JP7092572B2 - 乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法 - Google Patents

乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法 Download PDF

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Description

NITE P-02728 NITE P-02729
本発明は、米原料を原材料とし、乳酸菌による乳酸発酵によって得られる乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法に関する。
従来から、健康ブームを背景に、乳や乳製品を主原料とし、乳酸菌で発酵させたものを加工した乳酸発酵飲料や乳酸発酵食品が市場で発売されてきた。一方、米はエネルギー源となる糖質に加え、ビタミン、タンパク質、ミネラル、食物繊維などを豊富に含み、精米してそのまま摂取するのにとどまらず、飲料や食品の原材料としても着目されてきた。
たとえば、特許文献1には、玄米を原材料として用いて、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)などの乳酸菌により乳酸発酵した乳酸発酵飲食物が記載されている。また、特許文献2には、玄米を原材料として用いて、ラクトバチルス・ブルガリクス、又はラクトバチルス・アシドフィルスの乳酸菌により乳酸発酵した乳酸発酵飲料が記載されている。さらに、特許文献3には、微細粒米粉を原材料として用いて、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の乳酸菌により乳酸発酵した乳酸発酵飲料が記載されている。しかし、いずれの場合も、得られる乳酸発酵飲料は、米臭さが残ったり、美味しさに欠けるものであった。
特公昭63-041534号公報 特開平07-255438号公報 特開2016-093151号公報
そこで、本発明は、米原料を用いてより甘味と酸味のバランスだけでなく香味にも優れ、飲料又は食品としてより美味しい乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、米原料を乳酸菌により乳酸発酵させることで、甘みと酸味のバランスに優れ、より美味しい乳酸発酵飲料又は食品が製造できることを見出した。また、そのような優れた乳酸発酵飲料又は食品の香味が、ジアセチル及びヘキサナールの含有量に関連していることを見出した。したがって、本発明の第1の局面は、
(1)籾、玄米、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせからなる群から選択される米原料を原材料とし、ジアセチルの含有量が0.02ppb未満であり且つヘキサナールの含有量が30ppb未満である乳酸発酵飲料又は食品、である。
本発明の好適な態様は、
(2)上記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して50質量%以上の単糖類を含む、上記(1)に記載の飲料又は食品、である。
本発明の好適な態様は、
(3)上記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して70質量%以上の単糖類を含む、上記(1)に記載の飲料又は食品、である。
本発明の好適な態様は、
(4)上記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して80質量%以上の単糖類を含む、上記(1)に記載の飲料又は食品、である。
本発明の好適な態様は、
(5)上記飲料又は食品の有する酸度に対する甘味度の割合が3.3~6.0である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の飲料又は食品、である。
本発明の発明者らは、飲料又は食品の有する酸度に対する甘味度の割合が特定の範囲内にある場合にとりわけ甘味度と酸度のバランスに優れ美味しいことを見出した。したがって、本発明の好適な態様は、
(6)上記割合が3.7~3.9である、上記(5)に記載の飲料又は食品、である。
本発明の好適な態様は、
(7)上記飲料又は食品はラクトバチルス・サケイに属する菌株である乳酸菌を含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載の飲料又は食品、である。
(8)上記ラクトバチルス・サケイに属する菌株が、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus Sakei)株No.7(受託番号:NITE P-02728)及びラクトバチルス・サケイ株No.16(受託番号:NITE P-02729)の少なくともいずれか一方である、上記(7)に記載の飲料又は食品、である。
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、上記のとおり、米原料を特定の乳酸菌を用いて乳酸発酵させることで、甘みと酸味のバランスだけでなく香味にも優れ、より美味しい乳酸発酵飲料又は食品が製造できることを見出した。したがって、本発明の他の局面は、
(9)籾、玄米、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせからなる群から選択される米原料を原材料とし、少なくとも1つ以上の乳酸菌により乳酸発酵をする発酵工程を含む、ジアセチルの含有量が0.02ppb未満であり且つヘキサナールの含有量が30ppb未満である乳酸発酵飲料又は食品の製造方法、である。
本発明は、米原料を用いてより甘味と酸味のバランスだけでなく香味にも優れ、飲料又は食品としてより美味しい乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法を提供することができる。
以下で本発明の乳酸発酵飲料又は食品、及びその製造方法を実施する形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための一例であり、本発明が当該実施形態のみに限定されるものではない。
<乳酸発酵飲料又は食品の製造方法>
本実施形態において、乳酸発酵飲料又は食品の製造は、米原料を原材料として用いて、概ね、仕込み工程、液化工程、糖化工程、及び発酵工程を含む。
原材料として用いる米原料は、籾、玄米(籾から籾殻を除去した玄米、及び発芽をさせた発芽玄米のいずれをも含む)、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせから、好ましくは、玄米、精米、中糠、上白糠、及びその組み合わせから選択され、より好ましくは精米および上白糠が用いられる。なお、精米には、その精米度合いに応じて、3分づき、5分づき、7分づき、白米などに分類され、場合によっては胚芽が残留し得るが、そのいずれをも含む。上記の米原料は、公知の方法により、さらに所定の粒度になるまで粉砕処理して利用されるが、粉砕処理することなくそのままの状態で原材料として利用することも可能である。したがって、本実施形態において、原材料として用いる米原料には、粉砕処理されたもののみならず、粉砕処理することなくそのままの形態のものも含む。
また、米原料は、含まれるデンプンの違いによってうるち米ともち米などに分類することが可能であるが、いずれでも好適に用いることが可能である。さらに、原材料に米原料以外の、大麦、小麦、エン麦、ライ麦などの他の原料が含まれていてもよい。すなわち、原材料の主要成分として米原料が用いられていればよく、30%以内、好ましくは20%以内、より好ましくは10%以内の範囲において、上記穀類等、他の原料が含まれていてもよい。
1.仕込み工程
本実施形態においては、籾、玄米、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせから選択された米原料を、所定の粒度になるまで粉砕処理した米粉を原材料として用い、当該米粉を純水と混合する。その際の米粉と純水の割合は、適宜調整されることが可能である。一例としては、米粉が10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~40質量%、より好ましくは20質量%~30質量%となるように純水の量が調整される。
2.液化工程
上記仕込み工程によって得られた純水と米粉の混合液に液化反応を行って、上記混合物中に含まれるデンプンの糖鎖を切断して、低分子の糖類に分解するための液化工程を行う。具体的には、純水と米粉の混合物に、所定の液化酵素を添加する。その後、得られた溶液を、添加した液化酵素の反応温度まで上げ、所定の反応時間で液化反応させ、液化液を得る。この液化反応には、沸騰湯浴などのバッチ加熱式液化装置や、ジェットクッカーなどの連続式液化装置を利用することができる。
添加する液化酵素としては、デンプンのα-1,4グリコシド結合をランダムに切断するものであればよく、好ましくはα-アミラーゼ(EC3.2.1.1)を用いることができる。このような液化酵素としては市販のものでも良く、より好ましくは商品名「クライスターゼT10S」(天野エンザイム社製)である。
液化酵素の添加量は、JIS K7001-1990により測定した1液化力単位(JLU)を1unitとした場合に、原材料(米粉)1gに対して0.1JLU~200.0JLU、好ましくは1.0JLU~100.0JLU、より好ましくは10.0JLU~50.0JLUに相当する量である。0.1JLU以上であれば、液化反応は十分に進み、200.0JLU以下であれば経済的である。
液化反応の反応温度及び反応時間は、添加する液化酵素の種類や原料として用いる米粉の粉砕度合によっても異なる。一例としては、反応時間は65℃~120℃、好ましくは80℃~110℃で、反応時間は0.01時間~24時間、好ましくは0.1時間~12時間、より好ましくは0.1時間~4時間で液化反応させる。
なお、液化工程において、必要に応じて、純水と米粉の混合物に、pH調整剤を添加して所望のpHとなるように調整して液化反応を行うことも可能である。用いるpH調整剤は、飲料用又は食用として適する公知のpH調整剤を適宜用いることが可能である。また、pH調整剤添加後のpHは、用いる液化酵素に応じて最適なpHに適宜調整することが可能である。一例としては、pH4.0~pH8.0、好ましくはpH5.0~pH7.0、より好ましくはpH6.0~pH6.5に調整される。
また、液化反応後の液化液は、必要に応じて、珪藻土等を助剤とする濾過を行い、適宜不純物を除去してもよい。
3.糖化工程
液化工程によって得られた液化液を、糖化酵素の反応温度まで低下させ、糖化酵素を添加し糖化反応を行って、液化工程によって生成された低分子の糖類を単糖類及び少糖類にさらに分解するための糖化工程を行う。なお、この糖化工程においては、所望の糖組成の糖化液を得るために、糖化酵素に加えて枝切り酵素をさらに添加することも可能である。また、糖化反応を効率的に行うために、糖化酵素に加えてタンパク質分解酵素をさらに添加することも可能である。具体的には、液化液に上記各酵素を添加し、添加した酵素の反応温度まで上げ、所定の反応時間で糖化反応させ、糖化液を得る。
添加される糖化酵素の一例としては、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)を用いることができる。このような糖化酵素としては、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属又はクモノスカビ(Rhizopus)属由来のものを利用可能であり、また遺伝子組み換えであるか非遺伝子組み換えであるかに関わらず利用することができる。具体的には、糖化酵素は、市販のものでもよく、好ましくは商品名「グルコチーム#20000」、商品名「OPTIMAX4060VHP」、商品名「デナチームGSA/R」(以上、長瀬産業社製)、商品名「グルクザイムPL45」、商品名「ダイザイムGPS」(以上、天野エンザイム社製)、商品名「スミチームAD」(新日本化学工業社製)、商品名「グルターゼAN」(エイチビィアイ社製)、商品名「AMG」、又は商品名「Dextrozyme」(以上、ノボザイムズ社製)、商品名「GODO-ANGH」(合同酒精社製)、商品名「ユニアーゼ30」(ヤクルト薬品工業社製)である。
上記糖化酵素の添加量は、酵素力価をpH4.5で40℃、30分間、アミロースに添加して反応させた結果グルコースを1mg生産する酵素量を1unitとした場合に、原材料(米粉)1gに対して36units~360units、好ましくは72units~280units、より好ましくは100units~210unitsに相当する量である。360units以下であれば酵素に起因する不快な風味を抑制でき、36units以上であれば十分に糖化反応が進む。
また、添加される枝切り酵素の一例としては、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)やイソアミラーゼ(EC3.2.1.68)を、好ましくは商品名「プルラナーゼ『アマノ』3」(天野エンザイム社製)を用いることができる。当該枝切り酵素の添加量は、酵素力価がpH6.0で例えば天野法で測定した活性が3,000units/mL有する場合において、原材料(米粉)1gに対して0.1units~100.0units、好ましくは0.5unit~50.0units、より好ましくは1.0units~10.0unitsに相当する量である。
さらに、添加されるタンパク質分解酵素の一例としては、EC番号が3.4群のものであれば良く、好ましくはプロテアーゼ(EC3.4.22.2)を用いることができる。このようなタンパク質分解酵素としては市販のものでも良く、好ましくは、商品名「スミチームP」、又は商品名「スミチームLP50D」(以上、新日本化学工業社製)である。当該タンパク質分解酵素の添加量は、酵素力価がpH6.0で例えばCAF法で測定した活性が50,000units/gを有する場合に、原材料(米粉)1gに対して1unit~500units、好ましくは10units~100units、より好ましくは40units~70unitsに相当する量である。
糖化反応の反応温度及び反応時間は、添加する糖化酵素、枝切り酵素、タンパク質分解酵素の種類によって適宜調整することが可能である。一例としては、反応温度が30℃~70℃、好ましくは40℃~65℃、より好ましくは50℃~60℃で、反応時間が0.1時間~72時間、好ましくは1時間~48時間、より好ましくは2時間~24時間で糖化反応させる。
その後、糖化反応後の溶液は、添加された各酵素を失活させるため、90℃以上の高温下で所定時間処理される。
なお、糖化工程において、必要に応じて、液化液に、pH調整剤を添加して所望のpHとなるように調整して糖化反応を行うことも可能である。糖化工程において用いるpH調整剤は、食品添加物として登録され飲料又は食料に添加が認められた公知のpH調整剤を適宜用いることが可能である。また、pH調整剤添加後のpHは、添加する各酵素に応じて最適なpHに適宜調整することが可能である。一例としては、pH2.0~pH7.0、好ましくはpH3.0~pH6.0、より好ましくはpH4.0~pH5.0に調整される。
また、上記糖化工程においては、市販の糖化酵素を用いて糖化反応を行ったが、例えば麹を用いて糖化反応を行うことも可能である。
また、糖化反応後の糖化液は、適宜必要に応じて、珪藻土等を助剤とする濾過を行い、適宜不純物を除去してもよい。
4.発酵工程
上記工程によって得られた糖化液を、乳酸菌の発酵温度まで低下させ、乳酸菌を添加して乳酸発酵をする、発酵工程を行う。具体的には、得られた糖化液を所定の発酵温度まで冷却し、所定量の乳酸菌培養液を添加して、所定の発酵時間で乳酸発酵を行い、発酵液を得る。
本発明の好適な実施形態においては、当該乳酸発酵のために、ラクトバチルス・サケイに属する1つ以上の菌株を用いる。特に好適な実施形態においては、当該乳酸発酵のために、2018年6月13日に独立行政法人製品評価技術基盤機構/特許微生物寄託センターに寄託されたラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus Sakei)株No.7(受託番号:NITE P-02728)及びラクトバチルス・サケイ株No.16(受託番号:NITE P-02729)の少なくともいずれか一方を用いる。当該乳酸菌を用いることで、いっそう甘味と酸味のバランスに優れ、美味しさに影響する不要な香味成分の発生を抑制し、より美味しい乳酸発酵飲料又は食品を得ることが可能となる。
上記乳酸菌を用いて発酵させるにあたり、上記糖化工程で得られた糖化液中には、グルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、四糖類以上等の各種糖類が含まれる。当該糖化液の糖組成としては、グルコースが発酵工程において乳酸菌により分解される一方で、最終的に主要な甘味源となることから、グルコースが多量に含まれているのが好ましい。したがって、当該糖化液内に含まれる糖類全体に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上の単糖類が含まれているのがよい。さらに、得られた糖化液内に含まれる各糖の糖濃度は、糖化液全体に対して、10質量%、好ましくは14質量%、より好ましくは16質量%以上の単糖類が含まれているのが良い。当該糖組成又は糖濃度であれば、乳酸発酵を行うのに十分な量の単糖類が含まれ、かつ最終的に得られる乳酸発酵飲料又は食品において十分な甘味を提供することが可能となる。
本実施形態においては、得られた糖化液に乳酸菌の菌体を添加して前培養を行うのが好ましい。本培養において得られた糖化液に添加する乳酸菌は、一例として、本培養に用いる糖化液の液量に対して、0.1体積%~30.0体積%、好ましくは0.5体積%~20.0体積%、より好ましくは1.0体積%~10.0体積%に相当する量で添加する。
発酵温度及び発酵時間は、前培養条件や添加する乳酸菌にもよるが、一例として、10℃~45℃、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは30℃~40℃の発酵温度で、1時間~72時間、好ましくは6時間~48時間、より好ましくは12時間~32時間の発酵時間で、発酵させる。
なお、本実施形態において、乳酸発酵飲料又は食品中に含まれる乳酸菌は、生菌のまま上記飲料又は食品中に含有されているもののみならず、高温処理などを通じて死滅させられたものも含む。当該高温処理は、乳酸発酵により得られた発酵液を、80℃以上の高温下で所定時間処理することにより行われる。
5.後処理工程
上記発酵工程によって得られた発酵液は、そのまま乳酸発酵飲料として用いることが可能であるが、当該発酵液に所定の後処理を行って、所望の形態の乳酸発酵飲料又は食品とすることが可能である。後処理の一例としては、シロップ状にするための濃縮工程、所望の添加物(香料など)を加える工程、炭酸飲料、果汁飲料、アルコール飲料などと混合する工程、食品加工工程などが挙げられる。
<乳酸発酵飲料又は食品>
上記のとおり、本実施形態においては、上記発酵工程によって得られた発酵液をそのまま乳酸発酵飲料として用いることが可能である。このとき、得られた発酵液中に含まれるジアセチル及びヘキサナールの濃度が所定量以下であることが好ましいことが見出された。理論に拘束されるわけではないが、高濃度のジアセチル及びヘキサナールは、発酵液に対して、乳酸発酵飲料や当該食品の香味としては望ましくない「発酵臭」を付与するものと考えられる。具体的には、ジアセチルについては、0.02ppb未満、好ましくは0.01ppb未満、より好ましくは未検出であるのが良い。また、ヘキサナールについては、30ppb未満、好ましくは20ppb未満、より好ましくは未検出であるのが良い。ジアセチル及びヘキサナールが上記既定の範囲内であれば、発酵液をそのまま、好ましい香味を示す乳酸発酵飲料とすることができる。
また、得られた発酵液としては、当該発酵液の酸度に対する甘味度の割合が、3.3~6.0、好ましくは3.7~3.9であるのがよい。当該割合が3.3以下であると、酸度が高く酸っぱさを過剰に呈することになり、一方で6.0以上であると甘味度が高く甘さが強くなり、上記範囲が酸度と甘味度のバランスが優れたものとなる。
また、得られた発酵液中には、発酵でその一部が消費されたグルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、四糖類以上等の各種糖類が含まれる。当該発酵液の糖組成としては、当該発酵液内に含まれる糖類全体に対して、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上の単糖類が含まれているのがよい。さらに、得られた発酵液内に含まれる各糖の糖濃度は、発酵液全体に対して、10質量%、好ましくは14質量%、より好ましくは16質量%以上の単糖類が含まれているのが良い。当該糖組成であれば、乳酸発酵飲料又は食品において十分な甘味を提供することが可能となる。
また、本実施形態においては、得られた発酵液をそのまま乳酸発酵飲料として用いるのではなく、所定の後工程を行って、所望の形態の乳酸発酵飲料又は食品とすることも可能である。このような乳酸発酵飲料の例としては、炭酸飲料、果汁飲料、アルコール飲料、シロップ、フルーツ風味飲料などが挙げられる。なお、乳酸発酵飲料には、本発明の効果を損なわない程度に、他の飲料、例えば豆乳等を混合することも可能である。また、このような乳酸発酵食品の例としては、ゼリー、ヨーグルト、プリン、アイスクリームなどの冷菓、キャンディ、ソフトキャンディ、ガム、ジャムなどが挙げられる。
また、乳酸発酵飲料又は食品とするにあたって、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール類、アスパルテーム、ステビオサイド、スクラロース、アセスルファムK等の高甘味度甘味料、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸等の有機酸類、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミン類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の界面活性剤、アラビアガム、カラギーナン、ペクチン、寒天等の増粘剤、カゼイン、ゼラチン等の安定化剤、アミノ酸類、カルシウム塩等ミネラル類、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール等添加物、色素、香料、保存剤などを適宜添加してもよい。
<各種測定・算出方法>
1.糖組成の測定
本実施形態において、発酵に用いる糖化液又は発酵液に含まれる糖類の組成は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。一例としては、当該糖化液又は発酵液を精製後、純水で所定のBrixに希釈し、所定の細孔サイズのフィルターに通液させたのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:例えば、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製))によって測定することができる。
2.各糖の濃度の測定
本実施形態において、糖化液又は発酵液中の各糖類の濃度は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。一例としては、当該糖化液又は発酵液を精秤・精製後、内部標準物質を添加した後、メスフラスコ等を用いて定容したものを所定の細孔サイズのフィルターに通液させたのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:例えば、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製))によって測定することができる。なお、糖化液又は発酵液中に含まれる単糖類、二糖類、三糖類の主な糖はグルコース、マルトース、マルトトリオースであること、及び四糖類以上には分岐糖も含まれるが直鎖糖と分岐糖の甘味度に大きな違いがなく、分枝糖が含まれていたとしても含量が少ないため、各糖類について下記に記載する糖の甘味度を用いて算出することができる。具体的には、単糖類はグルコース、二糖類はマルトース、三糖類はマルトトリオース、四糖類はマルトテトラオース、五糖類はマルトペンタオース、六糖類以上はマルトヘキサオースとマルトヘプタオースの平均値を用いることが可能である。
3.酸度に対する甘味度の割合の算出
本実施形態において、乳酸発酵飲料の甘味度は、得られた発酵液に含まれる各糖類の濃度に、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類ごとにあらかじめ決められた甘味度を掛け合わせることにより算出される。なお、この各糖類ごとにあらかじめ決められた甘味度としては、例えば精糖工業会発行の「甘味料の総覧」に記載の甘味度が用いられる。発酵工程により得られた発酵液の酸度の測定は、採取した所定量の発酵液にフェノールフタレイン指示薬を添加した後、1/10規定の標準苛性ソーダ溶液を滴下して指示薬が発色したときの苛性ソーダ溶液の滴下量を酸度として測定する。そして、発酵工程により得られた発酵液の酸度に対する甘味度の割合は、上記方法によって算出された甘味度を上記方法によって測定された酸度で除することによって算出される。
4.香味成分の測定
乳酸発酵飲料又は食品中に含まれる香味成分であるジアセチル及びヘキサナールの濃度は、公知の測定法を適宜用いて測定することができる。一例としては、発酵により得られた発酵液から適量試料を採取し、ヘッドスペース型ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS:例えば、商品名「GL-2010」(島津製作所社製)及び商品名「ヘッドスペースオートサンプラー HS-20」(島津製作所社製))によって測定することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
<糖化液の調製>
原材料には、うるち米の精米を粉砕した米粉を用いた。当該米粉に純水を加えて、濃度が22.5質量%となるように調整した。次に、得られた混合液に、液化酵素として、13,100JLU/g(測定法はJIS K7001-1990による)の力価を有する商品名「クライスターゼT10S」(天野エンザイム社製)を米粉1gに対して32.8JLU添加した。その後、得られた反応液を、90℃になるまで昇温し、当該温度にて60分間保持した。次に、当該反応液を60℃にまで冷却し、液化反応を停止させ、液化液を得た。
得られた液化液に、糖化酵素、枝切り酵素、及びタンパク質分解酵素をそれぞれ添加した。糖化酵素は、酵素力価をpH4.5で40℃、30分間、アミロースに添加して反応させた結果、グルコースを1mg生産する酵素量を1unitとした場合に、32,000units/gの非活性を有する商品名「ダイザイムGPS」(天野エンザイム社製)を、米粉1gに対して128units添加した。また、枝切り酵素は、酵素力価がpH6.0で天野法による活性が3,000units/mLを有する商品名「プルラナーゼ『アマノ』3」(天野エンザイム社製)を、米粉1gに対して3.9units添加した。さらに、タンパク質分解酵素は、酵素力価がpH6.0でCAF法による活性が50,000units/gを有する商品名「スミチームLP50D」(新日本化学工業社製)を、米粉1gに対し55units添加した。その後、得られた反応液を58℃で2.5時間保持して糖化反応を行った。次に、当該反応液を90℃まで加温し、糖化液を得た。
<糖組成の測定>
得られた糖化液の糖組成は糖類の組成は、当該糖化液のBrixを純水で5%に調製し、活性炭ミクロスパーテル1杯(約0.003g)を添加後細孔サイズ5.0μmのメンブレンフィルターに通し、さらにイオン交換樹脂ダイヤイオンPK218およびダイヤイオンPA406(以上、三菱ケミカル社製)で精製し、細孔サイズ0.45μmのメンブレンフィルターに通したのちに、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製)に供して分析した。
(測定条件)
カラム:商品名「ULTRON PS-80N」(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6mL/min
検出:RI(示差屈折率)
また、測定対象を糖化液から発酵液に変更した以外は、全て同様の方法により、発酵工程により得られた発酵液の糖組成を測定した。
<各糖類の濃度の測定>
得られた発酵液中に含まれる各糖類の濃度は次の方法で定量した。得られた発酵液約5gを精秤し、活性炭ミクロスパーテル1杯(約0.003g)を添加後加熱した液を5μmのメンブレンフィルター、イオン交換式カラム(商品名:「InertSep mini MC-1」、「InertSep mini MA-1」(以上、ジーエルサイエンス社製)の順に精製した。洗液を加えた本精製液全量と内部標準用1-プロパノール10%溶液400μLをメスフラスコに加え、10mLにメスアップした。これを細孔サイズ0.45μmのメンブレンフィルターに通したのちに、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製)に供して分析し、各糖類のピーク面積を求めた。なお、比較サンプルは、精秤したグルコース0.1gと内部標準用1-プロパノール10%溶液1mLを、メスフラスコを用いて25mLにメスアップし、これを細孔サイズ0.45μmのメンブレンフィルターに通したものを同様に分析した。
(測定条件)
カラム:商品名「ULTRON PS-80N」(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6mL/min
検出:RI(示差屈折率)
試料注入量:10μL
各糖類の濃度の計算は、以下のとおり行った。なお、下記式に用いた数値10は内部標準プロパノール濃度(%)、0.4は各サンプルに加えるプロパノール量(mL)である。
・各糖類の濃度(w/w)=10×0.4×(発酵液分析における各糖類のピーク面積/発酵液分析におけるプロパノールのピーク面積)/(比較サンプル分析におけるグルコースのピーク面積/比較サンプル分析におけるプロパノールのピーク面積)/精秤した発酵液の量(g)
また、測定対象を糖化液から発酵液に変更した以外は、全て同様の方法により、発酵工程により得られた発酵液中に含まれる各糖類の濃度を測定した。
<酸度に対する甘味度の割合の算出>
乳酸発酵を行って得られた乳酸発酵飲料(発酵液)の甘味度は、精糖工業会発行の「甘味料の総覧」に記載の甘味度にしたがって、各糖類ごとに以下のとおり算出した(表1)。なお、それぞれの数値は、単糖類はグルコース、二糖類はマルトース、三糖類はマルトトリオース、四糖類はマルトテトラオース、五糖類はマルトペンタオース、六糖類以上はマルトヘキサオースとマルトヘプタオースの平均値を用いた。各糖類には上記以外のものも含まれることがあるが、単糖類、二糖類、三糖類の主な糖がグルコース、マルトース、マルトトリオースであること、四糖類以上は分岐糖も含まれるが直鎖糖と分岐糖の甘味度に大きな違いがなく含量も少ないため、上記以外の糖が含まれていたとしても甘味度の算出において特段の誤差を生むものではない。
Figure 0007092572000001
次に、得られた乳酸発酵飲料(発酵液)の酸度は、発酵液9mLを100mL容三角フラスコに分取し、フェノールフタレイン指示薬を数滴滴下した。次いで、分取した糖化液に、1/10規定標準苛性ソーダ溶液(和光純薬工業株式会社製)を所定量ずつ滴下し、フェノールフタレイン指示薬が発色した時点における苛性ソーダ溶液の滴下量を、乳酸酸度として測定した。
そして、上記のとおり得られた発酵液の甘味度と酸度に基づいて、「各乳酸発酵飲料(発酵液)における酸度に対する甘味度の割合=甘味度/酸度」の式に基づいてそれぞれ割合を算出した。
<香味成分の測定>
得られた乳酸発酵飲料(発酵液)中に含まれる香味成分であるジアセチル及びヘキサナールの濃度は、100mLバイアルに1mLサンプルを入れたヘッドスペース部をヘッドスペース(商品名「HS-20」(島津製作所社製))を用いて、本体(商品名「GL-2010」(島津製作所社製))に供して分析した。定量用スタンダードは、ジアセチル、ヘキサナールが100ppmとなるようアセトニトリルにて希釈し、さらに段階的に純水で希釈して100ppb溶液を調製し、同条件で分析した。
(測定条件)
・カラム条件
カラム:商品名「DB-WAX」(アジレント・テクノロジー社製)
カラム温度:35℃×5分ホールド、昇温速度5℃/分、240℃×4分ホールド
・インジェクション条件
注入モード:スプリット
気化室温度:25℃
キャリアーガス:ヘリウム
圧力:100kPa
全流量:3.7mL/min
・検出条件
検出:FID
温度:250℃
メイクアップガス:窒素
メイクアップ流量:30mL/分
水素ガス流量:40mL/分
Air流量:400mL/分
<参考例>
上記「糖化液の調製」に記載した方法において、添加する糖化酵素、枝切り酵素、及びタンパク質分解酵素の添加量及び反応時間を適宜変更して、糖組成の異なる複数の糖化液を得た。そして、各糖化液を概ね30℃まで冷却したのち、各糖化液から前培養用の糖化液をそれぞれ分取した。そして、各糖化液から前培養用の糖化液をそれぞれ分取した。分取した糖化液に、乳酸菌としてラクトバチルス・サケイ AK株(株式会社秋田今野商店より入手)を糖化液300mLに対して5体積%添加し、30℃にて24時間、前培養した。次に、本培養液として用いる各糖化液に対して、前培養した各前培養液を5体積%添加して、30℃にて本培養した。その後、得られた本培養液を90℃で達温殺菌し、乳酸菌を死滅させ酸度の増加を止めた。このとき、本培養する時間を各糖化液ごとに調整し、それぞれ異なる酸度の発酵液を得た。そして、得られた各発酵液について、各糖類の濃度を「各糖類の濃度の測定」に記載の方法にしたがって算出し、「酸度に対する甘味度の割合の算出」に記載の方法にしたがって、酸度に対する甘味度の割合を算出した。最終的に、糖化液の糖組成と、発酵液の各糖類の濃度、発酵液の酸度に対する甘味度の割合がそれぞれ異なる参考例1~参考例5の乳酸発酵飲料(発酵液)を得た(表2)。
得られた参考例1~参考例5の乳酸発酵飲料を用いて、成人のパネリスト7人による官能試験を行った。具体的には、各自、参考例1~参考例5の乳酸発酵飲料を摂取し、「美味しさ」及び「香りの良さ」について、「-3」、「-2」、「-1」、「0」、「+1」、「+2」、及び「+3」の7段階で点数をつけ、「(合計点/人数×3点)×100」の計算式を用いて、「-100」~「+100」の点数で評価した。つまり、「美味しさ」については、「0」は美味しくも不味くもなく、「-」が高いほど不味く、「+」が高いほど美味しい。また、「香りの良さ」については、「0」は良くも悪くもなく、「-」が高いほど悪く、「+」が高いほど良い。その結果は表2に示す。
Figure 0007092572000002
表2によれば、単糖類を多量に含む糖化液を用いて乳酸発酵を行い、かつ乳酸発酵飲料として得られた発酵液の酸度に対する甘味度の割合が5.6と4.7であった参考例1及び参考例3において、美味しさ及び香りの良さともに優れた結果が得られた。一方、単糖類の量が少なく、二糖類を多量に含む参考例2及び参考例5は美味しさに乏しく、さらに参考例2は香りも悪かった。したがって、以下の実施例においては、参考例1及び参考例3のように、単糖類を多量に含む糖組成に調整して各評価を行った。
<実施例>
[実施例1]
上記「糖化液の調製」に記載の方法にしたがって、表3に記載の糖組成を有する糖化液を得た。得られた糖化液の糖組成は、「糖組成の測定」に記載の方法にしたがって測定した(表3)。当該糖化液を概ね30℃まで冷却したのち当該糖化液から前培養用の糖化液を分取した。そして、分取した糖化液に、乳酸菌として、自然界から採取され冷凍保存されたラクトバチルス・サケイ株No.7(受託番号:NITE P-02728)の菌体を糖化液300mLに対して白金耳3回分の採取量の割合で添加し、30℃にて72時間、前培養した。次に、本培養液として用いる糖化液に対して、前培養液を5体積%の割合で添加して、30℃にて24時間、本培養した。その後、得られた本培養液を90℃で達温殺菌し、乳酸菌を死滅させ酸度の増加を止めた。これにより得られた乳酸発酵飲料(発酵液)について、糖組成を「糖組成の測定」に記載の方法、各糖類の濃度を「各糖類の濃度の測定」の方法、酸度に対する甘味度の割合を「酸度に対する甘味度の割合の算出」に記載の方法にしたがって、それぞれ算出した(表3)。また、得られた乳酸発酵飲料(発酵液)中に含まれるジアセチル及びヘキサナールの濃度は、「香味成分の測定」に記載の方法にしたがって測定した(表3)。
[実施例2]
実施例1においては、乳酸菌としてラクトバチルス・サケイ株No.7を用いたが、実施例2においては自然界から採取されたラクトバチルス・サケイ株No.16(受託番号:NITE P-02729)を用いて乳酸発酵を行い、それ以外の各工程は実施例1と同様の方法により、乳酸発酵飲料(発酵液)を得た。得られた発酵液の糖組成、各糖類の濃度、酸度に対する甘味度の割合、香味成分の濃度はそれぞれ表3に示す通りであった。なお、糖組成は実施例1と同じ糖化液であるため、実施例1の糖組成と同じである。
[比較例1]~[比較例3]
実施例1においては、乳酸菌としてラクトバチルス・サケイ株No.7を用いたが、比較例1~3においては自然界から採取されたそれぞれ異なる他のラクトバチルス・サケイ株を用いて乳酸発酵を行い、それ以外の各工程は実施例1と同様の方法により、乳酸発酵飲料(発酵液)を得た。得られた発酵液の糖組成、各糖類の濃度、酸度に対する甘味度の割合、香味成分の濃度はそれぞれ表3に示す通りであった。なお、糖組成は実施例1と同じ糖化液であるため、実施例1の糖組成と同じである。
[比較例4]及び[比較例5]
実施例1においては、乳酸菌としてラクトバチルス・サケイ株No.7を用いたが、クリスチャン・ハンセン社から購入したラクトバチルス・カゼイ株(比較例4)、同じくクリスチャン・ハンセン社から購入したラクトバチルス・アシドフィルス株(比較例5)を用いて乳酸発酵を行った。発酵は、購入したフリーズドライ状の各菌株の粒を、前培養液300mLに対して5粒程度添加して、30℃にて24時間、前培養した。その後の本培養は、実施例1と同様に行った。また、他の各工程も、実施例1と同様の方法により行い、乳酸発酵飲料(発酵液)を得た。得られた発酵液の糖組成、各糖類の濃度、酸度に対する甘味度の割合、香味成分の濃度はそれぞれ表3に示す通りであった。なお、糖組成は実施例1と同じ糖化液であるため、実施例1の糖組成と同じである。
Figure 0007092572000003
表3によれば、単糖類を多量に含む糖化液を用いた場合において、ラクトバチルス・サケイ株No.7、及びラクトバチルス・サケイ株No.16を用いて乳酸発酵を行った実施例1及び実施例2の各乳酸発酵飲料(発酵液)においては、参考実施例で「美味しい」と確認された参考例1及び参考例3と同程度の「3.83」(実施例1)、及び「3.73」(実施例2)という甘味度/酸度が得られた。一方で、他の乳酸菌を用いた比較例4及び5においては、酸度と甘味度のバランスが悪く、甘味または酸味が過剰に強いものとなった。また、実施例1及び2の乳酸発酵飲料は、比較例1~3の乳酸発酵飲料と比較しても、とりわけ酸度と甘味度のバランスに優れ美味しいことが分かった。したがって、実施例1及び実施例2でそれぞれ得られた乳酸発酵飲料は、比較例1、2、4及び5の乳酸発酵飲料に比べ、酸味と甘味のバランスに優れる美味しいという予想外に顕著な効果を有することが確認された。
また、ラクトバチルス・サケイ株No.7、及びラクトバチルス・サケイ株No.16を用いて乳酸発酵を行った実施例1及び実施例2の各乳酸発酵飲料(発酵液)においては、発酵臭の原因となりうる香味成分であるジアセチル及びヘキサナールがともに検出されなかった。一方で、他の乳酸菌を用いた比較例1~5においては、ジアセチルが0.02ppm以上、及び/又はヘキサナールが31ppm以上、少なくとも検出された。したがって、実施例1及び実施例2でそれぞれ得られた乳酸発酵飲料は、比較例1~5の乳酸発酵飲料に比べ、香りの良さに優れ美味しいという予想外に顕著な効果を有することが確認された。
以上より、米原料を特定の乳酸菌を用いて乳酸発酵させることで、甘みと酸味のバランスだけでなく香味にも優れ、より美味しい乳酸発酵飲料又は食品を製造することが可能である。
微生物の表示
識別の表示:乳酸菌株No.7
・受託番号:NITE P-02728
・受託日:2018年6月13日
・寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構/特許微生物寄託センター
識別の表示:乳酸菌株No.16
・受託番号:NITE P-02729
・受託日:2018年6月13日
・寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構/特許微生物寄託センター

Claims (7)

  1. 籾、玄米、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせからなる群から選択される米原料を原材料とし、ジアセチルの含有量が0.02ppb未満であり且つヘキサナールの含有量が30ppb未満であり、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus Sakei)株No.7(受託番号:NITE P-02728)及びラクトバチルス・サケイ株No.16(受託番号:NITE P-02729)の少なくともいずれか一方である乳酸菌を含む、乳酸発酵飲料又は食品。
  2. 前記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して50質量%以上の単糖類を含む、請求項1に記載の飲料又は食品。
  3. 前記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して70質量%以上の単糖類を含む、請求項1に記載の飲料又は食品。
  4. 前記飲料又は食品中に含まれる糖全体に対して80質量%以上の単糖類を含む、請求項1に記載の飲料又は食品。
  5. 前記飲料又は食品の有する酸度に対する甘味度の割合が3.3~6.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料又は食品。
  6. 前記割合が3.7~3.9である、請求項5に記載の飲料又は食品。
  7. 籾、玄米、精米、赤糠、中糠、白糠、上白糠、及びその組み合わせからなる群から選択される米原料を原材料とし、少なくとも1つ以上の乳酸菌により乳酸発酵をする発酵工程を含む、ジアセチルの含有量が0.02ppb未満であり且つヘキサナールの含有量が30ppb未満である乳酸発酵飲料又は食品の製造方法であって、前記少なくとも1つ以上の乳酸菌がラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus Sakei)株No.7(受託番号:NITE P-02728)及びラクトバチルス・サケイ株No.16(受託番号:NITE P-02729)の少なくともいずれか一方である、前記製造方法
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