させることができる。さらに、ポリウレタン樹脂フィルムのヤング率及び/又は100%モジュラス応力は、環構造を含有するポリイソシアネートを用いた場合、(b)ポリイソシアネート化合物分子中に占める環構造の割合が大きい方が、増加させることができる。また、ポリウレタン樹脂フィルムのヤング率は、(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物を用いることで、減少させることができる。
ポリウレタン樹脂における(a)ポリオールの骨格、(b)ポリイソシアネート化合物の骨格、(c)酸性基含有ポリオールの骨格、(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物の骨格、(e)末端停止剤の骨格、(f)ブロック化剤の骨格、(g)鎖延長剤の骨格、及び(c’)中和剤の部分の含有量は、ポリウレタン樹脂フィルムが、ヤング率及び100%モジュラス応力のいずれか一方を満足する限り特に制限されない。例えば、後述するポリウレタン樹脂分散体の製造方法における、各成分の使用量となる量が挙げられる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンにおいて、ポリウレタン樹脂を分散させる媒体としては、水が挙げられる。水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、入手が容易であることや、粒子が不安定になる原因となる塩の影響が少ないこと等の観点から、イオン交換水であることが好ましい。なお、水系媒体は、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、β-アルコキシプロピオンアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法は、ポリウレタン樹脂が水系媒体に分散されている、水性ポリウレタン樹脂分散体が得られる方法であれば特に限定されない。ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法としては、全ての原料を一度に反応させるワンショット法や、イソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーを製造した後に鎖延長剤を反応させるプレポリマー法等が挙げられる。以下、プレポリマー法によるポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法の一例について説明する。
(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネート化合物と、場合により、(c)酸性基含有ポリオールと、(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物と、(f)ブロック化剤と、を反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)と、
(A)ポリウレタンプレポリマーの酸性基を(c’)中和剤を用いて中和する工程(β)と、
(A)ポリウレタンプレポリマーを水系溶媒中に分散させる工程(γ)と、
(A)ポリウレタンプレポリマーと、(A)ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して反応性を有する(g)鎖延長剤とを反応させる工程(δ)と、
を含む方法等が挙げられる。ここで、工程(α)は、更に、得られた(A)ポリウレタンプレポリマーに、(e)末端停止剤を添加する工程を含んでもよい。
エマルジョン型シリコーン化合物は、水系媒体にシリコーン化合物が分散された、シリコーン化合物の水分散体である。エマルジョン型シリコーン化合物は、シリコーン系の水分散性樹脂とも呼ばれる。ここで、水系媒体は、ポリウレタン樹脂エマルジョンで前記したとおりである。シリコーン化合物は、有機官能基を有し、シロキサン単位を繰り返し単位とするポリマーである。
アクリルシリコーン樹脂エマルジョンは、水系媒体にアクリルシリコーン樹脂が分散された、アクリルシリコーン樹脂の水性分散体である。アクリルシリコーン樹脂としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリルモノマーとジアルキルシロキサンモノマーの(グラフト)共重合体、アクリルシリコーン共重合体、アクリル変性オルガノポリシロキサン、アクリル酸-シリコーン共重合体、シリコーン変性(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリル酸エステルをグラフト共重合してなるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
エマルジョン組成物は、任意の成分として、アクリル樹脂エマルジョンを含んでもよい。エマルジョン組成物が、アクリル樹脂エマルジョンを含む場合、エマルジョン組成物中のポリウレタン樹脂及び/又はシリコーン化合物を柔軟化することができ、得られる塗膜の柔軟性がより優れる。アクリル樹脂エマルジョンは、水系媒体にアクリル樹脂が分散された、アクリル樹脂の水性エマルジョンである。ここで、水系媒体は、ポリウレタン樹脂エマルジョンで前記したとおりである。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸を含む繰り返し単位からなるポリマーを含む。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。なお、アクリル樹脂エマルジョンは、アクリルシリコーン樹脂エマルジョンを含まないものとする。
高圧ガス工業株式会社製:ペガール862(Tg:-10℃)、ペガール751(Tg:25℃)、LC6154(Tg:64℃)、昭和電工株式会社製:ポリゾールAP-3900(Tg:10℃)、AP-1020(Tg:23℃)、AP-4735、TI-3052、SE-4210E(Tg:-50℃)、日本カーバイド工業株式会社製:ニカゾールFX5697H(Tg:-60℃)、FX3750(Tg:-30℃)、FX2138(Tg:-17℃)、FX2555(Tg:-17℃)、FX2033(Tg:8℃)、FX2018(Tg:29℃)、FX672K(Tg:50℃)、パラケムジャパン株式会社製:パラボンドLX-5(Tg:-40℃)、G-60(Tg:-30℃)、LX-2(Tg:-30℃)、東亞合成株式会社製:NW-400(Tg:-41℃)
エマルジョン組成物の固形分中における、エマルジョン型シリコーン化合物の含有量は、タックフリー性及び/又は柔軟性がより優れるため、重量百分率で0.5~30%であることが好ましく、2~20%であることがより好ましく、2.5~15%であることが特に好ましい。
エマルジョン組成物の製造方法は、ポリウレタン樹脂、シリコーン化合物、及び任意成分であるアクリル樹脂を水系溶媒中に分散できる方法であれば特に限定されない。エマルジョン組成物は、例えば、ポリウレタンエマルジョンと、エマルジョン型シリコーン化合物と、及び任意成分であるアクリル樹脂エマルジョンとを混合することにより製造することができる。また、エマルジョン組成物は、例えば、(A)ポリウレタンプレポリマーと、シリコーン化合物、及び任意成分であるアクリル樹脂とを水系溶媒中に分散し、シリコーン化合物、及び任意成分であるアクリル樹脂の存在下で、(A)ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させることにより製造することができる。
エマルジョン組成物は、被記録媒体の中でも伸縮しやすい布帛に対して印刷を行った捺染物の柔軟性が優れたものとなり、破断やひび割れを防げるため、エマルジョン組成物を120℃で2時間乾燥することにより得られる0.1mmの樹脂フィルムのヤング率が0.001MPa~15MPaである、及び/又は、前記樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.001MPa~4.0MPaであることが好ましい。エマルジョン組成物は、ヤング率が0.01MPa~8MPaである、及び/又は、前記樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.01MPa~1.8MPaであることがより好ましく、ヤング率が0.1MPa~4.0MPaである、及び/又は、前記樹脂フィルムの100%モジュラス応力が0.1MPa~1.0MPaであることが特に好ましい。
インクは、エマルジョン組成物を含む。インクは、エマルジョン組成物以外の成分として、下地遮蔽用白色顔料、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、有機溶媒、造膜助剤、レオロジーコントロール剤等の更なる成分を含むことができる。更なる成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂エマルジョンは、製造例1~5により製造した。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ETERNACOLL UH-200(登録商標;宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2,000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)500gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)27.4gと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)144gとを、N-メチルピロリドン222g中、ジブチル錫ジラウリレート0.5g存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.72重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン20.4gを添加・混合した。反応混合物850gを強攪拌下のもと水1,240gの中に加えた。次いで、35重量%の2-メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)水溶液53.72gを鎖延長剤として加えて、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ETERNACOLL UH-200(登録商標;宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2,000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)490gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)15.7gと、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)167gとを、N-メチルピロリドン302g中、ジブチル錫ジラウリレート0.6g存在下、窒素雰囲気下で、80-90℃で2時間加熱した。その後、12-ヒドロキシステアリン酸(HSA)66.7gを加え、90℃で3時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.30重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン32.9gを添加・混合した。反応混合物1,000gを強攪拌下のもと水1,298gの中に加えた。次いで、35重量%のジエチレントリアミン(DETA)水溶液28.0gを鎖延長剤として加えて、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ETERNACOLL UH-200(登録商標;宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール;数平均分子量2,000;水酸基価56.1mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール)510gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)15.4gと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)144gとを、N-メチルピロリドン301g中、ジブチル錫ジラウリレート0.6g存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で2時間加熱した。その後、12-ヒドロキシステアリン酸(HSA)68.1gを加え、90℃で3時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.34重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン33.2gを添加・混合した。反応混合物1,000gを強攪拌下のもと水1,299gの中に加えた。次いで、35重量%のジエチレントリアミン(DETA)水溶液28.9gを鎖延長剤として加えて、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、PTEMG2000(三菱化学株式会社製;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;数平均分子量1,956;水酸基価57.4mgKOH/g)900gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)25.5gと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)250gとを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)62g中、ジブチル錫ジラウリレート0.9g存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。その後、3,5-ジメチルピラゾール(DMPZ)21.2gを加え、90℃で1時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.31重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン19.8gを添加・混合した。反応混合物300gを強攪拌下のもと水387gの中に加えた。次いで、35重量%の2-メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)水溶液25.6gを鎖延長剤として加えて、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、PTEMG2000(三菱化学株式会社製;ポリテトラメチレンエーテルグリコール;数平均分子量1,956;水酸基価57.4mgKOH/g)700gと、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)13.9gと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)180gとを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)49g中、ジブチル錫ジラウリレート0.7g存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で2時間加熱した。その後、12-ヒドロキシステアリン酸(HSA)32.9gを加え、90℃で2時間加熱した。その後、3,5-ジメチルピラゾール(DMPZ)19.0gを加え、90℃で1時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.60重量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン20.9gを添加・混合した。反応混合物900gを強攪拌下のもと水1,150gの中に加えた。次いで、35重量%のジエチレントリアミン(DETA)水溶液31.3gを鎖延長剤として加えて、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
エマルジョン型シリコーン化合物は、以下の成分を用いた。
SM8706EX:東レ・ダウコーニング製;OH変性シリコーンエマルジョン;固形分濃度37%
SM8701EX:東レ・ダウコーニング株式会社製;シリコーンエマルジョン;固形分濃度32%
FZ-4634EX:東レ・ダウコーニング株式会社製;アミノ変性シリコーンエマルジョン;固形分濃度43%
BY22-818EX:東レ・ダウコーニング株式会社製;エポキシ変性シリコーンエマルジョン;固形分濃度40%
X-52-2328:信越化学株式会社製;アミノ変性シリコーンエマルジョン;固形分濃度70%
R-170BX:日信化学工業株式会社製;アクリルシリコーン樹脂エマルジョン;固形分濃度45%
FE-230N:日信化学工業株式会社製;アクリルシリコーン樹脂エマルジョン;固形分濃度30%
FE-502:日信化学工業株式会社製;アクリルシリコーン樹脂エマルジョン;固形分濃度30%
LC-190:日信化学工業株式会社製;アクリルシリコーン樹脂エマルジョン;固形分濃度45%
アクリル樹脂エマルジョンは、以下の成分を用いた。
FX2033:日本カーバイド工業株式会社製;アクリルエマルジョン;固形分濃度60%;Tg:8℃
FX2138:日本カーバイド工業株式会社製;アクリルエマルジョン;固形分濃度60%;Tg:-17℃
G-60:パラケムジャパン株式会社製;アクリルエマルジョン;固形分濃度60%;Tg:-30℃
NW-400:東亞合成株式会社製;アクリルエマルジョン;固形分濃度50%;Tg:-41℃
SE-4210E:昭和電工株式会社製;アクリルエマルジョン;固形分濃度60%;Tg:-50℃
(エマルジョン組成物の調製)
ポリウレタン樹脂エマルジョン、エマルジョン型シリコーン化合物及びアクリル樹脂エマルジョンを、固形分の重量で、下記表2~表9に記載の割合となるように、攪拌混合し、エマルジョン組成物を得た。
(捺染物の製造)
エマルジョン組成物50重量部、チタンペースト(酸化チタン粉末含量60%の水性ペースト)40重量部、顔料水分散体(トーヨーカラー株式会社製:EMF PINK 2B-1)5重量部、25%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)1重量部、及びアルカリ増粘剤(パラケムジャパン株式会社製:パラボンド10-N)3.5重量部を混合して、捺染用インクを得た。続いて、150メッシュのスクリーン及びウレタンゴムスキージを用いて、捺染用インクを白色の天竺綿ニット生地に2度印刷した。印刷物を150℃で2分間の条件で乾燥し、捺染物を得た。
捺染物を指先でつまみながら柔軟性を評価した。優れた柔軟性のものを◎、良好な柔軟性のものを○、許容できる柔軟性のものを△、柔軟性に乏しく硬いものを×とした。
捺染物の端を捺染面同士が内側になる様に折り返し、指先で10kgの荷重をかけ、3秒間押付けた。荷重を取り除いた後、1秒以内に捺染面同士が自発的に剥離したものを◎、1秒超5秒以内に捺染面同士が自発的に剥離したものを○、5秒超10秒以内に捺染面同士が自発的に剥離したものを△とした。10秒以内の自発的な剥離がないが、軽く触れる事で剥離したものを×とした。
捺染物を、市販洗濯用洗剤の加えられた60℃の湯中で4時間攪拌することで洗濯し、続いて60℃で1時間乾燥させて洗濯後の捺染物を得た。洗濯後の捺染物について、「柔軟性の評価」及び「タックフリー性」の評価に従って、柔軟性及びタックフリー性の評価を行った。
捺染物の触感試験を行い、ポリウレタン樹脂特有のさらっとした表面質感の有無を判定した。優れた質感のものを◎、良好な質感のものを○、許容できる質感のものを△、質感に乏しいものを×とした。
・ポリウレタン樹脂フィルムについて
ポリウレタン樹脂エマルジョンをガラス板上に塗布し、60℃で2時間、次いで120℃で2時間乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂フィルムが付着したガラス板を得た。ポリウレタン樹脂フィルムをガラス板から剥離して、ポリウレタン樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムの膜厚は0.1mmであった。得られたポリウレタン樹脂フィルムの引張特性である、ヤング率及び100%モジュラス応力をテンシロン万能材料試験機を用い、JIS K 7127に従って測定した。
・エマルジョン組成物の乾燥フィルムについて
ポリウレタン樹脂エマルジョンと同じ方法によって、エマルジョン組成物の乾燥フィルムを作製した。得られたエマルジョン組成物の乾燥フィルムについて、ポリウレタン樹脂フィルムと同じ方法によって、ヤング率及び100%モジュラス応力を測定した。
ポリウレタン樹脂エマルジョンの詳細及びポリウレタン樹脂フィルムのヤング率及び100%モジュラス応力の測定結果を表1に示す。また、実施例及び比較例の配合及び特性の評価結果を表2~9に示す。
実施例1と実施例2~4とを比較すると、ポリウレタン樹脂フィルムのヤング率が8MPa以下である、又は、前記ポリウレタン樹脂フィルムの100%モジュラス応力が1.8MPa以下であると、柔軟性がより優れていた。
Claims (5)
- ポリウレタン樹脂エマルジョン、エマルジョン型シリコーン化合物及びアクリル樹脂エマルジョンを含むエマルジョン組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂エマルジョンが、ポリウレタン樹脂及び水を含み、
前記ポリウレタン樹脂エマルジョンを120℃で2時間乾燥することにより得られる、厚さ0.1mmのポリウレタン樹脂フィルムのヤング率が0.001MPa~15MPaである、及び/又は、前記フィルムの100%モジュラス応力が0.001MPa~4.0MPaであることを特徴とし、
前記ポリウレタン樹脂は、(a)ポリオールの骨格、(b)ポリイソシアネート化合物の骨格及び(c)酸性基含有ポリオールの骨格を有し、さらに(d)1分子中に酸性基を1つと水酸基を1つ有する化合物の骨格、(e)末端停止剤の骨格、(f)ブロック化剤の骨格及び(g)鎖延長剤の骨格からなる群より選択される1以上の更なる骨格を有し、
前記シリコーン化合物がアクリルシリコーン型樹脂であり、
前記アクリル樹脂のガラス転移温度が15℃以下であり、
前記エマルジョン組成物の固形分中に占める前記ポリウレタン樹脂の重量百分率が、12%以上であり、
前記エマルジョン組成物の固形分中に占める前記シリコーン化合物の重量百分率が、0.5~30%であり、
前記エマルジョン組成物の固形分中に占める前記アクリル樹脂の重量百分率が、40~83%である、
エマルジョン組成物。 - エマルジョン組成物を120℃で2時間乾燥することにより得られる、厚さ0.1mmのフィルムのヤング率が、0.001MPa~15MPaである、及び/又は、前記フィルムの100%モジュラス応力が、0.001MPa~4.0MPaである、請求項1に記載のエマルジョン組成物。
- 請求項1又は2に記載のエマルジョン組成物を含む、インク。
- 請求項1又は2に記載のエマルジョン組成物を含む、捺染用インク。
- 請求項1又は2に記載のエマルジョン組成物を含む、スクリーン印刷捺染用インク。
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