<ポリアミド樹脂>
本発明において使用されるポリアミド樹脂は、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合、固相重合等の公知の方法で重合又は共重合することにより得られる。
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2-/3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-/1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;m-/p-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
一方、ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-/2,6-/2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ポリアミド樹脂において、これらラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩から誘導される単一重合体又は共重合体を各々単独又は混合物の形で用いることができる。
本発明において使用されるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
得られるフィルムの耐熱性、機械的強度、透明性、経済性、入手の容易さ等を考慮して、ポリアミド樹脂は、カプロラクタムから誘導される単位(カプロラクタム単位)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から誘導される単位(ヘキサメチレンアジパミド単位)、及びドデカンラクタムから誘導される単位(ドデカラクタム単位)よりなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される単独重合体あるいは共重合体であることが好ましい。具体的には、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体(ポリアミド6とポリアミド66の共重合体、以下、共重合体は同様に記載)、ポリアミド6/69共重合体、ポリアミド6/610共重合体、ポリアミド6/611共重合体、ポリアミド6/612共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、ポリアミド6/6T共重合体、ポリアミド6/6I共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミド6/IPDT共重合体、ポリアミド66/6T共重合体、ポリアミド66/6I共重合体、ポリアミド6T/6I共重合体、ポリアミド66/6T/6I共重合体、ポリアミドMXD6からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミド6/IPDT共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
JIS K-6920に準じて測定したポリアミド樹脂の相対粘度は、2.0~5.0であることが好ましく、2.5~4.5であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の下限値以上であれば、得られるポリアミドフィルムの機械的性質が良好になる。一方、ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の上限値以下であれば、溶融時の粘度が低くなり、フィルムの成形が容易となる。
該ポリアミド樹脂は、前記ポリアミド樹脂の原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、フィルム製膜時の溶融安定性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸等のカルボン酸類を添加しても良い。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加しても良い。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;ベンジルアミン、β-フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン;N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジオクチルアミン等の対称第二アミン;N-メチル-N-エチルアミン、N-メチル-N-ブチルアミン、N-メチル-N-ドデシルアミン、N-メチル-N-オクタデシルアミン、N-エチル-N-ヘキサデシルアミン、N-エチル-N-オクタデシルアミン、N-プロピル-N-ヘキサデシルアミン、N-プロピル-N-ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。
添加するジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2-/3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;m-/p-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
添加するポリアミンは、一級アミノ基(-NH2)及び/又は二級アミノ基(-NH-)を複数有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。活性水素を備えたアミノ基は、ポリアミンの反応点である。
ポリアルキレンイミンは、エチレンイミンやプロピレンイミン等のアルキレンイミンをイオン重合させる方法、或いは、アルキルオキサゾリンを重合させた後、該重合体を部分加水分解又は完全加水分解させる方法等で製造される。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、或いは、エチレンジアミンと多官能化合物との反応物等が挙げられる。ポリビニルアミンは、例えば、N-ビニルホルムアミドを重合させてポリ(N-ビニルホルムアミド)とした後、該重合体を塩酸等の酸で部分加水分解又は完全加水分解することにより得られる。ポリアリルアミンは、一般に、アリルアミンモノマーの塩酸塩を重合させた後、塩酸を除去することにより得られる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリアルキレンイミンが好ましい。
ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等の炭素数2~8アルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンを原料として、これを開環重合させて得られる1級アミン、2級アミン及び3級アミンを含む分岐型ポリアルキレンイミン、あるいはアルキルオキサゾリンを原料とし、これを重合させて得られる1級アミンと2級アミンのみを含む直鎖型ポリアルキレンイミン、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。さらに、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、ビスアミノプロピルエチレンジアミン等を含むものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、通常、含まれる窒素原子上の活性水素原子の反応性に由来して、第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有する。
ポリアルキレンイミン中の窒素原子数は、特に制限はないが、4~3,000であることが好ましく、8~1,500であることがより好ましく、11~500であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、100~20,000であることが好ましく、200~10,000であることがより好ましく、500~8,000であることがさらに好ましい。
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカ二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデカ二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、エイコセン二酸、ドコサン二酸、ジグリコール酸、2,2,4-/2,4,4-トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、m-/p-キシリレンジカルボン酸、1,4-/2,6-/2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとするポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。通常、ポリアミド原料1モルに対して(繰り返し単位を構成するモノマー又はモノマーユニット1モル)、アミン類の添加量は、0.5~20meq/モルであることが好ましく、1.0~10meq/モルであることがより好ましい(アミノ基の当量(eq)は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。アミン類の添加量が前記の下限値以上であれば、十分な反応性が得られるようになり、一方、アミン類の添加量が前記の上限値以下であれば、所望の粘度を有するポリアミド樹脂の製造が容易となる。
従って、ポリアミド樹脂製造時の生産性を落とさずに、上記末端基濃度の条件を満たすためには、ジアミン及び/又はポリアミンを重合時に添加することが好ましく、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及びポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を添加することがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂は、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミド樹脂の混合物でも構わない。この場合、ポリアミド樹脂混合物の末端アミノ基濃度、末端基カルボキシル濃度は、混合物を構成するポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度及びその配合割合により決まる。
ポリアミド樹脂については、さらに、JIS K-6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。水抽出量が前記の値を超えると、ダイ付近へのオリゴマー成分の付着が著しく、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生により外観不良が生じ易い。さらに、ポリアミド樹脂は、オレフィン樹脂と比較して吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルム製造が困難となるので事前に乾燥し、水分含有率が0.1質量%以下とすることが好ましい。
<無機粒子>
本発明において使用される無機粒子は、シランカップリング剤(a)により表面処理された、ゲル法により製造された無機粒子(A)、及びシランカップリング剤(b)により表面処理された、沈降法により製造された無機粒子(B)である。なお、本明細書において単に「無機粒子」と表現して説明されている実施形態は、無機粒子(A)及び無機粒子(B)に共通する内容であり、無機粒子(A)及び無機粒子(B)において独立して選択できる実施形態である。また、本明細書において単に「シランカップリング剤」と表現して説明されている実施形態は、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に共通する内容であり、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)において独立して選択できる実施形態である。
無機粒子は、突起がフィルムの表面に形成され、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生が抑制されたフィルムが得られさえすれば、その形状は特に制限されず、粉末状、粒子状、フレーク状、板状、繊維状、針状、クロス状、マット状、その他如何なる形状のものであってもよいが、粒子状、板状のものが好ましい。
無機粒子の製造方法は、一般に湿式法と乾式法の2つに分類され、湿式法はさらに沈降法、ゲル法等に分類される。ゲル法で製造された無機粒子は、明確な一次粒子を有しておらず、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子となっており、その凝集構造は粉砕しにくい。それに対し、沈降法で製造された無機粒子は、一次粒子が凝集しているものの比較的緩やかな凝集粒子となっており、その凝集構造は粉砕しやすい。本発明では、無機粒子(A)としてゲル法により製造された無機粒子を用い、無機粒子(B)として沈降法により製造された無機粒子を用いる。
無機粒子(A)として、ゲル法により製造された無機粒子を用いることにより、突起がフィルムの表面に形成されやすく、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生を抑えることができる。無機粒子(B)として、沈降法により製造された無機粒子を用いることにより、比較的硬い凝集粒子となる無機粒子(A)の凝集を無機粒子(B)が阻害し、透明性が良好になると推定される。
無機粒子を構成する無機材料の具体例としては、シリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカが易分散性の点から好ましい。
特に、得られるポリアミドフィルムの透明性、巻きズレ抑制の観点から、無機粒子を構成する無機材料は、シリカであることがより好ましい。シリカは、SiO2・nH2Oで表される二酸化ケイ素を主成分とするものである。シリカは、その製造方法により、乾式法シリカ及び湿式法シリカに分類され、湿式法シリカは、さらに沈降法シリカ、ゲル法シリカ等に分類される。本発明では、無機粒子(A)としてゲル法シリカを用いることがより好ましく、無機粒子(B)として沈降法シリカを用いることがより好ましい。
なお、乾式法シリカは一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化硅素と混合した状態で使用することができる。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカが凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件化で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。
無機粒子の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.1~20μmであることが好ましく、0.5~15μmであることがより好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。無機粒子の体積平均粒子径が前記の下限値以上であれば、フィルム表面の凹凸効果によりフィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生を抑えることができる。一方、無機粒子の体積平均粒子径が前記の上限値以下であれば、フィルム等においてフィッシュアイが発生しにくくなり、透明性が向上する。
無機粒子(A)の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、3μm~20μmであることが好ましく、3.5μm~15μmであることがより好ましく、4μm~10μmであることがさらに好ましい。無機粒子(A)の体積平均粒子径が前記の下限値以上であれば、突起をフィルムの表面に形成しやすく、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において、巻きズレの発生を抑えることができる。一方、無機粒子(A)の体積平均粒子径が前記の上限値以下であれば、フィルムにおいてフィッシュアイが発生しにくくなり、フィルムにおいて透明性が向上する。
無機粒子(B)の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.1μm以上3μm未満であることが好ましく、1μm以上2.8μm以下であることが好ましい。無機粒子(B)の体積平均粒子径が前記の上限値以下であれば、比較的硬い凝集粒子となる無機粒子(A)の凝集を無機粒子(B)が阻害し、フィルムにおいて透明性が良好になると推定される。
なお、体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA-905V2)を使用して、測定することができる。
無機粒子(A)の粒度分布に関しては、特に限定されるものではないが、粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが0~10体積%で粒子径が3μm以上15μm以下のものが90~100体積%であることが好ましく、粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが0~0.2体積%で粒子径3μm以上15μm以下のものが99~100体積%であることがより好ましい。
無機粒子(B)の粒度分布に関しては、特に限定されるものではないが、粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが50~70体積%で粒子径が3μm以上15μm以下のものが30~50体積%であることが好ましく、粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが55~65体積%で粒子径3μm以上15μm以下のものが35~45体積%であることがより好ましい。
粒度分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA-905V2)を使用することにより、測定することができる。
無機粒子の比表面積Sは、特に限定されるものではないが、10~1000m2/gであることが好ましい。このうち、無機粒子(A)の比表面積は、特に限定されるものではないが、150~1000m2/gであることが好ましく、200~900m2/gであることがより好ましく、250~500m2/gであることがさらに好ましく、300~400m2/gであることが特に好ましい。このうち、無機粒子(B)の比表面積は、特に限定されるものではないが、20~400m2/gであることが好ましく、50~350m2/gであることがより好ましく、70~200m2/gであることがさらに好ましく、100~180m2/gであることが特に好ましい。なお、比表面積は、BET法により測定された値を意味する。
無機粒子は、シランカップリング剤により表面処理されている。シランカップリング剤としては、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアナト基、水酸基等を含有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。具体的には、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノジチオプロピルトリヒドロキシシラン、γ-(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノプロピル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)-エチレンジアミン、γ-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物;γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリクロロシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、フィルムの透明性に優れる観点から、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
無機粒子(A)及び無機粒子(B)を共にシランカップリング剤で表面処理することにより、無機粒子とポリアミド樹脂との親和性が向上し、分散性が向上し、フィルムにおいて透明性が良好になると推定される。さらに、フィルムの透明性に優れる観点から、無機粒子(A)及び無機粒子(B)を共にアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理することが好ましい。
シランカップリング剤の添加量は、無機粒子(乾燥物基準)100質量部に対して1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部であることがより好ましく、3~7質量部であることがさらに好ましい。シランカップリング剤の添加量が前記の下限値以上であれば、無機粒子とポリアミド樹脂との親和力が十分になり、分散性が向上する。一方、シランカップリング剤の添加量が前記の上限値以下であれば、分散性向上効果が高く、最終的に得られるフィルムの機械的性質が向上し、シランカップリング剤のフィルムへのブリードアウト等の問題も低減される。
シランカップリング剤で無機粒子を表面処理する方法は特に限定されないが、例えば、無機粒子にシランカップリング剤又はシランカップリング剤溶液を滴下又はスプレーにより添加し、ヘンシェルミキサー等の適当な装置で均一になるように攪拌した後に所定の温度で乾燥を行う乾式処理法、あるいは無機粒子を水等に分散させてスラリー化し、これを攪拌しながらシランカップリング剤を加え、その後脱水、乾燥を行う湿式処理法等が挙げられる。
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂と、シランカップリング剤(a)により表面処理された、ゲル法により製造された前記無機粒子(A)と、シランカップリング剤(b)により表面処理された、沈降法により製造された前記無機粒子(B)とを含むものである。そして、(I)前記無機粒子(A)の濃度が0.0370質量%以上である、又は(II)前記無機粒子(A)と前記無機粒子(B)の合計に対する前記無機粒子(A)の含有量が、35質量%以上である、の条件を満たすものである。このようなポリアミド樹脂組成物は、透明性が良好であり、かつフィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生が抑制されたフィルムを形成可能となる。
無機粒子(A)の濃度は、0.0370質量%以上であることが好ましい。無機粒子(A)は、ゲル法で製造された比較的硬い凝集粒子であるため、所定量以上の無機粒子(A)を含むことで、突起がフィルムの表面に形成されやすく、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生を抑えることができる。一方、無機粒子(A)が多すぎると、フィルムの透明性、外観等が損なわれる可能性がある。したがって、無機粒子(A)の濃度は、0.0420~0.0800質量%であることがより好ましく、0.0450~0.0650質量%であることがさらに好ましく、0.0500~0.0640質量%であることが特に好ましい。
無機粒子(B)の濃度は、0.0160質量%以上であることが好ましい。無機粒子(B)は、沈降法で製造された比較的緩やかな凝集粒子であるため、所定量以上の無機粒子(B)を含むことで、フィルムにおいて透明性が良好になると推定される。一方、無機粒子(B)が多すぎると、無機粒子(A)と同様にフィルムの透明性、外観等が損なわれる可能性がある。したがって、無機粒子(B)の濃度は、0.0180~0.0780質量%であることがより好ましく、0.0220~0.0700質量%であることがさらに好ましく、0.0400~0.0650質量%であることが特に好ましい。
無機粒子(A)に無機粒子(B)を加えることにより、図3に示すように、比較的硬い凝集粒子となる無機粒子(A)7の凝集を無機粒子(B)8が阻害し、透明性が良好になると推定される。
無機粒子(A)及び無機粒子(B)の合計濃度は、0.0530質量%以上であることが好ましく、0.0600~0.1580質量%であることが好ましく、0.0670~0.1350質量%であることがより好ましく、0.0900~0.1290質量%であることが特に好ましい。
無機粒子(A)と無機粒子(B)の配合比に関しては、無機粒子(A)と無機粒子(B)の合計に対する無機粒子(A)の含有量が35質量%以上であることが好ましい。こうすることで無機粒子(B)により無機粒子(A)の凝集が阻害され、無機粒子(A)により突起がフィルムの表面に形成されやすくなり、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生を抑えることができる。したがって、無機粒子(A)と無機粒子(B)の合計に対する無機粒子(A)の含有量は、35~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることが特に好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、得られるフィルムの特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)、耐屈曲疲労性改良材等を添加することができる。
ポリアミド樹脂組成物には、目脂発生防止のため、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を添加することができる。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩は、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、具体的には、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.003~0.3質量部であることが好ましく、0.004~0.2質量部であることがより好ましく、0.005~0.1質量部であることがさらに好ましい。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量が前記の下限値以上であれば、目脂防止効果が見られるようになる。一方、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩の配合量が前記の上限値以下であれば、フィルムの透明性や印刷性等を維持することができる。
さらに、ポリアミド樹脂組成物には、透明性を改良し、巻きズレを抑制する観点から、ビスアミド化合物を配合することができる。ビスアミド化合物としては、N,N’-メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’-エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’-ジオクタデシルアジピン酸アミド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
ビスアミド化合物の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01~0.5質量部であることが好ましく、0.02~0.3質量部であることがより好ましく、0.03~0.2質量部であることがさらに好ましい。ビスアミド化合物の配合量が前記の下限値以上であれば、得られるフィルムの透明性が大きくなる。一方、ビスアミド化合物の配合量が前記の上限値以下であれば、フィルムの印刷性やラミネート加工時の密着性を維持することができる。
<フィルム>
本発明のポリアミド樹脂組成物(以下、「原料ポリアミド樹脂組成物」と称することがある。)を使用して、フィルムを形成することができる。
フィルムは、公知のフィルム製造方法により製膜することにより得ることができる。例えば、原料ポリアミド樹脂組成物を押出機で溶融混練し、T-ダイ又はコートハンガーダイによりフラットフィルム状に押出し、キャスティングロール面上にキャスティング、冷却してフィルムを製造するキャスティング法、リング状ダイにより筒状に溶融押出したチューブ状物を空冷又は水冷してフィルムを製造するチューブラー法等がある。製造されたフィルムは実質的に無配向の未延伸フィルムとして使用することもできるが、得られるフィルムの強度及びガスバリア性の観点から、未延伸フィルムを延伸することで得られる延伸フィルムや、未延伸フィルムを二軸延伸することで得られる二軸延伸フィルムとすることが好ましい。
未延伸フィルムを延伸するには、従来から知られている工業的方法を利用することができる。例えば、キャスティング法によって製造された未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機で縦横同時に延伸する同時二軸延伸法、Tダイより溶融押出しした未延伸シートをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法、環状ダイより成形したチューブ状シートを気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法が挙げられる。延伸工程はフィルムの製造に引続き、連続して実施してもよいし、製造されたフィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施してもよい。
延伸フィルムの延伸倍率は使用用途によって異なるが、テンター式二軸延伸法、チューブラー法において、通常、縦方向、横方向ともに1.5~4.5倍であることが好ましく、2.5~4.0倍であることがより好ましい。延伸温度は、30~210℃であることが好ましく、50~200℃であることがより好ましい。
上記方法により延伸されたフィルムは、引続き熱処理をすることが望ましい。熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱処理温度は、110℃を下限として原料ポリアミド樹脂組成物の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった延伸フィルムを得ることができる。延伸フィルムは、熱収縮性が乏しいか、あるいは実質的に有していないものが望ましい。よって、延伸後に行なわれる熱処理条件において、熱処理温度は150℃以上であることが好ましく、180~220℃であることがより好ましく、緩和率は、幅方向に20%以内であることが好ましく、3~10%であることがより好ましい。熱処理操作により、充分に熱固定された延伸フィルムは、常法に従い、冷却して巻き取ることができる。
さらに、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、フィルムに対してコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工工程を経て、それぞれの目的とする用途に使用することができる。
フィルムの厚みは、用途により適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、フィルムの厚みが厚ければフィルム強度は向上するが、透明性や耐屈曲疲労性は低下するので、これらを勘案してフィルムの厚みを決定することができる。単層フィルムの場合、フィルムの厚みは5~100μmであることが好ましく、10~80μmであることがより好ましく、10~60μmであることがさらに好ましい。
フィルムの平均表面粗さ(中心線平均粗さ)は、1.50×10-2μm~3.50×10-2μmであることが好ましく、1.80×10-2μm~3.00×10-2μmであることがより好ましく、2.00×10-2μm~2.70×10-2μmであることがさらに好ましい。フィルムの平均表面粗さが前記の下限値以上であれば、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時において巻きズレの発生を抑えることができる。一方、フィルムの平均表面粗さが前記の上限値以下であれば、フィルムの透明性を維持することができる。なお、平均表面粗さの測定方法については、実施例項において説明する。
フィルムの透明性に関しては、ATMS D-1003に準じて測定したヘイズが、3.5%未満であることが好ましく、3.0%未満であることがより好ましく、2.5%未満であることがさらに好ましい。ATMS D-1003に準じて測定したヘイズは、小さいほど透明性は高くなるが、通常は1.0%以上である。
フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時における巻きズレの発生しにくさに関しては、搬送状態摩擦係数が0.12以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.17以上であることがさらに好ましい。搬送状態摩擦係数とは、フィルム間に空気層がある状態でのフィルムの静止摩擦係数である。つまり、搬送状態摩擦係数とは、フィルムの巻き取り工程及びフィルム巻き取り後の保管及び運搬時におけるフィルム摩擦係数である。搬送状態摩擦係数が前記の値以上であれば、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時におけるロール状に巻き取られたフィルムの巻きズレの発生を抑制できる。搬送状態摩擦係数が大きいほど巻きズレの発生を抑制できるが、適度な滑り性を確保する観点から、搬送状態摩擦係数は0.20以下であることが好ましい。なお、搬送状態摩擦係数の測定方法については、実施例項において説明する。
<積層フィルム>
本発明のフィルムは、透明性、印刷性に優れ、単独での利用価値が高いが、これに他の層を積層することにより、さらに多くの特性を付加させることが可能である。具体的には、本発明のフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層して、積層フィルムとして使用することができる。
積層フィルムの厚みは、用途により適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、積層フィルムの厚みが厚ければフィルム強度は向上するが、透明性や耐屈曲疲労性は低下するので、これらを勘案して積層フィルムの厚みを決定することができる。積層フィルムの場合、原料ポリアミド樹脂組成物からなる層の厚みが、2~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることがさらに好ましい。他の層の厚みは、その層を積層することにより所望の特定が発揮させるように、適宜選択される。
積層フィルムを製造するに当たっては、原料ポリアミド樹脂組成物よりなる層の片面又は両面に他の基材を積層するが、その積層方法としては、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。共押出法は、原料ポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法であり、共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等が挙げられる。押出ラミネート法は、本発明の単層フィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明の単層フィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。ラミネートする際には、本発明のフィルムの片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。
積層される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された化合物により変性された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等を挙げられる。また、本発明において規定した前記ポリアミド樹脂を積層することも可能であり、フィルム強度のバランス、ガスバリア性の観点からポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)やエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)を積層することが好ましい。
また、本発明のフィルムには、ヒートシール性を付与する観点から、シーラント層を設けることができる。シーラント層として使用される材料は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、アモルファスポリエステル(A-PET)等が挙げられる。
さらに、本発明のフィルムには、他の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
特に、ガスバリアや水蒸気バリア性を向上させるために、金属及び/又は金属化合物を蒸着することも可能である。蒸着する材料としては、Siや、Al、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これらの酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられる。具体的には、SiOx(x=1.0~2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム等の無機酸化物や、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)等の有機化合物、シランガスのような無機ガスをキャリアガス及び酸化させるための酸素と混合後、反応により得られる酸化珪素等が挙げられる。蒸着簿膜の作製方法としては、公知の方法、物理的堆積法(PVD法)として真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的堆積法(CVD)法としてプラズマCVD法や化学反応法等を用いることができる。
<包装材料>
本発明のフィルムは、包装材料として使用することができる。包装材料としては、例えば、食品用包装フィルム、農薬用包装フィルム、医療用包装フィルム、電池用包装フィルム等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、使用した原材料を以下に示す。また、原材料として使用したシリカの体積平均粒子径及び粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA-905V2)を使用し、各サンプルに対して5回測定を行った。
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド6(宇部興産(株)製、商品名:1024)
<ゲル法シリカ(A)>
アミノ基含有アルコキシシラン化合物により表面処理されたシリカ(水澤化学工業(株)製、商品名:ミズカシルC-802、体積平均粒子径6.09μm、粒度分布は粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが0.06体積%で粒子径が3μm以上15μm以下のものが99.94体積%、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン処理量:シリカ100質量部に対して5質量部)
<沈降法シリカ(B)>
アミノ基含有アルコキシシラン化合物により表面処理されたシリカ(水澤化学工業(株)製、商品名:ミズカシルC-202、体積平均粒子径2.68μm、粒度分布は粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが59.41体積%で粒子径が3μm以上15μm以下のものが40.59体積%、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン処理量:シリカ100質量部に対して5質量部)
<ゲル法シリカ(C)>
オルガノポリシロキサンにより表面処理されたシリカ(水澤化学工業(株)製、商品名:ミズカシルPM-363DS、体積平均粒子径6.09μm、粒度分布は粒子径が0.1μm以上3μm未満のものが0.06体積%で粒子径が3μm以上15μm以下のものが99.94体積%、オルガノポリシロキサン処理量:シリカ100質量部に対して5質量部)
<実施例1>
ポリアミド6のペレットに対して、ゲル法シリカ(A)及び沈降法シリカ(B)をドライブレンドし、ゲル法シリカ(A)の濃度を0.0480質量%、ゲル法シリカ(A):沈降法シリカ(B)の配合比を2:1として、ポリアミド樹脂組成物を得た。
平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)を評価するため、得られたポリアミド樹脂組成物を押出機に供給して260℃で溶融混練し、該押出機に連結したTダイフィルム成形装置から押出した。さらに、押出された溶融樹脂を、内部に水を通して30℃に制御された冷却ロールにキャストして、厚み100μmのポリアミド未延伸フィルムを得た。引き続き、二軸延伸装置を用いて、延伸温度100℃で60秒間、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、200℃で30秒間熱固定処理を行い、60秒間冷却し、厚み15μmの平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルムを得た。
搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)を評価するため、逐次二軸延伸フィルム成形装置を使用し、サンプル作製を行った。260℃の押出機で溶融混練し、該押出機に連結したTダイフィルム成形装置から押出し、厚み230μmのフィルムを製膜し、そのフィルムを予熱50℃、延伸温度50℃で縦方向にロール間で3倍延伸し、続いて、予熱温度80℃、延伸温度100℃で横方向に3.1倍延伸し、厚み25μmのフィルムを連続で得た。そのフィルムを100m巻取り、搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)評価用のポリアミドフィルムを得た。
<実施例2>
ゲル法シリカ(A)の濃度を0.0540質量%とし、ゲル法シリカ(A):沈降法シリカ(B)の配合比を1:1としたこと以外は、実施例1と同様の条件でポリアミド樹脂組成物を製造し、それを用いて平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルム、並びに搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)評価用のポリアミドフィルムを得た。
<実施例3>
ゲル法シリカ(A)の濃度を0.0630質量%とし、ゲル法シリカ(A):沈降法シリカ(B)の配合比を1:1としたこと以外は、実施例1と同様の条件でポリアミド樹脂組成物を製造し、それを用いて平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルム、並びに搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)評価用のポリアミドフィルムを得た。
<比較例1>
ゲル法シリカ(A)を用いずに、沈降法シリカ(B)の濃度を0.0720質量%としたこと以外は、実施例1と同様の条件でポリアミド樹脂組成物を製造し、それを用いて平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルム、並びに搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)評価用のポリアミドフィルムを得た。
<比較例2>
実施例1で用いたゲル法シリカ(A)の代わりに、オルガノポリシロキサンにより表面処理されたゲル法シリカ(C)を用い、ゲル法シリカ(C)の濃度を0.0600質量%とし、ゲル法シリカ(C):沈降法シリカ(B)の配合比を2:1としたこと以外は、実施例1と同様の条件でポリアミド樹脂組成物を製造し、それを用いて平均表面粗さ及び透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルム、並びに搬送時の滑り性(搬送状態摩擦係数)評価用のポリアミドフィルムを得た。
<比較例3>
ゲル法シリカ(A)の濃度を0.0720質量%とし、沈降法シリカ(B)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の条件でポリアミド樹脂組成物を製造し、それを用いて透明性(ヘイズ)評価用のポリアミドフィルムを得た。
実施例1~3及び比較例1~3で得られたポリアミドフィルムに対して、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<平均表面粗さ>
ポリアミドフィルムの表面粗さを評価するため、株式会社菱化システムの三次元非接触表面形状測定器であるマイクロマップ(商品名)を用いた。
<透明性(ヘイズ)>
ポリアミドフィルムの透明性を評価するため、ATMS D-1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(シガ試験機(株)製、商品名:HGM-2DP)を使用して、ヘイズを測定し、以下の基準で評価した。
◎:2.5%未満
○:2.5%以上3.5%未満
×:3.5%以上
<搬送時滑り性(搬送状態摩擦係数)>
フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時における巻きズレの発生しにくさ(搬送時滑り性)を評価するため、フィルム巻き取り時の摩擦係数を図1に示すような装置を用いて評価した。本装置は、巻出機1、フリーローラ5、及び巻取機2で構築され、巻出機1以降、巻取機2と同じ速度、同じ張力でフィルム3を搬送させるための装置である。本装置は、巻き取りと同じ速度、同じ張力でフィルム3を搬送するため、巻き取りで発生する空気層に近い空気層を、搬送しているフィルム3とフリーローラ5の間に形成することができる。そして、フリーローラ5表面には測定対象であるフィルム4を貼り付けておき、フリーローラ5に設置した軸力測定器6によりフリーローラ軸力Trを測定することができる。
測定条件としては、搬送速度を10m/min、巻き取り張力を90N/m、巻き角を90°(π/2rad)、フィルム幅を100mmとし、各ポリアミドフィルムに対して3回(フィルム交換毎に試験点数10点)測定を行った。測定時の温度は23℃、湿度は50%RHであった。そして、測定されたフリーローラ軸力Trから式(1)を用いて搬送状態摩擦係数(フィルム間に空気層がある状態でのフィルムの静止摩擦係数)を求め、以下の基準で評価した。
◎:0.17以上
○:0.12以上0.17未満
×:0.12未満
評価が×の場合、フィルムの巻き取り工程並びにフィルム巻き取り後の保管及び運搬時におけるロール状に巻き取られたフィルムの巻きズレが発生し、○の場合、巻きズレの発生が抑制されるが、若干発生し、◎の場合、巻きズレの発生がほとんどない。
式(1)(オイラー・ベルト公式)は、図2に示すような力の関係から求められるものであり、μはフィルムの静止摩擦係数、Θは巻き角(rad)、T1は巻き出し張力(N/m)、T2は巻き取り張力(N/m)、Wはフィルム幅(m)、Rはフリーローラ半径(m)、Trはフリーローラ軸力(m)である。