本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、高分子ポリオール成分(a1)、親水性基と活性水素基を有する化合物(a2)及び鎖伸長剤(a3)を含有する活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)を反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と水性媒体を含有する。
本発明における高分子ポリオール成分(a1)は、数平均分子量(以下、Mnと略記)が1000〜5000のヘキサメチレン基を有するポリカーボネートジオール(a11)を必須成分として含有する。(a1)が(a11)を含有することにより乾燥皮膜の機械物性、耐水性及び耐薬品性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
(a11)としては、1,6−ヘキサンジオール並びに1,6−ヘキサンジオール及び炭素数2〜20の多価アルコールの1種又は2種以上(好ましくは1〜3種)と低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とから、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。(a11)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記炭素数2〜20の多価アルコールとしては、炭素数2〜12の直鎖ジオール又は分岐を有する炭素数3〜12の脂肪族ジオール[エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2−プロピレングリコール、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール及び4−メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];炭素数6〜20の脂環式ジオール[1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8〜20の芳香環含有ジオール[m−又はp−キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等];炭素数3〜20のトリオール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
前記炭素数2〜20の多価アルコールの内でポリウレタン樹脂(U)の柔軟性及び機械物性の観点から好ましいのは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール及び2−メチル−1,8−オクタンジオールであり、更に好ましいのは、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールである。
(a11)の市販品としては、デュラノール T6002[1,6−ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、ETERNACOLL UH−300[1,6−ヘキサンジオールを用いたMn=3000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UM−90(1/3)[1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/3(モル比)を用いたMn=900のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、デュラノール G4672[1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=70/30(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、デュラノール T5652[1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、クラレポリオール C−2090[3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=90/10(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C−2050[3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]等が挙げられる。
(a1)における(a11)の含有量は、ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性、機械物性、耐水性及び耐薬品性の観点から、(a1)の重量を基準として70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
(a11)中のヘキサメチレン基の含有量は、ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性、機械物性、耐水性及び耐薬品性の観点から、(a11)を構成する炭化水素基の総モル数を基準として、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
本発明における(a1)は(a11)以外の高分子ポリオール(a12)を含有してもよい。
(a11)以外の高分子ポリオール(a12)としては、Mnが500以上のポリエステルポリオール(a121)及び、Mnが500以上のポリエーテルポリオール(a122)が挙げられる。
(a12)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオール(a121)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、(a11)以外のポリカーボネートジオール及びヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
縮合型ポリエステルポリオールは、前記炭素数2〜20の多価アルコールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体との脱水縮合により得られるポリエステルポリオールである。
炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸及びフマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの混合物が挙げられる。これらの内で好ましいのは脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体である。
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンテレフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
縮合型ポリエステルポリオールの市販品としては、サンエスター2610[Mn=1000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、サンエスター4620[Mn=2000のポリテトラメチレンアジペートジオール]、サンエスター2620[Mn=2000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、クラレポリオールP−2010[Mn=2000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]、クラレポリオールP−3010[Mn=3000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]及びクラレポリオールP−6010[Mn=6000のポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール]等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールは、前記炭素数2〜20の多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
前記(a11)以外のポリカーボネートジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール以外の前記炭素数2〜20の多価アルコールの1種又は2種以上と、前記低分子カーボネート化合物から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
(a11)以外のポリカーボネートジオールの市販品としては、クラレポリオール C−2015N[2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=85/15(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C−2065N[2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール=65/15(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、ETERNACOLL UC−100[1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたMn=1000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]等が挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油及びポリオール又はアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)で変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物(付加モル数4〜30モル)等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール(a122)としては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシアルキレンポリオール[ポリエチレングリコール等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール等]及びポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルポリオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTGL2000[Mn=2000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、PTGL3000[Mn=3000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、サンニックスPP−2000[Mn=2000のポリプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]及びサンニックスジオールGP−3000[Mn=3000のポリプロピレンエーテルトリオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのEO付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等]及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物及びビスフェノールAのPO5モル付加物等]等のビスフェノール骨格を有するポリオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
(a12)のMnは、ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性、機械物性、耐水性及び耐薬品性の観点から、好ましくは500〜6000、更に好ましくは1000〜4000である。
親水性基と活性水素原子を有する化合物(a2)としては、アニオン性基と活性水素原子を有する化合物(a21)及びカチオン性基と活性水素原子を有する化合物(a22)が挙げられる。
(a21)としては、例えばアニオン性基としてカルボキシル基を有し、活性水素原子として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、アニオン性基としてスルホン酸基を有し、活性水素原子として水酸基を有する炭素数が2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、アニオン性基としてスルファミン酸基を有し、活性水素原子として水酸基を有する炭素数が2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。(a2)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(a21)の塩に用いられる中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物又はアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びメチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。(a21)の塩に用いられる中和剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(a21)の塩に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(a21)の塩に用いられる中和剤としては、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましい。
(a21)の内、得られる皮膜の機械物性、耐水性、耐薬品性及びポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸並びにこれらの塩類であり、更に好ましいのは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1〜20のアミン化合物による中和塩である。
カチオン性基と活性水素原子を有する化合物(a22)としては、例えばカチオン性基として3級アミノ基を有し、活性水素原子として水酸基を有する化合物、炭素数1〜20の3級アミノ基含有ジオール[N−アルキルジアルカノールアミン(例えばN−メチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン及びN−メチルジプロパノールアミン)及びN,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(例えばN,N−ジメチルエタノールアミン)等]等の化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
(a22)に用いられる中和剤としては、例えば炭素数1〜10のモノカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロパン酸等)、炭酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
(a21)及び(a22)に用いられる中和剤は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、ウレタン樹脂の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。また、脱溶剤時に揮発した中和剤を脱溶剤後に追添加しても良く、追添加する中和剤種は上記記載のものから自由に選択することができる。
(a2)の使用量は、(U)中の親水性基の含有量が、(U)の重量を基準として、好ましくは0.14〜0.45mmol/g、更に好ましくは0.16〜0.40mmol/g、特に好ましくは0.18〜0.35mmol/gとなるよう調節する。
鎖伸長剤(a3)としては、水、前記炭素数2〜20の多価アルコール、炭素数2〜36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミン等]、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−又は2,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン(1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、4,4’−又は2,4’−メチレンビスアニリン等)、炭素数3〜20の複素環式ポリアミン(2, 4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド、例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2〜20のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。(a3)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(a3)の内でポリウレタン樹脂(U)の柔軟性及び機械物性の観点から好ましいのは、水又は水及び前記分岐を有する炭素数3〜12の脂肪族ジオールであり、更に好ましいのは、水又は水及びネオペンチルグリコールである。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は必要に応じて反応停止剤(a4)を使用することができる。
反応停止剤(a4)としては、炭素数1〜20のモノアルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数1〜20のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。反応停止剤(a4)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明における有機ポリイソシアネート成分(B)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b1)、炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(b2)、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b3)、炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(b5)等が挙げられる。有機ポリイソシアネート成分(B)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b1)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(b2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性物(b5)としては、前記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が8〜33重量%、好ましくは10〜30重量%、特に12〜29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は有機ポリイソシアネート成分(B)として、HDIを必須で含有し、その含有量は有機ポリイソシアネート成分(B)の全モル数に対して60モル%以上である。HDIを有機ポリイソシアネート(B)の全モル数に対して60モル%以上含有することにより、乾燥皮膜の柔軟性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性の観点から、(B)におけるHDIの割合は、(B)の全モル数に対して好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上である。
(B)に使用されるHDI以外の有機ポリイソシアネート成分としては、ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性の観点から、好ましくは前記炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b3)であり、更に好ましくはIPDIである。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は、必要により酸化防止剤、着色防止剤、耐候安定剤、可塑剤及び離型剤等の添加剤を含有することができる。これらの添加剤の使用量は(U)の重量を基準として好ましくは10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のウレタン基濃度は、(U)の柔軟性、機械物性、耐水性及び耐薬品性の観点から、(U)の重量を基準として、好ましくは1.0〜2.4mmol/g、更に好ましくは1.2〜2.0mmol/g、特に好ましくは1.3〜1.8mmol/gである。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のウレア基濃度は、(U)の柔軟性、機械物性、耐水性、耐薬品性の観点から、(U)の重量を基準として、好ましくは0.20〜0.70mmol/g、更に好ましくは0.22〜0.65mmol/g、特に好ましくは0.25〜0.60mmol/gである。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のMnは、(U)の機械物性、耐水性、耐薬品性の観点から、好ましくは1万以上、更に好ましくは5万以上、特に好ましくは10万以上である。
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α−M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)を製造する方法としては、例えば、以下の[1]及び[2]の方法が挙げられる。
[1]高分子ポリオール成分(a1)、親水性基と活性水素基を有する化合物(a2)、鎖伸長剤(a3)及び必要により反応停止剤(a4)を含有する活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてポリウレタン樹脂(U)を製造し、必要により(a2)により導入された親水基部分を中和剤により塩として、水性媒体に分散させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
[2]高分子ポリオール成分(a1)、親水性基と活性水素基を有する化合物(a2)、鎖伸長剤(a3)を含有する活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで必要により前記プレポリマー中の(a2)により導入された親水基部分を中和により塩として水性媒体に分散させて、鎖伸長剤(a3)及び必要により反応停止剤(a4)とイソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
[1]におけるポリウレタン樹脂(U)を製造する際の反応温度及び[2]におけるウレタンプレポリマーを製造する際の反応温度は、副反応抑制の観点から、60〜120℃が好ましく、更に好ましくは60〜110℃であり、最も好ましくは60〜100℃である。製造時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分〜100時間が好ましく、更に好ましくは3分〜30時間であり、特に好ましくは5分〜20時間である。
有機溶剤(S)は、イソシアネート基と実質的に非反応性の溶剤が選ばれ、例えばケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤[例えば酢酸エチル及びニ塩基酸エステル(DBE)]、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)、及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等が挙げられる。これらの有機溶媒(S)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、本発明における水性媒体とは、水又は水と前記有機溶媒(S)との混合物を意味する。
前記有機溶剤(S)として好ましいのは、沸点が100℃未満の有機溶剤であり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
沸点が100℃未満の有機溶剤を使用することにより、水性媒体から有機溶剤のみを完全に除去しやすくなり、水性分散体中に残存して、乾燥時に有機溶剤が発生することを抑制しやすくなる。また、有機溶剤が皮膜中に残存しにくくなり、皮膜の機械物性が経時で変化することを抑制しやすくなる。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)における有機溶媒(S)の含有量は、臭気、経時安定性、環境負荷、安全性及の観点からは、(Q)の重量に基づいて、1重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.8重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
上記[1]及び[2]の方法におけるウレタン化反応では、反応を促進させるため、必要により公知のウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒の添加量は、ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づき、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.005〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
前記ウレタン化触媒としては、金属触媒[錫系(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート及びジブチルチンマレエート等)、鉛系(オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛及びオクテン酸鉛等)、コバルト系(ナフテン酸コバルト等)、ビスマス系{ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート等}及び水銀系(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン}等;ジアルキルアミノアルキルアミン類{ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン及びジプロピルアミノプロピルアミン等]又は複素環式アミノアルキルアミン類[2−(1−アジリジニル)エチルアミン及び4−(1−ピペリジニル)−2−ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸塩(ギ酸塩等)等;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等]、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
前記[1]のポリウレタン樹脂(U)又はその有機溶剤溶液、前記[2]のウレタンプレポリマー又はその有機溶剤溶液を水中に分散する装置としては特に制限されないが、回転式分散混合装置、超音波式分散機又は混練機を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる回転式分散混合装置が更に好ましい。
回転式分散混合装置としては、例えばマックスブレンドやヘリカル翼等の一般的な攪拌羽を有する混合装置、TKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラックス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が例示される。
ポリウレタン樹脂(U)は分散剤(H)を用いて(U)を水性媒体に分散させることもできるが、得られる乾燥皮膜の耐水性の観点から、その使用量はできるだけ少ない方が好ましく、使用しないことが特に好ましい。
分散剤(H)としては、非イオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。(H)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(h1)としては、例えばAO付加型非イオン性界面活性剤及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10〜20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8〜22のアルキルアミンのEO付加物及びポリプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4〜24)ポリ(重合度1〜10)グリコシド等が挙げられる。
(h2)としては、例えば炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8〜24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
(h3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
(h4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
(h5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
分散剤(H)は、ポリウレタン樹脂(U)のウレタン化反応後、(U)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
(H)を使用する場合、その含有量は、乾燥皮膜の耐水性、ポリウレタン樹脂(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点からポリウレタン樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0.01〜7重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体(Q)はブロック化ポリイソシアネート(C)を含有することができる。ブロック化ポリイソシアネート(C)はポリウレタン樹脂(U)を紙や綿布のように水酸基を有する被着体に定着させる際に特に有用であり、加熱工程を経て、被着体及びポリウレタン樹脂の双方と反応することにより、ポリウレタン樹脂の被着体への密着性を向上させることができる。例えば、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)をインクジェット捺染用のインクバインダーに使用する場合、(Q)が(C)を含有することにより、印捺布の洗濯堅牢性及び摩擦堅牢性を向上させることができる。
ブロック化ポリイソシアネート(C)は、ポリイソシアネート化合物(c1)とイソシアネートブロック化剤(c2)を反応させることにより得られる。
(C)に用いられるポリイソシアネート化合物(c1)としては、前記有機ポリイソシアネート成分(B)及び前記活性水素成分(A)と前記有機ポリイソシアネート成分(B)の反応により得られるイソシアネート基を有するプレポリマー等が挙げられる。
(c1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物(c1)のイソシアネート基の数平均官能基数は、ポリウレタン樹脂(U)の被着体への密着性の観点から、好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.1以上、特に好ましくは2.4以上である。
ポリイソシアネート化合物(c1)のイソシアネート基含量は、ポリウレタン樹脂(U)の密着性の観点から、好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは2.5〜28重量%、特に好ましくは3〜25重量%である。
イソシアネートブロック化剤(c2)としては、炭素数2〜6のラクタム(例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等)、炭素数1〜15のオキシム[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)及びシクロヘキサノンオキシム等]、炭素数2〜15の第二級アミン[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ−n−プロピルアミン及びジイソブチルアミン等)、炭素数4〜15の脂環式アミン(メチルヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン及びジフェニルアミン等)]、炭素数6〜20のフェノール及びアルキルフェノール[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール及びジ−t−ブチルフェノール等]、環の構成単位としてイミノ基と窒素−炭素2重結合とを有する5員環化合物[例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール、ピラゾール、3−メチルピラゾール及び3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール等]、イミン[例えばエチレンイミン及びポリエチレンイミン等]、活性メチレン含有化合物[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル及びアセト酢酸エチル等]、特許公開2002−309217号公報及び特許公開2008−239890号公報に記載のブロック化剤並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの内、好ましいものは炭素数1〜15のオキシム、炭素数2〜15の第二級アミン、環の構成単位としてイミノ基と窒素−炭素2重結合とを有する5員環化合物及び活性メチレン含有化合物であり、更に好ましいのはメチルエチルケトオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール及びマロン酸ジエチルである。
ポリイソシアネート化合物(c1)とブロック化剤(c2)の反応温度は、副反応抑制の観点から好ましくは20〜120℃、更に好ましくは40〜110℃である。反応時間は副反応抑制の観点から好ましくは0.5〜5時間、更に好ましくは0.5〜4時間である。
ポリイソシアネート化合物(c1)として、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)を反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する際、ウレタン化反応を促進させるために前記ウレタン化触媒を使用することができる。
反応触媒の使用量は、得られるブロック化ポリイソシアネート(C)の重量に基づいて、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.001〜0.1重量%である。
本発明のブロックポリイソシアネート(C)は、必要に応じて有機溶剤で希釈して用いることができる。有機溶剤としては、例えば前記有機溶剤(S)で例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
ブロックポリイソシアネート(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂(U)の被着体への密着性、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の分散安定性及び保存安定性の観点から、ブロック化ポリイソシアネート(C)の使用量は、ポリウレタン樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは3〜50重量%、更に好ましくは4〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(C)のブロック化剤の解離温度を低下させて、反応速度を速めるために、ブロック化イソシアネート解離触媒を使用してもよい。
上記解離触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、錫アセチルアセトナート、ビスマスアセチルアセトナート及びチタンアセチルアセトナート等の金属触媒;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7の弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5の弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)、テトラメチルアンモニウムの弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)、メチルトリエチルアンモニウムの弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)、テトラエチルアンモニウムの弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムの弱酸塩(フェノール塩、2−エチルヘキサン酸塩及びギ酸塩等)等のアミン触媒が挙げられる。
解離触媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブロック化ポリイソシアネート(C)は加熱によりブロック化剤の解離が起こり、解離により生じたイソシアネート基が被着体及び/又はポリウレタン樹脂(U)と反応する。脱ブロック化に必要な温度は好ましくは60〜200℃であり、加熱時間は好ましくは1分〜5時間である。
ブロック化ポリイソシアネート(C)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体(Q)を製造する方法としては、(C)を前記分散剤(H)により(U)とは別に水性媒体に分散させて、分散工程後のポリウレタン樹脂(U)に配合する方法や、(U)を水性媒体に分散させる前に(U)と(C)を混合し、前述の水性媒体への分散工程を経て分散体とする方法等が挙げられる。
これらの方法の内、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の分散安定性及び保存安定性の観点から好ましいのは、(U)を水性媒体に分散させる前に(U)と(C)を混合し、前述の水性媒体への分散工程を経て分散体とする方法である。
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、ジメチルシリコーン(D)を含有することができる。ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)をインクジェット捺染に使用する場合、(Q)がジメチルシリコーン(D)を含有することにより、印捺布の風合い及び摩擦堅牢性が向上する。
ジメチルシリコーン(D)としては、オイル型ジメチルシリコーン(d1)及び、(d1)を分散剤により水性媒体に分散させたエマルション型ジメチルシリコーン(d2)が挙げられる。(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
オイル型ジメチルシリコーンオイル(d1)の市販品としては、SH200シリーズ[東レ・ダウコーニング(株)製]、KF−96シリーズ[信越化学(株)製]及びTSF451シリーズ[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製]等が挙げられる。
エマルション型ジメチルシリコーン(d2)の市販品としては、SM8706EX、FSXE−2098、IE−7045、SM7036EX、IE7046T及びSM8701EX[東レ・ダウコーニング(株)製]、POLON MF−7、POLON MF−17、POLON MF−32及びPOLON MF−33[信越化学(株)製]並びにTSM630、TSM631、TSM6344及びTSM6343[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製]等が挙げられる。
ジメチルシリコーン(D)の内で、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の分散安定性の観点から好ましいのは(d2)である。
ジメチルシリコーン(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ジメチルシリコーン(D)の使用量は、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)をインクジェット捺染に使用した際の印捺布の風合い、摩擦堅牢性及び洗濯堅牢性の観点から、ポリウレタン樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜12重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。
ジメチルシリコーンオイル(D)を含有するポリウレタン樹脂水性分散体(Q)を製造する方法としては、(D)がオイル型ジメチルシリコーンオイル(d1)の場合、ポリウレタン樹脂(U)を水性媒体に分散させる前に(U)と(d1)を混合し、前述の水性媒体への分散工程を行えばよく、(D)がエマルション型ジメチルシリコーンオイル(d2)であれば、(U)の分散工程後に(d2)を配合すればよい。
ポリウレタン水性分散体(Q)におけるポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.3μm、更に好ましくは0.01〜0.2μmである。(Dv)が0.01μm以上であると粘度が適正でありハンドリング性が良好であり、0.3μm以下であると(Q)をインクジェットインク使用する場合のインクの吐出安定性が良好である。
(U)の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中の親水性基、中和剤、分散剤量並びに分散工程で使用する分散機の種類及び分散条件によって制御することができる。
体積平均粒子径(Dv)は、光散乱粒度分布測定装置[LA950 V2「堀場製作所(株)製」]で測定することができる。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、水性分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは25〜55重量%である。固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
(Q)の粘度は、ハンドリング性の観点から、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・s以下である。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
(Q)のpHは、分散安定性の観点から、好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]で25℃で測定することができる。
本発明のインクジェット用インク(L)は、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)を含有する。(Q)を含有するインクジェット用インクは、これを用いた印捺布が優れた風合い、堅牢性(摩擦堅牢性及び洗濯堅牢性)を示すことから、特にインクジェット捺染用のインクとして好適である。
本発明のインクジェット用インク(L)は、(Q)以外に必須成分としての色材並びに任意成分としての保湿剤、浸透剤、水及びその他の添加剤を含有することができる。
色材としては、染料及び顔料が挙げられる。
染料としては特に限定されないが、使用するメディアに応じて、反応染料、バット染料、ナフトール染料、硫化染料、直接染料、酸性染料、金属錯塩型染料、分散染料及びカチオン染料等が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(例えば白色顔料、黒色顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料及びメタリック顔料)並びに有機顔料(例えば天然有機顔料合成系有機顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、水溶性染料から作られるアゾレーキ、難溶性染料から作られるアゾレーキ、塩基性染料から作られるレーキ、酸性染料から作られるレーキ、キサンタンレーキ、アントラキノンレーキ、バット染料からの顔料及びフタロシアニン顔料)が挙げられる。
これら色材の内、本発明のインクジェット用インク(L)に好ましいのは顔料である。色材の含有量は、インクジェットインク(L)の重量に基づいて好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。色材は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
保湿剤は、インクに配合することで、インクの乾燥を抑え、ノズルの目詰まりを防ぐ役割を果たす。保湿剤の沸点は好ましくは150℃以上である。
前記保湿剤としては、特に限定されないが、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1、4−ジオール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、Mnが2000以下のポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドンが挙げられる。保湿剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
浸透剤は、有機溶剤又は界面活性剤であり、浸透性メディアへのインクの浸透を促進する役割を果たす。
浸透剤として使用できる有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、グリコールエーテル類[エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等]及び炭素数4〜8の脂肪族ジオール[1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルキルジオール並びに1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール及び1,8−オクタンジオール等の直鎖アルコール]が挙げられる。
浸透剤として使用できる界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤並びにフッ素アルキルエステル及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤等が挙げられる。浸透剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他添加剤としては、防腐剤及びpH調整剤等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及び1,2―ジベンジンチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
pH調製剤としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
その他の添加剤はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、インクジェット用インク以外にも、水性塗料、水性接着剤、水性繊維加工処理剤(不織布用バインダー、補強繊維用集束剤、抗菌剤用バインダー及び人工皮革・合成皮革用原料等)、水性コーティング及び水性紙処理剤等に使用することができる。
これらの用途に用いる場合には、上記の顔料、保湿剤、浸透剤、防腐剤及びpH調製剤以外にも、必要によりその他の樹脂並びに架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等を1種又は2種以上添加することができる。
<ブロック化ポリイソシアネート(C)の製造例>
<製造例1>
撹拌機及び温度計を備えた反応容器にヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体[旭化成(株)製「デュラネートTPA−100」]45.1部、溶剤としてのメチルエチルケトンを30部及び3,5−ジメチルピラゾール24.9部を仕込んで、70℃で2時間ブロック化反応を行い、ブロック化ポリイソシアネート(C−1)の溶剤溶液を得た。
<製造例2>
撹拌機及び温度計を備えた反応容器に、ポリエーテルポリオール[三洋化成工業(株)製「サンニックス PP−1000」;Mn=1000]31.2部、ポリエーテルポリオール(三洋化成工業(株)製「サンニックス TP−400」;Mn=400)12.5部、トリレンジイソシアネート20.4部及び溶剤としてのメチルエチルケトン30部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下、80℃で5時間反応させた後、冷却してポリイソシアネート化合物を得た後、40℃でメチルエチルケトンオキシムを5.9部仕込んで、70℃で2時間ブロック化反応を行い、ブロック化ポリイソシアネート(C−2)の溶剤溶液を得た。
<実施例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に(a11)としてのデュラノールG4672[旭化成ケミカルズ(株)製]204.4部、(a2)としての2,2−ジメチロールプロピオン酸16.7部、(a3)としてのネオペンチルグリコール17.9部、有機ポリイソシアネート成分(B)としてのHDI 111.0部及び反応溶剤としてのアセトン150.0部を仕込み、80℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ポリウレタンプレポリマーのアセトン溶液を製造した。次いで得られたポリウレタンプレポリマーに製造例1で得られたブロック化ポリイソシアネート(C−1)の溶剤溶液25.0部、中和剤としてのトリエチルアミン11.3部及び希釈溶剤としてのアセトン72.0部を加えて均一化した後、鎖伸長剤(a3)及び水性媒体としての水482.1部を200rpmで撹拌しながら加え、ポリウレタンプレポリマー及びブロック化イソシアネート(C−1)の混合物を水に分散させた。得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してアセトンを留去した。その後、得られた分散体を室温に冷却した後にジメチルシリコーン(D)としてのSM8706EX(固形分濃度37重量%、東レ・ダウコーニング(株)製)94.6部を加えて均一化し、水を加えて固形分濃度を30.0重量%に調製することでポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)得た。
<実施例2〜8>
使用する原料及び使用量を表1に記載ものにする以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−9)得た。
尚、実施例7は参考例7である。
<比較例1>
使用する原料及び使用量を表1に記載にするものにする以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−1)を得た。
<比較例2>
使用する原料及び使用量を表1に記載にするものにする以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタンプレポリマー及びブロック化イソシアネート(C−2)の混合物を水性媒体に分散させた。得られた分散体に鎖伸長剤(a3)としてのジエチレントリアミン10重量%水溶液45.8部を加え、50℃に加熱して4時間攪拌することで水及びジエチレントリアミンによる伸長反応を行った。減圧下60℃でアセトンを留去し、室温に冷却した後にジメチルシリコーン(D)としてのPOLON MF−32[固形分濃度31重量%、信越化学(株)製]95.8部を加えて均一化し、水を加えて固形分濃度を30.0重量%に調製することでポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−2)得た。
<比較例3〜4>
使用する原料及び使用量を表1に記載にするものにする以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−3)〜(Q’−4)を得た。
表1における各原料の組成は以下の通りである。
・デュラノールG4672:Mn=2000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール[旭化成ケミカルズ(株)製]、ヘキサメチレン基の含有量=30モル%
・デュラノールT5652:Mn=2000のポリ(ペンタメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール[旭化成ケミカルズ(株)製]、ヘキサメチレン基の含有量=50モル%
・デュラノールT6002:Mn=2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ(株)製]、ヘキサメチレン基の含有量=100モル%
・ETERNACOLL UH−300:Mn=3000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール[宇部興産(株)製]、ヘキサメチレン基の含有量=100モル%
・クラレポリオールC−2015N:Mn=2000のポリ(2−メチル−オクタメチレン/ノナメチレン)カーボネートジオール[クラレ(株)製]
・クラレポリオールP−6010:Mn=6000のポリ3−メチル−ペンタメチレンアジペート[クラレ(株)製]
・POLON MF−32:ジメチルシコーンの水性エマルション(固形分濃度31重量%)[信越化学(株)製]
・SM8706EX:ジメチルシリコーンの水性エマルション(固形分濃度37重量%)[東レ・ダウコーニング(株)製]
<実施例10〜18及び比較例5〜8>
実施例1〜9又は比較例1〜4で得られたポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)〜(Q−9)又は(Q’−1)〜(Q’−4)2.7部、顔料[カーボンブラック水分散体(東海カーボン(株)製「Aqua−Black162」、固形分濃度20重量%)2.5部、保湿安定助剤としてのグリセリン1.0部、トリエチレングリコール0.1部、浸透剤としての1,2−ヘキサンジオール0.1部及び水3.6部を容器に仕込み、10分間混合して、インクジェット用インク(L−1)〜(L−9)及び比較用のインクジェット用インク(L’−1)〜(L’−4)を作製した。
尚、実施例16は参考例16である。
用いたポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)〜(Q−9)及び(Q’−1)〜(Q’−4)について以下の方法で測定した各種物性値及び得られたインクジェット用インク(L−1)〜(L−9)及び(L’−1)〜(L’−4)について以下の方法で評価した結果を表2及び表3に示す。
<皮膜の柔軟性及び機械物性の評価方法>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを使用し、100%応力、破断強度及び破断伸度を測定した。
皮膜の柔軟性は、上記で得られたフィルムの100%引張応力で評価でき、100%引張応力の数値が小さい程、皮膜の柔軟性が良好である。皮膜の機械物性は、上記で得られたフィルムの破断強度及び破断伸度で評価でき、いずれも数値が大きいほど皮膜の機械物性に優れる。
尚、破断強度及び破断伸度の測定は、JIS K7311に記載の5.引張試験に基づいて行った。
<ポリウレタン樹脂の耐水性の評価方法>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で、140℃で1時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを2cm×8cmにカットして試験片を作製した。得られた試験片を水中に浸漬し、50℃24時間浸漬した後取り出し、表面に付着した水を軽くふき取ってから重量(W1)を測定した。次いで、試験片を130℃循風乾燥機で1時間乾燥し、重量(W2)を測定した。得られた数値を用いて下記式により膨潤率を算出した。膨潤率の数値が小さい程ポリウレタン樹脂の耐水性に優れる。
膨潤率(%) = {(W1−W2)/W2}×100
<ポリウレタン樹脂の耐薬品性の評価方法>
前記耐水性の評価で作製した試験片を0.1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、25℃24時間浸漬した後取り出し、表面に付着した水を軽くふき取ってから重量(W1)を測定した。次いで、試験片を130℃の循風乾燥機で1時間乾燥し、重量(W2)を測定した。得られた数値を用いて下記式より膨潤率を算出した。膨潤率の数値が小さい程ポリウレタン樹脂の耐薬品性に優れる。
膨潤率(%) = {(W1−W2)/W2}×100
<印捺布の摩擦堅牢性の評価方法>
綿ブロード布に上記で作製したインクジェット用インクを塗布量が1mg/cm2となるように塗布し、160℃の循風乾燥機で5分間乾燥させて印捺布を作製した。得られた印捺布を用いてJIS L0849(II型)に規定された方法に準拠して乾燥試験及び湿潤試験を実施し、汚染グレースケールを基準として摩擦用白綿布への汚染を評価した。
<印捺布の洗濯堅牢性の評価方法>
前記の摩擦堅牢性評価で作製した印捺布を用いて、JIS L0844(A−2号)に規定された方法に準拠し、汚染グレースケールを基準として添付白布への汚染を評価した。
<印捺布の風合いの評価方法>
前記の摩擦堅牢性試験で用いた綿ブロード布にインクを塗布せずに、160℃の循風乾燥機で5分間乾燥させて、触感比較用綿布を作製した。前記の摩擦堅牢性試験で作製した印捺布と触感比較用綿布の触感を比較することで印捺布の風合いを評価した。
◎:触感に変化が無い。
○:僅かにごわつきが見られるのみで質感を維持している。
×:硬く、ごわつきが強い。