JP7087398B2 - 耐熱性に優れたカチオン可染性ポリエステル組成物および繊維 - Google Patents
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例えば、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を1.0~3.0mol%含み、ポリエステル組成物に対するポリエチレングリコールを0.5~2.0wt%含むことを特徴とするカチオン可染性ポリエステル組成物が例示されている(特許文献1)。
(1)主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を1.2mol%以上2.2mol%以下含有し、ポリエステル組成物に対するジエチレングリコールの含有量が2.5wt%以上3.8wt%以下であり、耐熱性パラメータXが、1.0≦X≦1.4を満足することを特徴とするカチオン可染ポリエステル組成物。
すなわち、分母および分子それぞれにおける、1500cm-1付近の吸収に対する1610cm-1付近の吸収の比は、PET主鎖に対するPET熱変性物の割合を示す。
本発明のカチオン可染性ポリエステルは、主たる繰り返し単位としてエチレンテレフタレートが70mol%以上からなり、さらに好ましくは80mol%以上からなる。
(1):耐熱性パラメータXが、1.0≦X≦1.4を満足する。
(2):角速度3.14rad/sec,周波数5Hz,285℃において、測定開始後1500秒後の粘弾性特性が下記(式1)~(式3)を満たす。
(式1)70≦G′(1500)≦200Pa
(式2)550≦G′′(1500)≦850Pa
(式3)180≦η*(1500)≦270Pa・s
(G′:貯蔵弾性率、G′′:損失弾性率、η*:複素粘性率)
スルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分、DEGおよび耐熱性パラメータXのいずれか1つでも本範囲よりも高くなると、溶融紡糸する際にこれらを起点とした熱変性が進みやすく、その変性物に起因して糸切れや染め斑が発生しやすい。一方、スルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分およびDEG量が本範囲より低くなると、本願のポリエステル組成物を繊維とした時に染料に対し充分に染色されず、また染め斑に代表される染色性不良を誘発し本願の目的を達成できない。(式1)~(式3)で表される溶融粘弾性のうち、(式1)もしくは(式3)の上限を上回る場合、すなわち貯蔵弾性率G′、粘度η*が高すぎる場合、または(式2)の下限を下回る場合、すなわち損失弾性率G′′が低すぎる場合は、ポリマが吐出時の形状変化に追従できず、吐出不良による糸切れが頻発して適正な紡糸性を確保できない他、糸の太細斑につながる結果、染料への染まり方も異なるため、染め斑の原因となる。
逆に(式1)もしくは(式3)の下限を下回る場合、すなわち貯蔵弾性率G′、粘度η*が低すぎる場合、または(式2)の上限を上回る場合、すなわち損失弾性率G′′が高すぎる場合は、吐出後巻き取られる際に張力が充分に伝わらないため糸形状を保持できず、同じく糸切れ不良となることに加え、染料への染まり方も異なるため、染め斑の原因となり本願の目的を達成できない。
(式1′)80≦G′(1500)≦160Pa
(式2′)650≦G′′(1500)≦800Pa
(式3′)190≦η*(1500)≦260Pa・s
(G′:貯蔵弾性率、G′′:損失弾性率、η*:複素粘性率)
本発明のカチオン可染性ポリエステル組成物に含まれるスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分は公知のものを使用して良い。具体的には5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジエチルエステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステル等が挙げられ、これらの混合物であっても差し支えないが、染色性の改善効果と入手の容易さから5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジグリコールエステルが好ましい。
(式5)0.8≦[G′′(1500)/G′′(250)]≦1.4
(式6)[tanδ(1500)/tanδ(250)]≦0.55
(式7)0.9≦[η*(1500)/η*(250)]≦1.3
(G′:貯蔵弾性率、G′′:損失弾性率、tanδ:損失弾性率G′′を貯蔵弾性率G′で除した値、η*:複素粘性率)
ここで、tanδは貯蔵弾性率G′と損失弾性率G′′の比であり、ポリマのしなやかさの指標である。tanδがある一定範囲にあることで、ポリマの貯蔵弾性率G′と損失弾性率G′′のバランスがとれ、しなやかなポリマーになることから、紡糸時により一層糸切れしづらくなり、製糸性の向上に寄与する。
本発明のカチオン可染性ポリエステル組成物は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールを、エステル化反応もしくはエステル交換反応を行い、全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分を1.2~2.2mol%となるよう添加し、重縮合触媒の存在下で重縮合することで製造することができる。
各試料内部からサンプリングを行い、顕微赤外分光装置(FT-IR・MICROSCOPE:NicoletContinuumII(ThermoFisher scientific製顕微FT-IR))にて、熱処理前、および窒素雰囲気下285℃にて5時間加熱処理後のポリマーのFT-IRを測定し、それぞれの1610cm-1および1500cm-1±10cm-1の吸収強度を求めた。なお測定バラツキを極小化するため、同一サンプルを5回測定し、その相加平均を使用した。
ポリマー中のS元素含有量を(株)リガク製蛍光X線分析装置(ZSX-100e)で分析し、5-ナトリウムスルホイソフタル酸量に換算した。
ポリエステル中のポリエチレングリコール含有量は、ポリマーをモノメタノールアミンで加水分解後、カリボール(テトラフェニルホウ酸ナトリウム)にて滴定し定量した。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、ポリマーを加水分解した後、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
ポリマーをモノメタノールアミンで加水分解後、1,6-ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比から求めた。
試料をオルソクロロフェノールに溶解し、オストワルト粘度計を用いて25℃で測定した。
色差計(スガ試験機製SMカラーコンピュータ、型式:SM-T45)を用い、ハンター値(b値)として測定した。
紡糸したポリマー量に対し、糸切れした回数(回/トン)をカウントし、以下の基準で判定した。
◎(実用可):1.0回/トン以内
○(実用可):1.0回/トンより大きく1.5回/トン以内
△(実用不可):1.5回/トンより大きく3.0回/トン以内
×(実用不可):3.0回/トンより大きい。
2本合糸(150dtex)にて22ゲージで筒編み地を作製し、この筒編み地をC.I.Basic Blue66の5%owf、酢酸0.5ml/l、酢酸ナトリウム0.2g/Lからなる、浴比1:100の95℃熱水溶液中で60分間染色を行い、前記(6)の測定方法で色調L値を求め、染色サンプルの色調Lの平均値との比較により以下の基準で判定した。
◎(実用可):色調Lの平均値との差が±0.2以内
○(実用可):色調Lの平均値との差が±0.2より大きく±0.3以内
△(実用不可):色調Lの平均値との差が±0.3より大きく±0.5以内
×(実用不可):色調Lの平均値との差が±0.5より大きい。
測定には株式会社UBM製の動的粘弾性測定装置(型式:RHEOSOL-G3000)を用いた。測定部が所定温度である285℃になってから20分待機して温度を安定化させた後、測定部を開けてサンプル0.7gをセットした。セット後、測定部を閉じて温度が285℃に回復した後、更に2分経過の後にサンプルを挟むプレート間隔を1mmに調節した。その状態で3分待機した後、下記の条件で測定した。なお、測定開始250秒後と1500秒後のデータは、一度の測定で採取した。
測定角速度:3.14rad/sec
測定周波数:5Hz
測定温度:285℃
測定雰囲気:窒素下 。
(エステル交換反応)
精留塔を備えた反応槽に、エチレングリコール/テレフタル酸ジメチルのmol比率が2.0となるように、エチレングリコールとテレフタル酸ジメチルを添加し、エステル交換触媒として酢酸コバルト・4水和物を得られる低重合体中に300ppm含有するよう添加した。その後、反応槽の温度を140℃から235℃まで昇温させながら、メタノールを留去させてエステル交換反応を行いビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体を得た。この時のエステル交換反応率は98%だった。
5-ナトリウムスルホイソフタル酸の両末端がエチレングリコールに置換されたもの(以下、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジEGエステルと称す)の40wt%エチレングリコール溶液を、90℃に加熱し、目開き10μmの焼結繊維金属製不織布フィルター1枚を設置した配管径43mmの流路を循環させた。このときの循環圧力(フィルターの一次側の圧力)は0.2MPaであり、循環流量は450kg/hであった。この仕事率は、循環圧力(0.2MPa)に循環流量(450kg/h)を乗し、単位をkJに揃えるための換算(3600で除し、1000を乗する)により25kJ/sとなる。
(重合方法)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの低重合体が1750kg存在しているエステル反応槽に、EAHの20%水溶液を低重合体に対し700ppm添加した後、エチレングリコール/テレフタル酸のmol比が1.15のスラリーを3時間かけて連続して供給し、精留塔上段からエステル反応時に生じる水のみを留去させ、反応槽温度を235~245℃に保ちながら、エステル化反応率が98%となるまで反応を行った。次に、予め循環させておいた5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジEGエステル分散液を得られるポリエステルに対して1.6mol%と酢酸リチウム・2水和物を得られるポリエステルに対し0.30mol%を予め30分間混合し、エステル反応槽に約10分かけて添加し、攪拌速度100rpmで約30分間加熱混合した。このとき得られた5-ナトリウムスルホイソフタル酸ジEGを含む低重合体は3185kgだった。このうち、1435kgを10ミクロンのフィルターで濾過しながら重合反応槽へ移液した。
このポリエステルを乾燥後紡糸に供し、紡糸温度285℃にて溶融し、直径95mmの15ミクロン不織布フィルターで濾過しながら吐出量38g/分で、吐出口径0.17mm、孔深度0.45mmの丸孔を192個有する口金ノズルより吐出させ、吐出後の糸条を冷却チムニーによって冷却・固化し、口金下2mの位置で給油装置にて集束させながら油剤を付与し(純油分として繊維重量に対して1wt%塗布)、交絡ノズルにて予備交絡を施し、周速度2000m/分にて巻き取り、100dtex、96フィラメントの未延伸糸を11kg巻いたチーズパッケージとした。このときの紡糸糸切れは0.7回/トンであり、安定操業を行うことができた。
得られた未延伸糸を、ディスク仮撚り機を用いて延伸倍率1.5倍で延伸仮撚り加工を行い、66dtex、96フィラメントの加工糸を得た。
この得られた加工糸を用いて筒編み地を作製し、上記(8)「染め斑」の方法で染色加工した。得られた筒編み地のL値の平均値との差は±0.2以内であり、均一に染色されていた。
表1、2に記載の条件で行う以外は実施例1と同様の方法でポリエステルを製造し、製糸評価を行った。表2に示すとおり、ポリエステル組成物の品質は良好であり、製糸評価も良好な結果だった。
表3,4に記載の条件で行う以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造し、製糸評価を行ったが、いずれも紡糸糸切れおよび染め斑のうち少なくとも1つの点で劣っていた。
Claims (3)
- ポリエステル組成物に対するポリエチレングリコールの含有量が0.7wt%以上1.3wt%以下であって、ポリエステル組成物に対するポリエチレングリコール重量を、全ジカルボン酸成分に対するスルホン酸塩基を有するイソフタル酸成分の重量で除した値が0.45以上であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性カチオン可染性ポリエステル組成物。
- 請求項1または2に記載の耐熱性カチオン可染性ポリエステル組成物からなる繊維。
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